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明細書 :泥中フミン物質の分離回収方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4415151号 (P4415151)
公開番号 特開2006-306733 (P2006-306733A)
登録日 平成21年12月4日(2009.12.4)
発行日 平成22年2月17日(2010.2.17)
公開日 平成18年11月9日(2006.11.9)
発明の名称または考案の名称 泥中フミン物質の分離回収方法
国際特許分類 C07G  99/00        (2009.01)
B01D  11/02        (2006.01)
C02F  11/00        (2006.01)
C05F  11/02        (2006.01)
C09K  17/50        (2006.01)
C09K 101/00        (2006.01)
FI C07G 17/00 ZABB
B01D 11/02 Z
C02F 11/00 C
C05F 11/02
C09K 17/50 K
C09K 101:00
請求項の数または発明の数 3
全頁数 7
出願番号 特願2005-127692 (P2005-127692)
出願日 平成17年4月26日(2005.4.26)
審査請求日 平成18年10月5日(2006.10.5)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304026696
【氏名又は名称】国立大学法人三重大学
発明者または考案者 【氏名】太田 清久
【氏名】金子 聡
【氏名】原田 拓也
審査官 【審査官】三原 健治
参考文献・文献 米国特許出願公開第2005/0038127(US,A1)
Chem.Geol.,Vol.51(1985)p.135-145
第30回中部科学関係学協会支部連合秋季大会講演予稿集(1999)p.85
第23回分析化学中部夏期セミナー講演要旨集(2004)p.34(P-27)
調査した分野 C07G 99/00
C02F 11/02
C09K 17/32,17/50
CAplus/BIOSIS/MEDLINE/EMBASE(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
WPI
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特許請求の範囲 【請求項1】
水系の底部から得られ脱塩された泥と珪酸ナトリウム(水ガラス)を混合した後、焼成することにより固化し、該固化物を水に浸漬させることによって、泥中フミン物質を分離回収する方法。
【請求項2】
前記水ガラスの混合重量比が3%から30%の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の泥中フミン物質の分離回収方法。
【請求項3】
焼成温度が200℃~300℃の範囲にあることを特徴とする請求項1又は2に記載の泥中フミン物質の分離回収方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、海底泥中フミン物質の簡便な分離回収、及び土壌改良材としての底泥固化物の利用法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
日本国内で海に隣接している多くの県では、沿岸漁業が古くから行われており、蠣養殖や真珠貝養殖などの海洋産業が盛んである。しかしながら、養殖活動が活発に行われるにつれて、海底泥の堆積が増加しており、水系の底部に堆積した海底泥を除去するために、公共事業の一環として浚渫事業が行われている。例えば、三重県の閉鎖性海域の海底泥を調査したところ、海底泥中の約10%が有機物質であり、有機物質中の40%~50%がフミン物質(腐植物質)であった。
【0003】
フミン物質は、河川、湖沼、土壌、泥炭、底泥などの中に含まれている物質であり、動植物の遺体や排泄物の化学的・生化学的な分解、又は微生物による合成の結果、生成する複雑な化学構造を有する有機物質である。一般的には、土壌や底泥中において分解・生成された動植物由来の有機成分のことを言う。フミン物質は暗褐色であり、その化学的性質は、酸性、親水性、高分子電解質であり、分子量は数百から数十万にわたっている。又、主に芳香族からなり、カルボキシル基、フェノール性水酸基、カルボニル基、水酸基などの官能基を有している。
【0004】
フミン物質は、河川や湖沼水中の難分解性溶存有機物質の大部分を占めており、生活排水や下水道施設排水にも多く含まれていることから、環境汚染の一因にもなっている。又、フミン物質は、上水道の塩素処理により生成するトリハロメタンの前駆物質であるとされている。このように、フミン物質は環境に悪影響を及ぼす一面が注目される一方で、動植物の遺体や排泄物が分解して生成した有機物質であるため、植物に対する栄養分の供給に好影響を与える有益な物質として作用する性質も元来存在しており、今後資源の枯渇が進行するにつれて、重要な資源の一つに成り得る。
【0005】
フミン物質は、一般に酸やアルカリ溶液への溶解性に基づいてフミン酸、フルボ酸、ヒューミンに分類される。フミン酸はアルカリ性溶液に溶解し、酸性溶液で沈殿する。フルボ酸は、酸性・アルカリ性溶液のいずれにも溶解する。ヒューミンは、不溶性の分画で酸性・アルカリ性溶液のいずれにも不溶である。このフミン物質は、単一の化合物からなるものではなく、構造を特定できない複数種の有機物を含んでいる混合物であるが、代表的な元素組成は、炭素:50~65%、水素:4~6%、酸素:30~41%であり、その他微量の窒素、リン、イオウなどを含んでいる。
【0006】
フミン物質の一般的な分離回収方法は、一般に酸やアルカリ溶液への溶解性に基づいている。土壌サンプルの場合、具体的な操作として、まずアルカリ溶液中(pHが12以上)に土壌サンプルを浸漬させて、土壌中のフミン酸とフルボ酸を溶解する(なお、ヒューミンは懸濁物質として存在する)。続いて、pHを2以下の酸性溶液にしてフミン酸を沈殿させ、沈殿したフミン酸を回収する。次に、水溶液中に溶存しているフルボ酸を減圧蒸留し、回収する。以上のように、現在用いられているフミン物質の分離回収方法は、酸やアルカリなどの化学薬品を使用するなど煩雑である。
【0007】
フミン物質に関する公知文献として、リグニン質炭類のアルカリ処理により抽出される腐植物質が、植物ホルモン的作用を有する植物生育促進剤として有効であることを示した(肥料として用いる)ものや、植物の生長を促進するフルボ酸を地下かん水に含まれる腐植物質より分離生成する抽出方法に関するものなど多数報告されている(例えば特許文献1-3)。しかしながら、海底泥中のフミン物質を簡便に分離回収する手段については知られていなかった。
【0008】

【特許文献1】特許公開2003-171215
【特許文献2】特許公開2004-284936
【特許文献3】特許公開平5-874
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の海底泥中フミン物質の簡便な分離回収方法は、従来の問題点を解決するためになされたものである。すなわち、これまで抽出法が煩雑であったため、ほとんど利用されなかった海底泥中のフミン物質を簡便に分離回収する方法を提供することが、本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による海底泥中のフミン物質の抽出法は、脱塩した海底泥と水ガラスを混合し、200℃~300℃の温度範囲で焼成固化し、その固化物を水に浸漬させることにより、フミン物質を簡便に水に移行させ、フミン物質のみを分離回収することを特徴とする。又、水ガラスの混合重量比は、3%から30%の範囲であることを特徴とする。

【0011】
さらに、フミン物質が溶出した後の焼成固化物は、土壌改良材や土盤材として有効利用できることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、これまでほとんど利用されていなかった海底泥中のフミン物質を有効利用でき、農業などの肥料の分野において、新規な効用の開拓に繋がる。一方、本発明による海底泥中のフミン物質の簡便な分離回収方法では、最初の操作として塩が抜けるまで海底泥を水で洗浄するプロセスを数回行うため、焼結固化物中の塩濃度は二次利用を行っても問題ない濃度レベルまで減少している。また、フミン物質のみを水に移行させるための、添加剤である水ガラス(珪酸ナトリウム)は無機系の塩であり、自然界に元々存在している元素から構成されている。さらに、海底泥に水ガラスを添加し、200℃~300℃の温度範囲で焼成固化しているため、該焼成固化物はある程度の強度を有している。従って、フミン物質が溶出した後の焼成固化物は、フライアッシュやボトムアッシュと比較して、格段に土壌改良材や土盤材として利用される幅広い用途が見込まれる。本発明により、廃棄物である海底汚泥を有価物に転換させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明による海底泥中のフミン物質の分離回収法は、以下の操作手順により行う。海洋の底部からサンプリング又は浚渫した底泥90gを水中で懸濁させた後、底泥が上澄みと二層に分離するまで静置する。二層に分離した後、上澄みを捨て、底泥を洗浄する。この操作を塩が抜けるまで、数回繰り返す。次に、この底泥と水ガラス(10g)を混合し、ボール状容器に入れ、攪拌機によって十分に混合する。他の重量混合比の場合の手順も、本手順と同様である。
【0014】
焼成方法は、底泥と水ガラスを混合した物を、空気雰囲気下において昇温速度4℃毎分で温度を上げ、200℃から300℃の目的温度に到達した後、3時間固化焼成を行う。
【0015】
次に、得られた焼結体(大きさ:直径3~5cmの塊状物、重さ:10~30g)の表面を一度洗浄し、100mLの水、又はpHが5から9の水溶液に浸漬させて、1時間、撹拌振とう機で振とうする。不純物を含むこの初液は廃棄する。続いて、別の100mLの水、又はpHが5から9の水溶液(温度:室温から50℃程度、時間:24時間~1週間程度)に浸漬させることにより、フミン物質が水、又はpHが5から9の水溶液に移行し、黒褐色の海底泥中フミン物質水溶液を得る。フミン物質が溶出した後の海底泥の固化焼結物は、土壌改良材や土盤材として有効利用する。
【実施例1】
【0016】
本発明で得られた海底泥中のフミン物質水溶液の一例を図1に示す。水ガラスの混合重量比が10%で、焼成温度が200℃で固化を行い、その固化物を水に浸漬させ、1時間、撹拌振とう機で振とうを行った後の初液が図1の左である。その後、24時間室温でフミン物質を溶出した溶液が図1の右である。
【0017】
図2には、100℃から400℃までの焼成温度で固化し、その固化物を水溶液に浸漬させ、初液を除去した後、24時間室温でフミン物質を溶出させた場合の結果を示す。200℃と300℃に焼成した場合の溶出溶液では、フミン物質の黒褐色の水溶液が生成していることが分かる。200℃から400℃までで固化焼成した溶液について、フミン物質由来の400nmでの吸光度を、水ガラスの添加量別に測定した結果を図3に示す。このグラフから、水ガラスの重量混合比が3%から30%において、200℃から300℃の温度範囲で固化焼成を行った固化物から、多量のフミン物質が溶出していることが分かる。表1は、フミン物質溶出前後の底泥固化物の元素組成比を示した蛍光X線回折分光分析の結果である。全組成の合計は100%になっており、水に浸漬させてフミン物質を溶出した後の元素組成比では、無機物質の割合が約78%と高く、有機物質の割合が減少しナトリウム元素とともに水にフミン物質が移行している結果を反映している。
【0018】
【表1】
JP0004415151B2_000002t.gif

【0019】
図4には、フミン物質が溶出した後の固化物の写真を示す。フミン物質が溶出した後の固化物は、土壌改良材や土盤材としての利用方法などが考えられる。なお、天然の海底泥中のフミン物質の効用はほとんど解明されていないのが現状である。しかし、一般的に、動植物の遺体や排泄物の化学的・生化学的な分解、又は微生物による合成の結果生じる土壌系由来のフミン物質と、海底で生じる海底泥中のフミン物質の特性が異なると推測され、海底泥中からのフミン物質の方が有用性が高いと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明によれば、これまでほとんど利用されてこなかった海底泥中のフミン物質を、簡便に分離回収することが可能となる。さらに、フミン物質を分離回収した後の海底泥の固化物は、土壌改良材や土盤材として利用することができる。従って、本発明は海底泥の有効利用に多大に寄与し、環境の保全にも有用である。

【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明により分離回収したフミン物質水溶液の写真である。左は初液、右は本液(溶出1日後)である。
【図2】本発明により分離回収したフミン物質水溶液を、固化焼成温度別に並べた写真である。左から、100℃、200℃、300℃、400℃である。
【図3】本発明により分離回収したフミン物質水溶液に関して、400nmで吸光光度分析を行った結果である。
【図4】本発明によりフミン物質を分離回収した後の固化焼成物の写真である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3