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明細書 :硝酸イオン存在下の酸化的雰囲気においてIr酸化物系助触媒を担持させた光触媒およびその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4528944号 (P4528944)
公開番号 特開2006-088019 (P2006-088019A)
登録日 平成22年6月18日(2010.6.18)
発行日 平成22年8月25日(2010.8.25)
公開日 平成18年4月6日(2006.4.6)
発明の名称または考案の名称 硝酸イオン存在下の酸化的雰囲気においてIr酸化物系助触媒を担持させた光触媒およびその製造方法
国際特許分類 B01J  35/02        (2006.01)
B01J  23/648       (2006.01)
B01J  23/68        (2006.01)
B01J  37/34        (2006.01)
C01B   3/04        (2006.01)
FI B01J 35/02 J
B01J 23/64 102M
B01J 23/68 M
B01J 37/34
C01B 3/04 A
請求項の数または発明の数 6
全頁数 12
出願番号 特願2004-275529 (P2004-275529)
出願日 平成16年9月22日(2004.9.22)
審査請求日 平成19年9月19日(2007.9.19)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000125370
【氏名又は名称】学校法人東京理科大学
発明者または考案者 【氏名】工藤 昭彦
【氏名】岩瀬 顕秀
【氏名】加藤 英樹
【氏名】細木 康弘
個別代理人の代理人 【識別番号】100089406、【弁理士】、【氏名又は名称】田中 宏
【識別番号】100096563、【弁理士】、【氏名又は名称】樋口 榮四郎
審査官 【審査官】廣野 知子
参考文献・文献 特開平10-099694(JP,A)
特開2001-232191(JP,A)
特開昭61-197033(JP,A)
特開昭63-107746(JP,A)
特開2001-179107(JP,A)
特開2004-255355(JP,A)
特開2004-089953(JP,A)
特開2001-246264(JP,A)
調査した分野 B01J 21/00-38/74
C01B 3/00-6/34
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
0.1重量%以上5重量%以下のアルカリ土類金属およびLaからなる群から選択される少なくとも1つの金属をドープしたATaO:B(x)〔Aはアルカリ金属、Bはアルカリ土類金属またはLa、xは0.1≦x≦5%である。〕の光触媒、SnNb光触媒、SrをドープしたSnNb光触媒、CsNb11光触媒、KTa12光触媒、SrTa光触媒またはAgTaO光触媒に硝酸イオンの存在下の酸化的雰囲気において水溶性のイリジウム供給化合物を用いて光電着法によりIr酸化物系助触媒を担持させた光触媒。
【請求項2】
0.1重量%以上5重量%以下のアルカリ土類金属およびLaからなる群から選択される少なくとも1つの金属をドープしたATaO:B(x)〔Aはアルカリ金属、Bはアルカリ土類金属またはLa、xは0.1≦x≦5%である。〕の光触媒がSEMによりナノステップ構造が観察されるものであることを特徴とする請求項1に記載のIr酸化物助触媒を担持させた光触媒。
【請求項3】
光電着法が硝酸イオンを溶かした水溶液の酸化的雰囲気において水溶性のイリジウム供給化合物として(NH[IrCl]またはNa[IrCl]を用いて進行させたことを特徴とする請求項1または2に記載のIr酸化物助触媒を担持させた光触媒。
【請求項4】
0.1重量%以上5重量%以下のアルカリ土類金属およびLaからなる群から選択される少なくとも1つの金属をドープしたATaO:B(x)〔Aはアルカリ金属、Bはアルカリ土類金属またはLa、xは0.1≦x≦5%である。〕のナノステップ構造の光触媒、SnNb光触媒、SrをドープしたSnNb光触媒、CsNb11光触媒、KTa12光触媒、SrTa光触媒またはAgTaO光触媒を硝酸イオンおよびIr酸化物助触媒を形成する水溶性のイリジウム供給化合物が存在する酸化的雰囲気の水溶液中に分散し、250nm以上740nm以下の紫外から可視領域内の光を照射して前記光触媒にIr酸化物助触媒を担持させるIr酸化物助触媒を担持させた光触媒の製造方法。
【請求項5】
0.1重量%以上5重量%以下のアルカリ土類金属およびLaからなる群から選択される少なくとも1つの金属をドープしたATaO:B(x)〔Aはアルカリ金属、Bはアルカリ土類金属またはLa、xは0.1≦x≦5%である。〕の光触媒がSEMによりナノステップ構造が観察されるものであることを特徴とする請求項4に記載のIr酸化物助触媒を担持させた光触媒の製造方法。
【請求項6】
イリジウム供給源として(NH[IrCl]またはNa[IrCl]を用いことを特徴とする請求項4または5に記載のIr酸化物助触媒を担持させた光触媒の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、タンタル酸アルカリ金属塩系光触媒、SnNb系光触媒、CsNb11光触媒、KTa12光触媒、SrTa光触媒またはAgTaO光触媒を用いての水の光完全分解または光酸化反応における活性、特に酸素生成反応活性を改善した硝酸イオン存在下の酸化的雰囲気において光電着により形成したIr酸化物系助触媒を担持させたタンタル酸アルカリ金属塩系光触媒、特にアルカリ土類金属またはLaをドープしたナノステップ構造のタンタル酸アルカリ金属塩系光触媒、SnNb光触媒、KTa12光触媒、SrTa光触媒またはAgTaO光触媒およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化石資源は無尽蔵とは言えないことから、これらを化学原料に振り向けることが資源の有効利用の観点から好ましい。また、地球温暖化などの環境問題などの観点から、COの発生を伴わないクリーンなエネルギーへの変換が熱望されている。また、石炭の燃焼の際にはCOの発生だけでなく、白雲母として石炭中に含まれている化合物からのフッ素の発生も有ると言われている。前記問題ないエネルギー供給手段として登場して来た原子力利用の発電技術も、燃料物質を製造する工程、及び使用後の処理において生成する物質の兵器としての使用などによる世界秩序の破壊が懸念されるという事態に至り、大きな問題を抱えることになった。このような中で、環境に優しく、安全性が高く、かつ設備コストも比較的かからないエネルギー資源の開発が望まれている。最近、風力発電に、無尽蔵なエネルギー資源の利用の観点、及び設備費も比較的小さいなどから、多くの投資が向けられている。また、太陽電池もクリーンで、利用性の高いエネルギーを生産することから、実用化され、かつ更に効率性の向上と、安定したエネルギー供給に向けて多数の研究が行われている。また、太陽光を利用するエネルギー変換技術として、光触媒を利用した水の光分解反応に興味が持たれている。ここで利用される水の光分解反応に活性を示す光触媒は、太陽光を構成する紫外光、可視光の光吸収、電荷分離、表面での酸化還元反応の一連の反応を進行させる機能を備えた高度な光機能材料であり、多くの系が提案されている。
【0003】
このような中で、光触媒を高活性化するための種々の技術的改善の検討がなされている。前記検討の中で、触媒粒子径のナノサイズ化、ナノサイズ粒子の形態・構造の検討、基質と光生成キャリアとの電子授受に寄与する助触媒の検討が光活性の特性の改善に大きく寄与するものと考えられている。助触媒の役割は、助触媒を担持させることにより、電荷の分離の促進および活性点の導入が行われることにある。従って、助触媒担持物は光触媒の研究の中で重要な役割を担っている。これまでに、水の完全分解に有効に働く助触媒としてPt、Rh、Pd、NiO、RuOが良く知られている。しかし、これらの助触媒はいずれも水素生成の活性点として働いている。一方、均一系のRu錯体光触媒に対する酸素生成活性点として働く助触媒としてIrOコロイドが原らによって報告された(非特許文献1)。これは、SmTiの不均一系光触媒に対しても効果的である(非特許文献2)。しかしながら、このIrOコロイド助触媒の担持には、[IrCl2-の加水分解によるIrOコロイドの調製に続く吸着という手順を踏まなければならない。また、純水の完全分解反応の触媒にイリジウム系助触媒を担持させ高光活性化させる技術が特許文献1に報告されているが、イリジウム酸化物系助触媒を担持させた具体例はないし、水素生成の活性点として働くことの言及があるだけである。
【0004】
触媒粒子径のナノサイズ化、ナノサイズ粒子の形態・構造(モルフォロジー)の検討に関しては、本発明者らは、高い光活性を示すタンタル酸アルカリ金属塩系の光触媒を得るために、この光触媒におけるナノサイズ化、およびアルカリ土類金属、Laドープによるナノステップ構造の形成と光触媒活性、特にドープ構造と光活性の発現との相関を検討し、報告してきた(非特許文献3)。
【0005】

【非特許文献1】Hara,M.: Mallouk, E, T. Chem Comm.2000,1903.
【非特許文献2】Ishikawa, A.; Takata, T.; N, Kondo, J.; Hara, M.; Kobayashi, H.; Domen, K. J. Am. Chem. Soc. 2002, 124,13547-13548,特に13548.
【非特許文献3】Iwase,A.:Kato,H.:Okutomi,H.:Kudo,A. Chem.Lett.2004,33,1260.
【特許文献1】特開2000-189806、特許請求の範囲、〔0027〕
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は、基本的には、今まであまり提案されていない酸化反応(酸素生成)のより高い活性点を提供する助触媒を提供することである。02pからなる深い価電子帯は、酸化反応に対して助触媒を必要としない。これに対して、可視光応答性光触媒の開発が盛んに行われている中、浅い価電子帯に対しては、前記助触媒の必要性が増すと予想され、価電子帯が02pより浅いSn3dからなるSnNbO系の活性を向上させるには、酸素生成反応を活性化する助触媒の開発が必要であることは明らかである。また,水の完全分解に対して水素生成反応を活性化する助触媒を用いて高い光触媒活性を実現した前記タンタル酸塩系においても酸素生成反応を活性化する助触媒の開発が必要であることは明らかであるから、これらの要求を満たすために酸素生成反応を活性化する助触媒を提供することである。そこで、本発明者らは、前記酸素生成反応を触媒することが報告されているIrO触媒を採用することを考えたが、そのままでは全く適用できないことが分かった。従って、前記光触媒活性の高いタンタル酸塩系の光触媒等において酸素生成反応の活性点として機能する助触媒をどのような手法を用いたら形成できるかを検討することが必要であった。そこで、IrO助触媒を形成するのに、助触媒を形成する方法として知られている1つの方法である光電着法を用いることを試みた。すなわち、水溶性のイリジウム化合物(NH[IrCl]を純水中に溶解した溶液に、前記本発明者らが開発したタンタル酸塩系光触媒などを分散し、紫外線を照射してIr系助触媒の担持を試みた。その結果、前記方法による助触媒の担持により光触媒活性は向上した。しかしながら、時間経過により活性が低下するという現象が現れ、そして、前記活性の低下の原因が生成したHとO間の逆反応が進行すること起こり、それがIr系助触媒によることが分かった。
【0007】
この逆反応の原因はIr金属の逆反応触媒作用によるものと考えることができる。そこで、IrO助触媒を光電着法により効率的に形成するにはどうすればよいかと考え、イリジウムが酸化物を形成する酸化的雰囲気を提供することが重要と考え、種々検討する中で、前記光電着水溶液に硝酸イオンを存在させ、酸化的雰囲気下で光電着反応を進行させることにより、前記逆反応を抑制し、かつ光触媒活性の向上したタンタル酸塩系光触媒が得られることを確認し、IrO助触媒を担持した光触媒活性の高いタンタル酸塩系の光触媒を提供すること可能であることが確認され、前記課題を解決することができた。また、前記IrO助触媒の形成を本来水素生成光触媒であるSnNb系光触媒に適用したところ、酸素生成反応に活性な助触媒となることを確認できた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明第1は、(1)0.1重量%以上5重量%以下のアルカリ土類金属およびLaからなる群から選択される少なくとも1つの金属をドープしたATaO:B(x)〔Aはアルカリ金属、Bはアルカリ土類金属またはLa、xは0.1≦x≦5%である。〕の光触媒、SnNb光触媒、SrをドープしたSnNb光触媒、CsNb11光触媒、KTa12光触媒、SrTa光触媒またはAgTaO光触媒に硝酸イオンの存在下の酸化的雰囲気において水溶性のイリジウム供給化合物を用いて光電着法によりIr酸化物系助触媒を担持させた光触媒である。好ましくは、(2)0.1重量%以上5重量%以下のアルカリ土類金属およびLaからなる群から選択される少なくとも1つの金属をドープしたATaO:B(x)〔Aはアルカリ金属、Bはアルカリ土類金属またはLa、xは0.1≦x≦5%である。〕の光触媒がSEMによりナノステップ構造が観察されるものであることを特徴とする前記(1)に記載のIr酸化物助触媒を担持させた光触媒であり、より好ましくは、(3)光電着法が硝酸イオンを溶かした水溶液の酸化的雰囲気においてイリジウム供給源として(NH[IrCl]またはNa[IrClを用いて進行させたことを特徴とする前記(1)または(2)に記載のIr酸化物助触媒を担持させた光触媒である。
本発明の第2は、(4)0.1重量%以上5重量%以下のアルカリ土類金属およびLaからなる群から選択される少なくとも1つの金属をドープしたATaO:B(x)〔Aはアルカリ金属、Bはアルカリ土類金属またはLa、xは0.1≦x≦5%である。〕のナノステップ構造の光触媒、SnNb光触媒、SrをドープしたSnNb光触媒、CsNb11光触媒、KTa12光触媒、SrTa光触媒またはAgTaO光触媒を硝酸イオンおよびIr酸化物助触媒を形成する水溶性のイリジウム供給化合物が存在する酸化性雰囲気の水溶液中に分散し250nm以上740nm以下の紫外から可視領域内の光を照射して前記光触媒にIr酸化物助触媒を担持させるIr酸化物助触媒を担持させた光触媒の製造方法である。好ましくは、(5)0.1重量%以上5重量%以下のアルカリ土類金属およびLaからなる群から選択される少なくとも1つの金属をドープしたATaO:B(x)〔Aはアルカリ金属、Bはアルカリ土類金属またはLa、xは0.1≦x≦5%である。〕の光触媒がSEMによりナノステップ構造が観察されるものであることを特徴とする前記(4)に記載のIr酸化物助触媒を担持させた光触媒の製造方法であり、より好ましくは、イリジウム供給源として(NH[IrCl]またはNa[IrCl]を用いことを特徴とする前記(4)または(5)に記載のIr酸化物助触媒を担持させた光触媒の製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
発明の効果として、先ず、硝酸イオン存在下で(NH[IrCl]からの光電着という簡便な手法にて担持したイリジウム系助触媒が、光触媒を用いた水の分解反応の活性を向上させたこと、およびこのようにして担持したイリジウム系助触媒は、硝酸銀水溶液からの酸素生成反応に対しても反応促進の効果を発揮したことを挙げることができる。特に、可視光に活性を示す光触媒を用いた水の分解反応においても酸素生成反応に対しても反応促進の効果示すことは、水の光完全分解に大きく貢献するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
A,本発明の大きな特徴は可視光領域に光触媒活性を示す触媒に対して、酸素生成反応を促進する助触媒を前記光触媒に形成する方法を提供できたことである。
1,前記助触媒の形成は、Ir供給水溶性化合物を溶解した硝酸イオンを含む酸化的雰囲気下の水溶液に前記光触媒を懸濁させ、250nm以上740nm以下の紫外から可視領域の光を照射し光電着により前記光触媒にイリジウム酸化物系助触媒を担持させて行うことができる。
2,前記酸素生成反応を促進する助触媒が有効に機能する光触媒としては、請求項1に記載の光触媒を特に有効な光触媒として挙げることができるが、他の光触媒、特に可視光領域に活性を示す触媒に有用である。
3,Ir供給水溶性化合物としては(NH[IrCl]を特に好ましい化合物として挙げることができる。イリジウム酸化物系助触媒の好ましい担持量は光触媒によっても異なるが、0.12重量%~0.78重量%、好ましくは0.13重量%~0.52重量%である。
4,イリジウム酸化物系助触媒の効果は、水素生成サイトおよび酸素生成サイトの分離が効率よくなされている光触媒において、例えば前記非特許文献3に記載のナノステップ構造の形成された光触媒において効果を発揮する。
【0011】
B,光触媒反応特性、および触媒の特性の測定機器;
(1)光触媒反応は、閉鎖循環系にて行った。前記閉鎖循環系を備えた装置を図6に示す。反応管は、紫外光照射では石英製内部照射型反応管を、可視光照射ではPyrex製上方照射型反応管を用いた。紫外光照射では400W高圧水銀灯(SEN;HL400EH-5)を,可視光照射ではカットオフフィルター(Kenko:L42)を取り付けた300Wキセノンランプ(パーキンエルマー:CERMAX-LX300F)を用いた。
(2)生成したHおよびOは、前記に閉鎖循環系を備えた装置に接続されたガスクロマトグラフ(Shimadzu; GC-8A, MS-5A column, TCD, Ar carrier)で測定した。
(3)触媒のキャラクタリゼーション
1.光触媒粉末は、X線回折(リガク:MiniFlex)によって同定した。
2.拡散反射スペクトルを吸光光度分光計(日本分光:Ubest-V570)で測定した。
【実施例1】
【0012】
(1)光触媒の調製;
Laを2%ドーピングしたNaTaO(以後NaTaO:La(2%))を以下の手順で調製した。
NaTaO:La(2%) 粉末の調製(Kato,H.;Asakura,K.;Kudo,A.J.Am.Chem.Soc.2003,125,3082.による。)
NaTaO:La(2%)は、固相法で調製した。原料(NaCO(Kanto Chemical;99.5%)、Ta(Rare metallic;99.9%)およびLaをNa:La:Ta=1.05:0.02:1で混合した。Naは焼成時の揮発による損失を補うため、過剰にした。この混合物を、白金るつぼを用いて空気中1423Kで10h焼成した。過剰のアルカリは、焼成後水で洗浄し、その後乾燥させることでNaTaO:La(2%)粉末を得た。
【0013】
(2)助触媒担持法;
イリジウム系助触媒の担持;比較のために純水を用いた場合も示す。
純水中(比較例)および硝酸イオンを含む水溶液中に(NH[IrCl](ヘキサクロロイリジウム酸アンモニウム; Wako)を所望の担持量になるように配合して調製した反応溶液に、前記(1)で調製したNaTaO:La(2%)光触媒を仕込み、光(250nm以上)を照射して光電着反応を進行させた。前記反応溶液には、純水および硝酸イオン供給源として硝酸アルカリ(NaNO,(Kanto、99%)、KNOまたはCsNO)を使用した。また、必要に応じて光電着後に触媒を遠心分離法にて洗浄、回収した。
【0014】
(3)光触媒特性;
イリジウム系助触媒の光触媒的水分解反応での効果;ここでは、前記(2)で純水を用いて調製したものも比較例として示した。
前記(1)~(2)で調製した光触媒の性能を前記光触媒反応特性を測定する閉鎖循環系装置を用いて測定した。
図3に純水中(比較例)で調製したイリジウム酸化物助触媒を光電着したNaTaO:La(2%)の光触媒を分散させ水の完全分解反応を行った結果を示す。この場合では、初期には助触媒未担持に比べ3倍程度活性の向上が見られたが、すぐに失活した。これは、水分解に対して生成したHとOが水にもどる逆反応の割合が大きくなったためである。この触媒では、NaTaO:La(2%)中に光生成した電子により反応溶液中のIr4+が還元されることで触媒表面上にIrメタルとして担持され、このIrメタル表面で逆反応が早く進行したと考えられる。このことは、光照射をやめた後に、生成したHとOがほぼ2:1で減少することから示された。
【0015】
(4)ここでは、光水分解系に硝酸イオンを存在させ、反応系中でイリジウム酸化物系助触媒が生成する系での光触媒特性を示す。
図2に、硝酸イオン存在下の、光触媒測定系に、すなわち、反応場でイリジウム酸化物助触媒を担持させつつ水分解反応を行った結果を示す。この反応では、以下に示す硝酸イオンの還元反応が水の還元反応と競争して進行している。
2H+2e→H (1)
2NO+2H+2e→ 2NO+HO (2)
このときH活性は、イリジウム酸化物助触媒未担持のときの約6倍に向上した。また、純水中で光電着した場合とは異なり、光照射下で定常的に水素および酸素が生成した。さらに,7時間(h)での水素生成量は7.17mmolとなり、下記の式(3)に示されるNaTaO:La(2%)に対する反応電子数のターンオーバー数は3.7に、またイリジウムに対する反応電子数のターンオーバー数は598に達した。
[ターンオーバー数]=[反応した電子の物質量]/[触媒の物質量] (3)
また、ダーク時における逆反応は抑制されていた。これは、硝酸イオンが酸化剤として働くために、光生成した電子によるIr4+の還元を抑制し、Ir4+が酸化イリジウムとして担持されたためであると考えられる。
この酸化イリジウムは、酸素生成反応を触媒するが、逆反応を触媒しない。この特性は、水分解光触媒のための助触媒に求められている特性である。このように、簡便な手法で担持できる酸素生成促進型の水分解用イリジウム酸化物系助触媒を開発できることが予想させる実験である。
【0016】
(5)イリジウム酸化物系助触媒を担持させた後、NaTaO:La(2%)を回収した触媒の光触媒活性の測定;
前記(4)のイリジウム酸化物系助触媒の硝酸イオンの競争的反応を除外し、水分解に対する効果を調べるために、イリジウム酸化物系助触媒を光電着させた後、触媒を遠心分離法による洗浄、回収を行い硝酸イオンを取り除き、純水中で再度反応を行った(図1)。2回の反応の純水中における反応では、水素と酸素が量論比でそれぞれ1000および500μmol/hで生成した。そして、再排気後も定常的な活性が得られた(3回反応)、更にダークで逆反応の進行が見られなかったことから、一度硝酸イオン存在下で光電着されたイリジウム助触媒は、光水分解系の硝酸イオンを取り除いても(3)でのようにメタルに還元されることなく高い助触媒能を維持することが明らかとなった。
【0017】
図4にNaTaO:La(2%)に担持されたイリジウム系助触媒の拡散反射スペクトルを示す。硝酸イオン存在下で光電着したイリジウム助触媒では600nm付近に吸収バンドが見られたのに対し、純水中で担持したイリジウムメタル助触媒では、この吸収が見られなかった。このように、光電着の際の硝酸イオンの有無によって、担持されたイリジウム助触媒はまったく異なった吸収スペクトルを示した。このことからも、純水中での光電着と酸化的雰囲気での光電着では、まったく違った形態のイリジウム系助触媒が担持されていることが明らかとなった。表1、2に、イリジウムの担持条件及び担持量を変化させたときのNaTaO:La(2%)の活性を示す。表1で酸素が過剰に生成しているのは、硝酸イオンの光分解による酸素生成のためである。純水を用いた表1の測定ではこのような現象は見られない。イリジウムの最適担持量は、硝酸溶液中の光電着時およびその後の純水での反応においても0.26重量%であった(表1、2)。これより低い担持量では、助触媒担持により導入される活性点の数が不十分であると考えられる。一方、これより多い担持量では、担持されたIrが表面を覆ってしまい水素生成の活性サイトがつぶされたり、NaTaO:La(2%)光触媒自身に届く光の量が減少してしまったりしたために活性が低くなったと考えられる。また,出発原料としてNa[IrCl]を用いても、同様の効果が見られた。
今まで、NiO、RuOなどのH生成助触媒を担持することにより活性の向上が計られてきた。今回の、O生成助触媒を担持することによっても、活性を向上せさることができることが明らかとなった。
【0018】
【表1】
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【0019】
【表2】
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【実施例2】
【0020】
実施例1のLaに代えてSr(5重量%)ドープしたNaTaO系触媒、NaTaO:Sr(5%)触媒に実施例1と同様の方法でIr酸化物助触媒を担持させた場合における光水分解活性の特性を表3に示す。顕著な光触媒活性の向上が見られる。
【0021】
【表3】
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【実施例3】
【0022】
SnNb触媒を用いた場合;
(1)SnNb粉末の調製;(Hosogi,Y.;Tanabe,K.;Kato,H.;Kobayashi,H.;Kudo,A.Chem.Lett.2004, 33,28.参照)
SnNbは、不活性ガス中での固相法で調製した(873-1273K)。原料としてSnO( Wako、99.9%)、およびNb(Kanto、 99.95%)を用いた。Sn0.95Sr0.05Nbは前記SnNb触媒にSrをドープすることにより得られる。
(2)助触媒担持及び光触媒反応の結果;
実施例1と同様にイリジウムを硝酸イオン存在下で担持させた。表4にイリジウム酸化物助触媒を担持した触媒を硝酸銀水溶液に分散し酸素生成反応の活性を測定した結果を示す。SnNb触媒は水素生成反応の触媒として活性を示すが、酸素の生成反応には活性を示さないが、イリジウム酸化物助触媒の担持により酸素生成反応に活性を示すことが表3の結果から分かる。
【0023】
【表4】
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【実施例4】
【0024】
ここでは、光触媒として、CsNb11光触媒、KTa12光触媒、SrTa光触媒またはAgTaO光触媒を用いて、これにIr酸化物助触媒を担持させた光触媒の活性の改善について示す。
(1)CsNb11粉末の調製(三石雄悟, 加藤英樹, 工藤昭彦 日本化学会第81春季年会予稿集 2002,480.参照);
CsNb11は、固相法で調製した。原料(CsCO(Kanto Chemical、98%)、Nb(Kanto、99.99%)を混合し、白金るつぼを用いて空気中1123Kで5h焼成した。過剰のアルカリは、焼成後水で洗浄し、その後乾燥させることでCsNb11粉末を得た。
(2)助触媒担持法;
イリジウム系助触媒の担持は、目的担持量(NH[IrCl](ヘキサクロロイリジウム酸アンモニウム; Wako)を光触媒とともに反応溶液に仕込み、光(紫外光)を照射する光電着法で行った。反応溶液には、純水および硝酸アルカリ溶液(NaNO,(Kanto、99%)、KNO、CsNO)を使用した。また、必要に応じて光電着後に触媒を遠心分離法にて洗浄、回収した。
(3)KTa12光触媒の触媒調製(奥富太陽・加藤英樹・工藤昭彦 触媒討論会 2002, 40.参照)。
SrTa光触媒の触媒調製(Kudo, A.; Kato, H.; Nakagawa, S. J. Phys. Chem. B, 2000, 104, 571. 参照)。
AgTaO光触媒の調製(Kato, H.; Kobayashi, H.; Kudo, A. J. Phys. Chem. B, 2002, 106, 12441. 参照)。
前記文献記載の手法により調製した、KTa12光触媒、SrTa光触媒及びAgTaO光触媒を用い、実施例1と同様の方法でIr酸化物助触媒を担持させて光触媒を調製した。図5は、SrTa光触媒、SrTiO触媒、NaTaO触媒にイリジウム酸化物系助触媒を担持させた触媒の拡散反射スペクトルを示す。
(4)光触媒反応;
前記各実施例と同様の閉鎖循環系装置にて行った。結果を表5に示す。Ir酸化物助触媒を担持させることにより光活性が見られた。
【0025】
【表5】
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【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明の硝酸イオンの存在下の酸化的雰囲気下において光電着によりIr酸化物助触媒を担持させた光触媒は、従来にない酸化反応の活性を向上させ、更に前記特性の向上に伴って光触媒の活性を改善することができるという、全く新しい触媒の活性化技術を提供できた点で、酸化反応を利用する、特に光触媒を用いた酸化反応を利用する産業において多大の貢献をすることは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】実施例1の硝酸イオン存在下でイリジウム酸化物系助触媒を光電着させた後、触媒を遠心分離法、洗浄して回収した光触媒を、(1回)硝酸イオン存在下水中で、および(2回)、(3回)の純水中に分散して光水分解反応した場合、及び暗所における純水中での前記光触媒の安定性(メタルに還元されない)を示す。2回の反応では水素と酸素が量論比でそれぞれ1000および500μmol/hで生成を示す。
【図2】実施例1の反応場でイリジウム酸化物助触媒を光触媒に担持させつつ硝酸イオン存在下で水分解反応を行った結果を示す。
【図3】比較例としての純水中でイリジウム酸化物をNaTaO:La(2%)光触媒に光電着した触媒を分散させ水の完全分解反応を行った結果を示す。
【図4】異なる反応雰囲気下でイリジウム系助触媒を担持したNaTaO:La(2%)触媒の拡散反射スペクトル、及びIrOコロイドの吸収スペクトルを示す。
【図5】イリジウム系助触媒を担持したそれぞれの触媒の拡散反射スペクトルを示す。
【図6】光触媒の光水分解特性を測定する閉鎖循環系装置
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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