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明細書 :有機ELハイブリッド材料及びその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4686715号 (P4686715)
公開番号 特開2006-321910 (P2006-321910A)
登録日 平成23年2月25日(2011.2.25)
発行日 平成23年5月25日(2011.5.25)
公開日 平成18年11月30日(2006.11.30)
発明の名称または考案の名称 有機ELハイブリッド材料及びその製造方法
国際特許分類 C09K  11/06        (2006.01)
H01L  51/50        (2006.01)
C08L  61/00        (2006.01)
C08L  83/02        (2006.01)
C08G  77/00        (2006.01)
FI C09K 11/06 680
H05B 33/14 B
C08L 61/00
C08L 83/02
C08G 77/00
請求項の数または発明の数 4
全頁数 26
出願番号 特願2005-146541 (P2005-146541)
出願日 平成17年5月19日(2005.5.19)
審査請求日 平成20年5月1日(2008.5.1)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304026696
【氏名又は名称】国立大学法人三重大学
発明者または考案者 【氏名】久保 雅敬
【氏名】伊藤 敬人
個別代理人の代理人 【識別番号】100095669、【弁理士】、【氏名又は名称】上野 登
審査官 【審査官】木村 伸也
参考文献・文献 特開2005-008772(JP,A)
特開2001-123156(JP,A)
特開平09-104732(JP,A)
特開2001-302793(JP,A)
特開2003-231656(JP,A)
調査した分野 C09K 11/06 - 11/07
C08L 61/00 - 61/34
C08L 83/02
H01L 51/50 - 51/56
C08G 77/00 - 77/62
CiNii
特許請求の範囲 【請求項1】
下記のΠ(パイ)共役ポリアリレンビニレン(a)~(c)のうちの少なくとも二種類と、アルコキシシランとがゾル-ゲル法により調製されて、前記Π(パイ)共役ポリアリレンビニレン(a)~(c)のうちの少なくとも二種類がシラン系ガラスに混合されてなることを特徴とする有機ELハイブリッド材料。
(a)下記の式で表されるジアルデヒド化合物、
【化1】
JP0004686715B2_000049t.gif
と、下記の式で表されるジホスホニウム塩化合物、
【化2】
JP0004686715B2_000050t.gif
とのウィティッヒ反応により生成され末端にトリフェニルホスホニウム基が導入されたΠ(パイ)共役ポリアリレンビニレン
(b)下記の式で表されるジアルデヒド化合物、
【化4】
JP0004686715B2_000051t.gif
と、下記の式で表されるジホスホニウム塩化合物、
【化5】
JP0004686715B2_000052t.gif
とのウィティッヒ反応により生成され末端にトリフェニルホスホニウム基が導入されたΠ(パイ)共役ポリアリレンビニレン
(c)下記の式で表されるジアルデヒド化合物、
【化7】
JP0004686715B2_000053t.gif
と、下記の式で表されるジホスホニウム塩化合物、
【化8】
JP0004686715B2_000054t.gif
とのウィティッヒ反応により生成され末端にトリフェニルホスホニウム基が導入されたΠ(パイ)共役ポリアリレンビニレン
【請求項2】
前記アルコキシシランがテトラアルコキシシランであることを特徴とする請求項1に記載の有機ELハイブリッド材料。
【請求項3】
下記のポリアリレンビニレン高分子(a)~(c)のうちの少なくとも二種類と、アルコキシシランとをテトラハイドロフランの溶媒に溶解して、ゾル-ゲル法により生成することを特徴とする有機ELハイブリッド材料の製造方法。
(a)下記の式で表されるジアルデヒド化合物、
【化10】
JP0004686715B2_000055t.gif
と、下記の式で表されるジホスホニウム塩化合物、
【化11】
JP0004686715B2_000056t.gif
とのウィティッヒ反応により生成され末端にトリフェニルホスホニウム基が導入されたΠ(パイ)共役ポリアリレンビニレン
(b)下記の式で表されるジアルデヒド化合物、
【化13】
JP0004686715B2_000057t.gif
と、下記の式で表されるジホスホニウム塩化合物、
【化14】
JP0004686715B2_000058t.gif
とのウィティッヒ反応により生成され末端にトリフェニルホスホニウム基が導入されたΠ(パイ)共役ポリアリレンビニレン
(c)下記の式で表されるジアルデヒド化合物、
【化16】
JP0004686715B2_000059t.gif
と、下記の式で表されるジホスホニウム塩化合物、
【化17】
JP0004686715B2_000060t.gif
とのウィティッヒ反応により生成され末端にトリフェニルホスホニウム基が導入されたΠ(パイ)共役ポリアリレンビニレン
【請求項4】
前記テトラハイドロフランの溶媒又は前記Π(パイ)共役ポリアリレンビニレン(a)~(c)のうちの少なくとも二種類とアルコキシシランとをテトラハイドロフランの溶媒に溶解した溶液に、ジメチルスルホキシドを添加することを特徴とする請求項3に記載の有機ELハイブリッド材料の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、有機ELハイブリッド材料およびその製造方法に関するものであり、さらに詳しくは、EL特性を有するΠ(パイ)共役高分子とシラン系ガラスとがゾル-ゲル法により混合されて生成される有機ELハイブリッド材料およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機EL材料は、無機EL材料に比較して非常に軽量である。また、化学修飾によって比較的簡単に波長制御ができる。このため小型軽量でフルカラー表示が可能な表示基材、たとえば、フラットディスプレイパネルなどへの応用が期待されている。
【0003】
有機EL材料としては、たとえばポリアリレンビニレンなどのΠ共役高分子が用いられている。Π共役高分子はその表面に多数のΠ電子が存在する。そしてこのΠ電子がEL(エレクトロールミネッセンス:電界発光)特性の由来ともなっている。その一方で、Π共役高分子は、Π電子が関わる反応、たとえば酸化反応などが生じやすく、時間の経過に伴いEL特性が消滅していくという不安定な性質をも有する。
【0004】
従って、Π共役高分子を有機EL材料として実用化するためには、Π共役高分子が有する特性を長期間にわたって維持できるようにする必要がある。そこで本発明者らは、Π共役高分子をその特性を損なうことなくシラン系ガラスに均一に混合して固化させた有機ELハイブリッド材料を開発した(特許文献1参照)。簡単に説明すると、まずジホスホニウム塩化合物とジアルデヒド化合物とをウィティッヒ反応させることにより、共役長の末端にトリフェニルホスホニウム基が導入されたポリアリレンビニレンが生成される。そしてこのように生成されたポリアリレンビニレンを、ゾル-ゲル法によりテトラアルコキシシランと混合して固化させることにより、Π共役高分子(ポリアリレンビニレン)とガラス(テトラアルコキシシラン)とのハイブリッド材料が得られる、というものである。
【0005】
このような構成によれば、ガラス中に混合されたポリアリレンビニレンは大気と遮断されるため、酸化反応や加水分解などにより劣化することがない。このため、ポリアリレンビニレンは長期間にわたってΠ共役高分子の特性を維持することができるものと考えられる。また、立体的な網目構造のシラン分岐鎖にポリアリレンビニレンが分散して結合することから、ガラス中にポリアリレンビニレンが均一に分散した有機ELハイブリッド材料が得られる。
【0006】
ところで最近、青色発光ダイオードの開発を契機に、青色発光ダイオードを用いて白色発光光源を構成する試みが種々提案されており、実用化もされている。発光ダイオードは、一般的に高輝度でエネルギー消費量が少なく、また半導体であることから長寿命であるという特徴を有している。このため今日では、照明装置、信号機、その他の表示装置など、さまざまな分野で用いられている。
【0007】
青色発光ダイオードを用いた白色発光光源の具体例として、次のようなものがある。発光素子として青色系の発光が可能な発光ダイオードを用い、この発光素子を、この発光素子の発光を吸収して黄色系の光を発光する蛍光体を含有した樹脂によってモールドする。これにより白色発光光源が得られるというものである(特許文献2および特許文献2において従来技術として開示される各先行技術文献参照)。
【0008】

【特許文献1】特開2005-8772号公報
【特許文献2】再公表特許 WO98/05078
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このように、いわゆる白色発光ダイオードは、青色発光ダイオードと黄色蛍光体とを組み合わせて得られるものであり、疑似白色発光するものである。また、発光ダイオードは一般に点光源であるため、広い範囲を照明するという用途には向いていない。
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、前記本発明者らの発明をさらに発展させ、白色発光可能な有機ELハイブリッド材料またはその製造方法を提供すること、とくに広い範囲を照明できる白色光源として用いることができる白色発光可能な有機ELハイブリッド材料またはその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このような課題を解決するため、本発明の有機ELハイブリッド材料は、次に示す三種類のΠ(パイ)共役ポリアリレンビニレン(a)~(c)のうちの少なくとも二種類と、アルコキシシランとがゾル-ゲル法により調製されて、これらΠ(パイ)共役ポリアリレンビニレン(a)~(c)のうちの少なくとも二種類がシラン系ガラスに混合されてなることを要旨とするものである。

【0012】
ポリアリレンビニレン(a)は、末端にトリフェニルホスホニウム基を有し、下記の構造式(1)で示される構造を有し、下記の構造式(2)で示されるジアルデヒド化合物(a)と、下記の構造式(3)で示されるジホスホニウム塩化合物(a)とのウィティッヒ反応により得られる。

【0013】
【化1】
JP0004686715B2_000002t.gif

【0014】
【化2】
JP0004686715B2_000003t.gif

【0015】
【化3】
JP0004686715B2_000004t.gif

【0016】
ポリアリレンビニレン(b)は、末端にトリフェニルホスホニウム基を有し、下記の構造式(4)で示される構造を有し、下記の構造式(5)で示されるジアルデヒド化合物(b)と、下記の構造式(6)で示されるジホスホニウム塩化合物(a)とのウィティッヒ反応により得られる。

【0017】
【化4】
JP0004686715B2_000005t.gif

【0018】
【化5】
JP0004686715B2_000006t.gif

【0019】
【化6】
JP0004686715B2_000007t.gif

【0020】
ポリアリレンビニレン(c)は、末端にトリフェニルホスホニウム基を有し、下記の構造式(7)で示される構造を有し、下記の構造式(8)で示されるジアルデヒド化合物(c)と、下記の構造式(9)で示されるジホスホニウム塩化合物(b)とのウィティッヒ反応により得られる。

【0021】
【化7】
JP0004686715B2_000008t.gif

【0022】
【化8】
JP0004686715B2_000009t.gif

【0023】
【化9】
JP0004686715B2_000010t.gif

【0024】
ここで、前記アルコキシシランはテトラアルコキシシランであることが好ましい。
【0025】
本発明の有機ELハイブリッド材料の製造方法は、前記構造式(1),(4),(7)で示される三種類のポリアリレンビニレン(a)~(c)のうちの少なくとも二種類と、アルコキシシランとを溶媒であるテトラハイドロフランに溶解して、ゾル-ゲル法により生成することを要旨とするものである。

【0026】
ここで、前記溶媒として用いるテトラハイドロフラン又は前記Π(パイ)共役ポリアリレンビニレン(a)~(c)の少なくとも二種類とアルコキシシランとをテトラハイドロフランに溶解した溶液に、ジメチルスルホキシドを添加することが好ましい。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、前記ジアルデヒド化合物(a)~(c)と前記ジホスホニウム塩化合物(a),(b)とのウィティッヒ反応により、一重結合と二重結合とが交互に繰り返されるというΠ共役長の構造を損なわずに、Π共役長の末端に極性の強いホスホニウム基が導入されたΠ共役高分子であるポリアリレンビニレン(a)~(c)が得られる。そしてこれらポリアリレンビニレン(a)~(c)とアルコキシシランとを低温度で酸加水分解することにより、各ポリアリレンビニレンのホスホニウム基とアルコキシシランのシラノール基とが静電相互作用により緩やかに結合する。このため、ガラスを固化してもポリアリレンビニレンどうしが集合して析出することがなく、ガラス中にポリアリレンビニレンが均一に混合したハイブリッド材料が生成される。
【0028】
そして、EL特性によって、構造式(1)で示されるΠ共役ポリアリレンビニレン(a)が赤色発光し、構造式(4)で示されるΠ共役ポリアリレンビニレン(b)が緑色発光し、構造式(7)で示されるΠ共役ポリアリレンビニレン(c)が青色発光する。このため、これらのΠ共役ポリアリレンビニレン(a)~(c)が混合されたハイブリッド材料は、各Π共役ポリアリレンビニレン(a)~(c)の発光色が混合されて、全体として白色発光することができる。また、これら構造式(1),(4),(7)で示されるポリアリレンビニレン(a)~(c)の混合割合を調整することにより、白色に限らず種々の色の光源を構成することもできる。
【0029】
ここで、各Π共役ポリアリレンビニレンはガラス中に固定されて分子間の接触がほとんどなくなっているから、各分子が固有の発光を行うことができる。このため、ハイブリッド材料全体の発光スペクトルの調整が容易となる。また、ガラス中に固定されるΠ共役ポリアリレンビニレンは大気と遮断されるため、酸化反応や加水分解によって劣化することがなく、長期間にわたりΠ共役高分子としての特性を維持できるから、長寿命の光源を提供することができる。
【0030】
アルコキシシランとしてテトラアルコキシシランを用いれば、立体網目構造のシラン分岐鎖にΠ共役ポリアリレンビニレンが分散性よく結合する。このため、ガラス中にΠ共役ポリアリレンビニレンが均一に混合したハイブリッド材料が生成でき、均一に発光する光源を構成することができる。
【0031】
ゾル-ゲル法において、調製されたΠ共役ポリアリレンビニレンとアルコキシシランとを溶媒であるテトラハイドロフランに溶解するに際し、ジメチルスルホキシドを添加すると、溶媒の沸点が上昇する。このため、溶媒を加熱して除去する際に、ハイブリッド材料の固化を均一な速度で進行させることができ、得られるハイブリッド材料にクラックが生じることを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下に、本発明の実施形態について詳細に説明する。本発明者らは、赤色光を発する有機EL高分子材料、緑色光を発する有機EL高分子材料、青色光を発する有機EL高分子材料を調製し、これらの高分子材料を混合したものとガラスとの複合体を形成することにより、有機EL高分子材料により白色発光光源を構成することが可能であると考えた。そして鋭意検討した結果、本発明を完成させたものである。
【0033】
次に示す各構造式(10)~(12)は、本発明の実施形態に係る有機EL高分子材料である三種類のポリアリレンビニレン(a)~(c)の構造式である。それぞれ、構造式(10)はポリアリレンビニレン(a)、構造式(11)はポリアリレンビニレン(b)、構造式(12)はポリアリレンビニレン(c)を示す。
【0034】
【化10】
JP0004686715B2_000011t.gif

【0035】
【化11】
JP0004686715B2_000012t.gif

【0036】
【化12】
JP0004686715B2_000013t.gif

【0037】
ポリアリレンビニレン(a)は、下記の構造式(13)に示すジアルデヒド化合物(a)と下記の構造式(16)に示すジホスホニウム塩化合物(a)とのウィティッヒ反応により合成されて得られる。ポリアリレンビニレン(b)は、下記の構造式(14)に示すジアルデヒド化合物(b)と下記の構造式(16)に示すジホスホニウム塩化合物(a)とのウィティッヒ反応により合成されて得られる。ポリアリレンビニレン(c)は、下記の構造式(15)に示すジアルデヒド化合物(c)と下記の構造式(17)に示すジホスホニウム塩化合物(b)とのウィティッヒ反応により合成されて得られる。
【0038】
【化13】
JP0004686715B2_000014t.gif

【0039】
【化14】
JP0004686715B2_000015t.gif

【0040】
【化15】
JP0004686715B2_000016t.gif

【0041】
【化16】
JP0004686715B2_000017t.gif

【0042】
【化17】
JP0004686715B2_000018t.gif

【0043】
以下に、ジアルデヒド化合物(a),(b)と、ジホスホニウム塩化合物(a),(b)の調製方法の一例について説明する。
【0044】
ジアルデヒド化合物(a)の調製方法は次の通りである。次に示す反応式(1)~(3)は、アンスラキノンを出発物質としてジアルデヒド化合物(a)を調製する反応式を示す。まずアンスラキノンへのメチレン挿入反応を行い(反応式(1))、その後異性化させる(反応式(2))。そして異性化により得られたアンスラセン化合物のヒドロキシメチル基を酸化させることによりジアルデヒド化合物(a)が調製される(反応式(3))。
【0045】
【化18】
JP0004686715B2_000019t.gif

【0046】
【化19】
JP0004686715B2_000020t.gif

【0047】
【化20】
JP0004686715B2_000021t.gif

【0048】
ジアルデヒド化合物(b)の調製方法は次の通りである。反応式(4)~(6)は、メトキシフェノール(4-メトキシフェノール)を出発物質としてジアルデヒド化合物(b)を調製するための反応式を示す。まず、メトキシフェノールにアルキル基を導入し(反応式(4))、アルキル基を導入したメトキシフェノールにクロロメチル化を行う(反応式(5))。そしてDMSO酸化によってジアルデヒド化合物に誘導される(反応式(6))。
【0049】
【化21】
JP0004686715B2_000022t.gif

【0050】
【化22】
JP0004686715B2_000023t.gif

【0051】
【化23】
JP0004686715B2_000024t.gif

【0052】
ジホスホニウム塩化合物(a)の調製方法は次の通りである。反応式(7)~(9)は、フルオレンを出発物質としてジホスホニウム塩化合物(a)を調製する反応式を示す。まず、フルオレンにアルキル基を導入し(反応式(7))、その後ブロモメチル化を行う(反応式(8))。そしてトリフェニルホスフィンと反応させることで、ジホスホニウム塩化合物(a)が調製される(反応式(9))。
【0053】
【化24】
JP0004686715B2_000025t.gif

【0054】
【化25】
JP0004686715B2_000026t.gif

【0055】
【化26】
JP0004686715B2_000027t.gif

【0056】
ジホスホニウム塩化合物(b)の調製方法は次の通りである。反応式(10)~(12)は、ジブロモキシレン(2,5-ジブロモ-P-キシレン)を出発物質としてジホスホニウム塩化合物(b)を調製するための反応式を示す。まず、ジブロモキシレンに、グリニャールカップリングによりトリメチルシリル基を導入し(反応式(10))、次いでブロモ化剤でベンジル位をブロモ化する(反応式(11))。その後、トリフェニルホスフィンと反応させることによりホスホニウム塩が調製される(反応式(12))。
【0057】
【化27】
JP0004686715B2_000028t.gif

【0058】
【化28】
JP0004686715B2_000029t.gif

【0059】
【化29】
JP0004686715B2_000030t.gif

【0060】
このようにして得られたジアルデヒド化合物(a)~(c)と、ジホスホニウム塩化合物(a),(b)とをウィティッヒ反応させることにより、ポリアリレンビニレン(a)~(c)が合成される。次の各反応式(13)~(15)は、ポリアリレンビニレン(a)~(c)を合成するためのウィティッヒ反応を示した反応式である。それぞれ、反応式(13)はポリアリレンビニレン(a)を合成する反応式、反応式(14)はポリアリレンビニレン(b)を合成する反応式、反応式(15)はポリアリレンビニレン(c)を合成する反応式である。
【0061】
ウィティッヒ反応は二重結合を導入してオレフィンを得るための反応であり、反応式(13)~(15)に示すようにジホスホニウム塩化合物のトリフェニルホスホニウム部位からトリフェニルホスホニウム基(Hpph3)が取れ、ジアルデヒド化合物から酸素(O)が取れてジホスホニウム塩化合物とジアルデヒド化合物とが共役二重結合(-C=C-)すると共に、Π共役長のポリアリレンビニレン高分子化合物の末端にトリフェニルホスホニウム基が導入される。
【0062】
【化30】
JP0004686715B2_000031t.gif

【0063】
【化31】
JP0004686715B2_000032t.gif

【0064】
【化32】
JP0004686715B2_000033t.gif

【0065】
これにより、赤色発光するポリアリレンビニレン(a)、緑色発光するポリアリレンビニレン(b)および青色発光するポリアリレンビニレン(c)が得られる。
【0066】
このようにして生成される各ポリアリレンビニレン(a)~(c)と、テトラアルコキシシランとを溶媒中で混合する。次の構造式(18)~(20)は、各ポリアリレンビニレン(a)~(c)とテトラアルコキシシランとの静電相互作用による結合状態を示した構造式である。これらの構造式(18)~(20)に示すように、それぞれのポリアリレンビニレン(a)~(c)のトリフェニルホスホニウム基とテトラアルコキシシランのシラノール基とが静電相互作用により結合する。このため、溶媒を除去して固化させたとしても、ポリアリレンビニレンどうしが集合して析出することがなく、ポリアリレンビニレン(a)~(c)がガラス中に均一に分散混合した有機化合物(ポリアリレンビニレン)と無機物(ガラス)のハイブリッド材料が得られる。
【0067】
【化33】
JP0004686715B2_000034t.gif

【0068】
【化34】
JP0004686715B2_000035t.gif

【0069】
【化35】
JP0004686715B2_000036t.gif

【0070】
このようにして得られたハイブリッド材料は、赤色、緑色および青色発光可能なポリアリレンビニレンがガラス中に均一に分散して存在する。すなわち、ごく微細な赤色発光源、緑色発光源および青色発光源がガラス中に均一に分散して存在しているのと同じことになる。このため、ガラス中に閉じこめられたポリアリレンビニレンがEL特性によって発光すると、赤色光、緑色光および青色光が混合し、ハイブリッド材料が全体として白色発光する。
【0071】
また、ハイブリッド材料は全体的に均一に発光可能であり、ゾル-ゲル法において溶媒を除去して固化する際にハイブリッド材料を自由に成形できる。このため、たとえばハイブリッド材料を平板状に成形すれば、全体が均一に白色発光する平面光源が得られる。また、平板に限らず任意の形状で全体が均一に発光する白色光源を構成することができる。
【0072】
そして、ポリアリレンビニレンはガラス中に固定されて大気と遮断されるため、酸化反応や加水分解によって劣化することがない。このため、長期間にわたりΠ共役高分子としての特性を維持できるから、長寿命の白色光源を提供することができる。
【実施例】
【0073】
次に、本発明の実施例について説明する。次の構造式(21)~(23)に示す3種類のポリアリレンビニレン(a)~(c)を合成し、合成したこれらのポリアリレンビニレン(a)~(c)をとテトラアルコキシシランとからゾル-ゲル法を用いてハイブリッド材料を生成した。そして、合成したポリアリレンビニレンおよび生成されたハイブリッド材料の性質を調べた。
【0074】
【化36】
JP0004686715B2_000037t.gif

【0075】
【化37】
JP0004686715B2_000038t.gif

【0076】
【化38】
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【0077】
これら3種類のポリアリレンビニレン(a)~(c)を合成するために、次の構造式(24)~(26)に示す3種類のジアルデヒド化合物(a)~(c)と、構造式(27),(28)に示す2種類のジホスホニウム塩化合物(a),(b)を組み合わせて用いた。
【0078】
【化39】
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【0079】
【化40】
JP0004686715B2_000041t.gif

【0080】
【化41】
JP0004686715B2_000042t.gif

【0081】
【化42】
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【0082】
【化43】
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【0083】
(1)ポリアリレンビニレン(a)の合成
ポリアリレンビニレン(a)は、ジアルデヒド化合物(a)(構造式(24))と、ジホスホニウム塩化合物(a)(構造式(27))のウィティッヒ反応により合成した。
【0084】
(ジアルデヒド化合物(a)の合成):滴下ロートを取り付けた200mlの三口フラスコに、次の構造式(29)に示すアンスラセン化合物2.5g、ジメチルスルホキシド35ml、トリエチルアミン10.7gを加え、室温で10分間撹拌した。
【0085】
【化44】
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【0086】
その中に、三酸化硫黄ピリジン錯体10.1gを55mlのジメチルスルホキシドに溶解させた溶液を20分間かけて滴下した。滴下後、さらに50分間撹拌してから、反応混合物を水に注いだ。析出した固体をジクロロメタンから再結晶することにより、橙色針状結晶であるジアルデヒド化合物を1.6g得た。このときの収率は62%であった。
【0087】
(ジホスホニウム塩化合物(a)の合成):500mlのナス型フラスコに、次の構造式(30)に示すジブロミド化合物12.0g、トリフェニルホスフィン16.5g、ジメチルホルムアミド200mlを加え、150℃に加熱しながら12時間撹拌した。
【0088】
【化45】
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【0089】
そして反応混合物をエーテルに注いで沈殿させ、析出した固体をエタノールとヘキサンの1:1混合溶媒から再結晶することにより、白色板状結晶であるジホスホニウム塩化合物を12.8g得た。このときの収率は64%であった。
【0090】
(ポリアリレンビニレン(a)の合成):次いで、ジホスホニウム塩化合物とジアルデヒド化合物とからウィティッヒ反応によりポリアリレンビニレン(a)を合成した。50mlのナス型フラスコにジアルデヒド化合物(a)(構造式(24))を0.074g、ジホスホニウム塩化合物(a)(構造式(27))を0.300g、テトラヒドロフランを2ml、ジメチルスルホキシドを2ml加え、1.6規定のブチルリチウムヘキサン溶液を0.4mlシリンジで添加してから、窒素雰囲気下の室温で12時間撹拌した。反応混合物をエタノールに注ぎ、ポリアリレンビニレン(a)(構造式(21))が0.16g得られた。このときの収率は82%であった。このポリアリレンビニレン1は橙色の粉末固体である。
【0091】
(2)ポリアリレンビニレン(b)の合成
ポリアリレンビニレン(b)は、ジアルデヒド化合物(b)(構造式(25))とジホスホニウム塩化合物(a)(構造式(27))とのウィティッヒ反応によって合成した。
【0092】
(ジアルデヒド化合物(b)の調製):50mlのナス型フラスコに、次の構造式(31)に示すジクロリド化合物2.5g、炭酸水素ナトリウム3.2g、ジメチルスルホキシド60mlを加え、窒素雰囲気下で125℃に加熱しながら3時間撹拌した。
【0093】
【化46】
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【0094】
その後、反応混合物をジクロロメタン200mlで希釈してから蒸留水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で溶媒を除去した。溶剤としてジクロロメタンを利用したシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、更にアセトニトリルから再結晶によって精製し、黄色針状の結晶であるジアルデヒド化合物を0.74g得た。このときの収率は33%であった。ジホスホニウム塩化合物(a)の調製は、前記の通りであるため省略する。
【0095】
(ポリアリレンビニレン(b)の合成):次いで、ジアルデヒド化合物(b)とジホスホニウム塩化合物(a)とからウィティッヒ反応によりポリアリレンビニレン(b)を合成した。50mlのナス型フラスコにジアルデヒド化合物(b)(構造式(25))を0.093g、ジホスホニウム塩化合物(a)(構造式(27))を0.300g、テトラヒドロフランを2ml、ジメチルスルホキシドを2ml加え、1.6規定のブチルリチウムヘキサン溶液を0.4mlシリンジで添加してから、窒素雰囲気下の室温で12時間撹拌した。反応混合物をエタノールに注ぎ、ポリアリレンビニレン(b)(構造式(22))が0.15g得られた。このときの収率は71%であった。このポリアリレンビニレン(b)は黄色の粉末固体である。
【0096】
(3)ポリアリレンビニレン(c)の合成
ポリアリレンビニレン(c)は、ジアルデヒド化合物(c)(構造式(26))とジホスホニウム塩化合物(b)(構造式(28))とのウィティッヒ反応によって合成した。
【0097】
(ジホスホニウム塩化合物(b)の合成):300mlのナス型フラスコに、次の構造式(32)に示すジブロミド化合物4.1g、トリフェニルホスフィン7.9g、エタノール60ml、クロロホルム60mlを加え、室温で3時間撹拌した。そして反応混合物をエーテルに注いで沈殿させ、析出した固体をエタノールとヘキサンの1:1混合溶媒から再結晶することにより、白色針状結晶であるジホスホニウム塩化合物を4.7g得た。このときの収率は50%であった。
【0098】
【化47】
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【0099】
(ポリアリレンビニレン(c)の合成):次いで、ジアルデヒド化合物(c)とジホスホニウム塩化合物(b)とからウィティッヒ反応によりポリアリレンビニレン(c)を合成した。200mlのナス型フラスコに、ジアルデヒド化合物(c)(構造式(26))を0.70g、ジホスホニウム塩化合物(b)(構造式(28))を4.70g、エタノール50ml、クロロホルム60ml、カリウムt-ブトキシド2.6gを加え、室温で48時間撹拌した。反応混合物をエタノールに注ぎ、ポリアリレンビニレン(c)(構造式(23))が0.85g得られた。このときの収率は49%であった。このポリアリレンビニレン3はレモン色の粉末固体である。
【0100】
(4)ハイブリッド材料の生成
そして前記ポリアリレンビニレン(a)~(c)を、ゾル-ゲル法においてシラン系の無機ガラスに混合し、ハイブリッド材料を生成した。
【0101】
内径15mmのポリプロピレン製試験管に、ポリアリレンビニレン(a)(構造式(21))を5mg、ポリアリレンビニレン(b)(構造式(22))を2mg、ポリアリレンビニレン(c)(構造式(23))を1mg、テトラヒドロフランを6ml、テトラエトキシシランを4ml、ジメチルスルホキシドを1ml、1規定塩酸を1ml加え、室温でよく撹拌した。その後、試験管を恒温器に設置し、室温から100度まで3日間かけてゆっくり昇温し、2日間に渡りその温度を維持した。このようにして得られた円筒状ゲルを取り出し、減圧下80度で12時間放置した。その結果、ポリマーの析出や亀裂のない薄いオレンジ色の透明固体としてシリカハイブリッドが得られた。
【0102】
図1は、合成されたポリアリレンビニレン(a)~(c)をそれぞれ1mgずつとり、4mlのテトラヒドロフランに溶解させ、その溶液に365nmの紫外光を照射することによって得られる発光スペクトルと、得られたシリカハイブリッドに365nmの紫外光を照射することによって得られる発光スペクトルとを重ねて示したものである。図1中「PAV(a)」はポリアリレンビニレン(a)を、「PAV(b)」はポリアリレンビニレン(b)を、「PAV(c)」はポリアリレンビニレン(c)を示す。
【0103】
ポリアリレンビニレン(a)~(c)の最大発光波長は、それぞれ、554nm、510nm、及び475nmである。このことは、ポリアリレンビニレン1、2、及び3の発光色が、それぞれ、赤、緑、及び青色であることを示している。また、シリカハイブリッド材料は、450nmから570nmにかけて幅の広いブロードな発光が観測された。このような幅広いスペクトルは、三種類のポリアリレンビニレン(a)~(c)の発光スペクトルの線形和として観測された。すなわち、ポリアリレンビニレン1~3は溶液状態の主鎖構造を保持したまま、ガラス中に固定化された状態で発光しており、しかも、独立に固有の発光を行っていることを意味している。このことは、赤、緑、青の分子サイズの微小な発光素子が、無数に集積していることと同じである。
【0104】
次いで、比較例について説明する。図2は、得られたシリカハイブリッド材料、三種類のポリアリレンビニレン(a)~(c)の混合溶液(比較例1)、三種類のポリアリレンビニレン(a)~(c)をキャスティングして形成されたフィルム(比較例2)に波長が365nmの紫外光を照射することによって得られる発光スペクトルを示したものである。
【0105】
(比較例1)
本比較例は、ポリアリレンビニレン(a)(構造式(21))を5mg、ポリアリレンビニレン(b)(構造式(22))を2mg、ポリアリレンビニレン(c)(構造式(23))を1mgテトラヒドロフラン10mlに溶解させて、混合溶液を作製した。図2に示すように、最大発光波長が510nmの比較的幅の狭いスペクトルが観測され、緑色に近い発光を示すことがわかった。このことは、溶液中で分子同士の接触が可能なために、電子移動もしくはエネルギー移動が起きてしまい、赤、緑、青の三色発光ポリマーを単に混合しただけでは白色発光が得られにくいことを示している。
【0106】
(比較例2)
本比較例は、ポリアリレンビニレン(a)(構造式(21))を5mg、ポリアリレンビニレン(b)(構造式(22))を2mg、ポリアリレンビニレン(c)(構造式(33))を1mgテトラヒドロフラン10mlに溶解させ、その溶液を石英板上にキャストして混合フイルムを作製した。図2に示すように、最大発光波長が510nmの比較的幅の狭いスペクトルが観測され、緑色に近い発光を示すことがわかった。このことは、固体中で分子同士の接触が起こっているので、電子移動もしくはエネルギー移動が容易に起きていることを示している。
【0107】
次いで、本実施の形態に係るハイブリッド材料を用いた白色発光光源について記す。図3は本発明に係るポリアリレンビニレンとガラスとのハイブリッド材料からなる白色発光光源1の構造を示した断面模式図である。この白色発光光源は、平板状の基材3の一方の面上に前記のようにして得られたハイブリッド材料層2が形成され、基材3の他方の面には、紫外発光するEL層5と、このEL層5の各面に形成される上部電極層4と下部電極層6とが形成される。EL層5は、上部電極層4及び下部電極層6により電圧を印加されることにより紫外発光し、ハイブリッド材料層2は、EL層5から紫外線の照射を受けて発光する。このように、紫外線を発光する素子にハイブリッド材料の層を組み合わせることにより、白色発光を実現するものである。紫外発光するEL層5については、一般に用いられている材料を適応することができる。そして、さまざまな発光特性を有するポリアリレンビニレンの量を変化させることにより、発光スペクトルの最大発光波長や発光ピークの分布をコントロールすることが可能である。
【0108】
図4は、本実施形態に係るハイブリッド材料を用いた白色発光光源の他の構造の例を示した断面模式図である。この白色発光光源10は、下部電極層17上に、電子を輸送して注入するための電子輸送層16と、本発明に係るハイブリッド材料から形成される発光層15と、正孔を輸送して注入するための正孔輸送層14と、上部電極13と、基材12とが積み重ねられるようにして形成される積層構造を有する。そして、電子輸送層16から輸送された電子と正孔輸送層14から輸送された正孔とが、発光層15において再結合し、これにより発光を取り出すことができるように構成される。なお、この白色発光光源10を構成するこれら各層12~17のうち、発光層15を除いては、従来より一般に用いられている材料を適用することができる。
【0109】
以上、本発明の実施の形態及び各種実施例について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【0110】
たとえば、3種類のポリアリレンビニレンの混合割合を調整することにより、白色に限らず種々の色の光源を構成することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】3種類のポリアリレンビニレンとシリカのハイブリッド材料と、3種類のポリアリレンビニレンのテトラハイドロフラン溶液の溶液スペクトルを示したグラフである。図中、「R-PAV」は赤色発光可能なポリアリレンビニレンを、「G-PAV」は緑色発光可能なポリアリレンビニレンを、「B-PAV」は青色発光可能なポリアリレンビニレンを意味する。
【図2】3種類のポリアリレンビニレンとシリカのハイブリッド材料、3種類のポリアリレンビニレンを溶解したテトラハイドロフラン溶液、およびこの溶液をキャスティングして得られたフィルムの発光スペクトルを示したグラフである。
【図3】本発明に係るポリアリレンビニレンとガラスとのハイブリッド材料からなる白色発光光源の構造を示した断面模式図である。
【図4】本発明に係るポリアリレンビニレンとガラスとのハイブリッド材料からなる白色発光光源の他の構造を示した断面模式図である。
【符号の説明】
【0112】
1 白色発光光源
2 ハイブリッド材料
3 基材
4 上部電極
5 紫外発光EL層
6 下部電極
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3