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明細書 :レーザ装置及び波長変換装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B1)
特許番号 特許第3870238号 (P3870238)
登録日 平成18年10月27日(2006.10.27)
発行日 平成19年1月17日(2007.1.17)
発明の名称または考案の名称 レーザ装置及び波長変換装置
国際特許分類 H01S   3/10        (2006.01)
FI H01S 3/10 C
請求項の数または発明の数 7
全頁数 8
出願番号 特願2005-228571 (P2005-228571)
出願日 平成17年8月5日(2005.8.5)
審査請求日 平成18年8月9日(2006.8.9)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人名古屋大学
発明者または考案者 【氏名】松見 豊
【氏名】高橋 けんし
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】100087723、【弁理士】、【氏名又は名称】藤谷 修
審査官 【審査官】前川 慎喜
参考文献・文献 特開平03-169090(JP,A)
特開平03-099482(JP,A)
R. HILBIG AND R. WALLENSTEIN,Tunable VUV Radiation Generated by Two-Photon Resonant Frequency Mixing in Xenon,IEEE JOURNAL OF QUANTUM ELECTRONICS,1983年,VOL. QE-19, NO. 2,p.194-201
調査した分野 H01S 3/00-4/00
要約 【課題】高効率に真空紫外領域のレーザを得ること。
【解決手段】クリプトンガスに第1のレーザを照射して、このクリプトンガスにおいて二光子共鳴中間励起を生起させると共に、第1のレーザとは波長の異なる第2のレーザをクリプトンガスに照射して、第1のレーザ及び第2のレーザの波長と異なる第3の波長を有した第3のレーザを発振させる四波混合レーザ発振方法を用いたレーザ装置である。この装置において、第1のレーザの照射によるクリプトンガスの二光子共鳴多光子イオン化によって生じるイオン電流を測定する電流測定装置と、電流測定装置の出力に基づいて、第1のレーザの波長を制御する波長制御装置とを設けた。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
非線形媒質に第1のレーザを照射して、この非線形媒質において二光子共鳴中間励起を生起させると共に、前記第1のレーザとは波長の異なる第2のレーザを前記非線形媒質に照射して、前記第1のレーザ及び前記第2のレーザの波長と異なる第3の波長を有した第3のレーザを発振させる四波混合レーザ発振方法を用いたレーザ装置において、
前記第1のレーザの照射による前記非線形媒質の二光子共鳴多光子イオン化によって生じるイオン電流を測定する電流測定装置と、
前記電流測定装置の出力に基づいて、前記第1のレーザの波長を制御する波長制御装置と
を有することを特徴とするレーザ装置。
【請求項2】
前記波長制御装置は、前記電流測定装置が測定する前記イオン電流が最大となるように、前記第1のレーザの波長を制御することを特徴とする請求項1に記載のレーザ装置。
【請求項3】
前記非線形媒質は、気体であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のレーザ装置。
【請求項4】
前記非線形媒質を導入した金属ケースを有する波長変換装置を有し、
前記電流測定装置は、
前記波長変換装置の金属ケースを電極とした第1の電極と、
この金属ケース内に配置された第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極間に流れる電流を電圧に変換する電流電圧変換器と
を有することを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載のレーザ装置。
【請求項5】
非線形媒質に第1のレーザを照射して、この非線形媒質において二光子共鳴中間励起を生起させると共に、前記第1のレーザとは波長の異なる第2のレーザを前記非線形媒質に照射して、前記第1のレーザ及び前記第2のレーザの波長と異なる第3の波長を有した第3のレーザを発振させる四波混合レーザ発振方法を用いたレーザ装置における波長変換装置であって、
前記第1のレーザの照射による前記非線形媒質の二光子共鳴多光子イオン化によって生じるイオン電流を測定する電流測定装置を有することを特徴とする波長変換装置。
【請求項6】
前記非線形媒質を導入した金属ケースを有し、
前記電流測定装置は、
前記波長変換装置の金属ケースを電極とした第1の電極と、
この金属ケース内に配置された第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極間に流れる電流を電圧に変換する電流電圧変換器と
を有することを特徴とする請求項5に記載の波長変換装置。
【請求項7】
前記非線形媒質は、気体であることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の波長変換装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、真空紫外領域(約100nm~200nm)の波長を有したレーザ装置及びそのレーザ装置に用いられる波長変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1、2及び非特許文献1に開示されているように、100~200nmの真空紫外領域のレーザを得るには、次の四波混合方式が知られている。可視光、紫外光のレーザなどの2つの異なる周波数ω1 、ω2 のレーザをクリプトン、キセノンなどの希ガスに照射して、希ガスの非線形効果により、周波数(2ω1 +ω2 )と、(2ω1 -ω2 )との2つの真空紫外領域の周波数のレーザを得るものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
非特許文献1の方法は、第1のレーザの波長を原子の二光子共鳴中間励起状態のエネルギー準位に対応する波長に固定し、第2のレーザの波長を原子の励起状態の遷移エネルギー近傍で掃引するようにしている。この場合、第2のレーザが原子の励起エネルギー準位と共鳴する時にその近傍領域で非線形感受率が更に増大して、真空紫外レーザの出力は著しく大きくなる。しかしながら、この方法は、高効率変換という観点からは望ましいが、原子のエネルギー準位はイオン化エネルギー近傍を除けば分散しているため、第2のレーザの波長掃引範囲がある特定の狭い周波数領域に限定されるという問題がある。
【0004】
これを改良するために、特許文献1、2では、非線形媒体に原子と比べて多数のエネルギー準位を有する分子を用いることで、共鳴可能な波長の掃引範囲を拡大するようにしている。
【0005】
また、特許文献1、2において、レーザの強度測定には、光電子倍増管が用いられており、特許文献3においては、蛍光体及び蛍光検出器が用いられているが、レーザの出力に応じて、波長を変化させて、最適共鳴状態を得ることは、行われていない。
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するために成されたものであり、その目的は、非線形媒体による二光子共鳴に最も合致するように第1のレーザの波長を設定した上で、第2のレーザの波長を掃引することで、所望の真空紫外領域の波長のレーザを高効率で得るようにすることである。
<patcit num="1"><text>特開平3-169090号</text></patcit><patcit num="2"><text>特開平3-99482号</text></patcit><patcit num="3"><text>特開2000-213983</text></patcit><nplcit num="1"><text>R Hilbig and R Wallenstein, IEEE J Quant Elec, Vol.QE-19(1983)194</text></nplcit>
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、非線形媒質に第1のレーザを照射して、この非線形媒質において二光子共鳴中間励起を生起させると共に、第1のレーザとは波長の異なる第2のレーザを非線形媒質に照射して、第1のレーザ及び第2のレーザの波長と異なる第3の波長を有した第3のレーザを発振させる四波混合レーザ発振方法を用いたレーザ装置において、第1のレーザの照射による非線形媒質の二光子共鳴多光子イオン化によって生じるイオン電流を測定する電流測定装置と、電流測定装置の出力に基づいて、第1のレーザの波長を制御する波長制御装置とを有することを特徴とするレーザ装置である。
ここで、波長制御装置は、回折格子や、エタロンを用いる方法など、その他の波長を変化し得る公知の方式を用いることができる。また、自動及び手動で変化させる得るものを含むものである。
【0008】
また、請求項2の発明は、波長制御装置は、電流測定装置が測定するイオン電流が最大となるように、第1のレーザの波長を制御することを特徴とする請求項1に記載のレーザ装置である。
【0009】
また、請求項3の発明は、非線形媒質は、気体であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のレーザ装置である。気体としては、希ガスや金属蒸気などを用いることができる。
【0010】
また、請求項4の発明は、非線形媒質を導入した金属ケースを有する波長変換装置を有し、電流測定装置は、波長変換装置の金属ケースを電極とした第1の電極と、この金属ケース内に配置された第2の電極と、第1の電極と第2の電極間に流れる電流を電圧に変換する電流電圧変換器とを有することを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載のレーザ装置である。
ここで、非線形媒質は、金属ケース内に封入されていても、気体ボンベから常に供給して真空ポンプで排気するように流れていても良い。
【0011】
また、請求項5の発明は、非線形媒質に第1のレーザを照射して、この非線形媒質において二光子共鳴中間励起を生起させると共に、第1のレーザとは波長の異なる第2のレーザを非線形媒質に照射して、第1のレーザ及び第2のレーザの波長と異なる第3の波長を有した第3のレーザを発振させる四波混合レーザ発振方法を用いたレーザ装置における波長変換装置であって、第1のレーザの照射による非線形媒質の二光子共鳴多光子イオン化によって生じるイオン電流を測定する電流測定装置を有することを特徴とする波長変換装置である。
すなわち、本発明は、二光子共鳴多光子イオン化によるイオン電流を測定する装置を有した所望の波長のレーザを得る波長変換装置に関するものである。したがって、本装置は、従来の公知のレーザ装置の波長変換装置に代えて、本装置を用いることにより、上記の請求項1の構成となる。
【0012】
また、請求項6の発明は、非線形媒質を導入した金属ケースを有し、電流測定装置は、波長変換装置の金属ケースを電極とした第1の電極と、この金属ケース内に配置された第2の電極と、第1の電極と第2の電極間に流れる電流を電圧に変換する電流電圧変換器とを有することを特徴とする請求項5に記載の波長変換装置である。
【0013】
また、請求項7の発明は、非線形媒質は、気体であることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の波長変換装置である。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明によると、目的の波長のレーザを得るための非線形媒質を用いて、第1のレーザの照射によって非線形媒質において発生する二光子共鳴の大きさを非線形媒質のイオン電流で測定するようにして、このイオン電流の大きさに応じて、第1のレーザの波長を制御するようにしている。したがって、二光子共鳴状態に、第1のレーザの波長を合せるのに節密な波長計などの測定装置を用いる必要がないので、装置が簡便となる。また、この非線形媒質のイオン電流により第1のレーザの波長を適正に制御することにより、目的のレーザを高利率で得ることができる。
【0015】
請求項2の発明によると、イオン電流が最大となるように第1のレーザの波長が制御されることから、レーザを最大効率で得ることができる。
【0016】
請求項3の発明によると、非線形媒質を気体としていることから、容易に真空紫外領域のレーザを得ることができる。
【0017】
請求項4の発明によると、波長変換装置に組み込まれた電極や電流電圧変換器により、非線形媒体のイオン電流を容易に測定することができ、レーザ波長の制御を簡便に行うことができる。
【0018】
請求項5、6、7の発明によると、本波長変換装置を従来の波長変換装置に代えるだけで、高効率で真空紫外領域のレーザを容易に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を具体的な実施例に基づいて説明する。図1は、本実施例装置の全体の構成を示したブロック図であり、図2は、電流測定装置を有する波長変換装置の構成を示した図である。エキシマレーザ10から出力される波長308nmのレーザは、スプリッタ12により2つのビームに分離され、それぞれ、色素レーザ14、16に入射する。色素レーザ16からは、波長424nmのレーザが出力され、第二高調波発生結晶18により、第1の波長212nmに変換されて、周波数ω1 の第1のレーザとなる。また、色素レーザ16には、回折格子42が設けられており、この回折格子42の回転により第1のレーザの波長を変化させることができる。
【0020】
一方、色素レーザ14からは、可視光領域の周波数ω2 (第2の波長)の第2のレーザが出力される。
【0021】
この第1のレーザと第2のレーザは、波長変換装置である真空紫外発生用希ガスセル20に入射する。真空紫外発生用希ガスセル20は、図2に示すように、円筒状のステンレス製の金属ケース28の両端面に、それぞれ、Oリング36、38を介して設けられた石英窓30と、LiF窓32を有している。金属ケース28は電極として機能し、第1の電極となる。この真空紫外発生用希ガスセル20の内部は、バルブ22を介して、真空ポンプ44により真空排気され、バルブ24を介して、希ガスボンベ46から希ガスであるクリプトン(Kr)ガスが流入される。第1のレーザ及び第2のレーザは、石英窓30を介して、真空紫外発生用希ガスセル20に導入され、この希ガスを用いた四波混合レーザ発振法により、真空紫外領域内の所望の波長(例えば、100nm~200nm)に変換される。真空紫外領域の波長に波長変換されたレーザは、LiF窓32を介して、目的の処理、例えば、分光を行う分光用チャンバー26に入射する。
【0022】
真空紫外発生用希ガスセル20の円筒状の金属ケース28の軸方向に平行に伸びた第2の電極であるタングステン線電極34が設けられており、このタングステン線電極34は、直角に折り曲げられて、金属ケース28の側壁に対して垂直方向に外部に取り出されている。タングステン線電極34は、封止するためのガラス管40を貫通して、電流測定装置50の回路に接続されている。タングステン電極34はレーザ光線が当たらないように設置されている。
【0023】
タングステン線電極34には、正のバイアス電圧が端子52から抵抗R1を介して印加され、真空紫外発生用希ガスセル20の金属ケース28はアースされている。また、二光子共鳴多光子イオン化によるパルス状の電流信号は、タングステン線電極34を通り、コンデンサC1を介して、電流電圧変換器54の反転入力端子に入力するように構成されている。この電流電圧変換器54は、帰還抵抗R2により電流電圧変換効率が調整されている。この電流電圧変換器54により電圧に変換された信号は、端子56から外部へ出力される。この出力信号の波形は、オシロスコープによって表示される。
【0024】
次に、本レーザ装置の発振手順について説明する。まず、真空紫外発生用希ガスセル20の内部を真空ポンプ44で排気した後、クリプトン(Kr)を希ガスボンベ46から導入し、内部を一定圧に保持した後、バルブ22、24を閉じて、内部のクリプトン(Kr)の圧力を一定に保持する。次に、エキシマレーザ10をパルス発振させて、色素レーザ16のみを起動して、周波数ω1 の第1のレーザのみを真空紫外発生用希ガスセル20内に入射させる。次に、電流測定装置50を起動して、タングステン線電極34に、所定の直流バイアス電圧を印加する。クリプトン(Kr)原子による二光子共鳴多光子イオン化が起こると、クリプトンイオンと電子による電流がタングステン線電極34から金属ケース28に向けて流れる。この二光子共鳴多光子イオン化により生じたイオン電流を、タングステン線電極34により捉えて、電流電圧変換器54により電圧に変換した後、外部のオシロスコープにより信号波形を観測する。このイオン電流が最大値をとるように、色素レーザ16の回折格子42を手動で回転させて、回折格子42の回転角を定める。
【0025】
このようにして、クリプトン(Kr)原子による二光子共鳴が最大となる状態が得られるように第1のレーザの第1の波長(周波数ω1 )を設定した後に、色素レーザ14を起動して、第2の波長(周波数ω2 )を有した第2のレーザを真空紫外発生用希ガスセル20に入射させる。この時、クリプトン(Kr)原子の非線形効果により、周波数(2ω1 +ω2 )と、(2ω1 -ω2 )との2つの周波数のレーザを得ることができる。この時、第2のレーザの波長を順次変化させることにより、分光に適した所望の周波数(2ω1 +ω2 )又は、(2ω1 -ω2 )を得ることができる。この時、第2のレーザの波長(周波数ω2 )を掃引すれば、所望の目的とする波長のレーザを得ることができる。
【0026】
このように、本レーザ装置では、まず、第1のレーザの波長を非線形媒体の二光子共鳴に良く合致するように調整した後に、第2のレーザを非線形媒体に入射するようにしているので、四波混合レーザ発振を高効率で実現することができる。
【0027】
また、図1に示すように、電流測定装置50からのイオン電流の測定値を最大値追従装置58に入力して、その最大値追従装置58により、常に、イオン電流が最大となるようにモータ48を微小駆動して、回折格子42の回転角を制御するようにしても良い。最大値追従装置58としては、電流測定装置50から入力されたイオン電流の測定値を時間微分して、この時間微分が零(極大値)となるように、モータ48、したがって回折格子42の回転角をフィードバック制御するようにした装置である。
【0028】
このように、本装置では、波長変換装置の金属ケース28が電極(アース電極)となっているので、装置の構造を強固にできると共に構造が簡単となり、簡便にイオン電流を取り出すことができる。また、タングステン線電極34の出力端子に接近した位置で、高入力インピーダンスの電流電圧変換器を接続していることから、雑音を排除して、高電圧の出力を得ることができる。さらに、タングステン線電極34はガラス管に接合した用いていることから、イオン電流を真空状態の金属ケース28から容易に取り出すことができる。
【0029】
本発明は、図1のようにレーザ装置としても用いることができるし、電流測定装置50を有した波長変換装置20として、提供することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、主として、真空紫外領域の波長のレーザを効率良く得ることのできる装置である。例えば、酸素原子O(3P)、O(1D)、水素原子、窒素原子、塩素原子、シリコン原子や、ラジカルなどを高感度で検出する装置に応用することができる。これらは、燃焼化学反応解析や半導体プロセス解析において、系を乱すことなく測定できる有効な装置である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の具体的な実施例に係るレーザ装置を示した構成図。
【図2】本発明の電流測定装置を有した波長変換装置の詳細な構造を示した構成図。
【符号の説明】
【0032】
10…エキシマレーザ
14,16…色素レーザ
20…真空紫外発生用希ガスセル
26…分光用チャンバー
28…金属ケース
34…タングステン線電極
50…電流測定装置
図面
【図1】
0
【図2】
1