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明細書 :使用済酸化物燃料の乾式再処理方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4147352号 (P4147352)
公開番号 特開2007-017347 (P2007-017347A)
登録日 平成20年7月4日(2008.7.4)
発行日 平成20年9月10日(2008.9.10)
公開日 平成19年1月25日(2007.1.25)
発明の名称または考案の名称 使用済酸化物燃料の乾式再処理方法
国際特許分類 G21C  19/44        (2006.01)
FI G21C 19/44 L
請求項の数または発明の数 3
全頁数 7
出願番号 特願2005-200590 (P2005-200590)
出願日 平成17年7月8日(2005.7.8)
審査請求日 平成17年7月8日(2005.7.8)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】505374783
【氏名又は名称】独立行政法人 日本原子力研究開発機構
発明者または考案者 【氏名】水口 浩司
【氏名】福嶋 峰夫
【氏名】佐藤 史紀
個別代理人の代理人 【識別番号】100078961、【弁理士】、【氏名又は名称】茂見 穰
審査官 【審査官】山口 敦司
参考文献・文献 特開2004-028808(JP,A)
調査した分野 G21C 19/44
特許請求の範囲 【請求項1】
使用済酸化物燃料を溶媒に溶解させ、電解によってウラン・プルトニウム混合酸化物を回収する使用済酸化物燃料の乾式再処理方法において、
溶媒としてNa2 MoO4 で表されるモリブデン酸塩を加熱した溶融塩を用い、MoO3 添加すると共に、酸素ガスもしくは酸素を含有する混合ガスを吹き込みながら使用済酸化物燃料を溶解させることを特徴とする使用済酸化物燃料の乾式再処理方法。
【請求項2】
使用済酸化物燃料を溶媒に溶解させ、電解によってウラン・プルトニウム混合酸化物を回収する使用済酸化物燃料の乾式再処理方法において、
溶媒としてNa2 WO4 で表されるタングステン酸塩を加熱した溶融塩を用い、WO3 添加すると共に、酸素ガスもしくは酸素を含有する混合ガスを吹き込みながら使用済酸化物燃料を溶解させることを特徴とする使用済酸化物燃料の乾式再処理方法。
【請求項3】
溶融処理後の溶融塩溶媒中に陰極及び陽極を配置して電解処理を行い、精製されたウラン・プルトニウム混合酸化物を陰極上で回収する請求項1又は2に記載の使用済酸化物燃料の乾式再処理方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、原子炉で生成する使用済酸化物燃料からウラン及びプルトニウムを酸化物として回収する乾式処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、商業用原子炉では酸化物燃料が使用されているために、使用済核燃料の再処理方法としては、酸化物燃料が処理でき且つウラン及びプルトニウムを酸化物として回収できる方法が必要である。この目的のために、酸化物電解による乾式再処理法が開発されている。
【0003】
従来の方法は、使用済酸化物燃料を溶解させる溶媒としてNaCl-2CsClの組成を有する塩を使用している。この塩を650℃程度に加熱して溶融させ、そこに使用済酸化物燃料を供給して溶解させ、電解によってウラン及びプルトニウムの混合酸化物を回収する。ここで、使用済酸化物燃料を溶融NaCl-2CsCl中へ溶解させる際には、塩素ガスを用いている。
【0004】
例えば非特許文献1には、「塩サイクル法」として、「酸化物燃料はCl2 -HClガスが吹き込まれている塩化物混合溶融塩中に溶解され、溶解したウランとプルトニウムは500ないし700℃における陰極電着により酸化物として回収される。」と記述されている。
【0005】
しかし、この溶解反応は、気体である塩素ガスと固体の使用済酸化物燃料との間で生じる気固反応であるため、溶解が遅く溶解に長時間を要し(溶解に4~6時間かかる)経済性が悪い欠点がある。また、腐食性の高い塩素ガスを用いるため、処理装置の構成材料が腐食される問題もある。

【非特許文献1】「燃料再処理と放射性廃棄物管理の化学工学」原子力化学工学第4分冊 Manson Benedict 他著、清瀬量平訳、昭和58年12月、日刊工業新聞社発行、p.16
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、使用済酸化物燃料を短時間で溶解でき、しかも溶解反応に腐食性の高い有害ガスを使用せずに済むようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、使用済酸化物燃料を溶媒に溶解させ、電解によってウラン・プルトニウム混合酸化物を回収する使用済酸化物燃料の乾式再処理方法である。本発明においては、溶媒としてNa2 MoO4 で表されるモリブデン酸塩を加熱した溶融塩を用い、MoO3 添加すると共に、酸素ガスもしくは酸素を含有する混合ガスを吹き込みながら使用済酸化物燃料を溶解させる。あるいは溶媒としてNa2 WO4 で表されるタングステン酸塩を加熱した溶融塩を用い、WO3 添加すると共に、酸素ガスもしくは酸素を含有する混合ガスを吹き込みながら使用済酸化物燃料を溶解させる。溶融処理後、溶融塩溶媒中に陰極及び陽極を配置して電解処理を行い、精製されたウラン・プルトニウム混合酸化物を陰極上で回収する。



【発明の効果】
【0008】
本発明に係る使用済酸化物燃料の乾式再処理方法によれば、使用済酸化物燃料と溶融塩とが直接反応することによって溶解が進むので、極めて短時間で溶解が終了し、プロセスの操業時間を大幅に短縮することができる。また、溶解反応において、腐食性の高いガスを必要とせず、酸素ガスもしくは空気などの無害なガスを用いているので、処理装置構成材料の腐食を生じず、処理装置の寿命を大幅に延伸させることができる。特に、助剤として三酸化モリブデンなどを添加することによって、高い溶解率を実現でき、電解工程へスムーズに移行できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明に係る使用済酸化物燃料の乾式再処理方法のフローチャートを図1に示す。発電用原子炉から発生する使用済酸化物燃料10の中には、ウラン、アルカリ金属元素、貴金属元素、希土類元素、及び原子炉内で生成したプルトニウムなどの超ウラン元素が存在する。この使用済酸化物燃料10は、せん断・脱被覆工程12で燃料棒が機械的にせん断され被覆管が取り除かれる。次の溶解工程14で、脱被覆された使用済酸化物燃料を溶媒中へ供給し、助剤を添加すると共に、酸素ガスあるいは空気など酸素を含有する混合ガスを吹き込みながら溶解する。その後、電解工程16で電解処理することにより、精製されたウラン・プルトニウムの混合酸化物を陰極上に回収する。これが再処理製品18となる。
【0010】
本発明の溶解工程では、使用済酸化物燃料を溶解する溶媒として、典型的には、モリブデン酸ナトリウム(Na2 MoO4 )を用いる。この化合物の融点は約690℃であるので、700℃以上の温度で溶融させる。この溶媒に、助剤として三酸化モリブデン(MoO3 )を添加すると共に、酸素ガスあるいは空気を吹き込む。このとき、使用済酸化物燃料に含まれる二酸化ウラン及び二酸化プルトニウムが、溶融したモリブデン酸ナトリウムへ溶解する反応式は次の通りである。
UO2 +Na2 MoO4 +MoO3 +O2 →Na2 [UO2 (MoO4 2
PuO2 +Na2 MoO4 +MoO3 +O2 →Na2 [PuO2 (MoO4 2
三酸化モリブデンを助剤として添加することによって、溶解率が向上すると共に、溶解時にウラン及びプルトニウムは溶媒中でUO22+ イオン及びPuO22+ イオンとなり、次の電解工程へ移行し易くなる。
【0011】
この反応式が示すように、使用済酸化物燃料の溶媒への溶解は溶融状態のモリブデン酸ナトリウム(Na2 MoO4 )と二酸化ウラン及び二酸化プルトニウムが直接反応する(液固反応)ことによって進行する。従って、従来の塩素ガスと使用済酸化物燃料との気固反応による溶解工程に比べてはるかに速い反応速度を得ることができる。
【0012】
上記の溶解工程により、使用済酸化物燃料の成分であるウラン、アルカリ金属元素、貴金属元素、希土類元素、及びプルトニウム等の超ウラン元素が上記溶融塩に溶解した均一な融体が得られるので、次の電解工程では、これに陰極及び陽極を浸漬させ、UO2 及びPuO2 の酸化還元電位付近で電解を行うことにより、ウラン・プルトニウム混合酸化物を陰極上に回収することができる。
【0013】
上記の例では溶媒としてモリブデン酸ナトリウム(Na2 MoO4 )を用いているが、それに代えてモリブデン酸カリウム(K2 MoO4 )、モリブデン酸ルビジウム(Rb2 MoO4 )、モリブデン酸セシウム(Cs2 MoO4 )のいずれかのモリブデン酸塩を加熱した溶融塩を用いることも可能である。あるいは溶媒としてNa2 MoO4 とNa2 Mo2 7 の共晶塩などA2 MoO4 とA2 Mo2 7 (但し、前記の各Aは、K,Rb,Csから選ばれる1種類の同一アルカリ金属元素)の共晶塩を加熱した溶融塩を用いることもできる。これらの場合、助剤としてMoO3 の他、それぞれ溶媒に対応してNa2 Mo2 7 、K2 Mo2 7 、Rb2 Mo2 7 、Cs2 Mo2 7 を用いてもよい。その他、WがMoと同様の挙動を呈することから、溶媒としてNa2 WO4 、K2 WO4 、Rb2 WO4 、Cs2 WO4 のいずれかのタングステン酸塩あるいはA2 WO4 とA2 2 7 (但し、前記の各Aも、K,Rb,Csから選ばれる1種類の同一アルカリ金属元素)の共晶塩を加熱した溶融塩を用いることも可能である。これらの場合には、助剤としてWO3 の他、それぞれ溶媒に対応してNa2 2 7 、K2 2 7 、Rb2 2 7 、Cs2 2 7 を用いてもよい。
【実施例】
【0014】
核燃料の代表元素であるUと希土類元素の代表元素としてNdを対象に、溶融塩であるNa2 MoO4 (Mo塩)とNa2 WO4 (W塩)を用いて6ラン(R1~R6)の試験を実施した。試験条件を表1に示す。溶融温度は、500℃、750℃、及び1000℃の3条件である。R3とR6では、MoO3 を助剤として使用した。
【0015】
【表1】
JP0004147352B2_000002t.gif

【0016】
試験手順は、次の通りである。石英容器に、酸化物試料(R1~3ではUO2 、R4~6ではNd2 3 )と溶媒となる塩(R1,3,4,6ではMo塩、R2,5ではW塩を用い、対象酸化物に対して25倍モル分を投入)を投入(R3,6では、更に助剤であるMoO3 も投入。投入量は対象酸化物に対して2倍モル分)し、ガス(R1,2,4,5では空気、R3,6ではO2 )を注入しながら所定の温度まで昇温した。所定温度でガスバブリング(10cm3 /分)しながら2時間(ガス注入量の全量が対象酸化物に対して25モル分に相当)保持した。2時間保持後、引き上げて外観撮影し溶解状況を確認した。また、塩のサンプリングを実施し、それを用いて溶解率を測定した。
【0017】
R1~3については、500℃では溶融せず、750℃及び1000℃においてUO2 の溶解が確認でき、2時間以内に溶解していた。R4~5については、500℃では溶融せず、750℃及び1000℃において塩の溶融が観測でき、R6については、500℃では溶融せず、750℃及び1000℃においてNd2 3 の溶解が確認できた。
【0018】
溶解率の測定結果を図2に示す。R3及びR6で、UO2 及びNd2 3 の両方について高い溶解率を実現できた。なお、溶解温度を750℃から1000℃に上げると、濃度の低下が生じた。これは、U及びNdの溶解した塩が1000℃で揮発するためと推測される。W塩を用いた場合は、塩が水溶媒に難溶のため化学分析が困難である。図2において、Mo塩に比してW塩の溶解率が低い値になっているのは、難溶による分析誤差のためである。この点が、W塩のMo塩に比した難点と考えられる。また、助剤MoO3 を用いることで高い溶解率を実現しており、溶解において促進剤となっている。上記のように、1000℃ではU及びNdの溶解した塩が揮発するため、溶解温度は1000℃未満にする必要がある。これらの結果から、溶媒としてNa2 MoO4 (Mo塩)を用い、助剤としてMoO3 を添加し、O2 もしくはArを供給して、溶解温度700~750℃で溶解することが最も好ましいことがわかる。
【0019】
Mo塩を用いた場合の再処理方法の一例を図3に示す。溶解工程では、溶融塩Na2 MoO4 に使用済酸化物燃料(UO2 ,PuO2 ,Am2 3 ,FP)を供給し、更に助剤としてMoO3 を添加し、O2 を吹き込み、700~750℃で溶解処理する。このときの溶解反応は、次の通りである。
UO2 (S)+Na2 MoO4 (L)+MoO3 (S)+O2 (G)
→Na2 [UO2 (MoO4 2 ](L)
その他、PuO2 ,Am2 3 ,FPについても同様の反応で溶解する。このような溶解反応による生成物に、NaClあるいはNaCl-2CsClを加えて700~750℃で電解処理を行う。電解反応は次の如くである。
Na2 [UO2 (MoO4 2 ]+2NaCl→UO2 +Cl2 ↑+2Na2 MoO4
陰極反応:[UO2 (MoO4 2 2-+2e=UO2 +2MoO42-
陽極反応:2Cl- =Cl2 ↑+2e
このようにして、精製されたウラン・プルトニウム混合酸化物を陰極上で回収することができる。
【0020】
Mo塩を用いた場合の再処理方法の他の例を図4に示す。溶解工程では、溶融塩Na2 MoO4 に使用済酸化物燃料(UO2 ,PuO2 ,Am2 3 ,FP)を供給し、更にNa2 Mo2 7 を添加し、O2 を吹き込み、700~750℃で溶解処理する。このときの溶解反応は、次の通りである。
UO2 (S)+Na2 Mo2 7 (L)+O2 (G)→Na2 [UO2 (MoO4 2 ](L)
その他、PuO2 ,Am2 3 ,FPについても同様の反応で溶解する。このような溶解反応による生成物を700~750℃で電解処理を行う。電解反応は次の如くである。
Na2 [UO2 (MoO4 2 ]→UO2 +O2 ↑+2Na2 Mo2 7
陰極反応:[UO2 (MoO4 2 2-+2e=UO2 +2MoO42-
陽極反応:2MoO42- =Mo2 72+ +O2 ↑+2e
このようにして、精製されたウラン・プルトニウム混合酸化物を陰極上で回収することができる。
【0021】
なお、溶解工程でMoO3 等の助剤を添加しない場合、溶解反応による生成物は、例えばUO2 の場合、Na2 [U(MoO4 4 ]となるので、電解反応に供するためにMoO3 とO2 を加えて酸化処理しNa2 [UO2 (MoO4 2 ]とする必要がある。つまり酸化処理の工程を入れなければならず、全体として工程が複雑化する。これを避ける点でも、本発明のように溶解工程で助剤を添加するのが好ましいのである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る乾式再処理方法のフローチャート。
【図2】試験条件の違いと溶解率の関係を示すグラフ。
【図3】本発明に係る乾式再処理方法の一実施例を示す工程説明図。
【図4】本発明に係る乾式再処理方法の他の実施例を示す工程説明図。
【符号の説明】
【0023】
10 使用済酸化物燃料
12 せん断・脱被覆工程
14 溶解工程
16 電解工程
18 再処理製品
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3