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明細書 :情報処理装置、心拍情報取得解析装置、睡眠時無呼吸症候群防止装置、プログラム、記録媒体、及び呼吸間隔算出方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4852698号 (P4852698)
公開番号 特開2007-097678 (P2007-097678A)
登録日 平成23年11月4日(2011.11.4)
発行日 平成24年1月11日(2012.1.11)
公開日 平成19年4月19日(2007.4.19)
発明の名称または考案の名称 情報処理装置、心拍情報取得解析装置、睡眠時無呼吸症候群防止装置、プログラム、記録媒体、及び呼吸間隔算出方法
国際特許分類 A61B   5/0452      (2006.01)
A61B   5/08        (2006.01)
FI A61B 5/04 312A
A61B 5/08
請求項の数または発明の数 15
全頁数 27
出願番号 特願2005-288629 (P2005-288629)
出願日 平成17年9月30日(2005.9.30)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 2005年4月25日 社団法人日本生体医工学会発行の「生体医工学 第43巻 第44回 日本生体医工学会(日本エム・イー学会)大会論文集」に発表
特許法第30条第1項適用 2005年6月10日 社団法人電子情報通信学会発行の「電子情報通信学会技術研究報告 信学技報Vol.105 No.122」に発表
審査請求日 平成20年7月29日(2008.7.29)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
発明者または考案者 【氏名】高塚 伸太朗
【氏名】村林 俊
【氏名】三田村 好矩
個別代理人の代理人 【識別番号】110000338、【氏名又は名称】特許業務法人原謙三国際特許事務所
審査官 【審査官】湯本 照基
参考文献・文献 特開2003-339651(JP,A)
調査した分野 A61B 5/0452
A61B 5/08
特許請求の範囲 【請求項1】
心拍間隔の時系列データである心拍変動データに対して所定の形式の関数のフィッティングを行うことによって近似関数を求めるフィッティング部と、
上記近似関数に基づいて、上記心拍間隔の変動の周期情報を求める変動周期算出部と
上記心拍変動データに含まれる複数の極値点を特徴的データとして抽出する特徴的データ抽出部と、
上記特徴的データ抽出部によって特徴的データとして抽出された極値点間の時間の差に基づいて、上記フィッティング部によって上記関数のフィッティングが行われる上記心拍変動データの時間区間である解析区間を決定する区間決定部とを備え、
上記フィッティング部が、上記区間決定部によって決定された解析区間に含まれる上記心拍変動データに対して上記フィッティングを行うことを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
上記解析区間の長さが、上記特徴的データから推定される心拍変動周期の1/2周期分以上であることを特徴とする、請求項に記載の情報処理装置。
【請求項3】
上記特徴的データ抽出部によって特徴的データとして抽出された極値点間の時間の差に基づいて、心拍間隔の変動周期の推定範囲を求める推定周期範囲算出部をさらに備え、
上記フィッティング部及び変動周期算出部が、上記心拍間隔の変動周期を、上記推定周期範囲算出部によって算出された推定範囲内で決定することを特徴とする、請求項又はに記載の情報処理装置。
【請求項4】
上記特徴的データ抽出部が、
上記心拍変動データの極値点を時系列順に選別して特徴的データとして抽出するものであり、
選別対象である極値点を特徴的データとして抽出するか否かを、既に抽出した直前の1又は複数の特徴的データの性質に基づいて決定することを特徴とする、請求項からの何れか1項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
上特徴的データ抽出部が、
上記心拍変動データの極大点及び極小点を時系列順に選別して特徴的データとして抽出するものであり、
選別対象である極大点を特徴的データとして抽出するか否かを、既に特徴的データとして抽出した直前の極大点の値と直前の極小点の値との差と、該直前の極小点の値と当該選別対象である極大点の値との差との比較結果に基づいて決定するとともに、
選別対象である極小点を特徴的データとして抽出するか否かを、既に特徴的データとして抽出した直前の極小点の値と直前の極大点の値との差と、該直前の極大点の値と当該選別対象である極小点の値との差との比較結果に基づいて決定することを特徴とする、請求項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
上記各部を制御することによって、上記解析区間ごとの心拍間隔の変動の周期情報の決定を時系列順に連続的に行う繰返実行部を備えていることを特徴とする、請求項からの何れか1項に記載の情報処理装置。
【請求項7】
上記変動周期算出部が、上記心拍間隔の変動の周期情報を基に呼吸間隔を求めることを特徴とする、請求項1からの何れか1項に記載の情報処理装置。
【請求項8】
上記所定の形式の関数が正弦関数であることを特徴とする、請求項1からの何れか1項に記載の情報処理装置。
【請求項9】
上記所定の形式の関数が、周波数、振幅、位相、及び直流成分に関するパラメタを有する正弦関数であり、
上記変動周期算出部が、上記近似関数の振幅を基に副交感神経の活動指標を求めるとともに、上記近似関数の直流成分を基に交感神経の活動指標を求めることを特徴とする、請求項に記載の情報処理装置。
【請求項10】
生体から取得された心電図データ又は脈波データを上記心拍変動データに変換するデータ変換部をさらに備えていることを特徴とする、請求項1からの何れか1項に記載の情報処理装置。
【請求項11】
請求項1からの何れか1項に記載の情報処理装置の各部と、
心拍データを上記心拍変動データに変換するデータ変換部と、
上記データ変換部に入力する心拍データを生体から取得する心拍情報取得装置とを備えていることを特徴とする心拍情報取得解析装置。
【請求項12】
請求項1に記載の心拍情報取得解析装置と、
上記心拍情報取得解析装置の変動周期算出部によって求められた心拍間隔の変動の周期情報を閾値と比較する比較部と、
上記比較部による比較結果に応じて指示信号を出力する信号出力部と、
上記信号出力部によって出力された指示信号に応答して、上記心拍データを取得した生体に対して呼吸の誘発を行う呼吸誘発装置とを備えていることを特徴とする睡眠時無呼吸症候群防止装置。
【請求項13】
請求項1から1の何れか1項に記載の置を動作させるためのプログラムであって、コンピュータを上記各部として機能させるためのプログラム。
【請求項14】
請求項1に記載のプログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項15】
心拍間隔の時系列データである心拍変動データに対して所定の形式の関数のフィッティングを行うことによって近似関数を求めるフィッティング工程と、
上記近似関数に基づいて、上記心拍間隔の変動の周期情報を求める変動周期算出工程と
上記心拍変動データに含まれる複数の極値点を特徴的データとして抽出する特徴的データ抽出工程と、
上記特徴的データ抽出工程によって特徴的データとして抽出された極値点間の時間の差に基づいて、上記フィッティング工程によって上記関数のフィッティングが行われる上記心拍変動データの時間区間である解析区間を決定する区間決定工程とを含み、
上記フィッティング工程では、上記区間決定工程によって決定された解析区間に含まれる上記心拍変動データに対して上記フィッティングを行うことを特徴とする呼吸間隔算出方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、心拍間隔の時系列データである心拍変動データから心拍変動の周期情報を取得する情報処理装置及び呼吸間隔算出方法と、心電図データを取得するとともに上記情報処理装置を用いて心拍変動の周期情報を取得する心拍情報取得解析装置と、さらにはこの心拍情報取得解析装置によって取得した情報に基づいて睡眠時無呼吸症候群を防止する睡眠時無呼吸症候群防止装置とに関するものである。また、本発明は、上記各装置に用いられるプログラム及びこれを記録した記録媒体に関するものでもある。
【背景技術】
【0002】
呼吸の調節異常による疾患として、睡眠時無呼吸症候群が挙げられる。睡眠時無呼吸症候群は、一晩の睡眠中に10秒以上の無呼吸が30回以上起こる疾患である。睡眠時無呼吸症候群に罹患すると、眠気によって社会生活に支障をきたすだけでなく、高血圧や不整脈などの疾患をも引き起こすと考えられている。睡眠時に起こる無呼吸を検知するためには、通常、パルスオキシメータによる酸素飽和度や、ひずみゲージ又は加速度センサによる腹部や胸部の動き、鼻腔付近の気流や温度などを計測する必要がある。しかしながら、これらの計測手法は専門家による操作が必要であったり、装置の取り付けが困難であったりすることから、家庭で被験者が容易に利用できるものではない。
【0003】
ところで、呼吸は心拍変動に影響を及ぼすことが知られている(非特許文献1)。これは、吸気時には副交感神経を遮断し心拍を速めて効率的な酸素運搬を実現することによるもので、呼吸性洞性不整脈と言われている。このことについて詳述すると以下の通りである。
【0004】
周知のごとく、心臓の働きは、交感神経及び副交感神経によって拮抗的に制御されており、その心拍間隔は絶えず周期的に変動している。ここで、時系列的な心拍間隔の情報から生成した心拍間隔の変動情報(以下「心拍変動情報」という)を周波数解析すると、二つの主要な周波数成分が観察される。その一つは低周波数(LF)成分と呼ばれる0.05~0.15Hzの周波数成分であり、主として交感神経及び副交感神経の活動状態を反映するものである。そして、もう一つは高周波数(HF)成分と呼ばれる0.15~0.45Hzの周波数成分であり、主として副交感神経の活動状態を反映するものである。これらの各周波数成分は自立神経活動を反映しているため、そのスペクトルのパワーが自律神経の活動状況を示す指標として自律神経機能検査などにおいて利用されている。
【0005】
ここで、心臓迷走神経の出力ニューロンの活動は、呼吸中枢からの干渉により吸気時には抑制され、呼気時には刺激される。その結果、ある程度以上の深さで呼吸を行っていると、心臓迷走神経活動が吸気時に略消失し、呼気時にのみ現れる。従って、上記の2つの周波数成分のうち、高周波数成分は呼吸を反映したもの、すなわち呼吸性洞性不整脈として捉えることができる。
【0006】
以上のことから、心拍変動情報を周波数解析し、高周波成分を抽出することによって、呼吸の周波数に関する情報を得ることが試みられている。特許文献1,2には、被験者から取得した心拍変動データをスペクトル解析することによって、呼吸の周波数に関する情報を取得する装置が提案されている。この手法によれば、在宅で利用できる心電計を用いて呼吸の周期に関する情報を簡便に取得できるとされている。

【特許文献1】特開2004-81513号公報(2004年3月18日公開)
【特許文献2】特開2005-160650号公報(2005年6月23日公開)
【非特許文献1】井上博編集「循環器疾患と自律神経機能」医学書院、1996年、P.71-109
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、スペクトル解析によって呼吸間隔情報を求める手法には、いくつかの問題点がある。
【0008】
まず第1に、心拍変動情報をスペクトル解析する際には、心拍変動データを等間隔の時系列データに補間する必要があり、このときに情報が失われたり、変化したりするおそれがある。詳細に説明すると、通常、心拍変動データの作成は、心電図から取得した心拍間隔データを基に行われる。ここで、各心拍間隔は時間とともに変化するため、心拍間隔データから得られる心拍変動データは、不等間隔の時系列データとなる。一方、スペクトル解析には等間隔の時系列データが必要であるため、得られた不等間隔の時系列データを何らかの手法によって等間隔の時系列データに補間する必要がある。この補間の際に、呼吸に関する重要な情報が失われたり、アーチファクトが生じたりするのである。
【0009】
第2の問題点は、通常、スペクトル解析に必要なサンプル時間が、一呼吸の時間に対して大幅に長いため、スペクトル解析によって得られる呼吸間隔が、解析する範囲において平均化されたものとなってしまう点である。
【0010】
そして第3の問題点は、呼吸間隔が正常値よりも長い場合や、呼吸によるスペクトルのピークが小さい場合に、呼吸によるスペクトルが他の要因によるスペクトル(例えば低周波成分)と重なったり、呼吸以外の要因によるスペクトル(例えばバックグラウンドノイズ)に埋没したりすることによって、呼吸による正常なスペクトルのピークを検出できないという点である。
【0011】
さらに、第4の問題点は以下の通りである。時系列データとして取得した心拍変動情報をスペクトル解析すると、得られたスペクトルデータには時間に関する情報が含まれない。従って、各周波数成分がどの瞬間に発生したものであるかを特定することができない。このことは、被験者の睡眠中に、呼吸間隔が時間に伴ってどのように推移しているかを検出できないことを意味する。つまり、通常のスペクトル解析では、心拍変動周期の情報を時系列的に得られないという問題がある。
【0012】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであって、その主たる目的は、被験者に負担をかけずに、正確な呼吸間隔に関する情報を求めることのできる情報処理装置を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る情報処理装置は、上記課題を解決するために、心拍間隔の時系列データである心拍変動データに対して所定の形式の関数のフィッティングを行うことによって近似関数を求めるフィッティング部と、上記近似関数に基づいて、上記心拍間隔の変動の周期情報を求める変動周期算出部とを備えていることを特徴とする。
【0014】
本発明に係る情報処理装置は心拍間隔の変動の周期情報を求めるものである。上述したように、心拍間隔の変動周期は呼吸間隔と一致するため、求めた周期情報から呼吸間隔を知ることができる。また、この周期情報を求める上で、情報処理装置は心拍間隔の時系列データを用いている。心拍間隔の時系列データは、例えば心電計やパルスオキシメータなどの、一般人でも取り扱いが容易で、かつ被験者に負担をかけない各種装置によって取得することができるものである。従って、被験者に負担をかけずに呼吸間隔に関する情報を求めることができる。
【0015】
さらに上記構成によれば、フィッティング部が心拍変動データに対して所定の形式の関数のフィッティングを行うことによって近似関数を求め、求めた近似関数に基づいて、変動周期算出部が上記心拍間隔の変動の周期情報を求める。通常、心拍変動データは不等間隔の時系列データであるが、スペクトル解析とは異なり、フィッティングでは不等間隔の時系列データを補間して等間隔のものにする必要がない。よって、等間隔補間に起因する情報の損失及びアーチファクトの発生を確実に防止することができる。これにより、正確な呼吸間隔に関する情報を求めることが可能になる。
【0016】
また、上記情報処理装置は、上記心拍変動データに含まれる複数の極値点を特徴的データとして抽出する特徴的データ抽出部と、上記特徴的データ抽出部によって特徴的データとして抽出された極値点間の時間の差に基づいて、上記フィッティング部によって上記関数のフィッティングが行われる上記心拍変動データの時間区間である解析区間を決定する区間決定部とをさらに備え、上記フィッティング部が、上記区間決定部によって決定された解析区間に含まれる上記心拍変動データに対して上記フィッティングを行うことが好ましい。
【0017】
上記構成によれば、心拍変動データの全区間のうち、実際にフィッティングに供される解析区間が区間決定部によって決定される。このように、全区間から部分的な解析区間を切り出してフィッティングを行うため、長時間にわたる測定から得られた心拍変動データを入力した場合であっても、得られる心拍変動周期の情報が元データのサンプル時間の長さに応じて平均化されてしまうのを防止することができる。
【0018】
さらに、部分的な解析区間を切り出してフィッティングを行うため、バックグラウンドノイズの影響を低減することができる。これにより、ピークがノイズに隠れてしまうことによって呼吸間隔の情報が得られないといった従来のスペクトル解析でよく見られた問題を解消し、確実に呼吸間隔の情報を取得することができる。また、従来のスペクトル解析ではピークが高周波数成分に隠れてしまうことによって得られなかった無呼吸時の呼吸間隔の情報も確実に取得することができる。
【0019】
加えて、上記構成によれば、解析区間は、特徴的データ抽出部によって抽出された特徴的データ間の時間の差に基づいて決定される。ここで、特徴的データは、心拍変動データに含まれる極値点となっているため、特徴的データ間の時間の差は、心拍変動周期と連動したものとなる。換言すれば、特徴的データ間の時間の差に基づいて、心拍変動周期を推定することができる。区間決定部は、この特徴的データから推定される仮の心拍変動周期に基づいて、解析区間を決定する。よって、決定される解析区間は心拍変動周期と連動したものになる。その結果、以下の利点がもたらされる。
【0020】
通常、フィッティングに供する解析区間の長さは、心拍変動周期に応じたもの(例えば心拍変動周期数周期分)であることが望ましい。ところが、心拍変動周期は呼吸間隔に応じて時間とともに動的に変化する。このため、解析区間を所定の固定値に設定した場合、その解析区間に含まれる心拍変動の周期数は一定にはならず、呼吸間隔に依存してしまう。その結果、フィッティングによって得られる周期情報が、不正確になるおそれがある。この問題は、睡眠時無呼吸のときなど、呼吸間隔が通常から著しく変化する場合に、特に顕著になる。
【0021】
しかしながら、本発明の上記構成によれば、上述したように、フィッティングに供する解析区間が心拍変動周期と連動したものとなる。従って、解析区間に含まれる心拍変動の周期数が常に適切な値になるように、解析区間の長さを動的に調節することができる。それゆえ、フィッティングにより正確な周期情報を安定して得ることができる。
【0022】
また、例えば正弦波フィッティングの場合、上記解析区間の長さが、上記特徴的データから推定される心拍変動周期の1/2周期分以上であることが好ましい。
【0023】
上記構成によれば、解析区間が短いことに起因する局所ノイズの影響が抑制され、正確な心拍変動の周期情報を得ることができる。
【0024】
また、上記情報処理装置は、上記特徴的データ抽出部によって特徴的データとして抽出された極値点間の時間の差に基づいて、心拍間隔の変動周期の推定範囲を求める推定周期範囲算出部をさらに備え、上記フィッティング部及び変動周期算出部が、上記心拍間隔の変動周期を、上記推定周期範囲算出部によって算出された推定範囲内で決定することが好ましい。
【0025】
上記構成によれば、心拍間隔の変動周期の推定範囲が、推定周期範囲算出部によって求められる。これにより、フィッティングを行う前に、求める周期を予め絞り込んでおくことができ、フィッティング処理に要する時間を削減するとともに、実際の変動周期から大きく外れた意図しない周期が算出されてしまうのを確実に防止することができる。
【0026】
また、上記情報処理装置は、上記特徴的データ抽出部が、上記心拍変動データの極値点を時系列順に選別して特徴的データとして抽出するものであり、選別対象である極値点を特徴的データとして抽出するか否かを、既に抽出した直前の1又は複数の特徴的データの性質に基づいて決定することが好ましい。
【0027】
一般的に、心拍変動の周期は時間とともに連続的に推移していくものであるため、心拍変動の周期を反映した真の極値点は、その直前の極値点と類似の性質を有すると考えられる。逆に言えば、直前の極値点と性質の全く異なる極値点は、期外収縮やR波の誤検出によるものであると考えられる。一例を挙げると、ある真の極大点は、その直前の真の極大点と似たような値を有するものと推測される。このことは、極小点についても当てはまる。また別の例を挙げると、ある連続する真の極大値と極小値との差(すなわち振幅)は、直前のそれと同様の値になると推測される。従って、上記構成によれば、特長的データとして抽出する極値点を、直前の1又は複数の極値点の性質に基づいて選別することにより、ノイズとなる極値点を効果的に除外することができる。
【0028】
また、上記情報処理装置は、上特徴的データ抽出部が、上記心拍変動データの極大点及び極小点を時系列順に選別して特徴的データとして抽出するものであり、選別対象である極大点を特徴的データとして抽出するか否かを、既に特徴的データとして抽出した直前の極大点の値と直前の極小点の値との差と、該直前の極小点の値と当該選別対象である極大点の値との差との比較結果に基づいて決定するとともに、選別対象である極小点を特徴的データとして抽出するか否かを、既に特徴的データとして抽出した直前の極小点の値と直前の極大点の値との差と、該直前の極大点の値と当該選別対象である極小点の値との差との比較結果に基づいて決定するものであってもよい。
【0029】
上記構成によれば、極大値と極小値との差、すなわち振幅の適正度に基づいて、ノイズとなる極値点を特徴的データから効果的に除外することができる。
【0030】
また、上記情報処理装置は、上記の各部を制御することによって、上記解析区間ごとの心拍間隔の変動の周期情報の決定を時系列順に連続的に行う繰返実行部を備えていることが好ましい。上記構成によれば、時系列的な心拍変動の周期情報を得ることが可能になる。
【0031】
また、上記情報処理装置は、上記変動周期算出部が、上記心拍間隔の変動の周期情報を基に呼吸間隔を求めることが好ましい。上記構成によれば、呼吸間隔を得ることができる。
【0032】
また、上記所定の形式の関数は、正弦関数であることが好ましい。
【0033】
正弦関数は周期性を有する連続関数であり、周期解析などに頻繁に用いられているため、様々な解析手法が既に確立されている。従って、上記構成によれば、フィッティングを始めとする解析を容易に行うことができる。
【0034】
また、上記所定の形式の関数が、周波数、振幅、位相、及び直流成分に関するパラメタを有する正弦関数であり、上記情報処理装置は、上記変動周期算出部が、上記近似関数の振幅を基に副交感神経の活動指標を求めるとともに、上記近似関数の直流成分を基に交感神経の活動指標を求めることが好ましい。
【0035】
心拍間隔の時系列情報を波として捉えた場合、その周波数は心拍変動周期と相関する。また、その振幅は副交感神経の活動と相関する。さらに、その直流成分は交感神経の活動と相関する。これらの情報は心拍ゆらぎ情報とも呼ばれる。
【0036】
上記構成によれば、各パラメタの値を求めることにより、診断等に好適に用いることのできる心拍ゆらぎ情報を求めることが可能になる。
【0037】
また、上記情報処理装置は、生体から取得された心電図データ又は脈波データを上記心拍変動データに変換するデータ変換部をさらに備えていることが好ましい。
【0038】
上記構成によれば、データ変換部によって、心電図データ又は脈波データが心拍変動データに変換される。従って、心電図データ又は脈波データから、心拍変動の周期情報を直接求めることができる。
【0039】
本発明に係る心拍情報取得解析装置は、上記情報処理装置の各部と、心拍データを上記心拍変動データに変換するデータ変換部と、上記データ変換部に入力する心拍データを生体から取得する心拍情報取得装置とを備えていることを特徴とする。
【0040】
上記構成によれば、上述した情報処理装置を備えているため、被験者に負担をかけずに、家庭などにおいても呼吸間隔を容易に計測することができる。
【0041】
本発明に係る睡眠時無呼吸症候群防止装置は、上記の心拍情報解析取得装置と、上記心拍情報解析取得装置の変動周期算出部によって求められた心拍間隔の変動の周期情報を閾値と比較する比較部と、上記比較部による比較結果に応じて指示信号を出力する信号出力部と、上記信号出力部によって出力された指示信号に応答して、上記心拍データを取得した生体に対して呼吸の誘発を行う呼吸誘発装置とを備えていることが好ましい。
【0042】
上記構成によれば、算出された周期情報が閾値と比較され、その比較結果に応じて、呼吸誘発装置が作動する。従って、無呼吸に陥った生体に対して、呼吸の誘発を自動的に行うことができる。さらに、上記構成によれば、睡眠時無呼吸症候群防止装置は、上述した心拍情報取得解析装置を備えているため、使用者に負担をかけることなく、家庭などにおいても容易に睡眠時無呼吸症候群を防止できる。
【0043】
ところで、上記各装置の各部は、ハードウェアで実現してもよいし、プログラムをコンピュータに実行させることによって実現してもよい。具体的には、本発明に係るプログラムは、上記各部としてコンピュータを動作させるプログラムであり、本発明に係る記録媒体には、当該プログラムが記録されている。
【0044】
これらのプログラムがコンピュータによって実行されると、当該コンピュータは、上記各部として動作する。したがって、上記各装置と同様の効果が得られる。
【0045】
本発明に係る呼吸間隔算出方法は、心拍間隔の時系列データである心拍変動データに対して所定の形式の関数のフィッティングを行うことによって近似関数を求めるフィッティング工程と、上記近似関数に基づいて、上記心拍間隔の変動の周期情報を求める変動周期算出工程とを備えていることを特徴とする。
【0046】
上記構成によれば、被験者に負担をかけずに、正確な呼吸間隔に関する情報を求めることができる。
【発明の効果】
【0047】
本発明に係る情報処理装置は、以上のように、心拍間隔の時系列データである心拍変動データに対して所定の形式の関数のフィッティングを行うことによって近似関数を求めるフィッティング部と、上記近似関数に基づいて、上記心拍間隔の変動の周期情報を求める変動周期算出部とを備えた構成となっている。従って、上述したように、被験者に負担をかけずに、正確な呼吸間隔に関する情報を求められるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0048】
〔情報処理装置〕
本発明に係る情報処理装置の一実施形態について図1から図10に基づいて説明すると以下の通りである。図1は、本実施形態の情報処理装置100の概略構成を示す機能ブロック図である。本実施形態の情報処理装置100は、心電計などによって取得した心電図データから呼吸間隔(1回の呼吸に要する時間、呼吸周期)を求めるために、心拍変動の周期(又は振動数)を算出するマイクロコンピュータである。
【0049】
情報処理装置100は、図1に示すように、R-R間隔算出部(データ変換部)10、解析区間抽出部11、フィッティング部12、呼吸間隔算出部(変動周期算出部)13、繰返実行部14、及び記憶部20を備えている。これらの各部は、図示しないCPUがプログラムを実行することによって実現される機能ブロックである。
【0050】
R-R間隔算出部10は、心電図又は脈波などの心拍データを心拍間隔の時系列データである心拍変動データに変換するためのものである。解析区間抽出部11は、心拍変動データ全体におけるフィッティング処理に供する解析区間を決定し、解析区間に含まれる心拍変動データを抽出するためのものである。
【0051】
フィッティング部12は、心拍変動データに対して所定の形式の関数のフィッティングを行うことによって近似関数を求めるためのものである。呼吸間隔算出部13は、フィッティングによって得られた近似関数のパラメタを基に、心拍間隔の変動の周期情報を求めるためのものである。繰返実行部14は、上述した各部を制御することによって、解析区間ごとに行われる心拍間隔の変動の周期情報の決定を時系列に沿って連続的に行うためのものである。
【0052】
図2は、情報処理装置100による心拍変動の周期の算出工程を示すフロー図である。まず、情報処理装置100に心電図データが入力されると、R-R間隔算出部10が、心電図に含まれるR波のピークを検出し、R-R間隔を求める(ステップS1)。図3は、心電図データから心拍間隔データを求める処理を図式的に示したものである。
【0053】
なお、R-R間隔の算出には公知の手法を用いることができ、例えば、微分や差分、フィルタなどのいずれか1つ又はそれらの組み合わせを用いてR波を抽出し、抽出したR波からR-R間隔を求めることができる。
【0054】
このR-R間隔は、ある心室の興奮から次の心室の興奮までの時間間隔、すなわち心拍間隔を意味する。R-R間隔算出部10は、このR-R間隔(心拍間隔)を時系列的に求め、求めたR-R間隔を計測開始からの時間と対応付ける。これにより、時系列的な心拍間隔データが作成される。このデータは、時間の経過に伴う心拍間隔の推移を示すデータであり、心拍間隔の変動を示すデータともいえる。以下、時系列的な心拍間隔データ群のことを心拍変動データといい、この心拍変動データに含まれる個々のデータのことを心拍間隔データという。なお、個々の心拍間隔データは、R-R間隔(心拍間隔)と計測時間との2つの成分を持つデータであり、また、心拍変動データは不等間隔の時系列データである。
【0055】
次に、解析区間抽出部11が、得られた心拍変動データから、後続のフィッティング処理に供する時間区間(以下「解析区間」という)を決定し、その解析区間に含まれるデータ群(以下「区間心拍変動データ」という)を抽出する(ステップS2)。この解析区間の決定方法は、フィッティングによって心拍変動の周期を算出する際に、算出される周期の精度を左右する重要な因子の1つとなる。
【0056】
図4は、解析区間抽出部11の詳細な構成を示す機能ブロック図である。また、図5から図7は、解析区間を抽出するための処理工程を示すフロー図である。解析区間抽出部11は、図4に示すように、特徴的データ抽出部11a、推定周期範囲算出部11b、区間決定部11c、及びデータ抽出部11dによって構成される。
【0057】
特徴的データ抽出部11aは、心拍変動データに含まれる複数の特徴的データを抽出するためのものである。本実施形態では、特徴的データとして、心拍変動の周期に関連する心拍間隔データ、より具体的には、心拍変動データにおいて極値点(極大点及び/又は極小点)となる心拍間隔データを用いることとする。推定周期範囲算出部11bは、特徴的データ抽出部11aによって抽出された複数の特徴的データ(極値点データ)間の時間の差に基づいて、心拍間隔の変動周期の推定範囲を求めるためのものである。より具体的には、心拍間隔の変動周期の最小値の推定値である推定最小値と、心拍間隔の変動周期の最大値の推定値である推定最大値とを求めるためのものである。
【0058】
区間決定部11cは、特徴的データ抽出部11aによって抽出された複数の特徴的データ(極値点データ)間の時間の差に基づいて、心拍変動データの解析区間を決定するためのものである。より具体的には、複数の特徴的データから推定される推定心拍変動周期に基づいて、解析区間を決定するためのものである。また、データ抽出部11dは、区間決定部11cによって決定された解析区間に含まれる心拍変動データを、区間心拍変動データとして抽出するためのものである。
【0059】
本実施形態における解析区間の決定方法の概要について説明する。本実施形態では、解析区間抽出部11に含まれる後述する特徴的データ抽出部11aが、心拍変動データから極大値及び極小値を有する心拍間隔データ(説明の簡略化のため、以下では心拍間隔データのことを単にデータともいう)を特徴的データとして抽出する。そして、後述する区間決定部11cが、特徴的データ抽出部11aによって抽出された極大値及び極小値のデータから仮の心拍変動の周期(すなわち仮の呼吸間隔)を推定する。そして、その2周期分(すなわち、ある極大値から次の次の極大値までの区間、又はある極小値から次の次の極小値までの区間)を解析区間とする。このようにして、フィッティングに供する解析区間を心拍変動データに基づいて決定することには、以下の利点がある。
【0060】
フィッティングに供する解析区間を決定する際に、解析区間が例えば1/2周期未満と短すぎる場合、フィッティングによって得られる周期はノイズによる影響によって正確な値とはならない。そのため、フィッティングに供する解析区間は、1/2周期以上であることが好ましく、1.5周期以上であることがより好ましく、2周期以上であることが特に好ましい。一方、解析区間が例えば10周期分と長い場合には、フィッティングによって得られる周期が変動周期10周期分の平均的な値となり、時間についての分解能が悪くなる。そのため、各瞬間における心拍変動の周期情報を得たい場合は、解析区間を適宜短く設定することが好ましい。
【0061】
ここで、心拍変動の周期は呼吸間隔に応じて動的に変化するため、解析区間を所定の固定値に設定した場合、呼吸間隔の変化に応じて上述した何れかの問題が発生する。しかしながら、本実施形態の構成によれば、心拍変動データから推定した仮の変動周期に基づいて動的に解析区間を決定するため、解析区間を常に心拍の変動周期に連動させることができるのである。これにより、ある瞬間における変動周期の算出を正確に行うことが可能になる。なお、瞬間的な変動周期の算出が可能になるということは、求める変動周期の、時間についての分解能が向上することを意味する。
【0062】
また、好ましい実施態様として、特徴的データ抽出部11aは、ノイズとなる極大値及び極小値のデータを周期算出用の特徴的データから除外するために、特定した極値が呼吸による心拍変動の周期を反映した真の極値であるか否かを検定する。
【0063】
心拍間隔データに含まれる極値点は、基本的には呼吸間隔を反映したものである。しかしながら、期外収縮やR波の誤検出が発生すると心拍間隔が急激に変化し、予期しない極値点が現れることがある。この予期しない極値点は呼吸間隔を反映したものではないため、呼吸間隔を正確に推定する際には除外する必要がある。
【0064】
ここで、本実施形態では、上記の真の極値か否かの検定に、既に抽出した直前の特徴的データを用いる構成となっている。検定の具体的な方法には様々なものがあるが、検定に直前の特徴的データを用いることには、以下の利点がある。
【0065】
通常、呼吸間隔は徐々に変化するものであることから、呼吸による心拍変動の周期は、ある時点から時間が少し経過する間に急激に変化することがないと考えられる。従って、特徴的データとして用いることのできる真の極大値及び極小値は、特徴的データとして抽出された直前の極大値及び/又は極小値と性質が似ていることが予想される。
【0066】
例えば、特定した極大値が真の極大値であるならば、直前に特徴的データとして抽出した極大値に対して近い値を示すはずである。従って、特定した極大値を、既に特徴的データとして抽出した直前の極大値と比較し、所定の誤差範囲内にある場合にのみ、特定した極大値を真の極大値と見なして、特徴的データとして抽出することが考えられる。このことは、極小値についても当てはまる。
【0067】
本実施形態ではより高度な方法として、連続する極大値と極小値との差が、直前のそれに対して大きく変化しない性質を利用する。すなわち、特定した極大値が真の極大値(極小値)であるかどうかを、特徴的データとして抽出済みの直前の極大値と極小値との差に基づいて検定するのである。これにより、ノイズとなる極大値及び極小値のデータを、振幅の適正度に基づいて除外することができる。
【0068】
また、以下の説明では詳述しないが、連続する極大点と極小点との間の時間の差が、直前のそれに対して大きく変化しないことを利用してもよい。これにより、ノイズとなる極大値及び極小値のデータを、周期の適正度に基づいて除外することができる。もちろん、上述した方法を複数組み合わせ、統計的な処理に基づいて検定してもよい。
【0069】
なお、本実施形態では、解析区間を心拍変動の2周期分としているが、本発明はこれに限定されず、好適な周期数分の心拍変動データを区間心拍変動データとして用いることができる。また、周期を推定するための特徴的データを抽出する上で、必ずしも極大値及び極小値のデータを用いる必要もない。周期と何らかの相関性があり、周期を推定できるデータであれば何れのものでも特徴的データとして用いることができる。
【0070】
解析区間の決定方法の具体的な処理手順について詳述すると、以下の通りである。解析区間抽出部11は、上述したように、心拍変動データの解析区間を決定し、その解析区間に含まれる区間心拍データを抽出するが、この抽出作業は、時系列に沿って計測時間順に行われる。すなわち、心拍変動データの全時間区間のうち、計測時間の早いものから順に解析区間が決定されていく。
【0071】
まず、入力された心拍変動データに対して、特徴的データ抽出部11aが最も時間の早いデータの次のデータ(すなわち2番目に計測時間の早いデータ)を選択し、これを特徴的データか否かの検定対象となるデータ(以下「対象データ」という)とする。
【0072】
そして、特徴的データ抽出部11aは、この対象データが極大値であるかを、対象データの値と対象データの前後のデータの値との比較に基づいて検定する(ステップS201)。具体的には、番号iのデータ(ただし、iは計測時間順に付けられるデータの番号)が有するR-R間隔の値をL(i)とし、対象データの番号をIとすると、次の2つの条件式(1),(2)
L(I)>L(I-1) …(1)
L(I)>L(I+1) …(2)
の両方を満たす場合に、L(I)を極大値と見なす。
【0073】
なお、本実施形態では、対象データ及びその前後のデータに基づいて極大値であるかどうかを検定したが、検定に用いる前後のデータの数を増やしてもよい。例えば、対象データ及びその前後のデータ2つずつを含む5つの連続するデータに基づいて、対象データが極大値であるか否かを検定してもよい。
【0074】
ここで、対象データが極大値でなかった場合には、ステップS204に進み、対象データを次のデータにし(I=I+1)、再びステップS201に戻る。一方、対象データの値が極大値であった場合には、これが真の極大値であるか、ノイズによる極大値であるかを検定するために、特徴的データ抽出部11aがさらに以下の処理を行う。
【0075】
極大値の特定が全解析区間において始めての場合は、特徴的データ抽出部11aがこの極大値をそのまま特徴的データとして抽出する。一方、すでに複数回の処理を繰り返している場合には、この極大値がノイズによるものでないことを、すでに抽出した直前の特徴的データの性質に基づいて検定する(ステップS202、S203)。
【0076】
具体的には、図8に示すように、今回特定した極大値をL(I)、既に特徴的データとして抽出した直前の極小値をL(G)、同極大値をL(H)(ただし、G、Hは直前に求めた特徴的データ、Iは対象データの番号を示し、G<H<I)とすると、L(I)-L(H)と、L(G)-L(H)とを算出するとともに、それぞれの算出結果を比較する(ステップS202)。そして、L(I)-L(H)が、L(G)-L(H)に対して、所定の誤差範囲(例えば±A%、又は±Aなど)に収まる場合に、特定したL(I)を真の極大値と見なし、対象データを特徴的データとして抽出する(ステップS205)。
【0077】
一方、所定の誤差範囲に収まらなかった場合には、対象データの値は、真の極大値ではないと見なして対象データを破棄するとともに、ステップS204に進み対象データを次のデータに変更し(I=I+1)、ステップS201に戻る。
【0078】
ステップS205の後は、ステップS206に進むが、ステップS206については後述する。そして、ステップS207では対象データを次のデータに変更し(I=I+1)、今度は、特徴的データとなる極小値を特定するために、図6のステップS208に進む。極小値の特定は、極大値の特定と略同様の手順により行われる。
【0079】
特徴的データ抽出部11aは、この対象データが極小値であるかを、対象データの値と対象データの前後のデータの値とから検定する(ステップS208)。具体的には、対象データの番号をI、そのR-R間隔の値をL(I)とすると、次の2つの条件式(3),(4)
L(I)<L(I-1) …(3)
L(I)<L(I+1) …(4)
の両方を満たす場合に、L(I)を極小値と見なす。
【0080】
ここで、対象データが極小値でなかった場合には、ステップS211に進み、対象データを次のデータにし(I=I+1)、再びステップS208に戻る。一方、対象データの値が極小値であった場合には、これが真の極小値であるか、ノイズによる極小値であるかを検定するために、特徴的データ抽出部11aがさらに以下の処理を行う。
【0081】
特徴的データ抽出部11aは、上述の場合と同様に、この極小値がノイズによるものでないことを、すでに抽出した直前の特徴的データに基づいて検定する(ステップS209、S210)。
【0082】
具体的には、今回特定した極小値をL(I)、既に特徴的データとして抽出した直前の極大値をL(H)、同極小値をL(G)(ただし、G、Hは直前に求めた特徴的データ、Iは対象データの番号を示し、G<H<I)とすると、L(H)-L(I)と、L(H)-L(G)とを算出するとともに、それぞれの算出結果を比較する(ステップS202)。そして、L(H)-L(I)が、L(H)-L(G)に対して、所定の誤差範囲(例えば±A%、又は±Aなど)に収まる場合に、特定したL(I)を真の極小値と見なし、対象データを特徴的データとして抽出する(ステップS212)。
【0083】
一方、所定の誤差範囲に収まらなかった場合には、対象データの値は、真の極小値ではないと見なして対象データを破棄するとともに、ステップS211に進み対象データを次のデータに変更し(I=I+1)、ステップS208に戻る。
【0084】
ステップS212の後は、ステップS213に進み、ステップS213では対象データを次のデータに変更し(I=I+1)、今度は、特徴的データとなる極大値を再び特定するために、ステップS201に戻る。
【0085】
以上のようにして、極大値と極小値とを交互に探索・選別・抽出した結果、ステップS206において、3つの極大値及び2つの極小値を特徴的データとして抽出したと判定された場合は、図7のステップS214に進む。なお、3つの極大値及び2つの極小値を有するデータを特徴的データとして抽出したということは、極大-極小-極大-極小-極大の区間を決定したことに相当し、仮の心拍変動周期2周期分を特定したことを意味する。この2周期分がフィッティングに供する解析区間となる。
【0086】
ステップS214、S215では、推定周期範囲算出部11bが、得られた極大値及び極小値のデータから、心拍変動周期の推定範囲を算出する。具体的には、図9に示すように、特徴的データとして抽出された上記の極値の連続する2つの極値間において、それぞれのデータ同士の計測時間の間隔が最も短いものを最小間隔(ステップS214)、最も長いものを最大間隔(ステップS215)とし、これらに基づいて心拍変動周期の推定範囲を算出する(ステップS216)。
【0087】
例えば、上記の5つの極値を有する特徴的データの番号を、計測時間順に1~5とし、それらの計測時間をT(1)~(5)とすると、最小間隔及び最大間隔は、次の式(5),(6)
最小間隔=min|T(i+1)-T(i)| …(5)
最大間隔=max|T(i+1)-T(i)| …(6)
(ただし、i∈1,2,3,4)
によって表される。
【0088】
そして、
心拍変動周期の推定最小値=最小間隔×2 …(7)
心拍変動周期の推定最大値=最大間隔×2 …(8)
とする。また、心拍変動周期の推定最小値、推定最大値の逆数をそれぞれとれば、心拍変動周波数の推定最大値、推定最小値が求められる。すなわち、
心拍変動周波数の推定最小値=1/(最大間隔×2) …(9)
心拍変動周波数の推定最大値=1/(最小間隔×2) …(10)
である。ここで求められた心拍変動の周波数又は周期の推定範囲の最大値及び最小値は、後続のフィッティング部12に送信される。フィッティング処理では、この範囲内で周波数又は周期が求められることとなる。
【0089】
続いて、区間決定部11cが、上記の極大-極小-極大-極小-極大の区間(すなわち仮の変動周期2周期分)を、フィッティングに供する解析区間として決定する。そして、データ抽出部11dが、この解析区間に含まれる心拍間隔データを抽出し(ステップS217)、抽出した心拍間隔データ群を区間心拍変動データとしてフィッティング部12に送信する。
【0090】
図1のフロー図に戻る。上述したステップS201~S217を含むステップS2が完了すると、フィッティング部12が、データ抽出部11dから受信した区間心拍変動データに対して正弦関数のフィッティングを行う(ステップS2)。以下、フィッティングについて詳述する。
【0091】
まず、フィッティングの原理について説明する。時系列データxが、振幅R、角周波数ω、初期位相θ、直流成分μ、誤差成分eを有する正弦関数を用いて、次の式(11)
=Rsin(ωt+θ)+μ+e …(11)
によって表されるとする。このとき、自乗誤差の合計は、次の式(12)
Σe=Σ{x-Rsin(ωt+θ)-μ}
=Σ(x-Acosωt-Bsinωt-μ) …(12)
(ただし、A=Rsinθ,B=Rcosθ)
によって表される。
【0092】
ここで、自乗誤差が最小であるためには、ΣeのA,B,μについての偏微分値がそれぞれ0、すなわち次の式(13)~(15)
δ/δAΣe=0 …(13)
δ/δBΣe=0 …(14)
δ/δμΣe=0 …(15)
を満たせばよい。これを解くと、μ,A,Bは、次の行列式(16)
【0093】
【数1】
JP0004852698B2_000002t.gif

【0094】
によって表される。従って、任意のωを与えてやれば、μ,A,Bの値を求めることができる。
【0095】
ここで、本実施形態では、角周波数ωの最適値を決定する上で、上述した式(9),(10)を拘束条件として用いる。すなわち、次の式(17)
2π/(最大間隔×2)≦ω≦2π/(最小間隔×2) …(17)
を拘束条件として用いる。また、角周波数ωの最適値は、次の式(18)
R=(A+B1/2 …(18)
で表される振幅Rが最大となるときのωの値とする。
【0096】
フィッティング部12は、上記の計算を行うことにより、区間心拍変動データに対して正弦関数のフィッティングを行い、最適な角周波数ω及びそのときのμ,A,Bの値を算出する。算出された各パラメタは、解析区間を代表する時間(例えば、最初の極大値のデータの計測時間と、最後の極大値のデータの計測時間との平均値)と対応付けられ、呼吸間隔算出部13に送信される。
【0097】
呼吸間隔算出部13は、受信したパラメタωの値から心拍変動の周期を求める(ステップS4)。心拍変動の周期は、例えば上記の角周波数ωから、次の式(19)
心拍変動の周期=2π/ω …(19)
によって算出することができる。呼吸間隔算出部13は、算出した周期の値を、解析区間を代表する時間と対応付けて、記憶部20の呼吸間隔データベース24に格納する(ステップS5)。なお、算出した心拍変動の周期は、呼吸間隔と等しいものと考えられるため、この呼吸間隔データベース24には、呼吸間隔のデータが計測時間(解析区間を代表する時間)と対応付けられて格納されることになる。
【0098】
また、呼吸間隔算出部13は、フィッティング部12から受信した各パラメタの値を計測時間と対応付けて、記憶部20の周波数等データベース21に格納する。さらに、呼吸間隔算出部13は、各パラメタの値のうち、振幅Rの値を計測時間と対応付けて、記憶部20の副交感神経活動指標データベース22に格納する。また、同様に、直流成分μの値を解析計測時間と対応付けて、記憶部20の交感神経活動指標データベース23に格納する。なお、ここで求められた振幅Rの値は、副交感神経の活動指標を示すものであり、直流成分μの値は、交感神経の活動指標を示すものである。
【0099】
以上のステップS2からS4によって、ある1つの解析区間における呼吸間隔が求められた。この後、繰返実行部14が、解析区間抽出部11、フィッティング部12、及び呼吸間隔算出部13を制御することによって、解析区間抽出部11、フィッティング部12、及び呼吸間隔算出部13がステップS2からS4を繰り返し行う。すなわち、ステップS4からステップS2に戻った後、解析区間抽出部11は、先ほどの解析区間の終端の極大値のデータを開始点とした次の解析区間を決定し、新たな区間心拍変動データを抽出する(ステップS2)。そして、フィッティング部12及び呼吸間隔算出部13は、新たな区間心拍変動データに対して上述したステップS3~S5を行う。解析区間抽出部11、フィッティング部12、及び呼吸間隔算出部13は、計測時間順にこの作業を繰り返す。
【0100】
その結果、各データベースには、時間と対応付けられた各値が順次格納されていく。これにより、各データベースには、時間の経過に伴う各値の変動情報(心拍又は神経に関するゆらぎ情報)が蓄積されることになる。各データベースに蓄積されたこれらの変動情報は、算出した値を縦軸、計測時間を横軸にとったグラフなどとして、表示装置300などによって可視化され、診断に利用される。
【0101】
なお、上述した全処理工程のうち、ステップS1はR-R間隔算出工程(データ変換工程)、ステップS2は解析区間抽出工程、ステップS3はフィッティング工程、ステップS4・S5は呼吸間隔算出工程(心拍周期算出工程)に相当し、さらに、ステップS201~S213は特徴的データ抽出工程、ステップS214・S215は推定周期範囲算出工程、ステップS216は区間決定工程、ステップS217はデータ抽出工程に相当する。
【0102】
ところで、上記の構成によれば、呼吸間隔(心拍変動周期)、副交感神経の活動指標、交感神経の活動指標などの値は、解析区間1区間ごとに算出される。解析区間1区間は、呼吸間隔約2つ分に相当するため、データベースに蓄積された変動情報は、呼吸間隔約2つ分に相当する時間ごとに推移するデータとなる。従って、利用用途によっては計測時間についての分解能が充分でない場合もある。この場合、以下のようにして改善することができる。
【0103】
上述したように極大-極小-極大-極小-極大を解析区間とするフィッティングが行われた後、解析区間抽出部11は、先ほどの解析区間における最初の極大値の次の極小値を開始点とし、極小-極大-極小-極大-極小を新たな解析区間にする。これにより、解析区間が極値間の時間ずつシフトするため、得られる呼吸間隔のデータは、極値間の時間ごと、つまり呼吸間隔約1/2周期分に相当する時間ごとに得られることになる。
【0104】
さらには、上述した極大-極小-極大-極小-極大を解析区間とするフィッティングが行われた後、解析区間をデータ1つ分だけ後ろ(すなわち計測時間の遅い方)にシフトさせ、シフトした区間を新たな解析区間としてもよい。具体的には、上述した解析区間における最初の極大値を有するデータの次のデータを開始点とし、最後の極大値を有するデータの次のデータを終端とした区間を、新たな解析区間とする。そして、フィッティング部12及び呼吸間隔算出部13は、このデータ1つ分だけシフトした解析区間についてフィッティングを行い、上記の各値を算出する。その後、解析区間抽出部11は、解析区間をまたデータ1つ分だけ後ろにシフトさせ、シフトした区間を新たな解析区間とする。このシフト処理は、解析区間の始点が次の極値に来るまで続けられる。そして、解析区間の始点が次の極値までシフトした場合には、仮の呼吸間隔に基づいた上述した方法によって、再び解析区間の長さを決定する。
【0105】
このようにして、解析区間を心拍間隔データ1つ分ずつシフトさせていくことにより、呼吸間隔(心拍変動周期)、副交感神経の活動指標、交感神経の活動指標などの値が、心拍間隔データの個数と略同数求められる。このことは、上記の各値が、心拍間隔データと同じ時間分解能で得られることを意味する。
【0106】
さらにこの構成の場合、呼吸間隔算出部13は、フィッティングによって得られた周波数の値から、以下のようにして呼吸間隔を算出することができる。図10の上図は、得られた周波数の変動情報を、縦軸に周波数、横軸に計測時間をとったグラフとして可視化したものである。
【0107】
周期関数では、周波数を1周期分の時間について積分すると、その値が1となる。そのため、図10の上段のグラフにおいて、斜線領域の面積が1であるとすると、そのときの計測時間の幅が1回の呼吸間隔(1回の心拍変動に要する時間)の長さに相当する。従って、面積が1となる区間の長さを求めることによって、1回の呼吸間隔(1回の心拍変動に要する時間)を求めることができる。この方法によれば、個々のデータにおける周波数の変動を考慮に入れて、1回の呼吸間隔を求めることができるため、算出された呼吸間隔は、一層正確なものとなる。
【0108】
それ以外にも以下のような方法もある。フィッティングによって得られたA,Bの値から、その時点における位相θを次の式(20)
θ=tan-1(A/B) …(20)
によって求めることができる。図10は、縦軸にこのθの値を、横軸に計測時間をとったグラフを示す図である。このグラフから、位相が1回転するのに必要な時間を求めればよい。例えば、位相の極小点を呼吸基準点とし、ある呼吸基準点から次の呼吸基準点までの時間を、1回の呼吸間隔とすることができる。
【0109】
もちろん、上記2つの方法を組み合わせることもできる。例えば、各計測時間ごとに位相θを求めることによって、最初の呼吸基準点とそれに続く呼吸基準点の候補をまず決定する。その後、上述した面積を用いる方法によって、最初の呼吸基準点を基に後続の呼吸基準点が出現するおおよその時間を推定し、推定した時間付近にある呼吸基準点の候補を次の呼吸基準点と認定する。この作業を繰り返し、最後に、呼吸基準点間の時間を算出することによって、それぞれの呼吸間隔を求めることができる。
【0110】
呼吸間隔を上述した方法によって求めることにより、得られる呼吸間隔のデータが一層正確なものとなる。なお、後述する実施例は、この方法によって呼吸間隔を求めている。
【0111】
また、本実施形態では、フィッティングに正弦関数を用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。正弦関数以外にも、周期性を有する関数、例えば三角波又は鋸波など各種関数を用いることもできる。
【0112】
また、本実施形態では、心拍間隔データを心電図から抽出したR波のピーク間の距離、すなわちR-R間隔に基づいて算出したが、本発明はこれに限定されず、R波以外のピークを用いて心拍間隔を求めてもよい。さらには、心拍間隔データを、光学的な脈波センサ(例えばパルスオキシメータ)から取得した脈波データに基づいて算出してもよい。
【0113】
以上のように、本実施形態に係る情報処理装置によれば、心拍間隔データの等間隔補間に起因する呼吸情報が喪失や変化が生じない。その上、解析に用いるデータの計測時間が様々な長さであっても、解析区間を呼吸間隔に合わせて動的に設定するため、呼吸の情報が平均化されたり、ノイズの影響を受けたりするのを抑制することができる。さらには、呼吸間隔が長い場合など、従来の周波数解析では低周波数成分と高周波数成分の分離が困難である場合であっても、呼吸周波数を検出することが可能となる。
【0114】
〔心拍情報取得解析装置〕
次に、本発明に係る心拍情報取得解析装置の一実施形態について説明すると以下の通りである。本実施形態の心拍情報取得解析装置500は、家庭などにおいて呼吸間隔の情報を容易に収拾するためのものである。心拍情報取得解析装置500は、上述した情報処理装置100及び心電図データを生体から取得する心電計(心拍情報取得装置)200を備えている。
【0115】
心電計200としては、何れの心電計を用いてもよいが、ホルター心電計や携帯型心電計が好ましい。これにより、家庭において日常的に呼吸間隔の情報を取得することができる。また、心電計200と情報処理装置100とは一体型となっていてもよいし、ネットワークを介して通信する構成であってもよい。
【0116】
このような心拍情報取得解析装置500の動作を説明すると、被験者に装着された心電計200は、被験者から心電図データを取得する。取得した心電図データは、情報処理装置100のR-R間隔算出部10に送信され、上述した工程に従って、呼吸間隔の情報などが算出される。なお、この場合、呼吸間隔などの各種情報の算出は、リアルタイムで行われる。これにより、心拍情報取得装置500は、呼吸間隔の情報を始めとする各種情報をリアルタイムで求めることができる。
【0117】
以上のように、本実施形態の心拍情報取得装置は、心電計200によって心電図データを計測するとともに、計測したデータに基づいて呼吸間隔を算出する。従って、被験者に大きな身体的負担を掛けることなく、容易に呼吸情報を得ることができる。
【0118】
なお、上述した心拍情報取得装置として、心電図データを取得する心電計200の代わりに脈波を取得するパルスオキシメータなどを備えていてもよい。この場合であっても、パルスオキシメータによって取得した脈波を基に心拍間隔を求めることができる。従って、上述した情報処理装置によって、呼吸間隔の情報などを求めることができる。
【0119】
〔睡眠時無呼吸症候群防止装置〕
次に、本発明に係る睡眠時無呼吸症候群防止装置の一実施形態について説明すると以下の通りである。本実施形態の睡眠時無呼吸症候群防止装置600は、夜間の睡眠時に発生する睡眠時無呼吸症候群を検出し、これを効果的に防止するためのものである。睡眠時無呼吸症候群防止装置600は、上述した心拍情報取得装置500及び呼吸誘発装置400を備えている。
【0120】
呼吸誘発装置400は、睡眠時無呼吸に陥った被験者に対して何らかの刺激を与えることにより、呼吸を回復させる装置である。呼吸誘発装置400には、公知の各種装置、例えば電気刺激装置、変動磁気刺激装置、又は機械的刺激装置などを用いることができる。
【0121】
本実施形態の睡眠時無呼吸症候群防止装置600では、情報処理装置100が、上述した各機能ブロックに加えて、無呼吸判定部15をさらに備えている。無呼吸判定部15は、呼吸間隔算出部13がリアルタイムに算出した呼吸間隔データを逐次受信する。そして、受信した呼吸間隔データの示す呼吸間隔を閾値と比較することによって、被験者が無呼吸状態に陥っているか否かを判定する。閾値は、例えば10秒とすることができる。これにより、無呼吸判定部15は、呼吸間隔が10秒よりも大きくなった場合に、被験者が無呼吸状態に陥っていると判定する。
【0122】
無呼吸判定部15は、被験者が無呼吸状態に陥っていると判定すると、呼吸誘発装置400に対して、呼吸の誘発を指示する指示信号を送信する。この信号を受信した呼吸誘発装置400は、被験者に対して刺激を与える。この刺激によって、被験者は無呼吸状態から回復する。
【0123】
なお、上述した説明では、無呼吸判定部15が被験者の無呼吸状態の判定を呼吸間隔データに基づいて行っているが、本発明はこれに限定されず、フィッティング処理によって算出される心拍変動の周波数のパラメタの値に基づいて行ってもよい。すなわち、閾値を例えば0.1Hzとし、無呼吸判定部15は、心拍変動の周波数(すなわち呼吸周波数)が0.1Hzよりも小さくなった場合に、被験者が無呼吸状態に陥っていると判定してもよい。
【0124】
以上のように、本実施形態の睡眠時無呼吸症候群防止装置600によれば、被験者が睡眠中に無呼吸状態に陥った際に、自動的に被験者の呼吸を誘発し、被験者を無呼吸状態から離脱させることが可能になる。
【0125】
〔プログラム及び記録媒体〕
ところで、情報処理装置100の各機能ブロック、特に、R-R間隔算出部10、解析区間抽出部11、フィッティング部12、呼吸間隔算出部13、繰返実行部14、及び無呼吸判定部15は、ハードウェアロジックによって構成してもよいし、次のようにCPUを用いてソフトウェアによって実現することもできる。
【0126】
すなわち、情報処理装置100は、各機能を実現する制御プログラムの命令を実行するCPU(central processing unit)、上記プログラムを格納したROM(read only memory)、上記プログラムを展開するRAM(random access memory)、上記プログラムおよび各種データを格納するメモリ等の記憶装置(記録媒体)などを備えている。そして、本発明の目的は、上述した機能を実現するソフトウェアである情報処理装置100の制御プログラムのプログラムコード(実行形式プログラム、中間コードプログラム、ソースプログラム)をコンピュータで読み取り可能に記録した記録媒体を、上記情報処理装置100に供給し、そのコンピュータ(またはCPUやMPU)が記録媒体に記録されているプログラムコードを読み出し実行することによっても、達成可能である。
【0127】
上記記録媒体としては、例えば、磁気テープやカセットテープ等のテープ系、フロッピー(登録商標)ディスク/ハードディスク等の磁気ディスクやCD-ROM/MO/MD/DVD/CD-R等の光ディスクを含むディスク系、ICカード(メモリカードを含む)/光カード等のカード系、あるいはマスクROM/EPROM/EEPROM/フラッシュROM等の半導体メモリ系などを用いることができる。
【0128】
また、情報処理装置100を通信ネットワークと接続可能に構成し、上記プログラムコードを通信ネットワークを介して供給してもよい。この通信ネットワークとしては、特に限定されず、例えば、インターネット、イントラネット、エキストラネット、LAN、ISDN、VAN、CATV通信網、仮想専用網(virtual private network)、電話回線網、移動体通信網、衛星通信網等が利用可能である。また、通信ネットワークを構成する伝送媒体としては、特に限定されず、例えば、IEEE1394、USB、電力線搬送、ケーブルTV回線、電話線、ADSL回線等の有線でも、IrDAやリモコンのような赤外線、Bluetooth(登録商標)、802.11無線、HDR、携帯電話網、衛星回線、地上波デジタル網等の無線でも利用可能である。なお、本発明は、上記プログラムコードが電子的な伝送で具現化された、搬送波に埋め込まれたコンピュータデータ信号の形態でも実現され得る。
【0129】
〔実施例〕
次に、上述した情報処理装置の有用性を示す実施例について説明する。本実施例では、上述した情報処理装置を用いて、まず健常者の呼吸を抽出できるか否かを検証した(実験1)。その後、Physio Net(http://www.physionet.org/)に公開されている無呼吸データを上述した情報処理装置で解析し、無呼吸症候群の検知についての有効性を検証した(実験2)。
【0130】
解析方法の概要は以下の通りである。まず、第II誘導で計測した心電図データからR波を検出し、R-R間隔データとした。次にR-R間隔データの短期的なピークを取り出した。短期間のR-R間隔の変動はほぼ呼吸によるものだと考え、ピークに着目した一周期(極小-極大-極小、極大-極小-極大)を仮の呼吸間隔とした。実際の呼吸箇所以外にもわずかな変動がピークとして検出されることはあるが、その逆はないと考えると、真の呼吸間隔は仮の呼吸間隔よりも大きいことが言える。そこでわずかな変動を閾値などで除いてやり、なるべく呼吸間隔の影響によるピークのみを検出し、また複数の仮の呼吸間隔をまとめて一つの解析区間とすると、真の呼吸間隔は最大が解析区間の長さ、最小が複数の仮の呼吸間隔の最小値の間に含まれていることが推測される。
【0131】
本実施例では2つ分の仮の呼吸間隔を解析区間とした。解析区間は、実施形態に記載したように、5つの連続する極値点を含む区間とし、この区間をR-R間隔データ1つ分ずつシフトさせた。そして、解析区間の始点が次の極値点に来たときに、区間の長さを再設定した。このように設定した解析区間それぞれで、推測される呼吸間隔から求められる周波数範囲を定め、正弦波フィッティングで解析した。また、呼吸間隔の急激な変動は少ないものとして閾値をかけた。解析によって算出された正弦波のうち、振幅が最大であるものを呼吸変動成分と考え、そのときの周波数と位相から呼吸間隔を求めた。また解析アルゴリズムで用いた閾値は実験ごとに同じものを用いた。
【0132】
(実験1)
健常な20代の男性6名に対し、仰向けの状態で心電図と呼吸数を30~50分間計測した。心電図は第II誘導で計測し、呼吸は被験者が呼気の直前にスイッチを押してもらうことで計測した。被験者には測定前日の夜からアルコール・カフェインの摂取と当日の計測前5時間の食事を禁止し、計測直前の15分間安静にした後、計測を開始した。5名に対しては3回ずつ、1名は2回、計17回の計測を行った。
【0133】
心電計はECG6851(日本光電)を用い、AD変換カード(REX5054B,ラトックシステム)によって1000Hzでサンプリングし、データを保存した。心電図から解析して求めた呼吸間隔と計測した呼吸間隔を比較し、検討した。
【0134】
結果の一部を図1に示す。図1に示すように、解析によって求められた呼吸間隔と測定した呼吸間隔のグラフは非常によい一致を見せた。測定した呼吸間隔は実験開始から徐々に伸長するなどの変化を見せたが、解析値はその時間変化をよく追随した。
【0135】
17例の全例の結果をまとめ、解析値と測定値の呼吸回数の一分当たりの平均を求めた結果を下の表1に示す。平均誤差は1分当たり0~3回の誤差に留まった。そのうち13例は呼吸回数誤差1回以内であった。
【0136】
【表1】
JP0004852698B2_000003t.gif

【0137】
(実験2)
睡眠時無呼吸の心電図データはPhysio Netのものを用いた。本実験ではPhysio Netの睡眠時無呼吸データのうち、8つのデータ(無呼吸例4例、境界例1例、正常例3例)を用いた。これらは一晩の心電図データであり、本実験で用いたデータには、心電図と同時に鼻腔付近の温度を計測したものも含まれる。心電図と鼻腔付近温度のデータはともに100Hzでサンプリングされており、心電図については実験1と同じように解析を行い、鼻腔付近温度から求めた呼吸間隔と比較し、検討した。
【0138】
全例の解析結果を1回当たりの呼吸間隔で平均したものをまとめた結果を下の表2に示す。表2に示すように、無呼吸症例の結果は正常例や境界例よりも長い呼吸間隔を示した。これには無呼吸例での正常な呼吸部分も含まれる。
【0139】
【表2】
JP0004852698B2_000004t.gif

【0140】
また、測定値と解析値との比較結果の一部を図12に示す。図12に示すように、無呼吸例での測定された呼吸間隔とほぼ同じ呼吸間隔を上述の情報処理装置による解析で抽出できた。また、測定した呼吸間隔の時間変化に対して、解析結果が追随できていることが示された。正常例、境界例の解析結果はほとんどが正常な呼吸を示す解析結果となった。これは、計測した呼吸間隔とほぼ一致した。解析の結果、誤検出と思われる長い呼吸間隔を示す箇所もあったが、無呼吸症例のように長時間それが継続することはなかった。
【0141】
(考察)
上述した情報処理装置によって、20代の健常者の呼吸を精度よく抽出できた。無呼吸症に対しては多少の誤検出箇所が含まれるが、無呼吸の検知が可能であることが検証された。表2に示すように、一回当たりの呼吸間隔では、無呼吸例とそれ以外で明らかな差が生じた。無呼吸例には正常な呼吸部分も含むため、標準偏差が大きくなる傾向が見られた。これにより、睡眠時無呼吸の検知として応用する際には閾値を設けることで現時点でも一定の効果を期待できると考えられる。また、アルゴリズムや解析手法を改良することでさらに精度が向上すると考えられる。また、上述した情報処理装置は心拍変動を利用しているため、パルスオキシメータの脈波形を用いて解析することも可能であると考えられる。無呼吸診断装置としてはパルスオキシメータを用いることでより簡便な装置が製作できると期待される。また呼吸を促す刺激と組み合わせることで簡便な治療装置として用いることも考えられる。
【0142】
解析結果が呼吸間隔と一致しなかった原因の一つとして考えられるのは、R波の抽出誤り、期外収縮、外的・内的要因による交感神経の急激な亢進などによってRR間隔の呼吸情報が失われる、もしくは呼吸情報以外の情報によって打ち消されるということがある。また二つ目の原因としては、RR間隔を表すモデルとして呼吸変動成分と直流成分で表していることが考えられる。つまり、すべての状態で呼吸をしていると仮定しているので呼吸をしていない部分で誤検出が起こる可能性がある。しかし、それにもかかわらず、無呼吸情報をR-R間隔から抽出できるのは、R-R間隔の無呼吸から呼吸までの波形をひとつの周期として検出しているためだと考えられる。三つ目の原因としては、呼吸性洞性不整脈の変化の大きさに個体差があることが考えられる。心拍変動の呼吸情報が小さい場合、呼吸誤検出を生み出すと考えられる。四つ目の原因は、今回用いたアルゴリズムの閾値が不適当であった可能性がある。R波の検出や期外収縮の除去、R-R間隔からピークを抽出する、呼吸間隔の急激な変動が少ないなどに用いた閾値によって誤差が生じた可能性がある。
【0143】
より正確に呼吸を検出するためには、R-R間隔を正確に抽出しその中から期外収縮を除去することがまず必要だと考えられる。また本手法では呼吸変動成分と直流成分で考えていたモデルに交感神経亢進による急激な変化と呼吸をしていない可能性を組み込んで解析をすることが必要である。さらに、あらかじめ呼吸時の心電図を計測し、その人の呼吸性洞性不整脈の大きさを考慮し、個別に閾値を設定しておくことで精度が上昇すると考えられる。
【0144】
(結論)
本実施例では、上述した情報処理装置を用いて心拍変動の呼吸周期に着目することで呼吸情報を抽出することを試みた。その結果、呼吸情報を心電図から取得することができた。また上述した情報処理装置の解析手法は、無呼吸時にも一定の効果が期待できることが示された。さらに、解析手法やアルゴリズムの変更によってさらに改良可能であることが考えられる。これらによって、家庭などでも簡便に睡眠時無呼吸の検知が可能となり、また無呼吸治療にも応用できると考えられる。以上のように、上述した情報処理装置の心拍変動解析による睡眠時無呼吸の検出の有用性が検証された。
【0145】
〔補足〕
本発明は上述した実施形態及び実施例に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0146】
本発明によれば、被験者に負担をかけることなく簡便に呼吸間隔を得ることができる。従って、医療分野において、呼吸間隔を解析する装置や呼吸間隔をモニタリングする装置、睡眠時無呼吸症候群を防止する装置などに適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0147】
【図1】本発明の一実施形態を示すものであり、情報処理装置並びにそれを利用した心拍情報取得解析装置及び睡眠時無呼吸症候群防止装置の要部構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態を示すものであり、情報処理装置の処理工程の概要を示すフロー図である。
【図3】本発明の一実施形態を示すものであり、心電図データを心拍変動データに変換する方法を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態を示すものであり、情報処理装置に含まれる解析区間抽出部の構成を示す機能ブロック図である。
【図5】本発明の一実施形態を示すものであり、解析区間抽出部による処理工程の詳細を示すフロー図である。
【図6】本発明の一実施形態を示すものであり、解析区間抽出部による処理工程の詳細を示すフロー図である。
【図7】本発明の一実施形態を示すものであり、解析区間抽出部による処理工程の詳細を示すフロー図である。
【図8】本発明の一実施形態を示すものであり、特徴的データの抽出方法を説明するための図である。
【図9】本発明の一実施形態を示すものであり、特徴的データから解析区間及び推定周期範囲を求める方法を説明するための図である。
【図10】本発明の一実施形態を示すものであり、算出した心拍変動周波数から呼吸間隔を求める方法を説明するための図である。
【図11】本発明の一実施例を示すものであり、上述した情報処理装置によって算出した呼吸間隔と、他の信頼できる方法によって測定した呼吸間隔との比較結果を示す図である。
【図12】本発明の一実施例を示すものであり、上述した情報処理装置によって算出した呼吸間隔と、他の信頼できる方法によって測定した呼吸間隔との比較結果を示す図である。
【符号の説明】
【0148】
10 R-R間隔算出部(データ変換部)
11 解析区間抽出部
11a 特徴的データ抽出部
11b 推定周期範囲算出部
11c 区間決定部
12 フィッティング部
13 呼吸間隔算出部(変動周期算出部)
14 繰返実行部
15 無呼吸判定部(比較部)
100 情報処理装置
200 心電計(心拍情報取得装置)
400 呼吸誘発装置
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11