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明細書 :産卵誘引フェロモンの製造方法およびその製造中間体の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4765056号 (P4765056)
公開番号 特開2006-036705 (P2006-036705A)
登録日 平成23年6月24日(2011.6.24)
発行日 平成23年9月7日(2011.9.7)
公開日 平成18年2月9日(2006.2.9)
発明の名称または考案の名称 産卵誘引フェロモンの製造方法およびその製造中間体の製造方法
国際特許分類 C07D 339/08        (2006.01)
C07D 309/30        (2006.01)
FI C07D 339/08
C07D 309/30 D
請求項の数または発明の数 3
全頁数 11
出願番号 特願2004-220511 (P2004-220511)
出願日 平成16年7月28日(2004.7.28)
審査請求日 平成19年5月11日(2007.5.11)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504174180
【氏名又は名称】国立大学法人高知大学
発明者または考案者 【氏名】小槻 日吉三
個別代理人の代理人 【識別番号】100075409、【弁理士】、【氏名又は名称】植木 久一
【識別番号】100115082、【弁理士】、【氏名又は名称】菅河 忠志
【識別番号】100125184、【弁理士】、【氏名又は名称】二口 治
【識別番号】100125243、【弁理士】、【氏名又は名称】伊藤 浩彰
審査官 【審査官】井上 典之
参考文献・文献 特表昭58-501947(JP,A)
Ikishima, H., Sekiguchi, Y., Ichikawa, Y., Kotsuki, H.,"Synthesis of (-)-(5R,6S)-6-acetoxyhexadecanolide based on L-proline-catalyzed asymmetric aldol reactions",Tetrahedron,2006年,Vol.62, No.2-3,pp.311-316,Available online 3 October 2005
Trost, B. M., et al.,"A Ru Catalyzed Divergence: Oxidative Cyclization vs Cycloisomerization of Bis-homopropargylic Alcohols",Journal of the American Chemical Society,2002年,Vol.124, No.11,pp.2528-2533
Gao, X., et al.,"3-Boronoacrolein as an Exceptional Heterodiene in the Highly Enantio- and Diastereoselective Cr(III)-Catalyzed Three-Component [4+2]/Allylboration",Journal of the American Chemical Society,2003年,Vol.125, No.31,pp.9308-9309
Olagbemiro, T. O., et al.,"Production of (5R,6S)-6-Acetoxy-5-hexadecanolide, the Mosquito Oviposition Pheromone, from the Seed Oil of the Summer Cypress Plant, Kochia scoparia (Chenopodiaceae)",Journal of Agricultural and Food Chemistry,1999年,Vol.47, No.8,pp.3411-3415
Sekiguchi, Y., et al.,"High-Pressure-Promoted Asymmetric Aldol Reactions of Ketones with Aldehydes Catalyzed by l-Proline",Synlett,2003年,No.11,pp.1655-1658
Ikishima, H., et al.,"Synthesis of (-)-(5R,6S)-6-acetoxyhexadecanolide based on L-proline-catalyzed asymmetric aldol reactions",Tetrahedron,2006年,Vol.62, No.2-3,pp.311-316,Available online 3 October 2005
調査した分野 C07D 339/
C07D 309/
CA/REGISTRY(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
L-プロリンの存在下、化合物(II)と(III)とをアルドール縮合し、2R-1S体である化合物(IV)と、2R-1R体であるそのanti異性体(IV')の混合物を得る工程;および
上記混合物から化合物(IV)を精製する工程を含むことを特徴とする化合物(IV)の製造方法。
【化1】
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[上記式中、R3はC1-C10アルキル基を示す。]
【請求項2】
上記L-プロリンを、化合物(III)に対して20~50モル%添加する請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
スキームAで表される産卵誘引フェロモン(I)の製造方法であって、
化合物(IV)の1,3-ジチアン基をラネーニッケルによりメチレン基まで脱硫して化合物(V)を得る工程;
化合物(V)のシクロペンタノン基をBaeyer-Villiger酸化反応によりδ-バレロラクトンとして化合物(VI)を得る工程;および
化合物(VI)の水酸基をアシル化することによって産卵誘引フェロモン(I)を得る工程を含むことを特徴とする方法。
【化2】
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[上記式中、R1はC1-C7アシル基を示し、R3はC1-C10アルキル基を示し、R2は-(CH2)2-R3基を示す。]
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、(5R,6S)-(-)-6-アセトキシ-5-ヘキサデカノリドに代表される産卵誘引フェロモンの製造方法、および当該方法で用いられる製造中間体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
西ナイルウイルスは日本脳炎ウイルス等に近いものであり、主に鳥類に感染するが、時に哺乳類にも感染する。このウイルスは、もともとアフリカやヨーロッパ、西アジアで広く見られたものであるが、1999年には北米でも流行が報告された。以来、北米では毎年死者が出ており、問題となっている。
【0003】
このウイルスは、鳥類によって感染地を拡大していくが、蚊にも媒介されることが知られている。その他にも、蚊は様々な伝染病を媒介することから、その駆除は重要である。しかし、蚊はどこにでもある水溜りをも産卵場所にできるため、駆除は容易でない。
【0004】
ところで、蚊の産卵は、既に産み付けられた卵より発せられる産卵誘引フェロモンにより誘引されることが知られているため、この産卵誘引フェロモンを利用して蚊を駆除することが考えられている。そこでPickettらは、ネッタイイエカ(Culex pipiens fatigans)の卵から産卵誘引フェロモンを単離し、その構造を下記の通り決定した。また、特許文献1には、当該化合物を含む誘導体が開示されている。
【0005】
【化1】
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【0006】
そして当該化合物については、蚊に対する農薬としての興味からも、その合成研究が盛んに行なわれた。しかし、当該化合物は2つの不斉炭素を有しているため、多くの場合、合成ステップ数が多いことやキーとなる反応の収率が低いなどの問題点があった。
【0007】
これに対して最近では、Ru金属を触媒とした酸化的環化反応や、Crを触媒とした高エナンチオ選択的・高ジアステレオ選択的[4+2]アリルホウ素化反応によって、上記産卵誘引フェロモンの効率的な合成が達成されている(非特許文献1と2)。しかし、西ナイルウイルスに対する農薬としての観点から考えると、斯かる産卵誘引フェロモンについては大量生産が不可欠であるため、高価な金属触媒を用いるこれら方法は好適なものとはいえない。特に、西ナイルウイルスの分布を考えれば、経済状況の悪い開発途上国への供給も考慮する必要があり、安価で簡便に製造する必要がある。
【0008】
また、非特許文献3には、(Z)-5-ヘキサデカン酸を原料としたステップ数の少ない産卵誘引フェロモンの合成方法が開示されている。しかし、この合成方法は微生物変換を利用しており、当該ステップの収率は良いとはいえないと考えられる。
【0009】
ところで、本発明者らはL-プロリンの存在下、高圧力下で行なう不斉アルドール縮合につき既に発表しており、特にベンゼン環やシクロヘキサン環にアルデヒド基が直結した化合物を原料として用いた場合に、収率と光学純度共に良好な結果が得られることを明らかにしている(非特許文献4)。しかし、当該技術は、産卵誘引フェロモンの合成にそのまま適用できるものではなかった。

【特許文献1】米国特許第4,803,289号公報
【非特許文献1】Trost,B.M.,Rhee,Y.H.,J.Am.Chem.Soc.,124巻,2528-2533頁(2002年)
【非特許文献2】Gao,X.,Hall,D.G.,J.Am.Chem.Soc.,125巻,9308-9309頁(2003年)
【非特許文献3】Olagbemiro,T.O.ら,J.Agric.Food.Chem.,47巻,3411-3415頁(1999年)
【非特許文献4】Sekiguchi.Y.ら,Synlett,11号,1655-1658頁(2003年)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述した通り、天然の産卵誘引フェロモンやその誘導体は既に知られており、その効率的な製造方法も種々検討されている。しかし、その安定的な供給のためには、より効率的な合成経路の確立が求められているところである。
【0011】
そこで、本発明が解決すべき課題は、産卵誘引フェロモンの製造方法であって、ステップ数が少なく簡便であり且つ低コストであることから大量合成に適するものを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、天然産卵誘引フェロモンやその誘導体の製造条件につき鋭意研究を進めた。その結果、特定の合成中間体を基質として不斉アルドール縮合を行なえば容易にキラルコントロールをすることができ、産卵誘引フェロモン等の効率的で簡便な合成が可能になることを見出して、本発明を完成した。
【0013】
即ち、本発明の製造方法は、産卵誘引フェロモン等の製造中間体として利用可能な化合物(IV)を製造するものであって、L-プロリンの存在下、化合物(II)と(III)とをアルドール縮合することを特徴とする。
【0014】
【化2】
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[上記式中、R3はC1-C10アルキル基を示す。]
【0015】
上記製造方法において、L-プロリンの添加量としては、化合物(III)に対して20~50モル%が好適である。斯かる規定に基づいて不斉アルドール縮合を行なえば、光学純度の高い化合物(IV)が収率よく得られることが実証されているからである。
【0016】
本発明に係る産卵誘引フェロモン(I)の製造方法は、上記製造方法等により製造された化合物(IV)を製造中間体とすることを特徴とする。
【0017】
【化3】
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[上記式中、R1はC1-C7アシル基を示し、R3はC1-C10アルキル基を示し、R2は-(CH2)2-R3基を示す。]
【0018】
また、本発明に係る産卵誘引フェロモン(I)の製造方法は、スキームAで表されるものである。
【0019】
【化4】
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[上記式中、R1はC1-C7アシル基を示し、R3はC1-C10アルキル基を示し、R2は-(CH2)2-R3基を示す。]
【0020】
本明細書において、「C1-C10アルキル基」とは、炭素数1~10の直鎖状または分枝鎖状の脂肪族飽和炭化水素をいう。例えば、メチル,エチル,プロピル,イソプロピル,ブチル,イソブチル,t-ブチル,ペンチル,イソアミル,ヘキシル,ヘプチル,オクタニル,ノナニル,デカニル等である。好適にはC4-C10アルキル基であり、より好適にはC6-C10アルキル基であり、最適にはC8-C10アルキル基である。
【0021】
「C1-C7アシル基」とは、水素原子またはC1-C6アルキル基に置換されたカルボニル基をいう。例えば、ホルミル,アセチル,プロピオニル,ブチリル,イソブチリル,バレリル,イソバレリル,ピバロイル,ヘキサノイル等である。好適にはC1-C4アシル基であり、より好適にはC1-C2アシル基であり、最適にはアセチル基である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、産卵誘引フェロモンを低コストで効率的に製造することができる。特に、西ナイルウイルスを媒介するネッタイイエカの産卵誘引フェロモンである(5R,6S)-(-)-6-アセトキシ-5-ヘキサデカノリドは、その構造中に2つの不斉炭素を有することから、従来、ステップ数の多い製造スキームが主であり効率的な製造方法が確立されていなかった。しかし、本発明方法を用いれば、簡便にキラルコントロールができ、効率的な製造が可能になる。従って、本発明は、産卵誘引フェロモンの農薬としての利用を可能にし得るものであって、西ナイルウイルスの撲滅に貢献できるものとして、産業上極めて有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明に係る産卵誘引フェロモン(I)の製造方法は、化合物(IV)を製造中間体とするものであり、この化合物(IV)は、下記反応式により製造することができる。
【0024】
【化5】
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[上記式中、R3はC1-C10アルキル基を示す。]
【0025】
上記反応式において、原料である化合物(II)(シクロペンタノン)は、市販のものを利用するか、或いは当業者公知の方法により製造することができる。また、化合物(III)は、後述するスキームBにより製造することができる。
【0026】
この反応式では、特に化合物(III)を基質とする点を特徴とする。つまり、本発明者らは既に不斉アルドール縮合反応につき報告しており(非特許文献4)、アルデヒド基がベンゼン環やシクロヘキサン環に直結している化合物を基質として用い、高圧力をかけることによって、光学純度が高いアルドール縮合化合物を収率良く製造できることを見出している。ところが、この技術思想は、本発明方法にそのまま応用できるものではなかった。即ち、本発明方法では、産卵誘引フェロモンの製造に当たり1,3-ジチアン基を利用して不斉アルドール縮合反応を行なっているが、この1,3-ジチアン基にアルデヒド基が直結した化合物を基質とした場合には、反応が進行しなかった。そこで、1,3-ジチアン基とアルデヒド基との間にメチレン基を挿入したところ、反応が進行したばかりでなく光学純度の高い化合物(IV)が得られた。
【0027】
この反応は、一般的に、化合物(II)(シクロペンタノン)と化合物(III)にL-プロリンを添加し、不活性ガス雰囲気下、室温で反応させればよい。この際、圧力調節は特に必要なく、常圧で反応させればよい。また、溶媒も特に必要としない。シクロペンタノンは常温常圧下で液体であるので、これを溶媒に代えることができるからである。温度についても、化合物(III)の種類によっては加温してもよいが、一般的に室温でも反応は進行する。反応の進行状況や終了時については、薄層クロマトグラフィーを利用すればよいが、一般的な反応時間は、10~30時間程度である。
【0028】
L-プロリンの添加量は、化合物(III)に対して20~50モル%とする。20モル%より少ないと光学純度が落ちる場合がある一方で、50モル%を超えると効果が頭打ちになるからである。好適には、30モル%程度が適当である。
【0029】
反応終了後は、一般的な後処理と精製をすればよい。生成化合物としては、syn体である化合物(IV)の他にも、anti体である化合物(IV')も得られるが、本発明方法ではsyn体の方が優勢に生成する。また、anti体も、産卵誘引フェロモン(I)の製造中間体として利用することができ得る。更に、これら化合物(IV)と(IV')は産卵誘引フェロモン(I)の製造中間体化合物として有用であるが、用途はこれに限られず、他用途にも応用可能である。
【0030】
産卵誘引フェロモン(I)は、下記スキームAにより製造することができる。
【0031】
【化6】
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[上記式中、R1はC1-C7アシル基を示し、R3はC1-C10アルキル基を示し、R2は-(CH2)2-R3基を示す。]
【0032】
スキームAは、化合物(IV)を原料として、ラネーニッケルにより1,3-ジチアン基をメチレン基まで脱硫し、シクロペンタノン基をBaeyer-Villiger酸化反応によりδ-バレロラクトンとした後、水酸基をアシル化することによって、産卵誘引フェロモン(I)を製造するものである。それぞれの反応は古典的なものであるので、当業者公知の条件によって行なうことができる。
【0033】
化合物(IV)の製造原料である化合物(III)は、比較的単純な構造を有するため、当業者であれば容易に製造することができる。例えば、R3の1,3-ジチアン基側の最末端がメチレン基である化合物(III)は、以下のスキームBに従って製造できる。
【0034】
【化7】
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[上記式中、R3’はR3”から1,3-ジチアン基側の最末端のメチレン基を除いた基を示し、Rはメチル基やエチル基等の低級アルキル基を示し、Halは臭素原子等のハロゲン原子を示し、R3”はR3のうち1,3-ジチアン基側の最末端がメチレン基であるものを示し、R3はC1-C10アルキル基を示す。]
【0035】
上記スキームBは、本発明に係る製造中間体化合物(IV)の製造原料となる化合物(III)を製造するためのものである。出発原料であるアセト酢酸エステルは、市販のものを用いるか、当業者公知の方法により容易に製造することができる。スキームBでは、この出発原料化合物にLDA(リチウムジイソプロピルアミン)等の塩基とハロゲン化アルキル(R3-Hal)を反応させることによりアルキル鎖を付加した後、ケトン基を選択的に1,3-ジチアンとする。そして、エステル基をDIBAL(水素化ジイソブチルアウミニウム)等を用いてアルデヒド基まで還元することによって、化合物(III)を製造することができる。なお、これら反応条件は比較的容易なものであるので、当業者であれば容易に実施することができる。
【0036】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例により制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例】
【0037】
実施例1-1 3-オキソ-n-ウンデカン酸エチル
n-ブチルリチウムの1.48N ヘキサン溶液 1.4mL(n-ブチルリチウム:2mmol)を、ジイソプロピルアミン 0.28mL(2mmol)の乾燥テトラヒドロフラン(2mL)溶液に-78℃で滴下し、この混合液を-78℃のまま30分間攪拌した。次いで、この混合液にアセト酢酸エチルエステル 0.13mL(1mmol)を-78℃で滴下した。1時間後、混合液の色は黄色に変化した。温度をゆっくりと0℃に戻した後、1-ブロモヘプタン 0.17mL(1.1mmol)を滴下した。滴下後、この反応混合液を攪拌しながら、ゆっくりと室温に戻した。約1時間後、反応混合液に氷と2N塩酸を加え、ジエチルエーテルで3回抽出した。抽出液を合わせて無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過した。濾液を濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(溶出液:ヘキサン/ジエチルエーテル=2/1)で精製し、無色油状の目的化合物を得た(収量:140mg,収率:61%)。
Rf : 0.47(ヘキサン/ジエチルエーテル=2/1)
FTIR(neat)ν3423,1746,1717cm-1
1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ0.88(3H, t, J=7.2Hz), 1.27(9H, m), 1.28(3H, t, J=7.3Hz), 1.60(3H, m), 2.53(2H, t, J=7.4Hz), 3.43(2H, s), 4.20(2H, q, J=7.3Hz)
13C-NMR(100MHz,CDCl3)δ14.05, 14.07, 22.60, 23.43, 28.99, 29.07, 29.28, 31.77, 43.03, 49.29, 61.30, 167.26, 203.01。
【0038】
実施例1-2 3-(1,3-ジチアシクロヘキサン-2-イル)-n-ウンデカン酸エチル
BF3・エーテル 37mg(0.26mmol)と1,3-プロパンジチオール 119mg(1.1mmol)の混合溶液へ、上記実施例1-1で製造した3-オキソ-n-ウンデカン酸エチル200mg(0.88mmol)の酢酸(0.15mL)溶液を加え、室温で3時間攪拌した。この反応混合液を0℃まで冷却した後に、水を加えた。炭酸水素ナトリウム水溶液で中和した後、ジクロロメタンを加えて抽出した。抽出液を合わせて無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過した。濾液を濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(溶出液:ヘキサン/ジエチルエーテル=2/1)で精製し、無色油状の目的化合物を得た(収量:258mg,収率:92%)。
Rf : 0.58(ヘキサン/ジエチルエーテル=2/1)
FTIR(neat)ν1734cm-1
1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ0.88(3H, t, J=7.3Hz), 1.27(3H, t, J=7.1Hz), 1.30(9H, m), 1.55(3H, m), 1.87(1H, ddt, J=14.0, 11.2, 3.2Hz), 2.02-2.12(3H, m), 2.73(2H, ddd, J=14.2, 5.4, 3.4Hz), 3.04(2H, ddd, J=14.2, 11.2, 2.8Hz), 3.05(2H, s), 4.15(2H, q, J=7.1Hz)
13C-NMR(100MHz,CDCl3)δ14.10, 14.18, 22.64, 23.68, 25.05, 26.41(×2),29.23, 29.36, 29.72, 31.83, 39.53, 42.69, 50.33, 60.53, 168.86。
【0039】
実施例1-3 3-(1,3-ジチアシクロヘキサン-2-イル)ウンデカナール
水素化ジイソブチルアルミニウムの1.01Mトルエン溶液25.37mL(25.37mmol)を、上記実施例1-2で製造した3-(1,3-ジチアシクロヘキサン-2-イル)-n-ウンデカン酸エチル 6.73g(21.14mmol)を乾燥ジクロロメタン(175mL)に溶解した溶液へ、-78℃で30分かけて滴下した。滴下後、反応混合物を-78℃にて更に30分間攪拌した。反応終了後、-78℃で酢酸 0.45mLを加えることにより過剰の水素化ジイソブチルアルミニウムを分解した後、室温に戻した。次いで飽和ロッセル塩水溶液 100mLを加え、均一溶液になるまで攪拌した。二層分離した有機層を10%炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥を行なった後に濾過した。濾液を濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(溶出液:ヘキサン/ジエチルエーテル=2/1)で精製し、無色油状の目的化合物を得た(収量:5.101g,収率:88%)。
Rf : 0.56(ヘキサン/酢酸エチル=2/1)
FTIR(neat)ν1718cm-1
1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ0.88(3H, t, J=7.1Hz), 1.27(10H, m), 1.50(2H, m), 1.90-2.09(4H, m), 2.83(1H, ddd, J=14.6, 6.8, 3.7Hz), 2.91(2H, d, J=2.7Hz), 2.91(2H, ddd, J=14.6, 9.5, 3.4Hz), 9.78(1H, t, J=2.7Hz)
13C-NMR(100MHz,CDCl3)δ13.91, 22.42, 23.80, 24.52, 25.98(×2), 28.98, 29.13, 29.46, 31.60, 40.17, 49.08, 49.85, 199.53。
【0040】
実施例2-1 2R-2-[1S-3-(1,3-ジチアシクロヘキサン-2-イル)-1-ヒドロキシ-n-ウンデシル]シクロペンタン-1-オンまたは2R-2-[1R-3-(1,3-ジチアシクロヘキサン-2-イル)-1-ヒドロキシ-n-ウンデシル]シクロペンタン-1-オン
シクロペンタノン(1.5mL,17mmol),L-プロリン(17mg,0.15mmol,0.3当量)および実施例1-3で製造した3-(1,3-ジチアシクロヘキサン-2-イル)ウンデカナール(137mg,0.5mmol)の混合物を、アルゴン雰囲気下、室温で24時間攪拌した。反応終了後、反応混合物に水を加え、クロロホルムで抽出した。抽出液を合わせて無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過した。濾液を濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(溶出液:ヘキサン/ジエチルエーテル=2/1)で精製し、無色油状の目的化合物であるsyn体とanti体それぞれを得た(合計収量:145mg,合計収率:81%,syn:anti=3.8:1,syn=83%ee,anti=86%ee)。syn体とanti体それぞれの光学純度は、下記条件のHPLCにより測定した。
カラム : Chiralpak AD, 0.46×25cm(ダイセル化学工業製)
溶出液 : ヘキサン/2-プロパノール=90/10
流速 : 0.7cm3/分
リテンションタイム : syn体:9.5分と11.5分,anti体:11.7分と13.3分
syn体の分析データ:
Rf : 0.36(ヘキサン/酢酸エチル=2/1)
[α]D19 : +22.6(c 0.62,CHCl3
FTIR(neat)ν3446, 1736cm-1
1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ0.88(3H, t, J=7.3Hz), 1.29(10H, m), 1.41(1H, m), 1.53(1H, m), 1.70-1.80(1H, m), 1.85-2.18(10H, m), 2.31(1H, m), 2.37(1H, dd, J=15.1, 9.8Hz), 2.73-2.81(2H, m), 2.93(1H, ddd, J=13.4, 10.2, 2.9Hz), 2.99(1H, ddd, J=13.4, 10.2, 2.9Hz), 3.34(1H, d, J=2.7Hz), 4.42(1H, d, J=9.5Hz)
13C-NMR(100MHz,CDCl3)δ14.08, 20.66, 22.62, 23.29, 23.91, 24.91, 26.04, 26.39, 29.21, 29.36, 29.76, 31.80, 39.05, 39.71, 42.37, 52.06, 54.93, 66.90, 219.69
anti体の分析データ:
Rf : 0.38(ヘキサン/酢酸エチル=2/1)
[α]D20 : -70.3(c 0.83,CHCl3
FTIR(neat)ν3483, 1722cm-1
1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ0.88(3H, t, J=7.1Hz), 1.30(10H, m), 1.43(1H, m), 1.55(1H, m), 1.75-2.10(8H, m), 2.14-2.26(3H, m), 2.35(1H, m), 2.47(1H, dd, J=15.2, 9.3Hz), 2.75-2.80(2H, m), 2.89(1H, ddd, J=12.7, 9.5, 3.2Hz), 2.95(1H, ddd, J=14.2, 9.5, 3.0Hz), 4.07(1H, br), 4.14(1H, dd, J=9.3, 5.6Hz)
13C-NMR(100MHz,CDCl3)δ14.10, 20.55, 22.65, 23.98, 25.09, 26.07, 26.35, 26.75, 29.27, 29.40, 29.83, 31.84, 39.11, 39.30, 42.29, 52.41, 53.99, 69.21, 221.40。
【0041】
実施例2-2 5R-5-[1S-1-ヒドロキシ-n-ウンデシル]-δ-バレロラクトン
ラネーニッケル(Raney 2800) 約1.5gを、上記実施例2-1で製造した2R-2-[1S-3-(1,3-ジチアシクロヘキサン-2-イル)-1-ヒドロキシ-n-ウンデシル]シクロペンタン-1-オン(40mg,0.11mmol)の無水メタノール(4mL)溶液に加え、室温で1時間攪拌した。この反応混合液を濾過してラネーニッケルを除去した後、粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(クロロホルム/酢酸エチル=9/1)で素早く精製し、無色油状の2R-2-[1S-1-ヒドロキシ-n-ウンデシル]シクロペンタン-1-オンを得た(18.5mg,収率:66%)。この化合物を、直ちにBaeyer-Villiger酸化反応に供した。
【0042】
2R-2-[1S-1-ヒドロキシ-n-ウンデシル]シクロペンタン-1-オン(4mg,0.016mmol)をジクロロメタン 1mLに溶解し、当該溶液に80%活性のm-クロロ過安息香酸(7mg,0.032mmol)と炭酸水素ナトリウム(2.8mg,0.032mmol)を0℃で加えた。その後、温度を室温まで戻し、4時間攪拌した。4時間後、再び0℃まで冷却して更に同m-クロロ過安息香酸(7mg,0.032mmol)と炭酸水素ナトリウム(2.8mg,0.032mmol)を加え、室温で5時間攪拌した。反応終了後、過剰のm-クロロ過安息香酸を飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液で分解した後、反応混合液をクロロホルムで抽出した。抽出液を合わせ、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥を行なった後に濾過した。濾液を濃縮し、ジエチルエーテルとヘキサンを用いて再結晶することによって、目的化合物を無色針結晶として得た(収量:3.5mg,収率:80%)。
融点 : 67~68℃
Rf : 0.25(ヘキサン/酢酸エチル=1/1)
[α]D21 : -14.3(c 0.28,CHCl3
FTIR(KBr)ν3421, 1714, 1267, 1054cm-1
1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ0.88(3H, t, J=7.1Hz), 1.26(15H, s), 1.40-1.65(4H, m), 1.71-2.02(3H, m), 2.04(1H, br), 2.45(1H, ddd, J=17.6, 9.0, 7.1Hz), 2.61(1H, ddd, J=17.6, 7.1, 5.6Hz), 3.83(1H, m), 4.25(1H, dt, J=10.7, 3.4Hz)
13C-NMR(100MHz,CDCl3)δ14.10, 18.33, 21.18, 22.67, 25.85, 29.31, 29.51, 29.53, 29.56(×2), 29.77, 31.69, 31.88, 72.39, 83.41, 171.66。
【0043】
実施例2-3 (5R,6S)-(-)-6-アセトキシ-5-ヘキサデカノリド
無水酢酸(3.2μL,0.034mmol)と触媒量の4-ジメチルアミノピリジン(0.5mg)を、上記実施例2-2で製造した5R-5-[1S-1-ヒドロキシ-n-ウンデシル]-δ-バレロラクトン(3.4mg,0.0126mmol)の乾燥ピリジン(0.2mL)溶液に加え、室温で2時間攪拌した。反応終了後、10N 炭酸カリウム水溶液を加え、クロロホルムで抽出した。抽出液を合わせ、硫酸ナトリウムで乾燥を行なった後に濾過した。濾液を濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(溶出液:ヘキサン/ジエチルエーテル=1/1)で精製し、無色油状の目的化合物を得た(収量:3.7mg,収率:94%)。
Rf : 0.23(ヘキサン/酢酸エチル=2/1)
[α]D22 : -40.0(c 0.2,CHCl3)(文献値:[α]D24: -36.8(c 1.0,CHCl3),Kotsuki,Hら,J.Org.Chem,55,p.4417(1990年))
FTIR(neat)ν1744, 1230cm-1
1H-NMR(400MHz,CDCl3)δ0.88(3H, t, J=6.9Hz), 1.25(16H, s), 1.55-1.70(4H, m), 1.77-2.01(2H, m), 2.08(3H, m), 2.46(1H, ddd, J=17.8, 9.2, 6.8Hz), 2.60(1H, dt, J=17.8, 6.4Hz), 4.35(1H, ddd, J=11.0, 4.9, 3.4Hz), 4.98(1H, dt, J=7.8, 5.1Hz)
13C-NMR(100MHz,CDCl3)δ14.10, 18.25, 21.03, 22.67, 23.52, 25.25, 29.30, 29.39, 29.44, 29.48, 29.53, 29.55, 29.61, 31.88, 74.30, 80.51, 170.49, 170.85。