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明細書 :酸素透過膜を用いた炭化水素改質方法及び炭化水素改質装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4255941号 (P4255941)
公開番号 特開2007-112646 (P2007-112646A)
登録日 平成21年2月6日(2009.2.6)
発行日 平成21年4月22日(2009.4.22)
公開日 平成19年5月10日(2007.5.10)
発明の名称または考案の名称 酸素透過膜を用いた炭化水素改質方法及び炭化水素改質装置
国際特許分類 C01B   3/38        (2006.01)
B01D  53/22        (2006.01)
B01D  63/08        (2006.01)
B01D  71/02        (2006.01)
FI C01B 3/38
B01D 53/22
B01D 63/08
B01D 71/02 500
請求項の数または発明の数 4
全頁数 14
出願番号 特願2005-303915 (P2005-303915)
出願日 平成17年10月19日(2005.10.19)
審査請求日 平成17年10月24日(2005.10.24)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
発明者または考案者 【氏名】高村 仁
【氏名】岡田 益男
【氏名】小河 将之
【氏名】齊藤 智行
個別代理人の代理人 【識別番号】100107490、【弁理士】、【氏名又は名称】杉原 鉄郎
審査官 【審査官】後藤 政博
参考文献・文献 特開平10-297901(JP,A)
特開2004-051428(JP,A)
特表2005-503980(JP,A)
特開2001-146401(JP,A)
特許第3680936(JP,B2)
高村仁,酸素透過性セラミックスを利用したメタンからの水素製造,まてりあ,2005年 3月20日,第44巻,第3号,page.211-215
調査した分野 C01B 3/00 - 3/58
B01D 53/22
B01D 63/08
B01D 71/02
特許請求の範囲 【請求項1】
直交する二つの中心軸に対してそれぞれ対称形状の平板ユニットを90度回転させた平板ユニット対を交互に積層し、蓋板ユニットと底板ユニットとで挟んで成るスタック構造改質装置であって、
各平板ユニットは、中央部に反応室用孔部を有する膜保持部と、
膜保持部に固定された特定ガス透過膜と、
膜保持部を囲み、かつ、膜保持部より一段高く形成されたフランジ部と、
フランジ部には、第一の中心軸上に、膜保持部を挟んで設けられた第一のガス流入用マニホールド孔部及びガス流出用マニホールド孔部と、
第一の中心軸と直交する第二の中心軸上に、膜保持部を挟んで設けられた第二のガス流入用マニホールド孔部及びガス流出用マニホールド孔部と、
第一のガス流入用マニホールド孔部及びガス流出用マニホールド孔部と、膜保持部とを連通させるガス流路部と、
を備えて成ることを特徴とする改質装置。
【請求項2】
前記改質装置が炭化水素改質装置であり、前記特定ガス透過膜が酸素透過膜であり、かつ、第一のガス流入用マニホールド孔部には炭化水素ガス及び水蒸気を、第二のガス流入用マニホールド孔部には空気を、流入するように構成して成ることを特徴とする請求項に記載の改質装置。
【請求項3】
前記酸素透過膜が、セリウム酸化物とスピネル型酸化物から構成される複合体型酸素透過膜であることを特徴とする請求項又はに記載の改質装置。
【請求項4】
前記酸素透過膜の膜厚が、100μm乃至1cmであることを特徴とする請求項乃至に記載の改質装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、酸素透過膜を用いた炭化水素改質方法及び炭化水素改質装置に係り、特に高収率かつ酸素透過膜の長寿命化を可能とする炭化水素改質方法及び炭化水素改質装置に関する。
【背景技術】
【0002】
メタンを主成分とする天然ガスや他の炭化水素ガスから水素、および水素と一酸化炭素等からなる合成ガスを製造する技術としては、水蒸気改質、部分酸化改質、炭酸ガス改質などがある。表1は、メタンを例として、これら改質反応、および、改質反応と同時に起こりうる化学反応の代表的な式と熱力学定数をまとめたものである。
【0003】
【表1】
JP0004255941B2_000002t.gif

【0004】
実際にはこれらの基本的な反応式を組み合せ、例えば水素製造の場合は、
(1)+(4) CH+2HO→CO+4H ΔH=190.9
kJ/mol (吸熱) 式(6)
【0005】
(2)+(4) CH+1/2O+HO→CO+3H ΔH=-56.9 kJ/mol (発熱) 式(7)
【0006】
((1)+(4)+(5))/2 CH+O→CO+2H ΔH=-304.8 kJ/mol (発熱) 式(8)
のような反応が用いられる。これらは上から順に、水蒸気改質、オートサーマル改質、部分酸化改質と呼ばれる。また、合成ガスを得る場合にも、
【0007】
((1)+(2))/2 CH+1/4O+1/2HO→CO+5/2H (吸熱) 式(9)
のように、水蒸気と酸素を併用するオートサーマル法がよく用いられる。
【0008】
これら反応の特徴を改質に利用する対象(酸素または水蒸気)の観点からみると、水蒸気利用では水素生成量は多いが大きな吸熱反応のため起動性には難がある。これに対して、酸素利用では水素生成量は少ないものの発熱反応であるため起動性は優れている。ここで注意すべき点は、水蒸気改質(式(1))が部分酸化改質(式(2))に比べて1モルの水素を余分に生成するためには、1モルの水素の燃焼熱が必要なことである。すなわち、水蒸気改質に利用可能な高温の排熱が得られない環境下では水蒸気改質も部分酸化改質も理論的には全く同等の効率となる。よって、何らかの手段で純酸素を簡単かつ安価に入手することができれば、部分酸化改質は起動性と効率に優れた理想的な改質方法となる。
【0009】
部分酸化反応と酸素分離を同時に実現する方法として、近年、酸素透過膜(酸素分離膜や酸素透過性セラミックスとも呼ばれる)を利用した部分酸化改質が注目されている。これは、酸素イオン伝導性と電子伝導性を共有する材料(酸素イオン・電子混合導電体)を炭化水素ガスと空気のセパレータとして利用することにより、部分酸化改質に必要な純酸素が部分酸化反応のΔG(直接的には酸素濃度勾配)を駆動力として空気から分離され、炭化水素ガス側で部分酸化反応が進む。この原理を応用した特許として特許文献1、2が開示されている。また、酸素透過膜に関しても多くの材料が報告されており、例えば特許文献3乃至5が開示されている。
【0010】
しかしながら、酸素透過膜は酸素をイオンとして透過させるために、酸素イオン輸送および反対方向への電子の輸送によって、膜内に大量のジュール熱(電気抵抗による発熱)が発生し、熱バランスがとられていないシステムにおいては酸素透過性の劣化、最終的には膜の破壊という結果を招くという問題がある。これに関して、特許文献1には部分酸化改質反応における発熱(ΔH)を剰余熱として捉え、水蒸気改質の吸熱反応によりそれを僅かに発熱となる状態まで除去する技術が開示されているものの、酸素透過膜内に発生するジュール熱の除去の必要性については、何ら記載されていない。
【0011】
さらに、従来、酸素透過膜を利用した部分酸化改質に関して、コンパクト化を可能とする有効な改質装置についての開示もない。

【特許文献1】特開2000-26103号公報
【特許文献2】特開2005-145760号公報
【特許文献3】WO2003/084894
【特許文献4】特開2001-93325号公報
【特許文献5】特開2005-281077号公報
【特許文献6】特開2005-281086号公報
【特許文献7】特開2004-149332号公報
【特許文献8】特開2003-2610号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
酸素透過膜からのジュール熱の除去という観点からは、水蒸気添加による吸熱反応に加えて部分酸化改質反応も(全体としては発熱反応である)表1、式(2)のTΔS項によって多大な寄与をしていることを認識することが極めて重要である。すなわち、部分酸化改質反応と水蒸気改質反応とを、膜近傍で適正な比率で有効に行わせる技術及びそのための改質装置の構造設計が求められている。
【0013】
本発明の目的は、酸素透過膜を用いた炭化水素改質に関して、ジュール熱除去のための熱力学的解析に基づく発熱反応(部分酸化改質)及び吸熱反応(水蒸気改質)の具体的制御方法を提供することにある。
【0014】
本発明の他の目的は、酸素透過膜を利用した部分酸化改質に関して、高効率、コンパクト、かつ、安定稼動可能な改質装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
発明者らは鋭意研究の結果、酸素透過膜のジュール熱による過熱を抑制するために、部分酸化反応のTΔS項に加えて、追加の冷却機構として水蒸気改質の反応熱を利用することに着目し、試験により確認して以下の発明を完成した。すなわち、
【0016】
(1)炭化水素を原料として、酸素透過膜により分離した酸素を用いて部分酸化改質反応及び水蒸気改質反応を行って、水素を含有するガスを生成する炭化水素改質方法であって、酸素分離に伴って発生するジュール熱を除去することにより、酸素透過膜の過熱を防止することを特徴とする炭化水素改質方法である。
【0017】
上記において、ジュール熱のうち、部分酸化改質反応に伴うエントロピー増加に吸収される割合を除くエネルギーを、水蒸気改質反応に伴う吸熱分として用いることを特徴とする()。
【0018】
上記各発明の作用を以下に説明する。図4は、対象とする部分酸化改質反応の自由エネルギー変化ΔGの温度依存性を示した図である。この反応は、温度の増加とともに自由エネルギー変化ΔGが単調に増加する反応である。従って、この反応は外部に対して大きな熱力学的な意味の仕事をすることが可能であり、エネルギーの有効利用の観点から、単なる改質反応として利用することだけは避けたい。この意味を図5の熱力学的コンパスを用いて説明する。横軸に反応の総エネルギー変化ΔHを、縦軸に有効エネルギー(エクセルギー)である自由エネルギー変化ΔGをプロットする。温度298Kにおいて部分酸化反応はΔH=-35.6kJ/mol、ΔG=-86.3kJ/molを有する(左下向きのベクトル)。このとき、部分酸化反応を環境温度への排熱(右横向きのベクトル)を伴うプロセスとして実行すると、ΔG=-86.3kJ/molがそのまま有効エネルギーの損失(エクセルギーロス;下向きベクトル)となってしまう。このエクセルギーロスを最小化し、エネルギーミニマムのプロセスとして実行するためには、部分酸化反応と反対向きのベクトル(ハッチングの領域)を有するプロセスと組み合わせるのが最も効果的である。その領域はΔG>0、エントロピー変化ΔSが負の反応である。これは、すなわち、自律的には起こりえない反応(∵ΔG>0)で、かつ、秩序化が進む反応(∵ΔS<0)である。例えば、A成分とB成分から成る混合ガスからB成分のみを分離するプロセスである。これは、まさしく空気からの酸素分離であり、部分酸化反応の効率を高める上でも最も都合の良いプロセスである。
【0019】
図6に、本発明による酸素透過膜式水素製造システムの概念を示す。このシステムでは、反応器は酸素透過膜で反応室1と2に区別されている。水素および合成ガスの原料である炭化水素ガスと冷却源である水蒸気が反応室1に、反応室2には酸素を含有するガス、例えば空気を導入する。このとき、水蒸気は水として注入されても良い。反応器内の酸素透過膜により酸素は分離され反応室1に供給され、炭化水素ガスと反応し合成ガスを生成する。この生成した合成ガスはそのまま利用されても良いし、後段に特許文献7にある金属系水素分離膜や特許文献8にある高温プロトン導電体を利用した水素抽出器を連結し、純水素の製造にも利用されうる。また、反応室2から出るガスは酸素が欠乏している。ここで重要なことは、水蒸気、または、水の導入では顕熱だけを利用するのではなく、水蒸気改質の大きな吸熱反応を酸素透過膜のジュール熱による過熱の抑制に利用する点である。
【0020】
図7は、酸素透過膜からのジュール熱除去の原理を示す図である。同図を参照して、酸素透過膜は部分酸化改質反応の自由エネルギー変化ΔGを吸収し、それを酸素分離のための仕事とジュール熱Qに変換する。ここで、表1及び図4に示したように、部分酸化改質反応のΔGは、ΔHに比べて10倍程度大きく、温度の増加に伴いΔGはさらに増加する。このジュール熱Qを有効に除去する必要があるが、その除去は部分酸化反応自身のエントロピー変化TΔS(表1(2)より例えば700 Kで197.5 kJ/mol)として再度、系に吸収される分と、総エネルギー変化ΔH(表1(2)より例えば700 Kで-22.1 kJ/mol)を利用する水蒸気改質により行われる。
【0021】
この場合、水蒸気改質反応のために露点温度50℃乃至90℃に対応する水蒸気量を添加することが望ましい()。
さらに望ましい対応露点温度は、70℃乃至80℃である()。
【0022】
部分酸化改質反応と水蒸気改質反応の起きる比率を制御することにより、酸素透過膜の過熱防止と生成水素量を調節できる。後述の実施例に示す通り、種々の水蒸気濃度、改質条件での特性評価により、酸素透過膜の過熱防止と水素生成量の増加には、露点50℃以上の水蒸気量が必要であり、最も望ましいのは露点70~80℃であることが判明した。この場合、生成する全水素量において50~80%が部分酸化改質反応に由来し、残りが水蒸気改質反応由来であることが確認されている。
【0023】
(5)直交する二つの中心軸に対してそれぞれ対称形状の平板ユニットを90度回転させた平板ユニット対を交互に積層し、蓋板ユニットと底板ユニットとで挟んで成るスタック構造改質装置であって、各平板ユニットは中央部に反応室用孔部を有する膜保持部と、膜保持部に固定された特定ガス透過膜と、膜保持部を囲み、かつ、膜保持部より一段高く形成されたフランジ部と、フランジ部には、第一の中心軸上に、膜保持部を挟んで設けられた第一のガス流入用マニホールド孔部及びガス流出用マニホールド孔部と、
【0024】
第一の中心軸と直交する第二の中心軸上に、膜保持部を挟んで設けられた第二のガス流入用マニホールド孔部及びガス流出用マニホールド孔部と、第一のガス流入用マニホールド孔部及びガス流出用マニホールド孔部と、膜保持部とを連通させるガス流路部と、を備えて成ることを特徴とする改質装置である。
【0025】
(6)前記改質装置が炭化水素改質装置であり、前記特定ガス透過膜が酸素透過膜であり、かつ、第一のガス流入用マニホールド孔部には炭化水素ガス及び水蒸気を、第二のガス流入用マニホールド孔部には空気を、流入するように構成して成ることを特徴とする。
【0026】
ジュール熱の除去を有効に行うためには、ガスと膜面の接触面積を最大化しうる改質装置の構造が必要となり、これには膜面積と反応器体積の比(膜面積÷反応器体積)を最大化できる平板型が最適である。本発明では平板型改質装置を実現するために、炭化水素ガスと空気の直交流を一層おきに交互に発生させるための構造体も考案し、その有効性を実証した。
【0027】
(7)前記酸素透過膜が、セリウム酸化物とスピネル型酸化物から構成される複合体型酸素透過膜であることを特徴とする。
【0028】
(8)前記酸素透過膜の膜厚が、100μm乃至1cmであることを特徴とする。

【0029】
酸素透過膜の膜厚は改質装置の性能を左右する重要な因子である。一般に、酸素透過速度の向上(=酸素供給量の向上)のために薄膜化が指向され、場合によってはガス透過する多孔質基体上に酸素透過膜の薄膜が形成されることもある(例えば、特許文献1参照)。しかし、図7に示した通り、酸素透過膜の機能として、酸素分離と同時に部分酸化改質反応の自由エネルギー変化ΔGのジュール熱Qへの変換を行うことを考えると、薄膜化は必ずしも最適解ではない。すなわち改質効率の観点からは、部分酸化改質反応のΔGを最大限にジュール熱Qとすることも必要なためである。薄膜化がΔG→Qの変換において、必ずしもメリットとならない理由は薄膜の領域では酸素透過膜の酸素透過速度がほぼ一定値に飽和する「表面律速」が起こるためである。
【0030】
図8は、セリウム酸化物とスピネル型酸化物から構成される複合体型酸素透過膜における酸素透過速度の膜厚依存性を示す図である。この場合、酸素透過膜の片側は空気、反対側は希釈された水素が流通されている。同図より、膜厚が数mmの場合には膜厚の減少とともに、酸素透過速度は理論値に従って単調に増加するが、ある膜厚を境に徐々に一定値に近づく。膜厚が0.1mm以下(100μm以下)でその挙動が顕著である。これは酸素透過速度が酸素透過膜の表面反応により律速されることを意味する。この「表面律速」となっている場合、酸素透過により発生するジュール熱に着目すると、膜厚が減少しても透過する酸素量(電流値に変換可能)が一定ということは、発生する熱量が単調に減少することとなる。すなわち、部分酸化改質反応のΔGを有効にジュール熱Qとして反応系に返すためには、過度の薄膜化は適当ではない。ジュール熱Qを有効に発生する適切な膜厚(表面律速にならない膜厚)は酸素透過膜の特性により異なるが、一般的には数10μm~1cm程度である。
【発明の効果】
【0031】
本発明の方法によれば、高収率かつ酸素透過膜の長寿命化を可能とする炭化水素改質が可能となる。
【0032】
また、本発明の改質装置によれば、酸素透過膜の固定とガス流通経路の制御とを同時に行うことができ、さらに、炭化水素ガスと空気の直交流を一層おきに交互に実現できる。これにより、反応器をコンパクト化することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明の実施形態について、図1乃至3を参照してさらに詳細に説明する。なお、重複を避けるため、各図において同一構成には同一符号を用いて示している。なお、本発明の範囲は特許請求の範囲記載のものであって、以下の実施形態に限定されないことはいうまでもない。
【0034】
図1は、本発明の一実施形態に係る改質装置1の構成を示す図である。図2は、改質装置1のスタックを構成する平板ユニット2Aの詳細構成を示す図である。ここに、(a)は平面図、(b)はA-A’矢視図である。図3は、改質装置1の積層状態を模式的に示した図である。
【0035】
図1を参照して、改質装置1は正方形状の平板ユニット2A、2Bを交互に複数積層し、これを蓋板ユニット2C、底板ユニット2Dで挟んだ構造を備えている。なお、図示はしないが、平板ユニット2Bは平板ユニット2Aと同一形状で平板ユニット2Aを90度回転させた構成を備えている。蓋板ユニット2Cには、原料ガス(炭化水素ガス)流入部3a、改質ガス流出部3b及び空気流入部4a、空気流出部4bが接続されている。
【0036】
図2を参照して、平板ユニット2Aは、中央の後述の反応室を構成する孔部14と、孔部14外周に構成される膜保持部18と、外周の膜保持部18のさらに外周に構成されるフランジ部17により構成されている。膜保持部18は、フランジ部17より一段低いレベルに構成されている。フランジ部17の各辺中央部には、4個のマニホールド孔部11a、11b及び12a、12bを備えている。平板ユニット2A、2Bを積層することにより、マニホールド孔部の連通によるガス流入又は流出用マニホールドが構成される。マニホールド孔部11a、11bにはガス流路用溝部19が設けられている。その溝深さは膜保持部18と同一レベルに調整されている。膜保持部18には、酸素透過膜15が固定されている。平板ユニット2Aの四隅には、スタック固定用ボルト貫通孔16が設けられている。
【0037】
次に、図3を参照して改質装置1内部における原料ガス及び反応ガスの流れについて説明する。同図では、簡単のため一対の平板ユニット2A、2Bを積層して、蓋板ユニット2C、底板ユニット2Dで挟んだ構成としている。同図より、蓋板ユニット2Cと平板ユニット2Aで挟まれる空間部に反応室1が、平板ユニット2Aと平板ユニット2Bで挟まれる空間部に反応室2が、平板ユニット2Bと底板ユニット2Dで挟まれる空間部に反応室3が、それぞれ形成されることが分かる。
【0038】
空気は、空気流入部4aから平板ユニット2Aのマニホールド孔部12aを経由して平板ユニット2Bのマニホールド孔部11aに供給される。さらに、溝部19を経由して反応室2に導かれる。ここで、酸素透過膜15の表面に沿って流れ、マニホールド孔部11bに到達する。ここから、上方のマニホールド孔部12bを経由して、空気流出部4bから排出される。その際、空気中の酸素成分は、反応室2と反応室1との酸素濃度差を駆動力として酸素透過膜15中を透過して反応室1に導かれる。酸素リーンとなった空気は空気流出部4bから排出される。
【0039】
一方、炭化水素ガス流入部3aから供給されるメタン及び水蒸気は、マニホールド孔部11aの溝部19を経由して反応室1に導かれる。ここで酸素透過膜15を透過した酸素を得て、部分酸化改質反応及び水蒸気改質反応が行われ、生成した水素を含有する改質ガスは、マニホールド孔部11bを経由して改質ガス流出部3bから取り出される。なお、反応室3は反応室2を反応室1と共有しているため、反応室3でも反応室1と同一の反応が行われる。
【0040】
このように、本発明の改質装置によれば、酸素透過膜の固定とガス流通経路の制御とを同時に行うことができ、さらに、炭化水素ガスと空気の直交流を一層おきに交互に実現できる。これにより、反応器をコンパクト化することが可能となる。
【0041】
なお、本実施形態では平板ユニットを正方形状のものとした例を示したが、これに限らず、90°回転したとき4つのマニホールド孔が重なる形状であれば、例えば円形など他の形状であっても良い。
【0042】
また、本実施形態では炭化水素ガスとしてメタンを用いた例を示したが、他の炭化水素ガス、例えばエタン、プロパン、ブタン等や、より重い成分、液体燃料(灯油、軽油、ガソリン等)、バイオガスも適用対象である。
【実施例】
【0043】
次に、本発明による改質装置を用いて、炭化水素ガスの改質特性を測定した結果について説明する。測定に用いた平板ユニットは、図9に示す一辺が60mmの正方形状のものを用いた。マニホールド孔は5mm×30mmの長円形である。積層枚数は表3に示すとおりである。酸素透過膜としては、セリウム酸化物とスピネル型酸化物から構成される複合体型酸素透過膜を用いた。具体的な組成は、Ce0.85Sm0.1502-d-15vol%MnFe2O4である。この材料は、酸素透過速度として1000℃において10 μmol・cm-2・s-1、熱膨張係数として室温から1000℃の間で11×10-6 / ℃という値が報告されている。この材料を固相反応法により合成し、テープキャスト法により厚さ135 mm、36 mm角の膜に成型した。得られた膜を、熱膨張係数の近い耐熱ステンレス製セパレータに接着した。
【0044】
本実施例では炭化水素ガスとしてメタン(CH4)を用いた。メタンの投入量は膜1枚あたり150 sccm とした。部分酸化反応の化学式より150 sccmのメタンを改質するのに必要な酸素量は75 sccmであり、量論的には360 sccmの空気を投入すれば良いが、実際にはその1.4倍程度の空気(500 sccm)を投入した。膜の冷却のために投入する水蒸気はバブラーの温度制御により調整された。例えばバブラー温度80 ℃の加湿では、水蒸気/メタン比が0.87程度となる。メタン(CH4)転換率、CO選択性、H2選択性はガス質量計を用いて分析されたガス濃度([CH4],
[CO], [CO2], [H2], [H2O])から各々以下の式で計算された。
【数1】
JP0004255941B2_000003t.gif
【数2】
JP0004255941B2_000004t.gif
【数3】
JP0004255941B2_000005t.gif

【0045】
表2に、改質試験の結果をまとめて示す。最下行の試料7に着目すると、加湿条件80℃において、酸素透過速度5.67 μmol・cm-2・s-1、メタン転換率95.7%、COおよび H2選択性はいずれも80%以上と優れた改質特性が得られている。
【表2】
JP0004255941B2_000006t.gif

【0046】
図10に、試料7におけるメタン改質特性の時間依存性を示す。同図において、下段はガス組成、上段は反応器出口でのガス流量を示している。メタンは測定開始後2.4時間経過後に水蒸気とともに投入された。下段のガス組成より、メタンは残量が1%程度と十分低く、水素と一酸化炭素が高い選択性を維持した状態で製造されていることが確認できる。また、上段のガス流量はメタンの投入とともに3倍程度増加している。これも、炭素析出などがなく良好な改質が行われていることを支持する。生成した合成ガス量、ガス組成、および、[H2]/[CO]
比から反応器内で起こった部分酸化改質反応と水蒸気改質反応の比率を推定することが可能であり、試料7の場合、製造された水素は76%が部分酸化改質由来、24%程度が水蒸気改質由来であると計算された。また、本発明による酸素透過膜の冷却効果については、40℃加湿の試験、例えば表2の試料1,2等はメタン投入後数10分で膜が破壊したが、80℃加湿のその他の試料ではそのような膜の破壊は確認されなかったことから確認された。
【0047】
さらに、酸素透過膜のジュール熱の発生量と膜の冷却効果について定量的な検討を行った。表3には、試料7における酸素透過膜のジュール熱量の見積もり結果を示す。酸素透過速度(5.67μmol・cm-2・s-1)は電流密度(2.19 A・cm-2)に変換され、膜厚、電気伝導度から単位面積当りのイオン抵抗によるジュール熱、電子抵抗によるジュール熱が求められる。これに酸素透過膜の実効面積を掛けると膜が発生するジュール熱が計算される。その結果は、17.46 Wとなった。
【表3】
JP0004255941B2_000007t.gif
また、表4には部分酸化改質(全体の76%)および水蒸気改質(全体の24%)で消費されたメタンが有する熱量の単位をWに換算した結果を示す。酸素透過膜に投入された自由エネルギー変化ΔGは-20.3 Wである。表4より、発生したジュール熱は17.46 Wなので自由エネルギー変化ΔGの 86%が酸素とともに熱として反応系に効率良く還元されていることが分かる。
【表4】
JP0004255941B2_000008t.gif

【0048】
さらに、発生したジュール熱は部分酸化反応のTΔSと 水蒸気改質の総エネルギー変化ΔHにより吸収されるが、その吸収可能な量は18.5+6.1=24.6
Wであり、実際の発熱量17.46 Wよりも大きく冷却能に余裕があることが伺える。よって、本発明が提供する水蒸気改質による酸素透過膜の冷却は有効に機能していると言える。
【0049】
ここで、全体の冷却能力の内、75%は部分酸化改質のTΔS項由来である。また、40℃などの低露点の場合は膜の劣化が確認されたことから、本システムを安定に稼働させるためには、基本的には部分酸化反応と水蒸気改質の熱収支として吸熱側で作動させることが重要であることが明らかとなった。従って、露点としては50℃以上、望ましくは70~80℃の露点に対応する水蒸気量(または水量)の導入が必要である。さらに、表2の最後列にある[H2]/[CO]比に着目すると、高温度での加湿が行われた場合には、その値が2?3の間を示している。部分酸化反応だけが進行する場合はその値は2近傍となり、水蒸気改質反応が進行する場合は3以上となる。よって、水蒸気の導入は酸素透過膜の冷却と同時に水素製造量の増加という副次的なプラスの効果をもたらすことも確認された。水素生成量増加のためにも、70?80℃の露点に対応する水蒸気量(または水量)の導入が望ましい。これにより、生成する全水素量において50?80%が部分酸化改質反応に由来し、残りが水蒸気改質反応由来となる。
【0050】
これらの値を用いると、図9に示した平板ユニット20枚で毎分10?の水素を製造できると計算される。この値は1kWの燃料電池が必要とする水素量に対応する。これをスタックした改質装置の容積は216ccとなる。現在、開発されている1kW燃料電池用改質装置は最も小さいもので容積が19000cc程度である。このシステムに、一酸化炭素を水素を増量しながら二酸化炭素に変換する部分(シフト反応器と一酸化炭素除去器)を連結しても、十分にコンパクトな改質装置となることは明らかである。よって、本発明を用いることにより、コンパクトかつ高効率な酸素透過膜型水素製造装置が実現されることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、水素ステーションや燃料電池における改質装置として水素の製造に利用可能であう。また、純水素に限らず一酸化炭素と水素を含有する合成ガスの製造、さらには、合成ガスを原料とするメタノール等のアルコールの製造にも利用されうる。また、エクセルギー工学、エネルギーの有効利用、熱効率の向上という技術分野にも応用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の一実施形態に係る改質装置1の構成を示す図。
【図2】改質装置1のスタックを構成する平板ユニット2Aの詳細構成を示す図。
【図3】改質装置1の積層状態を模式的に示した図。
【図4】部分酸化改質反応の自由エネルギー変化ΔGの温度依存性を示す図。
【図5】部分酸化改質反応の熱力学的コンパスを示す図。
【図6】酸素透過膜式水素製造システムの概念を示す図。
【図7】酸素透過膜からのジュール熱除去の原理を示す図。
【図8】セリウム酸化物とスピネル型酸化物から構成される複合体型酸素透過膜の酸素透過速度の膜厚依存性を示す図。
【図9】改良型改質装置に用いた平板ユニットを示す図。
【図10】メタン改質特性の時間依存性を示す図。
【符号の説明】
【0053】
1 改質装置
2A、2B 平板ユニット
2C 蓋板ユニット
2D 底板ユニット
3a 原料ガス流入部
3b 改質ガス流出部
4a 空気流入部
4b 空気流出部
11a、11b、12a、12b マニホールド孔部
15 酸素透過膜
16 ボルト貫通孔
17 フランジ部
18 膜保持部
19 ガス流路用溝部
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
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【図4】
3
【図5】
4
【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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