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明細書 :細胞刺激装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4714863号 (P4714863)
公開番号 特開2006-340669 (P2006-340669A)
登録日 平成23年4月8日(2011.4.8)
発行日 平成23年6月29日(2011.6.29)
公開日 平成18年12月21日(2006.12.21)
発明の名称または考案の名称 細胞刺激装置
国際特許分類 C12M   1/42        (2006.01)
FI C12M 1/42
請求項の数または発明の数 3
全頁数 10
出願番号 特願2005-170063 (P2005-170063)
出願日 平成17年6月9日(2005.6.9)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 第15回米国電気電子学会国際パルスパワー分科会講演要約(平成17年3月4日)に電気通信回線を通じて発表
審査請求日 平成20年5月28日(2008.5.28)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504159235
【氏名又は名称】国立大学法人 熊本大学
発明者または考案者 【氏名】勝木 淳
【氏名】秋山 秀典
個別代理人の代理人 【識別番号】100098785、【弁理士】、【氏名又は名称】藤島 洋一郎
【識別番号】100109656、【弁理士】、【氏名又は名称】三反崎 泰司
審査官 【審査官】福澤 洋光
参考文献・文献 特開2004-344003(JP,A)
FEBS Letters,2004年,Vol.572,p.103-108
Biochemical and Biophysical Research Communications,2004年,Vol.317,p.421-427
IEEE Transactions on Plasma Science,2002年,Vol.30, No.1,p.293-300
調査した分野 C12M1/00—3/10
C12Q1/00-1/68
CA/MEDLINE/BIOSIS/WPIDS(STN)
JSTPlus(JDreamII)
PubMed
特許請求の範囲 【請求項1】
細胞内構成要素のうち任意に選択した要素に含まれるDNAの緩和時間の逆数と等しい値の周波数を基本周波数とするバースト高周波電界を発生する電界発生手段
を備えたことを特徴とする細胞刺激装置。
【請求項2】
前記基本周波数は、1MHz以上1GHz以下である
ことを特徴とする請求項1に記載の細胞刺激装置。
【請求項3】
前記バースト高周波電界の電界強度と印加時間との積が所定の範囲内となるように、前記バースト高周波電界の電界強度および印加時間がそれぞれ設定される
ことを特徴とする請求項1に記載の細胞刺激装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、電界の作用により細胞内構成要素を刺激するための細胞刺激装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、矩形状のパルス電界により細胞膜に小孔を開け、その小孔から細胞内に遺伝子を導入するエレクトロポレーションが知られている。このエレクトロポレーションは、導電性の細胞質が誘電性の細胞膜で覆われた構造の細胞と、一対の平行平板電極とを導電性の懸濁液中に入れた状態で、その一対の電極から細胞および懸濁液にパルス電界を印加して細胞の細胞膜に電気的な刺激を与えるものである。細胞膜に与えられる電気的な刺激は、電界の印加によって懸濁液中を流れる電流が細胞膜の表面に電荷を帯電させ、細胞膜に電気的および機械的なストレスを生じさせることにより起こるものであり、そのストレスによって細胞膜を一時的に破壊して細胞膜に小孔を形成する。細胞膜を刺激するために印加されるパルス電界は、一般に、パルス幅が数十μs以上と長く、振幅が数十Vrms程度と低いものである。それは、細胞膜を電気的に刺激するのに要する時間(緩和時間)が数十μs程度と長いからであり、このように長時間に渡って電界を印加しても細胞が死なないようにするには振幅を低く抑える必要があるからである。
【0003】
このように、エレクトロポレーションでは、パルス幅が数十μs程度と長く、振幅が数Vrms程度と低いパルス電界が長らく用いられてきた。しかし、近年、緩和時間以下のパルス幅のパルス電界を細胞に加えると、細胞膜を通して懸濁液および細胞質に電界の大きさに応じた電流が流れることがわかってきたことから、その応用研究が活発に行われている。非特許文献1では、それを利用して、細胞膜を破壊しないで細胞内の構成要素、例えば核膜に電界を作用させる技術が開示されている。
【0004】

【非特許文献1】K.H.Schoenbach,”Intracellular effect of ultrashort electrical pulses”,Bioelectromagnetics,vol.22,pp.440-446,2001
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、核、核小体、微小管、リボソーム、小胞体、ゴルジ体、リソソーム、中心体、分泌顆粒およびミトコンドリアなどの細胞内構成要素は、構造や構成分子の互いに異なる誘電性物質からなるDNA(デオキシリボ核酸)およびRNA(リボ核酸)を含んでいる。これらDNAおよびRNAは、その構造や構成分子に応じた固有の緩和時間を有しており、この固有の緩和時間の大きさに応じた固有の共鳴周波数を有する。一方、パルス電界はパルス幅の逆数の整数倍を節とする多峰状の周波数スペクトラムを有しており、入力電力の一部がパルス幅の逆数と等しい周波数以下の周波数領域(裾野領域)に集中しており、残りは高周波側に広範囲に分散している。
【0006】
そのため、細胞膜の緩和時間以下のパルス幅のパルス電界を細胞に加えると、入力電力の一部は共鳴周波数がパルス幅の逆数より小さい誘電性物質を含む細胞内構成要素を刺激し、入力電力の大半は細胞内構成要素を刺激するために使われることなく消費される。したがって、上記した非特許文献1の記載のように、パルス電界の印加時間を制御したとしても、細胞内構成要素のうち任意に選択した要素を選択的に刺激することは極めて困難である。ここでの「刺激する」とは、電界強度と印加時間との積の大きさ(刺激の大きさ)に応じて生ずる物理的および化学的な作用を指しており、例えば、細胞内構成要素に含まれる誘電性物質を物理的に断片化することを指している。
【0007】
また、パルス電界では、パルス幅を狭めると、節の位置が高周波側に移動して周波数スペクトラムが変わる。そのため、印加時間と、電力の入力される周波数帯域とを独立に制御することができず、その結果、用途に応じた刺激を細胞内構成要素に与えることが極めて困難である。
【0008】
したがって、パルス電界を細胞に印加することにより、任意の細胞内構成要素を選択的に刺激すると共に、用途に応じた刺激を細胞内構成要素に与えることは事実上不可能であるという問題がある。
【0009】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、目的および用途に応じた刺激を任意の細胞内構成要素に選択的に印加することの可能な細胞刺激装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の細胞刺激装置は、細胞内構成要素のうち任意に選択した要素に含まれる誘電性物質の緩和時間の逆数と等しい値の周波数を基本周波数とするバースト高周波電界を発生する電界発生手段を備える。「バースト高周波電界」とは、所定の時間の間、切れ目なく周期的に発生する交流電界のことである。このバースト高周波電界は、時間軸に関して基本周波数成分以外の周波数成分のほとんどない純度の非常に高い電界であり、入力電力の多くが基本周波数帯域に集中しているという特徴を有する。「細胞内構成要素」とは、例えば、核、核小体、微小管、リボソーム、小胞体、ゴルジ体、リソソーム、中心体、分泌顆粒およびミトコンドリアであり、「細胞内構成要素に含まれる誘電性物質」とは、DNAである。

【0011】
本発明の細胞刺激装置では、細胞内構成要素のうち任意に選択した要素に含まれる誘電性物質の緩和時間の逆数と等しい値の周波数を基本周波数とするバースト高周波電界が電界発生手段から発生し、細胞内構成要素に印加される。これにより、基本周波数の逆数と等しい値の緩和時間の誘電性物質を含む細胞内構成要素がバースト高周波電界から選択的に刺激を受ける。
【0012】
また、バースト高周波電界は、サイクル数を増やすことで印加時間を増やすことが可能であることから、基本周波数と印加時間とを独立に制御することができる。これにより、細胞内構成要素の受ける刺激の大きさを任意に設定することができるので、目的および用途に応じた刺激を細胞内構成要素に与えることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の細胞刺激装置によれば、細胞内構成要素のうち任意に選択した要素に含まれる誘電性物質の緩和時間の逆数と等しい値の周波数を基本周波数とするバースト高周波電界を発生するようにしたので、任意の細胞内構成要素を選択的に刺激することができる。また、目的および用途に応じた刺激を細胞内構成要素に与えることもできる。これにより、目的および用途に応じた刺激を任意の細胞内構成要素に選択的に与えることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明の一実施の形態に係る細胞刺激装置の概略構成を表すものである。図2は、この細胞刺激装置から刺激を受けることとなる細胞の一具体例を表すものである。この細胞刺激装置は、正弦波信号発生器10と、この正弦波信号発生器10に接続された一対の平行平板状の電極11,12(電界発生手段)とを備える。これら電極11,12は容器13内に格納されている。容器13内には懸濁液15が満たされており、その懸濁液15には複数の細胞14が分散されている。なお、個々の細胞14が懸濁液15の中で分散されていることが好ましいが、接触し合っていてもよい。
【0016】
個々の細胞14は、例えば、核20、核小体21、微小管22、リボソーム23、小胞体24、ゴルジ体25、リソソーム26、中心体27、分泌顆粒28、ミトコンドリア29などの細胞内構成要素を含む。核小体21は核20の内部にあり、一方、微小管22、リボソーム23、小胞体24、ゴルジ体25、リソソーム26、中心体27、分泌顆粒28およびミトコンドリア29は細胞質内にある。なお、細胞14は、動物細胞および植物細胞のいずれでもよく、細胞壁で覆われていても覆われていなくてもよい。また何らかの前処理がなされていても、なされていなくてもよい。
【0017】
これら細胞内構成要素は、誘電性物質、例えば、DNAおよびRNAなどの高分子鎖状のタンパク質を含む。ここで誘電性物質は、その構造や構成分子に応じた固有の緩和時間を有し、この固有の緩和時間の大きさに応じた固有の共鳴周波数を有する。個々の誘電性物質の共鳴周波数は、細胞14の種類や大きさなどによっても異なるが、おおよそ1MHz以上1GHz以下の範囲内に点在している。
【0018】
正弦波信号発生器10は、基本周波数がおおよそ1MHz以上1GHz以下の範囲内にある正弦波信号を所定の時間の間、切れ目なく周期的に生成することの可能な信号源を有している。この正弦波信号には、高調波や、低調波、非高調波、残留FM、SSB位相雑音などの不要信号が含まれていないことが好ましいが、これら不要信号が含まれている場合は、これら不要信号によって一対の電極11,12から生じる電界の強度が、誘電性物質を刺激することのない程度に低いことが必要である。このように、正弦波信号は、基本周波数成分以外の周波数成分のほとんどない純度の非常に高い電界であり、入力電力の多くが基本周波数に集中しているという特徴を有する。
【0019】
ここで「刺激する」とは、電界強度と印加時間との積の大きさ(刺激の大きさ)に応じて生ずる物理的および化学的な作用を指しており、例えば、細胞内構成要素に含まれる誘電性物質を物理的に断片化することを指している。誘電性物質を刺激することのない程度の電界強度は電界の印加時間によって異なり、印加時間が短ければ電界強度がある程度大きくても誘電性物質を刺激することはなく、逆に、印加時間が長くても電界強度がある程度低ければ誘電性物質を刺激することはない。ただし、印加時間が短くても電界強度があまりにも大きいと、電界によって細胞が加熱され死んでしまう虞がある。これらのことから、刺激の大きさは、ある一定の範囲内にあることがわかる。
【0020】
一対の電極11,12は、正弦波信号発生器10から生成された正弦波信号をバースト高周波電界に変えて細胞14および懸濁液15に印加するようになっている。このバースト高周波電界は、一対の電極11,12において正弦波信号から生成されたものであり、上記した正弦波信号と同様の特徴を有する。
【0021】
ここで電極11,12に挟まれた懸濁液15は正弦波信号発生器10の負荷であることから、正弦波信号発生器10の出力インピーダンスZoと、負荷インピーダンスZL とをインピーダンス整合することが好ましい。具体的には、以下の式に基づいて、電極11,12の間隔dや、電極11,12が互いに対向し合う面の面積Sが設定される。
Zo=ZL =ρ(d/S)…(1)
【0022】
ただし、電極11,12に印加することの可能な電圧Vの範囲は正弦波信号発生器10の仕様によって制限されている。そのため、細胞内構成要素を刺激することの可能な電界Eが電圧Vの印加により電極11,12の間に生じるようにすることが必要である。具体的には、以下の式に基づいて、電極11,12の間隔dが設定される。
d=V/E…(2)
【0023】
次に、本実施の形態の正弦波信号の特徴について、パルス信号の特徴と対比して説明する。
【0024】
図3(A)は本実施の形態の正弦波信号の一具体例を時間軸領域で表すものであり、図3(B)は図3(A)の波形を周波数領域で表すものである。図4(A)は、比較例として、パルス信号の一具体例を時間領域で表すものであり、図4(B)は図4(A)の波形を周波数領域で表すものである。なお、図3(A),(B)は、基本周波数が50MHz、印加時間が1μsの正弦波信号の様子を、図4(A),(B)は、パルス幅が60ns、立ち上がり時間および立ち下がり時間が共に6nsのパルス信号の様子をそれぞれ表す。また、図3(A),図4(A)の縦軸は時間領域での振幅電圧を、図3(B),図4(B)の縦軸は各周波数成分の振幅電圧の実効値をそれぞれ表す。
【0025】
パルス信号は、パルス幅の逆数の整数倍を節とする多峰状の周波数スペクトラムを有している。また、パルス信号の時間領域での振幅電圧をVfd1(=1.1V)、パルス幅の逆数と等しい周波数以下の周波数領域(裾野領域)での振幅電圧の実効値をVtd1(=0.105Vrms)とすると、Vtd1に20.5 を掛けた値と、Vfd1との比((Vtd1x20.5 )/Vfd1)がおよそ0.13であることから、入力電力の一部が裾野領域に集中しており、残りは高周波側に広範囲に分散していることがわかる。これにより、細胞膜の緩和時間以下のパルス幅のパルス電界が細胞に加えられると、共鳴周波数がパルス幅の逆数より小さい誘電性物質を含む各種の細胞内構成要素が刺激されることとなる。したがって、パルス電界の印加時間を調整したとしても、所定の細胞内構成要素を選択的に刺激することは極めて困難である。
【0026】
また、パルス電界では、パルス幅を狭めると、節の位置が高周波側に移動して周波数スペクトラムが変わる。そのため、印加時間と、電力の入力される周波数帯域とを独立に制御することができず、その結果、目的および用途に応じた刺激を細胞内構成要素に与えることが極めて困難である。
【0027】
一方、本実施の形態の正弦波信号は、基本周波数(50MHz)成分以外の周波数成分のほとんどない純度の非常に高い信号である。また、正弦波信号の時間領域での振幅電圧をVfd2(=1.0V)、基本周波数での振幅電圧の実効値をVtd2(=0.40Vrms)とすると、Vtd2に20.5 を掛けた値と、Vfd2との比((Vtd2x20.5 )/Vfd2)がおよそ0.56であることから、入力電力のほとんどは基本周波数領域に集中していることがわかる。これにより、細胞内構成要素のうち任意に選択した要素に含まれる誘電性物質の緩和時間の逆数と等しい値の周波数を基本周波数とするバースト高周波電界が一対の平行平板状の電極11,12から発生し、細胞内構成要素に印加されと、基本周波数の逆数と等しい値の緩和時間の誘電性物質を含む細胞内構成要素が選択的に刺激を受けることとなる。したがって、任意の細胞内構成要素を選択的に刺激することができる。
【0028】
なお、このように入力電力のほとんどが基本周波数領域に集中していることから、細胞内構成要素を刺激するために大きな電力のバースト高周波電界を入力する必要はない。
【0029】
また、正弦波信号は、サイクル数を増やすことで印加時間を増やすことが可能であることから、基本周波数と印加時間とを独立に制御することができる。これにより、細胞内構成要素の受ける刺激の大きさを任意に設定することができるので、目的および用途に応じた刺激を細胞内構成要素に与えることができる。
【0030】
このように、本実施の形態の細胞刺激装置によれば、細胞内構成要素のうち任意に選択した要素に含まれる誘電性物質の緩和時間の逆数と等しい値の周波数を基本周波数とする正弦波信号(バースト高周波電界)を発生するようにしたので、任意の細胞内構成要素を選択的に刺激することができる。また、目的および用途に応じた刺激を細胞内構成要素に与えることもできる。これにより、目的および用途に応じた刺激を任意の細胞内構成要素に選択的に与えることが可能になる。
[実施例]
【0031】
次に、上記実施の形態に係る実施例について説明する。
【0032】
本実施例では、細胞内構成要素の経過を観察することができるように、容器14上部に共焦点レーザ顕微鏡(図示せず)を設けると共に、CHO(Chinese Hamster Ovary :チャイニーズハムスターの卵巣) 細胞のうち特定の細胞内構成物質に含まれるDNAと色素結合する蛍光色素としてのアクリジンオレンジ(AO:Acridine Orange )を懸濁液15に混入した。
【0033】
また、懸濁液15を、抵抗率が100Ωcmの培養液により構成し、平行平板状の電極11,12を、プラチナにより構成し、表面積が0.4cm2 の面が0.2mmの間隔で対向配置した。容器13を、アクリルにより構成した。
【0034】
正弦波信号発生器10を、基本周波数が50MHz、ゼロ・ピーク振幅電圧が200V、印加時間が100μsの正弦波信号が発生するように設定した。これにより、一対の電極11,12から細胞14および懸濁液15に1kV/cmのバースト高周波電界を印加することが可能となる。
【0035】
図5(A),(B)は、上記したバースト高周波電界を細胞14および懸濁液15に印加したのちの細胞14の経過を数分間隔で表すものである。図5(A)は明視野での細胞14の様子を、図5(B)はDNAと色素結合したアクリジンオレンジの蛍光の様子をそれぞれ数分間隔で表すものである。図6は、細胞14にバースト高周波電界を印加していないときと、細胞14にバースト高周波電界を印加したときのアクリジンオレンジ発光強度の経時変化を表すものである。
【0036】
なお、比較例として、基本周波数が20kHz、ゼロ・ピーク振幅電圧が200V、印加時間が100μsのバースト高周波電界を印加したときの細胞14の経過を図7(A),(B)に示す。また、細胞14にバースト高周波電界を印加していないときと、細胞14に比較例に係るバースト高周波電界を印加したときのアクリジンオレンジの発光強度の経時変化を図8に示す。
【0037】
比較例のバースト高周波電界が印加された細胞14では、細胞外でアクリジンオレンジの蛍光が確認できる。バースト高周波電界の周波数が1MHzより小さいため、電界による機械的なストレスにより細胞膜が破れ、DNAが細胞の外へ漏出しているものと推察される。一方、本実施の形態のバースト高周波電界が印加された細胞14では、細胞外でアクリジンオレンジの蛍光が全く確認できない。バースト高周波電界の周波数が1MHz以上1GHz以下であるため、細胞膜は電界から何らの影響を受けておらず、DNAが細胞の外へ漏出していないものと推察される。
【0038】
また、比較例および実施例ともに、細胞質および核21内でアクリジンオレンジの発光強度が時間の経過と共に減少している。比較例では、主にDNAが細胞の外へ漏出したことが原因であると考えられるが、実施例では、DNAは細胞の外へ漏出していないことから、DNAがバースト高周波電界から何らかの刺激を受け、例えば断片化されるなどして変質したことが原因であると考えられる。
【0039】
これより、基本周波数が50MHzのバースト高周波電界を細胞14に印加することにより、CHO細胞(細胞14)のうち特定の細胞内構成物質に含まれるDNAを選択的に刺激することができることがかわる。
【0040】
以上、実施の形態および実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明は、これらに限定されるものではなく、種々の変形が可能である。
【0041】
例えば、上記実施の形態では、生体から採取した細胞を対象としていたが、本発明はこれに限定されるものではなく、生体内の細胞を対象としてもよい。ただし、この場合には、電極構造を平行平板状からアンテナ状にして、そのアンテナ状の電極から生体内の細胞(例えば、ガン細胞)に向けてバースト高周波電界を発信することが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の一実施の形態に係る細胞刺激装置の概略構成図である。
【図2】細胞の概略構成図である。
【図3】正弦波信号の特徴を説明するための波形図である。
【図4】パルス信号の特徴を説明するための波形図である。
【図5】実施例での細胞の経過を表した図である。
【図6】実施例での細胞の経過を表した図である。
【図7】比較例での細胞の経過を表した図である。
【図8】比較例での細胞の経過を表した図である。
【符号の説明】
【0043】
10…正弦波信号発生器、11,12…電極、13…容器、14…細胞、15…懸濁液、20…核、21…核小体、22…微小管、23…リボソーム、24…小胞体、25…ゴルジ体、26…リソソーム、27…中心体、28…分泌顆粒、29…ミトコンドリア。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7