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明細書 :荷電粒子線照射装置および回転ガントリ

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4452848号 (P4452848)
公開番号 特開2006-166947 (P2006-166947A)
登録日 平成22年2月12日(2010.2.12)
発行日 平成22年4月21日(2010.4.21)
公開日 平成18年6月29日(2006.6.29)
発明の名称または考案の名称 荷電粒子線照射装置および回転ガントリ
国際特許分類 A61N   5/10        (2006.01)
G21K   1/093       (2006.01)
G21K   5/04        (2006.01)
G21K   5/10        (2006.01)
H05H   7/00        (2006.01)
FI A61N 5/10 F
A61N 5/10 H
G21K 1/093 S
G21K 5/04 D
G21K 5/10 M
H05H 7/00
請求項の数または発明の数 2
全頁数 8
出願番号 特願2004-359325 (P2004-359325)
出願日 平成16年12月13日(2004.12.13)
審査請求日 平成18年8月11日(2006.8.11)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】301032942
【氏名又は名称】独立行政法人放射線医学総合研究所
発明者または考案者 【氏名】古川 卓司
【氏名】野田 耕司
個別代理人の代理人 【識別番号】100064414、【弁理士】、【氏名又は名称】磯野 道造
審査官 【審査官】大和田 秀明
参考文献・文献 特開平08-257148(JP,A)
特許第3423675(JP,B2)
特開2004-167136(JP,A)
特開2003-339891(JP,A)
調査した分野 A61N 5/10
G21K 1/093
G21K 5/04
G21K 5/10
H05H 7/00
特許請求の範囲 【請求項1】
加速器で加速された荷電粒子を標的に向けて偏向させる偏向電磁石と、前記偏向電磁石を通過した荷電粒子をスキャンして前記標的に面照射させる照射野形成電磁石とを備える荷電粒子線照射装置において、
前記偏向電磁石は前記荷電粒子のビームを前記偏向させると共に、偏向電磁場の大きさを増減させることにより、前記ビームの偏向軌跡を含む面と平行でかつ前記ビームの進行方向に対しては直角なX方向にスキャンさせ、
前記照射野形成電磁石は、前記ビームを前記ビームの進行方向と前記X方向に対して直角のY方向成分を含んでスキャンさせ
前記偏向電磁石による前記ビームのX方向のスキャンと、前記照射野形成電磁石による前記ビームのY方向成分を含んでのスキャンとで、前記標的に対して照射を行う
ことを特徴とする荷電粒子線照射装置。
【請求項2】
請求項1に記載の荷電粒子線照射装置を用いたことを特徴とする回転ガントリ。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電粒子ビームを例えば患者の癌細胞に照射して癌治療を行う荷電粒子線照射装置および回転ガントリに関する。
【背景技術】
【0002】
放射線による癌等の治療には、X線、ガンマ線、電子線等が用いられており、さらに近年では、加速器で加速した高エネルギーの荷電粒子(炭素等のイオン)ビームを用いて癌等の治療を行う荷電粒子線照射装置が開発されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
そこで、このような荷電粒子線照射装置100について、図4および図5を参照して説明する。図4に示すように、シンクロトロン等の加速器(図示せず)を通過して高エネルギで加速された荷電粒子は、四極電磁石110,111,112等を経由して最終偏向電磁石113に入射される。なお、四極電磁石110,111,112は、ビーム輸送管114を通過するビームの発散を抑えるための収束電磁石であり、最終偏向電磁石は荷電粒子を標的に向けて偏向させる偏向電磁石である。そして、最終偏向電磁石113に入射した荷電粒子は、偏向磁場により最終偏向電磁石113内を円弧状に湾曲しながら輸送される。次にこのビームは、図4および図5に示すように、最終偏向電磁石113内を通過するビームの偏向軌跡を含む面と平行でかつ、前記ビームの進行方向に対しては直角なX方向にスキャンされるX方向二極電磁石(照射野形成電磁石)115と、前記ビームの進行方向及びX方向に対して直角のY方向にスキャンされるY方向二極電磁石(照射野形成電磁石)116とを通過して標的117に照射される。あるいは、Y方向二極電磁石を通過してからX方向二極電磁石を通過してもよい。
【0004】
また、このような荷電粒子線照射装置100を用いて癌を治療する場合、癌の治療効果を上げるため、及び患者に苦痛を与えないために、粒子の照射は癌部を中心にして180°または360°の回転照射によって行うことが好ましい。従って、荷電粒子ビームを癌の治療に用いる場合は、例えば特許文献1に示されているように、ベッドの上に横たえた患者の周囲から陽子線を照射する回転ガントリが広く用いられている。
【0005】

【非特許文献1】Timothy R. Renner and William T. Chu Wobbler facility for biological experiments Medical Physics 14(1987) 825-834
【特許文献1】特開平8-257148号公報(段落0012~0013、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、従来の荷電粒子線照射装置100は、最終偏向電磁石113の下流側に2台のX,Y方向二極電磁石115,116を設置する構成としている。ここで、X,Y方向二極電磁石115,116等では、炭素等のイオンが重いため陽子の3倍程度の大きな磁場を発生させる必要がある。そして、癌等の治療を行うには、加速器から供給される直径1cm程度の荷電粒子線ビームを、直径20cmの照射野を形成する程度まで拡大する必要がある。このため、炭素等の荷電粒子線をX,Y方向二極電磁石115,116で拡大させるには、陽子線と比較して、より長い照射ポート長(X,Y方向二極電磁石115,116の内の上流側の二極電磁石から標的117までの間の距離)が必要になる。炭素の荷電粒子線の場合は、最短でも5.5m程度に長めに設定せざるを得ず、装置の大型化を招くという問題がある。
【0007】
また、このような荷電粒子線照射装置100を特許文献1に記載の回転ガントリに適用した場合には、回転ガントリを駆動させるのに必要な空間が例えば18×9×9×π(m3)程度(図3参照)になり、非常に大きな空間を確保しなければならないという問題がある。
【0008】
本発明は、前記課題に鑑み、装置全体の小型化を図ることができるようにした荷電粒子線照射装置および回転ガントリを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、前記課題を解決すべく構成されるものであり、請求項1に記載の発明は、加速器で加速された荷電粒子を標的に向けて偏向させる偏向電磁石と、前記偏向電磁石を通過した荷電粒子をスキャンして前記標的に面照射させる照射野形成電磁石とを備える荷電粒子線照射装置において、前記偏向電磁石は前記荷電粒子のビームを前記偏向させると共に、偏向電磁場の大きさを増減させることにより、前記ビームの偏向軌跡を含む面と平行でかつ前記ビームの進行方向に対しては直角なX方向にスキャンさせ、前記照射野形成電磁石は、前記ビームを前記ビームの進行方向と前記X方向に対して直角のY方向成分を含んでスキャンさせ、前記偏向電磁石による前記ビームのX方向のスキャンと、前記照射野形成電磁石による前記ビームのY方向成分を含んでのスキャンとで、前記標的に対して照射を行うことを特徴とする荷電粒子線照射装置である。
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、偏向電磁石に入射してきた荷電粒子のビームを、偏向磁場を制御することにより荷電粒子のビームを前記偏向軌跡を含む面と平行でかつビームの進行方向に対しては直角なX方向にスキャンさせることができる。このため、偏向電磁石を、ビームをX方向にスキャンさせる照射野形成電磁石と同様の機能を有する電磁石として用いることができ、偏向電磁石とは別個に前記照射野形成電磁石をわざわざ設ける必要がなくなるので、照射ポート長を短くできる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の荷電粒子線照射装置を用いたことを特徴とする回転ガントリである。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、ビームをX方向成分を含んでスキャンさせる照射野形成電磁石を省略した回転ガントリを製作することができ、照射ポート長を短くできる結果、回転ガントリの回転半径を小さくすることが可能になり、回転ガントリの小型化を図ることができる。
【発明の効果】
【0013】
以上、詳述した通り、本発明によれば、ビームのスキャン開始位置を偏向電磁石内に設けることができるので、装置全体を小型化することができる。ビームをX方向にスキャンさせる照射野形成電磁石を省略することができるので、そのようにすればさらに、装置全体を小型化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態に係る荷電粒子線照射装置を、図1および図2の添付図面を参照して説明する。図1は、本実施の形態に係る荷電粒子線照射装置の照射部分を示す図である。図2は、本実施の形態に係る荷電粒子線照射装置と従来技術による荷電粒子線照射装置とを比較した説明図であり、(a)は本発明に係る荷電粒子線照射装置を示す図であり、(b)は従来技術による荷電粒子線照射装置を示す図である。
【0015】
図1に示すように、荷電粒子線照射装置1は、従来技術で述べた荷電粒子線照射装置100とほぼ同様に、炭素線等の荷電粒子ビーム2が通過するビーム輸送管3と、ビーム輸送管3の途中に設置されて荷電粒子ビーム2の発散を抑える四極電磁石4,5,6と、ビーム輸送管3の下流側の端部に接続された最終偏向電磁石7と、最終偏向電磁石7の下流側の端部に接続されたY方向二極電磁石(照射野形成電磁石)8とを備えている。しかし、本実施の形態では、従来技術で述べたX方向二極電磁石115(図4参照)が省略されている点で、従来技術のものとは異なっている。なお、前記X方向とは、従来技術でも述べたように、最終偏向電磁石7によるビームの偏向軌跡を含む面と平行でかつ、ビームの進行方向に対して直角な方向をいう。また、前記Y方向とは、ビームの進行方向と前記X方向に対して直角な方向をいう。
【0016】
ここで、最終偏向電磁石7は、最終偏向電磁石7内で偏向電磁場を発生させることにより、荷電粒子ビーム2の軌道を円弧状に変えると共に、前記偏向電磁場の大きさを例えば一定の周期をもって増減させることにより、荷電粒子ビーム2をX方向にスキャンさせるものである。例えば現在点線Aの偏向軌跡に沿って偏向される1本のビームは、前記のように偏向電磁場の大きさを増減させることにより、図1に示すように、最大で点線Bの位置まで内側へとX方向にスキャンされると共に、最大で点線Cの位置まで外側へとX方向にスキャンされる。つまり、1本のビームは点線Bと点線Cとの間でX方向にスキャンされる。また、Y方向二極電磁石8は、荷電粒子ビーム2をX方向に対して直角のY方向成分を含んでスキャンさせるものである。
【0017】
次に、このように構成される荷電粒子線照射装置1の動作について説明する。まず、四極電磁石4,5,6を経由して最終偏向電磁石7内に入射してきた荷電粒子ビーム2は、最終偏向電磁石7内で生じる偏向電磁場を例えば一定の周期をもって増減させることにより、図1中に点線で示すように、最終偏向電磁石7内を円弧状に輸送されつつ、X方向成分を含んでスキャンされる。そして、X方向成分を含んでスキャンされた荷電粒子ビーム2はY方向二極電磁石8を通過するときにX方向に対して直角のY方向成分を含んでスキャンされる。これにより荷電粒子ビーム2は、X方向の成分とY方向の成分を含んでスキャンされ、患者の患部である標的9に対してあらかじめ設定された所定のプログラムに従って一様にすきまなく照射される。
【0018】
従って、本実施の形態に係る荷電粒子線照射装置1は、従来技術によるX方向二極電磁石115の機能を最終偏向電磁石7が兼ねることにより、このX方向二極電磁石115を省略できるから、図2に示すように、荷電粒子線照射装置1全体の大きさを従来技術のものよりも寸法L(L=L1-L2=約1m)だけ短縮でき、荷電粒子線照射装置1の小型化を図ることができる。
【0019】
(第2の実施の形態)
次に、図3は本発明の第2の実施の形態を示している。図3は、本実施の形態に係る回転ガントリと従来技術による回転ガントリとを比較するための説明図である。
【0020】
図3に示すように、回転ガントリ50は、第1の偏向電磁石51と、第1の偏向電磁石51にビーム輸送管52を介して接続された第2の偏向電磁石53と、ビーム輸送管52の途中に設けられた四極電磁石54,55,56と、第2の偏向電磁石53にビーム輸送管57を介して接続された第3の偏向電磁石(以下、最終偏向電磁石という)58と、ビーム輸送管57の途中に設けられた四極電磁石59,60,61と、最終偏向電磁石58の下流側の端部に接続されたY方向二極電磁石62とを備えている。
【0021】
なお、図3中に仮想線で示すように、従来技術による回転ガントリ200は、第1の偏向電磁石201、ビーム輸送管202、四極電磁石203,204,205,206、第2の偏向電磁石208、ビーム輸送管209、四極電磁石210,211,212、第3の偏向電磁石213、X方向二極電磁石214、およびY方向二極電磁石215を備えている。
【0022】
このように構成される本実施の形態に係る回転ガントリ50によると、シンクロトロン等の加速器(図示せず)を通過して高エネルギで加速された荷電粒子ビーム63は、図3中に点線で示すように、第1の偏向電磁石51、四極電磁石54,55,56、第2の偏向電磁石53、および四極電磁石59,60,61等を順次経由して最終偏向電磁石58内に入射される。この最終偏向電磁石58内に入射された荷電粒子ビーム63は、最終偏向電磁石58内で生じる偏向電磁場を例えば一定の周期をもって増減するように制御することにより、最終偏向電磁石58内を円弧状に輸送されつつ、X方向にスキャンされる。そして、X方向にスキャンされた荷電粒子ビーム63はY方向二極電磁石62を通過する間にY方向の成分を含んでスキャンされる。これにより荷電粒子ビーム63は、X方向の成分とY方向の成分を含んでスキャンされ、患者の患部である標的64に対して例えば円を描くように照射される。
【0023】
そして、回転ガントリ50は、最終偏向電磁石58と標的64との間を結ぶ回転軸A-Aを中心に駆動モータ(図示せず)等を用いて標的64の周囲を360°回転するようになっている。つまり、回転ガントリ20は、荷電粒子である重粒子が照射される照射口65が標的64の周囲を回転することにより標的64に対して360度任意の方向から照射を行えるようになっている。
【0024】
このように構成される本実施の形態でも、第1の実施の形態と同様に、従来技術によるX方向二極電磁石214の機能を最終偏向電磁石58が兼ねることにより、このX方向二極電磁石214を省略できるから、X方向二極電磁石214の分だけ回転ガントリ50の小型化を図ることができる。また、図3に示すように、回転ガントリ50を作動させるのに必要な空間が従来技術では、例えば18×9×9×π(m3)程度であったの対し、本実施の形態では、例えば16×8×8×π(m3)程度に小さくでき、回転ガントリ50の設置空間を縮小することができる。
【0025】
また、このように回転ガントリ50を小型化できるため、ビーム輸送管52の全長を従来技術によるビーム輸送管202よりも短縮できる。ここで、一般に、四極電磁石203,204,205,206は、ビーム輸送管202に等間隔に配置するものである。従って、ビーム輸送管52の全長を従来技術によるビーム輸送管202よりも短縮できることにより、従来技術では、ビーム輸送管202に4個必要であった四極電磁石203,204,205,206を、本実施の形態では、ビーム輸送管52に必要な四極電磁石54,55,56を3個に減らすことができ、回転ガントリ50をより一層小型化でき、それに伴い回転モーメントも小さくなるので、回転ガントリ50の製作コストを低減することができる。
【0026】
なお、第1の実施の形態では、最終偏向電磁石7の下流側に1個のY方向二極電磁石8を配置する構成とした場合を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限らず、例えば最終偏向電磁石7とY方向二極電磁石8との間にX方向二極電磁石を配置する構成としてもよい。このことは第2の実施の形態についても同様である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る荷電粒子線照射装置の照射部分を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る荷電粒子線照射装置と従来技術による荷電粒子線照射装置とを比較した説明図であり、(a)は第1の実施の形態に係る荷電粒子線照射装置を示す図であり、(b)は従来技術による荷電粒子線照射装置を示す図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態に係る回転ガントリと従来技術による回転ガントリとを比較するための説明図である。
【図4】従来技術による荷電粒子線照射装置の照射部分を示す図である。
【図5】従来技術によるX方向の照射野形成電磁石とY方向の照射野形成電磁石を拡大して示す斜視図である。
【符号の説明】
【0028】
1 荷電粒子線照射装置
2,63 荷電粒子ビーム
7,58 最終偏向電磁石
8,62 Y方向二極電磁石(照射野形成電磁石)
50 回転ガントリ
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4