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明細書 :熱化学水素製造方法及び熱化学水素製造装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4840900号 (P4840900)
公開番号 特開2006-335602 (P2006-335602A)
登録日 平成23年10月14日(2011.10.14)
発行日 平成23年12月21日(2011.12.21)
公開日 平成18年12月14日(2006.12.14)
発明の名称または考案の名称 熱化学水素製造方法及び熱化学水素製造装置
国際特許分類 C01B   3/02        (2006.01)
FI C01B 3/02 B
請求項の数または発明の数 2
全頁数 7
出願番号 特願2005-162316 (P2005-162316)
出願日 平成17年6月2日(2005.6.2)
審査請求日 平成19年11月21日(2007.11.21)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】505374783
【氏名又は名称】独立行政法人日本原子力研究開発機構
発明者または考案者 【氏名】久保 真治
【氏名】中島 隼人
【氏名】小貫 薫
【氏名】清水 三郎
個別代理人の代理人 【識別番号】100140109、【弁理士】、【氏名又は名称】小野 新次郎
【識別番号】100075270、【弁理士】、【氏名又は名称】小林 泰
【識別番号】100080137、【弁理士】、【氏名又は名称】千葉 昭男
【識別番号】100096013、【弁理士】、【氏名又は名称】富田 博行
【識別番号】100092015、【弁理士】、【氏名又は名称】桜井 周矩
【識別番号】100093713、【弁理士】、【氏名又は名称】神田 藤博
【識別番号】100091063、【弁理士】、【氏名又は名称】田中 英夫
【識別番号】100102727、【弁理士】、【氏名又は名称】細川 伸哉
【識別番号】100117813、【弁理士】、【氏名又は名称】深澤 憲広
【識別番号】100123548、【弁理士】、【氏名又は名称】平山 晃二
審査官 【審査官】安齋 美佐子
参考文献・文献 特開昭52-107296(JP,A)
特開昭52-020394(JP,A)
特開昭55-060001(JP,A)
特開昭62-065901(JP,A)
特開昭51-125689(JP,A)
特開平07-315812(JP,A)
調査した分野 C01B 3/00 - 3/58
特許請求の範囲 【請求項1】
循環物質としてヨウ素、二酸化硫黄、水、ヨウ化水素及び硫酸を含む化学物質を使用し、水を分解して水素と酸素を2:1の比率で製造する熱化学水素製造方法であって、
循環物質の組成計測器を備えたブンゼン反応器にて行われるブンゼン反応工程a、ヨウ化水素分解反応を行なうヨウ化水素分解反応工程b、及び硫酸分解反応を行なう硫酸分解反応工程cを含み、
ブンゼン反応工程aから、硫酸相溶液を貯留する貯留容器を経て、硫酸に富む硫酸相溶液を流量Aで硫酸分解反応工程cに供給し、
ヨウ化水素相溶液を貯留する貯留容器を経て、ヨウ化水素に富むヨウ化水素相溶液を流量Bでヨウ化水素分解反応工程bに供給し、
ヨウ化水素分解反応工程bから、ヨウ素を含む溶液を貯留する貯留容器を経て、ヨウ素を含む溶液を流量Eでブンゼン反応工程aに供給し、
水を含む溶液を貯留する貯留容器を経て、水を含む溶液を流量Dでブンゼン反応工程aに供給し、
硫酸分解反応工程cから、二酸化硫黄を含むガスあるいは溶液をブンゼン反応工程aに供給し、水を含む溶液をブンゼン反応工程aに供給し、
硫酸相溶液を硫酸分解反応工程cに供給する流量に相当する流量Aにて単位時問当たりの酸素発生量を設定し、硫酸分解反応工程cあるいはブンゼン反応工程aから製造した酸素を取り出すと同時に、発生した二酸化硫黄をブンゼン反応工程aへ全量戻し、
ブンゼン反応工程aでは、流量Aと同じ量の硫酸相溶液が再生されると同時にヨウ化水素相溶液が生成し、ヨウ化水素相溶液の流量である操作変数たる流量Bが、ヨウ化水素相溶液の貯留容器における制御変数たる液位を一定にするように調節され、ヨウ化水素分解反応工程bにおける反応と硫酸分解反応工程cにおける反応の反応量の不一致により循環物質の過不足が系内に生じた場合に当該過不足を解消するように流量Bが決まり、
ヨウ化水素分解反応工程bでは、流量Bに応じた量の水素が発生し、更に、操作変数たる原料水流量Cが、水を含む溶液の貯留容器における制御変数たる液位を一定にするように調整され、これにより、系内に生じる水の過不足に応じて、流量Cが決まり、
そして水を含む溶液の流量Dとヨウ素を含む溶液の流量Eが、組成計測器からの情報を元に、ブンゼン反応工程aのブンゼン反応の結果生じる溶液の組成を一定にするように調整されることにより、安定かつ達続的に水素が製造される、方法。
【請求項2】
循環物質としてヨウ素、二酸化硫黄、水、ヨウ化水素及び硫酸を含む化学物質を使用し、水を分解して水素と酸素を2:1の比率で製造する熱化学水素製造装置であって、
循環物質の組成計測器を備えたブンゼン反応を行う反応器を含む反応工程部a、ヨウ化水素分解反応を行う反応器を含む反応工程部b、及び硫酸分解反応を行う反応器を含む反応工程部cから構成され、
反応工程部aには、硫酸に富む硫酸相溶液を貯留する貯留容器と、流量Aで反応工程部cに供給する連結管と、ヨウ化水素に富むヨウ化水素相溶液を貯留する貯留容器と、流量Bで反応工程部bに供給する連結管と、が設けられ、
反応工程部bには、ヨウ素を含む溶液を貯留する貯留容器と、流量Eで反応工程部aに供給する連結管と、水を含む溶液を貯留する貯留容器と、流量Dで反応工程部aに供給する連結管と、が設けられ、
反応工程部cには、二酸化硫黄を含むガスあるいは溶液を反応工程部aに供給する連結管と、水を含む溶液を反応工程部aに供給する連結管と、が設けられ、
硫酸相溶液を反応工程部cに供給する流量に相当する流量Aにて単位時問当たりの酸素発生量を設定し、反応工程部cあるいは反応工程部aから製造した酸素を取り出すと同時に、発生した二酸化硫黄を反応工程部aへ全量戻し、
反応工程部aでは、流量Aと同じ量の硫酸相溶液が再生されると同時にヨウ化水素相溶液が生成し、ヨウ化水素相溶液の流量である操作変数たる流量Bが、ヨウ化水素相溶液の貯留容器における制御変数たる液位を一定にするように調節され、反応工程部bにおける反応と反応工程部cにおける反応の反応量の不一致により循環物質の過不足が系内に生じた場合に、当該過不足を解消するように流量Bが決まり、
反応工程部bでは、流量Bに応じた量の水素が発生し、更に、操作変数たる原料水流量Cが、水を含む溶液の貯留容器における制御変数たる液位を一定にするように調整され、これにより、系内に生じる水の過不足に応じて、流量Cが決まり、
そして水を含む溶液の流量Dとヨウ素を含む溶液の流量Eが、組成計測器からの情報を元に、反応工程部aのブンゼン反応の結果生じる溶液の組成を一定にするように調整されることにより、安定かつ達続的に水素が製造される、装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、熱化学水素製造法に係わり、特に、安定かつ連続的に水素を製造する装置の機構に関する。
【背景技術】
【0002】
水を直接、水素と酸素に熱分解するためには4000℃以上もの高温が必要である。熱化学水素製造法は二つ以上の化学反応を組み合わせることにより、1000℃程度の平衡的に不利な条件においても水分解を有意な速度で進行させる方法として知られている。
【0003】
一例として、化学反応に必要な化学物質をXとすると、熱化学水素製造法の反応式は
H2O + X = H2 + XO (1)
XO = X + 0.5 O2 (2)
と表すことが出来る。
【0004】
熱化学水素製造法は、原料は水のみであり、熱を用いて水分解を行い酸素と水素のみを生成するという特徴を持つ。さらに、水以外の反応に必要な化学物質は化学形を変えながら循環し系内に密閉される閉サイクル性という特徴を持つ。この例では、循環物質は、H2O、X、XO であり、反応(1)においてXが消費されXOが生成される。反応(2)においてXOが消費されXが生成される。原料のH2Oは外部から加えられ、反応(1)と反応(2)の両者にてH2、O2に分解される。安定な水分解が行われる場合においては、反応(1)と反応(2)の反応量は等しく、製造する水素と酸素の製造量の比は H2:O2 = 2:1 となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記例の反応(1)、反応(2)は個別に行う化学反応であり、これら二つの反応量の不一致により、H2:O2 = 2:1 に成り難くい。このため安定かつ連続的な水素製造が困難になるという問題があった。
【0006】
本発明は、熱化学水素製造法を用いて、安定に水素を製造できるように、水素と酸素の発生量を、H2:O2 = 2:1 になるように制御するための、制御変数及び操作変数を装置内に創出することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題を解決するために、以下の手段を採用した。熱化学水素製造法では、安定な水素製造が行われている場合においては、循環物質が生成と消費を過不足なく繰り返している。安定でない場合、即ち、H2:O2 = 2:1 でない場合には、閉サイクル性故に、系内の循環物質に過不足、すなわち、余剰または過剰が生じる。本発明は、各反応量の不一致の結果生じる循環物質の過不足量を積分することにより検知し、これにより制御変数を創出し、この過不足を元に復帰できるように各反応量を調整するための循環物質の循環流量を操作変数として創出するものである。即ち、本発明は、系内に生じる循環物質の過不足を積極的に利用し、化学プロセスとして扱いが容易な流量、液位を主として用いて水素と酸素の発生量を H2:O2 = 2:1 に制御可能にしたことを要旨とする。
【0008】
本発明は、二つ以上の化学反応を用いて、水を分解し、水素と酸素を製造する装置であって、化学反応を複数の機器から成る反応工程部で行い、二つ以上の反応工程部を連結管で結合し、連結管の内部を化学反応に寄与する化学物質である循環物質が移動することを特徴とするものである。
【0009】
また、連結管にて払い出される循環物質の組成を一定化する機能を有する反応工程部を有するとともに、反応工程部から循環物質を払い出す連結管を複数設け、各々の連結管の循環物質の組成を異にする機能を有することを特徴とするものである。
【0010】
更に、内在する循環物質の体積あるいは質量を計測する機能を有する貯留容器か連結管の中途に設けられるとともに、循環物質を貯留容器から払い出すと同時に反応工程部に供給する循環物質輸送機を有し、循環物質輸送機は、流量の調節または上流の貯留容器に内在する循環物質体積あるいは質量を調節し、また、反応工程部に内在する循環物質の総量を一定化する機能を備えることを特徴とするものである。
【0011】
また、反応工程部への循環物質の供給量の増加に応じて、生じる化学反応の量が増加し、供給量の減少で、生じる化学反応の量が減少する機能を持たせた反応工程部を有するとともに循環物質の組成計測機能を設けた反応工程部を有することを特徴とするものである。
【0012】
なお、本発明の趣旨を逸脱しない限り、貯留容器と反応工程部は一体化しても良い。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、連続水素製造装置において、その装置内における複数の熱化学反応工程部系内に生じる循環物質の過不足を積極的に利用し、特に、化学プロセスとして扱いが容易な流量、液位を主として利用することにより水素と酸索の発生量を常にH2:O2=2:1に制御可能にし、安定して水素を製造することができるようにするものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を添付した図1に基づいて説明する。
本例は、熱化学水素製造法のうち、ISプロセス(SIプロセスともいう)として知られる方法に、本発明を適用したものである。
【0015】
ISプロセスは、前記化学物質Xとして、ヨウ素 I、硫黄 Sを用いるものであり次の三つの化学反応から構成されている。
I2+ SO2 + 2H2O = 2HI + H2SO4 (3)
2HI = H2 + I2 (4)
H2SO4= H2O + SO2 + 0.5O2 (5)
反応(3)は、ブンゼン反応として知られており、この反応によってニ種類の酸(ヨウ化水素相溶液と硫酸相溶液)が生成される。
【0016】
ヨウ化水素相溶液はヨウ化水素に富み、水及びヨウ素を含む溶液であり、硫酸相溶液は硫酸に富み、水を含む溶液である。反応(4)、(5)では、反応(3)により生成されたそれぞれの酸が熱分解され、水素及び酸素に加えて、同時に、反応(3)の反応物であるヨウ素及び二酸化硫黄が生成される。ヨウ素を含む溶液、二酸化硫黄を含むガスあるいは溶液及び水を含む溶液が反応(3)に戻される。これらの反応を閉サイクル状態で行うことにより、熱を供給するだけで水から酸素と水素を得ることが出来る。
【0017】
本例では、循環物質は、I2、SO2、H2O、HI及びH2SO4であり、反応(3)はブンゼン反応工程部にて、反応(4)はヨウ化水素分解反応工程部にて、反応(5)は硫酸分解反応工程部にて行う。各反応工程部は、化学反応を行う主たる反応器とそれ以外の分離器等の複数の機器から成る。
【0018】
これら三つの反応工程部を、連結管1~6 を用いて接続し、連結管内を循環物質が移動する。連結管の中途には、貯留容器1~4が設けられるとともに、循環物質輸送機たるポンプ1~4が設けられている。
【0019】
反応工程部から貯留容器に循環物質を払い出す連結管は、複数設けられており、反応工程部において分離温度の一定の下の気液分離あるいは二液相分離等を行うことにより、循環物質の組成を一定化し、かつ、循環物質の組成が互いに異なるようになっている。
【0020】
各反応工程部には、循環物質の大半が溶液として存在し、各反応工程部を構成する全ての機器に内在する溶液の組成と液位をそれぞれ一定化することにより、反応工程部に内在する循環物質の総量を一定化している。各反応工程部では、反応工程部へ供給する循環物質の供給量の増減で反応が生じる量を調整している。
【0021】
反応工程部から貯留容器に払い出される循環物質は、本例においては、溶液であるので、貯留容器の液位を測定し、内在する循環物質体積を計測するようになっている。また、ブンゼン反応工程部において、反応(3)を行うブンゼン反応器は、循環物質の組成計測器を備えている。
【0022】
本発明にて水素製造を行う際には、まず、なんらかの速度、好ましくは流量Aにて、単位時間当たりの酸素発生量を設定する。流量Aは硫酸相溶液を硫酸分解工程部に供給する流量である。
【0023】
硫酸分解工程部あるいはブンゼン反応工程部から製造した酸素を装置から取り出し、同時に、発生した二酸化硫黄は、ブンゼン反応工程部へ全量戻す。
ブンゼン反応工程部では、流量Aと同じ量の硫酸相溶液が再生されると同時にヨウ化水素相溶液が生成する。
【0024】
ヨウ化水素相溶液の循環流量である操作変数たる流量Bは、制御変数たる貯留容器2の液位1を一定にするように調節する。反応(4)と反応(5)の反応量の不一致により、循環物質の過不足が生じ、これが解消するように流量Bが決まる。ヨウ化水素分解反応工程部では、流量Bに応じた量の水素が発生する。
【0025】
操作変数たる原料水流量Cは、制御変数たる液位2を一定にするように調整する。これにより、系内に生じる水の過不足に応じて、流量Cが決まる。
流量Dと流量Eは、組成計測器からの情報を元に、反応(3)の結果生じる溶液の組成を一定にするように調整する。
【0026】
これらの形態により、本発明は、安定かつ連続的に水素を製造する機構を提供する。
【実施例】
【0027】
本発明を、ISプロセスに適用し、水素製造を実施した。水素製造装置は、十数個の主要な分離器、反応器、精製器、濃縮器から成り、大きさ 横5メートル、奥行き4メートル、高さ5メートル程である。加熱方式は電気ヒーター、装置材料はガラスとテフロン(登録商標)、 運転圧力は大気圧である。製造装置の主な運転条件は, 反応(3)の温度: 約70℃、反応(4)の温度: 約500℃、反応(5)の温度: 約850℃であり、流量A: 約300cc/h、流量Bは 約1200cc/hである。
【0028】
前記、水素製造装置による酸素及び水素の製造量を図2に示す。図2の横軸は、水素製造装置を運転した時間であり、縦軸は運転時間中に製造した酸素及び水素の積算量であって、およそ31L/hの水素を175時間に亘って製造した結果である。
【0029】
このように本発明では、水素と酸素の発生量を、H2:O2 = 2:1 になるように制御し、安定な水素製造を行うことができる。
【産業上の利用の可能性】
【0030】
熱化学水素製造法は、原子力の熱と水だけから水素を製造でき、二酸化炭素を出さない方法として産業化の期待が高まっている。本発明によれば、熱化学水素製造法による安定した水素製造を実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の連続水素製造装置を熱化学水素製造法であるISプロセスに適用した例である。
【図2】本発明を、ISプロセスに適用し、水素製造を実施した例である。
図面
【図1】
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【図2】
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