TOP > 国内特許検索 > 形状測定装置及び該方法 > 明細書

明細書 :形状測定装置及び該方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4143728号 (P4143728)
公開番号 特開2006-343205 (P2006-343205A)
登録日 平成20年6月27日(2008.6.27)
発行日 平成20年9月3日(2008.9.3)
公開日 平成18年12月21日(2006.12.21)
発明の名称または考案の名称 形状測定装置及び該方法
国際特許分類 G01S  13/89        (2006.01)
FI G01S 13/89
請求項の数または発明の数 5
全頁数 19
出願番号 特願2005-168863 (P2005-168863)
出願日 平成17年6月8日(2005.6.8)
審査請求日 平成19年6月13日(2007.6.13)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
発明者または考案者 【氏名】木寺 正平
【氏名】阪本 卓也
【氏名】佐藤 亨
個別代理人の代理人 【識別番号】100067828、【弁理士】、【氏名又は名称】小谷 悦司
【識別番号】100111453、【弁理士】、【氏名又は名称】櫻井 智
審査官 【審査官】川瀬 徹也
参考文献・文献 特開2006-098112(JP,A)
特開昭58-038878(JP,A)
特開2005-227205(JP,A)
阪本卓也、佐藤亨,UWBパルスレーダシステムのためのノンパラメトリックな目標形状推定法,電子情報通信学会技術研究報告,日本,(社)電子情報通信学会,2003年 6月12日,Vol.103 No.120,pp.1-6
阪本卓也、佐藤亨,UWBパルスレーダシステムのための境界散乱変換を用いた目標形状推定法,電子情報通信学会技術研究報告,日本,(社)電子情報通信学会,2003年 9月 4日,Vol.103 No.300,pp.65-70
Takuya Sakamoto and Toru Sato,A Target Shape Estimation Algorithm for Pulse Radar Systems Based on Boundary Scattering Transform,IEICE Trans. Commun.,日本,(社)電子情報通信学会,2004年 5月,Vol.E87-B, No.5,pp.1357-1365
調査した分野 G01S 7/00- 7/42
G01S 13/00-13/95
IEEE
JSTPlus(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
物体の形状を測定する形状測定装置において、
パルスを生成して送信パルスとして空間に放射するパルス生成放射部と、
前記送信パルスを放射した位置で前記物体で反射した前記送信パルスの反射波を受信信号として受信する受信部と、
前記物体に対して前記パルス生成放射部の位置を変えながら前記送信パルスを放射することによって前記受信部で受信された複数の受信信号の波形と参照信号の波形との相互相関をそれぞれ求めることで複数の相関波形を求める相関部と、
前記相関部で求められた複数の相関波形に基づいて擬似波面を抽出して擬似波面と物体の形状との対応関係から前記物体の形状を推定する形状推定部と、
前記形状推定部で推定した物体の形状に応じた受信信号の波形を推定する波形推定部とを備え、
前記参照信号の波形として最初は前記送信パルスの波形を用いると共に次回以降は前記波形推定部で推定した受信信号の波形を用い、前記物体の形状を複数回推定することによって前記物体の形状を求めること
を特徴とする形状測定装置。
【請求項2】
前記送信パルスは、中心周波数に対する占有帯域幅の比である比帯域が20%以上であること
を特徴とする請求項1に記載の形状測定装置。
【請求項3】
前記送信パルスは、UWBパルスであること
を特徴とする請求項1に記載の形状測定装置。
【請求項4】
前記送信パルスは、モノサイクルパルスであること
を特徴とする請求項1に記載の形状測定装置。
【請求項5】
物体の形状を測定する形状測定方法において、
パルスを生成して送信パルスとして空間に放射するパルス生成放射ステップと、
前記送信パルスを放射した位置で前記物体で反射した前記送信パルスの反射波を受信信号として受信する受信ステップと、
前記物体に対して前記送信パルスを放射する位置を変えながら前記送信パルスを放射することによって受信された複数の受信信号の波形と参照信号の波形との相互相関をそれぞれ求めることで複数の相関波形を求める相関ステップと、
前記相関ステップで求めた前記複数の相関波形に基づいて擬似波面を抽出して擬似波面と物体の形状との対応関係から前記物体の形状を推定する形状推定ステップと、
前記形状推定ステップで推定した物体の形状に応じた受信信号の波形を推定する波形推定ステップとを備え、
前記参照信号の波形として最初は前記送信パルスの波形を用いると共に次回以降は前記波形推定ステップで推定した受信信号の波形を用い、前記物体の形状を複数回推定することによって前記物体の形状を求めること
を特徴とする形状測定方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、送信パルスを放射して目標の物体から反射した該送信パルスの反射波を受信することによって該物体の形状を測定する形状測定装置及び形状測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ロボット、車両、船舶及び航空機等の移動体が移動する場合や室内から外界の状況を知りたい場合等において、周囲の物体を認識し、その形状を認識することは、重要である。特に移動体を自動走行させる場合にはより重要となる。
【0003】
そのため、発明者らは、種々の研究を重ねた結果、送信パルスの送受信位置を変化させることによって得られる直接散乱波の遅延時間変化と物体の形状との間に成り立つ可逆な変換関係を利用して物体の形状を推定するSEABED(Shape Estimation Algorithm based on BST(Boundary Scattering Transform) and Extraction od Directly scattered waves)法を開発し、提案してきた(例えば、非特許文献1乃至非特許文献4)。なお、目標の物体の表面(目標境界面)で反射する散乱波には、目標境界面で反射した送信パルスの反射波を直接受信することによって得られる直接散乱波と、目標境界面で反射した送信パルスの反射波がさらに目標境界面における別の部分で1又は複数回反射した反射波を受信することによって得られる多重散乱波とがある。
【0004】
まず、このSEABED法の原理を以下に説明する。図6は、SEABED法におけるアンテナ走査の様子を説明するための図である。この原理説明では、図6に示すように、目標の物体O及び送受信アンテナAが同一平面内に存在すると仮定した2次元問題を扱い、電波の伝播は、TE波であるとする。この目標の物体O及び送受信アンテナAが存在する空間を「r-空間(r-domain)」と呼称することとし、r-空間で集合を表現する場合その表現を「r-領域での表現」と呼称することとする。また、r-空間の点を(x,y)で表現する。ここで、x及びy(y>0)は、何れも真空中での送信パルスの中心波長λにより正規化される。送受信アンテナAは、無指向性であり、r-空間のx軸上を走査しながら所定の間隔(例えば等間隔)を空けた各測定位置x(n=1~Nの整数)でモノサイクルパルスの送受信を繰り返すものとする。
【0005】
そして、送受信アンテナAの測定位置(x,y)=(X,0)における受信電界をs’(X,Y)と定義し、送信から受信までの時間をt、真空中の光速をcとした場合にYをY=(c×t)/(2×λ)と定義する。なお、y>0よりY>0であり、また、送受信アンテナAの測定位置xにおける電界の瞬時包絡線が最大となる時刻をt=0とする。
【0006】
さらに、雑音除去の観点からs’(X,Y)のY方向に送信波形を用いた整合フィルタを適用し、この整合フィルタを適用して得られる受信波形を新たにs(X,Y)とする。このs(X,Y)を目標の物体Oの形状を求めるデータとして用いる。ここで、(X,Y)で表現される空間を「d-空間(d-domain)」と呼称することとし、d-空間で集合を表現する場合その表現を「d-領域での表現」と呼称することとする。X及びYは、それぞれ送信パルスの中心波長及び送信パルスの中心周期で正規化されている。
【0007】
連続した境界面を持つ目標の物体Oにおける複素誘電率ε(x,y)の変化が複数の区分的に微分可能な曲線の集合であるとする。即ち、目標の物体Oにおける複素誘電率ε(x,y)が式1で表される。
【0008】
【数1】
JP0004143728B2_000002t.gif

【0009】
ここで、g(x)は、微分可能な1価関数であり、q={(x,y)|y=g(x),x∈J}∈Hとする。Jは、関数g(x)の定義域である。aは、q∈Hに依存する正の定数であり、Hは、q全体の集合である。Hの要素が「目標境界面」である。
【0010】
d-空間の部分集合Pを式2で定義する。
【0011】
【数2】
JP0004143728B2_000003t.gif

【0012】
連結な閉集合p⊂Pを考え、領域Iを式3で定義する。
【0013】
【数3】
JP0004143728B2_000004t.gif

【0014】
任意のX∈Iに対し(X,Y)∈pを満たすYが唯一存在する場合にpに対し定義域Iを有し、Y=f(X)を満たす1価関数f(X)が存在する。関数f(X)が微分可能でかつ|∂f(X)/∂X|≦1を満たすpの集合をGと定義し、このGの要素を「擬似波面(Quasi Wavefront)」と呼称することとする。
【0015】
式1が満たされる場合、境界からの直接散乱波は、目標境界面(目標の物体Oの表面、目標の物体Oの形状を表す)の情報を保持している。以下では、簡単のため、直接波の伝播経路は、全て真空であるとするが、伝播速度が一定で既知である媒質でも同様に成立する。
【0016】
図7は、境界散乱変換を説明するための図である。図7(A)は、r-領域における複素誘電率の変化の一例を示し、図7(B)は、図7(A)に対応するd-領域の擬似波面を示す。
【0017】
pがqからの直接散乱に対応すると仮定すると、図7から分かるように、送受信アンテナAからqの表す曲線Lqへ下ろした垂線の長さと送受信アンテナAの位置との関係を用いることで、p上の点(X,Y)は、式4によって表される。この式4によって表される変換を境界散乱変換(Boundary Scattering Transform)と呼称することとする。
【0018】
【数4】
JP0004143728B2_000005t.gif

【0019】
但し、(x,y)は、q上に存在する点である。
【0020】
この境界散乱変換の逆変換を求めれば、受信波形から目標の物体Oの形状を求めることができる。この逆変換は、式5のように求められる。この逆変換を逆境界散乱変換(Inverse Boundary Scattering Transform)と呼称することとする。
【0021】
【数5】
JP0004143728B2_000006t.gif

【0022】
なお、上述では、2次元の場合について説明したが、3次元へ容易に拡張可能である。また、送受信アンテナAが直線で走行する場合について説明したが、任意の曲線に沿った走行に対応する変換式も容易に求めることができる。
【0023】
この式5を用いて受信波形から目標の物体Oの形状を推定するSEABED法は、具体的には、次のように処理が実行され、目標の物体Oの形状を測定している。
【0024】
図8は、SEABED法による物体の形状を測定する処理手順を示すフローチャートである。図8において、従来のSEABED法による形状測定装置1000(不図示)は、図6に示すように、無指向性の送受信アンテナAを走査しながら各測定位置xでモノサイクルパルスの送信パルスを送信し、目標の物体Oから反射した送信パルスの反射波を受信し、受信波をアナログ/ディジタル変換(以下、「A/D変換」と略記する。)し、記憶する(S101)。
【0025】
即ち、形状測定装置1000は、まず、測定開始位置xにおいて無指向性の送受信アンテナAからモノサイクルパルスの送信パルスを送信し、目標の物体Oから反射した送信パルスの反射波を受信し、受信波をA/D変換して第1受信信号を生成し、記憶する。測定開始位置xにおける送受信が完了すると、形状測定装置1000は、測定開始位置xから所定の間隔だけ移動した測定位置xにおいて送受信アンテナAからモノサイクルパルスの送信パルスを送信し、目標の物体Oから反射した送信パルスの反射波を受信し、受信波をA/D変換して第2受信信号を生成し、記憶する。以下同様に、測定開始位置xから測定終了位置xまでの各測定位置xで、形状測定装置1000は、送受信アンテナAからモノサイクルパルスの送信パルスを送信し、目標の物体Oから反射した送信パルスの反射波を受信し、受信波をA/D変換し、記憶する。こうして測定開始位置xにおける第1受信信号から測定終了位置xにおける第N受信信号が得られる。
【0026】
次に、形状測定装置1000は、第1乃至第Nの各受信信号に対し、当該受信信号の波形と参照信号の波形との相互相関を求めることによって、第1乃至第Nの各受信信号にそれぞれ対応する第1乃至第Nの相関波形を求める(S102)。相関関数ρ(τ)は、遅延時間をτ、参照信号をr(t)、受信信号をs(t)とすると、式6で与えられる。なお、積分範囲は、受信信号s(t)が存在する範囲である。
【0027】
【数6】
JP0004143728B2_000007t.gif

【0028】
ここで、参照信号の波形は、送信パルスの波形としており、これは、受信信号の波形が送信パルスの波形と同一形状であると仮定していることに相当する。この処理S102は、受信信号に整合フィルタを適用することに相当する。
【0029】
次に、形状測定装置1000は、第1乃至第Nの相関波形における極値(極大値及び極小値)を求める(S103)。
【0030】
次に、形状測定装置1000は、近隣の極値同士を連結する(S104)。より具体的には、形状測定装置1000は、式7を満たすようように極値を連結する。
【0031】
【数7】
JP0004143728B2_000008t.gif

【0032】
ここで、極値Mの位置は、測定位置xにおいて得られた第nの相関波形から求められた極値のXY平面における位置である。このように極値を連結して得られた曲線が擬似波面である。
【0033】
次に、形状測定装置1000は、真の擬似波面を抽出する(S105)。処理S104によって得られた擬似波面には、雑音により生じたもの、振動的な部分を抽出したもの、及び、多重散乱により生じたもの等の不要な擬似波面が含まれている。このため、これらを取り除き、真に物体Oの境界面を示す真の擬似波面を抽出する必要がある。この真の擬似波面の抽出は、第1に、式8で定義される評価値wを用い、所定の閾値αよりも評価値wが大きい擬似波面を選択し、抽出する。閾値αは、その値を小さくし過ぎると不要な擬似波面が多く含まれ、その値を大きくし過ぎると真の擬似波面まで除去されてしまうので、評価値wの最大値を考慮の上、実験的、経験的に設定される。
【0034】
【数8】
JP0004143728B2_000009t.gif

【0035】
評価値wは、擬似波面上における受信信号の振幅が大きく、しかもfp(X)の定義域が広い範囲に渡るものについて大きな値をとる。
【0036】
ここで、式8のみによって真の擬似波面を抽出すると、例えば雑音に起因する擬似波面が有意な擬似波面の近くに存在する場合ではその評価値wが大きくなり、除去することができない場合が生じ得る。そのため、p,p∈G、p≠p、wp1≦wp2に対し(x,y)∈pかつ(x,y)∈pが成立する場合には、p→p’、p”(但し、p’∪p”=pかつp’∩p”=p∩p)に擬似波面の分割を行って評価値wを求め不要な擬似波面を除去する。
【0037】
そして、真の擬似波面の抽出は、第2に、第1フレネルゾーンとして知られる式9で表されるFを用いて式10で定義される新たな評価値Wを用い、所定の閾値βよりも評価値Wが大きい擬似波面を選択し、抽出する。閾値βは、その値を小さくし過ぎると不要な擬似波面が多く含まれ、その値を大きくし過ぎると真の擬似波面まで除去されてしまうので、評価値Wの最大値を考慮の上、実験的、経験的に設定される。
【0038】
【数9】
JP0004143728B2_000010t.gif

【0039】
【数10】
JP0004143728B2_000011t.gif

【0040】
評価値Wは、或る擬似波面のフレネルゾーン内に値の大きい別の境界面が存在する場合にはその値が低下する。ξ(x)は、重み関数であり、簡単のために、例えば、ξ(x)=1に設定する。
【0041】
このように抽出された真の擬似波面は、各測定位置で得られる、送信パルスを送信してから、目標の物体Oの表面における接平面に対し垂直に入射して反射した送信パルスの反射波を直接受信するまでの時間の集合である。
【0042】
次に、形状測定装置1000は、処理S105で抽出した真の擬似波面から式5を用いて物体Oの形状を求める(S106)。
【0043】
このようにSEABED法では、目標の物体Oの形状を逆変換の式5により直接的に推定することができるので、極めて短時間で物体Oの形状を測定することができる。
【0044】
図9は、目標の物体を示す図である。図10は、第1乃至第Nの受信信号を示す図である。図11は、第1乃至第Nの相関波形を示す図である。図12は、図9に示す物体に対する極値をプロットした図である。図13は、図9に示す物体に対する擬似波面を示す図である。図14は、抽出した真の擬似波面を示す図である。図15は、真の擬似波面から求めた物体の形状を示す図である。なお、図9における小さなアンテナマークは、送受信アンテナAの走査中における各測定位置xを示しており、0.125λ間隔で40点としている。また、図15において、破線は、式5によって求めた物体Oの形状を示し、実線は、実際の物体Oの形状を示す。
【0045】
例えば、図9に示す平面の一部に略半円形状の凹部を有する目標の物体Oに対し、処理S101を実行すると図10が得られる。これに処理S102を実行すると図11が得られる。これに処理S103を実行すると図12が得られる。これに処理S104を実行すると図13が得られる。これに処理S105を実行すると図14が得られる。そして、これに処理S106を実行すると図15の破線が得られる。なお、物体Oに対する擬似波面をFDTD(Finite Difference Time Domain)法で計算した結果を図16に示す。FDTD法は、Maxwellの方程式を差分化し、リープフロッグアルゴリズム(Leap-flog algorithm)で電界と磁界とを交互に計算することによって時間領域で解く方法である。

【非特許文献1】阪本卓也、佐藤亨、「UWBパルスレーダシステムのためのノンパラメトリックな目標形状推定法」、電子情報通信学会技術研究報告、A・P2003-36、103巻120号、1~6頁、2003年6月19日
【非特許文献2】阪本卓也、佐藤亨、「パルスレーダを用いた高分解能形状推定のための位相補正法」、電子情報通信学会技術研究報告、A・P2004-72、104巻202号、37~42頁、2004年7月22日
【非特許文献3】木寺正平、阪本卓也、佐藤亨、「UWBパルスレーダのための高精度物体形状推定法の開発」、電子情報通信学会研究報告、A・P2004-131、104巻283号、41~46頁、2004年9月9日
【非特許文献4】Takuya SAKAMOTO,Toru SATO,”A Target Shape Estimation Algorithm for pulse Radar Systems based on Boundary Scattering Transform”,IEICE TRANSACTIONS on Communications,Vol.E87-B,No.5,MAY 2004,pp1357-1365
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0046】
ところで、背景技術に係るSEABED法では、相関波形を求める際に、受信信号の波形が送信パルスの波形と同一形状であると仮定している。このため、受信信号の波形が送信パルスの波形と相違すると、求めた目標の物体の形状に両波形の差分に応じた誤差が生じるという不都合があった。特に、目標の物体が点であったり、目標の物体に角があったりすると、このような点や角で反射した送信パルスの反射波における波形は、異なった波形となってしまうため、例えば図15を見ると分かるように、求めた物体の形状に誤差が生じてしまう。
【0047】
本発明は、上記事情に鑑みて為された発明であり、受信信号の波形が送信パルスの波形と相違する場合でも、物体の形状をより精度よく求めることができるSEABED法による形状測定装置及び形状測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0048】
本発明者らは、種々検討した結果、上記目的は、以下の本発明により達成されることを見出した。即ち、本発明に係る一態様では、物体の形状を測定する形状測定装置は、パルスを生成して送信パルスとして空間に放射するパルス生成放射部と、前記送信パルスを放射した位置で前記物体で反射した前記送信パルスの反射波を受信信号として受信する受信部と、前記物体に対して前記パルス生成放射部の位置を変えながら前記送信パルスを放射することによって前記受信部で受信された複数の受信信号の波形と参照信号の波形との相互相関をそれぞれ求めることで複数の相関波形を求める相関部と、前記相関部で求められた複数の相関波形に基づいて擬似波面を抽出して擬似波面と物体の形状との対応関係から前記物体の形状を推定する形状推定部と、前記形状推定部で推定した物体の形状に応じた受信信号の波形を推定する波形推定部とを備え、前記参照信号の波形として最初は前記送信パルスの波形を用いると共に次回以降は前記波形推定部で推定した受信信号の波形を用い、前記物体の形状を複数回推定することによって前記物体の形状を求めることを特徴とする。
【0049】
そして、本発明に係る他の一態様では、物体の形状を測定する形状測定方法は、パルスを生成して送信パルスとして空間に放射するパルス生成放射ステップと、前記送信パルスを放射した位置で前記物体で反射した前記送信パルスの反射波を受信信号として受信する受信ステップと、前記物体に対して前記送信パルスを放射する位置を変えながら前記送信パルスを放射することによって受信された複数の受信信号の波形と参照信号の波形との相互相関をそれぞれ求めることで複数の相関波形を求める相関ステップと、前記相関ステップで求めた前記複数の相関波形に基づいて擬似波面を抽出して擬似波面と物体の形状との対応関係から前記物体の形状を推定する形状推定ステップと、前記形状推定ステップで推定した物体の形状に応じた受信信号の波形を推定する波形推定ステップとを備え、前記参照信号の波形として最初は前記送信パルスの波形を用いると共に次回以降は前記波形推定ステップで推定した受信信号の波形を用い、前記物体の形状を複数回推定することによって前記物体の形状を求めることを特徴とする。
【0050】
また、より精度よく物体の形状を測定することができる観点から、前記送信パルスは、中心周波数に対する占有帯域幅の比である比帯域が20%以上であるパルスやUWBパルスやモノサイクルパルスが好ましい。
【発明の効果】
【0051】
このような構成の形状測定装置及び形状測定方法は、受信信号の波形が送信パルスの波形と相違する場合でも、物体の形状をより精度よく求めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0052】
以下、本発明に係る実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、その説明を省略する。
(実施形態の構成)
図1は、実施形態における形状測定装置の構成を示す図である。図1において、本発明の実施形態に係る形状測定装置1は、送信アンテナAと、受信アンテナAと、信号生成部11と、信号受信部12と、演算処理部13と、インタフェース部14と、入力部15と、出力部16と、記憶部17と、バス18とを備えて構成される。
【0053】
送信アンテナAは、信号生成部11で生成された電気信号のパルスを電波の送信パルスに変換して空間に放射する無指向性のアンテナである。受信アンテナAは、目標の物体Oで反射した送信パルスの反射波を受信して電気信号の受信波に変換し、この受信波を信号受信部12に出力するアンテナである。なお、送信アンテナAと受信アンテナAとは、送受信アンテナAとして1個のアンテナで兼用してもよい。
【0054】
送信パルスは、電磁波のエネルギーが所定の時間範囲に集中している電波である。送信パルスにおける中心周波数fに対する占有帯域幅Bの比である比帯域B/fが大きくなるに従って測定精度が向上する。ここで、パワースペクトルの最大値に対し-10dBとなる周波数のうちで大きい方及び小さい方をそれぞれf及びfとすると、中心周波数fは、(f+f)/2であり、占有帯域幅Bは、(f-f)である。特に、比帯域B/fが20%以上では測定精度が背景技術の欄で説明した従来のSEABED法に較べて数倍に向上する。このような送信パルスは、例えば、米国FCC(Federal Communications Commission)に定義されているUWB(Ultra Wide Band)のパルスがある。米国FCCの定義は、例えば、「Subpart F-Ultra-Wideband Operation §15.503 Definitions」[online]、平成17年6月3日検索、インターネット<URL:http://a257.g.akamaitech.net/7/257/2422/12feb20041500/edocket.access.gpo.gov/cfr_2004/octqtr/pdf/47cfr15.503.pdf>に開示されている。また、送信パルスは、測定精度を向上させる観点からモノサイクルパルスでもよい。
【0055】
信号生成部11は、インタフェース部14を介した演算処理部13の制御に従って送信すべき送信パルスに応じた電気信号のパルスを生成し、送信アンテナAに出力する。信号受信部12は、受信アンテナAから入力された受信波をA/D変換し、インタフェース部14を介して受信信号として記憶部17に記憶する。なお、信号受信部12は、受信アンテナAから入力された受信波を必要に応じて、増幅してもよい。また、送信アンテナAが放射した電波を受信アンテナAが直接受信する直接波は、散乱波を測定する上で不要な干渉波となるので、信号処理部12は、A/D変換前に、あるいは、A/D変換後に、この直接波を除去する処理を行ってもよい。この直接波の除去処理は、目標の物体Oが存在しない場合における受信信号d(t)の波形を予め記憶しておき、s(t)-d(t+τa)を計算することによって直接波を除去する。s(t)は、散乱波の測定中における受信信号であり、τaは、s(t)と信号d(t+τa)との相関が最大と成る場合である。ここで、受信アンテナAに対し、目標の物体Oが送信アンテナAに較べて遠方にあるために、直接波の受信時刻帯と散乱波の受信時刻帯とが時間的に分離することができる場合には、直接波の受信時刻帯は、受信信号を測定しない、あるいは、無視することによっても直接波を除去することができる。
【0056】
インタフェース部14は、信号生成部11、信号受信部12、演算処理部13及び記憶部17の間で相互に信号を交換するためのインタフェース回路である。入力部15は、本発明の手法により目標の物体の形状を測定する形状測定プログラムを起動するコマンドや送信パルスの送受信を指示するコマンド等の各種コマンド、及び、閾値αや閾値β等の必要な各種データを形状測定装置1に入力する機器であり、例えば、キーボードやマウス等である。出力部16は、入力部15から入力されたコマンドやデータ、及び、本形状測定装置1によって測定された物体の形状を出力する機器であり、例えばCRTディスプレイ、LCD、有機ELディスプレイ又はプラズマディスプレイ等の表示装置やプリンタ等の印刷装置等である。
【0057】
記憶部17は、信号受信部12からの受信信号を記憶する受信信号記憶部171と、後述の相関部131で求められた相関波形を記憶する相関波形記憶部172とを備え、形状測定プログラム等の各種プログラム、及び、各種プログラムの実行に必要なデータやその実行中に生じるデータ等の各種データを記憶する。記憶部17は、例えば、演算処理部13の所謂ワーキングメモリとなるRAM(Random Access Memory)等の揮発性の記憶素子、ROM(Read Only Memory)や書換え可能なEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)等の不揮発性の記憶素子、及び、各種プログラムや各種データを格納しておくハードディスク等を備えて構成される。
【0058】
演算処理部13は、例えば、マイクロプロセッサ及びその周辺回路等を備えて構成され、機能的に、受信信号の波形と参照信号の波形との間における相互相関を演算して相関波形を求める相関部131と、複数の相関波形に基づいて真の擬似波面を抽出する擬似波面抽出部132と、抽出した真の擬似波面から目標の物体Oの形状を推定する形状推定部133と、推定した物体Oの形状に応じた送信パルスに対応する受信信号の波形を推定する波形推定部134とを備え、制御プログラムに従い信号生成部11、信号受信部12、インタフェース部14、入力部15、出力部16及び記憶部17を当該機能に応じてそれぞれ制御する。
【0059】
これら演算処理部13、インタフェース部14、入力部15、出力部16及び記憶部17は、信号を相互に交換することができるようにバス18でそれぞれ接続される。
【0060】
このような演算処理部13、インタフェース部14、入力部15、出力部16、記憶部17及びバス18は、例えば、コンピュータ、より具体的にはノート型やディスクトップ型等のパーソナルコンピュータ等によって構成可能である。そして、信号生成部11、送信アンテナA、受信アンテナA及び信号受信部もレーダに用いられる公知の構成によって構成可能である。
【0061】
なお、必要に応じて形状測定装置1は、破線で示すように、外部記憶部19をさらに備えてもよい。外部記憶部19は、例えば、フレキシブルディスク、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、CD-R(Compact Disc Recordable)及びDVD-R(Digital Versatile Disc Recordable)等の記録媒体との間でデータを読み込み及び/又は書き込みを行う装置であり、例えば、フレキシブルディスクドライブ、CD-ROMドライブ、CD-Rドライブ及びDVD-Rドライブ等である。
【0062】
ここで、形状測定プログラム等が格納されていない場合には、形状測定プログラム等を記録した記録媒体から外部記憶部19を介して記憶部17にインストールされるように構成してもよい。あるいは、取得した受信信号や推定した物体の形状を表すデータ等のデータが外部記憶部19を介して記録媒体に記録されるように構成してもよい。
【0063】
次に、本実施形態の動作について説明する。
(実施形態の動作)
図2は、実施形態における形状測定装置の動作を示すフローチャートである。図2において、形状測定装置1は、図6を参照しながら説明した従来の形状測定装置1000と同様に、送信アンテナA及び受信アンテナAを走査しながら各測定位置xで送信パルスを送信し、目標の物体Oから反射した送信パルスの反射波を受信し、受信波をA/D変換し、記憶する(S11)。
【0064】
より具体的には、例えば、ユーザが目標の物体Oに対し測定開始位置xに送信アンテナA及び受信アンテナAを配置し、形状測定装置1に入力部15を介して送信パルスの送受信を指示する。この指示を受付けると、演算処理部13は、信号生成部11に送信パルスを生成させ、送信アンテナAから送信パルスを送信する。目標の物体Oから反射した送信パルスの反射波が受信アンテナAで受信されると、信号受信部12は、受信波をA/D変換して第1受信信号を生成し、記憶部17の受信信号記憶部171に測定位置xと対応付けて記憶する。測定開始位置xにおける送受信が完了すると、その旨を出力部16に提示してユーザに通知する。この通知を受けるとユーザは、測定開始位置xから所定の間隔だけ移動した測定位置xに送信アンテナA及び受信アンテナAを配置し、形状測定装置1に入力部15を介して送信パルスの送受信を指示する。この指示を受付けると、演算処理部13は、信号生成部11に送信パルスを生成させ、送信アンテナAから送信パルスを送信する。目標の物体Oから反射した送信パルスの反射波が受信アンテナAで受信されると、信号受信部12は、受信波をA/D変換して第2受信信号を生成し、記憶部17の受信信号記憶部171に測定位置xと対応付けて記憶する。測定位置xにおける送受信が完了すると、その旨を出力部16に提示してユーザに通知する。以下同様に、測定開始位置xから測定終了位置xまでの各測定位置xで、形状測定装置1は、送信アンテナAから送信パルスを送信し、目標の物体Oから反射した送信パルスの反射波を送信アンテナAで受信し、信号受信部12で受信波をA/D変換し、記憶部17の受信信号記憶部171に測定位置xと対応付けて記憶する。こうして測定開始位置xにおける第1受信信号から測定終了位置xにおける第N受信信号が得られ、記憶部17の受信信号記憶部171に記憶される。
【0065】
なお、上述では、送信アンテナA及び受信アンテナAをユーザが各測定位置xに移動させたが、車輪や無限軌道等の運動部材と、運動部材を駆動する例えばモータ等の駆動装置と、駆動装置を演算処理部13の制御に従って制御する例えばマイクロコンピュータ等の制御装置と、駆動装置及び制御装置にエネルギーを供給するエネルギー源とを備えた走行装置に少なくとも送信アンテナA及び受信アンテナAを載せ、送信アンテナA及び受信アンテナAを走行装置で移動させることにより、送信アンテナA及び受信アンテナAを走査しながら各測定位置xで送信パルスを送信し、目標の物体Oから反射した送信パルスの反射波を受信し、受信波をA/D変換し、記憶するように構成してもよい。
【0066】
測定開始位置xにおける第1受信信号から測定終了位置xにおける第N受信信号が得られ、記憶部17の受信信号記憶部171に記憶されると、演算処理部13の相関部131は、第1乃至第Nの各受信信号に対し、当該受信信号の波形と参照信号の波形との相互相関を求めることによって、第1乃至第Nの各受信信号にそれぞれ対応する第1乃至第Nの相関波形を求める(S12)。ここで、最初に相関波形を求める場合には、参照信号の波形として送信パルスの波形が用いられる。
【0067】
第1乃至第Nの相関波形が生成されると、演算処理部13の擬似波面抽出部132は、第1乃至第Nの相関波形に基づいて、極値を求め(S13)、極値を連結して擬似波面を生成し(S14)、真の擬似波面を抽出する(S15)。
【0068】
これら処理S13乃至処理S15の各処理は、背景技術の欄で図8を用いて説明した処理S103乃至処理S105の各処理と同様であるので、その説明を省略する。
【0069】
真の擬似波面が抽出されると、演算処理部13の形状推定部133は、処理S15で抽出した真の擬似波面から式5を用いて物体Oの形状を求める(S16)。
【0070】
次に、形状推定部133は、処理S12乃至処理16の各処理の繰り返しを終了すべきか否かを判断する(S17)。この判断は、例えば、処理S12乃至処理16の各処理を繰り返し実行すべき上限回数(例えば5回や7回や10回等)を予め設定しておき、これら各処理が実行された繰り返し回数がこの設定した上限回数に到達した場合に、これら各処理の繰り返しが終了したと判断する。また例えば、この判断は、前回求めた物体Oの形状と今回求めた物体Oの形状とを比較し、予め定めた閾値γ内で両物体の形状が一致する場合に、これら各処理の繰り返しが終了したと判断する。閾値γは、経験的、実験的に予め決定される。
【0071】
判断の結果、形状推定部133が未終了と判断した場合(No)には、波形推定部134は、この求めた物体Oの形状から受信信号の波形(直接散乱波の波形)を求め、この求めた受信信号の波形を新たな参照波形として処理S12に戻す(S21)。この物体Oの形状から受信波形の波形を求める手法は、様々な手法が公知であり、様々な手法を用いることができる。これら手法は、例えば、『山下榮吉編著、「電磁波問題解析の実際」、電子情報通信学会、第1版、平成5年3月5日発行』や『山下榮吉編著、「電磁波問題の基礎解析法」、電子情報通信学会、第2版、平成元年5月20日発行』等に記載されている。代表例を挙げると、例えば、上述のFDTD法、フレネル積分法、モーメント法、GTD法、物理光学近似法、有限要素法、境界要素法及び等価波源法等がある。
【0072】
一例として、フレネル積分法の例を挙げると、受信信号の波形は、式11によって求めることができる。
【0073】
【数11】
JP0004143728B2_000012t.gif

【0074】
ここで、R(ω)は、r(t)のフーリエ変換であり、gは、グリーン関数であり、e(ω)は、周波数領域における送信パルスの波形である。
【0075】
式11に基づく情報処理についてより具体的に説明すると、まず、処理S16で求めた物体Oの形状における境界と送信アンテナA及び受信アンテナAの位置との間における全ての経路を探索し、各々の経路長に対応するグリーン関数を乗じ、この乗じた各送信信号を全て足し合わせ、そして、この全て足し合わせた信号に-(jω)1/2の周波数特性を持つフィルタを作用させて受信信号の波形を求める。
【0076】
処理が処理S12に戻されると、相関部131は、この処理S21で求められた受信信号の波形を新たな参照波形として、第1乃至第Nの各受信信号に対し、当該受信信号の波形と参照信号の波形との相互相関を求めることによって、第1乃至第Nの各受信信号にそれぞれ対応する第1乃至第Nの相関波形を求める(S12)。このように2回目以降では、相関波形を求める場合に、参照信号の波形として処理S21で求めた受信信号の波形が用いられる。
【0077】
以下同様に、処理S13乃至処理S17が実行され、処理S17で処理S12乃至処理16の各処理の繰り返しが終了したと判断されるまで、処理S12乃至処理16の各処理及び処理S21が繰り返される。この処理S12乃至処理S16の各処理及び処理S21が繰り返されるに従って、推定される物体Oの形状が反復改良されて行く。
【0078】
一方、処理S17における判断の結果、形状推定部133が終了と判断した場合(Yes)には、演算処理部13は、この求めた物体の形状を出力部16に出力し(S18)、処理を終了する。
【0079】
このように動作することによって形状測定装置1は、受信信号の波形が送信パルスの波形と相違する場合でも、物体Oの形状をより精度よく求めることができる。例えば、目標の物体Oが点である場合や、目標の物体Oに角がある場合でも、物体Oの形状をより精度よく、正しく求めることができる。
【0080】
理論的には、送信パルス長の1/100程度の分解能で物体Oの形状を求め得る。例えば、送信パルスに波長10cmのマイクロ波モノサイクルパルスを用いた場合には、1mmの精度で理論的には目標の物体Oの形状を測定することができる。
(実施例及び比較例)
この形状測定装置1を用いて具体的な目標の物体Oの形状を求めた結果の一例について説明する。図3は、目標の物体における実際の形状を示す図である。図4は、本発明に係る形状測定装置によって求められた物体の形状を示す図である。図5は、背景技術に係る形状測定装置によって求められた物体の形状を示す図である。なお、図4及び図5において、実線が実際の形状を示し、破線が求めた形状を示す。
【0081】
目標の物体Oは、略均一な導体であって、その実際の形状は、図3に示すように、右下がりの直線部分LNと、x/λ軸に平行な直線部分LNと、右上がりの直線部分LNとから成り、直線部分LNと直線部分LNとの連結部分及び直線部分LNと直線部分LNとの連結部分にそれぞれ内角略135度の角CN及び角CNを備える台形状である。
【0082】
この物体Oの形状を背景技術に係る形状測定装置1000によって測定すると、図5に示すように、角のない滑らかな曲線CVが求められ、角CN及び角CNの部分が正しく測定されていない。曲線CVは、直線部分LN及び直線部分LNおいてそれぞれ交差すると共に直線部分LNにおいて2回交差するx/λ軸へ向かって凸な曲線となっている。このように測定結果は、直線となるべき直線部分LN、直線部分LN及び直線部分LNに相当する部分がそれぞれ曲線になっており、各直線部分LN、LN、LNから乖離している。
【0083】
一方、この物体Oの形状を本発明に係る形状測定装置1によって測定すると、図4に示すように、2個の角を持ち各角がそれぞれ角CN及び角CNに略一致した折れ線BLが求められ、角CN及び角CNの部分が正しく測定されている。さらに、折れ線BLは、各直線部分LN~LNとも略一致しており、目標の物体Oの形状がより正しく測定されている。
【0084】
なお、上述の実施形態では、2次元の場合について説明したが、3次元へ容易に拡張可能である。例えば、垂直方向に所定の間隔で並ぶ各測定位置において、水平方向に上述した2次元の場合における形状をそれぞれ測定することによって、3次元形状を得ることができる。
【0085】
また、上述の実施形態では、送信パルスに電波を用いたが、超音波や光を用いてもよい。超音波の短パルスは、公知の技術によって生成することができ、超音波短パルスについては、例えば、『椿健治、山中浩、北田耕作、菰田卓哉、越田信義、「熱誘起ナノ結晶Si超音波源の空中3次元イメージセンサへの応用-超音波源の動特性評価-」、Proc.Symp.Ultrason.Electron.、Vol.25(2004)、pp339-340』に開示されている。例えば、中心周波数50kHzの超音波モノサイクルパルスを用いた場合には、室温(25℃)において、音速が331.5+0.6×25=346.5m/秒となって波長が7mm程度になるので、1/100の70μmの精度で理論的には目標の物体Oの形状を測定することができる。
【0086】
さらに、光の短パルスは、公知の技術によって生成されるフェムト秒光パルスを利用することができる。フェムト秒光パルスについては、例えば、『「超短光パルス技術評価ラボ」、電子技術総合研究所彙報、第64巻、第7号、pp11-13』に開示されている。例えば、1.3μm帯で20fsのフェムト秒光パルスを用いた場合には、波長が6μm程度になるので、1/100の60nmの精度で理論的には目標の物体Oの形状を測定することができる。また、例えば、0.8μm帯で11fsのフェムト秒光パルスを用いた場合には、波長が3.3μm程度になるので、1/100の30nmの精度で理論的には目標の物体Oの形状を測定することができる。
【0087】
このような超音波短パルスやフェムト秒光パルスを利用することによって高分解能の顕微鏡が構成される。
【0088】
また、本発明を表現するために、上述において図面を参照しながら実施形態を通して本発明を適切且つ十分に説明したが、当業者であれば上述の実施形態を変更及び/又は改良することは容易に為し得ることであると認識すべきである。従って、当業者が実施する変更形態又は改良形態が、請求の範囲に記載された請求項の権利範囲を離脱するレベルのものでない限り、当該変更形態又は当該改良形態は、当該請求項の権利範囲に包括されると解釈される。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】実施形態における形状測定装置の構成を示す図である。
【図2】実施形態における形状測定装置の動作を示すフローチャートである。
【図3】目標の物体における実際の形状を示す図である。
【図4】本発明に係る形状測定装置によって求められた物体の形状を示す図である。
【図5】背景技術に係る形状測定装置によって求められた物体の形状を示す図である。
【図6】SEABED法におけるアンテナ走査の様子を説明するための図である。
【図7】境界散乱変換を説明するための図である。
【図8】SEABED法による物体の形状を測定する処理手順を示すフローチャートである。
【図9】目標の物体を示す図である。
【図10】第1乃至第Nの受信信号を示す図である。
【図11】第1乃至第Nの相関波形を示す図である。
【図12】図9に示す物体に対する極値をプロットした図である。
【図13】図9に示す物体に対する擬似波面を示す図である。
【図14】抽出した真の擬似波面を示す図である。
【図15】真の擬似波面から求めた物体の形状を示す図である
【図16】FDTD法で計算した図9に示す物体に対する擬似波面の計算結果を示す図である。
【符号の説明】
【0090】
1 形状測定装置
11 信号生成部
12 信号受信部
13 演算処理部
17 記憶部
131 相関部
132 擬似波面抽出部
133 形状推定部
134 波形推定部
171 受信信号記憶部
172 相関波形記憶部
送信アンテナ
受信アンテナ
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14
【図16】
15