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明細書 :血管硬度測定装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4729703号 (P4729703)
公開番号 特開2007-044261 (P2007-044261A)
登録日 平成23年4月28日(2011.4.28)
発行日 平成23年7月20日(2011.7.20)
公開日 平成19年2月22日(2007.2.22)
発明の名称または考案の名称 血管硬度測定装置
国際特許分類 A61B   5/02        (2006.01)
FI A61B 5/02 A
請求項の数または発明の数 5
全頁数 9
出願番号 特願2005-231914 (P2005-231914)
出願日 平成17年8月10日(2005.8.10)
審査請求日 平成20年7月3日(2008.7.3)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304036743
【氏名又は名称】国立大学法人宇都宮大学
発明者または考案者 【氏名】嶋脇 聡
個別代理人の代理人 【識別番号】100088616、【弁理士】、【氏名又は名称】渡邉 一平
【識別番号】100089347、【弁理士】、【氏名又は名称】木川 幸治
【識別番号】100098213、【弁理士】、【氏名又は名称】樋口 武
【識別番号】100119448、【弁理士】、【氏名又は名称】小平 哲司
審査官 【審査官】湯本 照基
参考文献・文献 国際公開第02/085204(WO,A1)
特開2003-180690(JP,A)
特開2005-046464(JP,A)
特開昭63-242248(JP,A)
特開2004-136107(JP,A)
特開2004-254797(JP,A)
特開2002-136486(JP,A)
調査した分野 A61B 5/02
特許請求の範囲 【請求項1】
血管を含む生体の所定部位を透過する透過光量及び/又は所定部位で反射する反射光量を測定する光測定部と、
血管を圧迫した状態における前記透過光量及び/又は反射光量と血管を圧迫していない状態における前記透過光量及び/又は反射光量との差を算出して光量減少量を求め、前記光量減少量に基づいて血管硬度を算出するデータ処理部と、
を備える血管硬度測定装置。
【請求項2】
前記光測定部が、前記所定部位に光を照射する光照射部と、前記所定部位を透過した透過光及び/又は所定部位で反射した反射光を受光して受光量に対応した信号を出力する受光部とを備える請求項1に記載の血管硬度測定装置。
【請求項3】
前記光測定部が650~1800nmの範囲から選ばれた所定の単波長又は複合波長の透過光量及び/又は反射光量を測定する請求項1又は2に記載の血管硬度測定装置。
【請求項4】
血管を圧迫するカフと、
血管を圧迫する締め付け力を前記カフに与えるカフ加圧装置と、
前記締め付け力を制御する締め付け力制御部と、
を更に備える請求項1~3の何れかに記載の血管硬度測定装置。
【請求項5】
前記カフが血圧計を更に備える請求項4に記載の血管硬度測定装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、人間やその他の動物の血管の硬度を測定することができる血管硬度測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の動脈硬化度を計測する手法として、指尖脈波による加速度脈波計測法がある(特許文献1参照)。指尖に照射した近赤外光の透過光は脈波によって変動し、これを指尖脈波と呼ぶ。指尖脈波は、心臓からの拍動波動とその波動の各組織における反射波動の合成波動である。この指尖脈波を2回微分して数学的に算出した加速度脈波の波形パターンにより、統計的に動脈硬化度が計測される。
【0003】
しかし、この手法において、加速度脈波の生理学的意味は不明であり、得られた動脈硬化度は統計的な標準値からの偏差としてのみ示される。そのため、真に動脈硬化度を示しているのかどうか疑問が生じる。更に、指尖脈波法の問題点は、心臓拍動による血流変化のみを計測しており、その信号レベルは比較的小さい点にある。また、測定者ごとに発生する指尖脈波の僅かな相違がどのような生理的要因によるものなのかはっきりしていない。なぜなら、指尖脈波に重畳するさまざまな波形は、心臓拍動、各末端部位からの反射波、血液粘度などの要因、血管硬度による要因などが考えられるからである。
【0004】
一方、生体組織内では近赤外光の吸収が少なくなることが知られており、体内血管の可視化が可能であることが知られている(非特許文献1参照)。このことは、光分光技術と呼ばれている。
【0005】

【特許文献1】特開2004-136107号公報
【非特許文献1】金子守,清水孝一,山本克之,三上智久,田村守,電気情報通信学会技術研究報告,BME89-67,25-30,(1989)
【非特許文献2】A.H.Shapiro,Trans.ASME,J.Biomech.Eng.,99,126-147,(1977)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、非侵襲に血管硬度を測定できる新規な血管硬度測定装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、血圧測定時のように血管を圧迫した状態における生体を透過する透過光量又は生体内で反射する反射光量が、初期状態(血管を圧迫しない状態)における透過光量又は反射光量に比較して減少することを見出すとともに、この減少率が血管の硬度と相関することを見出し本発明を完成するに至った。即ち、本発明は以下の血管硬度測定装置を提供するものである。
【0008】
[1] 血管を含む生体の所定部位を透過する透過光量及び/又は所定部位で反射する反射光量を測定する光測定部と、
血管を圧迫した状態における前記透過光量及び/又は反射光量と血管を圧迫していない状態における前記透過光量及び/又は反射光量に基づいて血管硬度を算出するデータ処理部と、
を備える血管硬度測定装置。
【0009】
[2] 前記光測定部が、前記所定部位に光を照射する光照射部と、前記所定部位を透過した透過光及び/又は所定部位で反射した反射光を受光して受光量に対応した信号を出力する受光部とを備える上記[1]に記載の血管硬度測定装置。
【0010】
[3] 前記光測定部が650~1800nmの範囲から選ばれた所定の単波長又は複合波長の透過光量及び/又は反射光量を測定する上記[1]又は[2]に記載の血管硬度測定装置。
【0011】
[4] 血管を圧迫するカフと、
血管を圧迫する締め付け力を前記カフに与えるカフ加圧装置と、
前記締め付け力を制御する締め付け力制御部と、
を更に備える上記[1]~[3]の何れかに記載の血管硬度測定装置。
【0012】
[5] 前記カフが血圧計を更に備える上記[4]に記載の血管硬度測定装置。
【発明の効果】
【0013】
本発明により非侵襲に血管の硬度を測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ本発明の具体例に基づき本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
【0015】
図1は、本発明の血管硬度測定装置の一具体例を示す全体構成図である。図1に示す測定装置は、締め付け力制御部101、カフ加圧装置102、カフ103、光照射部104、受光部105、データ処理部106を備える。また、図1に示す具体例において、カフ103は被験者の上腕部110に巻かれている。
【0016】
図1に示す具体例において、光測定部は、光照射部104と受光部105とを備える。光照射部104は、任意の単波長又は複合波長を有する照射光を被験者の所定部位(以下、測定部位という場合がある)、例えば前腕部111へ照射することができる。照射光が単波長である場合、当該単波長を有する照射光以外の光が受光部105へ入射しないように、光照射部104、受光部105及び測定部位を光遮断装置内に設置することが望ましい。又は、受光部105に、照射する波長以外の波長を遮断するフィルタを設置してもよい。
【0017】
照射光が複合波長である場合、受光部105に任意波長以外の波長を遮断するフィルタを設置することが望ましい。その場合、透過させるフィルタ波長は近赤外光領域(650~1800nm)であることが望ましく、更に望ましくは650~1000nmの領域であり、特に望ましくは、650~800nmの領域又は800~1000nmの領域である。或いは、750~850nmの領域であることも望ましい。光照射部104は測定中常に照射光を照射している必要はなく、ライトの寿命延長のため、測定時の一定時間だけ照射してもよい。なお、照射光が単波長の場合には、上述した範囲の波長から選ばれた一の波長の光を照射することが望ましい。
【0018】
光の中でも近赤外光は、生体内における透過能力が優れており、生体内に入る近赤外光は生体内を透過又は生体内で反射して透過光又は反射光として生体内から出る。しかし、血中ヘモグロビンに対しては、特異な吸収特性を有する。動脈血に多く含まれる酸化ヘモグロビンは、650~800nmの近赤外光を非常に良く吸収し、一方、静脈血に多く含まれる還元ヘモグロビンは800~1000nmの近赤外光を非常に良く吸収する。このことから、測定する透過光及び/又は反射光の波長を選択することにより、観察したい血管を特定することができる。
【0019】
受光部105は、光照射部104より照射された照射光が血管107を含む被験者の測定部位を透過した透過光を検出し、その受光量に相当する信号をデータ処理部106へ転送する。或いは、受光部105は、照射光が当該測定部位の内部にて反射した反射光を検出し、その受光量に相当する信号を前記データ処理部へ転送することもできる。即ち、検出する光は透過光であっても反射光であっても良く、或いはその両方であってもよい。
【0020】
受光部105は、1つ又は複数の受光素子から構成される。受光部105は、測定部位近傍を移動装置により移動するように構成してもよい。その場合、受光部105が移動する際に、連続的に又は断続的に透過光又は反射光を受光することもできる。
【0021】
図2に示すように、受光部105は、透過光又は反射光に含まれる可視光より長波長成分を優先的に透過する低域光学フィルタ部301と、透過光又は反射光を受光しその受光量に対応した信号に変換して出力する光検出部302とを含むことが望ましい。
【0022】
低域光学フィルタ部301は、可視光より長波長領域(赤外領域)の光を優先的に透過させるものであり、650~1800nmの光を優先的に透過させることが好ましく、650~1000nmの光を優先的に透過させることが更に好ましい。
【0023】
上述してきた光測定部により、通常の状態(以下、初期状態という場合がある)における血管107を含む被験者の測定部位を透過する透過光量及び/又は測定部位にて反射する反射光量を測定する。更に、測定部位に含まれる血管107の下流側の部位(以下、締め付け部位という場合がある)においてその血管107を圧迫した状態で、当該測定部位を透過する透過光量及び/又は測定部位の内部にて反射する反射光量を測定する。これらの測定により得られた信号を図1に示すデータ処理部106に出力する。
【0024】
図1に示すデータ処理部106は、受光部105より出力された信号を受信し、初期状態おける透過光量及び/又は反射光量(受光量)と、血管107を圧迫した状態における透過光量及び/又は反射光量(受光量)に基づいて血管硬度を算出する。データ処理部106は、血管硬度を算出するために、これらの信号と血管硬度との関係式を参照して、これらの信号から血管硬度を算出する手段を有することができる。これらの信号から血管硬度を算出する手段は、測定に先立ち、被験者本人又は第三者によって、任意の関係式としてデータ処理部に定義できる。
【0025】
図3を用いて、初期状態及び血管を締め付けた状態における血管内血液量と受光量との関係を説明する。初期状態における受光量(以下、初期受光量という場合がある)は、血管内血液量に対応して被験者ごとに異なる。血管を圧迫するに従い、血管は閉塞しはじめ、任意の締め付け力において完全に閉塞する。血管閉塞の程度が大きくなると、血管内に滞在する血液量は増加し、最終的に飽和うっ血状態へと収束する。一方、血管内の血液量の増加に伴って、照射光は血球ヘモグロビンに吸収されるため、生体内を透過する透過光量及び生体内で反射する反射光量は減少し受光量が減少する。従って、飽和うっ血状態において、血管は十分膨張し、血管内血液量は最大量へと達して、受光量は最も減少する。ここで、初期受光量と、所定のうっ血状態、好ましくは飽和うっ血状態における受光量との差を算出し、光量減少量とする。
【0026】
また、図3とは反対に、飽和うっ血状態から血管の圧迫を弱めることにより血管閉塞を解除して、うっ血状態、好ましくは飽和うっ血状態から初期状態までの透過光量及び/又は反射光量の変化を計測して、光量増加量(=光量減少量)を算出することもできる。
【0027】
静脈の管法則はShapiroにより次式のように示される(非特許文献2参照)。
【0028】
【数1】
JP0004729703B2_000002t.gif
(ここで、kpは血管硬度に関連するパラメータ、p0とA0は圧迫前の血圧及び血管断面積、pとAは圧迫後の血圧及び血管断面積である。)
【0029】
上記式より、圧迫前後の血圧差(p-p0)が一定ならば、血管硬度kpに関連するパラメータは圧迫前後の断面積比(A/A0)の関数となる。例えば血圧差(p-p0)が13.3kPa(=100mmHg)であった場合、血管硬度kpと断面積比(A/A0)は図5に示す関係となる。つまり、断面積比(A/A0)が大きくなるほど、血管硬度が低くなることを示す。
【0030】
ここで、断面積比(A/A0)が小さい場合、うっ血による血管内に停滞する血液増加量は少ない。よって、血液中ヘモグロビンに吸収される光量は圧迫前後で変化が少なく、光量減少量は少なくなる。逆に、断面積比(A/A0)が大きい場合血、うっ血による血管内に停滞する血液量は増加する。よって、血液中ヘモグロビンに吸収される光量は圧迫により増加し、光量減少量は増加する。以上より、前記光量減少量と血管硬度との関係は、図6に示すように、分数関数を呈する。
【0031】
以上のことより、光量減少量を測定することにより、血管硬度を測定することができる。即ち、光量減少量が大きいほど血管硬度が低く、光量減少量が小さいほど血管硬度が高いこととなる。
【0032】
血管を圧迫する手段、締め付け部位及び測定部位に特に制限はない。締め付け部位及び測定部位は腕又は足であることが好ましく、腕であることが更に好ましい。被験者が人間の場合には、一般的な血圧測定装置を用いて腕を締め付けることにより腕の血管を圧迫し、圧迫した血管の上流の部位を測定部位とることができる。例えば、図1に示すように上腕部110を締め付けることにより血管107を圧迫し、その前腕部111を測定部位とすることが好ましい。図1に示す具体例において、締め付け力制御部101は、最大締め付け力、及び単位時間当たりの締め付け力である締め付け速度によってカフ加圧装置102を制御する。締め付け力制御部101は、パソコンなどの機器で構成できる。最大締め付け力及び締め付け速度は、被験者本人又は第三者によって、パソコンのマウスやキーボードなどから設定できる。最大締め付け力は、静脈血管又は動脈血管が十分閉塞する値に設定することが望ましいが、部分的な閉塞でもよい。
【0033】
カフ加圧装置102は、締め付け力制御部101から提供された最大締め付け力及び締め付け速度に基づいてカフ103を加圧する。カフ103を加圧する手段に特に制限はないが、気体や液体などの流体をカフ103に送ることによりカフ103を加圧することが好ましく、通常は空気をカフ103に送ることにより加圧する。
【0034】
図4に示すように、カフ103は、カフ加圧装置により被験者の上腕部110を所定の締め付け力で締め付けるカフ部201と、血圧計203とを含むことが好ましい。血圧計203は従来から用いられているものが好適に用いられる。具体例としては、カフ部201の内圧変動を計測する形式の血圧計や、コロトコフ音を計測することにより血圧を測定する形式の血圧計が挙げられる。
【0035】
図1及び4において、カフ部201は、被験者の上腕部110に設置され、前記カフ加圧装置102から提供されたカフ加圧手段により加圧され、前記上腕締め付け力制御部101で設定された最大締め付け力まで、設定された所定の締め付け速度にて被験者の上腕部110を締め付けることができる。これにより、被験者の動脈血管又は静脈血管を圧迫し、血管をうっ血状態とすることが望ましく、飽和うっ血状態とすることが更に望ましい。血圧計203は、例えば、カフ締め付け力により発生したコロトコフ音を、音センサー又は圧力センサー又は加速度センサーを用いて、コロトコフ音の変化量、カフ部に伝達した血圧変化量、又は上腕微細振動量などとして検出し、これに対応する血圧値(最大血圧、最小血圧を含む)を算出し、血圧値を被験者へと提示することができる。
【0036】
カフ部201に、血圧計203を付属させることで、数1として示された(P-P0)を正確に測定することができ、より正確な血管硬度が得られる。また、血管硬度と血圧値から動脈硬化度なども推定することができ、よりよい健康管理が可能となる。
【0037】
なお、図1に示す具体例において、締め付け力制御部101とデータ処理部106は便宜上別々に記載されているが、データ処理と締め付け力制御は1つのコンピュータで行うことが好ましい。また、図1、2及び4は人間を被験者とした例を示しているが、本発明は人間及びその他の動物に適用できるものであり、人間の血管硬度の測定のみに限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0038】
上述したように、本発明の血管硬度測定装置は、非侵襲で血管の硬度を測定することができ、例えば、一般的に行われている血圧の測定と同時に測定することができる。また、人間だけでなく、その他の動物にも適用することができ、人間やその他の動物の健康管理に広く用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の血管硬度測定装置の一具体例を示す全体構成図である。
【図2】図1における受光部の細部構成の一具体例を示す部分構成図である。
【図3】血管内血液量の変化に伴う透過光量の変化を示すグラフである。
【図4】図1におけるカフの細部構成の一具体例を示す部分構成図である。
【図5】血管硬度のパラメータkpと断面積比(A/A0)の関係を示すグラフである。
【図6】本発明における光量減少量と血管硬度との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0040】
101:締め付け力制御部
102:カフ加圧装置
103:カフ
104:光照射部
105:受光部
106:データ処理部
107:血管
110:上腕部
111:前腕部
201:カフ部
203:血圧計
301:低域光学フィルタ部
302:光検出部
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5