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明細書 :高分子固体電解質

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5002804号 (P5002804)
公開番号 特開2006-318674 (P2006-318674A)
登録日 平成24年6月1日(2012.6.1)
発行日 平成24年8月15日(2012.8.15)
公開日 平成18年11月24日(2006.11.24)
発明の名称または考案の名称 高分子固体電解質
国際特許分類 H01M  10/0565      (2010.01)
H01M  10/052       (2010.01)
C08K   3/38        (2006.01)
C08L  47/00        (2006.01)
C08L  71/02        (2006.01)
H01B   1/06        (2006.01)
FI H01M 10/00 110
H01M 10/00 102
C08K 3/38
C08L 47/00
C08L 71/02
H01B 1/06 A
請求項の数または発明の数 3
全頁数 11
出願番号 特願2005-137551 (P2005-137551)
出願日 平成17年5月10日(2005.5.10)
審査請求日 平成20年4月2日(2008.4.2)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304026696
【氏名又は名称】国立大学法人三重大学
発明者または考案者 【氏名】伊藤 敬人
【氏名】宇野 貴浩
審査官 【審査官】松嶋 秀忠
参考文献・文献 特開2000-021448(JP,A)
特開2002-033130(JP,A)
特開平11-260407(JP,A)
特開2003-146941(JP,A)
特開2004-099839(JP,A)
特開平10-050345(JP,A)
調査した分野 H01M 10/0565
C08K 3/38
C08L 47/00
C08L 71/02
H01B 1/06
H01M 10/052
特許請求の範囲 【請求項1】
アニオン型ポリマーリチウム塩とエーテル系高分子材との複合体材料であって、
前記アニオン型ポリマーリチウム塩がポリソルビン酸又はポリムコン酸のリチウム塩であり、リチウムと酸素とのモル比がリチウム1に対し酸素が1~30であることを特徴とするリチウム二次電池用高分子固体電解質。
【請求項2】
前記エーテル系高分子材料がポリエチレンオキシド、又は、ポリエチレンオキシド/ポリプロピレンオキシド共重合体を基本骨格とするエーテル系高分子材料であることを特徴とする請求項1に記載のリチウム二次電池用高分子固体電解質。
【請求項3】
前記リチウム二次電池用高分子固体電解質に三フッ化ホウ素又は、ボロキシン化合物を添加したことを特徴とする請求項1又は2の何れか1項に記載のリチウム二次電池用高分子固体電解質。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子固体電解質に関し、さらに詳しくはポリアニオン型リチウム塩を使用したリチウム二次電池用高分子固体電解質に関わる。
【背景技術】
【0002】
現在、小型電子・電気機器用に市販されているリチウム二次電池の多くは、可燃性の有機溶媒を電解液として使用しており、この有機溶媒電解液の液漏れおよびそれに伴う発火などの危険性を有している。従って、このようなリチウム二次電池を電気自動車のような大型用途に用いることは、リスク増大の点から好ましくない。よって、より安全な電解質材料が求められ、その解決策のひとつとして電解質に固体ポリマー複合体を用いる高分子固体電解質電池が注目されている。
【0003】
固体状態でイオンを高速かつ選択的に伝導できる高分子固体電解質の研究は、1973年のWrightらの報告に端を発している。すなわちポリエチレンオキシド(PEO,-[CHCHO]—)が固体状態でアルカリ金属塩と錯体を形成し、室温でイオン導電性を示すことが見出された。1979年にはArmandらによって、高分子固体電解質を用いた全固体ポリマー電池の可能性がはじめて示唆され、それ以来、今日に至るまで多岐にわたるポリマー電解質の研究が進められてきた。
【0004】
ところで、高分子固体電解質に要求される性質として次のようなものが上げられる。
第一に、電解質溶液に匹敵する高いイオン伝導度と小さな温度依存性を有することである。ここで、 高いイオン伝導度を得るには電荷キャリア(イオン)度が高く、固体中のキャリアの移動速度が大きいことが必要である。キャリア濃度はポリマー中への塩の溶解度とイオン解離のしやすさで決まる。一方、イオンの移動はポリマー複合体の非晶質部分の熱運動と連動して起こるので、高いイオン移動度を得るには、熱運動しやすいポリマーの構造を持っていることが望ましい。
次に、 熱的および化学的安定性に優れることが必要である。電解質として、広い安定電位窓を有していて長期間物理的に安定であることや、耐熱性、機械的強度に優れていることも電池としての実用性上、重要な要素である。
【0005】
これまでに研究されてきた高分子固体電解質のマトリックスポリマー骨格としては、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリアミン系及びポリスルフィド系がある。これらの中でも比較的高いイオン導電性を示すことが知られているポリエーテル系のポリマーが注目を集め、直鎖状のPEOあるいはその構造中にPEO構造を含むものについて数多くの報告がなされている。しかしながらPEOをマトリックスとする錯体では、酸素—Li間の相互作用が強いために一般に結晶性が高くなり、イオン導電率は温度に大きく依存し、融点以上で高いイオン導電率を示すものの室温ではかなり低くなる。一方、分岐ポリエーテル系高分子固体電解質は室温でも結晶化せず、枝状の短いエーテル側鎖の高い分子運動性によって室温でのイオン導電率も高くなり10-4S/cmオーダーの高い値が得られている。しかし、高いイオン導電率を示すポリエーテル系では、高分子中で解離したアニオンが高分子鎖との相互作用を受けることなく移動することが出来るため、アニオンの導電率(σ)の占める割合が大部分となり、全イオン導電率(σ=σ+σ)のうちリチウムイオン導電率(σ)の占める割合を示すリチウムイオン輸率(t=σ/(σ+σ)=σ/σ)がかなり低く、0.1以下になることもある。
【0006】
このようなポリマー電解質をリチウム二次電池に適用した場合、放電時にリチウムイオンのみでなく対アニオンも移動する。リチウムイオンは両電極に出入りするが、アニオンは電極上に堆積するためアニオンの偏りが大きくなって電極間でイオンの濃度分極を引き起こし、時間とともに電解質膜の抵抗が増大することにより、電池性能が低下する。そこで電解質中をカチオンのみが移動するポリマー複合体、すなわちシングルイオン伝導体をリチウム二次電池の電解質に用いる提案がなされている。(非特許文献1-4)。ここで、シングルイオン伝導体に固定されるイオン性解離基としては、カルボキシレート基、スルホネート基、スルホンイミド基、フェノレート基などがある。
【0007】

【非特許文献1】M. Watanabe, Y. Suzuki, A. Nishimoto, Electrochimica Acta, vol. 45, p.1187 (2000).
【非特許文献2】M. Watanabe, H. Tokuda, Electrochimica Acta, vol. 46, p. 1487 (2001).
【非特許文献3】Y. Tominaga, H. Ohno, Electrochimica Acta, vol. 45, p. 3081 (2000).
【非特許文献4】D. Benrabah, S. Sylla, F. Allion, J-Y. Sanchez, M. Armand,Electrochimica Acta, vol. 40, p. 2259 (1995).
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、シングルイオン導電性ポリマーではアニオンが高分子鎖に固定されており、アニオンサイトにリチウムイオンが強く束縛されてしまうためリチウムイオンの移動度が低下し、イオン導電率は大変低くなってしまうという問題点があり、シングルイオン導電性ポリマーにおいて、イオン導電率の改善が大きな課題となっている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以上の課題を解決するため、本発明者等はアニオンをポリマー構造中に固定したポリアニオン型リチウム塩ポリマー結晶を作り、それをマトリックスポリマーとブレンドすることによって、ポリマー結晶が無機フィラーと同じ役割を果たすことによって、イオン導電率、機械的強度の向上などの効果をもたらし、カチオン輸率の高い高分子固体電解質を得られると考えた。これらのリチウム塩はそれ自身イオン伝導性を持たないが、ポリマー電解質に10%程度添加することで、イオン導電率が著しく改善されることが知られている。ところで、セラミックスフィラーの添加による伝導度改善効果のメカニズムについては、まだ明確ではないが、フィラー添加によってポリマーの結晶化が抑制されることや、ポリマー中の残留水分や不純物がセラミックス粒子表面に吸着される効果、さらにはセラミックス粒子表面でのイオンの表面伝導の寄与などが考えられている。またフィラーの添加によりポリマー電解質の機械的強度が改善され、金属リチウムとの界面抵抗が低下するということも報告もあり、フィラーの添加は実際の電池構成の際にも大きな意味を持つと考えられている。
【0010】
ここで、ポリアニオン型リチウム塩ポリマー結晶を作る方法として、トポケミカル重合に着目した。トポケミカル重合は固相状態でモノマーの重心と対称性を維持したまま重合が進行するため、位置選択性、立体規則性、分子量等の制御が可能であること、更に、ポリマーが結晶のまま得られることが知られている。本発明者等は、既知のトポケミカル重合がおきる化合物ムコン酸とソルビン酸誘導体に着目し、Liイオンを導入したムコン酸及びソルビン酸誘導体ポリマーを合成し、それらをマトリックスポリマーとしてのエーテル系高分子材料(ポリエチレンオキシド(PEO)、またはポリエチレンオキシド/ポリプロピレンオキシド共重合体(P(EO/PO)))と混合した固体電解質を提供することにより本発明を完成した。
【0011】
本発明は、ポリアニオン型リチウム塩とエーテル系高分子材との複合体材料であって、リチウムと酸素とのモル比がリチウム1に対し酸素が1~30であること、より好ましくは10~20であることを特徴とするリチウム二次イオン電池用高分子固体電解質にある。ここで、複合体材料は、ベースポリマーであるエーテル系高分子材料とポリアニオン型リチウム塩ポリマーをアセトニトリルのような溶媒に所定割合で溶かし、キャストフィルムとする方法、及び、エーテル系高分子材料粉末とポリアニオン型リチウム塩ポリマー粉末を所定割合で均一混合しホットプレスすることにより複合体を得る方法がある。
更に、ポリアニオン型リチウム塩がより好ましくはポリソルビン酸又はポリムコン酸リチウム塩であり、エーテル系高分子材がポリエチレンオキサイド(—[CHCHO]—)であることを特徴とするリチウム二次イオン電池用高分子固体電解質にある。
【0012】
次に、上述の複合体材料に三フッ化ホウ素(BF)、又はボロキシン化合物を添加したことを特徴とするリチウム二次イオン電池用高分子固体電解質にある。Bはカルボキシレートアニオンとの相互作用が強く、イオン導電性を改善する効果を有している。
【発明の効果】
【0013】
本発明のポリアニオン型リチウム塩とエーテル系ポリマーおよびルイス酸化合物からなる高分子固体電解質の提供により、高いイオン導電率(1×10-4S/cm
at 50℃)と高イオン輸率(t=0.69)、更に良好な機械的強度を有するリチウム二次電池用全固体電解質が可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に本発明の好適な一実施の形態を実施例によって説明するが、本発明の技術的範囲は下記の実施形態によって限定されるものでなく、その要旨を変更することなく様々に改変して実施することができる。
【実施例1】
【0015】
<ソルビン酸リチウム塩の合成>
ソルビン酸(図1中の(1))3.0g(2.4mmol)、LiOH・HO(図1中の(2))1.2g(2.7mmol)を熱した精製水30mlに溶解し、(1)と(2)の量を微調整して、その混合水溶液のpHを8に合わせた。そこに2-プロパノール30mlを加えて冷却し、ろ過によって不溶部を取り除いた。ジムロート冷却管と50ml滴下漏斗、マグネチックスターラーを装着した500mlナスフラスコに2-プロパノール480mlを還流させ、そこに滴下漏斗を用い、先ほど調整した水溶液を2時間かけて滴下した。滴下終了後、撹拌しながら室温まで放冷し、析出した固体をろ過することによって、白色の粉末としてソルビン酸リチウム塩(図1中の(3))を得た。次に、パイレックス製のアンプル管(直径10mm、長さ20cm)
にソルビン酸リチウム塩(図1中の(3))を所定量取り、真空ポンプによって脱気して封管した。このアンプル管を240℃の電気炉に入れ、所定時間重合した。所定時間経過後、グローブボックス内でアンプル管を開封しポリソルビン酸リチウム塩(図1中の(4))を得た。反応後の
NMR(DO)測定から、モノマー由来のピークの完全な消失を確認することにより重合の進行を確認した。
【0016】
<ポリE,E-ムコン酸リチウム塩の合成>
マグネチックスターラーを装着した50mlナスフラスコにE,Eムコン酸(図2の(5))568mg(4mmol)、メタノール20mlを入れ、(図2の(5))が溶解するまで撹拌した。その後、1-ナフチルメチルアミン(図2の(6))1.2ml(8mmol)を滴下すると、乳白色の沈殿が析出した。滴下後1時間撹拌し、反応混合物をジエチルエーテルに注ぐことによって沈殿させ、沈殿をろ過することによって白色粉末として1-ナフチルメチルアンモニウムE,E-ムコン酸(図2の(7))を得た。次に、パイレックス製のシャーレ(直径10cm)に1-ナフチルメチルアンモニウムE,E-ムコン酸(7)を所定量取り、このシャーレを400W高圧水銀ランプから12cm離れたところに固定し、所定時間紫外線照射した。所定時間経過後、メタノールによる再沈殿を3回行い、メタノール不溶部を濾別し、乾燥させることによってポリ1-ナフチルメチルアンモニウムE,E-ムコン酸(図2の(8))を得た。次に、ジムロート冷却管、マグネチックスターラーを装着した50mlナスフラスコにポリ1-ナフチルメチルアンモニウムE,E-ムコン酸(8)472mg(1mmol)、無水水酸化リチウム(9)495mg(20mmol)、メタノール30mlを入れ、24時間撹拌しながら還流させた。反応後、反応混合物を濾過することによって、乳白色粉末としてポリE,E-ムコン酸リチウム塩(図2の(10))を得た。
【0017】
<ポリZ,Z-ムコン酸リチウム塩の合成>
1-ナフチルメチルアンモニウムE,E-ムコン酸(7)の合成と同様の方法を用いてZ,Zムコン酸(図3の(11))284mg(2mmol)、1-ナフチルメチルアミン(図3の(6))0.6ml(4mmol)から白色粉末として1-ナフチルメチルアンモニウムZ,Z-ムコン酸(12)を得た。次に、前述(7)と同様の方法を用いて、1-ナフチルメチルアンモニウムZ,Z-ムコン酸(12)の光固相重合を行った。所定時間経過後、同様の処理からポリ1-ナフチルメチルアンモニウムZ,Z-ムコン酸(図3の(13))を得た。更に、ポリ1-ナフチルメチルアンモニウムZ,Z-ムコン酸(13)416mg(0.9mmol)、無水水酸化リチウム(図3の(9))437mg(18mmol)から乳白色粉末としてポリZ,Z-ムコン酸リチウム塩(図3の(14))を得た。
【0018】
精製水は、水道水をミリポア社製純水製造装置Elix 5により精製し、更にミリポア社製Milli-Q Academic-A10により、水中のイオン等を完全に除去した。又、アセトニトリルは、市販のアセトニトリルにCaHを加え一晩還流した後蒸留した。
【0019】
<ポリマー電解質の作成>
ポリマー電解質は3つの方法を用いて作成した。どの場合も調製はドライボックス中で行った。
(1)ペレッターを用いたポリマー電解質の作成方法
ソルビン酸リチウム塩(4)、ポリE,E-ムコン酸リチウム塩(10)、ポリZ,Z-ムコン酸リチウム塩(14)の導電率を測定する際に、各ポリマー50mgを直径7mmのペレッターに入れ、プレス機で4トンの荷重をかけてペレットを作成した。
【0020】
(2)キャスティング法を用いたポリマー電解質の作成
リチウム塩ポリマーとベースポリマーとのブレンドによる電解質の調製の際に、ベースポリマーとリチウム塩ポリマー(場合によってリチウム塩)を所定量取り、50mlのサンプル瓶に入れ、適量のキャスティング溶媒(精製アセトニトリル)を加えて12時間撹拌した。ベースポリマー中にリチウム塩ポリマーが十分に分散していることを確認した後、テフロン製のシャーレ(直径3.3cm、深さ1.0cm)にキャスティングし、乾燥炉に入れた。その後室温で12時間かけて減圧し、熱をかけて2日間真空乾燥することによって、ポリマー電解質フィルムを得た。
【0021】
(3)ホットプレスを用いたポリマー電解質の作成
ポリエチレンオキシドとリチウム塩ポリマーのブレンドによる電解質の調製の際に、ベースポリマーとリチウム塩ポリマーを所定量取り、それをめのう乳鉢を用いて均一に混合した。ホットプレスの底面にテフロンのシートを敷き、その上に直径5mmのポンチで穴を開けたテフロンのシートを乗せ、その穴の中に混合した試料を詰めて、又その上からテフロンのシートで蓋をした。その状態でプレスし、90℃の熱を24時間かけ、その後24時間放冷させることによってポリマー電解質を得た。
【0022】
<熱重量分析TGおよび示差熱分析DTA結果>
DTAの分析装置として、Seiko Instruments Inc. EXSTER6000熱分析装置TG-DTA 6200を用いた。
ポリソルビン酸リチウム塩(4)、ポリE,E-ムコン酸リチウム塩(10)の熱安定性を調査するために、LiN(SOCFを比較試料として、室温から400℃の温度範囲で、TG測定を行った。その結果を表1に示す。いずれのサンプルも吸湿性が高くサンプル調製時に水分が混入する可能性があるため、すべてのサンプルについて測定前にあらかじめ120℃で10分加熱してから測定を行った。5%重量損失温度は(4)で329℃、(10)で326℃であった。また400℃で(4)は16.1%、(10)は19.2%の重量損失が確認された。また、比較のために測定した高解離性の塩として高分子固体電解質によく用いられているLiN(SOCF塩の場合、5%重量損失温度は355℃、400℃で48.2%の重量損失が確認された。LiN(SOCFは400℃で約半分分解してしまうのに対して(4)、(10)は約2割程度しか分解していないことから、(4)、(10)の高い熱安定性が確認された。
【0023】
【表1】
JP0005002804B2_000002t.gif

【0024】
<イオン導電率の測定法>
イオン導電率の測定用サンプルは、キャスティング法を用いて調製した電解質サンプルの場合はドライボックス中でフィルムを直径5mmのポンチでくり抜き、それを何枚か重ねてサンプルとした。ホットプレスで調製したものはそのままセルに組み込んだ。作成したセルを複素交流インピーダンス測定装置に銅線を用いて接続し、その抵抗を測定した。測定はセルを任意の温度に設定した恒温槽に12時間放置し、電解質と電極を十分になじませた後、任意の温度から10℃ずつ温度を下げ、各温度で1時間放置した後に行った。導電率σ(S/cm)は次のように定義される。
σ=C/R (C=l/s)
ここでlは試料の厚さ、sはその面積、Rは抵抗を示す。
【0025】
<ポリエチレンオキシド(PEO)/ホ゜リソルビン酸リチウム塩(図1の(4))のイオン導電率>
PEOは分子量Mn=600,000のものを用い、(4)は粒径が均一のサイズになるようにあらかじめ乳鉢で潰したものを用いた。イオン導電率に対するリチウム塩濃度の影響を比較するため、Li/O比が1/8、1/10、1/12、1/16、1/20になる様に(4)とPEOの量を調整した。調製した電解質は(4)が均一に分散された単黄色の固体であり、出来たペレットを用いてイオン導電率の測定を行った。
測定の結果をアレニウスプロットとして図4に示した。(4)単体では130℃では導電性を示さなかったが、PEOとブレンドすることによって130℃以下でもイオン導電性を示し、PEOによってリチウムカチオンの解離が促進されている。しかしながらどのサンプルにおいても60℃以下ではPEOの結晶化に伴う導電率の急激な低下が観察された。イオン導電率に対するリチウム塩濃度の影響を比較した結果、図4に示すように、Li/O=1/16のサンプルにおけるイオン導電率が最も高い値を示した。
【0026】
<PEO/ポリムコン酸リチウム塩(10)、(14)系高分子固体電解質のイオン導電率>
測定結果をアレニウスプロットとして図5に示す。(10)、(14)単体は、130℃では導電性を示さなかったが、PEOとブレンドすることによって130℃以下でもイオン導電性を示した。Li/O比を変えたどのサンプルにおいても60℃以下でPEOの結晶化に伴う導電率の急激な低下が観察されたが(4)と比較してその低下は小さかった。又、イオン導電率に対するリチウム塩濃度の影響を比較した結果、図5に示すようにLi/O=1/16のサンプルにおけるイオン導電率が最も高い値を示した。
【0027】
<BFを添加した場合の導電率>
Li/O=1/16となるようにPEOと(4)、(10)を調整し、LiとBFがモル比で1:1となるようにBFを添加した後、キャスティングによってフィルムを作製し、導電率を測定した。
結果をアレニウスプロットとして図6に示すが、図から、無添加の系と比べ導電率は1~2桁高くなった。BFの添加によってリチウムイオンの解離が大きく促進されたものと考えられる。すべての系において40~50℃でPEOの結晶化による導電率の低下が見られたが、Bx(3)(2,4,6-tris{(3,6,9-trioxadecyl)oxy}boroxine)を加えた系については可塑化効果によって、BFの系と比べ低温でのイオン導電率が若干向上した。
【0028】
<リチウムイオン輸率(t)の測定法>
本発明では、直流分極測定と複素インピーダンス測定の併用によってカチオン輸率(t)を求めた。
UFO型セルを用いて、Li/electrolyte/Liの対称型セルを組み、80℃でのリチウムイオン輸率を測定した。セルはまず80℃の恒温槽に3時間置き、その後複素インピーダンス測定を行い、直流分極測定を行った。電流が一定になったのを確認した後、再び複素インピーダンス測定を行い、得られた電流値と抵抗値からリチウムイオン輸率の計算を行った。その結果を表2に示す。結果を要約すると、PEO/Poly(Lithium Sorbate)(4)、Poly(Lithium E,E-Muconate)(10)系高分子固体電解質は、LiN(SOCF塩を用いた系(t=0.1)と比べどちらも非常に高いリチウムイオン輸率を示した。
又、ホウ素化合物を添加した系についても若干リチウムイオン輸率が低下したが、高い割合でリチウムイオンによる導電が生じていることを示した。
【0029】
【表2】
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【0030】
<機械的強度>
ポリマー電解質の一つの重要な特性に寸法安定性がある。電池を作成した際、ポリマー電解質は負極と正極の間に圧着されており、セパレーターとしての役割を果たしており、正極と負極が接触してショートしないためにはポリマー電解質はある程度の強度を持っている必要がある。そこで、ポリマー電解質の引っ張り強さを調査し、その寸法安定性を評価した。操作はすべてドライボックスにて行なった。適当な大きさの電解質(約1cm四方)の厚みをマイクロメーターで測定し、それを引っ張り強度試験器で測定した(測定温度はそれぞれ30℃、60℃)。PEOとリチウム塩(4)及び(10)更にホウ素化合物との複合体における結果を表2に示すが(イミド塩(LiN(SOCF)は比較試料)、(4)及び(10)又、BFの添加により機械的強度が向上した。
【0031】
【表3】
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【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】ソルビン酸リチウム塩の合成過程における化学式を示す図である。
【図2】E-ムコン酸リチウム塩の合成過程における化学式を示す図である。
【図3】Z-ムコン酸リチウム塩の合成過程における化学式を示す図である。
【図4】PEO/ポリソルビン酸Li塩系高分子固体電解質のイオン導電率を示す図である。
【図5】PEO/ポリムコン酸Li塩系高分子固体電解質のイオン導電率を示す図である。
【図6】高分子固体電解質のイオン導電率に対するBF添加の影響を示す図である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5