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明細書 :分子ワイヤの製造方法および分子ワイヤ

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3950969号 (P3950969)
公開番号 特開2005-064376 (P2005-064376A)
登録日 平成19年5月11日(2007.5.11)
発行日 平成19年8月1日(2007.8.1)
公開日 平成17年3月10日(2005.3.10)
発明の名称または考案の名称 分子ワイヤの製造方法および分子ワイヤ
国際特許分類 H01L  21/288       (2006.01)
H01L  51/05        (2006.01)
H01L  29/06        (2006.01)
FI H01L 21/288 Z
H01L 29/28
H01L 29/06 601N
請求項の数または発明の数 9
全頁数 13
出願番号 特願2003-295293 (P2003-295293)
出願日 平成15年8月19日(2003.8.19)
審査請求日 平成15年8月19日(2003.8.19)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304023318
【氏名又は名称】国立大学法人静岡大学
発明者または考案者 【氏名】坂口 浩司
【氏名】松村 尚
【氏名】中林 誠一郎
個別代理人の代理人 【識別番号】100110607、【弁理士】、【氏名又は名称】間山 進也
審査官 【審査官】國島 明弘
参考文献・文献 特開2002-309013(JP,A)
特表平08-501411(JP,A)
特開2003-197901(JP,A)
特開平07-022670(JP,A)
特開平09-237926(JP,A)
特開2004-058260(JP,A)
特開2004-136377(JP,A)
特開平11-163158(JP,A)
特開2000-323482(JP,A)
分子の鎖でナノワイヤー配線,日本,理化学研究所、化学技術振興事業団,2001年 2月 8日,URL,http://www.riken.go.jp/r-world/info/release/press/2001/010205/
調査した分野 H01L 21/288
H01L 29/06
H01L 51/05
特許請求の範囲 【請求項1】
絶縁分子を導電性基板に結合させ、絶縁分子膜を形成する段階と、共役分子を前記絶縁分子膜に埋め込み、前記導電性基板に結合させる段階と、前記共役分子が結合された前記導電性基板を、延長分子を含む電解質溶液に浸漬し、前記導電性基板に電圧を印加し、前記導電性基板に結合した前記共役分子に前記延長分子を電解重合させる段階とを含む、分子ワイヤの製造方法。
【請求項2】
前記電圧を、50~200ミリ秒間隔の正電位パルスとして印加することを特徴とする、請求項1に記載の分子ワイヤの製造方法。
【請求項3】
前記共役分子を前記導電性基板に結合させる段階は、前記共役分子を含む溶液に、前記絶縁分子膜が形成された前記導電性基板を浸漬することを含む、請求項1または2に記載の分子ワイヤの製造方法。
【請求項4】
前記絶縁分子膜を形成する段階は、前記絶縁分子を含む溶液に前記導電性基板を浸漬することを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の分子ワイヤの製造方法。
【請求項5】
前記絶縁分子および前記共役分子は、前記導電性基板に化学結合することを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の分子ワイヤの製造方法。
【請求項6】
前記絶縁分子および前記共役分子は、ヘテロ原子を含むことを特徴とする、請求項5に記載の分子ワイヤの製造方法。
【請求項7】
前記絶縁分子は、炭素数2~20のアルカンチオールであり、前記共役分子は、2~20量体のオリゴチオフェンであり、前記延長分子は、炭素数2~20のアルキルチオフェンである、請求項1~6のいずれか1項に記載の分子ワイヤの製造方法。
【請求項8】
導電性基板に結合した共役分子と、前記共役分子に結合するとともに、前記導電性基板から離れる方向に重合して延びる延長分子とを含む分子ワイヤであって、周囲を絶縁分子に取り囲まれるように隣接して前記導電性基板に結合された前記共役分子に前記延長分子を電解重合させ、重合した前記延長分子に別の延長分子を電解重合させることにより、前記導電性基板から離れる方向に向けて一方向に延びるように形成され、直径が1~50Åであることを特徴とする、分子ワイヤ。

【請求項9】
前記共役分子は、2~20量体のオリゴチオフェンであり、前記延長分子は、炭素数2~20のアルキルチオフェンである、請求項8に記載の分子ワイヤ。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、分子ワイヤの製造方法および該方法により形成される分子ワイヤに関し、より詳細には、電気化学的に分子を一方向に結合して所望の長さの分子ワイヤを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エレクトロニクス製品は、小型化、高性能化、省電力化に向けて進化し続けている。エレクトロニクス製品は、あらゆる環境下での高性能維持が課題となっており、その中でも、半導体デバイスはデリケートで、一層高い信頼性が要求されている。一般に、半導体デバイスにおける配線には、銅やアルミニウムといった金属配線が使用されており、レジストマスクを用い、エッチングガスで金属膜をエッチングすることにより、所望の形状の配線を形成している(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。
【0003】
また、半導体デバイスにおける集積回路の製造において、ガラス・マスク上に描かれた微細なIC パターンを、光を用いて半導体ウェハ上に転写する技術である光リソグラフィも使用されている。この光リソグラフィは、マスクを通して、感光性樹脂を塗布した半導体ウェハ上に光を照射し、パターンを感光性樹脂上に転写するものである。光リソグラフィでは、使用する光の波長が短く、光学系の改善などにより解像度が向上し、現在では、この光リソグラフィ技術を用いることにより、0.18マイクロメートル以下の素子を製造することができるようになっている。配線や素子は、レジストと呼ばれる感光剤を塗布したシリコンウエハーに、回路パターンの型を通して紫外光を照射し、このレジストを現像処理し、形成されたガイドに従ってエッチングすることで形成することができる。光リソグラフィでは、使用される光線の波長が193nmにおいて限界であり、チップ配線の線幅は、光線波長の4分の1が限界とされている。
【0004】
このような状況の中で、ナノメートルの寸法でも動作可能な素子の開発が進められている。例えば、電子1個でスイッチのオンおよびオフを制御する単電子素子や、有機分子を素子として用いる分子デバイスなどが提案されている。これらの素子を実現するために、個々の素子を電気的に連結する技術が必要とされている。しかしながら、従来の上述したリソグラフィによる配線の形成方法では、これらナノメール寸法の個々の素子を連結することができないといった問題があった。この問題を解決するべく、素子同士を電気的に連結する技術として分子ワイヤを用いることが検討されており、この分子ワイヤの材料として、共役高分子が注目されている。
【0005】
例えば、共役分子を使用して、共役高分子からなる分子ワイヤを形成する方法が提案されている(例えば、非特許文献1参照)。この方法は、有機分子膜の分子に、走査トンネル顕微鏡(STM)の探針によって電圧パルスを加え、連鎖重合反応を起こさせることでナノワイヤ配線を形成するものである。これは、ジアセチレン化合物分子が秩序正しく並んだ平坦な膜を作製し、その上の1点に、STMの探針を用いて電圧パルスを加えることで、連鎖重合反応を起こし、ポリジアセチレン化合物が自発的に成長し、成長の経路上に予め分子の乱れを作っておくことにより、その位置で分子鎖の成長を止め、所望の長さとするものである。この場合の分子の乱れは、STMの探針により予め所定位置に尖設した穴などの構造欠陥である。
【0006】
しかしながら、上記方法は、ワイヤを形成する方向の1分子に電圧パルスを加えるだけで、ドミノ倒し的に有機分子膜上の膜面に沿って延びるようにワイヤが形成されるものの、所望の位置にある1分子に電圧パルスを加える必要があり、成長を止めるため、所望の位置に穴を作らなければならず、したがって、高価なSTMを使用する必要があった。また、上記方法は、分子ワイヤを1種類の共役分子のみから形成するものであり、2種以上の異なる共役分子で分子ワイヤを形成することはできなかった。

【特許文献1】特開平11-163158号公報
【特許文献2】特開2000-323482号公報
【非特許文献1】青野正和ら、「分子の鎖でナノワイヤー配線」、[online]、平成13年2月8日、理化学研究所、化学技術振興事業団、インターネット<URL:http://www.riken.go.jp/r-world/info/release/press/2001/010205/>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明は、上述の問題点に鑑み、高価なSTMを使用することなく、所望の長さの、2種類以上の共役分子を結合させた分子ワイヤを簡単に製造する方法、および、安価で提供することができ、2種類以上の共役分子が結合した分子ワイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記目的は、本発明の分子ワイヤの製造方法および分子ワイヤを提供することによって解決される。
【0009】
すなわち、本発明によれば、絶縁分子を導電性基板に結合させ、絶縁分子膜を形成する段階と、共役分子を前記絶縁分子膜に埋め込み、前記導電性基板に結合させる段階と、前記共役分子が結合された前記導電性基板を、延長分子を含む電解質溶液に浸漬し、前記導電性基板に電圧を印加し、前記導電性基板に結合した前記共役分子に前記延長分子を電解重合させる段階とを含む、分子ワイヤの製造方法が提供される。
【0010】
本発明によれば、前記電圧を、50~200ミリ秒間隔の正電位パルスとして印加することを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、前記共役分子を前記導電性基板に結合させる段階は、前記共役分子を含む溶液に、前記絶縁分子膜が形成された前記導電性基板を浸漬することを含む。
【0012】
本発明によれば、前記絶縁分子膜を形成する段階は、前記絶縁分子を含む溶液に前記導電性基板を浸漬することを含む。
【0013】
本発明によれば、前記絶縁分子および前記共役分子は、前記導電性基板に化学結合することが好ましい。
【0014】
本発明によれば、前記絶縁分子および前記共役分子は、ヘテロ原子を含むことが好ましい。
【0015】
本発明によれば、前記絶縁分子は、炭素数2~20のアルカンチオールであり、前記共役分子は、2~20量体のオリゴチオフェンであり、前記延長分子は、炭素数2~20のアルキルチオフェンであることが好ましい。
【0016】
また、本発明によれば、導電性基板に結合した共役分子と、前記共役分子に結合するとともに、前記導電性基板から離れる方向に重合して延びる延長分子とを含む分子ワイヤであって、直径が1~50Åであることを特徴とする、分子ワイヤが提供される。
【0017】
本発明の分子ワイヤは、前記共役分子が、2~20量体のオリゴチオフェンであり、前記延長分子が、炭素数2~20のアルキルチオフェンであることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の分子ワイヤの製造方法を提供することにより、簡単かつ安価で、直径数Å~数十Åの分子ワイヤを製造することが可能となる。また、本発明の分子ワイヤは、低エネルギー、大きな分極性を有するπ電子を有するため、導電性を有し、また、発熱することもなく、高速伝播を可能にするトンネル効果による電子伝達が可能であり、さらには、生体との良親和性も有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は後述する実施の形態に限定されるわけではない。本発明の分子ワイヤの製造方法は、絶縁分子を導電性基板に結合させ、絶縁分子膜を形成する段階と、共役分子を絶縁分子膜内に埋め込み、導電性基板に結合させる段階と、絶縁分子膜内に埋め込まれた共役分子が結合された導電性基板を、延長分子を含む電解質溶液に浸漬し、導電性基板に電圧を印加し、導電性基板に結合した共役分子に延長分子を電解重合させる段階とを含む。
【0020】
図1は、導電性基板を、絶縁分子を含む溶液に浸漬したところを示した図である。図1では、容器1に、絶縁分子2を含む溶液3が収容され、その溶液3に導電性基板4が浸漬されているのが示されている。なお、図1には、導電性基板4上にのみ絶縁分子2が示され、溶液3中に絶縁分子2が示されていないが、溶液3中にも絶縁分子2が含まれているものとする。本発明に用いることができる導電性基板4は、導電性を有するものであればいかなるものであってもよいが、絶縁分子2を均一に結合させた絶縁分子膜を形成するため、原子レベルで平坦な表面であることが好ましい。本発明では、例えば、金基板、銀基板、銅基板、マイカなどの絶縁材料に金または銀または銅を電気めっきや真空蒸着などによりめっきしたものを用いることできる。
【0021】
本発明に用いることができる絶縁分子2としては、共役分子といった導電性を有する分子以外の絶縁分子であれば、いかなる分子であってもよい。絶縁分子2は、導電性基板4に結合されていれば、物理結合であってもよいし、化学結合であってもよい。また、絶縁分子2を導電性基板4の表面に結合させる方法としては、図1に示す絶縁分子2を含む溶液3中に浸漬させる方法に限らず、今まで知られたいかなる方法であってもよく、例えば、蒸着することにより形成してもよい。なお、本発明では、共役分子の周囲を適切に絶縁分子2が取り囲む状態を保持し、延長分子が所望の方向に電解重合するように、絶縁分子2は、導電性基板4に化学結合されていることが好ましい。また、絶縁分子2は、埋め込む共役分子の分子長がほぼ同じものがより好ましい。これは、共役分子を埋め込んだ場合に、導電性基板4の表面を基準とした高さがほぼ同じとなり、共役分子に重合する延長分子が、共役分子の長さ方向に沿った適切な方向に延びて分子ワイヤを形成することができるからである。
【0022】
導電性基板4に分子を化学結合させるためには、上述した浸漬させる方法を用いることができ、絶縁分子2にヘテロ原子を含むことが好ましい。このヘテロ原子は、導電性基板4に使用する金、銀または銅と化学結合する。ヘテロ原子としては、硫黄(S)、窒素(N)を挙げることができる。ヘテロ原子を含む分子としては、例えば、炭素数2~20のアルキルチオールを挙げることができる。
【0023】
本発明においては、絶縁分子2として上記アルカンチオールを用いることが好ましい。アルカンチオール溶液中に金基板または銀基板または銅基板を浸漬した場合、アルカンチオールは、チオール基が基板に吸着し、アルキル基のファンデルワールス力によって分子がきれいに整列する自己組織化単一分子膜を形成する。この自己組織化単一分子膜は、単一分子により密に整列して形成されるため、後述する共役分子を埋め込んだ場合、共役分子に結合する延長分子が、導電性基板4に結合することができず、共役分子の導電性基板4に結合する側とは反対の側にしか結合できないため、導電性基板4から離れる、共役分子の長さ方向に沿った一方向に延びるように結合する。これにより形成される分子ワイヤは、単一分子の直径とほぼ同じ径で、長さ方向にのみ延びた分子ワイヤを製造することができる。
【0024】
絶縁分子2を分散させる溶媒としては、種々の有機溶媒を用いることができ、このような有機溶媒としては、具体的には例えば、アミルベンゼン、イソプロピルベンゼン、エチルベンゼン、オクタン、ガソリン、キシレン、ジエチルベンゼン、シクロヘキサン、シクロヘキシルベンゼン、シクロヘキセン、シクロペンタン、ジペンテン、ジメチルナフタレン、シメン類、樟脳油、スチレン、石油エーテル、石油ベンジン、ソルベントナフサ、デカリン、デカン、テトラリン、テレピン油、灯油、ドデカン、ドデシルベンゼン、トルエン、ナフタレン、ノナン、パインオイル、ピネン、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、ペンタン、メチルシクロヘキサン、メチルシクロペンタン、p-メンタン、イグロインといった炭化水素系溶剤を挙げることができる。
【0025】
上記有機溶媒としてはさらに、アリルクロイド、2-エチルヘキシルクロリド、塩化アミル、塩化イソプロピル、塩化エチル、塩化ブチル、塩化ナフタレン、塩化ヘキシル、塩化メチレン、o-クロロトルエン、p-クロロトルエン、クロロベンゼン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン、ジクロロエチレン、ジクロロトルエン、ジクロロブタン、ジクロロプロパン、ジクロロベンゼン、ジブロモエタン、ジブロモブタン、ジブロモプロパン、ジブロモベンゼン、ジブロモペンタン、臭化アリル、臭化イソプロピル、臭化エチル、臭化オクチル、臭化ブチル、臭化メチル、臭化ラウリル、テトラクロロエタン、テトラクロロエチレン、テトラブロモエタン、テトラメチレンクロロブロミド、トリクロロエタン、トリクロロベンゼン、ブロモクロロエタン、1-ブロモ-3-クロロプロパン、ブロモナフタレン、ブロモベンゼン、ヘキサクロロエタン、ペンタメチレンクロロブロミド等のハロゲン化炭化水素系溶剤を用いることが可能である。
【0026】
また、上記有機溶媒としては、アミルアルコール、アリルアルコール、イソアミルアルコール、イソブチルアルコール、イソプロピルアルコール、ウンデカノール、エタノール、2-エチルブタノール、2-エチルヘキサノール、2-オクタノール、n-オクタノール、グリシドール、シクロヘキサノール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、n-デカノール、テトラヒドロフルフリルアルコール、α-テルピネオール、ネオペンチルアルコール、ノナノール、フーゼル油、ブタノール、フルフリルアルコール、プロパギルアルコール、プロパノール、ヘキサノール、ヘプタノール、ベンジルアルコール、ペンタノール、メタノール、メチルシクロヘキサノール、2-メチル-1-ブタノール、3-メチル-2-ブタノール、3-メチル-1-ブチン-3-オール、4-メチル-2-ペンタノール、3-メチル-1-ペンチン-3-オールといったアルコール類も挙げることができる。
【0027】
上記有機溶媒としては、さらにアニソール、エチルイソアミルエーテル、エチル-t-ブチルエーテル、エチルベンジルエーテル、エピクロロヒドリン、1,2-エポキシブタン、クラウンエーテル類、クレジルメチルエーテル、ジイソアミルエーテル、酸化プロピレン、ジイソアミルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジエチルアセタール、ジエチルエーテル、ジオキサン、ジグリシジルエーテル、1,8-シネオール、ジフェニルエーテル、ジブチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジベンジルエーテル、ジメチルエーテル、テトラヒドロピラン、トリオキサン、ビス(2-クロロエチル)エーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルメチルエーテル、フェネトール、ブチルフェニルエーテル、フルフラール、メチラール、メチル-t-ブチルエーテル、モノクロロジエチルエーテルといったエーテル・アセタール系溶剤も挙げることができる。
【0028】
上述の有機溶媒としては、アクロレイン、アセチルアセトン、アセトフェノン、アセトアルデヒド、アセトン、イソホロン、エチル-n-ブチルケトン、ジアセトンアルコール、ジイソブチルケトン、ジイソプロピルケトン、ジエチルケトン、シクロヘキサノン、ジ-n-プロピルケトン、ホロン、メシチルオキシド、メチル-n-アミルケトン、エチルメチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルシクロヘキサノン、メチル-n-ブチルケトン、メチル-n-プロピルケトン、メチル-n-ヘキシルケトン、メチル-n-へプチルケトンといったケトン・アルデヒド系溶剤も同様に用いることができる。
【0029】
本発明に用いることができる溶媒としては、さらにアジピン酸ジエチル、アジピン酸ジオクチル、アセチルクエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリブチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸アリル、アセト酢酸メチル、アビエチン酸メチル、安息香酸イソアミル、安息香酸エチル、安息香酸ブチル、安息香酸プロピル、安息香酸ベンジル、安息香酸メチル、イソ吉草酸イソアミル、イソ吉草酸エチル、ギ酸イソアミル、ギ酸イソブチル、ギ酸エチル、ギ酸ブチル、ギ酸プロピル、ギ酸ヘキシル、ギ酸ベンジル、クエン酸トリブチル、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、ケイ皮酸エステル、ケイ皮酸メチル、ケイ皮酸エチル、酢酸アミル、酢酸アリル、酢酸イソアミル、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、酢酸エチル、酢酸-2-エチルヘキシル、酢酸シクロヘキシル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、酢酸ベンジル、酢酸メチル、酢酸メチルシクロヘキシル、サリチル酸イソアミル、サリチル酸ベンジル、サリチル酸メチル、サリチル酸エチル、蓚酸ジアミル、蓚酸ジエチル、蓚酸ジブチル、酒石酸ジエチル、酒石酸ジブチル、ステアリン酸アミル、ステアリン酸エチル、ステアリン酸ブチル、セパシン酸ジオクチル、セパシン酸ジブチル、炭酸ジフェニル、炭酸ジメチル、乳酸イソアミル、乳酸エチル、乳酸メチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジメチル、γ-ブチロラクトン、プロピオン酸イソアミル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸ベンジル、プロピオン酸メチル、ホウ酸エステル類、マレイン酸ジオクチル、マレイン酸ジブチル、マロン酸ジイソプロピル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジメチル、酪酸イソアミル、酪酸イソプロピル、酪酸エチル、酪酸ブチル、燐酸エステル類といったエステル系溶剤も挙げることができる。
【0030】
上述の溶媒としては、エチレンカルボナート、エチレングリコール、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジアセタート、エチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコールモノアセタート、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエータル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセタート、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセタート、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセタート、エチレングリコールモノメトキシメチルエーテル、エチレンクロロヒドリン、1,3-オクチレングリコール、グリセリン、グリセリン1,3-ジアセタート、グリセリンジアルキルエーテル、グリセリン脂肪酸エステル、グリセリントリアセタート、グリセリントリラウラート、グリセリンモノアセタート、2-クロロ-1,3-プロパンジオール、3-クロロ-1,2-プロパンジオール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ポリプロピレングリコールといった多価アルコール及びそれらの誘導体を挙げることができる。
【0031】
さらに、上記した有機溶媒の混合溶媒を用いることもできる。
【0032】
図1に示す容器1としては、浸漬する導電性基板4が収容することができる大きさとすることができ、溶液3によって腐食などしない材質のものを用いることができる。例えば、ガラスやアクリル樹脂のものを用いることができる。
【0033】
本発明では、図1に示すように溶液3に導電性基板4を浸漬させ、導電性基板4の表面に絶縁分子2を結合させて分子膜を形成する場合、数時間~数日、浸漬させたままの状態を保持することで、分子膜を形成することができる。本発明では、上述したアルカンチオールのように自己組織化単一分子膜を形成する分子以外に対して、熱や電磁場などを制御し、分子間に作用する結合力などを調整することにより、基板表面に絶縁分子2が整然と並んだ絶縁分子膜を形成することができる。なお、熱や電磁場を加え、それを制御する装置としては、今まで知られたいかなる装置でも用いることができる。また、本発明においては、所定方向に延長分子を重合させて分子ワイヤを形成することができるのであれば、上記熱や電磁場を加えなくてもよい。
【0034】
図2は、自己組織化単一分子膜が形成された導電性基板4を、共役分子を含む溶液に浸漬させたところを示した図である。図2も、図1と同様、容器5は、導電性基板4を収容することができる大きさされ、腐食しないガラスやアクリル樹脂などからなる材質から製造されている。この容器5には、共役分子6を含む溶液7が収容され、その溶液7中に自己組織化単一分子膜が形成された導電性基板4が浸漬されている。なお、図2には、導電性基板4上にのみ共役分子6が示され、溶液7中に共役分子6が示されていないが、溶液7中にも共役分子6が含まれているものとする。本発明では、短時間、例えば、1~10分間、溶液7中に導電性基板4を浸漬させることにより、表面に共役分子6が結合し、絶縁分子2からなる単一分子膜内に共役分子6が埋め込まれた状態となる。これは、絶縁分子2間のわずかな隙間に、共役分子6が結合することにより生じるものである。また、数時間といったように浸漬時間を長くすると、多くの共役分子6が結合してしまうため、数分間とし、結合する共役分子6の数が制御される。本発明では、適切に所望の方向に延長分子が結合するよう、共役分子6の周りを適切に絶縁分子2で包囲した状態になるように浸漬時間を制御することができる。
【0035】
本発明に用いられる共役分子6は、導電性を有する不飽和結合をもつ分子であればいかなるものであってもよいが、例えば、アニリン、フェニレンスルフィド、フェニレンオキシド、ビニレンスルフィド、ピロール、フラン、チオフェン、セレノフェン、イソチアナフテン、ピリジン、フェニレン、ブタジエン、アセチレン、ジアセチレン、ナフタレン、アントラセン、ピレン、アズレン、チェニレンビニレン、アリレンビニレン、フェニレンビニレン、チオフェンビニレン、フリレンビニレン、ビニルアセチレン、チエニルピロール、フルオレン、カルバゾールおよびこれらの誘導体を挙げることができる。なお、共役分子は、π電子を持っており、このπ電子を持つことにより、電子が分子全体を動き回ることができるという性質を有するものである。
【0036】
また、本発明では、上述した絶縁分子2と同様、導電性基板4に化学結合することが好ましく、ヘテロ原子を含む共役分子6が好ましい。例えば、チオフェン、ピロール、アニリン、これらの誘導体を挙げることができ、具体的には2~20量体のオリゴチオフェンなどを挙げることができる。
【0037】
本発明に用いることができる共役分子6を分散させる溶媒としては、絶縁分子2を分散させる溶媒と同様の上述した溶媒を挙げることができる。
【0038】
図3は、延長分子を含む電解質溶液に、共役分子が結合した導電性基板を浸漬させ、導電性基板に電圧を印加しているところを示した図である。図3に示す実施の形態では、容器8に、延長分子9を含む電解質溶液10が入れられ、その電解質溶液10中に、共役分子6が結合した導電性基板4が浸漬され、導電性基板4が接続される作用電極11と参照電極12と対電極13とが、それぞれ一部が浸漬するように所定位置に配設されている。また、作用電極11および参照電極12は、電圧を印加することができる電源14、15に接続されている。本発明では、所定間隔で正電位パルスを印加することができるよう、パルス発生装置を設けることができる。
【0039】
本発明に用いることができる延長分子9としては、上述した共役分子6と同様のものを用いることができる。なお、本発明では、共役分子6と延長分子9とを異なる2種類の分子とすることができるが、1種類の分子としてもよい。延長分子9として、例えば、上述したオリゴチオフェンとは異なる炭素数2~20のアルキルチオフェンを挙げることができる。電解質溶液10に用いることができる電解質としては、例えば、塩酸、硫酸、過塩素酸、タンパク質、ポリメタクリル酸、塩化ナトリウム、塩化カリウム、テトラメチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレート、ナトリウムバークロレート(過塩素酸ナトリウム)、リチウムパークロレート、テトラブチルアンモニウムパークロレートを挙げることができるが、本発明では、その他いかなる電解質でも用いることができる。
【0040】
電解重合を行うため、作用電極11、参照電極12、対電極13を用いた装置を使用することができる。図4に示す装置は、参照電極12に対する作用電極11の電位を制御して電解を行うもので、作用電極11では酸化反応、対電極13では還元反応を生じるものである。本発明では、ポテンショスタットを用い、電流を一定にすることで、参照電極12の電位を基準として、作用電極11、対電極13の電位を参照電極12との電位差で表すことができる。例えば、ポテンシオンスタットが作用電極に0.5Vの電圧を印加した場合、実際の作用電極に印加された電位は、0.5Vと参照電極の電位との和となる。
【0041】
図3に示す実施の形態では、作用電極11に導電性基板4が接続されていて、導電性基板4に電圧を印加することができるようにされている。正電位が印加された導電性基板4は、電子を受け取るため、共役分子6および電解質溶液10中に分散する延長分子9が電気化学的に酸化され、共役分子6と延長分子9とが重合する。導電性基板4に正電位が印加され続けると、共役分子6に重合した延長分子9に、さらに別の延長分子9が重合し、導電性基板4から離れる方向にのみ延びる分子ワイヤを形成する。なお、電圧の印加を停止することにより、延長分子9の重合を停止することができる。本発明では、所定期間の正電位パルスを印加することにより、延長分子9の重合を調整することができ、所望の分子長の分子ワイヤを形成することができる。
【0042】
本発明において電位は、例えば、作用電極11に印加する電圧を1~3Vとすることができ、50~200msの正電位パルスを印加することができる。本発明では、印加するパルスの数に応じて、重合する延長分子9の数を制御することができ、その延長分子9の数により分子ワイヤの長さを決定することができる。本発明では、連続して導電性基板4に電圧を印加することもできるが、延長分子9の重合を調整し、所望の分子長とすることができる正電位パルスを使用することが好ましい。
【0043】
図4は、共役分子6を絶縁分子2内に埋め込んだところを示す断面図と、延長分子9が共役分子6に重合したところを示す断面図である。導電性基板4に絶縁分子2が2次元に広がるように結合し、その絶縁分子2内に埋め込まれるように、共役分子6が導電性基板4に結合している。各絶縁分子2は、一端が導電性基板4の表面に結合し、他端が導電性基板4から離れる方向に向けて延びている。共役分子6も同様に、一端が導電性基板4の表面に結合し、他端が導電性基板4から離れる方向に向けて延びている。また、共役分子6は、周囲を電気絶縁分子2に取り囲まれた状態とされており、延長分子9が、共役分子6の他端6aにのみ結合することができるようにされている。図3に示すように、電解質溶液10に導電性基板4を浸漬させ、導電性基板4に電圧を印加した直後の状態では、図4(a)に示すように、まだ、重合は行われておらず、延長分子9は電解質溶液10に分散するものの、共役分子6に引き寄せられている。その後、図4(b)に示すように、共役分子6の他端に延長分子9が重合し、周囲の絶縁分子2に比べ、分子長が長くなる。
【0044】
本発明の分子ワイヤは、直径が単一分子の直径と同じであり、共役分子6の長さ、延長分子9の長さ、電圧を印加する時間または正電位パルスを印加する回数に応じて、その長さが所望の長さとされている。分子ワイヤの直径は、共役分子6の径、延長分子9の径によっても異なるが、約1~50Åである。本発明では、異なる延長分子を含む電解質溶液10を複数用意し、各々において電解重合させることで、複数の種類の分子からなる分子ワイヤを製造することができる。また、分子ワイヤの長さも、数個の分子から構成して、例えば、約10~100Åのように短くすることで、トンネル効果による電子伝達が可能である。さらに、分子ワイヤは、不飽和結合を有するため、生体を構成する炭素や酸素などと結合しやすく、生体との良親和性を有する。
【実施例】
【0045】
上述したような容器および装置を使用して、所望の分子長の分子電線を形成した。まず、導電性基板4として、マイカに真空蒸着して金めっきしたものを使用し、絶縁分子2を含む溶液3として、5mmolのドデカンチオールを溶解したエタノール溶液を用い、導電性基板4を24時間、上記エタノール溶液に浸漬させ、導電性基板4の表面にドデンカンチオールの単一分子膜を形成した。
【0046】
次に、共役分子6を含む溶液7として、1μmolのオリゴチオフェン4量体((CS)SH)を溶解したクロロホルム溶液を用い、表面にドデカンチオールの単一分子膜を形成した導電性基板4を、上記クロロホルム溶液に、120秒浸漬させ、ドデカンチオール内にオリゴチオフェン4量体が埋め込まれるように、導電性基板4に結合させた。
【0047】
延長分子9としてオクチルチオフェン(CS(CHCH)を、溶媒としてアセトニトリルを、電解質としてテトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレートをそれぞれ用い、導電性基板4を接続した白金からなる作用電極11、白金からなる参照電極12、白金からなる対電極13を、それぞれの一部が溶液中に浸漬するように配設し、作用電極11に、1.5Vで、100msの正電位パルスを1回印加した。
【0048】
共役分子6を埋め込んだものと、上述した正電位パルスを印加し、延長分子9を共役分子6に結合させたものとを、走査型トンネル顕微鏡(STM)を使用し、観測される輝点の個数および高さを測定した。
【0049】
図5に、電解重合前後のSTM像による輝点の高さの分布を示す。白抜きの棒グラフは、電解重合前のSTM像による輝点の高さの分布を、黒塗りの棒グラフは、電解重合後のSTMによる輝点の高さの分布を示す。また、横軸は、輝点の高さ(Å)を、縦軸は、観測された輝点の数を示す。上記埋め込みにより、16個のオリゴチオフェン4量体が埋め込まれ、電解重合前に観測された輝点の高さは、4~9Åであった。電解重合後に観測された輝点に数は、17個で、輝点の高さは、4~18Åであり、10Å以上のものが、6個観測された。なお、STM像として観測された各輝点の大きさは、電解重合前後で、ほとんど変わらないことを見出すことができた。また、図5に示すように、電解重合により、長さ方向に重合することを見出すことができた。電解重合前後で、輝点の数が増加したのは、ドデカンチオールの単一分子膜に延長分子が埋め込まれたためと考えられる。
【0050】
また、それぞれを電気化学測定したところ、酸化電位が低電位にシフトすることが確認された。これらのことから、電気化学的に分子ワイヤが形成されることを見出すことができた。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の分子ワイヤは、直径数Å~数十Åであり、生体との良親和性があり、液中で動作することが可能であるため、神経などの生体電線や、導電性を有し、また、トンネル効果による電子伝達も可能であるため、半導体電線として利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】導電性基板を、電気絶縁分子を含む溶液に浸漬させたところを示した図。
【図2】自己組織化した単一分子膜が結合した導電性基板を、共役分子を含む溶液に浸漬させたところを示した図。
【図3】延長分子を含む電解質溶液に、共役分子が結合した導電性基板を浸漬させ、導電性基板に電圧を印加しているところを示した図。
【図4】共役分子を絶縁分子内に埋め込んだところを示した断面図と、延長分子が共役分子に重合したところを示した断面図。
【図5】電解重合前後のSTM像による輝点の高さの分布を示した図。
【符号の説明】
【0053】
1…容器
2…絶縁分子
3…溶液
4…導電性基板
5…容器
6…共役分子
7…溶液
8…容器
9…延長分子
10…電解質溶液
11…作用電極
12…参照電極
13…対電極
14…電源
15…電源
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4