TOP > 国内特許検索 > テザーに連結された機器の姿勢制御方式 > 明細書

明細書 :テザーに連結された機器の姿勢制御方式

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3843299号 (P3843299)
公開番号 特開2005-231459 (P2005-231459A)
登録日 平成18年8月25日(2006.8.25)
発行日 平成18年11月8日(2006.11.8)
公開日 平成17年9月2日(2005.9.2)
発明の名称または考案の名称 テザーに連結された機器の姿勢制御方式
国際特許分類 B64G   1/34        (2006.01)
FI B64G 1/34
請求項の数または発明の数 3
全頁数 15
出願番号 特願2004-041810 (P2004-041810)
出願日 平成16年2月18日(2004.2.18)
審査請求日 平成16年2月19日(2004.2.19)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304028346
【氏名又は名称】国立大学法人 香川大学
発明者または考案者 【氏名】能見 公博
個別代理人の代理人 【識別番号】100089222、【弁理士】、【氏名又は名称】山内 康伸
審査官 【審査官】三澤 哲也
参考文献・文献 特開2003-295962(JP,A)
特開平08-026196(JP,A)
特開平05-230999(JP,A)
特開昭64-087935(JP,A)
特開昭58-122300(JP,A)
特開昭60-155030(JP,A)
特公昭49-000600(JP,B1)
能見・曄道・曽我部,弦下端に取り付けられた剛体系の姿勢制御,日本機械学会論文集(C編),日本,2001年12月,第66巻,第647号,p.2255-2261
調査した分野 B64G 1/34
B64G 9/00
G05D 1/08
G05G 7/00
G01C 21/24
F16F 15/02
特許請求の範囲 【請求項1】
テザーの先端に連結された複数の部材からなる機器において、該機器が、中間部材と先端部材とを有しており、前記中間部材が、前記テザーの先端と前記先端部材とを連結する連結部材となっており、前記テザーの先端と前記中間部材が互いに揺動自在に連結されており、かつ該中間部材と前記先端部材が、回転関節によって互いに揺動可能に連結されており、前記機器が、前記先端部材を前記中間部材に対して相対的に揺動させる揺動手段を備えており、前記揺動手段が前記中間部材を前記先端部材に対して揺動させることによって前記先端部材の姿勢を制御する姿勢制御方式であって、
前記回転関節が、その中心が前記先端部材の質量中心と一致するように配設されており、
該姿勢制御方式が、
前記先端部材の姿勢が変化したときに、テザーに発生する張力によって前記機器に回転力が加わると、前記回転関節に対して、前記回転力の回転軸周りの減衰回転力が加わるように、前記揺動手段によって前記中間部材を前記先端部材に対して揺動させる
ことを特徴とするテザーに連結された機器の姿勢制御方式。
【請求項2】
前記中間部材の質量が、
前記揺動手段によって前記回転関節に対して回転力を加えたときに、前記テザーを伸展している場所に固定された座標系に対し、該中間部材の軸方向がなす角度は変化するが、前記先端部材の軸方向がなす角度は一定に保たれる重さに調整されている
ことを特徴とする請求項1記載のテザーに連結された機器の姿勢制御方式。
【請求項3】
前記回転関節が、
前記テザーが直線状に伸展し、かつ該回転関節の中心が前記テザーの軸方向の延長線上に位置した状態において、該テザーの軸方向と直交する前記先端部材に固定された2軸を有しており、
該先端部材に固定された座標系における現在の先端部材の姿勢角変化速度に基づいて、前記先端部材の角速度ベクトルを算出し、
該角速度ベクトルの前記先端部材に固定された直交する2軸方向の成分から、該回転関節の各軸周りに前記中間部材を揺動させる角度を算出する
ことを特徴とする請求項1または2記載のテザーに連結された機器の姿勢制御方式。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、テザーに連結された機器の姿勢制御方式に関する。テザーは、軽量であり、かつ収納性に優れているため、宇宙開発や地上における様々な作業への利用が考えられる。例えば、宇宙開発においては、テザーを衛星軌道から低高度へと伸展させることによる低高度の観測や、テザーによって連結された二宇宙機を回転させることによる人工重力の発生、軌道上外力を利用した軌道変換、さらには電導性テザーを利用した磁力による発電などが考えられている。地上においては、人間の操縦するクレーンから吊り下げられたテザーの下端にロボットを吊り下げ、超高層ビルディング、航空機、船舶、宇宙船などの巨大構造物のメンテナンス・建造への利用が考えられている。
本発明は、かかるテザーの先端に連結された機器の姿勢制御方式に関する。
なお、テザーとは、一般的には宇宙空間で用いられるケブラー繊維(du Pont社)によって形成されたひも状の部材を示すが、本明細書では、前述したいわゆるテザーだけでなく、地上で使用される一般的なひもやロープ、ワイヤー等、可撓性を有するひも状の部材を全て含む概念である。
【背景技術】
【0002】
テザーに連結された機器によって様々な作業を行う場合、その機器は、その姿勢の基準となる物体、例えば宇宙船やクレーン等に対して剛体を介して連結されていないため、テザー自体や機器の姿勢制御が問題となる。
【0003】
従来、宇宙開発で使用されるテザーシステムでは、軌道上の重力傾斜を利用してテザー自体およびテザー先端に連結された機器の姿勢制御が行われており、また、地上におけるクレーンシステムなどでは、地上の重力を利用したり、クレーンアーム側の部材の変更、吊り下げ位置であるクレーンのアーム先端位置の制御、テザーを巻き取る装置のトルク、速度等を制御することによるテザー自体および機器の姿勢制御が行われている。
しかし、吊り下げられた物体の高精度な姿勢制御は、軌道上の重力傾斜、または地上における重力を利用した受動的制御では困難である。
宇宙空間であれば、噴射装置やリアクションホイールを使用すれば、ある程度は能動的に姿勢制御はできるものの(特許文献1,2参照)、噴射装置では高精度な姿勢制御が困難であるし、リアクションホイールはホイールに蓄積できる角運動量に限界があるため制御範囲が狭いという問題がある。
このため、テザー先端に連結された機器によって物体の観測や運搬程度の作業は行うことはできても、ロボットを先端機器として使用する場合のように、高精度の姿勢制御が必要とされる作業は困難であった。
【0004】
このような背景を踏まえて、テザー先端に連結された機器を、能動的かつ高精度に制御することができる新しい姿勢制御方法として、テザーの先端に連結される機器として、中間部材と先端部材とを有する構造とし、テザーの先端と中間部材、および中間部材と先端部材を、互いに揺動自在に連結し、先端部材に中間部材との連結部分を支点として先端部材を揺動させる方向に外力が加わっている間は、外力によって先端部材に発生する回転力と同じ大きさかつ逆向きの回転力を先端部材に発生させるように、先端部材を中間部材に対して揺動させる技術が開発されている(特許文献3、従来例1)。
従来例1の技術では、先端部材を中間部材に対して揺動させることによって、先端部材に加わる外力をテザーの内部の引張応力として蓄積放出させることができるから、外力による先端部材の姿勢の変化を、能動的かつ連続的に制御することができ、先端部材の姿勢を一定の姿勢に高精度に保つことができる。
【0005】

【特許文献1】特開平7-81699号
【特許文献2】特開平8-26196号
【特許文献3】特開2003-295962号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかるに、従来例1の技術を利用すれば、先端部材の姿勢変化を能動的に防ぎ、先端部材を一定の姿勢に高精度に保つことができるが、回転力を位置・速度制御しているため、姿勢制御の精度は、先端部材や中間部材の相対的な位置や相対的な角度(以下、単に姿勢角という)の計測精度に依存することになる。地球や太陽等の外界のものを計測して姿勢角を検出するのであれば、比較的高精度の計測を行うことができるが、計測のためのシステム大規模になってしまう。一方、機器に設けられたセンサのみによって姿勢角を検出すれば、装置は小型軽量化することができるが、姿勢角の計測精度が低くなってしまい、姿勢制御の精度が低くなってしまうという問題がある。
この問題を解決する方法として、先端部材や中間部材の相対的な位置や相対的な角度を時系列的に計測し、かつ、移動開始から現在の状態までの全てのデータを利用してフィードバック制御する方法があるが、姿勢角検出に必要とするデータ量が非常に多くなるし、検出するための作業工数も多くなるため、リアルタイムで姿勢を制御するには、非効率的であり、機器に設けられたセンサから得られる情報のみによって、機器の姿勢を効率的かつ高精度に制御できる方法が望まれている。
【0007】
本発明はかかる事情に鑑み、テザー先端に連結された機器を能動的かつ連続的に制御することができ、機器の姿勢を任意の姿勢とすることができ、しかも、機器に設けられたセンサから得られる情報のみによって機器の姿勢を効率的かつ高精度に制御できるテザーに連結された機器の姿勢制御方式を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1発明のテザーに連結された機器の姿勢制御方式は、テザーの先端に連結された複数の部材からなる機器において、該機器が、中間部材と先端部材とを有しており、前記中間部材が、前記テザーの先端と前記先端部材とを連結する連結部材となっており、前記テザーの先端と前記中間部材が互いに揺動自在に連結されており、かつ該中間部材と前記先端部材が、回転関節によって互いに揺動可能に連結されており、前記機器が、前記先端部材を前記中間部材に対して相対的に揺動させる揺動手段を備えており、前記揺動手段が前記中間部材を前記先端部材に対して揺動させることによって前記先端部材の姿勢を制御する姿勢制御方式であって、前記回転関節が、その中心が前記先端部材の質量中心と一致するように配設されており、該姿勢制御方式が、前記先端部材の姿勢が変化したときに、テザーに発生する張力によって前記機器に回転力が加わると、前記回転関節に対して前記回転力の回転軸周りの減衰回転力が加わるように、前記揺動手段によって前記中間部材を前記先端部材に対して揺動させることを特徴とする。
第2発明のテザーに連結された機器の姿勢制御方式は、第1発明において、前記中間部材の質量が、前記揺動手段によって前記回転関節に対して回転力を加えたときに、テザーを伸展している場所に固定された座標系に対し、該中間部材の軸方向がなす角度は変化するが、前記先端部材の軸方向がなす角度は一定に保たれる重さに調整されていることを特徴とする。
第3発明のテザーに連結された機器の姿勢制御方式は、第1または2発明において、前記回転関節が、前記テザーが直線状に伸展し、かつ該回転関節の中心が前記テザーの軸方向の延長線上に位置した状態において、該テザーの軸方向と直交する前記先端部材に固定された2軸を有しており、該先端部材に固定された座標系における現在の先端部材の姿勢角変化速度に基づいて、前記先端部材の角速度ベクトルを算出し、該角速度ベクトルの前記先端部材に固定された直交する2軸方向の成分から、該回転関節の各軸周りに前記中間部材を揺動させる角度を算出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
第1発明によれば、先端部材と中間部材とを連結する回転関節が、先端部材の質量中心に配置されているため、テザーが伸展し、かつ、テザーの軸方向と中間部材の軸方向が一致していれば、先端部材の質量中心は必ずテザーの軸方向の延長線上に配置されることになる。このため、テザーが伸展し、かつ、テザーの軸方向と中間部材の軸方向が一致していれば、先端部材の中間部材に対する角度にかかわらず、テザー、中間部材および先端部材からなるシステムが平衡状態、つまりシステム全体が安定な形状となるから、先端部材を、テザーの軸方向に対して所望の姿勢で静止させることができる。また、機器に外力が加われば、その外力がテザーの張力として蓄積され、蓄積された張力が、機器を回転させる回転力を発生させるから、この回転力を、機器を元の姿勢に戻そうとする復元力として機能させることができる。一方、揺動手段によって中間部材を先端部材に対して揺動させれば、テザーの張力によって発生する復元力に減衰回転力を付加することができるから、復元力による機器の回転振動を減衰させることができる。このとき、中間部材を揺動させるタイミングを調整すれば、先端部材を元の状態に保つことも、元の状態から所定の量だけ回転した姿勢に変化させることも可能である。よって、機器に外力が加わった場合に、テザーの張力による復元回転力と減衰回転力によって、先端部材の姿勢を所望の姿勢にすることができる。そして、先端部材が所望の姿勢となった状態で、テザーの軸方向と中間部材の軸方向を一致させれば、上記のシステム全体が安定な形状となるから、先端部材を、任意の目標姿勢とすることができる。
第2発明によれば、中間部材の質量が先端部材に対して非常に小さくなるので、中間部材の動作反力による先端部材の姿勢変化を非常に少なくすることができる。このため、中間部材の揺動前、つまり姿勢制御される前の先端部材の姿勢と、中間部材の揺動直後、つまり姿勢制御を開始直後の姿勢のズレが非常に少なくなるから、先端部材の姿勢の制御効率を良くすることができる。しかも、揺動手段によって回転関節の制御、つまり、中間部材を先端部材に対して揺動させる角度の制御を、単純なD制御とすることができ、中間部材を先端部材に対して揺動させる角度の計算時間を短くすることができる。
第3発明によれば、中間部材の回転関節の各軸周りにおける揺動角度を、回転関節の各軸周りにおける先端部材の角速度を利用してフィードバック制御をしているので、各軸周りにおける先端部材の揺動角度の測定誤差に起因する制御誤差を少なくすることができ、先端部材の姿勢を高精度に制御することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
本発明は、テザーの先端に連結された、複数の部材からなる機器の姿勢制御を行う姿勢制御方式である。
【0011】
まず、本発明の姿勢制御方式について説明する前に、本方式が適用される機器(以下、テザー先端機器という)について説明する。
テザー先端機器としては、例えば、(i)衛星捕獲・メンテナンス用ロボット、(ii)宇宙機外観検査用カメラ搭載ロボット、(iii)衝撃スラスタ(他宇宙機に衝突し他宇宙機の姿勢制御を行う)、(iv)月・惑星着陸機のテザーを用いた姿勢制御、(v)クレーンなどによる荷物の運搬、(vi)水中探査ロボット等が挙げられるが、以下には単純化したモデルとして、テザー先端機器が、中間部材と先端部材の2つの部材から構成された場合を説明する。なお、先端部材の数は2以上でもよく、各先端部材と中間部材とが以下の関係にあれば本方式の採用が可能である。
【0012】
図1はテザー1およびテザー先端機器10の概略説明図である。図2はテザー1およびテザー先端機器10の安定状態の概略説明図である。図3は(A)は制御部20のブロック図であり、(B)回転関節13の一例を示した図である。
図1および図2において、符号1はテザーを示しており、符号10は、テザー1の先端に連結されたテザー先端機器を示している。
図1に示すように、テザー先端機器10は、一端がテザー1の先端に揺動自在に取付けられた中間部材12と、この中間部材12の他端に揺動自在に取付けられた先端部材11を備えている。中間部材12の他端と先端部材11は、回転関節13によって互いに揺動可能に連結されており、この回転関節13は、先端部材11の質量中心に配置されている。
このため、テザー1が伸展し、かつ、テザー1の軸方向と中間部材12の軸方向が一致、つまり、中間部材12とテザー1の連結位置と回転関節13の中心とを結ぶ直線と一致していれば、先端部材11の質量中心は必ずテザー1の軸方向の延長線上に配置されることになるから、先端部材11の中間部材12に対する揺動角度にかかわらず、テザー、中間部材12および先端部材11からなるシステム全体が平衡状態となる。つまり、テザー1が伸長し、かつテザー1の軸方向と中間部材12の軸方向を一致させるだけで、システム全体を安定な形状とすることができるから、先端部材11を、伸長されたテザー1の軸方向に対して所望の姿勢、言い換えれば、所望の角度θで静止させることができる(図2(A)、(B))。
【0013】
回転関節13は、システムが平衡状態になっている状態、つまり、テザー1が伸展し、かつ、テザー1の軸方向と中間部材12の軸方向が一致している状態において、その中心がテザー1の軸方向の延長線上に位置し、しかも、テザー1の軸方向と直交する2軸周りに先端部材11と中間部材12を相対的に回転可能に連結するものである。この回転関節13は、球関節等が該当するが、上記のごとき構成を満たすものであれば特に限定はない。なお、球関節はその駆動が困難であるが、球関節の一例として、図3(B)に示すような6軸関節とすれば、軸をモータなどによって回転させることによって駆動することができるので、好適である。図3(B)の6軸関節では、円筒状の6つの回転関節J1~J6は、いずれもその中心軸周りに回転可能であり、揺動手段である2つのモータ22を回転させれば、その軸に取付けられた2つの回転関節J1,J2をその軸周りに回転させることができる。そして、回転関節J1,J2に接続されている4つの回転関節J3~J6も、回転関節J1,J2の回転と連動して、それぞれの中心軸周りに回転させることができるのである。
【0014】
図3(A)に示すように、先端部材11には、揺動手段22が設けられている。この揺動手段22は、例えばモータ等のアクチュエータであり、中間部材12を、前記回転関節13の軸まわりに、先端部材11に対して揺動させることができるものである。
そして、中間部材12は、その質量が、揺動手段22によって回転関節13に対して回転力を加えて揺動させたときに、テザー1を伸展している場所に固定された座標系に対し、中間部材12の軸方向がなす角度は変化するが、先端部材11の軸方向がなす角度は一定に保たれる重さに調整されている。言い換えれば、中間部材12が揺動したときの動作反力によって先端部材11がほとんど動作しない程度の重さに調整されている。
このため、揺動手段22によって回転関節13の軸周りに先端部材に対して中間部材12を揺動させる角度の制御を、単純なD制御とすることができ、中間部材を先端部材に対して揺動させる角度の計算時間を短くすることができるが、詳細は後述する。
【0015】
また、図2に示すように、揺動手段22は、その動作を制御する制御装置21に接続されている。また、この制御装置21には、先端部材11に対する中間部材12が揺動するときの角速度を直接検出するセンサ23が接続されている。このセンサ23は、例えば、レートジャイロセンサー等があるが、角速度を直接検出できるものであれば特に限定はない。
【0016】
つぎに、本発明の姿勢制御方式による先端部材11の姿勢制御を行う手順を説明する。
図4は本発明の姿勢制御方式による先端部材11の姿勢制御を行う手順の説明図である。図4において、符号13a,13bは、システムが安定状態(例えば、図4(A)の状態)となったときに、テザー1の軸方向(図4(A)では上下方向)と直交する2軸を示しており、軸13aは図4(A)において紙面と垂直な軸であり、軸13bでは図4(A)において左右方向の軸である。
なお、中間部材12と先端部材11は、軸13a、軸13bの両軸周りに揺動可能であるが、説明をわかりやすくするために、図4には、左右方向の揺動、軸13a周りの揺動のみ示している。
【0017】
図4(A)に示すように、テザー1、中間部材12および先端部材11が一直線に並んだ状態(以下、安定状態という)から、先端部材11に外力Fが加わると、テザー1が伸展されている座標(以下、基準座標という)に対して、先端部材11の姿勢角が変化し、システム全体は安定状態から、不安定な状態に変化する。
すると、テザー1には張力Tが発生し、このテザー1の張力Tによって、先端部材11には元の状態、つまり、先端部材11を基準座標に対して元の姿勢角に戻すように、軸13a、軸13bまわり(図4(B)において軸13aまわりでは矢印aの方向)に回転される。
このとき、テザー1の張力Tに起因する回転力、言い換えれば、先端部材11を元の姿勢に戻そうとする復元力が先端部材11に働いており、大気中や重力が作用する空間では、先端部材11や中間部材12に特別な動作をさせなくても、空気抵抗や重力によって復元力が減衰され、やがて先端部材11は停止するが、その停止までの時間は長くなるし、宇宙空間などでは、そのような抵抗がないため、先端部材11は回転振動することになる。そこで、以下のごとく、中間部材12を先端部材11に対して揺動させれば、中間部材12の揺動によって復元力を減衰させることができる。
【0018】
テザー1の張力に起因する回転力による先端部材11の姿勢角の変化速度、言い換えれば、回転関節13の軸13a、軸13bをそれぞれ中心とする先端部材11の回転速度がセンサ23によって検出されると、センサ23から制御装置21に対して先端部材11の姿勢角の変化速度に対応する信号が入力される。すると、制御装置21が、先端部材11に固定された軸13aと軸13bを2軸とする座標系Σにおける現在の先端部材11の姿勢角変化速度に基づいて、先端部材11の角速度ベクトルを算出し、軸13aと軸13bの軸方向の成分から、軸13aと軸13bの各軸周りに中間部材12を揺動させる角度φx、φyをそれぞれ算出する。
このとき、中間部材12の質量が先端部材に対して非常に小さいので、中間部材11の動作反力による先端部材11の姿勢変化を考慮しなくていよい。すると、中間部材11の揺動によって減衰力のみが発生すると考えられるから、以下の式によって軸13aと軸13bの各軸周りに中間部材12を揺動させる角度φx、φyをそれぞれ算出することができる。
なお、以下の式おいて、システムが安定状態(図4(A)の状態)となったときに、テザー1の軸方向(図4(A)では上下方向)と一致する方向が、座標系Σのz軸であり、図4(A)における左右方向、つまり軸13bの方向がy軸、図4(A)おける紙面に垂直な方向、つまり軸13aの方向がx軸、各軸周りの先端部材11の姿勢角が、z軸回り:θz,y軸回り:θx,x軸回り:θy,であり、x軸およびy軸周りの先端部材11の姿勢角の変化速度は、言い換えれば、x軸およびy軸方向の速度成分は、それぞれθy / dt,θx / dtである。
φx = - kd ( dθx / dt )
φy = - kd ( dθy / dt )
そして、座標系Σにおいて、中間部材12に、先端部材11の角速度ベクトルにおける軸13aと軸13bの軸方向の成分と同じ向きの回転角度が発生するように、揺動手段22によって中間部材12が、先端部材11に対して軸13aと軸13bの各軸周りに角度φx、φyだけ、それぞれ揺動される。
【0019】
すると、テザー1からの張力Tによって、回転関節13には、中間部材12を先端部材11に対して揺動させた方向と逆向きに、言い換えるとテザー1からの張力Tによって発生する回転力を増減させる向きに、先端部材11および中間部材12を回転させる回転力が、軸13a、軸13bの各軸周りにそれぞれ発生する。この回転力は、上述した復元力によって発生する各軸周りの回転力に減衰力を加えたものとなる。先端部材11の姿勢変動は、復元力に起因するものであるから、中間部材12の揺動によって、先端部材11の姿勢変動がテザー1からの張力Tにより吸収(減衰)されることになるから、先端部材11の角速度ベクトルの大きさを小さくすることができる。
【0020】
そして、図4(C)のように中間部材12の揺動によって先端部材11の角速度ベクトルが変化すると、再び制御装置21が、軸13a周りにおける先端部材11に対する中間部材12の揺動角度を算出し、揺動手段22によって中間部材12が算出された角度φxの分だけ揺動されれば、先端部材11の角速度ベクトルの大きさをさらに小さくできる。
上記制御を行えば、先端部材11の角速度ベクトルの大きさが0となり、システム全体が安定な状態、つまり、テザー1、中間部材12および先端部材11が一直線に並んだ状態で先端部材11を停止させることができる。
【0021】
上記のごとく、テザー先端機器10に外力Fが加わっても、その外力Fをテザー1の張力として蓄積することによって、その張力がテザー先端機器10を回転させる回転力を発生させるから、この回転力を、テザー先端機器10を元の姿勢に戻そうとする復元力として機能させることができる。一方、揺動手段22によって中間部材12を先端部材11に対して揺動させれば、テザー1からテザー先端機器10に加わる張力によって、テザー先端機器10に復元力に加えて減衰回転力も発生させることができる。つまり、中間部材12を先端部材11に対して揺動させることによって、テザー1の張力によってテザー先端機器10に発生する回転力には、テザー先端機器10を元の姿勢に戻そうとする復元力とテザー先端機器10の回転運動を減衰させる減衰回転力の両方が含まれることになる。したがって、テザー先端機器10に外力Fが加わっても、テザー1の張力と中間部材12を先端部材11に対する揺動によってシステム全体を、迅速に安定な状態に戻すことができる。
【0022】
また、上述したように、中間部材12が、先端部材11に対して揺動したときに、その揺動による動作反力によって先端部材11がほとんど動作しない程度の重さに調整されているから、先端部材11の姿勢を制御するときにおける基準位置のズレを少なくすることができる。言い換えれば、一定の姿勢の先端部材11を基準として中間部材11の座標Σの角軸周りにおける揺動角度、言い換えれば、回転関節13の各軸周りにおける揺動角を算出することができるから、測定された角速度ベクトルに先端部材11の姿勢変化の補正を行う必要がなく、先端部材11の姿勢の制御効率を良くすることができる。
しかも、中間部材12を先端部材11に対して揺動させる角度の制御を、単純なD制御とすることができるから、回転関節13の各軸周りにおける中間部材12の揺動角の計算時間を短くすることができる。そして、回転関節13の各軸周りにおける中間部材12の揺動角を、回転関節13の各軸周りにおける先端部材11の角速度、つまり先端部材11の姿勢角変化速度を利用してフィードバック制御をしているので、各軸周りにおける先端部材11の揺動角度の測定誤差に起因する制御誤差を少なくすることができ、先端部材11の姿勢を高精度に制御することができる。
なお、揺動手段22によって中間部材12を先端部材11に対して揺動させることによる、テザー1からテザー先端機器10に加わるテザー1の張力による回転力が、特許請求の範囲にいう減衰回転力である。
【0023】
また、安定な状態における先端部材11の姿勢、言い換えれば、安定な状態におけるテザー1の軸方向に対する先端部材11の角度を変化させる場合には、y軸周り、x軸周りにおける目標姿勢角を、それぞれθdx、θdyとすれば、以下の式で制御することができる。なお、θdx、θdyは、テザー1を伸展している場所に固定された座標系(固定座標)において、目標とする姿勢角である。
φx = -θdx - kd ( dθx / dt )
φy = -θdy - kd ( dθy / dt )
この場合も、上記のごとく、先端部材11の姿勢角変化速度が0となるまで、フィードバック制御を行えば、先端部材11を、固定座標における目標とする姿勢にすることができる。
【実施例】
【0024】
本発明の姿勢制御方式を採用した場合におけるテザー1およびテザー先端機器10の姿勢変動を数値シミュレーションした結果を示す。シミュレーションは、テザーを伸展および回収するときにおける制御効果を、(a) 制御無し、(b) P 制御、(c) D 制御、(d) PD 制御とした場合で比較検証した。
シミュレーションでは、重力はゼロとしテザーに張力を与え、先端部材が回転運動を行うように、初期外乱を設定している。そして、中間部材の重量は、中間部材が揺動したときの動作反力によって先端部材がほとんど動作しない重さ、つまり、質量≒0としている。テザー張力 T = 0.3 [N],目標姿勢 θd = 0 [rad]とし,次の制御パラメータを設定した。
(a) 制御無し kp (P) = kd (D) = 0
(b) P 制御 kp (P) = 1, kd (D) = 0
(c) D 制御 kp (P) = 0, kd (D) = 1
(d) PD 制御 kp (P) = kd (D) = 1
なお、本実施例では、空間3次元モデルを用いて計算しており、テザー1は有限要素法により柔軟性を考慮したモデル化を行っている。
【0025】
図5に示すように、(a) 制御無しの場合や、(b) P 制御のみの場合には、重力はゼロであるため、先端部材の姿勢角は目標姿勢角(0度)に向かって収束せず、時間が経過しても安定状態に移行させることができないことが確認できる。
一方、(c) D 制御のみや、(D) PD 制御の場合には、制御を開始してからすぐに先端部材の姿勢角が目標姿勢角(0度)に向かって収束し、先端部材の運動が停止することが確認できる。つまり、D制御またはPD制御によって中間部材の揺動角度を制御すれば、中間部材を揺動させることによって、テザーの張力に起因して先端機器に作用する回転力および先端部材の姿勢を制御できる。
そして、前述の通り制御精度の観点からP制御による高精度制御は困難であり、PD制御よりもD制御のほうが高い制御精度が期待でき、上記のシミュレーション結果よりD制御のみでも十分な制御効果が得られることから、D制御のみを採用して中間部材の揺動角度を制御することが、テザー先端機器の高精度の姿勢制御に有効であることが確認できる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明のテザーに連結された機器の姿勢制御方式は、テザーに連結された機器によって様々な作業を行う場合に、様々な機器の姿勢制御に応用することができ、宇宙船や人工衛星などの無重力空間での姿勢制御、クレーンのワイヤーに連結された機器など重力が働く空間のいずれにも採用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】テザー1およびテザー先端機器10の概略説明図である。
【図2】テザー1およびテザー先端機器10の安定状態の概略説明図である。
【図3】(A)は制御部20のブロック図であり、(B)回転関節13の一例を示した図である。
【図4】本発明の姿勢制御方式による先端部材11の姿勢制御を行う手順の説明図である。
【図5】(A)はx軸回りの先端部材の姿勢角 θx の時間変動を示した図であり、(B)はx軸回りの中間部材12の姿勢角 φx の時間変動を示した図であり、(C)はy軸回りの先端部材の姿勢角 θy の時間変動を示した図であり、(D)はy軸回りの中間部材12の姿勢角 φy の時間変動を示した図である。
【符号の説明】
【0028】
1 テザー
10 テザー先端機器
11 先端部材
12 中間部材
13 回転関節
22 揺動手段
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4