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明細書 :燃料電池用電極触媒の製造方法及びその方法で製造された電極触媒並びにその電極触媒を用いた燃料電池

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4452887号 (P4452887)
公開番号 特開2007-026746 (P2007-026746A)
登録日 平成22年2月12日(2010.2.12)
発行日 平成22年4月21日(2010.4.21)
公開日 平成19年2月1日(2007.2.1)
発明の名称または考案の名称 燃料電池用電極触媒の製造方法及びその方法で製造された電極触媒並びにその電極触媒を用いた燃料電池
国際特許分類 H01M   4/88        (2006.01)
H01M   4/90        (2006.01)
H01M   4/96        (2006.01)
H01M   8/10        (2006.01)
FI H01M 4/88 C
H01M 4/90 X
H01M 4/96 B
H01M 8/10
請求項の数または発明の数 7
全頁数 14
出願番号 特願2005-204029 (P2005-204029)
出願日 平成17年7月13日(2005.7.13)
審査請求日 平成18年2月7日(2006.2.7)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504145364
【氏名又は名称】国立大学法人群馬大学
発明者または考案者 【氏名】尾崎 純一
【氏名】大谷 朝男
【氏名】木村 直文
個別代理人の代理人 【識別番号】100085372、【弁理士】、【氏名又は名称】須田 正義
審査官 【審査官】小川 進
参考文献・文献 特開2004-362802(JP,A)
尾崎純一,「炭素材料をベースとした固体高分子形燃料電池用触媒の開発」,Jour. HTSJ,2004年 3月,Vol.43, No.179,p.21~25
坂下雅雄、田所健一郎、M.R.Tarasevich、V.A.Bogdanovskaya、Z.R.Ismagilov、M.A.Kerzhentsev ,「コバルト・ポルフィリン錯体を熱処理修飾したPEFCカソード担体炭素の酸素還元反応」,第45回電池討論会 講演要旨集,電気化学会電池技術委員会,2004年11月27日,p.30~31
調査した分野 H01M 4/88
H01M 4/90
H01M 4/96
H01M 8/10
特許請求の範囲 【請求項1】
熱硬化性樹脂の前駆体に、貴金属以外の含遷移金属化合物を混合し加熱反応させて重合することにより貴金属以外の遷移金属化合物を含有する熱硬化性樹脂を得る重合工程と、
前記重合物を熱処理して炭素化する炭素化工程と、
前記炭素化物を微粉砕した後にこの炭素化物に含窒素化合物を混合して熱処理することにより前記貴金属以外の遷移金属(11)及び窒素(13)が添加された炭素材料(12)を得る熱処理工程と
を含む燃料電池用電極触媒の製造方法。
【請求項2】
熱硬化性樹脂の前駆体に、貴金属以外の含遷移金属化合物を混合し加熱反応させて重合することにより貴金属以外の遷移金属化合物を含有する熱硬化性樹脂を得る重合工程と、
前記重合物を熱処理して炭素化する炭素化工程と、
前記炭素化物を微粉砕した後にこの炭素化物に含ホウ素化合物を混合して熱処理することにより前記貴金属以外の遷移金属(11)及びホウ素(14)が添加された炭素材料(12)を得る熱処理工程と
を含む燃料電池用電極触媒の製造方法。
【請求項3】
熱硬化性樹脂の前駆体に、貴金属以外の含遷移金属化合物を混合し加熱反応させて重合することにより貴金属以外の遷移金属化合物を含有する熱硬化性樹脂を得る重合工程と、
前記重合物を熱処理して炭素化する炭素化工程と、
前記炭素化物を微粉砕した後にこの炭素化物に含窒素化合物及び含ホウ素化合物を混合して熱処理することにより前記貴金属以外の遷移金属(11)、窒素(13)及びホウ素(14)が添加された炭素材料(12)を得る熱処理工程と
を含む燃料電池用電極触媒の製造方法。
【請求項4】
貴金属以外の遷移金属がCo、Fe及びCuからなる群より選ばれた1種又は2種以上の金属である請求項1ないしいずれか1項に記載の燃料電池用電極触媒の製造方法。
【請求項5】
熱硬化性樹脂がポリフルフリルアルコール、フェノールホルムアルデヒド樹脂又はメラミン樹脂であり、貴金属以外の含遷移金属化合物が遷移金属フタロシアニン錯体、遷移金属ポルフィリン錯体、遷移金属アセチルアセトナト錯体、遷移金属メタロセン錯体又は遷移金属塩であり、含窒素化合物がメラミン、フタロシアニン、アクリロニトリル又はエチレンジアミン四酢酸であり、含ホウ素化合物がBF3錯体、ホウ酸又はホウ酸塩である請求項1ないしいずれか1項に記載の燃料電池用電極触媒の製造方法。
【請求項6】
請求項1ないしいずれか1項に記載の方法で製造された燃料電池用電極触媒。
【請求項7】
請求項に記載の燃料電池用電極触媒を固体高分子電解質膜の一方又は双方の面に層状に形成した電解反応層を有する燃料電池。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、白金や白金合金等の貴金属を全く担持しない燃料電池用電極触媒を製造する方法と、この方法により製造された電極触媒と、この電極触媒を用いた燃料電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高効率、無公害の燃料電池の実用化は、地球温暖化、環境汚染問題に対する重要な対処手段である。とくに昨今、燃料電池自動車(FCV:Fuel Cell Vehicle)や家庭用のコージェネレーション電源等に用いられる固体高分子型燃料電池は、低コスト化の可能性が大きく、広く研究、開発競争が展開されている。
こうした固体高分子型燃料電池において、その反応は多孔質ガス拡散電極内で起こる。十分な電流密度I(A/投影電極面積)を得るために、その電極としては、比表面積が大きくかつ導電性のあるカーボンブラックを多孔質構造体兼触媒担体としたものが一般に使用されている。また、その触媒としては白金(Pt)あるいは白金合金系触媒(Pt-Fe,Pt-Cr,Pt-Ru)が使用され、これら貴金属触媒が担体に高分散担持(粒径2~数十nm)されている。
【0003】
固体高分子型燃料電池では、これまで特に、カソード極で起こる酸素の還元反応が非常に起こりにくいため、標準的担体材料としてのある決まった銘柄の炭素担体に、触媒である白金が、例えば、1mg/cm2の割合で多量に投入されてきた。即ち、白金の標準的担体材料としては、(1)カーボンブラック、例えばカーボンブラック(Carbon Black)B1 Degussa-Huels社(フランクフルト)、(2)ファーネスブラック、例えばバルカン(Vulcan)XC-72 Cabot社(マサチューセッツ)、(3)アセチレンブラック、例えばシャウイニガンブラック(Shawinigan Black)Chevron Chemicals社(ヒューストン、テキサス)などが挙げられる。
【0004】
しかしながら、従来の標準的担体材料であるカーボンブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラックへの白金の担持の仕方は、白金をできるだけ微分散させることに多くの努力が傾注されてきた。そこでは、カーボンブラック等の標準的担体材料は、単に白金を分散させ易くするとともに、担体自体が導電性を与える媒体に過ぎず、担持された白金の活性化を十分に図ることができなかった。
【0005】
この点を改良するために、炭化水素系固体高分子電解質膜に、酸化物触媒、大環状金属錯体触媒及び遷移金属合金触媒の少なくとも一つの触媒を添加した固体高分子電解質膜が開示されている(例えば、特許文献1)。このように構成された固体高分子電解質膜では、発電時に酸化剤極で中間生成物として生成され強い酸化性を有する2個の過酸化水素分子のうち、一方の過酸化水素分子が酸化し他方の過酸化水素分子が還元する不均化反応により水になる反応の活性化エネルギが、触媒により下げられるので、固体高分子電解質膜中に侵入してきた過酸化水素を分解することができ、固体高分子電解質膜が過酸化水素により分解されるのを防止できる。また上記固体高分子電解質膜では、大環状金属錯体触媒を添加する場合、この触媒として、鉄フタロシアニン、銅フタロシアニン、亜鉛フタロシアニン及びコバルトフタロシアニンの少なくとも一つが用いられる。これにより上記不均化反応の触媒効果が特に大きくなる。
【0006】
一方、B、N及びPよりなる群から選ばれた少なくとも1種類の元素を含有する粒子状又はファイバー状のカーボン担体に白金粒子等を含む燃料電池用触媒が開示されている。この燃料電池用触媒は、B、N及びPよりなる群から選ばれた少なくとも1種類の元素を含有する化合物をガス状態にしてカーボン担体の入っている炉に導入し、そこで600~900℃で加熱処理するか、或いはカーボン担体が設置されている真空チャンバーで放電してプラズマを発生させ、そこにキャリアーガスとともにB、N及びPよりなる群から選ばれた少なくとも1種類の元素を含有する化合物をガス状態で導入して一定時間反応させることにより、製造される(例えば、特許文献2)。

【特許文献1】特開2000-106203号公報([0004]、[0008]、[0010]、[0017]、[0019])
【特許文献2】特開2004- 79244号公報([0010]、[0019]、[0025]~[0027])
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記従来の特許文献1に示された固体高分子電解質膜では、触媒として、鉄フタロシアニン、銅フタロシアニン、亜鉛フタロシアニン及びコバルトフタロシアニンの少なくとも一つを用いることにより、不均化反応の触媒効果が大きくなるけれども、電流密度を増大できないという不具合があった。
また、特許文献2に示された燃料電池用触媒では、B又はNを含有する化合物をガス状態にしてカーボン担体を熱処理又はプラズマ処理しているけれども、カーボン担体の活性点であるエッジ面をカーボン担体に導入できず、もっぱら窒素及びホウ素の電子的な相互作用により白金触媒が活性化された触媒を調製するのみで、電流密度が未だ低い問題点があった。
本発明の目的は、高価な白金や白金合金等の貴金属を担持せずに、高い酸素還元活性を発現できる、燃料電池用電極触媒の製造方法及びその方法で製造された電極触媒を提供することにある。
本発明の別の目的は、高価な白金や白金合金等の貴金属を担持せずに、極めて高い電流密度を得ることができる、燃料電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
求項に係る発明は、図1に示すように、熱硬化性樹脂の前駆体に、貴金属以外の含遷移金属化合物を混合し加熱反応させて重合することにより貴金属以外の遷移金属化合物を含有する熱硬化性樹脂を得る重合工程と、この重合物を熱処理して炭素化する炭素化工程と、炭素化物を微粉砕した後にこの炭素化物に含窒素化合物を混合して熱処理することにより貴金属以外の遷移金属11及び窒素13が添加された炭素材料12を得る熱処理工程とを含む燃料電池用電極触媒の製造方法である。
【0009】
求項に係る発明は、図1に示すように、熱硬化性樹脂の前駆体に、貴金属以外の含遷移金属化合物を混合し加熱反応させて重合することにより貴金属以外の遷移金属化合物を含有する熱硬化性樹脂を得る重合工程と、この重合物を熱処理して炭素化する炭素化工程と、炭素化物を微粉砕した後にこの炭素化物に含ホウ素化合物を混合して熱処理することにより貴金属以外の遷移金属11及びホウ素14が添加された炭素材料12を得る熱処理工程とを含む燃料電池用電極触媒の製造方法である。
【0010】
求項に係る発明は、図1に示すように、熱硬化性樹脂の前駆体に、貴金属以外の含遷移金属化合物を混合し加熱反応させて重合することにより貴金属以外の遷移金属化合物を含有する熱硬化性樹脂を得る重合工程と、この重合物を熱処理して炭素化する炭素化工程と、炭素化物を微粉砕した後にこの炭素化物に含窒素化合物及び含ホウ素化合物を混合して熱処理することにより貴金属以外の遷移金属11、窒素13及びホウ素14が添加された炭素材料12を得る熱処理工程とを含む燃料電池用電極触媒の製造方法である。
求項に係る発明は、請求項1ないしいずれか1項に係る発明であって、更に貴金属以外の遷移金属がCo、Fe及びCuからなる群より選ばれた1種又は2種以上の金属であることを特徴とする。
請求項に係る発明は、請求項に記載の燃料電池用電極触媒を固体高分子電解質膜の一方又は双方の面に層状に形成した電解反応層を有する燃料電池である。
【発明の効果】
【0012】
求項1~3に係る発明では、熱硬化性樹脂の前駆体に、貴金属以外の含遷移金属化合物を混合し加熱反応させて重合することにより貴金属以外の遷移金属化合物を含有する熱硬化性樹脂を作製し、この重合物を熱処理して炭素化し微粉砕した後に、この炭素化物に含窒素化合物又は含ホウ素化合物のいずれか一方又は双方を混合して熱処理したので、貴金属以外の遷移金属の作用により、熱硬化性樹脂の前駆体がシェル状構造を作りながら炭素化して、この炭素材料の表面に活性点となる六角網面のエッジが多数露出した後に、これらのエッジに窒素又はホウ素のいずれか一方又は双方が組込まれる。この結果、高価な白金や白金合金等の貴金属を担持せずに、窒素又はホウ素が、貴金属以外の遷移金属を添加することにより得られたシェル状構造の炭素材料からなる触媒担体の酸素還元活性を向上させるため、酸素還元活性を向上できる。従って、上記炭素材料からなる触媒担体は相乗的な酸素還元活性、即ち極めて高い酸素還元活性を発現できる。
【0013】
求項に係る発明では、高価な白金や白金合金等の貴金属を担持せずに、比較的低廉のCo、Fe及びCuからなる群より選ばれた1種又は2種以上の遷移金属を担持させたので、触媒の製造コストを低減することができる。
請求項に係る発明では、上記方法で製造された燃料電池用電極触媒を固体高分子電解質膜の一方又は双方の面に層状に形成した電解反応層を用いて燃料電池を作製したので、触媒で高い酸化還元能力が発現され、燃料電池の電流密度が極めて高く又は比較的高くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
本実施の形態の燃料電池用電極触媒は、貴金属以外の遷移金属、ホウ素及び窒素を含む炭素材料により構成される。この炭素材料は、貴金属以外の遷移金属と、14族の炭素原子の両隣に位置するホウ素原子及び窒素原子と、炭素原子とのカーボンアロイ微粒子である。こうしたカーボンアロイ微粒子により、これまで触媒金属を高分散に担持させる触媒担体として用いられてきた炭素材料自身が酸素還元触媒能を有し、燃料電池用電極触媒として好適に使用することが可能となる。なお、貴金属以外の遷移金属としては、Co、Fe及びCuが挙げられる。また遷移金属を貴金属以外の遷移金属に限定したのは、貴金属以外の遷移金属が炭素原子と適度な親和性をもつため、炭素構造形成において触媒的な効果を発現することにより、炭素材料の表面に活性点となる六角網面のエッジを多数露出させることができるからである。更に貴金属以外の遷移金属の担持量は、炭素材料100重量%に対し0.1~50重量%、好ましくは5~20重量%に設定される。ここで、貴金属以外の遷移金属の担持量を0.1~50重量%の範囲に限定したのは、0.1重量%未満では酸素還元活性を十分に発現できず、50重量%を越えると遷移金属の添加量を増大しても酸素還元活性が向上しないからである。
【0015】
[a] 貴金属以外の遷移金属、窒素及びホウ素を含む炭素材料の第1の製造方法
先ず、熱硬化性樹脂の前駆体に、貴金属以外の含遷移金属化合物と含窒素化合物と含ホウ素化合物とを混合し加熱反応させて重合することにより、貴金属以外の遷移金属化合物、窒素化合物及びホウ素化合物を含有する熱硬化性樹脂を得る。熱硬化性樹脂としては、ポリフルフリルアルコール、フェノールホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂などが挙げられ、貴金属以外の含遷移金属化合物(遷移金属源)としては、遷移金属フタロシアニン錯体、遷移金属ポルフィリン錯体、遷移金属アセチルアセトナト錯体、遷移金属メタロセン錯体、遷移金属塩などが挙げられる。また含窒素化合物(窒素源)としては、メラミン、フタロシアニン、アクリロニトリル、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)などが挙げられ、含ホウ素化合物(ホウ素源)としては、BF3エーテル錯体、BF3メタノール錯体、BF3ピリジン錯体、BF3テトラヒドロフラン(THF)錯体、ホウ酸、ホウ酸塩などが挙げられる。
【0016】
例えば、熱硬化性樹脂としてポリフルフリルアルコールを用い、貴金属以外の含遷移金属化合物としてコバルトフタロシアニン錯体を用い、含ホウ素化合物としてBF3メタノール錯体メタノール溶液(15%BF3含有)を用い、含窒素化合物としてメラミンを用いる場合には、先ずフルフリルアルコール100重量%にメタノールを700~900重量%を混合して混合溶液を調製した後に、この混合溶液100重量%に、コバルトフタロシアニン錯体0.11~54.3重量%、好ましくは5.43~21.72重量%と、メラミン0.84~36重量%、好ましくは1.2~6.0重量%と、BF3メタノール錯体メタノール溶液(15%BF3含有)25.8~259重量%、好ましくは38.7~155重量%とを加えて混合する。なお、含窒素化合物としてのメラミンの混合割合は、フルフリルアルコールとメラミンとの配合比をC:Nの原子比で、1:(0.07~3)、好ましくは1:(0.1~0.5)になるように計算した。また含ホウ素化合物としてのBF3メタノール錯体メタノール溶液(15%BF3含有)の混合割合は、フルフリルアルコールとBF3メタノール錯体メタノール溶液(15%BF3含有)との配合比をC:Bの原子比で、1:(0.1~1)、好ましくは1:(0.15~0.6)になるように計算した。更に上記BF3メタノール錯体メタノール溶液(15%BF3含有)の混合割合をBF3錯体の混合割合に換算すると、5.7~57重量%、好ましくは8.5~34.2重量%となる。上記混合物から溶媒を揮発させて除去した後に、圧力1Pa~101kPa及び温度50~200℃の窒素又はヘリウム等の不活性ガス雰囲気中に1~72時間保持して重合反応させると、コバルトフタロシアニン錯体、メラミン及びBF3錯体を含有するポリフルフリルアルコール(重合物)が得られる。ここで、フルフリルアルコール、メタノール、コバルトフタロシアニン錯体、メラミン及びBF3メタノール錯体メタノール溶液(15%BF3含有)の混合割合を上記範囲に限定したのは、この組成比で各成分の混合を十分に行うことができるという理由に基づく。またポリフルフリルアルコールを重合するときの雰囲気、圧力、温度及び時間を上記範囲に限定したのは、重合時の酸化防止、生成水の脱離促進及び適切な重合速度が得られるという理由に基づく。次に上記重合物を熱処理して炭素化する。この炭素化工程における雰囲気は窒素やヘリウム等の不活性雰囲気下であることが好ましく、炭素化のための熱処理温度は炭素化可能な温度であれば、特に制限はないが、好ましい温度は600~1500℃、より好ましい温度は700~1200℃である。また炭素化のための熱処理圧力は0.1~0.5MPaであることが好ましい。更に上記炭素化物を微粉砕することにより、貴金属以外の遷移金属、ホウ素及び窒素が添加された炭素材料、即ちカーボンアロイ微粒子が得られる。上記微粉砕には、遊星型ボールミル等のボールミルを用いることが好ましい。
【0017】
このように製造された燃料電池用電極触媒では、図1に示すように、貴金属以外の遷移金属11の作用により、熱硬化性樹脂の前駆体がシェル状構造を作りながら炭素化して、炭素材料12の表面に活性点となる六角網面のエッジ12aが多数露出し、同時にこれらのエッジ12aに窒素13やホウ素14が組込まれる。即ち、炭素材料12をシェル状構造に形成して炭素材料12に細孔構造を導入することにより、炭素材料12の反応表面積を増大できるとともに、この炭素材料12の広い表面のエッジ12a面に窒素13やホウ素14を効果的に導入できる。この結果、窒素13やホウ素14を添加した炭素材料12からなる触媒担体16の酸素還元活性は、この触媒担体16の広い表面積、触媒担体16に形成された活性なエッジ面及びこのエッジ面に埋め込まれた窒素及びホウ素により相乗的に向上される。従って、この触媒を固体高分子電解質膜の一方又は双方の面に層状に形成した電解反応層を有する燃料電池の電流密度は極めて高くなる。
【0018】
[b] 貴金属以外の遷移金属、ホウ素及び窒素を含む炭素材料の第2の製造方法
先ず、熱硬化性樹脂の前駆体に、貴金属以外の含遷移金属化合物を混合し加熱反応させて重合することにより貴金属以外の遷移金属化合物を含有する熱硬化性樹脂を得る。熱硬化性樹脂、貴金属以外の含遷移金属化合物、含ホウ素化合物及び含窒素化合物としては、上記第1の製造方法に挙げたものと同一のものが挙げられる。例えば、熱硬化性樹脂としてポリフルフリルアルコールを用い、貴金属以外の含遷移金属化合物としてコバルトフタロシアニン錯体を用い、含窒素化合物としてメラミンを用い、含ホウ素化合物としてBF3メタノール錯体メタノール溶液(15%BF3含有)を用いる場合には、フルフリルアルコール100重量%にメタノール700~900重量%を混合して混合溶液を調製した後に、この混合溶液100重量%に、コバルトフタロシアニン錯体0.11~54.3重量%、好ましくは5.43~21.72重量%を加えて混合し、更に重合開始剤として35%塩酸を1.1~3.4重量%添加して混合する。この混合物から溶媒を揮発させて除去した後に、圧力1Pa~101kPa及び温度50~200℃の窒素又はヘリウム等の不活性ガス雰囲気中に1~72時間保持して重合反応させる。これによりコバルトフタロシアニン錯体を含有するポリフルフリルアルコール(重合物)を合成する。次にこの重合物を熱処理して炭素化した後に、炭素化物を微粉砕する。この熱処理は上記第1の製造方法の炭素化するための熱処理と同一の熱処理である。更にこの微粉砕した炭素化物100重量%に、メラミン1~200重量%、好ましくは5~150重量%と、BF3メタノール錯体メタノール溶液(15%BF3含有)20~3000重量%、好ましくは80~2500重量%とを加えて混合し含浸担持させた後に、この混合物に対して上記炭素化のための熱処理と同一の熱処理を行うことにより、貴金属以外の遷移金属、ホウ素及び窒素が添加された炭素材料、即ちカーボンアロイ微粒子が得られる。
【0019】
このように製造された燃料電池用電極触媒では、貴金属以外の遷移金属の作用により、熱硬化性樹脂の前駆体がシェル状構造を作りながら炭素化して、この炭素材料の表面に活性点となる六角網面のエッジが多数露出した構造が形成され、更にホウ素と窒素を含浸担持した状態で熱処理を行うことにより、上記エッジに窒素又はホウ素のいずれか一方又は双方が組込まれる。即ち、炭素材料にシェル状構造を形成して炭素材料に細孔構造を導入することにより、炭素材料の反応表面積を増大できるとともに、この炭素材料の広い表面のエッジ面に窒素又はホウ素を効果的に導入できる。この結果、窒素及びホウ素が、貴金属以外の遷移金属の添加により得られたシェル状構造の炭素材料からなる触媒担体の酸素還元活性を向上させるため、上記炭素材料からなる触媒担体は相乗的な酸素還元活性、即ち極めて高い酸素還元活性を発現できる。従って、この触媒を固体高分子電解質膜の一方又は双方の面に層状に形成した電解反応層を有する燃料電池の電流密度は極めて高くなる。
【0020】
[c] 貴金属以外の遷移金属、ホウ素及び窒素を含む炭素材料の第3の製造方法
先ず、熱硬化性樹脂の前駆体に、含窒素化合物及び含ホウ素化合物とを混合し加熱反応させて重合することにより窒素化合物及びホウ素化合物を含有する熱硬化性樹脂を得る。熱硬化性樹脂、貴金属以外の含遷移金属化合物、含窒素化合物及び含ホウ素化合物としては、上記第1の製造方法に挙げたものと同一のものが挙げられる。例えば、熱硬化性樹脂としてポリフルフリルアルコールを用い、貴金属以外の含遷移金属化合物としてコバルトフタロシアニン錯体を用い、含ホウ素化合物としてBF3メタノール錯体メタノール溶液(15%BF3含有)を用い、含窒素化合物としてメラミンを用いる場合には、フルフリルアルコール100重量%にメタノール700~900重量%を混合して混合溶液を調製し、この混合溶液100重量%に、メラミン0.84~36重量%、好ましくは1.2~6.0重量%と、BF3メタノール錯体メタノール溶液(15%BF3含有)25.8~259重量%、好ましくは38.7~155重量%とを加えて混合し、この混合物から溶媒を揮発させて除去した後に、圧力1Pa~101kPa及び温度50~200℃の窒素又はヘリウム等の不活性ガス雰囲気中に1~72時間保持して重合反応させる。これによりメラミンお及びBF3錯体を含有するポリフルフリルアルコール(重合体)を合成する。次にこの重合物を熱処理して炭素化した後に、炭素化物を微粉砕する。この熱処理は上記第1の製造方法の炭素化するための熱処理と同一の熱処理である。更にこの微粉砕した炭素化物100重量%に、コバルトフタロシアニン錯体0.1~50重量%、好ましくは5~20重量%を加えて混合し含浸担持させた後に、この混合物に対して上記炭素化のための熱処理と同一の熱処理を行うことにより、貴金属以外の遷移金属、ホウ素及び窒素が添加された炭素材料、即ちカーボンアロイ微粒子が得られる。
【0021】
このように製造された燃料電池用電極触媒では、炭素材料がシェル状構造とならないけれども、この炭素材料の表面に露出するエッジに窒素又はホウ素のいずれか一方又は双方が組込まれる。即ち、炭素材料の反応表面積は増大しないけれども、この炭素材料の表面のエッジ面に窒素又はホウ素を導入できる。この結果、触媒が、窒素及びホウ素を添加した炭素材料からなる触媒担体の酸素還元活性と、貴金属以外の遷移金属の作用により形成された炭素構造がもたらす酸素還元活性とを加えた酸素還元活性、即ち比較的高い酸素還元活性を発現する。従って、この触媒を固体高分子電解質膜の一方又は双方の面に層状に形成した電解反応層を有する燃料電池の電流密度は比較的高くなる。
なお、上記実施の形態では、貴金属以外の遷移金属、ホウ素及び窒素を含む炭素材料を挙げたが、ホウ素を含まず貴金属以外の遷移金属及び窒素を含む炭素材料であってもよく、或いは窒素を含まず貴金属以外の遷移金属及びホウ素を含む炭素材料であってもよい。
【実施例】
【0022】
次に本発明の実施例を参考例及び比較例とともに詳しく説明する。
参考例1
先ずフルフリルアルコール10gにメタノール100mlを混合して混合溶液を調製し、この混合溶液に、コバルトフタロシアニン錯体2.090gと、メラミン7.499gと、BF3メタノール錯体メタノール溶液(15%BF3含有)118.7gとを順次加え、常温下でマグネチックスターラを用いて1時間撹拌した。この混合物に超音波を照射しながらロータリエバポレータを用いて60℃で溶媒を除去した後にシャーレに移し、圧力0.1MPa及び温度80℃の窒素雰囲気中に24時間保持して重合反応させ、コバルトフタロシアニン錯体、メラミン及びBF3錯体を含有するポリフルフリルアルコール(重合物)を合成した。
【0023】
次に上記合成したポリフルフリルアルコールを石英ボートに適量載せ、この石英ボートを石英製反応管の中心部に設置して、この反応管内に窒素500ml/分を20分間流通させた。20分経過後、窒素を500ml/分流通させたまま、反応管内を昇温速度10℃/分で1000℃まで昇温し、この温度に1時間保持した。1時間経過後、窒素を500ml/分流通させたまま室温まで自然冷却した。これによりフラン樹脂を炭素化した。更に上記炭素化物と直径12mmの窒化ケイ素製粉砕ボールとを、遊星ボールミルの窒化ケイ素製容器に入れ、この容器を600rpmの回転速度で1時間回転させて炭素化物を粉砕した。この粉砕された炭素化物を目開き250μmの篩にかけ、粒径250μm以下の炭素化物を、直径3mmの窒化ケイ素製粉砕ボールと15mlの蒸留水とともに遊星ボールミルの窒化ケイ素製容器に入れ、800rpmの回転速度で3時間回転させて炭素化物を湿式粉砕した。この粉砕された炭素化物を目開き45μmの篩にかけ、粒径45μm以下の炭素化物のみを回収し、この炭素化物をロータリエバポレータに収容して80℃に加熱することにより水を除去した後に、減圧乾燥器に入れて80℃に一晩保持し乾燥させた。このカーボンアロイ微粒子を参考例1とした。なお、このカーボンアロイ微粒子の表面には、炭素100重量%に対して、コバルトが3重量%含まれ、ホウ素及び窒素の合計が94.8重量%含まれるように、原料の混合割合を調整したものである。
【0024】
実施例1
先ずフルフリルアルコール10gにメタノール100mlを混合して混合溶液を調製し、この混合溶液に、コバルトフタロシアニン錯体2.090gを加え、更に35%塩酸を1g添加し、常温下でマグネチックスターラを用いて1時間撹拌した。この混合物に超音波を照射しながらロータリエバポレータを用いて60℃で溶媒を除去した後にシャーレに移し、圧力0.1MPa及び温度80℃の窒素雰囲気中に24時間保持して重合反応させ、コバルトフタロシアニン錯体を含有するポリフルフリルアルコール(重合物)を合成した。
【0025】
次に上記合成したポリフルフリルアルコールを石英ボートに適量載せ、この石英ボートを石英製反応管の中心部に設置して、この反応管内に窒素500ml/分を20分間流通させた。20分経過後、窒素を500ml/分流通させたまま、反応管内を昇温速度10℃/分で1000℃まで昇温し、この温度に1時間保持した。1時間経過後、窒素を500ml/分流通させたまま室温まで自然冷却した。これによりコバルトフタロシアニン錯体を含有するポリフルフリルアルコールを炭素化した。更に上記炭素化物と直径12mmの窒化ケイ素製粉砕ボールとを、遊星ボールミルの窒化ケイ素製容器に入れ、この容器を800rpmの回転速度で3時間回転させて炭素化物を粉砕した。この粉砕された炭素化物を目開き250μmの篩にかけ、粒径250μm以下の炭素化物を、直径3mmの窒化ケイ素製粉砕ボールと15mlの蒸留水とともに遊星ボールミルの窒化ケイ素製容器に入れ、800rpmの回転速度で3時間回転させて炭素化物を湿式粉砕した。この粉砕された炭素化物を目開き45μmの篩にかけ、粒径45μm以下の炭素化物のみを回収し、この炭素化物を目開き1μmの四フッ化エチレン樹脂(ポリテトラフルオロエチレン)製のフィルタにより水を除去した後に、減圧乾燥器に入れて80℃に一晩保持し乾燥させた。
【0026】
次に上記コバルトを含むカーボンアロイ微粒子0.3gに、メタノール39.6gと、メラミン0.3621gと、BF3メタノール錯体メタノール溶液(15%BF3含有)5.84gとを加え、常温下でソニケーター(超音波破砕装置)を用いて1時間撹拌して混合した後に、ロータリエバポレータに収容し40℃に保持してメタノールを除去した。この混合物を石英ボートに適量載せ、この石英ボートを石英製反応管の中心部に設置して、この反応管内に窒素500ml/分を20分間流通させた。20分経過後、窒素を500ml/分流通させたまま、反応管内を昇温速度10℃/分で1000℃まで昇温し、この温度に1時間保持した。1時間経過後、窒素を500ml/分流通させたまま室温まで自然冷却して熱処理物を得た。このカーボンアロイ微粒子を実施例1とした。なお、このカーボンアロイ微粒子中には、炭素100重量%に対して、コバルトが3重量%含まれ、ホウ素及び窒素の合計が94.4重量%含まれるように、原料の混合割合を調整したものである。
【0027】
実施例2
実施例1と同様にしてコバルトフタロシアニン錯体を含有するポリフルフリルアルコール(重合物)を合成し、この合成したポリフルフリルアルコールを参考例1と同様にして炭素化・粉砕・乾燥してコバルトを含むカーボンアロイ微粒子を作製した。次に上記コバルトを含むカーボンアロイ微粒子0.3gに、メタノール39.6gと、メラミン0.0158gと、BF3メタノール錯体メタノール溶液(15%BF3含有)0.26gとを加え、常温下でソニケーターを用いて1時間撹拌して混合した後に、ロータリエバポレータに収容し40℃に保持してメタノールを除去した。この混合物を石英ボートに適量載せ、この石英ボートを石英製反応管の中心部に設置して、この反応管内に窒素500ml/分を20分間流通させた。20分経過後、窒素を500ml/分流通させたまま、反応管内を昇温速度10℃/分で1000℃まで昇温し、この温度に1時間保持した。1時間経過後、窒素を500ml/分流通させたまま室温まで自然冷却して熱処理物を得た。このカーボンアロイ微粒子を実施例2とした。なお、このカーボンアロイ微粒子は、炭素100重量%に対して、コバルトが12.96重量%含まれることがXPS(X線光電子分光)より判明した。これに対し参考例1と同じホウ素/コバルトの比を実現するように、ホウ素及び窒素を添加したのが実施例2である。具体的には、ホウ素及び窒素の合計が7.46重量%含まれるように、原料の混合割合を調整したものである。
【0028】
参考例2
先ずフルフリルアルコール10gにメタノール100mlを混合して混合溶液を調製し、この混合溶液に、メラミン7.499gと、BF3メタノール錯体メタノール溶液(15%BF3含有)118.7gとを順次加え、常温下でマグネチックスターラを用いて1時間撹拌した。この混合物に超音波を照射しながらロータリエバポレータを用いて60℃で溶媒を除去した後にシャーレに移し、圧力0.1MPa及び温度80℃の窒素雰囲気中に24時間保持して重合反応させ、メラミン及びBF3錯体を含有するポリフルフリルアルコール(重合物)を合成した。
【0029】
次に上記合成したポリフルフリルアルコールを石英ボートに適量載せ、この石英ボートを石英製反応管の中心部に設置して、この反応管内に窒素500ml/分を20分間流通させた。20分経過後、窒素を500ml/分流通させたまま、反応管内を昇温速度10℃/分で1000℃まで昇温し、この温度に1時間保持した。1時間経過後、窒素を500ml/分流通させたまま室温まで自然冷却した。これによりメラミン及びBF3錯体を含有するポリフルフリルアルコールを炭素化した。更に上記炭素化物と直径12mmの窒化ケイ素製粉砕ボールとを、遊星ボールミルの窒化ケイ素製容器に入れ、この容器を600rpmの回転速度で1時間回転させて炭素化物を粉砕した。この粉砕された炭素化物を目開き250μmの篩にかけ、粒径250μm以下の炭素化物を、直径3mmの窒化ケイ素製粉砕ボールと15mlの蒸留水とともに遊星ボールミルの窒化ケイ素製容器に入れ、800rpmの回転速度で3時間回転させて炭素化物を湿式粉砕した。この粉砕された炭素化物を目開き45μmの篩にかけ、粒径45μm以下の炭素化物のみを回収し、ロータリエバポレータに収容して80℃に加熱することにより水を除去した後に、減圧乾燥器に入れて80℃に一晩保持し乾燥させた。なお、このカーボンアロイ微粒子の表面には、炭素100重量%に対して、窒素及びホウ素の合計が94.8重量%含まれるように、原料の混合割合を調整したものである。
【0030】
次に濃硫酸28.54gにコバルトフタロシアニン錯体1.21gを溶解した溶液を、上記窒素及びホウ素を含むカーボンアロイ微粒子0.3gに加え、常温下でソニケーターを用いて1時間撹拌して混合した後に、目開き1μmの四フッ化エチレン樹脂(ポリテトラフルオロエチレン)製のフィルタを用いて濃硫酸を除去した。この混合物を石英ボートに適量載せ、この石英ボートを石英製反応管の中心部に設置して、この反応管内に窒素500ml/分を20分間流通させた。20分経過後、窒素を500ml/分流通させたまま、反応管内を昇温速度10℃/分で1000℃まで昇温し、この温度に1時間保持した。1時間経過後、窒素を500ml/分流通させたまま室温まで自然冷却して熱処理物を得た。このカーボンアロイ微粒子を参考例2とした。なお、コバルトフタロシアニン担持前の微粒子の表面には、炭素100重量%に対して、窒素及びホウ素が34.2重量%含まれることがXPSより判明した。これに対し参考例1と同じホウ素/コバルトの比になるようにコバルトフタロシアニンを添加したのが参考例2である。具体的には、コバルトが79.1重量%含まれるように、原料の混合割合を調整したものである。
【0031】
<比較例1>
メラミンとBF3メタノール錯体メタノール溶液(15%BF3含有)を添加しなかったこと以外は実施例1と同様にして、カーボンアロイ微粒子を得た。このカーボンアロイ微粒子を比較例1とした。なお、このカーボンアロイ微粒子には、炭素100重量%に対して、コバルトが3重量%含まれるように、原料の混合割合を調整したものである。
<比較例2>
コバルトフタロシアニン錯体を添加しなかったこと以外は参考例2と同様にして、カーボンアロイ微粒子を得た。このカーボンアロイ微粒子を比較例2とした。なお、このカーボンアロイ微粒子には、炭素100重量%に対して、窒素及びホウ素の合計が94.8重量%含まれるように、原料の混合割合を調整したものである。
【0032】
<比較試験1及び評価>
実施例1及び2と、参考例1及び2と、比較例1及び2のカーボンアロイ微粒子を用いて、これらの電極触媒について、酸化還元機能を調べるために電極活性試験を行った。
この酸素還元に関する電極活性を、図2に模式的に示す3極式電解セル1を用いて測定した。具体的には中央部の作用電極(回転電極)2は周囲が高分子絶縁体、中央部にガラス状炭素からなる電極部を持つ。この電極部にそれぞれ以下のようにして調製した触媒インクを塗布し、作用電極とした。符号3は参照電極(Ag/AgCl)であり、符号4は対極(Pt)である。
【0033】
先ず、実施例1及び2と、参考例1及び2と、比較例1及び2のカーボンアロイ微粒子を、それぞれ5mg量り取り、これにバインダー(商品名:ナフィオン、デュポン社)溶液、水、エタノールを適量加え、各触媒インクを調製した。次いで、得られた触媒インクを微量ピペットにより吸い取り、回転電極装置のガラス状炭素部分(直径5mm)に塗布し、乾燥させることにより、作用電極を作製した。
電解質溶液としては、1M硫酸水溶液に酸素を常温で溶解したものを用いた。回転速度1500rpmで電極を回転し、電位を掃引速度0.5mVs-1で掃引して、そのときの電流を電位の関数として記録した。その結果を図3に示す。なお、図3において、縦軸は反応速度を表す電流であり、縦軸の電流密度の絶対値が大きくなるほど反応速度が大きくなることを示し、また横軸は反応を進ませる力としての電圧であり、横軸の電圧が小さくなるほど反応を引き起す力が大きくなり、更にこの反応は燃料電池のプラス極の反応であるため、より電圧の高いところで大きな電流が流れるものほど触媒としての性能が高いことを意味する。
【0034】
図3から明らかなように、実施例1及び2と参考例1のカーボンアロイ微粒子を用いた電極触媒では、比較例1及び2のカーボンアロイ微粒子を用いた電極触媒に比べて、極めて高い電位から酸素還元電流が流れ始め、同じ電位で比較すると、極めて大きな電流密度を示すことが分かった。また参考例2のカーボンアロイ微粒子を用いた電極触媒では、比較例1及び2のカーボンアロイ微粒子を用いた電極触媒に比べて、比較的高い電位から酸素還元電流が流れ始め、同じ電位で比較すると、比較的大きな電流密度を示すことが分かった。
【0035】
<比較試験2及び評価>
実施例1及び2と、参考例1及び2と、比較例1及び2のカーボンアロイ微粒子について、X線回折法により結晶構造及び添加物の状態の分析を行った。その結果を図4に示す。
図4から明らかなように、比較例1及び参考例2では、2θ=25°に幅の広い回折線が現れ、比較例2と実施例1及び2と参考例1では、2θ=26°に鋭い回折線が現れた。これらの回折線は炭素の(002)面反射に対応する回折線であり、この回折線が鋭いほど、炭素構造に規則性が現れて結晶化が進んでいる。また2θ=26°は乱層構造に対応している。従来の知見より、実施例1及び2と参考例1ではシェル状構造の炭素が形成されていると考えられる。ここで、比較例1では、2θ=26°に鋭い回折線が現れ、シェル状構造の炭素の形成は認められているけれども、炭素材料に窒素やホウ素が導入されていないため、低い酸素還元活性しか得られなかったものと考えられる。また、参考例2では、2θ=25°に幅の広い回折線が現れ、シェル状構造の炭素の形成が認められなかったけれども、この炭素材料の表面に窒素やホウ素が導入されたため、比較的高い酸素還元活性が得られたものと考えられる。なお、実施例1の2θ=42°に現れた鋭い回折線はコバルトが析出したものであり、実施例1及び2では2回も熱処理しているため、コバルトが凝集し始めたものと考えられる。
【0036】
参考例3
コバルトフタロシアニン錯体に替えて鉄フタロシアニン錯体3.053gを用いたことを以外は参考例1と同様にして、カーボンアロイ微粒子を得た。このカーボンアロイ微粒子を参考例3とした。なお、このカーボンアロイ微粒子には、炭素100重量%に対して、鉄が3重量%含まれるように、原料の混合割合を調整したものである。
参考例4
コバルトフタロシアニン錯体に替えて銅フタロシアニン錯体2.720gを用いたことを以外は参考例1と同様にして、カーボンアロイ微粒子を得た。このカーボンアロイ微粒子を参考例2とした。なお、このカーボンアロイ微粒子には、炭素100重量%に対して、銅が3重量%含まれるように、原料の混合割合を調整したものである。
【0037】
<比較試験3及び評価>
参考例1、3及び4と、比較例2のカーボンアロイ微粒子を用いて、これらの電極触媒について、上記比較試験1と同様に、酸化還元機能を調べるために電極活性試験を行った。その結果を図5に示す。
図5から明らかなように、参考例1及び3のカーボンアロイ微粒子を用いた電極触媒では、比較例2のカーボンアロイ微粒子を用いた電極触媒に比べて、極めて高い電位から酸素還元電流が流れ始め、同じ電位で比較すると、極めて大きな電流密度を示すことが分かった。また参考例4のカーボンアロイ微粒子を用いた電極触媒では、比較例2のカーボンアロイ微粒子を用いた電極触媒に比べて、比較的高い電位から酸素還元電流が流れ始め、同じ電位で比較すると、比較的大きな電流密度を示すことが分かった。
【0038】
<比較試験4及び評価>
参考例1、3及び4と、比較例2のカーボンアロイ微粒子について、X線回折法により結晶構造及び添加物の状態の分析を行った。その結果を図6に示す。
図6から明らかなように、比較例2及び実施例6では、2θ=25°に幅の広い回折線が現れ、参考例1及び3では、2θ=26°に鋭い回折線が現れた。これらの回折線は炭素の(002)面反射に対応する回折線であり、この回折線が鋭いほど、炭素構造に規則性が現れて結晶化が進んでいる。また2θ=26°は乱層構造に対応している。従来の知見より、参考例3ではシェル状構造の炭素が形成されていると考えられる。更に参考例4では、2θ=25°に幅の広い回折線が現れ、シェル状構造の炭素の形成が認められなかったけれども、炭素材料に窒素とホウ素を導入したため、比較的高い酸素還元活性が得られたものと考えられる。なお、参考例3の2θ=42°に現れた鋭い回折線は鉄及び炭化鉄が析出したものであり、参考例3では鉄フタロシアニン錯体の熱分解特性が参考例1又は参考例4のコバルト又は銅それぞれのフタロシアニン錯体の熱分解特性と異なるため、鉄が凝集し始めたものと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明実施形態の燃料電池用電極触媒のエッジを含む要部模式図である。
【図2】3極回転電極セルの模式図である。
【図3】実施例1及び2と、参考例1及び2と、比較例1及び2の炭素材料の電位と電流密度との関係を示すグラフである。
【図4】実施例1及び2と、参考例1及び2と、比較例1及び2のX線入射角と回折X線強度との関係を示すグラフである。
【図5】参考例1、3及び4と、比較例2の炭素材料の電位と電流密度との関係を示すグラフである。
【図6】参考例1、3及び4と、比較例2のX線入射角と回折X線強度との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0040】
11 遷移金属
12 炭素材料
13 窒素
14 ホウ素
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5