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明細書 :ポリ塩素化ビフェニルの分解処理方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3914995号 (P3914995)
公開番号 特開2007-061706 (P2007-061706A)
登録日 平成19年2月16日(2007.2.16)
発行日 平成19年5月16日(2007.5.16)
公開日 平成19年3月15日(2007.3.15)
発明の名称または考案の名称 ポリ塩素化ビフェニルの分解処理方法
国際特許分類 C02F   1/28        (2006.01)
C02F   1/32        (2006.01)
B01J  20/22        (2006.01)
FI C02F 1/28 Z
C02F 1/32
B01J 20/22 B
請求項の数または発明の数 10
全頁数 12
出願番号 特願2005-249422 (P2005-249422)
出願日 平成17年8月30日(2005.8.30)
審査請求日 平成18年8月8日(2006.8.8)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304024430
【氏名又は名称】国立大学法人北陸先端科学技術大学院大学
発明者または考案者 【氏名】辻本 和雄
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】100105809、【弁理士】、【氏名又は名称】木森 有平
【識別番号】100126398、【弁理士】、【氏名又は名称】浅野 典子
審査官 【審査官】齊藤 光子
参考文献・文献 特開2003-226755(JP,A)
特開2005-281372(JP,A)
特開平05-049927(JP,A)
特開2003-226737(JP,A)
調査した分野 C02F1/28
B01J20/00-34
A62D1/00-9/00
特許請求の範囲 【請求項1】
水溶液中において、ポリ塩素化ビフェニルに疎水性場を有する親水性ホスト化合物を作用させることにより包接錯体を形成した後、前記包接錯体を含む水溶液に光照射することにより前記親水性ホスト化合物を分解することなくポリ塩素化ビフェニルを分解することを特徴とするポリ塩素化ビフェニルの分解処理方法。
【請求項2】
前記親水性ホスト化合物がシクロデキストリンまたはその誘導体であり、前記ポリ塩素化ビフェニルをゲスト化合物として包接錯体を形成することを特徴とする請求項1記載のポリ塩素化ビフェニルの分解処理方法。
【請求項3】
前記シクロデキストリンがβ-シクロデキストリンであることを特徴とする請求項2記載のポリ塩素化ビフェニルの分解処理方法。
【請求項4】
前記親水性ホスト化合物に電子供与性の置換基を導入することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載のポリ塩素化ビフェニルの分解処理方法。
【請求項5】
前記電子供与性の置換基がアミノ基またはアミド基であることを特徴とする請求項4記載のポリ塩素化ビフェニルの分解処理方法。
【請求項6】
前記水溶液に電子供与体を添加することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載のポリ塩素化ビフェニルの分解処理方法。
【請求項7】
前記電子供与体がジエチルアミン、トリエチルアミン、アンモニアから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項6記載のポリ塩素化ビフェニルの分解処理方法。
【請求項8】
前記光照射が紫外線照射であることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項記載のポリ塩素化ビフェニルの分解処理方法。
【請求項9】
低圧水銀灯を用いて前記紫外線照射を行ってポリ塩素化ビフェニルを分解した後、前記親水性ホスト化合物を有機溶媒で洗浄して再利用することを特徴とする請求項1から8のいずれか1項記載のポリ塩素化ビフェニルの分解処理方法。
【請求項10】
前記有機溶媒がヘキサンであることを特徴とする請求項9記載のポリ塩素化ビフェニルの分解処理方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリ塩素化ビフェニル(PCB)のような有機塩素化合物を分解処理するための分解処理方法に関するものであり、水溶液中での分解処理を可能とする新規な分解処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の環境汚染の原因物質には、その利便性から大量且つ多方面に使用され、その結果として環境中に放出されて広範囲に広がってしまったものが多く見受けられる。例えば、界面活性剤や有機塩素化合物等が代表例である。
【0003】
これらの中で、ポリ塩素化ビフェニル(PCB)のような有機塩素化合物は、化学的に安定であるため、自然界の浄化力や通常の排水処理方法等では十分に分解除去されず、水中や土壌中等に残り環境汚染物質となる。
【0004】
このような状況下、前記有機塩素化合物を分解処理する方法について、各方面で検討が進められており、例えば焼却炉で燃焼することにより酸化分解する方法が提案されている(例えば、特許文献1等を参照)。特許文献1には、炉本体での燃焼温度をPCBの酸化分解に必要な1400℃以上の分解温度で完全に燃焼処理するようにした方法が開示されており、これによりPCBを完全に、且つ分解効率良く酸化分解できるとしている。
【0005】
しかしながら、燃焼により有機塩素化合物を分解すると、塩素が酸素と結びついてダイオキシンとなり、却って環境破壊の原因となるおそれがある。ダイオキシンになると捕集が更に難しくなり、これを効率的に処理することは難しい。また、前記燃焼による分解は、例えば廃油等の形で回収されたものあれば、これを炉中に投入することで処理することが可能であるが、例えば水中や土壌中に残存する有機塩素化合物の分解には適さない。
【0006】
そこで、本発明者は、有機溶媒中で脂肪族アミン存在下、光照射により有機塩素化合物を分解する技術を開発した(非特許文献1を参照)。この非特許文献1記載の発明では、例えばアセトニトリル中、トリエチルアミンの存在下で低圧水銀ランプにより光照射を行うことで、4-クロロビフェニル(MCB)がビフェニルと塩素に分解されることを確認している。

【特許文献1】特開平7-91638号公報
【非特許文献1】Journal of The Chemical Society Chemical Communications p384 (1973)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、前記非特許文献1記載の方法は、前記燃焼による分解と比べてダイオキシンの発生がないこと、水中や土壌中の有機塩素化合物についても適用可能であること等の利点を有するものの、有機溶媒中で分解反応を行っているために、新たな問題が発生している。具体的には、前記有機溶媒として用いているアセトニトリルは毒性が強く、作業者の健康上の問題があり、またその処理が問題になる。
【0008】
本発明は、このような従来技術の課題に鑑みて提案されたものであり、ダイオキシン等の有害物質を発生することがなく、水中や土壌中等の有機塩素化合物を効率的に分解処理することが可能で、しかも水溶液中において有機塩素化合物を効率的に分解処理することが可能な有機塩素化合物の分解処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、前述の目的を達成するために、長期に亘り種々の研究を重ねてきた。その結果、疎水性場を有する親水性ホスト化合物によって有機塩素化合物を取り込むことで、水溶液中での処理が可能となることを見出すに至った。本発明は、このような知見に基づいて完成されたものであり、水溶液中において、ポリ塩素化ビフェニルに疎水性場を有する親水性ホスト化合物を作用させることにより包接錯体を形成した後、前記包接錯体を含む水溶液に光照射することにより前記親水性ホスト化合物を分解することなくポリ塩素化ビフェニルを分解することを特徴とする。
【0010】
例えばシクロデキストリンは、親水性の化合物であるが、その中心部分に疎水性場を有している。このような化合物を親水性ホスト化合物として有機塩素化合物を作用させると、前記疎水性場に有機塩素化合物をゲスト化合物として取り込んで包接錯体を形成する。この包接錯体は、前記ホスト化合物が有する性質(親水性)により、水溶液中に分散する。したがって、この水溶液中に分散した前記包接錯体に対して光照射を行い、有機塩素化合物の分解を行えば、有機塩素化合物の分解処理が水溶液中で行われることになる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、有機塩素化合物の分解処理を水溶液中で行うことができる。したがって、分解処理に際して有機溶媒を使用する必要がなく、作業者の健康上の問題や、使用済み有機溶媒の処理の問題等を解消することができる。また、本発明によれば、光照射によって有機塩素化合物を分解しているので、ダイオキシン等の有害な副産物を一切出さずに処理を行うことができる。さらに、本発明方法では、有機塩素化合物を親水性ホスト化合物に取り込むことでこれを濃縮し、効率的な分解処理を実現することができ、例えば水中や土壌中の有機塩素化合部物の処理に適用することが容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を適用した有機塩素化合物の分解処理方法について、図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
図1は、本発明の分解処理方法を模式的に示すものである。ここでは、有機塩素化合物として、4-クロロビフェニル(4-CBP)を例にして説明する。
【0014】
ここで用いるホスト化合物Hは、水酸基等の親水性基を有する化合物であり、例えば周囲aが親水性であり、中空になった中央部分bが疎水性場として機能する。このようなホスト化合物Hに対して、有機塩素化合物(例えば前記4-CBP)を水溶液中で作用させると、図1(b)に示すように、前記4-CBPはホスト化合物の中央部分b(疎水性場)に取り込まれ、例えば包接錯体HSを形成する。この包接錯体HSの形成により、有機塩素化合物(4-CBP)が捕集され、濃縮される。
【0015】
このように、水溶液中で前記ホスト化合物Hにより有機塩素化合物(4-CBP)を捕集し濃縮した後、光照射を行って前記有機塩素化合物(4-CBP)を分解する。照射する光としては、例えば紫外線である。紫外線を照射することにより、図1(c)に示すように、4-クロロビフェニルは塩素とビフェニル(BP)に分解される。前記分解に際しては、ビフェニル(BP)のみならず、これが2つ結合したQBP等も生成することが確認された。
【0016】
なお、前記光照射による有機塩素化合物の分解は、空気中等、任意の雰囲気中で行うことができるが、酸素を含まない雰囲気(例えば不活性ガス雰囲気)中で行うことが好ましい。前記光照射による分解反応では、酸素が存在することにより消光され、反応が遅くなるからである。
【0017】
以上が本発明の分解処理方法の基本的な構成であり、これによりポリ塩化ビフェニル(PCB)等の有機塩素化合物を効率的に分解処理することが可能である。また、前記分解処理方法は、前述の通り水溶液中で行われるので、反応に際して有機溶媒を使用する必要はない。
【0018】
前述の分解処理方法において、ホスト化合物Hとしては、親水基を有する親水性の化合物であって、且つ疎水性場を有する化合物であれば如何なる化合物も使用可能である。具体的には、シクロデキストリン及びその誘導体、キトサン及びその誘導体等を挙げることができる。
【0019】
シクロデキストリンは、グルコースが環状に重合した化合物であり、重合度が6であるα-シクロデキストリン、重合度が7であるβ-シクロデキストリン、重合度が8であるγ-シクロデキストリン等が知られている。前記ホスト化合物Hとしては、これらのいずれもが使用可能であるが、疎水性場のサイズと有機塩素化合物のサイズのマッチング等を考慮すると、β-シクロデキストリンが好適である。ホスト化合物Hとしてβ-シクロデキストリンを用いることで、有機塩素化合物の円滑な捕集、及び濃縮が行われる。
【0020】
化1にβ-シクロデキストリンの化学式を示す。また、図2にβ-シクロデキストリンを模式的に示す。β-シクロデキストリンは、前記の通り7つのグルコースが環状に重合したものであり、台形状に歪んだ円筒形状を有し、水酸基が外側に向かって配列しているので、周囲は親水的である。一方、環の内部は疎水的な環境になっており、多様な分子を包接する。本発明の分解処理においては、この疎水的な空間に有機塩素化合物を取り込むことで包接錯体HSを形成する。なお、β-シクロデキストリンは、シクロデキストリンの中で最も入手が容易で、安価であるという利点も有する。
【0021】
【化1】
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【0022】
前記ホスト化合物Hとしては、前記シクロデキストリンに限らず、同様の機能を有する化合物が使用可能であり、例えばそのような化合物としてキトサンを例示することができる。キトサンは、カニの甲羅等に含まれるキチンを脱アセチル化したものであり、化2に示す構造を有する。キトサンも水酸基やアミノ基を有することから親水性であり、また環状部分が疎水性場を構成する。
【0023】
【化2】
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【0024】
前記分解処理に際しては、水溶液中で前記ホスト化合物Hに有機塩素化合物を作用させればよいが、その後の光照射による分解を考えた場合、電子供与体が共存することが有効である。前記電子供与体が存在することで、光照射による分解が促進され、効率的に分解反応が進行する。
【0025】
この場合、前記電子供与体は、前記ホスト化合物に電子供与基を導入することで共存させてもよいし、水溶液中に電子供与体を添加することで共存させてもよい。例えば、前者の場合、前述のシクロデキストリンに電子供与基を導入すればよい。導入する電子供与基としては、アミノ基やジエチルアミノ基、アジド基、アミド基、さらには硫黄を含む基等を例示することができる。一方、水溶液中に電子供与体を添加する場合には、電子供与体として脂肪族アミン(例えば、ジエチルアミンやトリエチルアミン等)やアンモニア等を添加すればよい。
【0026】
光照射により分解処理を行うと、前記の通り、有機塩素化合物(例えば4-CBP)の光脱塩素化反応が起こり、塩素とビフェニルに分解されるが、分解後にも前記ビフェニルの一部はホスト化合物の疎水性場中に残る。このような場合、分解反応後にホスト化合物を有機溶媒で洗浄すれば、前記ビフェニルを除去してホスト化合物を再利用することが可能になる。
【0027】
このとき、洗浄に使用する有機溶媒としては、毒性が低く汎用の有機溶媒を使用することができ、例えばヘキサンや石油系溶媒等が使用可能である。中でもヘキサンは、洗浄効率や入手の容易さ、取り扱い性、さらには毒性が低いこと等の観点から好適である。洗浄に際しては、例えば分解処理後の水溶液に前記有機溶媒を加え、十分に振とうした後、静置し、分離した有機溶媒を取り除けばよい。ホスト化合物に包接されるビフェニルは、疎水性であるため速やかに有機溶媒中に移行し、ホスト化合物から除去される。ビフェニルを除去したホスト化合物は、何度でも繰り返し使用可能である。
【実施例】
【0028】
以下、本発明を適用した具体的な実施例について、実験結果に基づいて説明する。
【0029】
実施例1
本実験では、ポリ塩化ビフェニル(PCB)のモデル分子として、4-クロロビフェニル(4-CBP)を用いた。そして、ホスト化合物としてβ-シクロデキストリン(β-CD)を用い、これらをβ-CD:4-CBP=1:1~1:20(モル比)で水溶液中で混合し、室温にて48時間撹拌して包接錯体を形成した。この包接錯体を含む水溶液に対し、低圧水銀灯を用いて24時間の光(紫外線:波長254nm)照射を行い、生成物を電子イオン化質量分析(EI-MS)及び高速液体クロマトグラフィ(HPLC)により分析、定量を行った。結果を表1に示す。
【0030】
【表1】
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【0031】
表1から明らかな通り、β-シクロデキストリンをホスト化合物として4-CBPを取り込み、紫外線照射を行うことで、ほとんど全ての4-CBPが無害なビフェニル(BP)、あるいはビフェニルが2つ結合したQBPに分解されている。
【0032】
実施例2
本実施例では、ホスト化合物としてβ-シクロデキストリンを用いるとともに、電子供与体としてトリエチルアミンを水溶液中に添加し、他は実施例1と同様に4-CBPの分解を試みた。光照射後、実施例1と同様に生成物の分析、定量を行った。結果を表2に示す。
【0033】
【表2】
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【0034】
この表2から明らかなように、トリエチルアミン存在下でのβ-シクロデキストリンを反応場とする4-CBPの光分解反応においても、良好な結果が得られ、4-CBPの大部分がビフェニル(BP)、あるいはQBPに分解されていることがわかる。
【0035】
実施例3
本実施例では、ホスト化合物としてβ-シクロデキストリンを用いるとともに、電子供与体としてジエチルアミンを水溶液中に添加し、他は実施例1と同様に4-CBPの分解を試みた。光照射後、実施例1と同様に生成物の分析、定量を行った。結果を表3に示す。
【0036】
【表3】
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【0037】
この表3から明らかなように、ジエチルアミン存在下でのβ-シクロデキストリンを反応場とする4-CBPの光分解反応においても、良好な結果が得られ、4-CBPの大部分がビフェニル(BP)、あるいはQBPに分解されていることがわかる。
【0038】
実施例4
本実施例では、ホスト化合物としてβ-シクロデキストリンを用いるとともに、電子供与体としてアンモニアを水溶液中に添加し、他は実施例1と同様に4-CBPの分解を試みた。光照射後、実施例1と同様に生成物の分析、定量を行った。結果を表4に示す。
【0039】
【表4】
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【0040】
この表4から明らかなように、アンモニア存在下でのβ-シクロデキストリンを反応場とする4-CBPの光分解反応においても、良好な結果が得られ、4-CBPの大部分がビフェニル(BP)、あるいはQBPに分解されていることがわかる。
【0041】
なお、電子供与体を添加した実施例2~4においては、若干の未反応物が認められ、分解効率が低下しているようにも見えるが、これは、β-シクロデキストリンが添加物である電子供与体を包接し、これにより4-CBPに対する包接能が低下したことによるものであり、分解効率自体は単にβ-シクロデキストリンを用いた場合よりも向上している。
【0042】
β-シクロデキストリンへの電子供与基の導入
図3に示すように、β-シクロデキストリンの6位の1級水酸基及び3位の2級水酸基をそれぞれ置換基R、Rで置換することにより、誘導体1~誘導体5を合成した。なお、誘導体1は未置換のβ-シクロデキストリンである。これらβ-シクロデキストリンの誘導体について、4-CBPとの会合定数をUVスペクトルにより求め、さらにアミノ基の電子移動を確認するために、蛍光消光実験を行った。各誘導体の会合定数を表5に示す。
【0043】
【表5】
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【0044】
表5に示す通り、前記各誘導体と4-CBPとの会合定数は、誘導体2>誘導体5>誘導体3>誘導体1>誘導体4の順であった。したがって、前記誘導体の中では、誘導体2が4-CBPに対して最も包接能に優れていると言える。また、消光実験の結果、誘導体1では4-CBPが包接され孤立化するために蛍光強度が増加し、誘導体2では前記蛍光強度が減少する傾向にあった。これは、アミノ基と4-CBP間の電子移動を示唆するものと言える。
【0045】
実施例5
本実施例では、ホスト化合物として6-アミノ-β-シクロデキストリン(前記誘導体2)を用い、他は実施例1と同様に4-CBPの分解を試みた。光照射後、実施例1と同様に生成物の分析、定量を行った。結果を表6に示す。また、前記光分解反応における生成物の割合の時間変化を調べた。結果を図4に示す。
【0046】
【表6】
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【0047】
表6から明らかなように、β-シクロデキストリンにアミノ基を導入することで、4-CBPがほとんど完全に分解されていることがわかる。また、図4に示すように、極めて短時間のうちに分解が進んでいる。なお、アミノ基を導入したβ-シクロデキストリンをホスト化合物とした場合、主生成物はQBPであり、QBPのみが生成するといっても過言ではない。そこで、アミノ基を導入したβ-シクロデキストリンを使用した光分解反応における時間変化をUV及びHPLCを用いて追跡調査したところ、QBPの生成過程においてはBPを経てQBPが生成することがわかった。
【0048】
実施例6
本実施例では、ホスト化合物として6-アジド-β-シクロデキストリン(前記誘導体3)を用い、他は実施例1と同様に4-CBPの分解を試みた。光照射後、実施例1と同様に生成物の分析、定量を行った。結果を表7に示す。
【0049】
【表7】
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【0050】
表7から明らかなように、アジド基を導入した場合にも大部分の4-CBPは分解されているが、若干の未反応物が認められ、アミノ基を導入した場合(実施例5)の方が若干効果が高いことがわかる。
【0051】
実施例7
本実施例では、ホスト化合物としてジエチルアミノ-β-シクロデキストリン(前記誘導体4)を用い、他は実施例1と同様に4-CBPの分解を試みた。光照射後、実施例1と同様に生成物の分析、定量を行った。結果を表8に示す。
【0052】
【表8】
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【0053】
表8から明らかなように、ジエチルアミノ基を導入した場合には、実施例5と同様、ほとんど全ての4-CBPが分解されており、分解効率に非常に優れていることがわかる。
【0054】
実施例8
本実施例では、ホスト化合物として3-アミノ-β-シクロデキストリン(前記誘導体5)を用い、他は実施例1と同様に4-CBPの分解を試みた。光照射後、実施例1と同様に生成物の分析、定量を行った。結果を表9に示す。
【0055】
【表9】
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【0056】
表9から明らかなように、3位にアミノ基を導入した場合にも、実施例5と同様、ほとんど全ての4-CBPが分解されているが、4-CBPの割合が多くなると、若干分解率の低下が見られる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の基本原理を説明する模式図である。
【図2】β-シクロデキストリンの構造を模式的に示す図である。
【図3】β-シクロデキストリンへの電子供与基の導入例を示す模式図である。
【図4】6-アミノ-β-シクロデキストリンをホスト化合物とした場合の光分解反応の時間変化を示す特性図である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3