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明細書 :平板加工情報の取得方法および平板加工方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4899039号 (P4899039)
公開番号 特開2006-263751 (P2006-263751A)
登録日 平成24年1月13日(2012.1.13)
発行日 平成24年3月21日(2012.3.21)
公開日 平成18年10月5日(2006.10.5)
発明の名称または考案の名称 平板加工情報の取得方法および平板加工方法
国際特許分類 B21D  11/20        (2006.01)
FI B21D 11/20 B
請求項の数または発明の数 3
全頁数 11
出願番号 特願2005-082504 (P2005-082504)
出願日 平成17年3月22日(2005.3.22)
審査請求日 平成19年9月18日(2007.9.18)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504174135
【氏名又は名称】国立大学法人九州工業大学
発明者または考案者 【氏名】秋山 哲也
【氏名】寺崎 俊夫
個別代理人の代理人 【識別番号】100112771、【弁理士】、【氏名又は名称】内田 勝
審査官 【審査官】内藤 真徳
参考文献・文献 特開2004-074200(JP,A)
秋山哲也ほか,曲面の平面展開に伴う面内ひずみの離散的計算方法,溶接構造シンポジウム2004講演論文集,日本,社団法人 溶接学会 溶接構造研究委員会,2004年11月,415-420頁
調査した分野 B21D 11/20
特許請求の範囲 【請求項1】
曲面形状を有する板材を平板から成形するのに必要な平板加工情報の取得方法において、
目的の曲面形状を関数化する第1の工程と、
第1の工程に引き続き、関数化された曲面に対し測地線を描く第2の工程と、
第2の工程に引き続き、平面上で平行な条件を満たす測地線上での間隔の変化から面内ひずみ分布を求める第3の工程と、
第3の工程に引き続き、目的の曲面形状を得るための主曲率分布および初期曲率分布を求める第4の工程と、
有することを特徴とする平板加工情報の取得方法。
【請求項2】
第4の工程に引き続き、主曲率分布および初期曲率分布の差分から追加する曲率分布を求める第5の工程をさらに有することを特徴とする請求項1記載の平板加工情報の取得方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の平板加工情報の取得方法により得られる平板加工情報に基づいて曲面形状を有する板材を平板から成形することを特徴とする平板加工方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、造船の外板の成形手順の決定等に利用することができる、曲面形状を有する板材を平板から成形するのに必要な平板加工情報の取得方法および平板加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば船舶の船殻の一部や航空機、列車等の外殻は曲面形状を呈しており、これら曲面を形成するに際しては、従来、曲面形状を特定の方法によって平面に展開した展開図が描かれ、高度の熟練と経験を持つ技能者の経験と勘によって、例えば線状加熱による曲面形成加工が行われてきた。
【0003】
近年、板材にひずみを与えた後の変形形状が数値計算シミュレーションによって求められることを利用して、最適な問題として付加ひずみと変形の関係を取り扱うことが行われている。
一方、平板材料を線状加熱によって目的とする曲面に形成するに際し、曲げ加工後の仕上げ切断を不要にすべく、正確な板取をするために、予め個々の線状加熱の固有ひずみ、固有変形を求めてデータベースとして蓄積しておき、目的とする曲面形状が与えられた時点で曲げ加工を遂行する線状加熱方法を策定したうえで、生成固有ひずみ分布目的曲面形状に付加して自由に変形させるFEM(有限要素法)弾性シミュレーションを行って曲面を平面形状に展開する方法が知られている(例えば特許文献1参照。)。
また、本発明者らは、測地線を用いた面内歪の求め方を開示している(例えば、非特許文献1参照。)。

【特許文献1】特開2000-237826号公報
【非特許文献1】秋山哲也、外1名、「曲面の平面展開に伴う面内ひずみの離散的計算方法」溶接構造シンポジウム2004、(2004.11)講演論文集 p.415-420
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術においては、目的とする曲面形状を得るための加工方法(加工法案)が非常に複雑であった。また、曲面形成に要求される面内ひずみの方向として複数の方向が必要であり、このため、現実には非常に困難な加工法案であったり、大型変形に対応し難かったりする問題が残されていた。また、熟練工の作業手順と大きく異なっていた。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、熟練工が行う作業手順をできるだけ再現することができる平板加工情報の取得方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る平板加工情報の取得方法は、
曲面形状を有する板材を平板から成形するのに必要な平板加工情報の取得方法において、
目的の曲面形状を関数化する第1の工程と、
第1の工程に引き続き、関数化された曲面に対し測地線を描く第2の工程と、
第2の工程に引き続き、平面上で平行な条件を満たす測地線上での間隔の変化から面内ひずみ分布を求める第3の工程と、
第3の工程に引き続き、目的の曲面形状を得るための主曲率分布および初期曲率分布を求める第4の工程と、
有することを特徴とする。
又、本発明に係る平板加工情報の取得方法は、好ましくは、第4の工程に引き続き、主曲率分布および初期曲率分布の差分から追加する曲率分布を求める第5の工程をさらに有することを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る平板加工方法は、上記の平板加工情報の取得方法により得られる平板加工情報に基づいて曲面形状を有する板材を平板から成形することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る平板加工情報の取得方法は、関数化された曲面に対し測地線を描く工程と、平面上で平行な条件を満たす測地線上での間隔の変化から面内ひずみ分布を求める工程と、 目的の曲面形状を得るための主曲率分布および初期曲率分布を求める工程と、主曲率分布および初期曲率分布の差分から追加する曲率分布を求める工程と、を有するため、熟練工が行う作業手順をできるだけ再現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の実施の形態について、以下に説明する。
【0010】
船舶の外板など曲面を平板から成形するには、(1)平板上への展開図の描画(現図展開)と、(2)ローラやプレス、ぎょう鉄と呼ばれる加熱による曲げ加工の2つの工程が行われる。もともと平面ではない形状に、曲げ変形、捩れ変形、伸びや縮み変形などを加えて平坦にならした展開図形を、改めて曲げ、捩れ、伸び縮みなどを逆向きに加えて曲面に再構築するわけであるから、曲面を平面に展開したときに加えた変形量が正確に分かっていなければもとの形には戻せない。
この展開に必要な変形量の定量化は一般に困難とされている。特に伸び縮み変形に分類される面内変形量はその定量化が困難である。面内変形量が正確でなかった場合には、例えば球面上に紙を貼ったときのように、必ずどこかに「しわ」がよってしまう(図2および図3参照)。「しわ」の量的な分布を知ることができ、これを予め取り除いておくことができれば、きれいな曲面を成形できることになる。
【0011】
本発明では、コンピュータ内で曲面が取り扱えるように、(1)曲面を数式で近似する機能、(2)近似した曲面にコンピュータ内で紙を貼る機能、(3)「しわ」の寸法を測る機能を備えたコンピュータシステムを構築して、曲面を数学的にかつ機械的に取り扱う。
【0012】
すなわち、本発明に係る平板加工情報の取得方法は、目的の曲面形状を関数化する工程と、関数化された曲面に対し測地線を描く工程と、平面上で平行な条件を満たす測地線上での間隔の変化から面内ひずみ分布を求める工程と、目的の曲面形状を得るための主曲率分布および初期曲率分布を求める工程と、主曲率分布および初期曲率分布の差分から追加する曲率分布求める工程と、を有する。
【0013】
本発明に係る平板加工情報の取得方法について、図1のフローチャートを参照して、さらに説明する。
まず、例えば船舶の船殻の一部となる外殻の面形状、すなわち、目的の曲面形状を関数化し、目的曲面形状を付与する(図1中、S10)。
目的の曲面形状として、例えば、図形情報から離散的な空間座標を受け取り、z=z(x、y)の形式で曲面を近似する。このとき、関数には、例えばシグモイド関数を利用したニューラルネットワークを用い、曲面上の(x、y)座標の入力に対しz座標が出力となるよう学習させる。これにより、コンピュータに(x、y)座標を与えると、曲面上のz座標がわかる。

【0014】
つぎに、関数化された曲面上に、以下の要領で測地線を描く。すなわち、測地線による幹線の離散的描画を行い(図1中、S12)、さらに、測地線による枝線の離散的描画を行う(図1中、S14)。
先に説明した球面上に紙を貼ったときで言えば、例えば、図2に示す例では、まず辺ABを球面上に貼り、つづいてAD、BCなど縦方向に伸びる接着位置を貼ってゆく。ここで、辺ABが上記測地線の幹線に対応し、線AD、BCが上記測地線の枝線に対応する。これに対して、図3に示す例では、正方形の中心点Oをまず貼り、つづいて点Oから放射状に貼ってゆく。結果として生じるであろう「しわ」を模式的に両図(a)に示している。これらの場合、球面上の領域ABCDの展開図には正方形ABCDが対応し、面内変形には「しわ」が対応することは言うまでもない。機械的に処理を行うためには「しわ」の向きをできるだけ揃えておいた方が便利で、そのためには規則正しい貼り方が必要である。図2の場合、展開図上で「しわ」の向きは1方向である。したがって図2に示す方法は面内変形量を独立した直交2方向成分に分解する必要がなく簡単な表記となりうるため、好適である。
【0015】
上記のことから、コンピュータ内で曲面上に紙を貼るには、以下の性質を利用することになる。なお、図2(b)に示す正方形のことを展開図と呼ぶことにする。
(1)接着部は展開図上では直線である。
(2)接着部は、一本の基線(幹線)とそれに垂直に交わる複数の枝線から構成される。
(3)展開図は、接着後、曲面に上記(1)の直線で接している。
(4)曲面上で上記(3)を満たす接線は測地線と呼ばれる幾何学的に特徴のある線である。
以上のことから、曲面上に基線(幹線)ならびに基線に垂直な枝線に相当する測地線を描けば、それがすなわち接着位置である。
【0016】
測地線は、具体的には、以下の手順で描画する。
すなわち、図4に示すように、始点をx‐y平面上に点S(x、y)として決定する。曲面を現す関数にこの(x、y)座標を与えれば、容易にz座標を知ることができ、これがG1点で、測地線の始点になる。点Dは測地線を引く方向をx‐y平面上で示すベクトルSDの終点である。SDに垂直なx‐y面上の直線上に点Sを挟んで等距離に点S1、Sを定める。点S1、Sのx、y座標に対応する曲面P上のz座標を曲面関数を用いて求め、曲面上の点h1、f1を定める。
線分h1f1に垂直な面内にあり、中心をそれぞれ点h1、f1に持つ同一半径の円を点C1、Cとする。円C1、Cと曲面Pの交点のうち、測地線の進行方向側の点をh、fをとする。
さらに、円C1、Cと同じ大きさで円C1、Cに平行な面内で中心をG1に持つ円と曲面Pの交点のうち、測地線の進行方向側の点をGとする。
先に線分h1f1と点G1に対してして行った操作を、線分hfおよび点Gに対して行い、順次G点を求めその座標を記録すると、1本の測地線上の点を等間隔で区切った(x、y、z)座標を測地線の離散座標として得ることができる。
図4では、点h1、hを通る直線と点G1での接線との間に、平均値の定理を利用している。したがって、点Sは必ずしも点S1とS2の中点である必要はなく、特別な場合として、点Sが点S1とS2のどちらかと一致する場合も許される。
【0017】
一旦、測地線を図4中、連続するG点として一本引き終えたなら、先に線分h1f1および点G1に対して行った操作を、図5に示すように、線分G13および点Gに対して行って、点Nを求め繰返しN点を求めると、先の測地線に点Gで垂直に交わる測地線上の点Nの(x、y、z)座標を離散座標として得ることができる。図5の場合、点G1、Gを通る直線と点Gでの接線との間に、平均値の定理を利用している。したがって、必ずしも点G1、GとGの3点から点N2を求める必要はなく、特別な場合として、隣り合う2点G1とG2から点N2(またはN)を求めることも許される。
こうして、基線となる測地線とそれに直交する枝線となる測地線を曲面上に描くことができる。
【0018】
つぎに、幹線方向の枝線間隔を測定することで面内ひずみを算出する(図1中、S16)。
基線および枝線を描いた紙を曲面上に基線と枝線の位置で貼ったときに生じる「しわ」すなわち面内ひずみの大きさは、隣り合う枝線上の基線から等距離の位置にある点(例えば図5で、NとN)の間隔の変化で表される。枝線間の距離が変化しないとき「しわ」は生じる必要はない。また、今までは「しわ」とだけ呼んできたが「ひきつり」すなわち紙が伸びる場合も実際にはありうる。測地線上の点の座標は既に求められているので、枝線上の点間距離ならびにその変化量も容易に知ることができる。
ここで、曲面形成に必要な面内ひずみ分布を求めるに当たり、曲面上の特定の測地線上の面内ひずみを零に指定し、曲面形成に必要な面内ひずみを、先の測地線と平行なひずみのみの成分として算出する。
これにより、平板加工を行なう者(ユーザー)がひずみを与えたくない場所を指定でき、かつ、平板加工を行なう者の希望する一方向のひずみ分布として加工法案の作成が可能になる。このひずみ分布を従来の作業の三角焼きに対応させることができる。
【0019】
以上説明した、目的の曲面形状を関数化する工程と、関数化された曲面に対し測地線を描く工程と、平面上で平行な条件を満たす測地線上での間隔の変化から面内ひずみ分布を求める工程を経ることにより、曲面形状を有する板材を平板から成形するのに必要な基本的な加工情報を得ることができ、この加工情報をガイドとして用いて、曲面形状を有する板材を平板から成形することができる。
【0020】
本発明に係る平板加工情報の取得方法では、さらに、目的の曲面形状を得るための主曲率分布および初期曲率分布を求める工程と、主曲率分布および初期曲率分布の差分から追加する曲率分布求める工程と、を有する。
【0021】
ここで、可展面および非可展面について説明する。
可展面とは、developable surfaceのことで、Gaussの曲率が0で平均曲率が0でない曲面のことである。別の言い方をすると、2つの主曲率のうち一方が0、さらに平たく言うと表面に紙を貼っても「しわ」がよらない曲面のことであり、円柱や円錐の側面がこれに相当する。
非可展面とは2つの主曲率がともに0でない曲面であり、さらにGaussの曲率が0でない曲面とも言え、平均曲率についてはどうでも良くてundevelopable surfaceと英訳される曲面のことである。
本発明では曲面に紙を貼ったときに「しわ」がよることを想定しているから、対象となる曲面は非可展面の方である。すなわち、本発明で対象となる曲面、すなわち、面内ひずみ分布が求められるときの関数化された曲面(図1中、S10)は、非可展面である。
【0022】
さらに、トーラスモデルの面内ひずみ分布について説明する。
図6に示す形状はトーラスと呼ばれ、図中の寸法Rとrで形状が決まる。図5に示す2点間の長さの変化を調べるために設けた点(隣り合う枝線上の基線から等距離の位置にある点、例えば図5で、NとN以下、これを標点という。)と展開線を平面に描き、幹線とx-y面が一致するように配置し平面上の標点と展開線をトーラス表面に移す。標点は間隔1の格子点上に設ける。
トーラスでは、x-y面とトーラスの交線上の長さを基準にしたひずみの理論解が既知である。
【0023】
上記の知見を前提として、曲面形成に必要な初期曲率の方向と分布を求める。
曲面上の任意点近傍は、2つの主曲率を持つトーラス曲面となっている。主曲率が場所によって変化する場合にも、十分狭い範囲では、トーラス曲面として扱うことができる。
板を予め円筒形に曲げた型をつけ、そこに面内ひずみを与えると曲面を形成することができるが、与える面内ひずみが同じであっても最初の円筒形の半径が異なれば、出来上がる曲面の主曲率は同じではない。このため、これらの関係を、弾性力学に基づいて導き出し、曲面全体に渡って計算することで、曲面全体を成形するための初期曲率分布を求めることができる。
【0024】
初期曲率は、目的とする曲面の主曲率と曲面上での方向が分からなくては決定できない。近似曲面上で、主曲率とその方向を決める必要がある。これには、曲面上で主曲率方向を求めたい点を通る測地線を45°間隔に描く必要がある。そこで、まず、非可展面である、関数化された曲面(図1中、S10)上で、R3~R6の4方向の曲率の測定を行う(図1中、S20)。
図7に、45°間隔で離散的に求めた測地線上の点を示す。各方向の測地線上の3点から求められる曲率半径をR3~R6とすると、R3方向と主曲率方向の成す角θとの間には、次式の関係がある。この式より、主曲率方向が求まる。
【0025】
【数1】
JP0004899039B2_000002t.gif

【0026】
また、次の2式より主曲率半径R1、R2がそれぞれ与えられる。
【0027】
【数2】
JP0004899039B2_000003t.gif

【0028】
【数3】
JP0004899039B2_000004t.gif

【0029】
曲面上でこの操作を繰り返すことにより、主曲率分布が得られる(図1中、S22)。
【0030】
曲面の成形は、曲面上の各部分の主曲率を目的の主曲率にすることで達成される。目的の主曲率を得るためには、曲面形成に必要な面内ひずみの付与のほかに、曲げ変形を加える必要がある。例えば、円筒形に曲げた板に面内ひずみを与えると、始めに設定した円筒形の変形に応じたトーラス曲面を得ることができる。言い換えると、与える面内ひずみが同じでも始めの円筒形の曲率(初期曲率と呼ぶ)が正しくないと目的の曲面は得られない。
そこで、与えた面内歪の影響で初期曲率が別の大きさの曲率に変化することを見込んで、計算目的の主曲率半径をRT1、RT2とし、それを得るための初期曲率半径R0の関係が必要になる。
弾性論により、種々の半径の円筒形に、目的の主曲率半径を得るための面内ひずみを与えたときに得られる主曲率をR1、R2とし、初期曲率半径R0との関係を図8に示す。ここで、目的曲率半径の相乗平均をRAVとおいている。
【0031】
図8は、横軸に平均曲率RAVと大きい方の主曲率R1との比をとり、縦軸に、初期曲率R0と平均曲率との比ならびに、小さい方の曲率と平均曲率との比を表している。傾き1の直線は、R1そのものを表している。横軸が1のところは、大きい方の曲率と平均曲率が1すなわち球を示している。このときの初期曲率は0を示している。すなわち、初期曲率を与えないで面内ひずみのみを与えた場合に球が得られる。また、横軸が6以上では概ね初期曲率と大きい方の目的曲率が等しく、この場合には、初期曲率として目的曲率の大きい方を与えればよいことになる。
目的曲面上の主曲率分布から各点のR0を求めることで、曲面形成に必要な初期曲率分布が得られ、すなわち初期曲率が推定される(図1中、S24)。
ここで、平板に与えることができる初期曲率には制約がある。円筒形または円錐形といったいわゆる可展面の形状以外の形状に平板を変形させることはできない。
上記の手順では、可展面として表すことのできる初期曲率の分布が推定される。
【0032】
そして、得られた初期曲率分布から、可展面をフィットさせて、例えば錐形の初期形状を決める(図1中、S26)。
【0033】
ところで、上記のとおり、目的形状の形成に必要な初期曲率分布、すなわち、非可展面である初期曲率分布と、与えることが可能な初期曲率分布、すなわち、可展面として表すことのできる初期曲率分布とは同じではない。このため、より厳密には、面内ひずみを与えた後に追加する曲率の差分、すなわち、初期形状を決める際(図1中、S26)に反映されなかった非可展面としての曲率を計算し(図1中、S28)、部分的に付加する曲率情報を得る(図1中、S30)。具体的には、目的形状の形成に必要な初期曲率分布から、与えることが可能な初期曲率分布をベクトルとして引き算して、非可展面としての曲率分布を求める。
以上により、曲面形成に要する加工情報として、初期曲率および追加曲率が得られる。
上記した本発明に係る平板加工情報の取得方法の一連の手順を実施することで、平板加工のガイドとなる情報を得ることができる。また、この平板加工情報に基づいて、平板加工することで、熟練工が行う作業手順をできるだけ再現することができる。
【実施例】
【0034】
目的形状を図9に示す。場所により、小さい方の曲率半径が変化する形状を選んだ。また、面内ひずみを求め、初期曲率を与えた円錐形にその面内ひずみを与えた結果の形状を図10に示す。図10は、変形計算後の図9中の1本の幹線に沿った複数の枝線方向の曲率の分布を比較したものである。すなわち、小さい方の曲率半径の分布を示している。実線が目的の曲率半径分布、丸が与えた初期曲率、△が有限要素法を用いて計算した変形後の形状である。
ここでは、追加曲率を与えていないが、△と実線は概ね一致していることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係る平板加工情報の取得方法について、その手順を説明するためのフローチャートである。
【図2】本発明に係る平板加工情報の取得方法の基本概念を説明するためのものであり、球面上に紙を貼るときの1つの方法について、(a)は球面上に紙を貼った状態を、(b)は球面に貼る前の平面展開した紙を、それぞれ示す図である。
【図3】本発明に係る平板加工情報の取得方法の基本概念を説明するためのものであり、球面上に紙を貼るときの他の1つの方法について、(a)は球面上に紙を貼った状態を、(b)は球面に貼る前の平面展開した紙を、それぞれ示す図である。
【図4】測地線を描く方法を説明するためのものであり、測地開始点を示す図である。
【図5】測地線を描く方法を説明するためのものであり、垂直方向の測地開始点を示す図である。
【図6】トーラスモデルの面内ひずみ分布について説明するための図である。
【図7】曲面上で主曲率方向を求めたい点を通る測地線を45°間隔で離散的に求めた状態を示す図である。
【図8】横軸に平均曲率RAVと大きい方の主曲率R1との比をとり、縦軸に、初期曲率R0と平均曲率との比ならびに、小さい方の曲率と平均曲率との比を表した図である。
【図9】実施例の目的形状を示す図である。
【図10】本発明で得られる曲面形状と他の方法で得られる曲面形状のそれぞれ小さい方の曲率半径の分布を示して比較した図である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図10】
8
【図9】
9