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明細書 :パターン化ハニカム状多孔質体の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4830104号 (P4830104)
公開番号 特開2007-112856 (P2007-112856A)
登録日 平成23年9月30日(2011.9.30)
発行日 平成23年12月7日(2011.12.7)
公開日 平成19年5月10日(2007.5.10)
発明の名称または考案の名称 パターン化ハニカム状多孔質体の製造方法
国際特許分類 C08J   9/36        (2006.01)
B29C  59/02        (2006.01)
B29K  25/00        (2006.01)
B29K  33/00        (2006.01)
B29K  35/00        (2006.01)
B29L  31/00        (2006.01)
FI C08J 9/36 CER
B29C 59/02 B
B29K 25:00
B29K 33:00
B29K 35:00
B29L 31:00
請求項の数または発明の数 4
全頁数 12
出願番号 特願2005-303898 (P2005-303898)
出願日 平成17年10月19日(2005.10.19)
審査請求日 平成20年7月15日(2008.7.15)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
発明者または考案者 【氏名】下村 政嗣
【氏名】藪 浩
【氏名】田中 賢
個別代理人の代理人 【識別番号】100105050、【弁理士】、【氏名又は名称】鷲田 公一
【識別番号】100131587、【弁理士】、【氏名又は名称】飯沼 和人
審査官 【審査官】和田 勇生
参考文献・文献 特開平01-139878(JP,A)
特開2001-157574(JP,A)
特開2002-347107(JP,A)
特開2003-080538(JP,A)
調査した分野 C08J 9/00-36
B29C 59/02
特許請求の範囲 【請求項1】
非水溶性ポリマーからなる膜厚が0.01~100μmの薄膜であって、直径0.01~100μmの空孔が膜の平面方向に蜂の巣状に配列されている周期構造保持領域と、前記空孔が破壊されている周期構造破壊領域とがパターン化されたハニカム状多孔質体の製造方法であって、
非水溶性ポリマーからなる膜厚が0.01~100μmの多孔質薄膜であって、直径0.01~100μmの空孔が膜の平面方向に蜂の巣状に設けられているハニカム状多孔質体を準備するステップと、
所定のパターンで凸部と凹部または貫通部と非貫通部が設けられた鋳型を準備するステップと、
前記鋳型の凸部または非貫通部を前記ハニカム状多孔質体の表面に密着させるか、または前記鋳型の凸部または非貫通部を前記ハニカム状多孔質体の表面に接着した後に剥離することで、前記鋳型の凸部または非貫通部に対応する位置の前記ハニカム状多孔質体の空孔を破壊するステップと、を含
前記非水溶性ポリマーは、ポリスチレンと両親媒性ポリアクリルアミド共重合体との組み合わせ、ポリブタジエンと両親媒性ポリアクリルアミド共重合体との組み合わせ、またはポリメタクリル酸メチルと両親媒性ポリアクリルアミド共重合体との組み合わせである、
パターン化されたハニカム状多孔質体の製造方法。
【請求項2】
前記鋳型は、凸部および凹部を有する鋳型であり、
前記鋳型の凸部の頂部と凹部の底部との高低差は、前記ハニカム状多孔質体の膜厚よりも大きい、
請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記鋳型の凸部または非貫通部と前記ハニカム状多孔質体との接着が融着によって行われる、請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記鋳型の凸部または非貫通部と前記ハニカム状多孔質体との接着が接着剤を介して行われる、請求項1に記載の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明はハニカム状に整列したサブミクロン~ミクロンサイズの空孔を有する多孔質体であるハニカム状多孔質体に任意のパターニングを施すことにより、パターン化されたハニカム状多孔質体を製造する方法に関する。パターン化されたハニカム状多孔質体は、光学素子、電子素子、また細胞培養基板などとして利用可能である。
【背景技術】
【0002】
微細な周期構造を持つ薄膜は、様々な分野において有用な材料である。電子材料の分野では、電界トランジスタのチャネルの微細化が求められており、実際に100nm以下の作製プロセスが実用化されている(非特許文献1)。また光の波長以下の周期構造は可視光領域で透明であり、光の散乱などを防止する効果が期待できる。また、近年再生医療分野においても、表面の微細構造が培養細胞に影響を与えるなどの報告がなされている(非特許文献2)。
【0003】
特に光学材料の分野では、回折格子やフォトニック結晶などが次世代の光機能素子として注目されている(非特許文献3)が、微細な周期構造を持つ薄膜をフォトニック結晶に応用するには、薄膜上で周期構造を持つ部分と持たない部分とを任意に配列ないし配置させる技術、すなわち薄膜の2次元平面上で周期構造の有無によるパターンを作り出すパターニング技術が重要と考えられている。また、細胞増殖用の足場として微細な周期構造を持つ薄膜を利用する場合も、このパターニング技術によって2次元平面上で様々なパターンを持たせることによって、3次元的な細胞増殖を促す足場(スカフォールド)への応用が期待される。
【0004】
従来、微細な周期構造を揺する薄膜上にパターニングを行う方法としては、フォトリソグラフィーやソフトリソグラフィー(非特許文献4)などのリソグラフィ技術が知られている。この方法は所望のパターニングを施すという点では優れているもの、その工程は多段階に及ぶためにコスト的な問題を有し、また利用可能な薄膜材料にも制限があるなどの問題を有している。
【0005】
また、アルミナの陽極酸化を利用して多孔構造を形成した後、リソグラフィ技術でパターニングを施す方法も報告されている。この方法はしかし、アルミナにしか適用することができないものであり、またアルミナのエッチングには種々の試薬を用いた化学的処理を長時間行わなければならないなどの問題を有している。
【0006】
さらに、高分子の非水溶性有機溶媒溶液表面上に水滴を結露させ、該水滴を鋳型としてハニカム状の多孔質体を調製する(特許文献1)方法において、有機溶媒溶液をパターニングが施された基板にキャストすることで、基板の持つパターンに沿ってハニカム状多孔質体を製造しようとする例も報告されている(非特許文献5)が、微細構造の周期性、均一性が損なわれてしまう等の問題を有している。

【特許文献1】特開平8-311231
【非特許文献1】ゲルジンゲら、IEEEスペクトラム(IEEE Spectrum)1989年、第89巻、第43頁。
【非特許文献2】チェンら、サイエンス(Science)、1997年、第276巻、1425頁
【非特許文献3】ノダら、ネイチャー(Nature)、2000年、第407巻、第608頁。
【非特許文献4】ホワイトサイズら、 Angew. Chem. Int. Ed.,1998年、第37巻、 第550-575頁
【非特許文献5】Ohzonoら、ジャーナルオブマテリアルサイエンス(J.Mater.Sci.)、2004年、第39巻、第6号、第2243頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ハニカム状に整列した微細な孔からなる周期構造を有する薄膜に対して、任意のパターンを施す方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、非水溶性ポリマーからなるハニカム状多孔質体の応用研究において、該ハニカム状多孔質体に任意のパターンを有する鋳型を接触させることでかかるパターンをハニカム状多孔質体に転写することができることを見いだし、以下の各発明を完成した。
【0009】
1)非水溶性ポリマーからなるハニカム状多孔質体にレリーフ及び/又はスリットからなるパターンを有する鋳型を接触させて該パターンをハニカム状多孔質体に転写することを含む、パターン化されたハニカム状多孔質体の製造方法。
【0010】
2)レリーフパターンを構成する鋳型凸部にハニカム状多孔質体を押しつぶさせることによって鋳型のパターンをハニカム状多孔質体に転写させる、1)に記載の製造方法。
【0011】
3)レリーフパターンを構成する凹凸の頂部と底部との間隔がハニカム状多孔質体の膜厚より大きい鋳型である、2)に記載の製造方法。
【0012】
4)レリーフパターンを構成する鋳型凸部の頂部と又はスリットからなるパターンを有する鋳型とハニカム状多孔質体とを接着させた後に鋳型とハニカム状多孔質体を剥離することによって鋳型のパターンをハニカム状多孔質体に転写させる、1)に記載の製造方法。
【0013】
5)レリーフパターンを構成する鋳型凸部の頂部と又はスリットからなるパターンを有する鋳型とハニカム状多孔質体との接着が融着によって行われる、4)に記載の製造方法。
【0014】
6)レリーフパターンを構成する鋳型凸部の頂部と又はスリットからなるパターンを有する鋳型とハニカム状多孔質体との接着が接着剤を介して行われる、4)に記載の方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明の製造法は、ハニカム状に整列した微細な孔からなる周期構造を任意の部分で破壊することができることから、本発明の方法により製造されるパターン化ハニカム状多孔質体は、破壊された部分のみに光を導波する導波路を有するフォトニック結晶として利用することができる。また本発明の方法により製造されるパターン化ハニカム状多孔質体は、周期構造を保持した部分に培養細胞を限定して増殖させることができることから、パターン化された位置に細胞を培養することのできる基板としても利用可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の製造法は、非水溶性ポリマーからなるハニカム状多孔質体、任意のレリーフ及び/又はスリットからなるパターンを有する鋳型、ならびにこれらの接触を必要とする方法である。以下にそれぞれを説明する。
【0017】
1)非水溶性ポリマーからなるハニカム状多孔質体とその調製
非水溶性ポリマーからなるハニカム状多孔質体(ハニカム構造体あるいはハニカムシートとも呼ばれる)とは、非水溶性の高分子(ポリマー)でできた多孔性の薄膜であって、膜の垂直方向に向けられた微少な孔が膜の平面方向に蜂の巣状に(ハニカム状に)設けられている構造を有するものをいう。孔は膜を垂直方向に貫通していることが好ましく、また平面方向に存在する周囲の孔と膜の内部で連通していてもよい。代表的なハニカム状多孔質体の部分構造を図1に示す。
【0018】
本発明で利用可能なハニカム状多孔質体の形状は、膜厚が0.01μm~100μm、好ましくは0.1μm~50μm、より好ましくは1μm~20μmであり、孔径が0.01μm~100μm、好ましくは0.1μm~50μm、より好ましくは1μm~20μm、特に好ましくは5μm~10μmである。
【0019】
この様な構造的特徴を有するハニカム状多孔質体は、高分子の非水性有機溶媒溶液表面上に水滴を結露させ、該水滴を鋳型としてハニカム状の多孔質体を調製する方法、例えば特開平8-311231、特開2001-157475、特開2002-347107あるいは特開2002-335949に記載された方法によって調製することができる。
【0020】
この方法では、非水溶性有機溶媒、特に50dyn/cm以下の表面張力γLを有する非水溶性有機溶媒に非水溶性ポリマーを溶解した非水溶性ポリマーの非水溶性有機溶媒溶液を、表面の表面張力をγSとし、塗布される非水溶性有機溶媒の表面張力γLならびに該基板と該溶媒との間の表面張力γLSとした場合にγS-γSL>γLの関係を満たす基板の表面に塗布し、さらに30%以上の空気の存在下で基板上に塗布された非水溶性ポリマーの非水溶性有機溶媒溶液を蒸発させることが好ましい。
【0021】
ここにいう非水溶性有機溶媒は、50dyn/cm以下の表面張力を有し、かつ該溶液表面に結露した水滴を保持し得る程度の非水溶性と、大気圧下で0~150℃、好ましくは10~50℃の沸点を有する有機溶媒を言う。例えば四塩化炭素、ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、メチルイソブチルケトン等の非水溶性のケトン類、二硫化炭素などを挙げることができる。
【0022】
また非水溶性ポリマーは、水に不溶性でかつ上記の非水溶性有機溶媒に可溶な、あるいは適当な界面活性剤の存在下で非水溶性有機溶媒に溶解し得るポリマーであれば特別の制限はなく、適宜選択して使用することができる。
【0023】
例えば、ポリ乳酸やポリヒドロキシ酪酸のような生分解性ポリマー、脂肪族ポリカーボネート、両親媒性ポリマー、光機能性ポリマー、電子機能性ポリマーなどを挙げることができる。
【0024】
界面活性剤は、上記の非水溶性有機溶媒に溶解する物であれば適宜選択して使用することができるが、溶解後の非水溶性有機溶媒の表面張力が50dyn/cm以下であればよい。
【0025】
上記の非水溶性有機溶媒と非水溶性ポリマーとの具体的な組み合わせの例としては、例えばポリスチレン、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアルキルシロキサン、ポリメタクリル酸メチルなどのポリアルキルメタクリレートまたはポリアルキルアクリレート、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリ-N-ビニルカルバゾール、ポリ乳酸、ポリ-ε-カプロラクトン、ポリアルキルアクリルアミド、およびこれらの共重合体よりなる群から選ばれるポリマーに対しては、四塩化炭素、ジクロロメタン、クロロホルム、ベンゼン、トルエン、キシレン、二硫化炭素などの有機溶媒を組み合わせて使用することができる。また、フッ素化アルキルを側鎖に持つアクリレート、メタクリレートおよびこれらの共重合体よりなる群から選ばれるポリマーに対しては、AK-225(旭硝子株式会社製)などのフッ化炭素溶媒、トリフルオロベンゼン、フルオロエーテル類などの使用も良好な結果を与える。これらの中から、具体的に使用する非水溶性ポリマーに対する溶解性を考慮して、適宜選択して使用することができる。
【0026】
また、フッ素化アルキルを側鎖に持つポリアクリレートやメタクリレートの側鎖の水素をフッ素に置換したフッ素系ポリマーを用いてハニカム状多孔質体を製造する際には、フッ素系の有機溶媒(AK-225等)の使用も良好な結果を与える。
【0027】
非水溶性有機溶媒に非水溶性ポリマーを溶解する際には、同溶媒に対して0.1g/L~10g/Lの非水溶性ポリマーを溶解して使用することが好ましい。ここで、溶液中の非水溶性ポリマー濃度は、製造されるハニカム状多孔質体に求める特性、物性並びに使用する非水溶性有機溶媒に応じて、適宜定めることができる。
【0028】
さらにかかる非水溶性ポリマーの非水溶性有機溶媒溶液を塗布する基板は、基板表面の表面張力γSと塗布される非水溶性有機溶媒の表面張力γLならびに該基板と該溶媒との間の表面張力γLSとの間で、γS-γSL>γLの関係を満たす基板を選択して用いることが望ましい。これは、非水溶性ポリマー溶液の非水溶性有機溶媒溶液を塗布する基板自体の非水溶性有機溶媒に対する濡れ性が、基板上に形成される液膜の厚みに影響を与え得るためである。基板には、塗布される非水溶性ポリマーの非水溶性有機溶媒溶液との親和性が高いものであることが好ましい。具体的には、非水溶性有機溶媒の表面張力γLを指標にして上記式で表すことのできる表面張力を示す表面を有する基板を利用すればよい。そのような基板の好適な例としては、ガラス板、シリコン製板あるいは金属板などを挙げることができる。
【0029】
また、非水溶性有機溶媒溶液との親和性を高めることのできる加工を表面に施した基板の使用も可能である。この様な基板表面の濡れ性の改良は、基板と使用する非水溶性有機溶媒に合わせて、自体公知の方法、例えばガラス製や金属製の基板に対してはそれぞれシランカップリング処理やチオール化合物による単分子膜形成処理方法などを利用することができる。
【0030】
例えば、クロロホルムなどの疎水性有機溶媒を非水溶性有機溶媒として用いる場合の基板としては、十分に洗浄されたSi基板や、アルキルシランカップリング剤などで表面を修飾したガラス基板などの使用が好ましい。また、フッ素系溶媒を用いる場合は、テフロン(登録商標)基板、あるいはフッ素化アルキルシランカップリング剤などで修飾したガラス基板などの使用が好ましい。
【0031】
非水溶性ポリマーの非水溶性有機溶媒溶液を基板に塗付して同溶液の液膜を形成させる際の液膜厚としては0.1μm~5mm、好ましくは0.5μm~1mm、さらに好ましくは1~100μm以下とすることが望ましい。また基板に非水溶性ポリマーの非水溶性有機溶媒溶液を塗付する方法としては、基板に溶液を滴下する方法の他、バーコート、ディップコート、スピンコート法などを挙げることができ、バッチ式、連続式の何れも利用することができる。
【0032】
基板表面に塗布された非水溶性ポリマーの非水溶性有機溶媒溶液は、相対湿度30%以上の空気に接触させることによって蒸発させる。ここで溶媒の蒸発速度を非水溶性ポリマーの非水溶性有機溶媒溶液の基板表面への塗布時の液膜厚が1秒以内に1/5にまで減少する速度とすることによって、0.01μm~0.1μmの孔径を有するハニカム状多孔質体を調製することができる。この蒸発速度は、基板上に塗布した非水溶性ポリマーの非水溶性有機溶媒溶液の液膜の面方向に対してほぼ平行ないし上方向に10L(リットル)/分以上の空気層の流れを形成して非水溶性有機溶媒を蒸発させる方法、非水溶性有機溶媒の沸点未満かつ液膜に接触する空気の露点未満で非水溶性ポリマーの非水溶性有機溶媒溶液が塗布された基板を加熱(例えばベルチェ素子を用いて加熱)して非水溶性有機溶媒を蒸発させる方法、あるいは非水溶性有機溶媒の沸点ならびに液膜に接触する空気の露点を超えないような減圧下に基板に塗布された非水溶性ポリマーの非水溶性有機溶媒溶液をおいて非水溶性有機溶媒を蒸発させる方法、等によって達成することができる。ここで、露点とは、ある温度におかれた空気の中に含まれている水蒸気が飽和に達して凝結する温度をいい、相対湿度と絶対温度に対して定まる値である。
【0033】
好適な例としては、基板に塗布された非水溶性ポリマーの非水溶性有機溶媒溶液の液膜に対してほぼ平行ないし上方向に相対湿度30%以上の湿度を有する流速10~100L/分の気流を発生させることである。
【0034】
気流の流速は、用いる非水溶性有機溶媒の揮発度や基板に塗布された非水溶性ポリマーの非水溶性有機溶媒溶液の液膜の厚さに応じて適宜調製すればよいが、概ね0.1L/分~~100L/分、好ましくは0.5L~80L/分、さらに好ましくは1~50L/分とすればよい。また気流は、基板に塗布された非水溶性ポリマーの非水溶性有機溶媒溶液の液膜に対して斜め上方向から、あるいは垂直方向から気流を当たるような配置では、気流による風圧によって液膜に歪みや亀裂が発生することもあり得る。その様な場合には、気流は基板に塗布された非水溶性ポリマーの非水溶性有機溶媒溶液の液膜に平行に、あるいは上方向に生じさせることが好ましい。この場合、気流はその上流からの陽圧あるいは下流からの負圧の何れによって発生させても構わない。例えば、基板に向けて設置したノズルから所定の空気を噴射しても、基板上部の空気を一方向から吸引しても、何れでも良い。
【0035】
2)鋳型
本発明では、一定の形状を有する固体、好ましくは平板状の固体であって、その表面にレリーフ及び/またはスリットからなる任意のパターンを有する物を鋳型として使用する。
【0036】
本発明に言うレリーフとは鋳型の表面に設けられた凹凸を意味し、従ってレリーフからなるパターンとは、固体表面に設けられた凹凸によって描かれる任意の模様をいう。また、本発明に言うスリットとは、鋳型を貫通するように形成された、細長い溝に限られず円、多角形その他の任意の形状を有する空隙部分を意味し、従ってスリットからなるパターンとは、鋳型を貫通するように形成された、細長い溝に限られず円、多角形その他の任意の形状を有する空隙部分によって描かれる任意の模様をいう。なお、レリーフならびにスリットは一つの鋳型に共存していてもよい。
【0037】
後に説明するように、本発明の方法では鋳型をハニカム状多孔質体に物理的圧力によって密着させたり、あるいは鋳型をハニカム状多孔質体から剥離したりする操作を含むことから、鋳型を構成する材質としてはこの様な操作によって容易には変形ないし破損しない程度の強度を有する材質を選択することが望ましい。好ましい材質としては、金、アルミニウムその他の金属、シリコン、炭化珪素その他の半導体、ポリジメチルシロキサンその他のポリマー、ガラス、木等を挙げることができる。
【0038】
これらの材質から成る固体、特に平板の表面におけるレリーフパターンの形成は、使用する材質に適した公知の方法から適当に選択し、これを利用すればよい。典型的には、金属表面あるいはポリマー表面へのレリーフパターンはリソグラフィやソフトリソグラフィその他の等の方法(高分子学会編、「微細加工技術」(基礎編)、2002年、エヌ・ティー・エヌまたは前記非特許文献4など)を利用することができる。
【0039】
レリーフからなるパターンは任意に設計することができるが、レリーフを構成する凹凸の凸部頂部と凹部底面との高低差(H)は、パターン化を施すハニカム状多孔質体の膜厚(T)よりも大きくする(H>T)ことが好ましく、特に後に述べるインプリント法の場合には、このH>Tを維持することが必要である。また、鋳型の凸部頂部の幅(L)も、Tに対してL>Tとすることが好ましい。
【0040】
また、前記の材質から成る固体、特に平板におけるスリットからなるパターンの形成は、使用する材質に適した公知の方法から適当に選択し、これを利用すればよい。典型的には、金属表面へのスリットの形成はリソグラフィやソフトリソグラフィその他の等の方法(高分子学会編、「微細加工技術」(基礎編)、2002年、エヌ・ティー・エヌまたは前記非特許文献4など)を利用することができる。この場合、ハニカム状多孔質体と接触する部分の幅(W)は、ハニカム状多孔質体の膜厚(T)よりも大きくする(W>T)ことが好ましい。
【0041】
3)ハニカム状多孔質体と鋳型の接触
上記1)で説明したハニカム状多孔質体と上記2)で説明したレリーフパターンを有する鋳型の接触によってパターンを転写させるには、ハニカム状多孔質体の鋳型凸部頂部と接触した部分を該凸部で押し潰す方法(インプリント法)と、ハニカム状多孔質体の鋳型ないし凸部頂部と接触した部分をハニカム状多孔質体から剥離する方法(剥離法)とがあり得る。
【0042】
インプリント法は、鋳型の凹部底部から凸部頂部までの高低差(H)がハニカム状多孔質体の膜厚(T)よりも大きいもの(H>T)を利用し、該鋳型とハニカム状多孔質体とを適当な物理的圧力によって密着させるものである。この操作により、ハニカム状多孔質体の鋳型凸部と接触する部分の膜厚は該凸部によって押し潰されることで減少し、その一方で鋳型凹部に対峙する部分のハニカム状多孔質体の膜厚は維持されるので、鋳型の凹凸が逆転したパターンを有するハニカム状多孔質体を製造することができる。
【0043】
鋳型とハニカム状多孔質体と密着させるための圧力は、鋳型あるいはハニカム状多孔質体の材質によって異なるが、0.01kg/cm~100kg/cm、好ましくは0.1kg/cm~80kg/cm 、より好ましくは1kg/cm~50kg/cmである。
【0044】
一方、剥離法は、ハニカム状多孔質体と鋳型を接触させて接着させた後、鋳型とハニカム状多孔質体を剥がすものである。この操作により、ハニカム状多孔質体と鋳型とが接着した部分の膜厚は鋳型と共に引き剥がされる分減少し、その一方でハニカム状多孔質体の鋳型との非接着部分の膜厚は維持されることになる。なお、接着法においても、ハニカム状多孔質体とレリーフからなるパターンを有する鋳型とを接触させることで、鋳型凸部によって膜が押し潰される分の膜厚が減少することもあり得る。
【0045】
接着は、鋳型とハニカム状多孔質体とを接着させることのできる適当な接着剤を鋳型凸部頂部のみあるいはスリットからなるパターンを有する鋳型に塗布し、この鋳型とハニカム状多孔質体とを接触させることで行うことができる。また、ハニカム状多孔質体と熱融着可能な材質をハニカム状多孔質体との接触面に有する鋳型を作製し、該鋳型とハニカム状多孔質体とを接触させた後、鋳型を加熱することでハニカム状多孔質体との接触面を融着させてもよい。例えば、融点がTg1である非水溶性ポリマーからなるハニカム状多孔質体と融点Tg2を有する材質をハニカム状多孔質体との接触面に有する鋳型とを接触後、温度をTg2<T<Tg1に設定することで接触面を融着させることができる。
【0046】
以下に実施例を示し、本発明の詳細を説明する。ただし、これらの実施例は何ら本発明を限定するものではない。
【実施例1】
【0047】
1)ハニカム状多孔質体の調製
ポリスチレン:両親媒性ポリアクリルアミド共重合体(Cap)=10:1を濃度5 mg/mlとなるようにクロロホルム溶液に溶解した。Capは下記構造式で示される化合物である。
【化1】
JP0004830104B2_000002t.gif

【0048】
この溶液5mlを直径9cmのガラス板に塗布し、相対湿度70%を有する空気流(流速5L/分)に対して平行に置いて溶媒を蒸発させ、孔径約5μm、膜厚約4μmのハニカム状多孔質体(直径8cmを得た(図1)。
【0049】
2)鋳型の調製
高分子学会編、「微細加工技術」(基礎編)、2002年、エヌ・ティー・エヌ第173頁~192頁に記載された方法に従い、シリコンを材質とした下記の2つの鋳型A、Bを光リソグラフィー法によって作製した。
【0050】
鋳型A(1.0cm×1.0cm):100μm四方の角柱が凸部、該角柱同士の間の25μm幅の部分が凹部となり、さらにこの凹凸が平面全体に格子状に規則的に並んだ構造を有している(図2a)。また凹凸の高低差は50μmである。
【0051】
鋳型B(1.0cm×1.0cm):直径50μmの円形状のスリットが25μm幅の間隔をもって規則的に並んだ構造を有している(図3a)。
【0052】
さらにこの鋳型Bに、0.1mg/mlのポリビニルアルコールを含むアセトニトリル溶液をスピンコート(1000rpm、30秒)した。
【0053】
3)ハニカム状多孔質体と鋳型の接触
1)で作製したハニカム状多孔質体をアルミ板に載せ、その上から2)で作製した鋳型Aを、レリーフ面をハニカム状多孔質体に向けて被せた。このハニカム状多孔質体と鋳型のサンドイッチをバイスに挟み、10kg/cmで密着させた後、鋳型を剥がしてパターン化されたハニカム状多孔質体を回収した。このパターン化されたハニカム状多孔質体の電子顕微鏡写真を図2bに示す。鋳型の凸部(100μm四方の立方形)によって膜が押し潰され、ハニカム状に整列した微細な孔という周期構造が破壊されることによって形成されたパターンを確認することができる。
【0054】
また、1)で作製したハニカム状多孔質体の上から、スピンコートした面をハニカム状多孔質体に向けて2)で作製した鋳型Bを被せた後、鋳型を下方にしてホットステージに載せて40℃で3分間加熱した。室温に冷却後、ハニカム状多孔質体を鋳型から剥離して、パターン化されたハニカム状多孔質体を回収した。このパターン化されたハニカム状多孔質体の電子顕微鏡写真を図3bに示す。鋳型との接着面においてハニカム状多孔質体の片面が剥離され。ハニカム状に整列した微細な孔という周期構造が破壊されることによって形成されたパターンを確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】実施例で作製したハニカム状多孔質体の電子顕微鏡写真である。
【図2a】実施例で使用した鋳型Aの模式図である。
【図2b】鋳型Aを利用して製造されたパターン化されたハニカム状多孔質体の電子顕微鏡写真である。
【図3a】実施例で使用した鋳型Bの模式図である。
【図3b】鋳型Bを利用して製造されたパターン化されたハニカム状多孔質体の電子顕微鏡写真である。
図面
【図2a】
0
【図3a】
1
【図1】
2
【図2b】
3
【図3b】
4