TOP > 国内特許検索 > アシアロGM1発現細胞検出試薬、これを用いた細胞検出方法および細胞分類方法並びに老化測定方法 > 明細書

明細書 :アシアロGM1発現細胞検出試薬、これを用いた細胞検出方法および細胞分類方法並びに老化測定方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4411438号 (P4411438)
公開番号 特開2007-010625 (P2007-010625A)
登録日 平成21年11月27日(2009.11.27)
発行日 平成22年2月10日(2010.2.10)
公開日 平成19年1月18日(2007.1.18)
発明の名称または考案の名称 アシアロGM1発現細胞検出試薬、これを用いた細胞検出方法および細胞分類方法並びに老化測定方法
国際特許分類 G01N  33/53        (2006.01)
C12Q   1/02        (2006.01)
G01N  21/78        (2006.01)
G01N  33/48        (2006.01)
G01N  33/536       (2006.01)
G01N  33/543       (2006.01)
G01N  33/564       (2006.01)
FI G01N 33/53 S
G01N 33/53 Y
C12Q 1/02
G01N 21/78 C
G01N 33/48 P
G01N 33/536 D
G01N 33/543 597
G01N 33/564
請求項の数または発明の数 6
全頁数 13
出願番号 特願2005-195231 (P2005-195231)
出願日 平成17年7月4日(2005.7.4)
審査請求日 平成18年9月29日(2006.9.29)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504145364
【氏名又は名称】国立大学法人群馬大学
発明者または考案者 【氏名】江本 正志
個別代理人の代理人 【識別番号】100093230、【弁理士】、【氏名又は名称】西澤 利夫
審査官 【審査官】三木 隆
参考文献・文献 特表2004-531263(JP,A)
国際公開第00/010383(WO,A1)
日本臨床,1985年,Vol.43 No.Shuki Zokan Jokan 臨増,Page.736-740
Eur J Immunol ,2000年,Vol.30 No.10, Page.3049-3056
家畜生化学研究会報,1989年,No.23
Investigation of cross-reactivity between commercially available antibodies directed against human, mouse, and rat lymphocyte surface antigens and surface markers on canine cells.,Vet Immunol Immunopathol. 1987 Jul;15(4):285-96.,1987年
Identification of functional subpopulations of murine natural killer cells based on their cell surface asialo GM1 phenotype.,Cell Immunol. 1985 Dec;96(2):386-97.,1985年
調査した分野 G01N 33/53
C12Q 1/02
G01N 21/78
G01N 33/48
G01N 33/536
G01N 33/543
G01N 33/564
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
異なる臓器からそれぞれ個別に調製した細胞集団から、アシアロGM1をそれぞれ発現するナチュラルキラー細胞(NK細胞)、ナチュラルキラーT細胞(NKT細胞)およびT細胞を分別して検出する方法であって、少なくとも以下の工程:
<1>細胞集団に抗アシアロGM1ポリクローナル抗体を接触させる工程;
<2>前記抗アシアロGM1ポリクローナル抗体に、二次抗体として、抗アシアロGM1ポリクローナル抗体を認識し結合する標識抗体を接触させる工程;
<3>前記標識抗体を検出する検出物質を添加する工程;
<4>前記細胞を固定する工程;および
<5>抗アシアロGM1ポリクローナル抗体が結合した細胞をフローサイトメーターまたは免疫組織染色で解析し、アシアロGM1発現パターンの違いによって、各臓器のNK細胞、NKT細胞およびT細胞を分別して検出する工程;
を含むことを特徴とする細胞検出方法。
【請求項2】
標識抗体は、蛍光物質標識抗体、生体性結合成分標識抗体および酵素標識抗体の少なくともいずれかである請求項の細胞検出方法。
【請求項3】
異なる臓器からそれぞれ別個に調製した細胞集団から、アシアロGM1をそれぞれ発現するナチュラルキラー細胞(NK細胞)、ナチュラルキラーT細胞(NKT細胞)およびT細胞を分別して検出する方法であって、少なくとも以下の工程:
<1>細胞集団に、そのFc部位に標識修飾を施された標識修飾抗アシアロGM1ポリクローナル抗体を接触させる工程;
<2>前記標識修飾抗アシアロGM1ポリクローナル抗体を検出する、検出物質を添加する工程;
<3>前記細胞を固定する工程;および
<4>抗アシアロGM1ポリクローナル抗体が結合した細胞をフローサイトメーターまたは免疫組織染色で解析し、アシアロGM1発現パターンの違いによって、各臓器のNK細胞、NKT細胞およびT細胞を分別して検出する工程;
を含むことを特徴とする細胞検出方法。
【請求項4】
標識修飾は、蛍光物質、生体性結合成分および酵素の少なくともいずれかによるものである請求項の細胞検出方法。
【請求項5】
請求項からいずれかの細胞検出方法によって検出された、アシアロGM1発現細胞の発現パターンの違いに基づいて、このアシアロGM1発現細胞がいずれの臓器に由来するNK細胞、NKT細胞またはT細胞であるかを分類することを特徴とする細胞分類方法。
【請求項6】
請求項からのいずれかの細胞検出方法によって検出されたNK細胞、NKT細胞およびT細胞の少なくとも一つの細胞のアシアロGM1の発現量が、若年個体の当該細胞のアシアロGM1発現量より増加している場合に、その細胞が由来する個体が加齢個体であると判定することを特徴とする老化判定方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本願発明は、アシアロGM1発現細胞検出試薬に関するものであり、これを用いた細胞検出方法および細胞分類方法並びに老化測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アシアロGM1(アシアロガングリオシド)は、ガングリオシド(シアル酸を構成糖とするスフィンゴ糖脂質の総称)よりシアル酸残基がはずれたもので、糖脂質の一種である。
このアシアロGM1は、ガン疾患をはじめ、自己免疫疾患や神経疾患等に関与している、具体的にはこれら疾患と関わっている細胞に発現していることが解明されつつある。そして、各種疾患の検査にアシアロGM1をマーカーとして利用することが考慮されている。たとえば、アシアロGM1を検出して定量測定することで、ガン診断に利用する方法が提案されていたり(特許文献1参照)、また、腸管障害の検査に利用する検査方法も提案されている(特許文献2参照)。
【0003】
この特許文献1記載の測定方法は、抗アシアロGM1抗体を用いた免疫測定であり、細胞のガン化に伴って増加するアシアロGM1を検出・定量することで、ガン診断に活用している。また、特許文献2記載の検査方法においては、マウスの糞便中のアシアロGM1とフコシルアシアロGM1の含量を、抗アシアロGM1抗体と抗フコシルアシアロGM1抗体を利用した薄層クロマトグラフィ免疫染色法で測定することで、腸管障害を検査している。
【0004】
ところで、疾患の進行度(病態)を診断するために、たとえば、腫瘍疾患(ガン疾患)におけるパパニコロ染色による分類のように、細胞の分化の度合いや形状変化の度合い等を基に、疾患に関与する細胞を分類することが知られている。

【特許文献1】特開平3-115863号公報
【特許文献2】特開平6-265542号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1および2記載の方法は、いずれもアシアロGM1を発現する細胞を検出することを目的としておらず、単に、アシアロGM1の含量を測定して、その含量に基づいてガンもしくは腸管障害を診断しているだけである。すなわち、各種の疾患に関与する細胞(たとえば、NK細胞やNKT細胞等)に発現しているといわれているアシアロGM1を検出する方法は開発されていないのが実状であり、疾患についての新たな知見を得ることはできないという問題があった。
【0006】
また、上記特許文献1、2記載のような方法は、腫瘍疾患(ガン疾患)もしくは腸管障害のみを対象にした診断・検査であり、その他の疾患、特に自己免疫疾患や神経疾患を迅速、かつ、簡単に診断する方法についても、依然として、開発されていないのが実状であった。さらに、これら特許文献1および2記載の方法では、ともにモノクローナル抗体を利用しており、抗原表面にある多種の抗原認識部位と結合して強力に抗原を特定することが期待することができるポリクローナル抗体を用いた診断・検査方法ではない。
【0007】
さらに、従来のパパニコロ染色による分類のような細胞分類方法では、より多種類の疾患を対象にして細胞分類することができず、疾患の進行度(病態)を判断することはできないという問題があった。
【0008】
そこで、本願発明は、以上のとおりの背景から、従来の問題点を解決すべく、ポリクローナル抗体を用いた、簡単にアシアロGM1を発現する細胞を検出できるアシアロGM1発現細胞検出試薬を提供することを課題とし、また、このアシアロGM1発現細胞検出試薬を用いることで、効率よくアシアロGM1発現細胞を検出し、特定することができ、各種の疾患、たとえば、自己免疫疾患、神経疾患、感染疾患、腫瘍疾患等の診断もできる新しい検出方法、この検出結果を基に、効率よく細胞を分類することで、アシアロGM1が関与する細胞を分類することができ、その細胞が関与する多種類の疾患の進行度(病態)を判断することができる、新しい細胞分類方法を提供することも課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明は、前記の課題を解決するものとして、第1には、細胞が発現しているアシアロGM1を特異的に認識し結合する抗アシアロGM1ポリクローナル抗体を有効成分として含有してなることを特徴とする。
【0010】
また、本願発明は、第2には、上記第1の発明を用いた細胞検出方法であって、少なくとも以下の工程:
<1>検体に含まれる検出対象の細胞に抗アシアロGM1ポリクローナル抗体を接触させる工程;
<2>前記抗アシアロGM1ポリクローナル抗体に、二次抗体として、抗アシアロGM1ポリクローナル抗体を認識し結合する標識抗体を接触させる工程;
<3>前記標識抗体を検出する検出物質を添加する工程;
<4>前記細胞を固定する工程;および
<5>抗アシアロGM1ポリクローナル抗体の結合の有無を基に、前記細胞におけるアシアロGM1の発現の有無をフローサイトメーターまたは免疫組織染色で検出する工程;
を含むことを特徴とし、第3には、検出対象の細胞は、疾患由来の細胞であり、第4には、疾患は、自己免疫疾患、神経疾患、感染疾患および腫瘍疾患の少なくともいずれかであることを特徴とし、第5には、標識抗体は、蛍光物質標識抗体、生体性結合成分標識抗体および酵素標識抗体の少なくともいずれかであることを特徴とする。
【0011】
さらに、本願発明は、第6には、上記第1の発明を用いた細胞検出方法であって、抗アシアロGM1ポリクローナル抗体は、Fc部位で標識修飾を施されており、少なくとも以下の工程:
<1>検体に含まれる検出対象の細胞に標識修飾抗アシアロGM1ポリクローナル抗体を接触させる工程;
<2>前記標識修飾抗アシアロGM1ポリクローナル抗体を検出する、検出物質を添加する工程;
<3>前記細胞を固定する工程;および
<4>前記細胞におけるアシアロGM1の発現の有無を、フローサイトメーターまたは免疫組織染色で検出する工程;
を含むことを特徴とし、第5には、標識修飾は、蛍光物質、生体性結合成分および酵素の少なくともいずれかによるものであることを特徴とする。
【0012】
第7には、検出対象の細胞は、疾患由来の細胞であり、第8には、疾患は、自己免疫疾患、神経疾患、感染疾患および腫瘍疾患の少なくともいずれかであることを特徴とし、第9には、標識修飾は、蛍光物質、生体性結合成分および酵素の少なくともいずれかによるものであることを特徴とする。
【0013】
さらにまた、本願発明は、第10には、前記第2から第9いずれかの発明によって検出された、アシアロGM1発現細胞の分化の度合い、活性の度合い、形状変化の度合いの少なくともいずれかを判定し、この判定結果を基に細胞を分類することを特徴とする。
【0014】
そして、本願発明は、第11には、前記第2から第9いずれかの発明によって検出された、アシアロGM1発現細胞を基にアシアロGM1の発現の増減を測定し、この測定結果を基に老化度合いを測定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本願第1の発明によれば、簡単にアシアロGM1を発現する細胞を検出することができる。
【0016】
また、第2から第9の発明によれば、効率よくアシアロGM1発現細胞を検出し、特定することができ、また、各種疾患をも診断することができる。
【0017】
さらに、第10の発明によれば、効率よく細胞を分類することで、アシアロGM1が関与する細胞を分類することができ、その細胞が関与する多種類の疾患の進行度(病態)を判断することができる。
【0018】
そして、第11の発明によれば、効率よく細胞の老化度合いを測定することで、細胞が構成する器官や組織、ひいては生体個体の老化の度合いをも測定、判断することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本願発明は、上記のとおりの特徴をもつものであるが、以下にその実施の形態について詳しく説明する。
【0020】
本願発明は、各種の疾患、たとえば、自己免疫疾患や神経疾患、感染疾患、腫瘍疾患等に関わる細胞(具体的には、たとえば、免疫担当細胞であるナチュラルキラー細胞(NK細胞)や、一部のナチュラルキラーT細胞(NKT細胞)並びにある種のT細胞等)に発現するアシアロGM1(アシアロガングリオシド)を、特異的に認識し、結合する抗アシアロGM1ポリクローナル抗体を有効成分として含有してなる、アシアロGM1発現細胞検出試薬である。
【0021】
そして、本願発明は、このアシアロGM1発現細胞検出試薬を用いて、アシアロGM1を発現する細胞を検出することができる。具体的には、少なくとも以下の工程:
<1>たとえば、ヒトやサル、マウス、ラット、ヒツジ、ウマ等の生体から公知の方法で、たとえば、血液や尿、組織等を採取し、必要に応じて前処理を行って希釈調整した検体に含まれる検出対象の細胞に、抗アシアロGM1ポリクローナル抗体を接触させる工程;
<2>前記抗アシアロGM1ポリクローナル抗体に、二次抗体として、抗アシアロGM1ポリクローナル抗体を認識し結合する標識抗体を接触させる工程;
<3>前記標識抗体を検出する検出物質を添加する工程;
<4>前記細胞を、パラホルムアルデヒド等を含有する固定液で、固定する工程;および
<5>抗アシアロGM1ポリクローナル抗体の結合の有無を基に、前記細胞におけるアシアロGM1の発現の有無をフローサイトメーターまたは免疫組織染色で検出する工程;
を実施することで、効率よくアシアロGM1発現細胞を検出し、特定することができる。
【0022】
このとき、検出対象の細胞は、疾患由来の細胞とすることで、上記のとおり、各種の疾患を診断することができる。特に、関節リウマチ等の自己免疫疾患や、神経痛やギランバレー症候群等の神経疾患、ウイルスや細菌による感染疾患、ガン等の腫瘍疾患の診断を効率よく行うことができる。なお、診断対象可能な疾患は、アシアロGM1発現細胞が関与するものであれば特に制限されない。
【0023】
また、標識抗体は、各種のものが使用できるが、蛍光物質標識抗体、生体性結合成分標識抗体および酵素標識抗体等が使用できる。具体的には、たとえば、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)標識抗体、フィコエリスリン(PE)標識抗体、ビオチン標識抗体およびペルオキシダーゼ標識抗体が、その扱い易さや検出感度等の観点から好ましく、そして、この標識抗体の種類によって、検出物質を適宜に使用する。検出物質としては、たとえば、ビオチン標識抗体の場合はストレプトアビジンを、ペルオキシダーゼ標識抗体の場合は基質としてo-フェニレンジアミン等を使用する。また、もちろん、上記標識抗体は、緑色蛍光タンパク質や赤色蛍光タンパク質等の蛍光タンパク質、放射線物質、また、サマリウム、ユウロピウム、テルビウム等のランタノイド等によって標識された抗体も使用することができ、特に限定されるものではない。
【0024】
本願発明の検出方法においては、別の実施形態として、Fc部位で標識修飾を施された抗アシアロGM1ポリクローナル抗体を用いて、検出することもできる。その際の工程としては、基本的には上記検出方法と同様であるが、「二次抗体」を使用する必要がない点で相違する。具体的に説明すると、少なくとも以下の工程:
<1>ヒトやサル、マウス、ラット、ヒツジ、ウマ等の生体から採取した検体に含まれる検出対象の細胞に、標識修飾抗アシアロGM1ポリクローナル抗体を接触させる工程;
<2>前記標識修飾抗アシアロGM1ポリクローナル抗体を検出する、検出物質を添加する工程;
<3>前記細胞を固定する工程;および
<4>前記細胞におけるアシアロGM1の発現の有無を、フローサイトメーターまたは免疫組織染色で検出する工程;
の工程で、アシアロGM1発現細胞を検出することができる。
【0025】
そして、このときの検出対象の細胞は、上記検出方法と同様に、疾患由来の細胞とすることで、各種の疾患を診断することができる。特に、関節リウマチ等の自己免疫疾患や、神経痛やギランバレー症候群等の神経疾患、ウイルスや細菌による感染疾患、ガン等の腫瘍疾患の診断を効率よく行うことができる。
【0026】
また、標識修飾についても、上記標識抗体の場合と同様に、蛍光物質標識抗体、生体性結合成分標識抗体および酵素等が使用でき、具体的には、たとえば、フルオレセインイソチオシアネート、フィコエリスリン、ビオチンおよびペルオキシダーゼ等が、扱い易さや検出感度等の観点から好ましく、効率よく、標識修飾抗アシアロGM1ポリクローナル抗体を検出することができる。もちろん、緑色蛍光タンパク質や赤色蛍光タンパク質等の蛍光タンパク質、放射性物質、また、サマリウム、ユウロピウム、テルビウム等のランタノイド等によっても標識修飾することができ、特に限定されるものではない。また、これら標識修飾によって、検出物質を適宜に使用する。たとえば、ビオチンによる標識修飾の場合はストレプトアビジンを、ペルオキシダーゼによる標識修飾の場合は基質としてo-フェニレンジアミンを使用することで基質を発色させ、検出することができる。
【0027】
本願発明の検出方法における「フローサイトメーター」について説明すると、フローサイトメーターは、個々の細胞の相対的なサイズ、形状、また、内部構造の違い、さらには、蛍光標識等を行うことで蛍光強度や蛍光の種類を測定して細胞の同定や細胞群を構成する種々の細胞の存在比を短時間で解析することができることを特徴としている。本願発明の検出方法は、このような特徴を利用し、かつ、アシアロGM1発現細胞検出試薬を用いることで、アシアロGM1発現細胞を効率よく検出するものである。
【0028】
また、本願発明の検出方法では、「免疫組織染色」を利用することでも、アシアロGM1発現細胞を効率よく検出することができる。この「免疫組織染色」について説明すると、免疫組織染色は、一般に、抗原-抗体反応という特異的な結合反応を利用して、目的とする蛋白質の細胞内外および組織内の局在を検出する手法である。その方法としては、大きく分けて「直接法」と「間接法」の2つがあり、直接法は、抗原に対する特異的抗体である一次抗体に酵素や蛍光物質を直接結合させて検出する方法であり、間接法は、一次抗体に対する抗体である二次抗体を用いて可視化する方法である。本願発明は、この直接法、間接法そのどちらでも活用することができる。そして、免疫組織染色では、通常、臓器等の生体試料から病理切片を作成してこの切片を試料とすることから、本願発明の検出方法において、免疫組織染色を利用することで、アシアロGM1の組織内分布の検索も可能となる。
【0029】
なお、上記検出方法において、各工程において、抗体の非特異的な結合の防止や、未結合の余剰分な抗体等の洗浄のために、必要に応じて、洗浄液としてリン酸緩衝液やトリス緩衝液等を用いて洗浄操作を行ってもよい。また、このような洗浄液に、Tween-20(登録商標)やTriton-X(登録商標)、硫酸ドデシルナトリウム(SDS)等の界面活性剤、また、ブロッキング剤としてスキムミルクやウシ血清アルブミン(BSA)等をさらに含有させてもよい。
【0030】
そして、上記検出方法において、基質の発色による検出の場合には、たとえば、吸光度測定器、分光光度計や蛍光測定器、マルチラベルカウンター等で検出することもできる。また、ペルオキシダーゼ等による発色系の場合には、必要に応じて、発色停止剤を添加し、基質の発色反応を停止してもよい。この発色停止剤は、標識物質と基質の発色反応系に合わせて適宜に選択する。たとえば、標識物質がペルオキシターゼで、基質がo-フェニレンジアミンである発色反応系の場合には、塩酸を利用して発色を停止させることができる。
【0031】
本願発明における抗アシアロGM1ポリクローナル抗体は、たとえば、精製アシアロGM1で抗原感作させたラットやマウス、ウサギ、ヒツジ、ヤギ等の動物から採血し、血清を分離採取したものを硫酸アンモニウムにて塩析後、リン酸緩衝液(PBS)に透析して、抗原アフィニティーカラム等でγグロブリン分画を取得したりする。このようにして、抗アシアロGM1ポリクローナル抗体を作成することで、抗原認識部位の異なるIgG分子が多数含まれ、多種の抗原認識部位と結合して強力に抗原を特定することができる。
【0032】
一般に、ポリクローナル抗体と比べ、モノクローナル抗体には以下の問題がある。すなわち、(1)モノクローナル抗体は、結合性の弱い抗体しか得ることができない場合があり、検出感度が低下する可能性があった。また、(2)モノクローナル抗体には交差反応を示すものもあるため、この場合は、結合性の強い抗体であっても正確性を欠くことが予想できる。さらに、(3)モノクローナル抗体作製には多くの時間とコストを要すること、および、免疫原となるアシアロGM1は、正常マウスにとって自己成分であることから、通常の方法による抗アシアロGM1モノクローナル抗体の大量生産は困難であった。このような問題を解消するため、本願発明における抗アシアロGM1抗体はポリクローナル抗体を使用している。
【0033】
本願発明は、さらに、上記にて説明した細胞検出方法によって検出された、アシアロGM1発現細胞を、その分化の度合い、活性の度合い、形状変化の度合いの少なくともいずれかを判定することで、細胞を分類することもできる。たとえば、アシアロGM1発現細胞としては、免疫担当細胞であるナチュラルキラー細胞(NK細胞)やナチュラルキラーT細胞(NKT細胞)等が挙げることができるが、このNK細胞とNKT細胞を検出して、分化の度合い、活性の度合い、形状変化の度合いを基に、両者を効率よく分類することができる。そして、アシアロGM1が関与する種々の細胞を分類することができ、その細胞が関与する多種類の疾患の進行度(病態)をも判断することができる。
【0034】
そして、本願発明は、上記にて説明した細胞検出方法によって検出されたアシアロGM1発現細胞を基にして、アシアロGM1の発現の増減を測定し、この測定結果を基に細胞の老化度合いを測定することをも可能としている。このような特徴を有する、細胞老化度合い測定方法によって、効率よく細胞の老化度合いを測定することで、細胞が構成する器官や組織、ひいては生体個体の老化の度合いをも測定、判断することができる。
【0035】
以下に実施例を例示し、さらに詳しく本願発明について説明する。もちろん、以下の例によって発明が限定されることはない。
【実施例】
【0036】
実施例1:フローサイトメーターを利用した、アシアロGM1の検出
(1) 8週齢のメスのC578L/6マウス、または、同週齢、同性、同系の胸腺摘出マウス(あるいは無胸腺マウス:ヌードマウス)の肝臓、脾臓、腸管、リンパ節、骨髄、胸腺を採取した。
(2) これら各臓器から細胞分離用メッシュおよびパーコール等を用いて白血球系細胞を分難した。各細胞は10%ウシ胎児血清含有のRPMI 1640培地(100μg/mLストレプトマイシン、100 U/mLペニシリン、5×10-8 Mの2-メルカプトエタノール含有)に、1×10個/mLの濃度になるように調製し、これを染色に供した。
(3) 96穴V底プレート(Nunk社製)に調製した、各細胞を1~2×10個/wellずつ分注し、遠心処理を行ない、細胞を回収した。上清除去後、ブロッキング試薬を、50μL/well加え、ピペッティングして細胞を浮遊させた。
(4) 次に、4℃で15分間インキュベーションし、ブロッキング反応を完了させた。遠心処理をして、上清を除去した後、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)、ナチュラルキラーT細胞(NKT細胞)等のアシアロGM1陽性細胞(アシアロGM1発現細胞)を検出するため、ウサギ由来の抗アシアロGM1ポリクローナル抗体(和光純薬社製)を有効成分とし、PE(phycoerythrin;フィコエリスリン)標識抗CD3ε抗体(BD PharMingen社製)、および、ビオチン標識抗NK1.1抗体(BD PharMingen社製)を含む混合溶液を、50μL/wellずつ添加し、ピペッティングして細胞を浮遊させた後、4℃で15分間インキュベーションを行った。
(5) そして、0.1%窒化ナトリウムおよび0.1%ウシ血清アルブミン含有リン酸緩衝生理的食塩液(以下、染色バッファーとする)を100μL/well加えて遠心し、上清を除去した。
【0037】
過剰な未反応の上記標識抗体を除去洗浄するため、染色バッファー150μL/wellを添加し、ピペッティングして細胞を浮遊させ、遠心および上清除去を行った。
(6) 洗浄操作後、抗アシアロGM1ポリクローナル抗体を検出するために、FITC標識抗ウサギIgG抗体を50μL/wellずつ添加した。ピペッティングして細胞を浮遊後、4℃で15分間インキュベーションを行った。染色バッファーを100μL/well加えて遠心し、上清を除去した。過剰な未反応の標識抗体を除くため、染色バッファー150μL/wellを添加し、ピペッティングして細胞を浄遊させた後、遠心および上清除去の操作を行った。
(7) ビオチン標識抗体を検出するために、ストレプトアビジン結合Cychrome(SA-Cychrome;BD PharMingen社製)を50μL/well添加し、ピペッティングして細胞を浄遊させた後、4℃で15分間インキュベーションし、ビオチン-ストレプトアビジン複合体形成反応を行った。インキュベーション後、染色バッファー100μL/wellを加えて遠心し、上清を徐去した。過剰な未反応のSA-Cychromeを洗浄除去するため、染色バッファー150μL/wellを添加し、ピペッティングして細胞を浮遊させ、遠心および上清除去の操作を行った。
(7) そして、細胞を固定するために1%パラホルムアルデヒド含有のリン酸緩衝液を200μL/Well加えてピペッティングし、浮遊させた細胞を回収して、これをフローサイトメーター(BD Biosciences社製)にて細胞表面上のアシアロGM1、CD3、および、NK1.1の検出を行った。
(8) その結果、図1(A)(B)(C)および図2(A)(B)に示したとおり:
<1>NK細胞、NKT細胞、T細胞上のアシアロGM1の発現は臓器の由来により大きく異なること、
<2>NK細胞上のアシアロGM1の発現は胸腺により大きく影響を受けること、
<3>アシアロGM1の発現と、NK1.1の発現には正の相関牲が認められること、および
<4>これまでアシアロGM1はNK細胞にのみ発現されていると考えられていたが、一部のNKT細胞並びにある種のT細胞上にもアシアロGM1が発現していること、
が確認することができたことから、本願発明によってアシアロGM1発現細胞の検出することができた。
【0038】
なお、図1、2中の「liver」は肝臓を、「BM」は骨髄を、「spleen」は脾臓を示した。また、図2中の「C57BL/6」は胸腺を有する正常マウス、「nu/nu」は無胸腺であるヌードマウスを示した。
【0039】
この結果から、本願発明のアシアロGM1発現細胞検出試薬を用いることによって、簡単にアシアロGM1を発現する細胞を検出することができた。また、細胞のアシアロGM1の発現は臓器の由来により大きく異なることを考慮すると、アシアロGM1発現細胞の分化の度合い、活性の度合い、形状変化の度合いを測定することで、効率よくアシアロGM1が関与する細胞を分類することができ、その細胞が関与する多種類の疾患の進行度(病態)を判断することができる。
実施例2:マウスの加齢とアシアロGM1の発現の変化の検討
(1) 実施例1と同様の手順、試薬、実験条件で、マウスの加齢とアシアロGM1の発現の変化について、8週齢のアダルトマウス、7月齢および9月齢の老齢マウスを用いて行った。なお、胸腺は、通常、加齢とともに萎縮することから、老齢の生体個体(本実施例ではマウス)では、胸腺は殆ど消失し、胸腺のない状態となっている。
(2) 図3(A)(B)に示したとおり、結果は:
<1>マウスの加齢に伴い、ある種のT細胞のアシアロGM1の発現が増加すること、
<2>また、NK細胞上のアシアロGM1の発現は、加齢とともに増加すること、および
<3>加齢に伴い増加するアシアロGM1の発現は、胸線により大きく影響を受けることから、胸腺のない状態ではアシアロGM1の発現が増強すること、
を確認することができた。すなわち、生体個体の老齢化に伴い胸腺が萎縮した場合には、アシアロGM1の発現が増強されることを確認することができた。
【0040】
図3中の「CD3-NK1+」はナチュラルキラー細胞、「CD3+NK1+」はナチュラルキラーT細胞、「CD3+NK1-」はT細胞を示している。また、老齢正常マウス(C57BL/6:7月齢、9月齢)および老齢ヌードマウス(nu/nu)におけるコントロールマウスは、8週齢の正常マウス(C57BL/6)を用いた。
【0041】
この結果から、本願発明による抗アシアロGM1抗体を有効成分とするアシアロGM1発現細胞検出試薬は、従来のように生体内におけるNK細胞の除去だけでなく、細胞分類法、疾患の診断等に応用することができる。
【0042】
さらに、この結果は、アシアロGM1が生体の老化のバロメーターになり得ることを示しており、本願発明のアシアロGM1発現細胞検出試薬を用いることで、簡単に、かつ、効率よく、細胞が構成する器官や組織、ひいては生体個体の老化の度合いを測定することをも可能なことを示している。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】正常マウス(C57BL/6:8週齢)の各臓器(Liver:肝臓、BM:骨髄、Spleen:脾臓)に存在する各種の細胞上のアシアロGM1の発現頻度を示した図であり、(A)はナチュラルキラー(CD3-NK1+)細胞上、(B)はナチュラルキラーT(CD3+NK1+)細胞上、(C)はT(CD3+NK1-)細胞上を示している。
【図2】胸腺を有する正常マウス(C57BL/6:8週齢)と、胸腺を有さないヌードマウス(nu/nu No.1、 No.2:8週齢)の各臓器に存在するナチュラルキラー(CD3-NK1+)細胞上のアシアロGM1の発現頻度を示した図であり、(A)はLiver:肝臓、(B)はBM:骨髄と、Spleen:脾臓を示している。
【図3】胸腺を有する老齢正常マウス(C57BL/6:7月齢、9月齢)と、胸腺を有さない老齢ヌードマウス(nu/nu No.1、 No.2、No.3)の肝臓に存在する各種の細胞(ナチュラルキラー(CD3-NK1+)細胞、ナチュラルキラーT(CD3+NK1+)細胞、T(CD3+NK1-)細胞)上のアシアロGM1の発現頻度を示した図であり、(A)は老齢正常マウス、(B)は老齢ヌードマウスを示している。なお、8週齢のマウスは、老齢正常マウスと老齢ヌードマウスそれぞれのコントロールである。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2