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明細書 :自己免疫疾患の診断剤及び診断方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4774513号 (P4774513)
公開番号 特開2007-101488 (P2007-101488A)
登録日 平成23年7月8日(2011.7.8)
発行日 平成23年9月14日(2011.9.14)
公開日 平成19年4月19日(2007.4.19)
発明の名称または考案の名称 自己免疫疾患の診断剤及び診断方法
国際特許分類 G01N  33/564       (2006.01)
G01N  33/53        (2006.01)
FI G01N 33/564 Z
G01N 33/53 N
請求項の数または発明の数 9
全頁数 17
出願番号 特願2005-295048 (P2005-295048)
出願日 平成17年10月7日(2005.10.7)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 発行者名 社団法人日本生化学会 刊行物名 生化学 第77巻 第8号 発行年月日 平成17年8月25日
審査請求日 平成20年10月3日(2008.10.3)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人名古屋大学
発明者または考案者 【氏名】内田 浩二
個別代理人の代理人 【識別番号】110000110、【氏名又は名称】特許業務法人快友国際特許事務所
【識別番号】100105728、【弁理士】、【氏名又は名称】中村 敦子
【識別番号】100139480、【弁理士】、【氏名又は名称】日野 京子
審査官 【審査官】山村 祥子
参考文献・文献 特開平08-168394(JP,A)
特開平11-147899(JP,A)
特開2000-321275(JP,A)
ARTHRITIS & RHEUMATISM,2005年 1月,Vol.52,No.1,p.192-200
Free Radic Biol Med.,1997年,Vol.23,No.3,p.357-360
調査した分野 G01N 33/48-33/98
特許請求の範囲 【請求項1】
自己免疫疾患の診断剤であって、
アクロレイン、4-ヒドロキシ-2-ノネナール、4-ヒドロキシ-2-ヘキセナール及びクロトンアルデヒド並びにこれらの修飾体から選択されるいずれかと反応する自己抗体を検出する検出試薬を含む、診断剤。
【請求項2】
前記修飾体は、以下の一般式(1)~(4)から選択されるいずれかである、請求項1に記載の診断剤。
【化1】
JP0004774513B2_000008t.gif
(前記式中、R及びRは、タンパク質のリジン残基に結合するタンパク質のタンパク質残基若しくはペプチドのリジン残基に結合するペプチド残基を表すか又はRは水素原子を表しRは水酸基を表す。)
【化2】
JP0004774513B2_000009t.gif
(前記式中、R及びRは、タンパク質のリジン残基に結合するタンパク質のタンパク質残基若しくはペプチドのリジン残基に結合するペプチド残基を表すか又はRは水素原子を表しRは水酸基を表す。)
【化3】
JP0004774513B2_000010t.gif
(前記式中、R及びRは、タンパク質のリジン残基に結合するタンパク質のタンパク質残基若しくはペプチドのリジン残基に結合するペプチド残基を表すか又はRは水素原子を表しRは水酸基を表す。)
【化4】
JP0004774513B2_000011t.gif
(前記式中、R及びRは、タンパク質のリジン残基に結合するタンパク質のタンパク質残基若しくはペプチドのリジン残基に結合するペプチド残基を表すか又はRは水素原子を表しRは水酸基を表す。)
【請求項3】
前記修飾体はタンパク質による修飾体である、請求項1又は2のいずれかに記載の診断剤。
【請求項4】
前記自己免疫疾患は、全身性エリテマトーデス、慢性関節リウマチ、シェーグレン症候群、進行性全身性硬化症、多発性筋炎、皮膚筋炎及びI型糖尿病から選択されるいずれかである、請求項1~3のいずれかに記載の診断剤。
【請求項5】
前記検出試薬は、アクロレイン、4-ヒドロキシ-2-ノネナール、4-ヒドロキシ-2-ヘキセナール及びクロトンアルデヒド並びにこれらの修飾体から選択されるいずれか又はその断片である、請求項1~4のいずれかに記載の診断剤。
【請求項6】
自己免疫疾患の診断キットであって、
アクロレイン、4-ヒドロキシ-2-ノネナール、4-ヒドロキシ-2-ヘキセナール及びクロトンアルデヒド並びにこれらの修飾体から選択されるいずれかと反応する自己抗体を検出する検出試薬を含む、診断キット。
【請求項7】
前記検出試薬は、アクロレイン、4-ヒドロキシ-2-ノネナール、4-ヒドロキシ-2-ヘキセナール及びクロトンアルデヒド並びにこれらの修飾体から選択されるいずれか又はその断片である、請求項6に記載の診断キット。
【請求項8】
自己免疫疾患の検査方法であって、
被験試料中のアクロレイン、4-ヒドロキシ-2-ノネナール、4-ヒドロキシ-2-ヘキセナール及びクロトンアルデヒド並びにこれらの修飾体から選択されるいずれかと反応する自己抗体を検出する検出工程を備える、検査方法。
【請求項9】
前記検出工程は、前記被験試料中の前記抗体の含有量を測定する工程である、請求項8に記載の検査方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、自己免疫疾患の診断、予防又は治療に関し、特に、自己免疫疾患の診断剤、診断方法、自己免疫疾患の予防または治療用の薬剤の探索方法及び自己免疫疾患の予防又は治療用の薬剤に関する。
【背景技術】
【0002】
自己免疫疾患としては、全身性エリテマトーデス(SLE)、I型糖尿病(IDDM)、慢性関節リウマチ(RA)を始めとして多くの疾患が知られている。例えば、SLEにおいては血液中に抗DNA抗体などの自己抗体が産生され、それらは病因であるとともに酵素抗体法を用いた臨床検査における自己免疫疾患の重要な指標(バイオマーカー)となっている。また、本発明者は、高度不飽和脂肪酸残基が酸化を受け、更に、過酸化分解することにより生ずる産物であるアクロレイン(2-プロペナール又はアクリルアルデヒド)や4-ヒドロキシ-2-ノネナール(4-HNE)などは酸化ストレス性代謝産物であって、タンパク質と高い反応性を有していることを既に開示している(非特許文献1、2、3、4)。

【非特許文献1】FEBSLetters 第359巻(1995年)第189~191頁
【非特許文献2】Proc.Nacl. Acad.Sci.USA 第91巻(1994年)2616~2620頁
【非特許文献3】日本油化学会誌 第47巻(1998年)第29~37頁
【非特許文献4】日本農芸化学会誌 第71巻(1997年)第311頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、自己免疫疾患とこうした脂質過酸化アルデヒド又はその修飾体との関係については具体的に検討されておらず、何らの開示もされていない。また、自己免疫疾患の診断に現在用いられている自己抗体は自己免疫疾患の重要な指標の一つではあるが、これらの自己抗体の陽性と自己免疫疾患とが常に関連付けられるわけではなかった。これらの自己抗体は老化によっても増加し、また、自己抗体が陽性であっても、自己免疫疾患に罹患していない場合や自己抗体が陰性であっても自己免疫疾患に罹患している場合もあるからである。
【0004】
そこで、本発明は、自己免疫疾患についての新たな指標とその用途を提供することを目的とする。すなわち、本発明は自己免疫疾患の新たな診断剤、診断方法、自己免疫疾患の予防または治療用の薬剤の探索方法、予防又は治療用の吸着剤及び抗体吸着装置の作動方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、抗HNE抗体などの脂質過酸化アルデヒド修飾タンパク質を認識する抗体が自己免疫疾患患者の血清において有意に検出されたことを見出し、本発明を完成した。すなわち、本発明によれば以下の手段が提供される。
【0006】
本発明の一つの形態によれば、自己免疫疾患の診断剤であって、脂質過酸化アルデヒド、その修飾体及びこれらのいずれかと反応する自己抗体のいずれかを検出する検出試薬を含む、診断剤が提供される。この形態においては、前記脂質過酸化アルデヒドは、アクロレイン、4-ヒドロキシ-2-ノネナール、4-ヒドロキシ-2-ヘキセナール、クロトンアルデヒド及びマロンジアルデヒドから選択されるいずれかとすることができ、さらに前記脂質過酸化アルデヒドは、アクロレイン又は4-ヒドロキシ2-ノネナールとすることができる。
【0007】
この形態においては、また、前記修飾体は、以下の一般式(1)~(5)で表されるいずれかとすることができ、さらに前記一般式(1)又は(2)で表されるものとすることができる。前記修飾体は脂質過酸化アルデヒドのタンパク質の修飾体であることが好ましい。
【化6】
JP0004774513B2_000002t.gif
(前記式中、R及びRは、タンパク質のリジン残基に結合するタンパク質のタンパク質残基若しくはペプチドのリジン残基に結合するペプチド残基を表すか又はRは水素原子を表しRは水酸基を表す。)
【化7】
JP0004774513B2_000003t.gif
(前記式中、R及びRは、タンパク質のリジン残基に結合するタンパク質のタンパク質残基若しくはペプチドのリジン残基に結合するペプチド残基を表すか又はRは水素原子を表しRは水酸基を表す。)
【化8】
JP0004774513B2_000004t.gif
(前記式中、R及びRは、タンパク質のリジン残基に結合するタンパク質のタンパク質残基若しくはペプチドのリジン残基に結合するペプチド残基を表すか又はRは水素原子を表しRは水酸基を表す。)
【化9】
JP0004774513B2_000005t.gif
(前記式中、R及びRは、タンパク質のリジン残基に結合するタンパク質のタンパク質残基若しくはペプチドのリジン残基に結合するペプチド残基を表すか又はRは水素原子を表しRは水酸基を表す。)
【化10】
JP0004774513B2_000006t.gif
(前記式中、R及びR10は、タンパク質のリジン残基に結合するタンパク質のタンパク質残基若しくはペプチドのリジン残基に結合するペプチド残基を表すか又はRは水素原子を表しR10は水酸基を表す。)
【0008】
この形態においては、前記自己免疫疾患は、全身性エリテマトーデス、慢性関節リウマチ、シェーグレン症候群、進行性全身性硬化症、多発性筋炎、皮膚筋炎及びI型糖尿病から選択することができる。
【0009】
この形態においては、前記検出試薬は、前記抗体を検出する試薬であることが好ましい。また、この形態においては、前記検出試薬は、前記脂質過酸化アルデヒド又はその修飾体若しくはその断片であることも好ましい。
【0010】
本発明の他の一つの形態によれば、自己免疫疾患の診断キットであって、脂質過酸化アルデヒド、その修飾体及びこれらのいずれかと反応する自己抗体のいずれかを検出する検出試薬を含む、診断キットが提供される。前記検出試薬は、前記脂質過酸化アルデヒド又はその修飾体若しくはその断片とすることができる。
【0011】
本発明の他の一つの形態によれば、自己免疫疾患の診断方法であって、被験試料中の脂質過酸化アルデヒド、その修飾体及びこれらのいずれかと反応する自己抗体のいずれかを検出する検出工程を備える、診断方法が提供される。この形態においては、前記検出工程は、前記被験試料中の前記抗体の含有量を測定する工程とすることができる。
【0012】
本発明の他の一つの形態によれば、自己免疫疾患の予防又は治療用の薬剤の探索方法であって、1種又は2種以上の化合物と脂質過酸化アルデヒド、その修飾体及びこれらのいずれかと反応する自己抗体のいずれかとを接触させて、これらの活性阻害作用を測定する工程を備える、探索方法が提供される。
【0013】
本発明の他の一つの形態によれば、自己免疫疾患の予防又は治療用の吸着剤であって、脂質過酸化アルデヒド又はその修飾体若しくはその断片を含有する、吸着剤が提供される。
【0014】
本発明の他の一つの形態によれば、抗体吸着装置の作動方法であって、体外に導出された血液成分を、前記抗体吸着装置に備えられる脂質過酸化アルデヒド又はその修飾体のいずれかと反応する自己抗体を吸着する吸着体に導入する工程を備える、作動方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の自己免疫疾患の診断剤は、脂質過酸化アルデヒド、その修飾体又はこれらを認識する自己抗体を検出するための検出試薬を含むことを特徴としている。本発明の自己免疫疾患の診断方法は、上記脂質過酸化アルデヒド、その修飾体又はこれらを認識する抗体を検出する工程を備えることを特徴としている。すなわち、本発明者による上記知見によれば、自己免疫疾患患者の血清中にこうした自己抗体が有意に検出されたことから、こうした自己抗体を検出する検出ことが自己免疫疾患の診断に有用であることがわかる。加えて、自己免疫疾患は、自己抗体が自己を攻撃することによる症状が見出されることから、自己免疫疾患の疾患部位においては自己抗体がターゲットとする脂質過酸化アルデヒド又はその修飾体(以下、脂質過酸化アルデヒド等という。)が存在することが明らかである(Frostegard, J., Svenungsson, E., Wu, R., Gunnarsson, I., Lundberg, I. E., Klareskog, L., Horkko, S. & Witztum, J. L. Lipid peroxidation is enhanced in patients with systemic lupus erythematosus and is associated with arterial and renal disease manifestations. Arthritis Rheum. 52, 192-200 (2005), Grune, T., Michel, P., Sitte, N., Eggert, W., Albrecht-Nebe, H., Esterbauer, H. & Siems, W. G. Increased levels of 4-hydroxynonenal modified proteins in plasma of children with autoimmune diseases. Free Radic. Biol. Med. 23, 357-360 (1997), Iuliano, L., Pratico, D., Ferro, D., Pittoni, V., Valesini, G., Lawson, J., FitzGerald, G. A. & Violi, F. Enhanced lipid peroxidation in patients positive for antiphospholipid antibodies. Blood90, 3931-3935 (1997).)。したがって、本発明の診断剤及び診断方法によれば、被験試料中の脂質過酸化アルデヒド、その修飾体又はこれらを認識する抗体を検出することにより、該疾患の発症予測、進行程度及び予防等に対する知見を得ることができる。この結果、従来、自己免疫疾患については自己抗体の抗体価だけでは信頼性の高い診断が困難であったが、本発明の診断剤及び診断方法を用いることでより信頼性の高い診断が可能となる。
【0016】
本発明の他の形態である自己免疫疾患の予防又は治療用の薬剤の探索方法は、1種又は2種以上の化合物と脂質過酸化アルデヒド、その修飾体及びこれらのいずれかと反応する自己抗体のいずれかとを接触させて脂質過酸化アルデヒド等又はこれらと反応する自己抗体の活性阻害作用を測定する工程を備えることを特徴としている。既に説明したように、自己免疫疾患患者において、脂質過酸化アルデヒド等を認識する抗体が有意に見出されたことから、当該抗体及び脂質過酸化アルデヒド等は、自己免疫疾患の予防、発症及び進行等に関与しており、これらの活性阻害作用を奏する化合物は、自己免疫疾患の予防、発症及び進行の程度を改善することができる。
【0017】
以下、本発明の実施形態である自己免疫疾患の診断方法について説明するとともに、該診断方法に好ましい診断剤、診断用キットについて説明する。さらに、上記知見に基づく自己免疫疾患の予防又は治療用の薬剤の探索方法及び自己疾患の治療用の吸着剤等について説明する。
【0018】
(自己免疫疾患の診断方法)
本発明の診断方法を適用しうる自己免疫疾患としては、全身性エリテマトーデス、慢性関節リウマチ、シェーグレン症候群、進行性全身性硬化症、多発性筋炎、皮膚筋炎、I型糖尿病、混合性結合組織病、強皮症、リウマチ熱、結節性多発動脈炎、Wegener肉芽腫症、ベーチェット病などが挙げられる。なかでも、本発明の自己免疫疾患の診断方法は、全身性エリテマトーデス、慢性関節リウマチ、シェーグレン症候群、進行性全身性硬化症、多発性筋炎、皮膚筋炎及びI型糖尿病の診断に好適である。
【0019】
本発明の診断方法における被験試料としては、診断対象個体から採取される体液が挙げられる。具体的には、全血、血清又は血漿などの血液試料のほか、唾液、髄液、関節液、滑膜液、胸水、心膜液、腹膜液又は尿などの血液以外の体液試料であってもよい。また、診断対象個体から採取される組織も被験試料として挙げられる。具体的には、診断対象個体の自己免疫疾患の疾患部位の組織であり、例えば、皮膚、各種粘膜などが挙げられる。また、被検試料の由来は、特に限定されるものではなく、例えば、動物、具体的には、ヒト及び非ヒト哺乳類動物が挙げられる。
【0020】
本診断方法において、脂質過酸化アルデヒドとは、酸化ストレス等によって生体内脂質が酸化されて生成されるとされるアルデヒドを意味している。脂質過酸化アルデヒドとしては、図1に示すようにアクロレイン(ACR)、4-ヒドロキシ-2-ノネナール(4-HNE)、4-ヒドロキシ-2-ヘキセナール(4-HHE)、マロンジアルデヒド(MDA)及びクロトンアルデヒド(CRA)、が挙げられる。
【0021】
また、脂質過酸化アルデヒドの修飾体としては、脂質過酸化アルデヒドとタンパク質、ペプチド又はアミノ酸との反応物、DNAなどの核酸との反応物が挙げられる。なかでも、脂質過酸化アルデヒドのタンパク質、ペプチド又はアミノ酸の修飾体が好ましく、より好ましくは、タンパク質修飾体である。
【0022】
タンパク質、ペプチド又はアミノ酸修飾体としては、例えば、ジヒドロピリジン-リジン等のMDA-Lys付加体を含むタンパク質のリジン残基の修飾体のほか、同じくリジン残基修飾体であるCRA-Lys付加体、N-(3ε-formyl-3,4-デヒドロピペリジノ)-リジンなどのACR-Lys付加体があり、他に、HNE-His付加体、HHE-His付加体などのヒスチジン残基修飾体が挙げられる。ACR、4-HNE、4-HHE、MDA及びCRAについてのこれらの例示を一般式(1)~(5)に示す。なお、これらの式中、R及びRは、タンパク質のリジン残基に結合するタンパク質のタンパク質残基若しくはペプチドのリジン残基に結合するペプチド残基を表すか又はRは水素原子を表しRは水酸基を表し、R及びR、R及びR、R及びR、R及びR10についても同様である。
【0023】
また、核酸の修飾体としては、アクロレイン-デオキシアデノシン付加体が挙げられる。例えば、こうした修飾体は以下の一般式(6)で表される。
【化11】
JP0004774513B2_000007t.gif

【0024】
脂質過酸化アルデヒドやこのタンパク質修飾体など脂質過酸化アルデヒド修飾体と反応する自己抗体は、診断対象個体の免疫系によって産生されるガンマグロブリン等のイムノグロブリンであって、脂質過酸化アルデヒド等やこれらと反応するものである。本発明者によれば、脂質過酸化アルデヒド等と反応する自己抗体が、DNAとも反応することを確認している。したがって、従来、SLEなどにおいて抗DNA抗体価をSLEの指標として測定していたが、こうした抗DNA抗体価の測定にあたっては、本来の抗DNA抗体以外に脂質過酸化アルデヒド等と反応する自己抗体も同時に測定されていた可能性がある。これに対し、本診断方法においては、抗原としてDNAを用いずにタンパク質に付加した脂質過酸化アルデヒド等を用いることで、より信頼性の高い診断が可能となっている。
【0025】
本診断方法における検出工程は、脂質過酸化アルデヒド等又はこれらと反応する自己抗体を検出する工程である。本明細書において、「検出」とは、脂質過酸化アルデヒド等又は自己抗体が被験試料中に存在するか否かを確認することのほか、被験試料中におけるこれらの含有量を測定する、すなわち、定量することも包含している。
【0026】
本診断方法における検出工程の第1の態様は、脂質過酸化アルデヒド等を検出する工程である。この態様においては、例えば、脂質過酸化アルデヒド等を自己免疫疾患の可能性ある疾患部位の組織について免疫組織化学染色法等により検出する工程、これらの組織抽出物について物理化学分析方法又は免疫化学的方法に検出する工程が挙げられる。免疫組織化学染色は、常法により可能であるが、例えば、酵素抗体法(第4版、学際社)に記載の方法に準じて行うことがきる。また、組織の抽出物中の脂質過酸化アルデヒド等を物理化学的に検出するには、例えば、共役ジエンを指標にしたヒドロペルオキシドの検出、修飾体化しその後のマロンジアルデヒド量換算で比色するTBA法や2、4-DNP法、スピントラップ剤を用いたESR法や、LC、LC/MSなどを用いることができる。
【0027】
組織抽出物から脂質過酸化アルデヒド等を免疫化学的に検出するには、例えば、公知のイムノアッセイ(IA)を用いることができ、イムノアッセイとしては、エンザイムイムノアッセイ(EIA及びELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、ラテックス凝集法、ウェスタンブロッティング法、イムノクロマトグラフィー等が挙げられる。なお、イムノアッセイには、サンドイッチ法及び競合法が挙げられるが、これらの各種態様を上記各種イムノアッセイの種類に応じて適用することができる。なお、イムノアッセイにより、脂質過酸化アルデヒド等を検出するには、少なくとも、これらと反応する標識されていてもよい一次抗体の他、脂質過酸化アルデヒド等若しくはそのフラグメントや前記一次抗体に結合する二次抗体等を検出試薬として用いることができる。
【0028】
また、本診断方法における検出工程の第2の態様は、脂質過酸化アルデヒド等を認識する自己抗体を検出する工程である。この態様においては、上記と同様のイムノアッセイを用いることができる。すなわち、こうした自己抗体が認識する抗原である脂質過酸化アルデヒド等又はその断片(標識されていてもよい)のほか、これらを認識する標識されていてもよい一次抗体、該一次抗体に結合する二次抗体等を検出試薬として用いることができる。検出感度や測定操作等を考慮すれば、自己抗体を検出することが好ましい態様である。また、こうした抗体は、血清、血漿などの血液試料のほか、唾液、髄液、関節液、滑膜液、胸水、心膜液、腹膜液又は尿などの血液以外の体液試料を被験試料とすることが好ましい。
【0029】
こうしたイムノアッセイによって抗原である脂質過酸化アルデヒド等及びこれらと反応する自己抗体を検出するイムノアッセイのバリエーションについて説明する。例えば、ELISAによるサンドイッチ法で抗原を検出する場合、抗原と反応する抗体を固相化しておき、この抗体と被験試料とを接触させ、次に、先の抗体とは異なるエプトープを認識する標識された抗体を加えて反応させる。固相化した抗体と反応した抗原量に応じて標識抗体の結合が多くなり標識量が増大する。また、競合法で抗原を検出する場合、同様に抗体を固相化しておき、一定量の標識された標準品としての抗原と被験試料とを接触させて反応させる。標識された抗原と被験試料中の標識されていない抗原とが競合するので、被験試料中の抗原量が多くなれば標識量が低下する。
【0030】
また、脂質過酸化アルデヒド等と反応する抗体をサンドイッチELISA法で検出するには、抗原を固相化しておき、この抗原と被験試料とを接触させ、次いで標識した二次抗体を加えて反応させる。また、競合法で検出するには、同様に抗原を固相化しておき、これに標識した標準品としての抗体と被験試料とを接触させて反応させる。
【0031】
また、本診断方法においては、健常者の被験試料を対照試料とし、被験試料と対照試料中の抗原量又は自己抗体量とを対比して、対照試料中の抗原量又は自己抗体量に比較して被験試料中のこれらの量が多い場合に、自己免疫疾患の指標とすることができる。
【0032】
なお、イムノアッセイに用いる検出試薬としての抗原(脂質過酸化アルデヒド又はその修飾体)は、試験内で人工的に合成することができる。例えば、上記した各種の脂質過酸化アルデヒドは、商業的に入手可能であり、また容易に合成することができる。また、脂質過酸化アルデヒドの各種修飾体も同様に容易に調製できる。例えば、タンパク質などの修飾体は、脂質過酸化アルデヒドとBSA、カゼイン又はスキムミルクなどのタンパク質の被修飾体とを一定条件下でインキュベートすることにより容易に得られる。また、例えば、タンパク質修飾体は、適当なプロテアーゼで分解することによりフラグメント化することができる。本発明の診断方法においては、好ましくは、脂質過酸化アルデヒドのタンパク質修飾体を用いる。より好ましくは、BSA修飾体を用いる。
【0033】
また、検出試薬としての脂質過酸化アルデヒド等と反応する抗体は、脂質過酸化アルデヒドと反応するものであってもそのタンパク質修飾体などの修飾体と反応するものであってもよいが、特異性及び検出の容易性の観点からは、脂質過酸化アルデヒドの修飾体と反応する抗体であることが好ましく、より好ましくは、タンパク質の修飾体と反応する抗体である。なお、その製法等は特に限定しない。例えば、脂質過酸化アルデヒドとKLH等のタンパク質やペプチドとを生理的条件下でインキュベートとして脂質過酸化アルデヒド修飾体を形成し、この修飾体を免疫原としてマウス等を免疫し、この動物の血清からポリクローナル抗体を得ることができる。また、免疫した動物の脾臓から抗体産生細胞を採取し、さらにミエローマ細胞とのハイブリッドを形成させてクローン化し、所望の選別を施したクローンをマウス等の腹腔内に移植して増殖させて腹水から抗体を採取することでモノクローナル抗体を得ることができる。
【0034】
競合法による場合、抗原に対して自己抗体と競合する限り、ポリクローナルであってもモノクローナルであってもよい。また、免疫原に用いる脂質過酸化アルデヒド修飾体は、化学合成物であってもよい。免疫する動物も特に限定されず、マウス、ラット、ウサギ、ヤギ等を用いることができる。
【0035】
検出試薬としての脂質過酸化アルデヒド等と反応する抗体は、脂質過酸化アルデヒド等の種類に応じて調製することもできるが、市販抗体を用いてもよい。例えば、MDA-Lys付加体と反応する抗MDAモノクローナル抗体、CRA-Lys付加体と反応する抗CRAモノクローナル抗体、ACRのタンパク質のLys残基付加体であるN-(3ε-formyl-3,4-デヒドロピペリジノ)-リジン構造体と反応する抗ACRモノクローナル抗体、HNE-His付加体と反応する抗4-HNEモノクローナル抗体、HHE-His付加体と反応する抗4-HHEモノクローナル抗体(いずれも日本油脂株式会社製である。)を用いることができる。また、抗4-HNE抗体及び抗4-HHE抗体については、それぞれ特開平8-168394号公報及び特開2002-31700に記載されている方法によっても取得することができる。
【0036】
抗原抗体複合体の検出にあたっては、イムノアッセイにおいて二次抗体あるいは過酸化脂質アルデヒド等を標識するための標識には、蛍光物質、発光物質、色素、酵素、補酵素、あるいはラジオアイソトープ等が挙げられる。なかでも、アルカリホスファターゼやパーオキシダーゼのような酵素標識は、安全性や経済性に優れ、しかも必要な感度を比較的容易に達成できる。二次抗体や、抗酸化ストレス物質抗体やアルデヒド類のような検出試薬は、こうした標識成分により直接標識されていてもよいし、これらの成分を認識する抗体やアビジン-ビオチン系などを利用して間接標識されてもよい。こうした標識の検出にあたっては、吸光度や蛍光を測定するほか、共焦点レーザー顕微鏡を用いることができる。また、複合体の検出にあたっては、その他、MSなども組み合わせることができる。
【0037】
また、イムノアッセイは、均一系で行われても不均一系で行われてもよいが、不均一系イムノアッセイにおいて固相を用いる場合には、基板、マイクロタイタープレート、プラスチックビーズ、ガラスビーズ等の各種の固相担体を用いることができる。こうした固相担体に対して物理吸着や化学的な結合、あるいはアビジン-ビオチンを用いた間接的な結合方法によって一次抗体あるいは抗原が固定化される。こうした免疫成分が固相化された担体は、ウシ血清アルブミンやスキムミルクなどの不活性タンパク質で処理することによって、非特異的な反応が抑制されることが好ましい。
【0038】
(自己免疫疾患の診断剤及び診断用キット)
本発明の診断剤は、脂質過酸化アルデヒド、該脂質過酸化アルデヒドによる修飾体又はこれらを認識する自己抗体の検出試薬を含んでいる。本診断剤においては、既に説明した本発明の診断方法における診断対象疾患、被験試料及び診断対象動物の各種の態様をそのまま適用される。また、本診断剤は、本発明の診断方法における検出工程において用いられる反応成分を検出試薬として用いることができる。
【0039】
本診断剤に含まれる検出試薬の一つの態様として、脂質過酸化アルデヒド等又はこれらと反応する自己抗体を物理化学的手法により検出する場合の試薬が挙げられる。また、他の一つの態様として、脂質過酸化アルデヒド等をイムノアッセイにより検出するための試薬が挙げられる。例えば、こうした検出試薬としては、脂質過酸化アルデヒド等と反応する標識されていてもよい一次抗体が挙げられる。また、このほか、脂質過酸化アルデヒド等若しくはそのフラグメントや前記一次抗体に結合する二次抗体等の検出試薬が挙げられる。さらに、検出試薬の他の一つの態様としては、脂質過酸化アルデヒド等を認識する自己抗体をイムノアッセイにより検出するための試薬が挙げられる。例えば、こうした自己抗体が認識する抗原である脂質過酸化アルデヒド等又はその断片(標識されていてもよい)のほか、これらを認識する標識されていてもよい一次抗体、該一次抗体に結合する二次抗体が挙げられる。
【0040】
本発明の検出試薬としての抗体又は抗原は、適当な担体によって固相化されていてもよく、担体や結合手法は特に限定されないで上記の各種態様が適用される。また、標識されていてもいなくてもよく、標識化合物も特に限定されないで上記の各種態様が適用される。
【0041】
本発明の診断用キットはこうした検出試薬の1種又は2種以上を備えることができる。検出試薬は、例えば、適当な担体に固相化されていてもよい。さらに、本発明の診断用キットは、例えば、診断対象の自己免疫疾患の診断に有用な他の指標(抗体又は抗原)を検出可能な検出試薬を備えることができる。すなわち、複数のマーカーを測定可能な診断用キットとすることもできる。こうした他のマーカーとしては、各種自己免疫疾患について市販されている診断用薬から適宜選択される。例えばSLEの診断用キットとしては、抗DNA抗体や抗核抗体を検出する検出試薬を備えることができる。
【0042】
(自己免疫疾患の予防又は治療用の薬剤の探索方法)
本発明の自己免疫疾患の予防又は治療用の薬剤の探索方法は、1種又は2種以上の化合物と脂質過酸化アルデヒド、その修飾体及びこれらのいずれかと反応する自己抗体とを接触させて、これらの活性阻害作用を測定する工程を備えている。脂質過酸化アルデヒド等及び脂質過酸化アルデヒド等と反応する自己抗体は、自己免疫疾患の指標であると同時に病因でもあると考えられる。このため、こうした脂質過酸化アルデヒド等や自己抗体の活性を阻害する作用を有する化合物は、自己免疫疾患を予防又は治療に用いることができる。なお、本明細書において、脂質過酸化アルデヒド等又はこれらと反応する自己抗体の活性を阻害するとは、脂質過酸化アルデヒドと反応してこれらを分解(解毒)したり、脂質過酸化アルデヒドとその修飾対象であるタンパク質等との反応を阻害して修飾体の生成を阻害したり、脂質過酸化アルデヒドの修飾体と反応してこれらを分解(解毒)したり、こうした内因性抗原を分解して自己抗体の産生を阻害したり、自己抗体を吸着して自己抗体の結合活性を阻害したりすることが挙げられる。本探索方法においては、必ずしも患者等から採取した自己抗体を用いる必要はなく、同様の反応性を有する人工的な抗体を用いることができる。なお、本発明の探索方法における脂質過酸化アルデヒドでヒト及びその修飾体並びに自己免疫疾患については、本発明の診断方法及び診断剤において既に説明した各種態様を適用できるとともに、その好ましい態様が本探索方法においても好ましく適用される。
【0043】
本探索方法における活性阻害作用の測定工程は、例えば、脂質過酸化アルデヒド等又はこれらと反応する自己抗体を含むウェルに、一つの化合物を供給して、その後、各ウェルについての上記した各種の活性阻害作用のいずれかを計測する。こうした活性阻害作用の検出においてもイムノアッセイを用いることができるほか、各種の物理化学的手法を用いることができる。こうした探索方法によれば、脂質過酸化アルデヒドの分解活性(解毒活性)、脂質過酸化アルデヒドの修飾体の生成阻害活性、脂質過酸化アルデヒドの修飾体の分解(解毒)活性、脂質過酸化アルデヒド等と反応する自己抗体の吸着活性等の脂質過酸化アルデヒド等又はこれらと反応する自己抗体の活性阻害剤を含む自己免疫疾患の予防又は治療剤が提供される。
【0044】
(自己免疫疾患の治療用の吸着剤)
本発明の自己免疫疾患の予防又は治療用の吸着剤は、脂質過酸化アルデヒド又はその修飾体若しくはその断片を含有している。こうした吸着剤によれば、脂質過酸化アルデヒド等と反応する自己抗体を吸着することができ、例えば、後段で説明する免疫吸着療法や抗体吸着装置に用いることができる。なお、本発明の吸着剤における脂質過酸化アルデヒドでヒト及びその修飾体並びに自己免疫疾患については、本発明の診断方法及び診断剤において既に説明した各種態様を適用できるとともに、その好ましい態様が本吸着剤においても好ましく適用される。
【0045】
(自己免疫疾患の治療方法又は抗体吸着装置及びその作動方法)
本発明の自己免疫疾患の治療方法は、血液成分から脂質過酸化アルデヒド等と反応する自己抗体を除去(好ましくは吸着除去)する工程を備えることができる。例えば、自己免疫疾患患者の血液を体外循環させるとともに、血漿を分離し、血漿について適用な免疫化学的手法等を用いた吸着剤によりあるいはメンブランにより、自己抗体を吸着し又は分離し、自己抗体が除去された血漿を再び非血漿成分と混合して患者に還流することで、自己免疫疾患の症状を改善し又は治療することができる。なお、こうした血漿ろ過(血漿交換)又は体外免疫吸着については、従来公知の各種手法を本発明における自己抗体に適用することができる。例えば、これらの自己抗体は、上記した各種の脂質過酸化アルデヒドのタンパク質修飾体などを吸着剤として用いることで吸着除去することが可能である。なお、本治療方法では、脂質過酸化アルデヒド等と反応する自己抗体の除去に加えて他の抗DNA抗体などの自己抗体を除去することもできる。
【0046】
本発明の抗体吸着装置は、脂質過酸化アルデヒド等と反応する自己抗体を吸着する吸着体を備えている。吸着体は、脂質過酸化アルデヒドや脂質過酸化アルデヒドのタンパク質修飾体などの修飾体又はその断片を含む吸着剤を備えることができる。こうした吸着剤は、ビーズあるいはメンブラン等に固相化されていてもよい。また、吸着体は、カラムあるいはフィルターとして構成されていてもよい。抗体吸着装置は、また、血液成分の体外循環を可能とする循環用管路とポンプ装置を備えることができる。さらに、本発明の抗体吸着装置の吸着体は、他の自己抗体を吸着する吸着剤を備えていてもよいし、こうした他の自己抗体を吸着する吸着体を備えることもできる。
【0047】
本発明の抗体吸着装置の作動方法は、体外に導出された血液成分を脂質過酸化アルデヒド等又はこれらと反応する自己抗体を吸着する吸着体に導入する工程を備えることができる。さらに、この作動方法は、前記吸着体に導入した前記血液成分を吸着体外に押出しする工程を備えることができる。こうした押出し、通常、適当なポンプ装置によって行うことができる。
【0048】
なお、本発明の自己免疫疾患の治療方法又は抗体吸着装置及びその作動方法における脂質過酸化アルデヒドでヒト及びその修飾体並びに自己免疫疾患については、本発明の診断方法及び診断剤において既に説明した各種態様を適用できるとともに、その好ましい態様が本発明方法等においても好ましく適用される。
【実施例】
【0049】
(実施例1)
(SLE患者と健常者の血清中における抗4-HNE抗体価の測定)
SLE患者血清66例及び健常者血清14例を反応用緩衝液で100倍希釈し、その100μLを4-HNEのBSA修飾体を固相化(5μg/ウェル)したマイクロプレートの各ウェルに添加し、二次抗体としてHRP標識抗ヒトIgG二次抗体を用いて以下のELISA法により抗体価を測定した。なお、全てのSLE患者は、SLEに罹患しているという診断が確定している患者であった。また、4-HNEのBSA修飾体は、4mMHNEと2mg/mLBSAとをPBS中で37℃、24時間インキュベートした後、4℃で2日間、PBS中で透析した後、BCA protein assay reagentでタンパク質定量を行い、-80℃で保存したものを用いた。また、同様に、4-HNEのBSA修飾体と同様、二重鎖DNA(仔ウシ胸腺DNA)を固相化して抗DNA抗体価も測定した。
【0050】
ELISA法は、以下のようにして行った。なお、発色試薬は、0.03%H2、0.5mg/mLο-Phenylenediamine/0.1Mクエン酸-リン酸緩衝液pH5.0とした。0.1Mクエン酸-リン酸緩衝液pH5.0は、Citrate・1HO12.6g/600mLHO及びNaHPO・12HO42.6g/1200mLHOを混合し、pH5.0として調製した。
・ 固相抗原タンパク質をPBSで50μg/mLに希釈し、100μLずつImmunoplateにコートし、4℃で一晩もしくは37℃で1時間インキュベートした。
・ TPBS(PBS1Lに対し0.5mLのTween20を加えたもの)200μLで3回、さらにHO200μLで3回洗浄した後、40mg/mLBlock Ace溶液200μLを加え37℃で1時間インキュベートしてブロッキングした。
・ TPBS200μLで3回、さらにHO200μLで3回洗浄した後、TPBSで希釈した血清希釈液を100μLずつ加え37℃で2時間インキュベートした。
・ TPBS200μLで3回、さらにHO200μLで3回洗浄した後、TPBSで5000倍に希釈したHRP標識抗ヒトIgG2次抗体を100μLずつ加え、37℃で1時間インキュベートした。
・ TPBS200μLで3回、さらにHO200μLで3回洗浄した後、発色試薬を100μLずつ加え、室温で数分~15分間遮光放置して発色させた。
発色を確認したら、2NHSOを50μLずつ加え、反応を停止させ、その後プレートリーダーで492nmの吸光度を測定した。
【0051】
図2に示すように、SLE患者血清の抗4-HNE抗体価は、健常者血清のそれに比較して有意に高かった。すなわち、健常者血清から得た吸光度の平均値0.301±0.117をカットオフ値としたとき、SLE患者血清は66例中65例が陽性となった。また、SLE患者血清の抗4-HNE抗体価と健常者血清の抗4-HNE抗体価との間の有意差は、p<0.00001であった。一方、抗DNA抗体価では、健常者血清から得た吸光度の平均値は0.619±0.317であり、SLE患者では0.768±0.130であったため、有意差は見られなかった。以上のことから、抗4-HNE抗体を検出し、その含有量を測定することは、自己免疫疾患患者の臨床判断に有用であることがわかった。
【0052】
(実施例2)
多発性筋炎/皮膚筋炎(PM/DM)患者、慢性関節リウマチ(RA)患者、進行性全身性硬化症(PSS)患者及びシェーグレン症候群(SjS)患者の各自己免疫疾患血清(それぞれ、15例、30例、20例及び20例)及び健常者血清14例を反応用緩衝液で100倍希釈し、その100μlを4-HNEのBSA修飾体を固相化(5μg/ウェル)したマイクロプレートの各ウェルに添加する以外は、実施例1のELISA法と同様にして抗体価を測定した。なお、全ての自己免疫疾患患者は、それぞれの自己免疫疾患に罹患している診断が確定している患者であった。また、同様に、4-HNEのBSA修飾体と同様、二重鎖DNA(仔ウシ胸腺DNA)を固相化して抗DNA抗体価も測定した。結果を図3に示す。
【0053】
図3に示すように、PM/DM患者、RA患者、PSS患者及びSjS患者のいずれの血清においても、抗4-HNE抗体価は、健常者血清のそれに比較して有意に高かった。一方、抗DNA抗体価は、健常者血清と同等かそれ以下しか検出されなかった。以上のことから、抗4-HNE抗体を検出し、その含有量を測定することは、これらの各種自己免疫疾患患者の臨床判断に有用であることがわかった。
【0054】
(実施例3)
SLE患者血清90例及び健常者血清14例を反応用緩衝液で100倍希釈し、その100μLをACR(アクロレイン)のBSA修飾体を固相化(5μg/ウェル)したマイクロプレートの各ウェルに添加する以外は、実施例1のELISA法と同様にして抗体価を測定した。なお、全てのSLE患者は、SLEに罹患していることの診断が確定している患者であった。結果を図4に示す。
【0055】
図4に示すように、SLE患者血清においては、抗ACR抗体価は、健常者血清のそれに比較して高かった。以上のことから、抗ACR抗体を検出し、その含有量を測定することは、これらの自己免疫疾患患者の臨床判断に有用であることがわかった。
【0056】
(実施例4)
本実施例では、HNE-KLHで免疫したマウス血清について抗HNE-抗体価及び抗DNA抗体価を測定した。
(1)HNE-KLHで免疫されたマウス血清の調製
免疫原は、KLH(1.0mg/ml)と5mMのHNEのラセミ体を10mlの0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.4)中で、37℃で24時間インキュベートして調製した。マウスBALB/c(メス、)を、フロイント完全アジュバントで乳化した0.5mgをその腹腔に注射することにより免疫した。さらに、フロイント不完全アジュバントで乳化した免疫原0.5mgで同様にして2週間間隔で3回追加免疫した。抗体価の上昇が確認されたマウスに追加免疫から2週間以上の間隔をあけて、アジュバントで乳化した免疫原0.5mgを直接マウス眼孔静脈にゆっくりと100μL注射して最終免疫を行った。なお、抗体価の確認は、実施例1で説明したELISA法を準用して行った。
【0057】
(2)抗体価の測定
得られたマウス血清について、実施例1に記載のELISA法に準じて抗HNE抗体価及び抗DNA抗体価を測定した。なお、固相化抗原(4-HNEのBSA修飾体及び仔ウシ胸腺二重鎖DNA)は、それぞれポリスチレンプレートの1ウェルあたり1μgを固相化して用い、4-HNEのBSA修飾体は、BSA(1.0mg/ml)と0.01~10mMのHNEのラセミ体を1mlの0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.2)中で、37℃で24時間インキュベートして調製した。結果を図5に示す。
【0058】
図5に示すように、抗HNEウサギ血清は、抗HNE抗体価を有するとともに、抗DNA抗体価を有していた。このことから、抗HNE抗体が、同時に二重鎖DNAを認識することが明らかであった。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】脂質過酸化アルデヒドの例を示す図である。
【図2】SLE患者と健常者の血清中における抗4-HNE抗体価の測定結果を示す図。
【図3】各種自己免疫疾患患者と健常者の血清中における抗4-HNE抗体価の測定結果を示す図。
【図4】SLE患者と健常者の血清中における抗ACR抗体価の測定結果を示す図。
【図5】HNE-KLHで免疫したマウス血清の抗HNE抗体価及び抗DNA抗体価の測定結果を示す図である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4