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明細書 :表面状態計測方法、表面状態計測装置、顕微鏡、情報処理装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4621908号 (P4621908)
公開番号 特開2006-138821 (P2006-138821A)
登録日 平成22年11月12日(2010.11.12)
発行日 平成23年2月2日(2011.2.2)
公開日 平成18年6月1日(2006.6.1)
発明の名称または考案の名称 表面状態計測方法、表面状態計測装置、顕微鏡、情報処理装置
国際特許分類 G01Q  10/04        (2010.01)
G01Q  60/10        (2010.01)
G01Q  60/24        (2010.01)
G01B  21/30        (2006.01)
FI G01N 13/10 C
G01N 13/12 A
G01N 13/16 A
G01B 21/30 101Z
請求項の数または発明の数 16
全頁数 14
出願番号 特願2004-331103 (P2004-331103)
出願日 平成16年11月15日(2004.11.15)
審査請求日 平成19年5月18日(2007.5.18)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
発明者または考案者 【氏名】佐藤 宣夫
【氏名】小林 圭
【氏名】山田 啓文
【氏名】松重 和美
個別代理人の代理人 【識別番号】100080034、【弁理士】、【氏名又は名称】原 謙三
【識別番号】100113701、【弁理士】、【氏名又は名称】木島 隆一
審査官 【審査官】秋田 将行
参考文献・文献 特開平06-265342(JP,A)
特開平06-201369(JP,A)
特開平08-249732(JP,A)
特開2001-024038(JP,A)
特開2001-174491(JP,A)
調査した分野 G01Q 10/00-90/00
G01B 21/30
特許請求の範囲 【請求項1】
計測対象物と対向する複数のプローブと、
上記各プローブを上記計測対象物に対しそれぞれ移動させると共に、上記各プローブ間の相対位置を移動させるプローブ駆動部と、
上記各プローブおよび上記計測対象物の間に電圧を印加すると共に上記各プローブ間に電圧を印加して、上記各プローブおよび上記計測対象物の間のトンネル電流および上記各プローブ間のトンネル電流を検出して出力し、上記計測対象物および各プローブの間の物理現象から生じる検出信号を検出して出力する検出部と、
上記検出部による上記各プローブ間のトンネル電流によって上記各プローブ間の相対位置を制御すると共に、上記検出部による上記各プローブおよび上記計測対象物の間のトンネル電流によって上記各プローブおよび上記計測対象物の間隔を制御するように上記プローブ駆動部を制御するための第一制御部と、
上記検出信号から上記計測対象物の表面状態を計測する計測部とを有していることを特徴とする表面状態計測装置。
【請求項2】
前記第一制御部は、前記各プローブ間のトンネル電流によって上記各プローブを互いに近接させるようになっていることを特徴とする請求項1記載の表面状態計測装置。
【請求項3】
前記各プローブは、各プローブの先端部を互いに近接するようにそれぞれ配置されていることを特徴とする請求項1または2記載の表面状態計測装置。
【請求項4】
さらに、前記プローブを先端部に備えたカンチレバーを有していることを特徴とする請求項1ないし3の何れか1項に記載の表面状態計測装置。
【請求項5】
前記各プローブの先端部は、前記計測対象物に対向する方向に延びるように設定され
前記第一制御部は、上記各プローブの先端部および上記計測対象物の間隔を、前記各プローブおよび上記計測対象物の間のトンネル電流によって制御するものであることを特徴とする請求項4記載の表面状態計測装置。
【請求項6】
前記各プローブは、先端が尖って形成されていることを特徴とする請求項5記載の表面状態計測装置。
【請求項7】
前記カンチレバーの先端部には、カンチレバーの長手方向に沿って延びる突出部が、前記各プローブ間に電圧を印加して、上記各プローブ間のトンネル電流を検出するために形成されていることを特徴とする請求項4ないし6の何れか1項に記載の表面状態計測装置。
【請求項8】
前記突出部は、先が尖って形成されていることを特徴とする請求項7記載の表面状態計測装置。
【請求項9】
前記突出部は、先端側が前記計測対象物に向かって折れ曲がる屈曲部を備えていることを特徴とする請求項7または8記載の表面状態計測装置。
【請求項10】
前記物理現象は、原子間力、トンネル電流、および静電気からなる群から選択された少なくとも一つであることを特徴とする請求項1ないし9の何れか1項に記載の表面状態計測装置。
【請求項11】
前記計測部は、各プローブの位置を検出するプローブ位置検出部を備え、
さらに、前記物理現象の力が加わった上記各プローブおよび上記計測対象物の間隔を前記検出信号に基づき一定に維持するように上記ブローブ駆動部をフィードバック制御する第二制御部を有していることを特徴とする請求項1ないし10の何れか1項に記載の表面状態計測装置。
【請求項12】
請求項1ないし11の何れか1項に記載の表面状態計測装置を有していることを特徴とする顕微鏡。
【請求項13】
請求項1ないし11の何れか1項に記載の表面状態計測装置を有していることを特徴とする情報処理装置。
【請求項14】
計測対象物と対向する複数の各プローブおよび上記計測対象物の間に電圧を印加すると共に上記各プローブ間に電圧を印加して、上記各プローブおよび上記計測対象物の間のトンネル電流および上記各プローブ間のトンネル電流を検出し、
上記複数のプローブおよび上記計測対象物の相対位置を上記各プローブおよび上記計測対象物の間のトンネル電流により上記各プローブをそれぞれ移動させ、上記各プローブ間のトンネル電流により上記各プローブ間の相対位置をそれぞれ移動させ、
上記計測対象物および上記各プローブの間の物理現象から生じる検出信号を検出し、
上記各プローブの位置をそれぞれ位置情報信号として検出し、
上記検出信号から上記各プローブと上記計測対象物との間隔を一定に維持するように上記各プローブをフィードバック制御して、上記計測対象物の表面状態を計測することを特徴とする表面状態計測方法。
【請求項15】
前記物理現象は、原子間力、トンネル電流、および静電気からなる群から選択された少なくとも一つであることを特徴とする請求項14記載の表面状態計測方法。
【請求項16】
前記各プローブの先端部を互いに近接するように各プローブをそれぞれ移動させることを特徴とする請求項14または15記載の表面状態計測方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、2本以上の複数のプローブ(マルチプローブ)の互いの位置を安定して制御するために、変位検出回路およびプローブホルダにより、小型で高精度なマルチプローブ間距離制御して、計測対象物の表面状態を分子レベルにて計測できる表面状態計測方法、表面状態計測装置、それを用いた顕微鏡および情報処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
メモリなどのストレージデバイスにおいて、高密度記録のために分子レベルでの記録を実現するには、デバイスの分子材料に用いたその分子の各特性(電気特性、光学特性、磁気特性のほか機械的剛性など)の少なくとも一つを十分に知る必要がある。
【0003】
そのために、従来、上記分子の特性の計測方法として、数ミクロン程度のギャップを備えた電極を微細加工技術により作製し、上記ギャップにおいて偶発的に架橋した分子の諸特性を測定できることが知られている。
【0004】
ところが、上記方法では、「光の回折限界」によって、上記微細加工には限界があるため、分子レベルといったナノメートルスケールでの分子特性の計測には限界がある。
【0005】
一方、微細形状の評価方法として原子レベルの分解能を有しているプローブ顕微鏡の一種である原子間力顕微鏡が期待されている。
【0006】
原子間力顕微鏡(AFM)は新規な絶縁性物質の表面形状観察手段として期待され、研究が進められている。その原理は先端を充分に鋭くしたプローブ(探針)と試料との間に働く原子間力を前記プローブが取り付けられているばね要素の変位として測定し、前記ばね要素の変位量を一定に保ちながら前記試料表面を走査し、前記ばね要素の変位量を一定に保つための制御信号を形状情報として、前記試料表面の形状を計測するものである。
【0007】
ばね要素の変位検出手段としては光学的方式(光干渉法、光てこ法)およびバネ要素の変形ひずみを電気信号として検出する自己検出方式(ピエゾ抵抗検出法、圧電検出法)がある。
【0008】
上記原子間力顕微鏡に用いられるプローブは、カンチレバーと称される片持ち梁状の支持部材の先端部に形成されており、主に四角垂状をしている。上記プローブの材質としてはシリコンが挙げられる。上記プローブにシリコンを用いる場合、上記プローブは異方性エッチング技術を用いて加工される。
【0009】
このような原子間力顕微鏡(G. Binnig, C. F. Quate, Ch. Gerber : Phys. Rev. Lett. 56 (1986) 930.)のカンチレバーを特性計測用プローブとして用いることで、メモリ(ストレージデバイス)などの情報処理装置といった様々な分子系デバイスの特性を測定できると期待されている。
【0010】
そのような情報処理装置のプローブ制御回路が、特許文献1において、プローブとこれに対向する媒体との物理現象から生じる信号を検出信号として検出し、該検出信号に基づく位置制御信号によってプローブの位置制御を行うことが提案されている。

【特許文献1】特開平8-249732号公報(公開日:1996年9月27日)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記従来の構成および方法は、複数のプローブ間の相対位置を安定に制御する方法ではなく、複数のプロープによる計測において、分子材料などのナノスケールでの諸特性(前記電気特性、光学特性、磁気特性、機械的剛性など)を精度良く計測できなかったという問題点を有している。
【0012】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、従来の原子間力顕微鏡において重要であったプローブと試料間距離の制御ではなく、2本以上の複数のプローブにおいて、それぞれのプローブとプローブとの距離間を制御することで、分子材料などのナノスケールでの諸特性(前記電気特性、光学特性、磁気特性、機械的剛性など)を精度良く計測できる位置制御の手法を備えた表面状態計測方法、表面状態計測装置、それを用いた顕微鏡および情報処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る表面状態計測装置は、上記課題を解決するために、計測対象物と対向する複数のプローブと、上記各プローブを上記計測対象物に対しそれぞれ移動させるプローブ駆動部と、上記計測対象物および各プローブの間の物理現象から生じる検出信号を検出して出力する検出部と、上記検出信号に基づく位置制御信号によって各プローブ間の相対位置を制御するための第一制御部と、上記検出信号から上記計測対象物の表面状態を計測する計測部とを有していることを特徴としている。
【0014】
上記構成によれば、プローブ駆動部により各プローブを計測対象物の表面に対して相対移動つまり走査することにより、上記走査に伴う検出信号を検出部によって得ることができ、上記走査に伴う検出信号から計測部により、計測対象物の表面状態(例えば表面形状)を計測できる。
【0015】
その上、上記構成は、計測対象物と対向する複数のプローブをそれぞれ移動させて、各プローブ間の相対位置を制御するための第一制御部を備えているので、複数のプローブの位置制御をそれぞれ行うことができ、上記各プローブ間や、上記各プローブと計測対象物との間隔であるギャップ長を分子レベルや原子レベルでの計測が可能なように安定に制御できることになるため、計測対象物の表面状態をナノメートルスケールにて安定に計測できる。
【0016】
この結果、上記構成は、計測対象物の表面状態をナノメートルスケールにて安定に計測できるので、原子間力顕微鏡といった顕微鏡や、メモリといったストレージデバイスである情報処理装置に用いると、上記顕微鏡の分解能を向上でき、また、上記情報処理装置の情報処理量を改善できるという効果を奏する。
【0017】
上記表面状態計測装置では、前記第一制御部は、各プローブを互いに近接させるようになっていることが好ましい。
【0018】
上記表面状態計測装置においては、前記各プローブは、各プローブの先端部を互いに近接するようにそれぞれ配置されていることが望ましい。
【0019】
上記表面状態計測装置では、さらに、前記プローブを先端に備えたカンチレバーを有するものであってもよい。
【0020】
上記表面状態計測装置においては、前記各プローブの先端部は、前記計測対象物と対向する方向に延びるように形成されていることが好ましい。
【0021】
上記表面状態計測装置では、前記各プローブは、先端が尖って形成されていることが望ましい。
【0022】
上記表面状態計測装置においては、前記各プローブの先端部には、各プローブの長手方向に沿って延びる突出部が形成されていてもよい。
【0023】
上記表面状態計測装置では、前記突出部は、その先が尖って形成されていてもよい。
【0024】
上記表面状態計測装置においては、前記突出部は、先端側が前記計測対象物に向かって折れ曲がる屈曲部を備えていてもよい。
【0025】
上記表面状態計測装置では、前記物理現象は、原子間力、トンネル電流、および静電気からなる群から選択された少なくとも一つであることが好ましい。
【0026】
上記表面状態計測装置においては、さらに、各プローブと計測対象物との間隔を前記検出信号に基づき一定するように各プローブ駆動部を制御する第二制御部を有し、前記計測部は、各プローブの位置を検出するプローブ位置検出部を備えていてもよい。
【0027】
本発明の顕微鏡は、上記の何れかに記載の表面状態計測装置を有していることを特徴としている。
【0028】
本発明の情報処理装置は、上記の何れかに記載の表面状態計測装置を有していることを特徴としている。
【0029】
本発明の表面状態計測方法は、前記課題を解決するために、計測対象物と対向する複数のプローブを上記計測対象物との相対位置と上記各プローブ間の相対位置とをそれぞれ移動させ、上記計測対象物および各プローブの間の物理現象から生じる検出信号を検出し、上記検出信号から上記計測対象物の表面状態を計測することを特徴としている。
【0030】
上記表面状態計測方法においては、前記物理現象は、原子間力、トンネル電流、および静電気からなる群から選択された少なくとも一つであることが望ましい。
【0031】
上記表面状態計測方法では、前記各プローブの先端部を互いに近接するように各プローブをそれぞれ移動させることが好ましい。
【発明の効果】
【0032】
本発明に係る表面状態計測装置は、以上のように、計測対象物と対向する複数のプローブと、上記各プローブを上記計測対象物に対しそれぞれ移動させるプローブ駆動部と、上記計測対象物および各プローブの間の物理現象から生じる検出信号を検出して出力する検出部と、上記検出信号に基づく位置制御信号によって各プローブ間の相対位置を制御するための第一制御部と、上記検出信号から上記計測対象物の表面状態を計測する計測部とを有する構成である。
【0033】
それゆえ、上記構成は、計測対象物と対向する複数のプローブをそれぞれ移動させて、各プローブ間の相対位置を制御するための第一制御部を備えているので、複数のプローブの位置制御をそれぞれ行うことができ、分子レベルや原子レベルの計測に至るギャップ長を安定に制御できることになるため、計測対象物の表面状態をナノメートルスケールにて安定に計測できる。
【0034】
この結果、上記構成は、計測対象物の表面状態をナノメートルスケールにて安定に計測できるので、原子間力顕微鏡といった顕微鏡や、メモリといったストレージデバイスである情報処理装置に用いると、上記顕微鏡の分解能を向上でき、また、上記情報処理装置の情報処理量を改善できるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
本発明に係る表面状態計測装置の実施の一形態について図1ないし図13に基づいて説明すると以下の通りである。すなわち、上記表面状態計測装置では、図2に示すように、計測対象物1と対向するように複数のプローブ2(図2では一つのみ記載)が設けられている。計測対象物1は、図2に示すx-y方向(つまり計測対象物1の表面と略平行な水平方向)に二次元にて移動する載置台3上に装着されている。
【0036】
上記各プローブ2の形状としては、先端に向かって順次細くなるテーパー形状を備えており、後述する相互作用の検出ができる形状であればよいが、例えば三角錘形状や、四角錐形状や、円錐形状が挙げられる。また、上記各プローブ2の素材としては、後述する相互作用の検出ができて、上記形状に成形し易いものであればよいが、例えばシリコンが挙げられる。各プローブ2にシリコンを用いた場合、その成形には異方性エッチング技術が好適なものである。
【0037】
上記載置台3を駆動するためのスキャン部4がプローブ駆動部として取り付けられている。スキャン部4を制御するための制御信号を生成するスキャンシステム5が設けられている。
【0038】
一方、上記表面状態計測装置においては、前記プローブ2を先端部に有するカンチレバー6が片もち梁のパイプ形状で長さ0.1mm~1mmにて取り付けられている。プローブ2は、その先端が計測対象物1の表面に向かうようにカンチレバー6の先端部に設けられている。また、各カンチレバー6は、各プローブ2をそれぞれ備えた先端部の先端が互いに突き合わせるように、かつ各カンチレバー6の長手方向が計測対象物1の表面と略平行となるように取り付けられている。カンチレバー6の素材としては、相互作用の検出のための導電性を有し、後述する励振に耐える剛性を備えていればよいが、アルミニウム、銅、それらの合金、またはカーボン等が挙げられる。
【0039】
上記カンチレバー6の基端側には、プローブ2を上下方向(図2ではz方向)に往復移動させるための第一駆動部7と、プローブ2をカンチレバー6の長手方向に対し直交する水平方向(図2ではy方向)に往復移動させるための第二駆動部8と、プローブ2をカンチレバー6の長手方向に沿った方向(図2ではx方向)に往復移動させるための第三駆動部9とが、それぞれ、プローブ駆動部として形成されている。
【0040】
第一駆動部7、第二駆動部8および第三駆動部9は、それぞれプローブ2をミクロンオーダー(最大駆動距離が0.1μm~10μm)にて駆動できるものであればよいが、圧電素子、ステッピングモータまたはインパクトステージによる自動駆動、または手動ネジ式を用いた微動駆動機構が挙げられる。上記微動駆動機構の内、特に圧電素子からなるものが好適なものである。よって、第一駆動部7、第二駆動部8および第三駆動部9は、複数の各プローブ2を、それらの相対位置を互いに変化させるように、また、計測対象物1の表面に対する相対位置を変化させるために、それぞれ移動できるようになっている。
【0041】
また、上記表面状態計測装置では、プローブ2の位置(特にz方向での)を光学的(光てこ法)に検出するための半導体レーザ10、ミラー11およびフォトダイオード12が装着されている。この光学的な検出のために、カンチレバー6の先端部における、プローブ2の取り付け位置の反対面(背面)は、鏡面仕上げとなっていることが好ましい。半導体レーザ10は、上記反対面に対しレーザ光を照射するものである。ミラー11は、上記反対面からのレーザ光の反射光をフォトダイオード12の受光面に導くものである。フォトダイオード12は、受光した光を、例えばプッシュプル法にて上記プローブ2の位置情報信号を含む電気信号に変換して出力するものである。
【0042】
さらに、上記表面状態計測装置においては、上記電気信号が入力されて、上記電気信号から上記プローブ2の位置情報信号から、計測対象物1の表面形状(表面状態)を算出して示す形状信号を出力する計測部13と、上記表面形状を上記形状信号に基づき表示するためのディスプレイ14と、そのディスプレイ14のためのビデオRAMであるメモリ15とが設けられている。
【0043】
そして、上記表面状態計測装置では、上記計測対象物1および各プローブ2の間の物理現象から生じる検出信号を検出して出力する検出部16と、上記検出信号に基づく位置制御信号によって各プローブ2間の相対位置を制御するための制御部17とが設けられている。上記物理現象としては、原子間力、トンネル電流、静電気力などの相互作用が挙げられる。
【0044】
検出部16は、トンネル電流を検出する場合、計測対象物1とプローブ2との間に電圧を各配線A、Bを通して印加しておき、上記間隔が1ナノメートル(nm)程度までに近づくと生じるトンネル電流を検出できるようになっている。さらに、検出部16は、互いに隣り合う各プローブ2の間に電圧を各配線B、Bを通して印加しておき、上記間隔が1ナノメートル(nm)程度までに近づくと生じるトンネル電流を検出できるようになっている。これらトンネル電流は、上記間隔の変化に対し非常に精度良く変化するので、上記各間隔を少なくとも0.1nmの精度の分解能にて制御できるものである。
【0045】
制御部17は、計測部13からの形状信号から二次元での表面形状を生成して前記メモリ15に出力すると共に、上記検出信号からプローブ2と計測対象物1との間隔を一定に維持するように上記プローブ2の位置(つまり、カンチレバー6)をフィードバック制御するように第一駆動部7、第二駆動部8および第三駆動部9を制御できるものである。上記フィードバック制御は、図3(a)に示すように、カンチレバー6の先端部のプローブ2が計測対象物1の表面にナノメートルスケールにて接近すると、図3(b)に示すように、検出部16での検出信号の振幅が増減(または、周波数が増減)することを利用したものである。
【0046】
その上、制御部17は、計測対象物1の表面を各プローブ2により二次元的に走査するように前記スキャンシステム5を制御できるようにもなっている。さらに、制御部17は、第一駆動部7を制御してカンチレバー6の先端部のプローブ2を上下方向(z方向)に往復移動、好ましくはカンチレバー6の共振周波数にて励振できるようにもなっている。
【0047】
次に、上記表面状態計測装置を用いた表面状態計測方法について説明する。図1(a)に示すように、上記表面状態計測方法では、各プローブ2の間隔を制御するために、各プローブ2を励振しながら、プローブ2の少なくとも一方に設けた変位検出機構である検出部16および制御部17により、微動駆動機構である圧電素子からなる第三駆動部9によって、互いの距離を近づけていく。その際に、互いに隣り合うプローブ2とプローブ2との間において相互作用(トンネル電流)により、図1(b)に示すように、変位検出機構を持つプローブ2側の信号に変位が検出される。変位が設定値に到達することで、安定なプローブ位置制御がなされる。これは例えば目視などの際にはプローブとプローブが接触、あるいは激突して破壊する場合が考えられるが、上記変位検出機構を用いた場合には、そのような事由はない。
【0048】
本発明は、簡単な装置構成により、複数の各プローブ2間の相対位置の位置制御を行うことができ、分子や原子に至るギャップ長を安定に制御できることになるため、分子エレクトロニクスにおける研究進展を飛躍的に増進できるとともに、走査型トンネル顕微鏡の高分解能化、およびメモリなどのストレージデバイスに適用してその記憶容量を増大化できる。
【0049】
本実施の形態の一変形例として、図4に示すように、各プローブ2を励振せずに上記プローブ2間のトンネル電流をモニタしてもよい。また、本実施の形態における他の変形例として、図5に示すように、各プローブ2の一方を励振しながら他方を励振せずに、上記プローブ2間の原子間力をモニタしてもよい。本実施の形態のさらに他の変形例として、図6に示すように、各プローブ2の双方を励振しながら上記プローブ2間の原子間力をモニタしてもよい。
【0050】
なお、本実施の形態では、プローブ2の形状としては、先端が計測対象物1の表面に向かう四角錐形状のものを挙げたが、上記各プローブ2間の位置制御のために、図7(a)に示すように、カンチレバー6の長手方向に延びる棒状の突出部18をプローブ2に形成することが望ましい。突出部18は、カンチレバー6の先端側のプローブ2に形成することがより望ましく、プローブ2の基端側に形成することがさらに望ましい。また、突出部18は、その形状を先端に向かって細くなるように形成されることが好ましく、先が尖ったテーパー形状がより好ましい。
【0051】
さらに、突出部18は、図7(b)に示すように、突出部18の先端側が計測対象物1の表面の方向に折れ曲がった屈曲部18aを備えていることが、上記各プローブ2間の位置制御のために望ましい。屈曲部18aは、その形状を先端に向かって細くなるように形成されることが好ましく、先が尖ったテーパー形状がより好ましい。
【0052】
また、本実施の形態では、各プローブ2を図8(a)に示すように、2個、互いにつきあうように設けた例を挙げたが、図8(b)に示すように、3個、それらの先端側を互いにつきあうように設けてもよく、図8(c)に示すように、4個、それらの先端側を互いにつきあうように設けても、図8(d)に示すように、8個、それらの先端側を互いにつきあうように設けてもよい。
【0053】
以下に、前記物理現象としての、原子間力および静電気力といった相互作用についてそれぞれ説明する。まず、原子間力について説明すると、図9に示すように、本発明の表面状態計測装置では、プローブ2と計測対象物1の表面との間に働く原子間力を、プローブ2が取り付けられているカンチレバー6のたわみとして検出し、上記たわみを一定するように上記プローブ2の位置を制御して、上記表面形状を二次元的に走査することで、上記表面形状を計測して画像化できる。
【0054】
原子間力とは、図10に示すように、無極性の中性原子間の相互作用であって、上記相互作用は、レナード(Lennard)-ジョーンズ(Jones)型のポテンシャルにて近似できるものである。ポテンシャルエネルギーU0と、原子間距離r0との関係は、以下の式(1)で表される。
【0055】
【数1】
JP0004621908B2_000002t.gif

【0056】
ここで、εLJは凝集エネルギー、σは平衡原子間距離である。
【0057】
これらの原子間に働く原子間力F0は、以下の式(2)にて表される。
【0058】
【数2】
JP0004621908B2_000003t.gif

【0059】
上記式(2)を変形し具体的な数値を代入し、プロットした結果を図11に示した。図11から、原子間距離が、約0.2nm以上では引力(attractive force)が働き、それ以上近づくと(0.2nm未満では)、斥力が働くことが分かる。
【0060】
このように、プローブ2の先端と計測対象物1の表面との間には、遠距離(0.2nm以上)においては引力が発生する。この引力は、分散力(言い換えると凝集力)によるものである。分散力とは、瞬間双極子(無極性原子でも瞬間的には電荷の偏りが発生している)によって他方の原子にも双極子が生成し、これらの双極子の間に働く力である。大きい原子分子ほど、電子を保持する力が弱いため瞬間双極子を生じ易く、結果として分散力が大きくなる。
【0061】
一方、プローブ2の先端と計測対象物1の表面との間に、0.2nm未満の近距離では、斥力が働く。この斥力は、交換相互作用によるものである。交換相互作用とは、2つの原子の電子雲が互いに重なり合うと、原子核の正電荷を電子雲が静電的に遮蔽できず、双方の各原子核における正電荷同士の間にクーロン(Coulomb)力が生じる。また、パウリ(Pauli)の禁則により、同一のエネルギーレベルの電子は同一空間を占めることはできない。それらのため、2つの原子が上記近距離に近づくと電子雲が歪み、結果としてプローブ2の先端と計測対象物1の表面との間に上記近距離では斥力が働くことになる。
【0062】
次に、前記物理現象としての、静電気力といった相互作用について説明する。静電気力とは、図12に示すように、距離r0離れた各電荷Q1、Q2の間に働く静電気力F0であり、その静電気力F0は、下記の式(3)にて表される。
【0063】
【数3】
JP0004621908B2_000004t.gif

【0064】
ここで、k=8.99×109(Nm2/C2)である。
【0065】
物理現象として静電気力を用いた場合、本発明の表面状態計測装置においては、プローブ2と計測対象物1の表面との間に働く静電気力を、プローブ2が取り付けられているカンチレバー6のたわみとして検出し、上記たわみを一定するように上記プローブ2の位置を制御して、上記表面形状を二次元的に走査することで、上記表面形状を計測して画像化できる。
【0066】
以上のように、本発明では、図13に示すように、複数のプローブ2を、互いに独立して、ナノスケールにて制御できるから、ナノテクノロジー分野において、計測対象物1の表面に形成された、個々の機能性素子(分子を含む)1a、例えばペンタセン分子の特性(どの程度電流が流れる、どの程度堅いなど)を直接的に評価することが可能となる。
【0067】
その上、複数の各プローブ2を互いの距離を安定に制御できれば、原子間力顕微鏡においては、多数の各プローブ2で表面形状を観察できるので、一度に、広範囲の表面を計測できて計測を迅速化できる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明の表面状態計測方法、表面状態計測装置は、計測対象物の表面状態を分子レベルにて精度よく計測できるので、顕微鏡などの表面形状測定装置といった測定分野や半導体製造分野およびメモリなどのストレージデバイスといった情報処理分野に好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の表面状態計測方法における各プローブ間の位置制御を示し、(a)は上記位置制御を示す各プローブの概略正面図、(b)は各プローブが互いに近づく前と、近づいた後の検出信号の変化を示す各波形図である。
【図2】本発明の表面状態計測装置のブロック図である。
【図3】本発明の表面状態計測方法における計測対象物とプローブとの間の位置制御を示し、(a)は上記計測対象物とプローブとの概略正面図、(b)は計測対象物とプローブとが互いに近づく(接触)前と、近づいた(接触)後の検出信号の変化を示す各波形図である。
【図4】上記の表面状態計測方法の一変形例を示す、各プローブの概略正面図である。
【図5】上記の表面状態計測方法の他の変形例を示す、各プローブの概略正面図である。
【図6】上記の表面状態計測方法のさらに他の変形例を示す、各プローブの概略正面図である。
【図7】上記プローブの各変形例を示す正面図であり、(a)は一変形例を示し、(b)は他の変形例を示す。
【図8】上記各プローブの各変形例を示す平面図であり、(a)は各プローブが2個の本実施の形態を示し、(b)は各プローブが3個の一変形例を示し、(c)は各プローブが4個の他の変形例を示し、(d)は各プローブが8個のさらに他の変形例を示す。
【図9】物理現象に原子間力を用いた場合の上記表面状態計測装置の概略正面図である。
【図10】上記原子間力を説明するための各原子の模式図である。
【図11】上記各原子間の原子間力と原子間距離との関係を示すグラフである。
【図12】物理現象としての静電気力を説明するために、上記静電気力を発生する各電荷の模式図である。
【図13】上記表面状態計測装置を用いた、本発明の表面状態計測方法の一例を示す模式正面図である。
【符号の説明】
【0070】
1 計測対象物
2 プローブ
6 カンチレバー
7 第一駆動部
9 第三駆動部
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
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【図12】
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【図13】
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