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明細書 :磁気反発支持回転機

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4923238号 (P4923238)
公開番号 特開2007-060818 (P2007-060818A)
登録日 平成24年2月17日(2012.2.17)
発行日 平成24年4月25日(2012.4.25)
公開日 平成19年3月8日(2007.3.8)
発明の名称または考案の名称 磁気反発支持回転機
国際特許分類 H02K   7/09        (2006.01)
F16C  32/04        (2006.01)
FI H02K 7/09
F16C 32/04 Z
請求項の数または発明の数 4
全頁数 11
出願番号 特願2005-243618 (P2005-243618)
出願日 平成17年8月25日(2005.8.25)
審査請求日 平成20年7月9日(2008.7.9)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】305060567
【氏名又は名称】国立大学法人富山大学
発明者または考案者 【氏名】大路 貴久
個別代理人の代理人 【識別番号】100091351、【弁理士】、【氏名又は名称】河野 哲
【識別番号】100088683、【弁理士】、【氏名又は名称】中村 誠
【識別番号】100108855、【弁理士】、【氏名又は名称】蔵田 昌俊
【識別番号】100075672、【弁理士】、【氏名又は名称】峰 隆司
【識別番号】100109830、【弁理士】、【氏名又は名称】福原 淑弘
【識別番号】100084618、【弁理士】、【氏名又は名称】村松 貞男
【識別番号】100092196、【弁理士】、【氏名又は名称】橋本 良郎
審査官 【審査官】平岩 正一
参考文献・文献 特開平09-037512(JP,A)
特開平10-174363(JP,A)
特開平09-322473(JP,A)
特開2005-045984(JP,A)
調査した分野 H02K 7/09
F16C 32/04
特許請求の範囲 【請求項1】
軸方向に着磁された円柱或いは円筒状の第1の永久磁石を有し、点接触支持端を有する固定軸と、
この固定軸に対して同軸的に第1のギャップを介して配置され、磁性材料で作られた円盤状磁性部を備え、この円盤状磁性部が電磁石によって磁気的に吸引され、前記点接触支持端に点接触されたまま、或いは、前記点接触支持端から浮上されて前記軸方向に沿って支持される円筒状の回転子であって、
前記第1の永久磁石に対向配置された内面を有し、
前記軸方向に着磁され、前記第1の永久磁石との間に反発力を生じさせて当該回転子を半径方向で支持する円筒状の第2の永久磁石及びこの第2の永久磁石の外周に一体的に設けられ、略半径方向に着磁された複数の磁石セグメントを有する円筒状の第3の永久磁石から構成される回転子と、
この回転子の周りに第2のギャップを介して配置され、前記第3の永久磁石に対して回転磁界を発生して前記回転子を回転するコイルを有する固定子と、
を具備することを特徴とする磁気反発支持回転機。
【請求項2】
前記第3の永久磁石は、第1磁極及びこの第1磁極とは反対の第2磁極が交互に前記回転子の周りに配列される磁石セグメントから構成されることを特徴とする請求項1の磁気反発支持回転機。
【請求項3】
前記磁石セグメントは、回転軸に関して対称に配置されることを特徴とする請求項1の磁気反発支持回転機。
【請求項4】
前記第3の永久磁石は、
前記半径方向に沿った第1方向に着磁された第1の磁石セグメント、
前記第1磁極とは反対の第2方向に着磁された第2の磁石セグメント及び
前記回転子の周囲に沿う第3方向及びこの第3方向とは反対の第4方向に着磁された第3及び第4の磁石セグメントから構成され、
前記第1、第3及び第2の磁石セグメントの配列並びに前記第1、第4及び第2の磁石セグメントの配列が交互に前記回転子の周りに配列される磁石セグメントから構成されることを特徴とする請求項1の磁気反発支持回転機。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
この発明は、磁気的な反発力で回転体を軸受け支持する支持磁気反発回転機に係り、特に、軸受と回転機要素を一体化した磁気反発支持回転機に関する。
【背景技術】
【0002】
高速回転が不可欠な用途として光偏向走査装置が知られている。光偏向走査装置では、回転する多面鏡にレーザが向けられ、この回転する多面鏡によってレーザが反射されて感光面等に向けられている。光偏向走査装置においては、回転多面鏡は、情報伝達の観点からは、高速回転化が情報伝達量に直結し、より高速な回転がより大きな情報伝達に寄与するとされている。現在、実用化されている回転多面鏡の回転方式には、動圧軸受と磁気反発力とを併用したタイプが知られ、数万rpmオーダーでの高速回転が可能である。
【0003】
しかしながら、光偏向走査装置は、6面乃至12面の多面鏡を有し、回転に伴い必然的に大きな風損が発生される。風損は、回転速度の3乗に比例することが一般的に知られ、高速回転化が膨大な駆動電力の上昇を引き起こすこととなる。この風損を軽減するためには、真空中での運転が必要となるが、現状の動圧軸受では、空気流の圧力を利用することから、真空中での運転は、不可能とされている。そこで、軸を完全に磁気的に支持することができ、且つ、低コスト化並びに簡素化を実現することができる永久磁石反発形磁気軸受による省電力高速回転機器が要望され、開発されている。
【0004】
光偏向走査装置用の永久磁石反発形磁気軸受として特許文献1~4が既に提案されている。この永久磁石反発形磁気軸受は、1辺100mm空間に構成要素を集約したインナーロータ形縦軸永久磁石反発形磁気軸受であり、軸受部での磁気的損失が非常に小さいことが実験的に確認され、最高回転数5万rpm、駆動電力3Wで安定回転を実現することができ、この方式が省電力小型高速回転機器に非常に有用であることが確認されている
また、反発浮上形磁気軸受は、ポンプにも適用することができる。反発浮上形磁気軸受のポンプへの適用例としては、ターボ分子ポンプが有名である。ターボ分子ポンプでは、寸法的な制約がそれほど無いため、一般には、2箇所の軸受部と1箇所のモータ部が独立に設けられている。しかし、ターボ分子ポンプとして反発浮上形磁気軸受でありながら、軸受部とモータ部を兼用する方式も特許文献5に提案されている。
【0005】
更に、現在ベアリングレスモータに関する学術研究が非常に盛んであり、反発浮上形磁気軸受は、ベアリングレスモータへの適用も想定されている。ベアリングレスモータは、その応用として、キャンドポンプ、小型ポンプ、血液循環ポンプ等のポンプ関連、HD等の情報機器用スピンドルドライブ等が想定され、その開発が始まっている。

【特許文献1】特開2002-081445
【特許文献2】特開2002-365581
【特許文献3】特開2003-148472
【特許文献4】特開2003-329958
【特許文献5】特開平9-182400
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1~4に開示された永久磁石反発形磁気軸受は、上述したように省電力小型高速回転機器に非常に有用である。しかし、光偏向走査装置は、一般的に精密機器の一部品として内装されることから、現状の1辺100mm空間内に内装することは、構造的にやや困難である。一方、永久磁石反発形磁気軸受の構成要素が独立な状態での小型化は、寸法効果の問題が生じるため、新たな構造上のブレークスルーが不可欠であるとされている。
【0007】
特許文献5に開示された反発浮上形磁気軸受の方式は、全受動形と呼ばれる磁気軸受方式とモータを兼用したタイプである。しかし、問題点として、一つは、無回転時に接触点が存在することにある。また、他の問題点としては、モータ機能を軸受部に付加するために、ロータ側もしくはステータ側の永久磁石が周方向に不均一な磁束密度となる軸受構成を持たざるを得ないことにある。これでは、高速回転時に軸受部で磁束密度変化による熱損失が発生し、制動トルクを誘発してしまう。
【0008】
ベアリングレスモータは、電動機の中心位置を制御(軸受)しながら、回転力を与える(モータ)装置を称し、回転磁界と位置制御磁界とが混在されている。モータの回転磁界は、同期機であれば回転子の磁極に作用して同期速度を保ちながらモータが回転される。この時、回転速度とは独立した位置制御磁界が回転子中に流れることになる。つまり、回転子座標系から見たときに、磁束が周期的(方形波的)に増減することになる。ベアリングレスモータにおいては、この磁束変化がうず電流を発生させ熱損失を起こさせる問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、軸受と回転機要素を一体化した小型かつ低損失・省電力で駆動される磁気反発支持回転機を提供することにある。
【0010】
この発明によれば、
軸方向に着磁された円柱或いは円筒状の第1の永久磁石を有し、点接触支持端を有する固定軸と、
この固定軸に対して同軸的に第1のギャップを介して配置され、磁性材料で作られた円盤状磁性部を備え、この円盤状磁性部が電磁石によって磁気的に吸引され、前記点接触支持端に点接触されたまま、或いは、前記点接触支持端から浮上されて前記軸方向に沿って支持される円筒状の回転子であって、
前記第1の永久磁石に対向配置された内面を有し、
前記軸方向に着磁され、前記第1の永久磁石との間に反発力を生じさせて当該回転子を半径方向で支持する円筒状の第2の永久磁石及びこの第2の永久磁石の外周に一体的に設けられ、略半径方向に着磁された複数の磁石セグメントを有する円筒状の第3の永久磁石から構成される回転子と、
この回転子の周りに第2のギャップを介して配置され、前記第3の永久磁石に対して回転磁界を発生して前記回転子を回転するコイルを有する固定子と、
を具備することを特徴とする磁気反発支持回転機が提供される。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、軸受と回転機要素を一体化した小型かつ低損失・省電力で駆動される磁気反発支持回転機が提供され、この磁気反発支持回転機は、既存方式の回転機に比較し、原理上、最も低損失で運転できる。即ち、機械的接触のない簡易の磁気軸受方式である反発浮上形磁気軸受と、モータ駆動機構を一体化することで、反発浮上形磁気軸受と各種ベアリングレスモータのそれぞれで課題とされてきた、小型かつ軸長の比(D/L比)増大でき、軸受部での熱損失の低減、超高速回転、高効率運転を可能にしている。即ち、浮上と回転を兼備するこの発明の磁気反発支持回転機では、軸長の比(D/L比)を増大させることが可能であり、さらなる小型化と高い汎用性を実現することができる。
【0012】
この発明によれば、磁気軸受の一種である反発浮上形磁気軸受における省スペース化という問題と、ベアリングレスモータにおける回転損失低減という2つの問題を一挙に解決することができる。
【0013】
尚、反発浮上磁気軸受とは、制御軸数を最小化し安定化する方式であり、構成及び周辺装置の簡素化や低回転損失等の利点を有する。しかしながら、磁気軸受全般に言えることであるが、2箇所の軸受部と1箇所のモータ部が独立するため、軸径に対する軸長の比(D/L比)が小さくなる傾向がある。ベアリングレスモータでは、1箇所乃至2箇所の軸受部がモータと兼用されるために、軸長の比(D/L比)が大きく、装置の小型化を可能にすることができる。しかし、ベアリングレスモータは、回転磁束と同時に支持磁束を発生させる必要があり、この結果、回転体は、常に支持磁束と鎖交することになり、高速で回転するほどこの時の磁束が損失要因となる。これに対して、この発明の反発浮上形磁気軸受の軸受部にモータ機能を付加した磁気反発支持回転機では、高速回転、小型軽量化、低回転損失、高効率化、低環境負荷等を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、必要に応じて図面を参照しながら、この発明の一実施の形態に係る磁気反発支持回転機を説明する。
【0015】
図1は、この発明の一実施の形態に係るモータ兼軸受部を内包した磁気反発支持回転機の全体構造を概略的に示している。この図1に示す磁気反発支持回転機は、ベース1を備え、このベース1上に筐体部2が載置固定され、この筐体部2上に更に筐体部3が載置固定されている。筐体部2及び3は、図1においては、別体として描かれているが、一体的な筐体部で構成されても良いことは明らかである。筐体部2内のベース1上には、その周囲に円筒状に突出部8aを有する皿状の筐体部8が筐体部2に嵌合された状態で配置されている。これらベース1、筐体部2、筐体部3及び筐体部8によって回転機の筐体が構成されている。筐体部8の円筒状突出部8aには、円筒状モータ継鉄12が固定され、円筒状突出部8aの内周面には、同様に円筒状モータ巻線11が配置固定されている。このモータ継鉄12は、当然に磁性材料(例えば、鉄)で作られている。
【0016】
ベース1及び筐体部8には、筐体の中心軸に沿って配置された点接触用補助軸9の基部が固定されている。点接触用補助軸9は、非磁性材料で作られ、その筐体内先端は、円筒状回転軸10を中心軸上で点接触支持するために半球状に丸め形成され、円筒状回転軸10の内隔壁面に点接触されている。また、点接触用補助軸9は、第1の永久磁石を構成する円筒状ステータ磁石5bに嵌合されている。円筒状回転軸10も同様に非磁性材料で作られ、円筒状回転軸10の内周面には、円筒状ステータ磁石5bに間隙を空けて対向されるように第2の永久磁石を構成する円筒状ロータ磁石5aが固定され、円筒状回転軸10の外周面には、第3の永久磁石を構成する円筒状のモータ磁極用磁石7がモータ巻線11に間隙を空けて対向するように固定されている。モータ磁極用磁石7は、後に説明するように筐体の中心軸の周りに対称に配置された複数の極を有する磁石セグメントから構成され、各磁石セグメントがラジアル方向(半径方向)に着磁され、或いは、各磁石セグメントがラジアル方向(半径方向)及び円周方向に着磁されている。また、円筒状ロータ磁石5a、円筒状ステータ磁石5bは、後に詳細に説明するように、互いにラジアル方向(半径方向)で反撥するようにその軸方向に着磁されている。円筒状ロータ磁石5a、円筒状ステータ磁石5b、円筒状モータ磁極用磁石7及びモータ巻線11によって磁気反発支持回転部16が構成される。
【0017】
図1に示される磁気反発支持回転部16においては、円筒状回転軸10は、固定された点接触用補助軸9によってスラスト方向(軸方向)において点接触支持され、また、軸方向に着磁された円筒状ロータ磁石5a、円筒状ステータ磁石5b間に生ずる反発力によって円筒状回転軸10は、ラジアル(半径)方向に軸受支持されている。また、円筒状ロータ磁石5a、円筒状ステータ磁石5bの外周に配置された円筒状モータ磁極用磁石7及びモータ巻線11によってモータが構成されている。即ち、図1に示される磁気反発支持回転部10においては、モータ巻線11から発生される回転磁界に円筒状モータ磁極用磁石7が吸引されて円筒状回転軸10が点接触用補助軸9並びに円筒状ロータ磁石5a、円筒状ステータ磁石5bで軸受け支持されて回転される。
【0018】
円筒状回転軸10には、更に筐体の軸上に配置された回転軸19の基部19aが嵌合固定されてそのフランジ部19bが回転軸10上に載置固定されて両者が一体に連結されている。フランジ部19b上には、磁性材料(例えば、鉄)で作られた円盤状の電磁石吸引板13が載置固定されている。この円盤状の電磁石吸引板13は、回転軸10の周囲を取り囲むように凸状内周リング部13aが設けられるとともにその外周にも凸状外周リング部13bが設けられている。電磁石吸引板13に対向して同様に磁性材料(例えば、鉄)で作られた円盤状の電磁石鉄心14が筐体部3の内面に固定されている。円盤状の電磁石鉄心14の中心部には、挿通孔が設けられ、この挿通孔内を補助軸9が両者間に間隙を設けて延出され、電磁石鉄心14には、リング状の凹部が設けられ、この凹部に電磁石コイル15が格納されている。リング状の凹部の内周側及び外周側には、凸状内周リング部13a及び凸状外周リング部13aに対向される凸状内周及び外周リング部14a、14bが設けられ、リング部13aと対応するリング部14aとの間にギャップが設けられるとともにリング部13bと対応するリング部14bとの間にも同様に間隙が設けられている。これらリング部13a、ギャップ、リング部14a、リング部13b、ギャップ、リング部14Bによって電磁石コイル15の為の磁気回路が構成されている。電磁石コイル15が附勢されると磁束がこの磁気回路を通過される。従って、リング部13a及びリング部14a間並びにリング部13b及びリング部14b間に吸引力が発生されてフランジ部19bが浮上されて点接触用補助軸9、回転軸10及び回転軸19が軸に沿って浮上される。従って、円筒状回転軸10は、点接触用補助軸9によって点接で或いは非接触で点接触補助軸9上に支持される。
【0019】
筐体部3の上部開口部内面には、筐体軸に沿って微動可能なリング状の軸方向力調節ネジ4が開口を塞ぐようにリング部材20を介して取り付けられている。軸方向力調節ネジ4の内面には、円筒状のステータ磁石6bが取り付けられている。この円筒状ステータ磁石6bに対向して配置されるように円筒状のロータ磁石6aが回転軸19に固定されている。円筒状ロータ磁石6aの外面と円筒状ステータ磁石6bの内面との間のギャップが設けられ、両者間で生ずるラジアル方向(半径方向)の反発力で回転軸19が筐体の軸上に配置されるように軸支されている。軸方向力調節ネジ4は、その軸方向に移動可能にリング部材20に螺合され、この軸方向力調節ネジ4を軸に沿って移動させることで、互いに対向される円筒状ロータ磁石6aの外面と円筒状ステータ磁石6bの内面との間の対向面積が調整される。従って、対向面積に応じた円筒状ロータ磁石6aと円筒状ステータ磁石6b間の反発力が調整される。その結果、軸方向の反発力の微調整により電磁コイル15における定常吸引力の調整が可能となる。従って、軸方向の力(反発力、吸引力、重力)をバランスさせることが可能となる。
【0020】
尚、図1に示す磁気反発支持回転機においては、円筒状ロータ磁石6a及び円筒状ステータ磁石6bが構成するラジアル方向軸受けは、磁気反発支持回転部16と同様にモータ磁極用磁石及びモータ巻線が更に設けられて磁気反発支持回転部に構成されても良い。即ち、磁気反発支持回転部16を構成する構造が筐体部3の開口部に設けられても良い。
【0021】
図1に示す磁気反発支持回転機では、モータ機能と軸受機能を回転軸に対して同一の垂直面上に配した磁気反発支持回転部16の構造により、その軸長を減少させて軸長の比(軸の径(D)に対する長さ(L)の比:D/L比)を増大させることができる。
【0022】
磁気反発支持回転部16の構造について、図2(a)及び(b)を参照してより詳細に説明する。図2(a)は、図1に示した磁気反発支持回転部16の構造を概略的に示し、図2(b)は、比較例としてのベアリングレスモータの基本構造を概略的に示している。尚、図2(a)においては、図面の簡略化を目的として図1に示された軸受9が省略して示されることに注意されたい。
【0023】
図2(a)に示される磁気反発支持回転部16では、永久磁石の反発を利用した軸受部とモータ駆動部とが一体化されている。即ち、この磁気反発支持回転部16における軸受の永久磁石配置では、その内側に軸方向着磁されたロータ磁石5a,5bに相当する2個の円筒形永久磁石MG1、MG2がギャップG1を介して同軸的に配置され、円筒形永久磁石MG2の外側に接着層Bを介して接合されたモータ磁極用の複数枚の扇形永久磁石セグメントで構成される界磁磁極としての円筒形磁石MG3が同軸的に配置されている。モータ用円筒形磁石MG3は、図3(a)~図3(c)に示されるようにラジアル方向(半径方向、即ち、放射方向)に着磁された扇形永久磁石セグメントで構成され、或いは、半径方向に着磁された扇形永久磁石セグメント及び円周方向に着磁された扇形永久磁石セグメントの組み合わせにより構成される。このモータ用円筒形磁石MG3の外側には、ギャップG2を介して同軸的に固定子側の電機子巻線MCが施され、この電機子巻線MCが回転磁界を発生してモータ軸に連結された円筒形磁石MG3にトルクを与える。この永久磁石配置を利用すると、2個の円筒形永久磁石MG1、MG2の間のギャップG1において、円周方向の磁束密度変化を極めて小さくすることができる。これは超高速回転を実現しようとする場合の磁気的損失を小さくすることを意味する。
【0024】
尚、図2(a)及び(b)においては、斜め格子模様で描かれた領域は、モータ用円筒形磁石MG3が設けられた界磁磁極領域を示し、点線模様で示された領域は、電機子巻線MCが設けられる固定子領域を示し、白色の領域は、ギャップG1、G2の領域を示し、縦横の格子模様は、永久磁石MG1、MG2を示し、灰色で塗られた領域は、界磁鉄心が設けられる領域を示している。また、紙面内及び紙面に垂直な矢印は、電機子巻線MCから発生される磁束の経路を示している。
【0025】
磁気反発支持回転部16の構造の理解を深める為に比較例としてベアリングレスモータの構造を以下に説明する。
【0026】
図2(b)は、ベアリングレスモータの基本構造を示している。ベアリングレスモータの回転子は、図2(b)に示すように界磁鉄心Fの周りに界磁用永久磁石MG4が設けられ、界磁用永久磁石MG4を用いる円筒形或いはリラクタンスを変化させる突極形で構成される。ベアリングレスモータでは、この永久磁石MG4の磁極に対し、回転磁界を作用させてトルクを発生させる。磁気力で回転体として永久磁石MG4を支持するための磁束(支持磁束)は、各座標方向(図2(b)では、矢印で示すように上下もしくは左右)を磁路とするように流れる。即ち、固定子側のモータコイルMCref、ギャップG4、回転体として永久磁石MG4及び界磁鉄心F、ギャップG4、固定子側のモータコイルMCrefという順序で流れることになる。このとき円周方向の磁束密度は大きく変化するため、超高速回転を実現しようとする場合、回転体として永久磁石MG4を縦断する支持磁束が磁気的損失を増大させている。これに対して、図2(a)に示される磁気反発支持回転部16における永久磁石配置では、2個の円筒形永久磁石MG1、MG2の間のギャップG1において、円周方向の磁束密度変化を極めて小さくすることができ、結果として、超高速回転を実現しようとする場合の磁気的損失を小さくすることができる。従って、この原理的な差違に基づいて、図2(a)に示される磁気反発支持回転部16を備えた回転機では、超省電力運転を可能にすることとなる。
【0027】
図3(a)、(b)及び(c)を参照して磁気反発支持回転部16の種々の構造について説明する。図3(a)、(b)及び(c)に示すように磁気反発支持回転部16では、モータ兼軸受部図2(a)に示すように軸方向に着磁されたネオジ系円筒形永久磁石対MG1,MG2が用意されて、その同極が向くように配置されることで永久磁石MG1,MG2間のギャップに反発力が発生される。永久磁石MG1,MG2は、図面上紙面方向に着磁されている。尚、図3(a)、(b)及び(c)において2重円で示される矢印符号Dは、永久磁石MG1,MG2の磁化方向を示している。
【0028】
ここでは、内部の円筒形磁石MG1をステータ磁石、外部の円筒形磁石MG2をロータ磁石と称する。図3(a)に示される磁石配置においては、ステータ磁石とロータ磁石とを反発浮上形磁気軸受における軸受部と捉えるとアウターロータ形となっている。ロータ磁石MG2の外周に約1mmのスペーサBを配置し、その外周にモータ磁極用磁石MG3を配置する。モータ磁極用磁石MG3は、ネオジ系であり、中心角45度のものを複数枚設置する。磁極数は、2nであり、全てのモータ磁極用磁石MG3は、ステータ磁石MG1と空間的に直角をなす半径方向の矢印K1、K2、並びに、周方向のK3、K4で示される方向に着磁される。図3(a)に示すステータ磁石MG1では、矢印K1で着磁された第1の磁石セグメント及び矢印K1とは反対方向の矢印K2で着磁された第2の磁石セグメントが交互に配列される8枚の磁石セグメントで構成されて8極に着磁されている。図3(b)に示すステータ磁石MG1では、矢印K1で着磁された2枚の磁石セグメント及び矢印K1とは反対方向の矢印K2で着磁された2枚の磁石セグメントが交互に配列される8枚の磁石セグメントで構成されて4極に着磁されている。また、図3(c)に示すステータ磁石MG1では、矢印K1で着磁された第1の磁石セグメント、矢印K3で着磁された第3の磁石セグメント、矢印K1とは反対方向の矢印K2で着磁された第2の磁石セグメント及び矢印K3とは反対方向の矢印K4で着磁された第4の磁石セグメントが交互に配列される8枚の磁石セグメントで構成されてハルバッハ配列で着磁されている。図3(a)、(b)及び(c)に示されるセグメント配列は、一例であって、磁極用磁石セグメントの中心角や極数はこれに限られるものではなく種々の態様を取ることができる。
【0029】
図4(a)、(b)及び(c)は、夫々図3(a)、(b)及び(c)に示される磁石MG3を構成する3種類の磁石配列における磁極外周部と内周部の磁束密度分布を示している。図4(a)、(b)及び(c)では、符号MF(1)のグラフは、磁極内周部の磁束密度分を示し、符号MF(2)のグラフは、磁極外周部の磁束密度分を示している。また、この磁束密度分のグラフでは、ロータ磁石MG1及びステータ磁石MG2は装填されていないものとして磁束密度分布を示している。これらの結果から、磁束密度は、磁極外周部のほうが大きい値となる他、ハルバッハ配列において磁束がなめらかに変化するとともに、内周部と外周部の磁束密度差が大きく、特に内周部において磁束密度が低くなり、円筒形永久磁石対に与える影響が小さいことを意味している。ハルバッハ配列は磁束の広がりを抑える効果を持つため、ロータ及びステータ両磁石MG1、MG2も軸方向にハルバッハ配列にする構成も考えられる。
【0030】
図5(a)及び(b)は、図3(b)及び(c)に示されるモータ兼軸受部におけるギャップG1の付近(ロータ磁石MG2とステータ磁石MG1との間)での磁束密度分布を軸方向から測定したものである。図5(a)及び(b)に示されるように、ギャップG1の付近での磁束密度に空間的な乱れは小さく、特に、図5(b)に示されるようにハルバッハ配列の場合は極めて小さい。ロータ-ステータ間ギャップG1で磁束密度が均一であるとき、原理的に磁気的損失がゼロであるため、超省電力運転を可能にすることとなる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、既存技術としての反発浮上式磁気軸受とベアリングレスモータの概念を混合したものであり、両者の利点を有する回転機を実現することができる。近年のベアリングレスモータの技術進展は目覚ましい。既存の磁気吸引式ベアリングレスモータと同様に単なる回転機からベアリングレス化される本発明もその後の研究発展性は大いに期待できる。
【0032】
また、本発明の対象は、省電力高速回転に適しており、モータ関連企業、精密機器・情報機器を取り扱う企業で利用される可能性が高い。また、特殊雰囲気中での使用が可能であり、また、回転子固定子間距離が比較的広い軸受方式であることなどから、ポンプ関連企業での利用可能性も高いと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】この発明の一実施の形態に係るモータ兼軸受部を内包した磁気反発支持回転機の全体構造を概略的に示す縦断面模式図である。
【図2】(a)は、図1に示された磁気反発支持回転部16の構造を概略的に示す横断面模式図であり、(b)は、比較例としてのベアリングレスモータの基本構造を概略的に示す横断面模式図である。
【図3】(a)、(b)及び(c)は、図1及び図2(a)に示した磁気反発支持回転部16の種々の構造を示す略図である。
【図4】(a)、(b)及び(c)は、図3(a)、(b)及び(c)に示した磁石配列におけるモータ磁石の内外周部での磁束密度分布を示すグラフである。
【図5】(a)及び(b)は、図3(b)及び(c)に示した磁石配列におけるロータ磁石とステータ磁石との間における磁束密度分布を軸方向から測定したグラフである。
【符号の説明】
【0034】
1...ベース、2、3...筐体部、5a...円筒状ロータ磁石、5b...円筒状ステータ磁石、7...円筒状モータ磁極用磁石、8...皿状筐体部、9...点接触用補助軸、10...円筒状回転軸、11...モータ巻き線、12...円筒状モータ継鉄、16...磁気反発支持回転部、19...回転軸、20...
リング部材
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4