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明細書 :rab8a遺伝子欠損マウス

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4374438号 (P4374438)
公開番号 特開2007-068506 (P2007-068506A)
登録日 平成21年9月18日(2009.9.18)
発行日 平成21年12月2日(2009.12.2)
公開日 平成19年3月22日(2007.3.22)
発明の名称または考案の名称 rab8a遺伝子欠損マウス
国際特許分類 A01K  67/027       (2006.01)
C12N  15/09        (2006.01)
C12Q   1/02        (2006.01)
G01N  33/50        (2006.01)
G01N  33/15        (2006.01)
FI A01K 67/027 ZNA
C12N 15/00 A
C12Q 1/02
G01N 33/50 Z
G01N 33/15 Z
請求項の数または発明の数 4
全頁数 8
出願番号 特願2005-261902 (P2005-261902)
出願日 平成17年9月9日(2005.9.9)
審査請求日 平成18年2月7日(2006.2.7)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504145364
【氏名又は名称】国立大学法人群馬大学
発明者または考案者 【氏名】原田 彰宏
【氏名】佐藤 隆史
個別代理人の代理人 【識別番号】100100549、【弁理士】、【氏名又は名称】川口 嘉之
【識別番号】100090516、【弁理士】、【氏名又は名称】松倉 秀実
【識別番号】100089244、【弁理士】、【氏名又は名称】遠山 勉
【識別番号】100126505、【弁理士】、【氏名又は名称】佐貫 伸一
審査官 【審査官】左海 匡子
参考文献・文献 持田記念財団年報,2003年,Vol.2003,p.52-54
上原記念生命科学財団研究報告集,2004年,Vol.18,p.210-211
J Biol Chem. ,2002年,Vol.277, No.11,p.9212-9218
調査した分野 A01K 67/027
C12N 15/09
C12Q 1/02
BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
医学・薬学予稿集全文データベース
特許請求の範囲 【請求項1】
染色体上のrab8a遺伝子が不活性型rab8a遺伝子に置換されたことにより、rab8aタンパク質の機能が欠損したrab8a遺伝子欠損マウス又は該マウスから得られる細胞に化合物を投与し、化合物の栄養吸収障害改善効果を評価することを特徴とする、栄養吸収障害性疾患の治療薬のスクリーニング方法。
【請求項2】
不活性型rab8a遺伝子がエクソン2が欠損したrab8a遺伝子である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
染色体上のrab8a遺伝子が不活性型rab8a遺伝子に置換されたことにより、rab8aタンパク質の機能が欠損したrab8a遺伝子欠損マウス又は該マウスから得られる細胞、組織もしくは器官を用いることを特徴とする、栄養吸収障害性疾患の解析方法。
【請求項4】
不活性型rab8a遺伝子がエクソン2が欠損したrab8a遺伝子である、請求項3に記載の方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトの栄養吸収障害性疾患のモデルとして有用なrab8a遺伝子欠損マウスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
消化器、皮膚、泌尿器、呼吸器等の表面を覆う上皮細胞は頂端側、側底側という方向性(極性)を持つ。また、神経細胞も軸索、樹状突起という極性を持つ。極性が正常に形成されることが組織、器官の正常な発生や分泌、刺激の伝達等の機能に必須である。極性の形成、維持には合成された分泌タンパク質や膜タンパク質がトランスゴルジネットワーク等で輸送小胞に分配、濃縮された後、頂端側、側底側に運ばれる必要がある。この方向性のある輸送を極性輸送と呼ぶ。極性輸送には低分子量GTP結合タンパク質、SNAREタンパク質などが重要であることが知られている。
低分子量GTP結合タンパク質の1つとして、Rab分子群が知られている。これらの分子は活性のあるGTP結合型と活性のないGDP結合型を有し、GDP結合型が主に細胞質に存在し、GTP結合型は膜(細胞膜や細胞内の膜)に存在する。Rabは細胞質と膜の間を行き来することによってその機能を果たすことが知られている。現在、Rab分子群は60種類以上知られているが、各分子は細胞内で特有の分布をしており、それぞれの場所で機能を果たしていると考えられている。
Rab8aはゴルジ体で修飾を受けたタンパク質の出口であるトランスゴルジネットワークで形成された小胞を側底側へ輸送するために必要であると考えられてきた(非特許文献1)。しかしながら、rab8a遺伝子の欠損マウスは報告されておらず、Rab8aタンパク質の機能は十分に解明されていなかった。
【0003】
微絨毛萎縮症は細胞表面の微絨毛が萎縮を起こすために栄養が十分に吸収できず、出生直後に下痢をおこし、脱水と栄養失調を呈する栄養吸収障害性の疾患である(非特許文献2)。このような微絨毛萎縮症をはじめとした小児の吸収障害には難治性のものが多く、その根本的な治療は小腸移植が主に行われてきた。しかし、移植はコストや倫理上の問題を多く含むため我が国では盛んに行われているとはいいがたい状況にある。またその高い費用から誰にでも適用できる治療法ではない。しかし他の治療法の開発に人間を用いることは不可能であり、その病態をよく再現するモデル動物が必要となる。

【非特許文献1】J Cell Biol. 1993 Oct;123(1):35-45.
【非特許文献2】Clin Gastroenterol 1986 Jan; 15(1): 105-20
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は栄養吸収障害性疾患の治療薬のスクリーニングや治療法の開発に用いることのできる、モデル動物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は上記課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、染色体上のrab8a遺伝子を欠損させたマウスが小腸や空腸などにおいて微絨毛の萎縮を起こし、栄養吸収障害を呈することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は以下の通りである。
(1)染色体上のrab8a遺伝子が不活性型rab8a遺伝子に置換されたことにより、rab8aタンパク質の機能が欠損した、rab8a遺伝子欠損マウス。
(2)不活性型rab8a遺伝子がエクソン2が欠損したrab8a遺伝子である、(1)のrab8a遺伝子欠損マウス。
(3)栄養吸収障害性疾患のモデルマウスである、(1)または(2)のrab8a遺伝子欠損マウス。
(4)(1)~(3)のいずれかのマウス又は該マウスから得られる細胞に化合物を投与し、化合物の栄養吸収障害改善効果を評価することを特徴とする、栄養吸収障害性疾患の治療薬のスクリーニング方法。
(5)(1)~(3)のいずれかのマウス又は該マウスから得られる細胞、組織もしくは器官を用いることを特徴とする、栄養吸収障害性疾患の解析方法。

【発明の効果】
【0007】
本発明のrab8a遺伝子欠損マウスでは、微絨毛の萎縮や栄養の吸収低下が生じることから、このマウスを用いることで、ヒトの栄養吸収低下をおこす疾患、例えば、微絨毛萎縮症、短腸症候群、ヒルシュスプルング病等の疾患のメカニズムの解明を行うことができる。またこのマウスに薬物等を投与することでこれらの疾患の治療のための薬物のスクリーニングを行うことが可能である。更には、腸管からウイルスベクターなどを用いてrab8aの遺伝子を導入し、遺伝子治療を行うことも可能である。

【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に本発明を詳しく説明する。
本発明のrab8a欠損マウス(rab8aノックアウトマウス)は、染色体上のrab8a遺伝子が不活性型rab8a遺伝子に置換されたことにより、rab8aタンパク質の機能が欠損したマウスである。「不活性型rab8a遺伝子」とは、rab8a遺伝子の一部の欠損、rab8a遺伝子のコード領域への他の塩基配列の挿入、rab8a遺伝子内の点突然変異、rab8a遺伝子の発現調節領域内の変異などにより、正常なrab8aタンパク質を発現できない遺伝子をいう。欠損型rab8a遺伝子としては、エクソン2が欠損した遺伝子などが挙げられるが、これには限定されない。「rab8aタンパク質の機能が欠損した」とは、小胞輸送などのrab8aタンパク質の機能が失われたことをいい、好ましくは、rab8aタンパク質の機能が完全に失われたことを意味するが、ヘテロノックアウトマウスのように片方のアレルのみ不活性型に置換されて、rab8aタンパク質の機能が一部失われたような場合も含む。
【0009】
rab8a遺伝子としては、例えば、配列番号2のアミノ酸配列をコードする遺伝子、より具体的には配列番号1で示される塩基配列を有するマウスrab8a遺伝子を挙げることができる。この塩基配列は、GenBankにアクセッションナンバーBC019990で登録されている。また、rab8a遺伝子は、種によっても異なるため、配列番号1のホモログ遺伝子であってもよい。ホモログ遺伝子は、マウスの染色体上のrab8a遺伝子と相同組換えを起こしうる程度の相同性、例えば、配列番号1の塩基配列と80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上の相同性を有するものが挙げられる。また、ホモログ遺伝子は配列番号1の塩基配列を有する遺伝子とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする遺伝子であってもよい。ここで、ストリンジェントな条件としては、例えば、ハイブリダイズを行い、65℃、1×SSC,0.1%SDS、好ましくは、65℃、0.1×SSC、0.1%SDSの条件で洗浄する条件が挙げられる。
【0010】
本発明のrab8a遺伝子欠損マウスは、公知の遺伝子組み換え法(ジーンターゲッティング法)により作製することができる。例えば、以下のようにして作製することができる。
先ず、rab8a遺伝子の部分断片を用意し、rab8a遺伝子を欠損型に置換するためのターゲティングベクターを作製する。
組み換え体の選別のため、ターゲティングベクターには薬剤耐性遺伝子を組み込むこと
が好ましい。薬剤選択のマーカー遺伝子として、ネオマイシン耐性遺伝子、ハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ遺伝子等を使用することができる。
また、rab8a遺伝子の部分配列を欠損させるためにCre-loxPのシステム(R.Kuhn et al.Science,269,1427-1429,1995)やFLP/FRTのシステム(Rodriguez et al. Nat Genet 25:139-40.)を用いてもよい。その場合、欠損させる部分配列がloxP配列あるいはFRT配列の間に挟まれるようにターゲティングベクターを構築する。
【0011】
以下に、上記のようなターゲティングベクターを用いてrab8a遺伝子欠損マウスを得るための一般的な方法について述べる。ただし、本発明のマウスは以下の方法により得られるものには限定されない。
上記の方法により作製したターゲッティングベクターを使用して、相同組み換えを行う。相同組換えには胚性幹細胞(ES細胞)による方法を用いることができる。現在マウス由来のES細胞株がいくつか確立されており、TT2細胞株、AB-1細胞株、J1細胞株、R1細胞株、E14TG2a細胞株等を使用することができる。ターゲティングベクターは公知の方法に準じてマウスES細胞に導入することができる。例えば、エレクトロポレーション法、リポソーム法、リン酸カルシウム法、DEAE-デキストラン法等が利用できる。
次いで、染色体上の野生型rab8a遺伝子がターゲティングベクター中の欠損型rab8a遺伝子に置換された細胞クローンを選択する。選択は薬剤耐性などに基づいて行うことができ、さらに、サザンブロッティングやPCRなどにより相同組み換えを確認することが好ましい。
【0012】
こうして得た変異遺伝子を持つES細胞を、野生型マウスの胚に導入する。そして、このES細胞胚を偽妊娠状態の仮親マウスの子宮に移植し、出産させることによりキメラ動物を作製することができる。ES細胞を胚盤胞等の胚に導入する方法としては、マイクロインジュクション法や凝集法が知られているが、マイクロインジュクション法がより好ましい。仮親とするための偽妊娠雌マウスは、正常性周期の雌マウスを、精管結紮などにより去勢した雄マウスと交配することにより得ることができる。
【0013】
次いで、このキメラマウスを純系のマウスと交配し、ES細胞をキメラマウスの生殖系列へ移行させる。胚内に移植された組み換えES細胞が生殖系列に移行した動物を選択し、その動物を繁殖させることにより、rab8a遺伝子を欠損したヘテロ接合体を得ることができる。
得られたrab8a遺伝子欠損ヘテロ接合体マウス同士を交配させることにより、rab8a遺伝子欠損ホモ接合マウスを得ることができる。
【0014】
なお、本発明のノックアウトマウスを作製するにあたり、コンディショナルなノックアウトマウスの作製において汎用されている、上述のCre/loxPのシステムやFLP/FRTのシステムを用いることも可能である。Cre/loxPのシステムを用いる場合、大腸菌のP1ファージ由来の組み換え酵素であるCre組換え酵素を発現している動物と交配させるか、またはCre遺伝子を有する遺伝子をもつウイルスベクターを感染させることにより、Cre組換え酵素はloxP配列で挟まれた配列を認識して除去するために、rab8a遺伝子欠損マウスを作出することができる。また、組織特異的にCre酵素を発現しているマウスと交配させることにより、組織特異的に遺伝子が欠損した特性を有するノックアウトを作製することもできる。同様に、FLP/FRTのシステムを用いる場合は、FLP組換え酵素を発現する動物と交配させることにより、rab8a遺伝子欠損マウスを作出することができる。
【0015】
このようにして作製されたrab8a遺伝子欠損マウスは、微絨毛萎縮、頂端部へのタンパク質輸送障害などを起こし、栄養失調などの栄養吸収障害性の疾患を呈する。
したがって、このマウス、又はマウス由来の細胞、組織、もしくは器官を用いることに
より、ヒトの栄養吸収低下をおこす疾患、例えば、微絨毛萎縮症、短腸症候群、ヒルシュスプルング病等の疾患のメカニズムの解明を行うことができる。また、これらの疾患に限らず、rab8aが関連する各種疾患の発症メカニズムの解明も行うことができる。
【0016】
また、rab8aが関連する各種疾患の治療薬のスクリーニングを行うこともできる。例えば、rab8a遺伝子欠損マウス又は該マウスから得られる細胞に化合物を投与し、化合物の栄養吸収障害改善効果を評価することにより、栄養吸収障害性疾患の治療薬をスクリーニングすることができる。栄養吸収障害改善効果は直接グルコースなどの吸収を評価してもよいし、栄養吸収に関与する分子の機能を評価してもよい。
更には、腸管からウイルスベクターなどを用いてrab8aの遺伝子を導入して症状の回復を図ることもできると考えられるため、腸管を介した遺伝子治療のモデルとして用いることも可能である。

【実施例】
【0017】
<ノックアウトマウスの作製>
rab8a遺伝子を含む15kbのフラグメントを129/Svマウス由来ゲノムライブラリーから単離し、pBlueScript(+)(Stratagene)に組み込んだ。SA(bcl2遺伝子のスプライスアクセプター部位)、IRES(internal ribosomal entry site)、及びβgeo(βガラクトシダーゼ遺伝子とネオマイシン耐性遺伝子との融合遺伝子)からなる遺伝子破壊用カセットSA-IRES-βgeo pA(Homma et al. Cell. 2003 Jul 25;114(2):229-39.)を用意し、その前後にFRTサイトを、5'側にloxPサイトを連結することにより得られたDNA構築物をrab8a遺伝子の第2イントロンに存在するBamHIサイトに転写の向きが同じになるように挿入した。さらにもう一つのloxPサイトを第1イントロンに存在するXhoIサイトに挿入してターゲッティングベクターを得た(図1)。
次に得られたターゲッティングベクターをES細胞にエレクトロポレーションにより導入した。ES細胞はJ1系統のものを使用し、Joyner et al.(Gene Targeting: Practical Approach. IRL Press, New York, p234, 1993)に記載の方法にしたがって培養及びエレクトロポレーションを行った。ES細胞をネオマイシン含有培地で培養し、形質転換体を選抜してセルライン化し、ターゲティングベクターへの相同組換えをサザンブロッティングによって確認した。
ターゲティングベクターが染色体上に組み込まれたES細胞をC57BL/6マウスの胚盤胞に注入した。擬制妊娠させた仮親マウスに、ES細胞を注入した胚盤胞を移植し、出産させてキメラマウスを得た。
このキメラマウスを野生型マウスと交配してヘテロ接合体を得た。次にヘテロ接合体をFLP組換え酵素を発現するトランスジェニックマウス(B6;SJL-Tg(ACTFLPe)9205Dym/J;Jackson Laboratory)と掛け合わせて、SA-IRES-βgeo pAを除いた。さらに得られたマウスを全身でCreを発現するトランスジェニックマウス(CAG-Creマウス)と掛け合わせて、rab8a 遺伝子の第2エクソンが欠損したrab8a(+/-)マウスを得た。さらにこのrab8a(+/-)マウスを掛け合わせて、rab8a遺伝子完全欠損マウス(rab8a(-/-)マウス)を得た。このrab8a遺伝子完全欠損マウスについて調べた結果、栄養吸収障害を有しており、生後3週を過ぎるとほとんどが栄養失調で死亡することがわかった。
さらに、これらのマウスを用いて、以下の解析を行った。
【0018】
<免疫組織染色>
2.5週齢のrab8a(+/-)マウス及びrab8a(-/-)マウスをエーテルとネンブタールで麻酔し、3%パラホルムアルデヒド/0.1Mリン酸バッファー(pH7.4)で灌流した。脳、肝臓、小腸、腎臓、膵臓などの種々の器官を摘出し、室温で一晩固定液に入れて保存した。凍結保護、凍結、切片作製の手順はHarada et al. (Cell Struct. Funct. 15(6), 329-342, 1990)に記載の方法に従って行った。このうちの小腸の切片について蛍光免疫組織染
色によりSGLT(Na-グルコーストランスポーター)及びDPP4(ジペプチジルペプチダーゼ4)の発現分布を調べた。組織切片をまず1次抗体(ヤギ抗SGLT抗体(Santa Cruz Biotechnology, INC.)、又はヤギ抗DPP4抗体(R&D Systems社))に反応させ、次いで2次抗体(Alexa 488-conjugated ロバ抗ヤギIgG;Molecular Probes社)に反応させた。観察は走査型共焦点顕微鏡(モデルMRC1024;Zeiss社)を用いて行った。
その結果、rab8a(+/-)マウスでは通常通りSGLTやDPP4は頂端側に見られたのに対し、rab8a(-/-)マウスではSGLTやDPP4が頂端側から減少し、細胞内部に取り込まれていることがわかった(図2)。これは、これまで提唱されてきたrab8aが小胞を側底側に輸送するという説からは予想できないことであった。
【0019】
<電子顕微鏡による観察>
3週齢の正常マウス(rab8a(+/+))又はノックアウトマウス(rab8a(-/-))を2%パラホルムアルデヒド、2.5%グルタルアルデヒド/0.1Mカコジル酸バッファー(pH7.4)で灌流し、小腸、肝臓、腎臓を摘出してさらに2時間固定化した。このうち、空腸の切片について電子顕微鏡で観察した。空腸の切片はHarada et al. (Cell Struct. Funct. 15(6), 329-342, 1990)に記載の方法に従って作製し、JEOL1010電子顕微鏡を用いて80kVの電圧下で観察した。その結果、rab8a(-/-)では微絨毛の萎縮が見られ、さらに微絨毛の一部が細胞内部に取り込まれていることがわかった。
この現象は出生直後に下痢を起こして脱水と栄養失調を呈して治療を施さないと死に至るヒトの疾患の一つである微絨毛萎縮症の所見と酷似していた。

【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】rab8a遺伝子破壊の模式図。
【図2】rab8a遺伝子ヘテロノックアウトマウス(+/-)又はホモノックアウトマウス(-/-)の小腸における、SGLT及びDPP4の発現を示す図(写真;倍率100倍)。
【図3】正常マウス又はrab8a遺伝子ホモノックアウトマウス(-/-)の空腸の電子顕微鏡による観察結果を示す図(写真;倍率5000倍、右下はさらに拡大した図)。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2