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明細書 :血管状態測定装置、制御プログラム、記録媒体

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4830097号 (P4830097)
公開番号 特開2007-007078 (P2007-007078A)
登録日 平成23年9月30日(2011.9.30)
発行日 平成23年12月7日(2011.12.7)
公開日 平成19年1月18日(2007.1.18)
発明の名称または考案の名称 血管状態測定装置、制御プログラム、記録媒体
国際特許分類 A61B   5/02        (2006.01)
A61B   5/0205      (2006.01)
A61B   5/0402      (2006.01)
FI A61B 5/02 A
A61B 5/02 D
A61B 5/04 310M
請求項の数または発明の数 6
全頁数 12
出願番号 特願2005-190474 (P2005-190474)
出願日 平成17年6月29日(2005.6.29)
審査請求日 平成20年1月16日(2008.1.16)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504136568
【氏名又は名称】国立大学法人広島大学
発明者または考案者 【氏名】辻 敏夫
【氏名】柴 建次
【氏名】吉栖 正生
【氏名】東 幸仁
【氏名】坂根 彰
【氏名】寺尾 譲
個別代理人の代理人 【識別番号】110000338、【氏名又は名称】特許業務法人原謙三国際特許事務所
審査官 【審査官】小島 寛史
参考文献・文献 特開2001-245856(JP,A)
特開2005-052232(JP,A)
特開2003-070754(JP,A)
特開2006-129958(JP,A)
坂根彰,外4名,プレチスモグラムを利用した血管状態モニタリング,計測自動制御学会論文集,日本,社団法人計測自動制御学会,2004年12月31日,第40巻,第12号,p.1236-1242
調査した分野 A61B 5/02
A61B 5/0205
A61B 5/0402
特許請求の範囲 【請求項1】
被験者の心電図を測定して出力するための心電図出力手段と、
前記被験者における、動脈を含む部分の前記動脈の血圧値の経時変化による外周長さの変化を測定して、前記動脈の血管壁における、前記血圧値による経時的な変位および前記変位の変位速度を検出するための外周長さ測定手段と、
前記血圧値を検出するための血圧値検出手段と、
前記心電図、前記変位および前記変位速度、および前記血圧値に基づいて、前記動脈の粘性および剛性の少なくとも一方を算出して前記動脈の血管状態を測定するための状態算出手段とを備え
前記外周長さ測定手段は、ストレインゲージプレチスモグラフィーであることを特徴とする血管状態測定装置。
【請求項2】
前記状態算出手段は、前記心電図のR波をトリガーとして前記動脈の血管状態を測定するようになっていることを特徴とする請求項1に記載の血管状態測定装置。
【請求項3】
前記外周長さ測定手段は、動脈の拍動に基づく前記外周長さの変化を測定するようになっていることを特徴とする請求項1または2に記載の血管状態測定装置。
【請求項4】
前記血圧値検出手段は、非観血的動脈圧測定部を有していることを特徴とする請求項1ないしの何れか1項に記載の血管状態測定装置。
【請求項5】
被験者の心電図を測定し、
前記被験者における、動脈を含む部分の前記動脈の血圧値の経時変化による外周長さの変化をストレインゲージプレチスモグラフィーにより測定し、
前記外周長さの変化による、前記動脈の血管壁における、前記血圧値による経時的な変位および変位速度を検出し、
前記血圧値を検出し、
前記心電図、前記変位および前記変位速度、および前記血圧値に基づいて、前記動脈の粘性および剛性の少なくとも一方を算出して前記動脈の血管状態を測定することを、コンピュータにて実行可能に記載された制御プログラム。
【請求項6】
請求項に記載の制御プログラムを、コンピュータにて読み取り可能に記録した記録媒体。

発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、動脈硬化などの血管の病変を示す指標となる、血管の機械的インピーダンス(剛性、粘性)を測定するための血管状態測定装置、上記血管状態測定装置における各手段を、コンピュータにて実行可能に記載された制御プログラム、上記制御プログラムを、コンピュータにて読み取り可能に記録した記録媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
厚生労働省が発表した平成15年度の主な死因別死亡数の割合において、日本人の死因の2、3位は心疾患、及び脳血管疾患が占めており、血管に関わる疾患が増加傾向にあることがわかる。血管は、年齢に伴い動脈壁中のコラーゲンが変質して硬化し、弾性線維の減少が起こることで動脈壁の質が悪くなるといわれている。
【0003】
一方、近年は正常な老化過程以外に血管の質を低下させる要因が増加している。具体的には、糖尿病、高血圧、食の欧米化、運動不足、喫煙、さらにストレスなども影響し、危険因子であるアンギオテンシンや低比重リポ蛋白(LDL)コレステロールの増加により、組織や臓器全体に血行障害が生じることが報告されている。
【0004】
これら血管に関わる疾患は、益々増加するといわれている。動脈硬化の進行度など血管に関わる疾患の早期発見のためには、血管状態、例えば血管のかたさ、やわらかさといった力学特性を定量的に評価する必要がある。
【0005】
そこで、上記評価のために、従来から様々な解析が行われてきた。非特許文献1には、フォトプレチスモグラムを利用して、血管壁の力学特性を機械インピーダンスの慣性、粘性、剛性を用いてモデル化し、血管状態を1拍毎に推定する手法が提案されている。上記フォトプレチスモグラムとは、光を対象部位に照射し、その光の透過光を検出して血管状態を計測するためのデータを提供できるものである。

【非特許文献1】坂根彰、辻敏夫、田中良幸、佐伯昇、河本昌志:プレチスモグラムを利用した血管状態モニタリング、計測制御学会論文集、Vol.40、No12、pp.1236-1242、(2004)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、インピーダンスの推定に用いられている生体信号の一つであるフォトプレチスモグラムは、光の透過光を利用するため、計測部位の厚さが薄い末梢部に限定されており、動脈硬化が問題となる血管径の大きい動脈が存在する部位においては、上記計測ができないという問題点を有している。
【0007】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、計測部位に限定されないストレインゲージプレチスモグラムを用いて血管の動き(血管の径の変化)を計測し、動脈血圧値との対応関係から血管のかたさ、やわらかさを計測する装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る血管状態測定装置は、上記課題を解決するために、被験者の心電図を測定して出力するための心電図出力手段と、前記被験者における、動脈を含む部分の外周長さの変化を測定するための外周長さ測定手段と、前記動脈での血圧値を検出するための血圧値検出手段と、前記心電図、外周長さの変化、および血圧値に基づいて、前記動脈の粘性および剛性の少なくとも一方を算出して前記動脈の血管状態を測定するための状態算出手段とを備えていることを特徴としている。
【0009】
上記構成によれば、被験者における、動脈を含む部分の外周長さの変化を測定するための外周長さ測定手段、例えばストレインゲージプレチスモグラフィーを設けたので、動脈硬化が問題となる血管径の大きい動脈が存在する部位においても、上記部位の外周長さの変化を測定できる。
【0010】
よって、上記構成は、上記外周長さの変化の測定結果から、上記血管の容積変化を算出できるので、心電図と血圧値と容積変化に基づいて状態算出手段により上記粘性および剛性の少なくとも一方を算出して、動脈のかたさ、やわらかさを計測できる。
【0011】
上記血管状態測定装置では、前記状態算出手段は、前記心電図のR波をトリガーとして前記動脈の血管状態を測定するようになっていることが好ましい。
【0012】
上記構成によれば、被験者の心電図のR波つまり心筋が最も収縮した時をトリガー(計測の開始点、終了点)として用いるので、互いに隣り合う各R波間での血圧値の最大値とそれに対応する外周長さの変化とを計測することで、心筋の収縮および拡張に伴う動脈の動きを、より正確に計測できる。
【0013】
上記血管状態測定装置においては、前記外周長さ測定手段は、ストレインゲージプレチスモグラフィーであってもよい。
【0014】
上記血管状態測定装置では、前記外周長さ測定手段は、動脈の拍動に基づく前記外周長さの変化を測定するようになっていることが望ましい。
【0015】
上記構成によれば、動脈の拍動に基づき外周長さの変化を測定するので、静脈止血法といった被験者に負担を強いる測定法を用いる必要がないので、被験者に対し、より安全に被験者の血管状態を測定できる。
【0016】
上記血管状態測定装置においては、前記血圧値検出手段は、非観血的動脈圧測定部を有していてもよい。
【0017】
上記構成によれば、血圧値を非観血的に測定するので、動脈中へのカテーテルの穿刺といった被験者に負担を強いる測定法を用いる必要がないので、被験者に対し、より安全に被験者の血管状態を測定できる。
【0018】
本発明に係る制御プログラムは、上記課題を解決するために、上記の何れかに記載された血管状態測定装置における各手段を、コンピュータにて実行可能に記載されたことを特徴としている。
本発明に係る記録媒体は、上記課題を解決するために、上記に記載の制御プログラムを、コンピュータにて読み取り可能に記録したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る血管状態測定装置は、以上のように、被験者の心電図を測定して出力するための心電図出力手段と、前記被験者における、動脈を含む部分の外周長さの変化を測定するための外周長さ測定手段と、前記動脈での血圧値を検出するための血圧値検出手段と、前記心電図、外周長さの変化、および血圧値に基づいて、前記動脈の粘性および剛性の少なくとも一方を算出して前記動脈の血管状態を測定するための状態算出手段とを備えている構成である。
【0020】
それゆえ、上記構成は、動脈を含む部分の外周長さの変化を測定するための外周長さ測定手段を備えているので、動脈硬化が問題となる血管径の大きい動脈が存在する部位においても、上記動脈のかたさ、やわらかさを計測できる。
【0021】
この結果、上記構成は、血管径の大きい動脈が存在する部位においても、上記動脈のかたさ、やわらかさを計測できるから、動脈硬化などの血管の病変をより確実に評価できるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明に係る血管状態測定装置の一実施形態について図1ないし図10に基づいて説明すると以下の通りである。すなわち、上記血管状態測定装置では、図1に示すように、心電図計(心電図出力手段)2、ストレインゲージプレチスモグラフィー装置(外周長さ測定手段)3、血圧計(血圧値検出手段)4、およびコンピュータ部(状態算出手段)5が設けられている。さらに、上記血管状態測定装置においては、コンピュータ部5にて算出された計測結果、計測時における心電図、プレチスモグラム、血圧値を表示できる、液晶ディスプレイなどのディスプレイ部6を設けてもよい。
【0023】
心電図計2は、被験者1の心臓の動きを示す心電図(ECG:ElectroCardioGram)を測定して出力するためのものである。心電図計2としては、例えば日本コーリン社製のBP-306が挙げられる。
【0024】
ストレインゲージプレチスモグラフィー装置3は、被験者1における、例えば前腕(動脈を含む部分)1aの外周長さの変化を測定することによって、前腕1aの容積変化(PLS:PLethySmogram)を計測するためのものである。ストレインゲージプレチスモグラフィー装置3としては、例えばHokanson社製のEC5Rが挙げられる。
【0025】
ストレインゲージプレチスモグラフィー装置3は、上記計測のために、紐状のストレインゲージ3aと、装置本体3bと、上記両者を電気的に接続するケーブル3cを備えている。
【0026】
ストレインゲージ3aは、伸縮性に優れた樹脂チューブ、例えば膜厚が薄いシリコンラバーチューブと、そのシリコンラバーチューブ内に充填された、導電性を有する液体、例えば水銀、またはGa-In溶液と、シリコンラバーチューブ内の両端部にそれぞれ形成された電極とを有している。
【0027】
よって、ストレインゲージプレチスモグラフィー装置3は、測定対象の動脈1bを含む前腕1aの外周に対し、上記シリコンラバーチューブを巻き付けて使用される。シリコンラバーチューブは、測定対象の動脈1bの血流方向に対し略直交する仮想平面と前腕1aの外周とが交わる仮想線に沿って、巻き付けられることが好ましい。略直交するとは、ほぼ直交していればよく、具体的には、上記血流方向に対し80度以上、より望ましくは85度以上であり、かつ、上記血流方向に対し100度以下、より望ましくは95度以下である。
【0028】
このシリコンラバーチューブを巻き付け、シリコンラバーチューブ内の各電極に電圧を印加して電流を流すと、上記動脈1bの容積変化が血圧値の変化に伴い変化したとき、上記前腕1aにおける、上記巻き付け部の外周長さが変化する。このように外周長さが変化すると、変化した外周に巻き付けられた上記シリコンラバーチューブの長さも変化する。これにより、シリコンラバーチューブ内に充填された、導電性を有する液体における各電極間の距離も変化して、上記液体の各電極間での電気抵抗値が変化する。この電気抵抗値の変化は、ケーブル3cを介して装置本体3bにて検出され、プレチスモグラムを示す電気信号(PLS)としてコンピュータ部5に出力される。
【0029】
ストレインゲージプレチスモグラフィー装置3は、図2(a)に示すように、測定対象の動脈1bを含む前腕1aの外周に対し、非加圧状態で使用される。しかしながら、図2(b)に示すように、通常の間接的(非観血的)動脈圧測定法である、静脈止血法といった加圧状態で用いることもできる。非加圧状態と、加圧状態とにおけるプレチスモグラムを図3に示す。図3では、非加圧状態時の動脈1bの拍動部分に対応する拍動部2aと、加圧状態時の動脈1bに順次、血流がたまって、上記動脈1bの径が順次大きくなっていることを示すトレンド部2bとが示されている。
【0030】
図1に示す、血圧計4は、前腕1aの動脈1b内での血圧値(IBP:Invasive Blood Pressure)を検出するためのものである。血圧計4としては、例えば日本光電社製:SEN-6102Mが挙げられる。血圧計4には、動脈1b内に先端が穿刺されるカテーテル4aと、カテーテル4aからの血液を溜めて血圧を圧電素子などの圧力-電気の変換素子により検出する検出部4bと、検出部4bからの電気信号から血圧値を算出する血圧計本体4cとを備えている。
【0031】
コンピュータ部5は、心電図の経時的変化、外周長さの変化によるプレチスモグラムの経時的変化、および血圧値の経時的変化に基づいて、動脈1bの力学的特性である粘性および剛性の少なくとも一方を、後述するモデル化によって算出して動脈1bの血管状態を測定できるようになっている。
【0032】
図4(a)に、心電図の一例を示す。上記心電図のRは、R波の位置を示す。図4(b)に、上記心電図の経時的な変化に対応した血圧値の一例を示す。図4(c)に、上記血圧値の経時的な変化に対応するプレチスモグラムを示す。
【0033】
本発明の血管状態測定装置では、図5に示すように、心電図、プレチスモグラム、および血圧値の各経時的な変化を示す電気信号に含まれるノイズや直流成分などの不要成分を低減するために、上記各電気信号を、それぞれ、バンドパスフィルター(BPF)処理を施してもよい。心電図用のバンドパスフィルターの通過帯域としては、14~28(Hz)が挙げられる。プレチスモグラム用の、および血圧値用のバンドパスフィルターの通過帯域としては、0.3~5.0(Hz)がそれぞれ挙げられる。
【0034】
次に、心電図、外周長さの変化、および血圧値に基づいて、動脈1bの力学的特性である粘性および剛性について、動脈1bを粘弾性モデルにモデル化して算出できることを説明する。以下では、説明の便宜のために、まず、上記モデル化、プレチスモグラム、上記力学特性値の算出方法について順に説明する。
【0035】
(血管壁のモデル化)
人体の動脈1bは、図6に示すように、内膜11、中膜12、外膜13の3層から構成され、各々の層には固有の構成因子が含まれる。
【0036】
外膜13には、結合組織、エラスチン、コラーゲンといった動脈スティフネスやコンプライアンスに影響を及ぼす因子が含まれていると共に、大動脈の血管壁に栄養素を供給する脈管血管が含まれる。
【0037】
内膜11には、一酸化窒素(NO)やEDHF(endothelium-derived hyperpolarizing factor)などの内皮由来血管作動性物質を産出する脈管内皮が存在する。
【0038】
中膜12には、エラスチン、コラーゲン等の平滑筋が含まれる。ここで、平滑筋は、交感神経やホルモンによって刺激されると収縮し、血流量を下げる機能を担う。
【0039】
したがって、動脈1bは、中膜12に含まれている平滑筋の作用によって収縮または弛緩する。そこで、本実施形態では、動脈1bの収縮または弛緩の程度を数値化する手段として、動脈1bを機械的なインピーダンス(粘弾性)モデルにモデル化する。
【0040】
図7に、動脈1bのインピーダンスモデルを示す。ここで、インピーダンスパラメータの慣性(M)を無視することとし(M=0)、血流が動脈1bの血管壁に作用する力F(t)と血管壁の変位r(t)とからインピーダンス特性を以下のように表現する。ただし、dr(t)’は、dr(t)の1階微分を示す。
【0041】
dF(t)=Bdr(t)’+Kdr(t) …(1)
ここで、各インピーダンスパラメータB、Kは、それぞれ血管壁の粘性、剛性を示し、r(t)’は血管壁の変位速度、dF(t)=F(t)-F(t0)、dr(t)=r(t)-r(t0)であり、t0は心電図のR波が発生する時刻である。(1)式のインピーダンスパラメータを推定するためにはF(t)、r(t)を計測する必要がある。ここで、F(t)は動脈血圧値を用いて以下のように表現する。
【0042】
F(t)=kfb(t) …(2)
ここで、kfは比例定数、Pb(t)は動脈1bの血圧値である。一方、四肢の一例としての前腕1aの半径rl(t)の変化を、図8に示す前腕1aの容積変化を示すストレインゲージプレチスモグラムPl(t)の計測値を用いて表現することを試みる。ストレインゲージプレチスモグラム値と前腕1aの半径の変化には以下のような対応関係を得ることができる(R.J.Whitney: The Measurement of Volume Changes in Human Limbs, J. Physiol., Vol.121, pp.1-27, 1953.)。
【0043】
l(t)=dC(t)/C*=2drl(t)/rl* …(3)
ここで、C(t)は前腕1aの単位長さあたりの容積を表す。また、dC(t)=C(t)-C*、drl(t)=rl(t)-rl*であり、C*、rl*は、それぞれ、安静時に計測した前腕1aの単位長さあたりの容積、及び前腕1aの半径である。以上の関係より、前腕1aの半径rl(t)と動脈1bの血管半径r(t)が、r(t)=kpl(t)-rmであると仮定すると、
r(t)=kp[(rl*/2)Pl(t)+rl*]-rm …(4)
と表現される。
【0044】
ここでkpは比例定数で、rmは前腕1aの半径から動脈を取り除いた長さであり、定数と仮定した。よって、血管壁に作用する力を動脈1bの血圧値Pb(t)(式(2))、動脈1bの血管半径を示すストレインゲージプレチスモグラムPl(t)(式(4))を用いると、(1)式は以下のように書き表される。
【0045】
dPb(t)=Bバー・dPl(t)’+KバーdPl(t) …(5)
ここで、
Bバー=(2/(kfpl*))B、
Kバー=(2/(kfpl*))K …(6)
である。
【0046】
次に、図9(a)に示す、ストレインゲージプレチスモグラムPl(t)と、図9(b)に示す、上記Pl(t)の1階微分であるPl(t)’とを用い、上記(5)式から算出された、評価値(Estimated)の血圧値の経時変化を図9(c)に破線にて示した。また、比較のために、血圧値の経時変化の実測値(Measured)を図9(c)に実線にて示した。図9(c)の結果から、評価値と実測値とがよく一致しており、モデル化に基づく上記評価値の有効性が示された。
【0047】
続いて、動脈1bの機械的なインピーダンスを推定できることを示す他の実験例について説明する。まず、実験方法としては、心電図、血圧値、ストレインゲージプレチスモグラムを同時に計測した。各データはサンプリング周波数1kHzでパソコンに保存され、血圧値は左手の肘部位の動脈1b内にカテーテル4aの先端部を挿入して計測し、ストレインゲージプレチスモグラムは同側の肘部位で計測した。
【0048】
このような血管状態測定装置を用いて、血管弛緩薬(sodium nitroprusside)を被験者1に注入した際における、動脈1bの血管壁の機械的なインピーダンスを推定することを試みた。被験者1は健常な男性(21才)であり、血管弛緩薬の濃度(3パターン、0.375μg/ml、0.75μg/ml、1.5μg/ml)を変化させた際の剛性、粘性の比較を行った。
【0049】
動脈1bの血管壁インピーダンスを示す指標としてのKバー(剛性)およびBバー(粘性)の算出結果を図10に示す。算出結果より、血管弛緩薬を投与する量の増加に伴い剛性、及び粘性が小さくなる様子が捉えられていることから、本発明の血管状態測定装置は、動脈1bの力学特性を定量的に評価できることが分かる。
【0050】
なお、上記実施形態では、血圧値の測定を動脈1b内にカテーテル4aの先端部を穿刺した例を挙げたが、非観血的に血圧値を測定してもよい。
【0051】
非観血的な血圧値の測定法としては、通常の間接的動脈圧測定法である、静脈止血法により、例えば前腕1aの上腕を空気圧にて膨張するカフにて静脈での血流を止め、その空気圧を順次低下させて、血流が流れ出す空気圧の圧力を測定する方法が挙げられる。この場合では、上記カフのみを追加して、上記血流が流れ出す点に関しては、ストレインゲージプレチスモグラフィー装置3を用いることができる(前述のトレンド部2b参照)。
【0052】
また、非観血的な血圧値の他の測定法としては、測定対象の動脈1bにおける下流側の動脈、例えば指先の動脈の血圧値を、フォトプレチスモグラフィーにより測定する方法が挙げられる。
【0053】
なお、以上の実施形態で説明した血管状態測定装置の各手段を、コンピュータにて実行可能な制御プログラムとして上記コンピュータに読み込ませることによって実現させてもよく、この制御プログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に、記録したものとしてもよい。この結果、上記制御プログラムを記録した記録媒体を持ち運び自在に提供することができる。
【0054】
なお、この記録媒体としては、マイクロコンピュータで処理が行われるために図示していないメモリ、例えばROM(Read only memory)のような、そのものがプログラムメディアであってもよいし、また、図示していないが外部記憶装置としてプログラム読み取り装置が設けられ、そこに記録媒体を挿入することで読み取り可能なプログラムメディアであってもよい。
【0055】
いずれの場合においても、格納されているプログラムはマイクロプロセッサがアクセスして実行させる構成であってもよいし、あるいは、いずれの場合もプログラムを読み出し、読み出されたプログラムは、マイクロコンピュータの図示されていないプログラム記憶エリアにダウンロードされて、そのプログラムが実行される方式であってもよい。このダウンロード用のプログラムは予め本体装置に格納されているものとする。
【0056】
ここで、上記プログラムメディアは、本体と分離可能に構成される記録媒体であり、磁気テープやカセットテープ等のテープ系、フロッピー(登録商標)ディスクやハードディスク等の磁気ディスクやCD-ROM/MO/MD/DVD等の光ディスクのディスク系、ICカード(メモリカードを含む)/光カード等のカード系、あるいはマスクROM、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、フラッシュROM等による半導体メモリを含めた固定的にプログラムを担持する媒体であってもよい。
【0057】
また、本実施形態においては、コンピュータ部5を、インターネットを含む通信ネットワークと接続可能な構成とし、通信ネットワークからプログラムをダウンロードするように流動的に制御プログラムを担持する媒体であってもよい。なお、このように通信ネットワークから制御プログラムをダウンロードする場合には、そのダウンロード用プログラムは予め本体装置に格納しておくか、あるいは別な記録媒体からインストールされるものであってもよい。上記記録媒体は、コンピュータ部5に備えられるプログラム読み取り装置により読み取られることで上述した処理が実行される。
【0058】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、上述した実施形態において開示された各技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の血管状態測定装置、制御プログラム、記録媒体は、動脈硬化などの血管の病変をより確実に評価できるので、血管の疾患をより確実に把握できることによって、医学の分野に好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の血管状態測定装置を被験者に用いた際の概観を示し、(a)は構成図であり、(b)は、上記(a)の要部拡大図である。
【図2】上記血管状態測定装置での計測時における前腕を示し、(a)は、上記前腕への非加圧状態を示し、(b)は、上記前腕への加圧状態を示す。
【図3】上記前腕への非加圧状態時(拍動部分)と、上記前腕への加圧状態時(トレンド部分)とにおける、上記前腕の容積変化をそれぞれ示すプレチスモグラムである。
【図4】上記血管状態測定装置の一計測結果を示すグラフであり、(a)は、心電図、(b)は、動脈の血圧値、(c)は、プレチスモグラムを示す。
【図5】上記一計測結果をフィルタ処理した例を示すグラフであり、(a)は、上記心電図、(b)は、上記プレチスモグラム、(c)は、上記動脈の血圧値を示す。
【図6】被験者の動脈血管における一部破断の斜視図である。
【図7】上記血管状態測定装置での動脈の血管の機械的インピーダンス(剛性、粘性)のモデル化を示すブロック図である。
【図8】上記血管の拍動による径変化に伴う被験者の前腕の変化を示す、上記前腕の要部断面図である。
【図9】上記モデル化の有効性を示すグラフであり、(a)は、モデル化によるプレチスモグラム、(b)は、上記プレチスモグラムの1階微分、(c)は、血圧値の実測値(Measured)を実線で、上記プレチスモグラムと、上記プレチスモグラムの1階微分とにより算出されて評価された血圧値の評価値(Estimated)を破線にて示す。
【図10】上記血管状態測定装置での動脈の力学特性を定量的に評価できることを、血管弛緩剤の投与量を代えて示した結果のグラフであり、(a)はKバー(剛性)、(b)はBバー(粘性)を示す。
【符号の説明】
【0061】
1 被験者
1a 前腕(動脈を含む部分)
1b 動脈
2 心電図計(心電図出力手段)
3 プレチスモグラフィー装置(外周長さ測定手段)
4 血圧計(血圧値検出手段)
5 コンピュータ部(状態算出手段)

図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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