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明細書 :マルチウェルプレート

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4764972号 (P4764972)
公開番号 特開2005-185272 (P2005-185272A)
登録日 平成23年6月24日(2011.6.24)
発行日 平成23年9月7日(2011.9.7)
公開日 平成17年7月14日(2005.7.14)
発明の名称または考案の名称 マルチウェルプレート
国際特許分類 C12M   1/00        (2006.01)
FI C12M 1/00 Z
請求項の数または発明の数 5
全頁数 10
出願番号 特願2004-050541 (P2004-050541)
出願日 平成16年2月25日(2004.2.25)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 2003年11月25日第26回日本分子生物学会年会組織委員会発行の「第26回日本分子生物学会年会プログラム・講演要旨集」に発表
優先権出願番号 2003405263
優先日 平成15年12月3日(2003.12.3)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成17年7月22日(2005.7.22)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504202472
【氏名又は名称】大学共同利用機関法人情報・システム研究機構
【識別番号】503385060
【氏名又は名称】カジックス株式会社
発明者または考案者 【氏名】西村 昭子
【氏名】梶谷 隆文
個別代理人の代理人 【識別番号】100085486、【弁理士】、【氏名又は名称】廣瀬 孝美
審査官 【審査官】佐藤 巌
参考文献・文献 特開平10-257887(JP,A)
特開2002-159284(JP,A)
特開2005-118013(JP,A)
特開平07-111887(JP,A)
特開2002-218967(JP,A)
調査した分野 C12M 1/00-3/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
吸水性素材とシートの積層体からなるマルチウェルプレートであって、底面にボトムシートが剥離可能に設けられていると共に当該シートの積層体は複数の中空部を有し、各中空部はボトムシートを底面とする一つのウェルを形成し、各中空部には吸水性素材がボトムシートに接することなく保持されていることを特徴とする微生物、ファージ、DNA又は細胞の運搬・保管用マルチウェルプレート。

【請求項2】
(a)ボトムシート、(b)複数の透孔を有し、ボトムシートに貼着された剥離シート、(c)剥離シートの透孔に対応する位置に、剥離シートの透孔の径と略同じ径の透孔を有し、剥離シートに貼着されたスペーサーシート、(d)スペーサーシートの透孔に対応する位置に、スペーサーシートの透孔の径より小さな径の透孔を有し、スペーサーシートに貼着された吸水性素材固定シート、及び(e)吸水性素材固定シート上を覆うカバーシートが順次積層され、上記のスペーサーシートの透孔内に、吸水性素材が吸水性素材固定シートに貼着されて保持されていることからなる請求項1記載のマルチウェルプレート。
【請求項3】
(a)ボトムシート、(b)複数の透孔を有し、ボトムシートに貼着された剥離シート、(c)剥離シートの透孔に対応する位置に、剥離シートの透孔の径と略同じ径の透孔を有し、剥離シートに貼着された小穴シート、(d)小穴シートの透孔に対応する位置に、小穴シートの透孔の径より大きな径を有し、小穴シートに貼着されたスペーサーシート、(e)スペーサーシートの透孔に対応する位置に、スペーサーシートの透孔の径より小さな径の透孔を有し、スペーサーシートに貼着された吸水性素材固定シート、及び(f)吸水性素材固定シート上を覆うカバーシートが順次積層され、上記のスペーサーシートの透孔内に、吸水性素材が吸水性素材固定シートに貼着されて保持されていることからなる請求項1記載のマルチウェルプレート。
【請求項4】
ボトムシート、複数の透孔を有するスペーサーシート及びスペーサーシート上を覆うカバーシートが順次積層されてなり、スペーサーシートの各透孔には吸水性素材を保持する保持手段が設けられており、当該保持手段により各透孔に吸水性素材が保持されていることからなる請求項1記載のマルチウェルプレート。
【請求項5】
包装容器に密封収容されている請求項1から4のいずれかに記載のマルチウェルプレート。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明はマルチウェルプレートに関する。より詳細には、微生物(菌体)、ファージ、DNA、細胞などの運搬、保管などに有用な薄型マルチウェルプレートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、新薬開発のソースとして微生物の産生する物質が用いられており、そのような有用産物を産生する微生物の探索が行われている。
また、昨今の遺伝子組換技術の発展により、有用物質の遺伝子を導入した微生物(形質転換体)を培養することにより、有用産物の生産が行われるようになっている。
更に、食品工業では、従前より微生物を用いた発酵により種々の食品の製造が行われてきた。
このように、医薬、生化学、食品、化学などの分野では、微生物が重要な働きをしており、クローン化された有用微生物は貴重な資源であることから慎重に保管されている。このような微生物は、通常、穿刺培養法、冷凍法、凍結乾燥法などにより保存されている。
上記の微生物を保管している研究機関などが、他の研究機関の求めに応じて、当該微生物を供給する際に微生物の運搬が行われる。微生物の運搬は、通常、微生物培養液を濾紙にスポットし、包装用ラップで包んで運搬したり、アンプルに収納した状態で運搬されている。また、微生物の数が多い場合には、マイクロタイタープレートに培養液を分注し、ビニールシートでシールして運搬したり、寒天培地にスポット植菌して運搬している。
しかし、、濾紙に吸着させて運搬する方法では雑菌が混入し易いし、運搬する微生物の数が多い場合には濾紙の枚数が増えて非効率的である。また、マイクロタイタープレート、寒天培地又はアンプルで運搬する方法では、容器の破損の問題があると共に容器が破損した場合には微生物汚染の問題もある。更に、運搬物が嵩張ることも大きな問題点である。
なお、微生物用のマルチウェルプレートしては、特開2001-218575号公報、特開2002-199874号公報などに記載のプレートが知られている。

【特許文献1】特開2001-218575号公報
【特許文献2】特開2002-199874号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記の問題点を解消するため、本願出願人らは、薄型のマルチウェルプレートを提案している(特願2003-359534参照)。このマルチウェルプレートは所期の目的を達成し得る優れたものである。しかし、このマルチウェルプレートを使用する場合、反転させて培地などに接触させレプリカする必要があった。そのため、マルチウェルプレート上の菌体などとレプリカされた菌体などの位置関係が鏡像関係になるため、マルチウェルプレートの菌体などの位置とレプリカされた菌体などの位置を誤認する可能性があった。
本発明は係る問題点を解決するもので、多数の微生物を簡便に且つ安全に運搬・保管しえる薄型マルチウェルプレートを提供すると共にマルチウェルプレートとレプリカされたものの位置が対応する関係となるように工夫したマルチウェルプレートを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明のマルチウェルプレートは、シートの積層体からなるマルチウェルプレートであって、当該積層体は複数の中空部を有し、各中空部には吸水性素材が保持されていることからなる。好ましい態様としては、
(a)ボトムシート、(b)複数の透孔を有し、ボトムシートに貼着された剥離シート、(c)剥離シートの透孔に対応する位置に、剥離シートの透孔の径と略同じ径の透孔を有し、剥離シートに貼着されたスペーサーシート、(d)スペーサーシートの透孔に対応する位置に、スペーサーシートの透孔の径より小さな径の透孔を有し、スペーサーシートに貼着された吸水性素材固定シート、及び(e)吸水性素材固定シート上を覆うカバーシートが順次積層され、上記のスペーサーシートの透孔内に、吸水性素材が吸水性素材固定シートに貼着されて保持されていることからなるマルチウェルプレート;
(a)ボトムシート、(b)複数の透孔を有し、ボトムシートに貼着された剥離シート、(c)剥離シートの透孔に対応する位置に、剥離シートの透孔の径と略同じ径の透孔を有し、剥離シートに貼着された小穴シート、(d)小穴シートの透孔に対応する位置に、小穴シートの透孔の径より大きな径を有し、小穴シートに貼着されたスペーサーシート、(e)スペーサーシートの透孔に対応する位置に、スペーサーシートの透孔の径より小さな径の透孔を有し、スペーサーシートに貼着された吸水性素材固定シート、及び(f)吸水性素材固定シート上を覆うカバーシートが順次積層され、上記のスペーサーシートの透孔内に、吸水性素材が吸水性素材固定シートに貼着されて保持されていることからなるマルチウェルプレート;及び
ボトムシート、複数の透孔を有するスペーサーシート及びスペーサーシート上を覆うカバーシートが順次積層されてなり、スペーサーシートの各透孔には吸水性素材を保持する保持手段が設けられており、当該保持手段により各透孔に吸水性素材が保持されていることからなるマルチウェルプレート;
が例示される。
更に、本発明のマルチウェルプレートは、包装容器に収納され密封された形態が好ましい。
上記のマルチウェルプレートは、全体の厚みが3mm以下、通常は1mm以下、素材の選択によっては0.5mm以下とすることができ、超薄型のマルチウェルプレートである。
【発明の効果】
【0005】
本発明のマルチウェルプレートによれば、一枚のプレートで多数の微生物(又は動物細胞、DNA試料など)を運搬することができるので極めて効率的であり、しかも運搬容器の破損による微生物の損失や微生物汚染の問題も解消でき、更に超薄型であるので嵩張らないという特長を有し、その上ボトムシート(場合によっては剥離シート)を剥離した状態で培地に接触させてレプリカすることができるので、反転の必要がなく、菌体などの位置の誤認を防止することができるという格別の効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、図面に基づいて、本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
本発明のマルチウェルプレートの一実施例を図1及び2に示す。図1は本発明のマルチウェルプレートの平面概略図であり、図2は図1のA-A線端面の部分拡大概念図である。図1及び図2において、1はボトムシート、2は剥離シート、3、5及び7は透孔、4はスペーサーシート、6は吸水性素材固定シート、8はカバーシート、9は吸水性素材である。
なお、図1及び図2は、本発明の一例として96ウェルのマルチウェルプレートを示しているが、ウェルの数は96に限定されるものではなく、所望に応じて適宜な数でよく、例えば6,12、24、48、384などが例示される(以下の例においても同様である)。
また、本明細書において、シートはフィルムを含む概念である。
【0007】
図1及び図2において、ボトムシート1は耐水性を有する材料、好ましくはプラスチック素材からなり、例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)、シリコーン、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、PS(ポリスチレン)などが例示され、特に自己粘着性を有する素材が好ましい。
ボトムシート1の厚さは特に限定されず、剥離シート2などを保持できる強度を有すればよく、通常50~100μm程度のシートが用いられる。
【0008】
ボトムシート1の上面には、脱着自在の接着剤が塗布されており、係る接着剤層(図示は省略、以下同様)を介して剥離シート2が貼着されている。なお、ボトムシート1が自己粘着性を有する素材の場合には、上記の接着剤は使用しなくてもよい。剥離シート2には、透孔3が一列8個で12列形成されており、合計96個の透孔3が設けられている。
透孔3の形状は円筒形にされ、径としては通常直径5mm程度とされるがこの径に限定されるものではない。透孔3は通常円筒形とされるが、係る形状に特定されず、断面が矩形の孔であってもよい。なお、前述のように、係る透孔3は後述する透孔5と共にウェルを形成するものであって、その数は96個に限定されるものではない。
剥離シート2の材質は特に限定されないが、簡便に剥離できる素材が好ましく、通常はフッ素系樹脂シートが用いられる。剥離シート2の厚さは特に限定されず、通常は30~70μm程度、好ましくは50μm程度のシートが用いられる。
なお、剥離シート2として、プラスチック素材でサポートされた剥離シートが市販されており、これを用いてもよい。
【0009】
剥離シート2の上面には、接着剤層を介してスペーサーシート4が貼着されている。スペーサーシート4には、剥離シート2の透孔3に対応する位置に、剥離シート2の透孔3と略同じ径の透孔5が設けられている。
スペーサーシート4は耐水性を有する材料、好ましくはプラスチック素材からなり、例えばPET、シリコーン、PE、PP、PSなどが例示される。
スペーサーシート4の厚さは、後述する吸水性素材9の厚みと略同じ程度に調節され、通常100~1000μm程度、好ましくは150~400μm程度のシートが用いられる。
【0010】
スペーサーシート4の上面には接着剤層を介して吸水性素材固定シート6が貼着されている。吸水性素材固定シート6にも、スペーサーシート4の透孔5に対応する位置に、スペーサーシート4の透孔5よりやや小さめの径を有する透孔7が設けられている。より具体的には、透孔7の径は、後述する吸水性素材9の径よりも小さくなるように設計する。
吸水性素材固定シート6は耐水性を有する材料、好ましくはプラスチック素材からなり、例えばPET、シリコーン、PE、PP、PSなどが例示される。
吸水性素材固定シート6の厚さは、後述する吸水性素材9を支持できる程度のものであればよく、通常50~1000μm程度、好ましくは80~400μm程度、より好ましくは150~180μm程度のシートが用いられる。
【0011】
吸水性素材固定シート6の上面はカバーシート8で全面が覆われている。カバーシート8は前記ボトムシート1と同じ材質・厚みのものが使用され、自己粘着性を有するものが好ましい。
ボトムシート1、透孔3、5及び7並びにカバーシート8により、シート積層体の中空部が構成される。
【0012】
前記のスペーサーシート4の透孔5内には吸水性素材9が収納されている。吸水性素材9はその上面周囲で吸水性素材固定シート6に貼着されることにより支持されている。
吸水性素材9は、運搬の対象物(例えば微生物含有液)を滲み込ませ、保持できる材質であれば特に限定されないが、繊維状素材が好ましく、例えば濾紙、不織布、フエルトなどが例示される。
吸水性素材9の形状は、透孔5に適合するような形状であればよく、前述のように透孔3及び5が直径5mm程度とされる場合には、吸水性素材9は直径3mm程度に調製される。
【0013】
上記の構成からなる本発明のマルチウェルプレートを調製する際には、まずカバーシート8の上に吸水性素材固定シート6を貼着させ、次いでスペーサーシート4を貼着すると共に各透孔7に吸水性素材9を入れ、押圧することにより吸水性素材固定シート6に貼着し、更に剥離シート2及びボトムシート1を順次貼着し、次いで全体を反転させることにより製造することができる。
【0014】
図3は、図1及び2に示されるマルチウェルプレートの変形例を示し、同一の部材には同じ符号を付してある。
この例においては、スペーサーシート4と剥離シート2の間に小穴シート10が設けられている。この小穴シート10には、吸水性素材固定シート6の透孔7に対応する位置に透孔3aを有しており、当該透孔3aの径は透孔7の径と同程度又はそれよりも小さく設計されている。それに合わせて、剥離シート2に設けられている透孔3の径も、上記透孔3aの径と略同程度にされている。小穴シート10の素材としては、前記吸水性素材固定シート6と同様な素材が例示でき、その厚さは特に限定されず適宜な厚みのものを使用できる。
係る小穴シート10は、後述する本発明のマルチウェルプレートとの使用方法において、微生物含有液などを滲み込ませた吸水性素材9が、当該プレートの運搬中に、ボトムシート1上に落下することを防止するためのものである。吸水性素材9がボトムシート1上に落下していると、使用時にボトムシート1を剥離した際、当該吸水性素材9がマルチウェルプレートから脱落するという問題が生じる。
【0015】
本発明のマルチウェルプレートの他の例を図4に示す。図4は、図1に示されるマルチウェルプレートと略同様な外観を有するマルチウェルプレートのウェル部分の端面拡大概念図である。なお、図1及び図2に示されるマルチウェルプレートと同一の部材については同じ符号を付してある。
この例のマルチウェルプレートは、ボトムシート1、複数の透孔を有するスペーサーシート11及び12並びにスペーサーシート上を覆うカバーシート8が順次積層されてなり、スペーサーシート11及び12の各透孔には吸水性素材9を保持する保持手段13a及び13bが設けられており、当該保持手段により各透孔14に吸水性素材9が保持されている。ボトムシート1、スペーサーシート11及び12、吸水性素材9並びにカバーシート8は、図1及び図2に示されるマルチウェルプレートと同様な素材が使用される。
【0016】
より具体的には、ボトムシート1上に複数の透孔14を有する下部スペーサーシート11及び上部スペーサーシート12が順次貼着されている。下部スペーサーシート11及び上部スペーサーシート12には、一対の切欠き凹部13a及び13bが透孔14の円周方向に沿って設けられており、係る凹部13a及び13bに吸水性素材9の端部が嵌め込まれ保持される。即ち、凹部13a及び13bが吸水性素材9の保持手段を構成している。なお、上記の例では、凹部13a及び13bで吸水性素材9の保持手段をなしているが、それに代えて吸水性素材の側面を接着などの方法でスペーサーシート11及び12に保持する方法であってもよい。
図4に示されるマルチウェルプレートの調製方法としては、例えば、ボトムシート1上に、透孔14に切欠き部13aを有する下部スペーサーシート11を貼着する。次いで各透孔14の切欠き部13aに吸水性素材9を配置し、その上に切欠き部13bを有する上部スペーサーシート12を貼着し、更にその上をカバーシート8で覆うことにより製造することができる。
なお、上部スペーサーシート11及び下部スペーサーシート12は、例えば高周波溶接などの慣用の手段で融着させてもよい。
【0017】
上述された本発明のマルチウェルプレートは、密封可能の容器(例えば、ポリ袋、ポリ容器等)に収容し、密封するの好ましい。容器としては、ポリ袋が簡便で好ましい。
【0018】
以下、本発明のマルチウェルプレートの使用方法を、図1及び図2に示されるマルチウェルプレートを使用し、運搬対象物として微生物含有液を用いた場合で説明する。
上記のように、密封容器に収容されたマルチウェルプレートは、慣用の滅菌手段(例えば、電子線滅菌、ガンマー線滅菌、高圧蒸気滅菌等)で滅菌する。この滅菌状態で、使用者に供給される。
使用者は、クリーンルームで容器を開封し、本発明のマルチウェルプレートを取り出し、取り出した後、カバーシート8を剥離する。
かくして、上面を開放した後、透孔7を介して吸水性素材9に微生物含有液を滴下し、滲み込ませて微生物(菌株)を保持する。微生物含有液は、通常、定常期まで培養・保存されている微生物を慣用の媒体(例えば、生理食塩水等)に分散させた液が用いられる。微生物含有液の滴下量は適宜選択することができるが、通常10μl程度とされる。
【0019】
なお、本発明のマルチウェルプレートには複数の吸水性素材9が設けられているので、それぞれに異なった微生物(菌株)を保持することができる。即ち、添付図面の96穴マルチウェルプレートであれば、96種類の微生物を保持することができる。
かくして、各吸水性素材9に微生物を保持した後、カバーシート8で吸水性素材固定シート6の上面を覆う。カバーシート8で覆うことにより、雑菌のコンタミネーションを防止すると共に孔相互間の混入を防ぐことができる。
【0020】
カバーシート8で被覆した後、前述の容器(好ましくはポリ袋)に収納し、開口部を慣用の密封手段(例えば、ヒートシール、密封チャック等)で密封し、運搬に供する。
運搬された本発明のマルチウェルプレートは、受け取った使用者がクリーンルームで開封し、ボトムシート1を剥離した後、慣用の固型培地に密着させ、当該培地上にレプリカすることにより、プレート上の全微生物を一度に培養することができる。
この際、マルチウェルプレートに保持された微生物は、固形培地の上にそのままレプリカされるので、位置関係が明確になり、微生物の誤認を防止することができる。また、剥離シート2が付いた状態なので、培地に対する接着剤の影響を回避することができる。
【0021】
なお、運搬対象物がPCR用検体などのようなDNA試料の場合には、まず、各ウェルに溶液(例えば、PCR反応に使用する場合にはPCR反応液)を充填した慣用のマルチウェルプレートを用意する。次いで、本発明のマルチウェルプレートのボトムシート1(剥離シート2を有する場合には剥離シートも)を剥離し、スペーサーシート(4又は11)又は小穴シート10の下面に存在する接着剤層の接着力を用いて、上述の慣用のマルチウェルプレート上に密着させる。この際、慣用のマルチウェルプレートの各ウェルと吸水性素材9の位置が対応するように密着させる。密着後、全体を反転させて、ウェル中の溶液を吸水性素材9と接触させ、吸水性素材9中のDNA試料を溶液中に抽出する。この状態で暫く放置する(約10分程度)。次いで、再度反転させて元の状態にし、遠心分離などの慣用の手段を用いて、吸水性素材9中のDNA試料を溶液に移行させる。その後、本発明のマルチウェルプレートを脱離させ、ウェル中のDNA試料は常法に準じてPCR処理などの目的とする処理工程に付す。
【0022】
なお、上記の使用法において、微生物については特に限定されず、例えば大腸菌、枯草菌、酵母などが例示される。また、当該微生物は、組換遺伝子を含む形質転換体であってもよく、更には組換遺伝子を有するファージが感染した微生物であってもよい。更に、凍結保存が可能な微生物においては、適当な凍結保護剤(例えば、DMSO等)を含む微生物含有液を、前記吸水性素材9に滴下し、以下は上記と同様に密封した後、凍結処理をしてもよい。係る態様によれば、凍結状態で微生物を保管することが可能になる。
【0023】
本発明のマルチウェルプレートは、微生物の運搬に供される他、動物細胞の運搬にも利用可能である。動物細胞は通常足場依存性を有するが、前記の吸水性素材9が動物細胞の足場として機能する。従って、動物細胞含有液を、前記の吸水性素材4に滴下し、以下は上記と同様に密封することにより、動物細胞の運搬に供することができる。この際、当該動物細胞含有液に凍結保護剤を添加することにより、凍結状態で動物細胞を運搬し、また保存することも可能である。
動物細胞としては、慣用の株化細胞の他、組換遺伝子を含む動物細胞(形質転換体)であってもよい。係る形質転換体の調製に用いられる動物細胞としては、遺伝子組換技術で繁用される動物細胞、例えば、マウス線維芽細胞C127、チャイニーズハムスター卵巣細胞CHO、サルCOS細胞などが例示される。
【0024】
図3及び図4に示される本発明のマルチウェルプレートも上記と実質的に同様な方法で使用することができる。
【実施例】
【0025】
以下、実施例に基づいて、本発明をより詳細に説明するが、本発明はこの例に限定されるものではない。
実施例1
図1及び2に示されるマルチウェルプレートの調製
カバーシートとして自己粘着性を有するPE製シート(FSK社製、85mm×145mm×80μm)を用いた。
カバーシート上に、図1に示されるように一列8個で12列の等間隔で設けた透孔(直径約2mm)を有するPET製吸水性素材固定シート(日東シール社製、85mm×145mm×80μm)を重ね合わせて貼着した。更に、吸水性素材固定シートの非貼着面にシリコン系接着剤(以下、接着剤は同じものを使用した)を均一に塗布した。
吸水性素材固定シートの接着剤面に、吸水性素材固定シートの透孔に対応する位置に透孔(直径約5mm)を有するPET製スペーサーシート(電気化学工業社製、85mm×145mm×150μm)を、透孔の中心が略一致するように重ね合わせて貼着した。次いで、スペーサーシートの各透孔に、濾紙(直径約3mm、厚さ約150μm)を入れ、押圧することにより濾紙を吸水性素材固定シートに貼着させた。更に、スペーサーシートの非貼着面に接着剤を塗布した。
上記スペーサーシートの接着剤面に、スペーサーシートの透孔に対応する位置に透孔(直径約5mm)を有するフッ素樹脂製剥離シート(85mm×145mm×50μm)を、透孔の中心が略一致するように重ね合わせて貼着した。
また、ボトムシートとして、カバーシートと同じものを使用し、それを剥離シートに全面に重ね合わせて貼着した。
次いで、上記の積層体を反転させることにより、図1及び2に示される本発明のマルチウエルプレートを作製した。
得られたマルチウエルプレートは、ポリ袋(220mm×95mm)に収容し、開口部をヒートシールした後、電子線滅菌処理を行った。
【0026】
実施例2
図3に示されるマルチウェルプレートの調製
カバーシートとして自己粘着性を有するPE製シート(FSK社製、85mm×145mm×80μm)を用いた。
カバーシート上に、一列8個で12列の等間隔で設けた透孔(直径約3mm)を有するPET製吸水性素材固定シート(日東シール社製、85mm×145mm×180μm)を重ね合わせて貼着した。更に、吸水性素材固定シートの非貼着面にシリコン系接着剤を均一に塗布した。
吸水性素材固定シートの接着剤面に、吸水性素材固定シートの透孔に対応する位置に透孔(直径約4.2mm)を有するPET製スペーサーシート(電気化学工業社製、85mm×145mm×400μm)を、透孔の中心が略一致するように重ね合わせて貼着した。次いで、スペーサーシートの各透孔に、濾紙(直径約4mm、厚さ約360μm)を入れ、押圧することにより濾紙を吸水性素材固定シートに貼着させた。更に、スペーサーシートの非貼着面に接着剤を塗布した。
上記スペーサーシートの接着剤面に、スペーサーシートの透孔に対応する位置に透孔(直径約3mm)を有するPET製小穴シート(日東シール社製、85mm×145mm×180μm)を重ね合わせて貼着した。次いで、当該小穴シートの非貼着面に接着剤を塗布した。
上記小穴シートの接着剤面に、小穴シートの透孔に対応する位置に透孔(直径約3mm)を有するフッ素樹脂製剥離シート(85mm×145mm×50μm)を、透孔の中心が略一致するように重ね合わせて貼着した。
また、ボトムシートとして、カバーシートと同じものを使用し、それを剥離シートに全面に重ね合わせて貼着した。
次いで、上記の積層体を反転させることにより、図3に示される本発明のマルチウエルプレートを作製した。
得られたマルチウエルプレートは、ポリ袋(220mm×95mm)に収容し、開口部をヒートシールした後、電子線滅菌処理を行った。
【0027】
実施例3
図4に示されるマルチウェルプレートの調製
ボトムシートとして自己粘着性を有するPE製シート(FSK社製、85mm×145mm×80μm)を用いた。
ボトムシート上に、一列8個で12列の等間隔で設けた透孔(直径約3mm)を有するPET製下部スペーサーシート(日東シール社製、85mm×145mm×380μm)を重ね合わせて貼着した。なお、スペーサーシートの各透孔には切欠き部(幅0.6mm、高さ200μm)が透孔の円周方向に沿って設けられている。
次いで各透孔の切欠き部に、濾紙(直径約4mm、厚さ約360μm)を入れた後、上記下部スペーサーシートと同様な切欠き部を有し、同様な素材からなる上部スペーサーシートを貼着し、更にボトムシートと同じ素材からなるカバーシートで覆うことにより、図4に示される本発明のマルチウェルプレートを調製した。
得られたマルチウエルプレートは、ポリ袋(220mm×95mm)に収容し、開口部をヒートシールした後、電子線滅菌処理を行った。
【産業上の利用可能性】
【0028】
有用微生物、動物細胞、DNAなどの運搬・保存に広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明のマルチウェルプレートの一例を示す平面概略図である。
【図2】図1のA-A線端面の部分拡大概念図である。
【図3】本発明のマルチウェルプレートの変形例を示す部分拡大端面概念図である。
【図4】本発明のマルチウェルプレートの他の例を示す部分拡大端面概念図である。
【符号の説明】
【0030】
1 ボトムシート
2 剥離シート
3、3a、5、7、14 透孔
4、11、12 スペーサーシート
6 吸水性素材固定シート
8 カバーシート
9 吸水性素材
10 小穴シート
13a、13b 切欠き部
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3