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明細書 :可視光を全吸収する水素生成のための黒色光触媒

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4608693号 (P4608693)
公開番号 特開2006-167652 (P2006-167652A)
登録日 平成22年10月22日(2010.10.22)
発行日 平成23年1月12日(2011.1.12)
公開日 平成18年6月29日(2006.6.29)
発明の名称または考案の名称 可視光を全吸収する水素生成のための黒色光触媒
国際特許分類 B01J  35/02        (2006.01)
B01J  27/04        (2006.01)
B01J  27/045       (2006.01)
C01B   3/04        (2006.01)
C01G  15/00        (2006.01)
H01M   8/06        (2006.01)
FI B01J 35/02 J
B01J 27/04 M
B01J 27/045 M
C01B 3/04 A
C01G 15/00 B
C01G 15/00 J
H01M 8/06 R
請求項の数または発明の数 5
全頁数 11
出願番号 特願2004-365794 (P2004-365794)
出願日 平成16年12月17日(2004.12.17)
審査請求日 平成19年12月17日(2007.12.17)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】803000115
【氏名又は名称】学校法人東京理科大学
発明者または考案者 【氏名】工藤 昭彦
【氏名】青野 成彦
【氏名】長根 聖
【氏名】辻 一誠
【氏名】加藤 英樹
個別代理人の代理人 【識別番号】100089406、【弁理士】、【氏名又は名称】田中 宏
【識別番号】100096563、【弁理士】、【氏名又は名称】樋口 榮四郎
審査官 【審査官】廣野 知子
参考文献・文献 特開平10-214986(JP,A)
特開平10-125941(JP,A)
特開2001-223374(JP,A)
特開2000-150933(JP,A)
特開2004-008922(JP,A)
調査した分野 B01J 21/00ー38/74
C01G 15/00
JSTPlus(JDreamII)
JST7580(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
一般式Cu1-XAgXInS2(Xは、0.4以上0.6以下である。)で表されるCuInS2のCuの一部をAgで又は一般式CuGa1-YInY2(Yは、0.7以上0.9以下である。)で表されるCuInS2のIn一部を金属Gaで置換した黒色固溶体からなる光半導体にRu、PtまたはRh助触媒を担持させた半導体光触媒
【請求項2】
請求項1に記載の半導体光触媒からなる、硫黄化合物を含む水溶液の光水分解により水素を生成する水分解用半導体光触媒。
【請求項3】
黄化合物を含む水溶液がSO32-とS2-イオンが存在する水溶液である請求項に記載の光水分解により水素を生成する水分解用半導体光触媒。
【請求項4】
請求項1乃至3項に記載の半導体光触媒を構成する一般式Cu1-XAgXInS2(Xは、0.4以上0.6以下である。)で表されるCuInS2のCuの一部をAgで又は一般式CuGa1-YInY2(Yは、0.7以上0.9以下である。)で表されるCuInS2のIn一部を金属Gaで置換した黒色固溶体からなる光半導体。
【請求項5】
硫黄化合物を含む水溶液に、Ru、PtまたはRh助触媒を担持させた一般式Cu1-XAgXInS2(Xは、0.4以上0.6以下である。)で表されるCuInS2のCuの一部をAgで置換した黒色固溶体からなる水分解用半導体光触媒、又は一般式CuGa1-YInY2で(Yは、0.7以上0.9以下である。)表されるCuInS2のIn一部を金属Gaで置換した黒色固溶体からなる水分解用半導体光触媒を加え可視光および近赤外光までの光を照射して光水分解により水素を生成させる光水分解方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、可視光のほぼ全領域の光を吸収する半導体CuInSのCu又はInの一部を金属AgまたはGaで置換した黒色固溶体からなる光半導体にRu、PtまたはRh助触媒を担持させた光触媒および前記光触媒を用いて硫黄化合物を含む水溶液、特にSO2-とS2-イオンを生成する硫黄化合物を含む水溶液の光水分解により水素を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化石資源は無尽蔵とは言えないことから、これらを化学原料に振り向けることが資源の有効利用の観点から好ましい。また、地球温暖化などの環境問題などの観点から、COの発生を伴わないクリーンなエネルギーへの変換が熱望されている。また、石炭の燃焼の際にはCOの発生だけでなく、白雲母として石炭中に含まれている化合物からのフッ素の発生も有ると言われている。前記問題のないエネルギー供給手段として登場して来た原子力利用の発電技術も、燃料物質を製造する工程、及び使用後の処理において生成する物質の兵器としての使用などによる世界秩序の破壊が懸念されるという事態に至り、大きな問題を抱えることになった。ただ、この問題が全地球的な合意により民生用のみの利用に限定することの合意が得られれば、依然として有用なエネルギー供給手段である。
このような中で、環境に優しく、安全性が高く、かつ設備コストも比較的かからないエネルギー資源の開発が望まれている。最近、風力発電に、無尽蔵なエネルギー資源である風力の利用の観点、及び設備費も比較的小さいなどから、風力の利用の向上などの研究開発含めて多くの投資がされている。ただ、ここにも野鳥などへ被害の発生が見られるようになり、再評価の余地もある。また、太陽電池もクリーンで、利用性の高いエネルギーを生産することから、実用化され、更なる効率性の向上と、安定したエネルギー供給に向けて多数の研究が行われている。また、太陽光を利用するエネルギー変換技術として、光触媒を利用した水の光分解反応にも興味が持たれてきた。ここで利用される水の光分解反応に活性を示す光触媒は、太陽光を構成する紫外光、可視光の光吸収、電荷分離、表面での酸化還元反応の一連の反応を振興させる機能を備えた高度な光機能材料であり、多く系が提案されている。
【0003】
前記太陽エネルギーを利用する技術開発において、太陽光のより有効利用の観点から可視光応答特性が向上した光触媒を見出すことが望まれ、光触媒を構成する化合物のライブラリーの豊富化の研究に努力し、実用化への検討もされている。しかし、可視光の広い領域において活性を示す、太陽光を高効率利用できる水分解触媒の開発においては、未だ初期の段階である。また、犠牲試薬の存在する水溶液を用いての光水分解により水素もしくは酸素を生成させる技術においても、可視光において高い活性を示す光触媒もそう多くはない。このような中で、硫化物光触媒は、犠牲試薬を必要とする光触媒であるが、Sの3p軌道による高い価電子帯の形成によりバンドギャップが小さく、酸化物に比べ可視光の広領域のスペクトルを吸収する特性を示す。また、水分解溶液に存在させる犠牲試薬のS2-には、鉱物や石油等の脱硫過程から回収されるHSを利用することができるため、HSの処理の観点からも注目される技術である(特許文献1)。2.4eVのバンドギャップを持つCdSは、Ptを助触媒として担持させることで、SO2-やS2-のような犠牲試薬(sacrificial reagent)の存在下で水光分解による水素生成反応において、非常に高い活性を示す光触媒であることから、その化学工学的設計などの観点を含めて広く研究がなされている(非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3)。例えば、非特許文献1には水素発生Pt触媒を含むCdS結晶をナフィオン(デユポン社の商標)ポリマーマトリックス埋め込んでフィルム状の光活性触媒とする技術が開示され、化学工学的設計を示唆している。しかし、CdSでは520nm付近までの可視光しか利用できず、太陽光の可視光領域のすべてカバーすることができところまでは到達していない。最近、本発明者らのグループは,安定な価電子帯を形成するAgを構成元素として含むカルコパイライト結晶型のAgGaS(バンドギャップ:2.60eV)が可視光照射下での水素生成反応に非常に高い活性を示す光触媒であることを報告した(特許文献2)。更に、本発明者らのグループでは前記技術進めた、AgGaSと類似した構造で、Agよりもポテンシャルの高い位置に価電子帯が形成されているCuを構成元素に含むCuInS(バンドギャップ:1.44eV)に着目し,その光物性および光触媒活性について調べた。また、今まで本発明者らのグループは、Zn-AgInS(非特許文献4)やZn-AgInS-CuInS(特許文献3) のように、可視光吸収特性の向上の固溶体の合成を目指した、バンドギャップエンジニアリングを利用して、高活性・高効率な光触媒を開発している。一方、CuInSは全可視光領域の光を吸収する半導体材料であり、この半導体材料のCuまたはInの一部をAgまたはGaでそれぞれ置換した固溶体を調製できことも知られている(非特許文献5、非特許文献6)が、光触媒活性については研究されていない。そこで、CuInSのカルコパイライト結晶型を維持した固溶体を形成することでエネルギー構造を制御し、光触媒特性の改善された材料としての開発を試みた。
【0004】

【特許文献1】特開2002-306966号公報、特許請求の範囲
【非特許文献1】Albert W.H. Mau,Chorng Bao Huang,Noriyoshi Kakuta, Allen J.Bard,Alan Campion,Marye A.Fox,J.Michael White,Stephen E.Webber,J.Am.Chem.Soc.;106 (1984) 6537-6543
【非特許文献2】M.Matsumura,S.Furukawa,Y.Saho and H.Tsubomura, J.Phys.Chem.,89 (1985) 1327-1329.
【非特許文献3】J.F.Reber and K.Meier,J.Phys.Chem.,90 (1986) 824-832
【特許文献2】特開2003-255355号公報、特許請求の範囲
【非特許文献4】I.Tsuji,H.Kato,H.Kobayashi,A.Kudo,J.Am.Chem.Soc.,126(2004),13406-13413
【特許文献3】特願2004-10374
【非特許文献5】T.Kato,S.Hayashi,T.Kikuchi,Y.Ishihara,Y.Nabetani,T.Matsmoto,J.Cryst,Gowth.,237(2002)2005-2008
【非特許文献6】I.V.Bondner,L.V.Yasykevich,B.V.Korzoum,A.G.Karoza,J.Material.Sci.,33(1998)183-188
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の解決しようとする課題は、前記太陽エネルギーの有効利用の光触媒の開発の観点から全可視域において光応答性を示す光触媒を提供することである。そこで、前記硫化物の可視光吸収特性を利用して前記課題を解決すべく、前記カルコパライト型結晶を持つCuInS(バンドギャップ:1.44eV)が可視光のほぼ全領域に吸収を持つ黒色の半導体材料であることに着目し、これを用いて可視光の全域で触媒活性を示す材料を得ることを考え、前記CuInSの結晶(Inが10%過剰などの)の金属の一部を他の金属で置換した固溶体を合成し、その光触媒活性を検討する中で、Cuの一部を金属Agで置換したものが、またInの一部を金属Gaで置換したものが、全可視光領域の光を吸収し、且つ、前記従来の硫化物光水分解触媒と同様に犠牲試薬として硫黄化合物を含有する水溶液を光水分解して水素を生成させる触媒を形成する光触媒として有用であることを見出し、本発明の前記課題を解決できることができた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明第1は、(1)一般式Cu1-XAgXInS2(Xは、0.4以上0.6以下である。)で表されるCuInS2のCuの一部をAgで又は一般式CuGa1-YInY2(Yは、0.7以上0.9以下である。)で表されるCuInS2のIn一部を金属Gaで置換した黒色固溶体からなる半導体にRu、PtまたはRh助触媒を担持させた半導体光触媒である。第2の発明は、前記(1)に記載の光触媒からなる硫黄化合物を含む水溶液の光水分解により水素を生成する光水分解用触媒であり、好ましくは、硫黄化合物を含む水溶液がSO32-とS2-イオンが存在する水溶液である前記(1)に記載の光水分解により水素を生成する光水分解用触媒である。そして、第3の発明はこれらの半導体光触媒を構成する黒色固溶体からなる光半導体に関する発明である。第4の発明は、硫黄化合物を含む水溶液にRu、PtまたはRh助触媒を担持させた一般式Cu1-XAgXInS2(Xは、0.4以上0.6以下である。)で表されるCuInS2のCuの一部をAgで又は一般式CuGa1-YInY2で(Yは、0.7以上0.9以下である。)表されるCuInS2のIn一部を金属Gaで置換した黒色固溶体からなる水分解用光触媒を加え可視光および近赤外光までの光を照射して光水分解により水素を生成させる光水分解方法である。
【発明の効果】
【0007】
発明の効果として、先ず、全可視光域の光を吸収する太陽光の利用効率をスペクトル的に改善した光触媒を提供したことと、前記光触媒は、Ru、PtまたはRhのような光水分解触媒活性を向上させる助触媒担持させることにより、犠牲試薬として硫黄化合物を必要とするが、前記硫黄化合物の存在する水の光分解により高効率で水素を製造する方法に利用できる光水分解触媒として有用な触媒を提供できたことを、挙げることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
A.本発明者は、先ず半導体であるCuInSの水分解触媒への応用に先立ち、CuInSの合成条件、すなわち、固相法および共沈法の条件および化学量論比、すなわちIn過剰条件を20mol%まで化学量論比、を変えてCuInSを合成したもの、および前記合成したものに光水分解触媒を調製する際に用いるRu、PtまたはRh助触媒を担持させて、SO2-とS2-イオンが存在する水溶液中における光水分解活性を調べ、これらの特性を更に改善するために、前記CuInSの金属の一部を他の金属で置換してバンドギャップを改善した光触媒を得るための基礎データとした。その結果を表1に示す。
なお、Inを20mol%まで過剰としたのは、Inが揮発性のため最終製品の化学量論比を調整するためである。
【0009】
光触媒反応特性および触媒の特性の測定機器;
(1)光触媒反応の特性は閉鎖循環系内にて行った。光触媒0.3gを還元剤(犠牲試薬)であるKSOとNaSとの混合水溶液中(0.5M KSO+0.1M NaS、または、0.25M KSO+0.35M NaS)に懸濁させたものを反応溶液とした。光源として300WのXe lamp(ILC technology;CERMAX LX-300)を用いて、カットオフフィルター(cut-off filter(HOYA L42)により420nmより長波長側の可視光を照射して光触媒反応を行った。生成した水素の定量は、前記反応系に接続したガスクロマトグラフ(Shimazu;GC-8A、MS-5A column、TCD、Ar carrier)にて行った。
【0010】
【表1】
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【0011】
図1に前記の共沈法で合成したCuInSの拡散反射スペクトルを示す。吸収端の波長は860nmであり、可視光領域の光をすべて吸収していることがわかる。
表1から、共沈法と固相法では比表面積に大きな違いが見られた。No.4,5(表1)に示すように、CuInSは、Rh、Ruを助触媒として担持することで、犠牲試薬を含む水溶液からの水素生成反応に可視光照射下で活性を示すことは明らである。水素生成用助触媒としてしばしば用いられるPtは、比較的効果は低かった(No.3、表1)。助触媒としてはRuが最も高く、助触媒として有効であることがわかった。固相法(No.1、表1)と共沈法(No.6、表1)で合成した触媒の水素生成活性を比較したところ、Ruの1重量%担持では、固相法の方が共沈法より高いことが観察された。しかし、Ruの担持量を増やすことにより,共沈法で合成した触媒においても十分な水素生成活性が得られることもわかった(No.8、表1)。図2に比較的高い活性を示したRuを3重量%担持したCuInSによる可視光照射下での水素生成反応の経時変化を示す。反応初期で誘導期が見られたが、その後は定常的に水素を生成し続けた。水素生成速度は、最高で189μmol/hであった。
【実施例1】
【0012】
(1) Inの一部をGaで置換した光触媒の調製
CuInSの調製;Inが焼成時に揮発しやすいため,In(NO・3.6HO(Kojundo-kagaku;99.99%)を10mol%過剰である3.319g溶解させた水溶液にCuCl(Wako Chem.;99%)から合成したCuClを0.817g加えた後、HSを約15分間バブリングして硫化物沈殿を生成した。室温、HS雰囲気下で、撹拌熟成を15時間行った後、純水で濾過洗浄し空気中で乾燥後、石英製アンプルに真空封入し熱処理することで合成した(共沈法)。また、CuS(Kojundo-kagaku;99%)0.656g、In(Kojundo-kagaku;99.99%)を10mol%過剰の1.477g混合し、石英製アンプルに真空封入し熱処理することでも合成した(固相法)。
CuGa1-YIn(Y=0.05以上0.9以下)は、CuS(Kojundo-kagaku;99%)、In(Kojundo-kagaku;99.99%)を量論比、焼成時にGaが揮発しやすいため,Ga(Kojundo-kagaku;99.99%)を量論比より20mol%過剰で混合し、石英製アンプルに真空封入し熱処理することで合成した。また黒色で活性の高かったCuGa0.5In0.7は、CuS(Kojundo-kagaku;99%)0.695g、GaとInは焼成時に揮発しやすいため,In(Kojundo-kagaku;99.99%)は10mol%過剰である1.096g、Ga(Kojundo-kagaku;99.99%)も同様に10mol%過剰である0.340gで混合し,石英製アンプルに真空封入し熱処理することでも合成した。得られた触媒の可視光照射下での水素生成活性を前記した活性測定法により測定した。結果を表2に示す。
【0013】
【表2】
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【0014】
前記Ga置換体は、同じカルコパイライト結晶型のCuInSとCuGaSとの間の固溶体と見なすことができる。焼成時にGaが揮発するため,Gaを量論比よりも20mol%過剰になるよう仕込み,600℃で固相法により合成したCuGa1-YIn固溶体(Y=0.05以上0.9以下)の拡散反射スペクトルを図3に示す。これらの固溶体は,可視光領域に吸収を持ち,Y (Inの割合) が増加するに従い、吸収端は長波長側へと連続的にシフトした。これら固溶体は、表2に示すように、InをGaで置換したことにより、CuInSよりも高い活性が得られた。水素生成活性は,表2のNo.3および5に示すように、Y=0.5、0.9のときに約1mmol/hの高いものとなった。しかしY=0.5、0.9の触媒ではそれぞれ560nm、700nmの吸収端であり、可視光領域の光をすべては吸収しなかった。一方,CuGa0.3In0.7(No.2、表2)の組成を持つ固溶体は吸収端が810nmであり,可視光領域すべての光を吸収し,活性も比較的高い値 (570μmol/h)を示した。
【0015】
前記実2のCuGa0.3In0.7の組成を持つ固溶体の熱処理温度および反応条件について検討した(表3)。CuGa0.3In0.7にPt、Rh、Ruの助触媒を以下の条件で担持させた。
助触媒の担持法;
触媒上への助触媒の担持は、HPtCl・6HO(Tanaka Kikinzoku;37.55%、Ptとして。)、RhCl・3HO(Tanaka Kikinzoku:貴金属含有率36%以上)、RuCl・nHO(Kanto Chemical;99%)を用いて、カットオフフィルター(cut-off filter(HOYA L42)を付けた300WのXeランプ(Xe lamp;ILC technology;CERMAX LX-300)を使用し、420nmより長波長側の光を照射して光電着法にて行った。得られた硫化物固溶体の粉末は、X線回折(Rigaku;MiniFlex)により同定した。触媒の比表面積はBET等温吸着法により測定した(Coulter;SA3100)。紫外-可視-近赤外拡散反射スペクトル(DRS)は紫外可視近赤外分光光度計(Jascow;UbestV-570)で測定し,得られた拡散反射スペクトルは、Kubelka-Munk法により、吸収モードに変換した。
Pt、Rh、Ruの助触媒として担持した触媒の水素活性(No.3、4、5、表3)を比較すると、Ruを担持したものがもっとも高い値を示した。そして、Ga、Inを10mol%過剰で仕込み、800℃、8時間で熱処理し、Ruを1重量%担持したCuGa0.3In0.7固溶体(No.7、表3)が、0.25M KSO+0.35M NaSの反応溶液を用いた時に、もっとも高い活性を示した(781μmol/h)。図4にこの固溶体光触媒による可視光照射下での水素生成反応の経時変化を示す。CuInSよりも高い活性を維持したまま,定常的に水素を生成し続けた。CuInSに比べてCuGa1-YIn固溶体の方が高い活性化を示したのは、Gaを加えることにより伝導帯のポテンシャルが高くなることで、水を還元し水素を生成するためのドライビングフォースが大きくなったことが主な要因であると考えられる。図5に最適条件で合成したCuGa0.3In0.7の固溶体の拡散反射スペクトルを示す。この固溶体の吸収端の位置は、750nm付近まで達し、幅広い可視光領域の光を吸収できる光触媒であることがわかった。吸収端から見積もったバンドギャップは1.65eVであった。
光触媒反応活性の結果を表3に示す。
【0016】
【表3】
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【実施例2】
【0017】
(2)Cuの一部をAgで置換した光触媒の調製
Cu1-XAgInS(X=0.4、0.5、0.6)は、AgNO(Tanaka-kikinzoku;99.8%)と、Inが焼成時に揮発しやすいため、10mol%過剰のIn(NO・3.6HO(Kojundo-kagaku;99.99%)との混合水溶液にCuCl(Wako Chem.;99%)から合成したCuClを加えた後、HSを約15分間バブリングして硫化物沈殿を生成した。室温、HS雰囲気下で、撹拌熟成を15時間行い、純水で濾過洗浄し空気中で乾燥後、石英製アンプルに真空封入し熱処理することで合成した(共沈法)。また、CuS(Kojundo-kagaku;99%)0.301g、AgS(Rare-metallic;99.9%)0.462g、焼成時に揮発するためIn(Kojundo-kagaku;99.99%)は10mol%過剰である1.346gで混合し,石英製アンプルに真空封入し熱処理することでも合成した(固相法)。
合成した触媒上への助触媒の担持は、前記実施例1で記載したと同様の方法により行った。
【0018】
このようにして得られた置換体Cu1-XAgInSは,同じカルコパイライト型のCuInSとAgInSとの間の固溶体と見なすことができる。表4にCu1-XAgInS(X=0.4、0.5、0.6)固溶体の組成および合成条件を示した。得られた固溶体は、全て黒色であった。共沈法により合成したCu0.5Ag0.5InSの組成の拡散反射スペクトルを図6に示す。吸収端の位置は、810nmと非常に幅広い可視光領域に吸収帯を持っていた。吸収端から見積もったバンドギャップは,固相法で合成したものが1.48eV、共沈法で合成したものが1.52eVとなった。表4に、更に各条件で合成したCu1-XAgInS(X=0.4、0.5、0.6)固溶体の物性値と水素生成活性を示す。比表面積は,固相法(No.2、表4)と共沈法(No.3、表4)とで合成したものに、大きな違いは見られなかった。この固溶体の水素生成活性は、CuをAgで置換したことにより、CuInSよりも高い活性を示した。助触媒としてPt、Rh、Ru(No.3、4、5、表4)を検討したところ、Ruを担持したものがもっとも水素活性が高く、ここでもRuの担持が有効であることがわかった。固相法で合成したCu0.5Ag0.5InS(No.2、表4)は、Ruの1重量%の担持により、240μmol/hの活性を示し、一方、共沈法で合成したCu0.5Ag0.5InS(No.5、表4)は、Ru 1重量%の担持により、713μmol/hと高い活性を示した。共沈法で合成した触媒が固相法よりも高活性を示したのは、共沈法で合成することで、より均一な固溶体が得られたためとだと考えられる。共沈法による均一な条件下での合成による高活性化は,三元系のCuInSよりも、より前駆体の均一性が求められる四元系のCu0.5Ag0.5InSで効果が現れたと考えられる。図7に共沈法で合成し600℃で焼成したCu0.5Ag0.5InSによる可視光照射下での水素生成反応の結果を示す。助触媒としてRuを担持することで、874μmol/hと非常に高い活性を示すことがわかった。活性は安定しており,黒色の光触媒としてはもっとも高い活性を示した。
【0019】
【表4】
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【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明の光触媒の活用例として、太陽光の全スペクトル域の光を利用できことから、将来有望な高効率なクリーンなエネルギー変換系である水素の生成系の構築への利用が考えられる。この系により生成する水素は高純度であり、燃料電池用の有望なエネルギーとしての利用が可能であり、産業上の利用可能性が高い技術である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】共沈法で合成したCuInSの拡散反射スペクトル
【図2】Ruを3重量%担持したCuInSによる可視光照射下での水素生成反応の経時変化
【図3】CuGa1-YIn固溶体(Y=0.05以上0.9以下)の拡散反射スペクトル
【図4】Ruを1重量%担持したCuGa0.3In0.7固溶体による可視光照射下での水素生成反応の経時変化
【図5】最適条件で合成したCuGa0.3In0.7固溶体の拡散反射スペクトル
【図6】共沈法で合成したCu0.5Ag0.5InS固溶体の拡散反射スペクトル
【図7】共沈法で合成し600℃で焼成したCu0.5Ag0.5InSにRuを担持させた可視光照射下での水素生成反応の経時変化
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6