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明細書 :生ゴミからのコハク酸の製造及び分離精製方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4714862号 (P4714862)
公開番号 特開2006-296306 (P2006-296306A)
登録日 平成23年4月8日(2011.4.8)
発行日 平成23年6月29日(2011.6.29)
公開日 平成18年11月2日(2006.11.2)
発明の名称または考案の名称 生ゴミからのコハク酸の製造及び分離精製方法
国際特許分類 C12P   7/46        (2006.01)
FI C12P 7/46
請求項の数または発明の数 1
全頁数 7
出願番号 特願2005-123358 (P2005-123358)
出願日 平成17年4月21日(2005.4.21)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 2005年3月22日から24日 化学工学会主催の「化学工学会 第70年会」において文書をもって発表
審査請求日 平成20年3月19日(2008.3.19)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504174135
【氏名又は名称】国立大学法人九州工業大学
発明者または考案者 【氏名】白井 義人
【氏名】脇坂 港
【氏名】ムーン ヒ チェオン
【氏名】スタシニー プラニートラッタノン
個別代理人の代理人 【識別番号】100077263、【弁理士】、【氏名又は名称】前田 純博
審査官 【審査官】鳥居 敬司
参考文献・文献 特開2002-210440(JP,A)
特開2002-119295(JP,A)
特開平10-174592(JP,A)
特開2005-095169(JP,A)
特開昭62-294090(JP,A)
Appl. Microbiol. Biotechnol., 2004, Vol.65, p.664-670
調査した分野 C12P 7/00-7/66
CA/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
WPI
特許請求の範囲 【請求項1】
生ゴミの糖化液を基質とし、アクチノバシルス(Actinobacillus)属の微生物によるコハク酸発酵によってコハク酸を生成させた発酵培地に、水とアルコールの混合液を添加混合することによって、コハク酸を発酵培地からコハク酸塩として析出・分離させることを特徴とするコハク酸の分離精製方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、家庭、ホテル・旅館、病院、学校、レストラン・食堂、食品工場、農畜産場等から排出される食品ゴミや生ゴミ等の有機廃棄物(以下、本発明においては総称して生ゴミという)を原料としてコハク酸を製造する方法、及び、生成したコハク酸を分離・精製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、生ゴミは、種々の有効資源を含むにもかかわらず、主として焼却や埋め立てによって処理されている。また、場合によっては、そのまま廃棄せず、コンポスト(堆肥)としてリサイクルする方法も提案されている。しかしながら、生ゴミの埋め立て処理を行うには、埋め立て地不足の問題があり、また、焼却処理を行うには大型の設備が必要で、更には悪臭が発生するという問題がある。また、生ゴミを堆肥としてリサイクルする方法は、処理に時間がかかるばかりでなく、堆肥の需要と処理すべき生ゴミ量のアンバランスのために、有効な解決策にはなっていない。
【0003】
一方、コハク酸は、食品添加物、メッキ薬、写真現像薬、医薬原料、洗剤ビルダー、樹脂原料、生分解性プラスチックであるポリブチルコハク酸の原料等として化学、食品業界において多くの需要を持っている。そして、特に、自然環境中で分解される生分解性プラスチックの原料として見た場合には、原料の生産コストの低減が切望されている。
【0004】
従来、コハク酸はフマル酸やマレイン酸の水素添加、リンゴ酸のヨウ化水素による還元、酒石酸アンモニウムあるいはリンゴ酸カルシウムの発酵等によって得られる。そして、コハク酸の晶析方法としては、特許文献1に、無水マレイン酸又はマレイン酸を水溶液中で還元してコハク酸とした後、その水溶液を冷却晶析することによって結晶粒子としてコハク酸を得る方法が、また、特許文献2には、前記方法を改良したコハク酸の粒径と粒度分布を規制する方法が提案されている。しかし、これらの提案は、生ゴミとの関連性について触れるところはない。

【特許文献1】特公昭44-29246号公報
【特許文献2】特開2005-82498号公報
【0005】
これまで、乳酸、酢酸、プロピオン酸等の有機酸を生ゴミの微生物発酵によって製造する方法も提案されている(例えば、特許文献3)。しかし、特許文献3では、コハク酸は得られていない。特許文献4には、ブレビバクテリウム属に属する微生物を、フマル酸又はその塩を含有する水性反応液に作用させ、反応液からコハク酸を採取する方法が提案されている。また、特許文献5にも、微生物、特にアナエロビオスピルリム・サクシニシプロデュセンスを用いるコハク酸の生成法が提案されている。しかし、特許文献4と5のいずれにも、生ゴミの処理との関連性については何ら述べられていない。

【特許文献3】特開平10-174592号公報
【特許文献4】特開平5-68576号公報
【特許文献5】特開昭62-294090号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、毎日、大量に廃棄される生ゴミから、安価で効率的な方法でコハク酸を製造する方法、及び製造されたコハク酸の、効率的な分離精製方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、生ゴミの糖化液を基質とするコハク酸発酵によってコハク酸を生成させることを特徴とするコハク酸の製造方法である。そして、本発明の他の態様は、生ゴミの糖化液を基質とするコハク酸発酵によってコハク酸を生成した発酵培地に、水とアルコールの混合液を添加混合することによって、コハク酸を発酵培地からコハク酸塩として析出・分離させることを特徴とするコハク酸の分離精製方法である。なお、本発明においてコハク酸というときには、特に区別して用いない限り、コハク酸塩も含むものである。
【発明の効果】
【0008】
コハク酸発酵を利用することによって、生ゴミの有効利用、そしてコハク酸の安価で効率的な製造が可能となる。また、得られたコハク酸は、簡単な方法で分離精製することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明において生ゴミとは、家庭、ホテル・旅館、病院、学校、レストラン・食堂、食品工場、農畜産場等から排出される食品ゴミや生ゴミ等の有機廃棄物、あるいは本発明の効果確認するために、実験室的に調整・配合された有機廃棄物を意味する。また、紙、プラスチック、木片等の通常「燃えるゴミ」として廃棄されるものが混入されていてもよい。そして、かかる生ゴミの糖化液とは、本発明者が既に提案した方法(例えば、特開2002-119295号公報参照)等で既に知られているが、生ゴミに、酸及び/又は糖化酵素を作用させて得られる、糖を含む液体を意味する。酸としては、硫酸、塩酸及び硝酸を挙げることができ、これらを1種又は2種以上用いることができる。糖化酵素としては、グルコアミラーゼ、α-アミラーゼ、β-アミラーゼ、プルラナーゼ、あるいはセルラーゼ等を用いるのが良い。
【0010】
生ゴミは、その組成として、多くの糖質、タンパク質、アミノ酸、有機酸、脂質及びビタミン類あるいはミネラル等の無機物を含んでいる。これらは、大きく分けて、(1)脂溶性成分(脂質等)、(2)中性成分(糖質)、及び(3)イオン性成分(タンパク質、アミノ酸、有機酸、無機塩類等)の3つに分けることができる。そして、生ゴミに、酸及び/又は糖化酵素を作用さて、処理物を固液分離することによって糖を含む糖化液が得られる。かかる工程で、生ゴミに含まれているデンプンやセルロースなどの高分子糖類は加水分解されて、単糖類、二糖類、三糖類、オリゴ糖類になる。なお、この工程前に、生ゴミに防腐処置を行ったり、加水して濃度を調整しても良い。糖化されなかった固体残渣は分離・除去しても良いが、本発明のコハク酸発酵においては、固体が存在したままでコハク酸発酵を行うことも出来る。好ましいのは、固液分離したあるいは更にイオン交換膜等を用いて生成した糖化液を用いる方法である。固液分離のためには、従来より公知の固液分離方法を用いることができる。例えば、圧搾濾過、膜分離、フィルタープレス、遠心沈降法等がある。最終的に残渣は、肥料や飼料添加物等として用いたり、場合によっては焼却や埋め立て処分される。糖化液中のグルコースの濃度は、10~80g/l程度あるのが適当であるが、好ましくは20~60g/lである。
【0011】
本発明のコハク酸発酵に用いる微生物は、前記生ゴミの糖化液を基質として培養を行い、コハク酸生成活性を有するものであれば、特に限定されない。例えば、アクチノバシルス(Actinobacillus)属、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)属(特開平5-68576号参照)、キャンディダ(Candida)属(特公昭56-17077号参照)に属する微生物、あるいはアナエロビオスピルリム・サクシニシプロデュセンス(Anaerobiospirillum succiniciproducens)(特開昭62-294090号参照)が利用できるが、好ましいのはアクチノバシルス(Actinobacillus)属の微生物である。
【0012】
本発明においては、基質を、pH調節を行った後そのまま培地として用いることもできるが、通常培地の調整に用いられる物質を基質に添加しても良い。本発明においては、基質に、酵母エキス、トウモロコシ浸出液、ポリペプトン等の窒素源を添加するのが好ましい。添加量は1~20g/lが適当である。
【0013】
コハク酸発酵のための培養条件は、通性嫌気性であれば、通常の微生物の培養条件の範囲内で適当に設定することができる。しかし、雰囲気には炭酸ガスを含む必要があり、全ての通気ガスが炭酸ガスであってもかまわないが、酸素さえ入らなければ、窒素や水素が混入していても良い。
【0014】
本発明の他の態様は、前記のごとく、生ゴミの糖化液を基質とするコハク酸発酵によってコハク酸を生成した発酵培地に、アルコールを添加し、コハク酸塩の溶解度を低下させることによりコハク酸を発酵培地からコハク酸塩として析出・分離させるコハク酸の分離精製方法である。発酵培地を中性付近(pH6~8程度)に保ち、コハク酸を塩にするために添加するアルカリとしては、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の炭酸塩、アンモニウム化合物及びこれらの混合物が挙げられる。具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、アンモニア水、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウムが挙げられる。添加量は、生成したコハク酸を全て塩の形にするのに必要にして十分な量以上であれば良い。なお、発酵pHを調整指摘(pH6.0~6.5)する段階で、前記アルカリが常時添加されているので、通常、コハク酸は発酵培地において塩の形で存在している。
【0015】
本発明においては、コハク酸を発酵培地からコハク酸塩として析出・分離させるために、培養後の培地に、水とアルコールの混合液を添加混合するが、アルコールとしては特に制限はない。例えば、メタノール、エタノール、プロピルアルコールあるいはこれらの混合物を用いることができるが、好ましいのはメタノールとエタノールであり、特に好ましいのは、エタノールである。混合液は、重量割合で1:1以上のアルコールを含むものが好ましく、添加温度は室温が好ましい。
【実施例】
【0016】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0017】
[実施例1]
家庭から排出される生ゴミのモデルとして、野菜・果物38重量%、肉・魚19重量%、飯・パン43重量%の割合で調整した合成食品ゴミに、更に全体の10重量%の水を加えミキサーにかけたものを使用した。この生ゴミ30kgをドラム型の装置に入れ、300ppmのグルコアミラーゼを添加し、50℃で6時間、50rpmの速度で攪拌し糖化を行った。得られた生成物を6×6mmのワイヤーメッシュでろ過し、20kgの糖化液を得た。得られた糖化液を遠心分離機にかけ浮遊物を除去し、沸騰させて蛋白質を除去し、透明な糖化液とした。糖化液中のグルコース濃度は60g/lであった。
【0018】
前記透明な糖化液50mlに、アクチノバチルス・サクシノゲナーゼ(Actinobacillus succinogenes)(ATCC 55618)を1ml of culture seed接種した。なお、culture seedは、1loopのサクシノゲナーゼを50mlのトリプチカーゼ ソイ ブロス(Trypticase Soy Broth)で常法に従って培養したものである。そして、接種した糖化液を三角フラスコに入れ、これにMgCOを2.5g添加しpHを中性に調節した。雰囲気を炭酸ガスとNaS・9HO(1mg/l)で置換して、65rpmで攪拌しながら39℃で48時間培養した。培養後の液中のコハク酸濃度を、高速液体クロマトグラフで測定し、結果を表1に示した。
【0019】
なお、接種した糖化液を、容積が1lのバイオリアクターに入れ、NaOHでpHを6.5に調節し、雰囲気として炭酸ガスを流しながら、100rpmで攪拌しながら39℃で48時間培養したが、この大型培養の場合も前記と同様の結果を得た。
【0020】
[実施例2~4]
前記透明な糖化液50mlに、窒素源としてポリペプトン(実施例2)、トウモロコシ浸出液(実施例3)、酵母エキス(実施例4)を所定量添加し、同様の条件で培養し、培養後の液中のコハク酸濃度を測定し、結果を表1に示した。表1から、各種窒素源を添加した場合には、コハク酸の生成量が増加していることが分かる。
【0021】
【表1】
JP0004714862B2_000002t.gif

【0022】
[実施例5]
前記実施例1の大型培養で得られた培養後の培養液(発酵培地)を、0.45μmのメンブレンフィルターでろ過し、更に水の含量が約60重量%になるまで水分を蒸発させた。この発酵培地中のコハク酸ナトリウムの含有量は22%であった。
【0023】
発酵培地を50mlずつのフラクションに分け、それぞれ三角フラスコに入れた。各々のフラスコに、所定量のエタノールを加えて水とエタノールの混合液の比を調整した。そして、500rpmで30分間攪拌した。その後、3.0μmのポリテトラフルオロエチレン製フィルターを用いて真空ろ過し、析出したコハク酸塩を分離した。分取したコハク酸塩は、80℃で10時間真空乾燥して粉末状のコハク酸塩を得た。水とエタノールの混合比を変化させた場合の、コハク酸塩の回収率を図1に示した。図1において縦軸は、コハク酸塩の回収率(%)である。
【0024】
[実施例6]
実施例5のエタノールをメタノールに変えて、その他は実施例5の場合と全く同様の実験を行った。結果は図2に示した通りであった。図2において縦軸は、コハク酸塩の回収率(%)である。
【0025】
図1と図2から、全般的にメタノールよりもエタノールの方が、より効率良くコハク酸塩を析出させることがわかる。また、得られたコハク酸塩の純度も95%以上で非常に高かった。
【産業上の利用可能性】
【0026】
生ゴミを資源化し、種々の化学原料、特に、生分解性プラスチックであるポリブチルコハク酸の原料であるコハク酸を、安価に且つ効率的に生産することができるので、生ゴミの有効利用と生分解性プラスチックの廉価製造に寄与できる。また、本発明のプロセスは、ゴミ発電システム又はプロセスと組合わせて、ゴミ発電の廃熱利用を図ることにより、生ゴミの資源リサイクルシステムの一貫として組込み、実施することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】水とエタノールの混合液を用いた場合の、コハク酸塩の回収率を示す図。
【図2】水とメタノールの混合液を用いた場合の、コハク酸塩の回収率を示す図。
図面
【図1】
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【図2】
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