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明細書 :オフセット低減機能をもつTOF距離センサ

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4238322号 (P4238322)
公開番号 特開2005-291985 (P2005-291985A)
登録日 平成21年1月9日(2009.1.9)
発行日 平成21年3月18日(2009.3.18)
公開日 平成17年10月20日(2005.10.20)
発明の名称または考案の名称 オフセット低減機能をもつTOF距離センサ
国際特許分類 G01S  17/10        (2006.01)
H01L  27/146       (2006.01)
FI G01S 17/10
H01L 27/14 A
請求項の数または発明の数 2
全頁数 8
出願番号 特願2004-108817 (P2004-108817)
出願日 平成16年4月1日(2004.4.1)
審査請求日 平成19年2月23日(2007.2.23)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304023318
【氏名又は名称】国立大学法人静岡大学
発明者または考案者 【氏名】川人 祥二
審査官 【審査官】大和田 有軌
参考文献・文献 特開2005-235893(JP,A)
特開2004-294420(JP,A)
特開平05-207375(JP,A)
川人祥二,“反転増幅器の負帰還を用いたアクティブピクセル回路とその応用”,映像情報メディア学会2003年年次大会講演予稿集(CD-ROM),2003年 8月 4日,p.20-2
Shoji Kawahito, et al.,“Active Pixel Circuits for CMOS Time-of-Flight Range Image Sensors”,Proceedings of SPIE,2004年 1月19日,Vol.5302,p.69-78
川人祥二、外1名,“反転増幅器を用いたTOF距離画像センサ”,映像情報メディア学会技術報告,2003年10月17日,Vol.27,No.59,p.13-16
Nobukazu Teranishi, et al.,“Partition Noise in CCD Signal Detection”,IEEE Transactions on Electron Devices,1986年11月,Vol.33, No.11,p.1696-1701
調査した分野 G01S 7/48 - 7/51
G01S 17/00 - 17/95
G01B 11/00 - 11/30
G01C 3/00 - 3/32
H01L 21/339
H01L 27/14 - 27/148
H01L 29/762
H04N 5/30 - 5/335
特許請求の範囲 【請求項1】
光源からの光を断続的に対象物に投射し、その反射光の遅れ時間から距離を計測する距離センサにおいて、対象物からの反射光を電荷に変換するフォトダイオード(PD)と、該受光素子からの信号電荷が入力される反転増幅器(AMP)と、第1のキャパシタ(C1)および該第1のキャパシタに直列に接続される第1のMOSトランジスタスイッチ(1)からなる第1の直列回路と、第2のキャパシタ(C2)および該第2のキャパシタに直列に接続される第2のMOSトランジスタスイッチ(2)からなる第2の直列回路と、前記フォトダイオード(PD)と前記反転増幅器(AMP)の入力間に設けられる第3のMOSトランジスタスイッチ(3)と、前記第1、第2及び第3のMOSトランジスタスイッチの開閉を制御する制御手段(4)とを備え、前記第1の直列回路を前記反転増幅器(AMP)の出力と入力間に接続し、かつ、前記第2の直列回路を前記反転増幅器(AMP)の出力と入力間に接続して負帰還増幅器を構成し、対象物からの反射光の遅れ時間に依存する信号電荷を前記第1および第2のMOSトランジスタスイッチ(1,2)の開閉により、前記第1のキャパシタ(C1)および前記第2のキャパシタ(C2)に配分することにより、前記第1および第2のキャパシタ(C1,C2)に蓄積された電荷から距離情報を得るとともに、前記第3のMOSトランジスタスイッチ(3)を前記第1もしくは前記第2のMOSトランジスタスイッチをONにするのと同時にONにすることによりオフセット電荷の影響を低減することを特徴とするオフセット低減機能をもつTOF距離センサ。
【請求項2】
前記制御手段(4)は、前記第1及び第2のMOSトランジスタスイッチ(1,2)のゲートに対し、ランプ波形の制御信号を与えることにより、前記第1及び第2のMOSトランジスタスイッチ(1,2)を徐々にオフさせることで、オフセット電荷の除去を行うことを特徴とする請求項1に記載のオフセット低減機能をもつTOF距離センサ。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
この発明は、光が対象物にあたって戻るまでの時間を計測して、対象物までの距離を測る技術に関する。
【背景技術】
【0002】
関連する従来技術としては、以下の文献がある。

【非特許文献1】R. Lange, P. Seitz, A. Biber, S. Lauxtermann, "Demodulation pixels in CCD and CMOS technologies for time-of-flight ranging", Proceedings of SPIE, Vol. 3965, pp. 177- 188, (2000)
【非特許文献2】Ryohei Miyagawa, Takeo Kanade, " CCD-based range-finding sensor", IEEE Trans. Electron Devices, vol. 44, no. 10, pp.1648-1652, (1997)
【0003】
非特許文献1記載の方式は、CCDとCMOSと一体化したプロセスで実現するものであり、20MHzの高い周波数の変調光を用いて、CCDの電荷転送を利用し、変調光と同期して2つのノードに高速に交互に電荷転送し、2つのノードへの電荷の配分比が変調光の遅れ時間に依存することを利用する。CCDとCMOSの混在プロセスが必要であるため、コストが高くなる。
非特許文献2記載の方式は、CCDの構造を利用し、パルス変調された変調光で発生した電荷を、2つのノードに交互に転送し、その配分比が、変調光の遅れ時間に依存することを利用する。これもCCDを利用するため、特殊な製造工程が必要となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0004】
本発明者が以前に提案した画素回路(先行技術)を図1に示す。本発明は、これの改良であり、オフセット低減機能をもつ画素回路である。これを図2に示す。また、これを用いた距離画像センサ全体の構成を図4に示す。
改良点は、図1のセンサのスイッチで表現している部分をMOSトランジスタで構成する場合に生じる問題点を解決するものである。
【実施例1】
【0005】
図2では、nチャネルMOSトランジスタを用いる場合を示している。MOSトランジスタスイッチは、これがオフする際、そのチャネルにたまった電荷をソース及びドレイン側に放出する。この電荷は、例えば信号φ1により制御されるMOSトランジスタスイッチ(1)を切ったときには、次に信号φ2により制御されるMOSトランジスタスイッチ(2)を入れたときにキャパシタC2(以下「C2」という)に取り込まれ、逆に信号φ2により制御されるMOSトランジスタスイッチ(2)を切ったときには、次に信号φ1により制御されるMOSトランジスタスイッチ(1)を入れたときにキャパシタC1(以下「C1」という)に取り込まれる。
【0006】
スイッチのトランジスタの特性が同じであれば、それらの量は同じであるので相殺されて問題は生じないのであるが、実際には、トランジスタのサイズ、しきい値電圧の違いなどによって、両者のバランスが崩れ、そのアンバランス分の電荷により、一方が正方向にたまり、他方が負方向にたまるという動作が生じる。これによって、φ1とφ2によりMOSトランジスタスイッチ(1)とMOSトランジスタスイッチ(2)を切り替える動作を繰り返すと、2つの出力電圧差が次第に大きくなり、ついには、反転増幅器(AMP)が飽和することになる。図2に示す構成は、この問題を解決するために、フォトダイオード(PD)と反転増幅器(AMP)の入力を切断するためのMOSトランジスタスイッチ(3)を設けたものである。
φRで制御されるMOSトランジスタはキャパシタC1,C2及びフォトダイオード(PD)にたまった電荷を初期化するためのものである。
【0007】
その動作タイミング図を図3に示す。パルス光照射の期間に着目する。最初、φ0,φ1,φ2及びφRで制御されるMOSトランジスタをオンにし、C1,C2及びフォトダイオード(PD)にたまった電荷を初期化する。図3では、φRを2回加えて、C1とC2の初期化を別々に行っているがこれらは同時に行ってもよい。タイミング発生回路の構成を簡単にするために、このように2回に分けている。
【0008】
その後、φ0とφ1を同時に"1"にし、それらが接続されたMOSトランジスタをオンにする。その状態でパルス光を受信すれば、発生した電荷はC1に取り込まれる。φ0がその後"0"にもどれば、フォトダイオード(PD)が反転増幅器(AMP)から切り離され、それ以降にフォトダイオード(PD)で発生した電荷は、フォトダイオード部(フォトダイオード及びその周辺の浮遊容量)にためられる。その次のタイミングで、パルス光はオフのままで、φ0とφ2を同時に"1"にすれば、フォトダイオード部にたまった電荷はC2に転送される。
このようにして、φ0で制御されるスイッチをオフするタイミングによって、φ0が"1"である期間に入射した光による電荷はC1に、φ0が"0"である期間に入射した光による電荷はC2に取り込まれることになり、光飛行時間測定法(TOF法)による距離画像計測に必要な動作が行える。
【0009】
光パルスにより発生した電荷の取り込みをN回行えば、C1,C2にためられる電荷Q1,Q2は、次式のようになる。
【数1】
JP0004238322B2_000002t.gif
【数2】
JP0004238322B2_000003t.gif

【0010】
ここで、Ipは、受信光により発生する光電流、Toは、光パルスの幅、Tdは光パルスの遅れ時間である。式(1)と(2)の和は、
【数3】
JP0004238322B2_000004t.gif
であるので、式(2),(3)より、受信光の遅れ時間及び対象物までの距離Lを次式のように求めることができる。
【0011】
【数4】
JP0004238322B2_000005t.gif
【数5】
JP0004238322B2_000006t.gif

【0012】
ここでcは光速である。反転アンプの出力には、Q1,Q2それぞれに対して、Q1/C1,Q2/C2なる信号電圧が現れるので、出力信号電圧V1,V2を用いて式(5)は次式のように表すことができる。
【数6】
JP0004238322B2_000007t.gif
c,Toが既知であるので、読み出した2つの出力電圧から、式(6)により距離を求めることができる。
以上は、φ1,φ2で制御されるスイッチにランプ状の電圧を加える例を示したが、その代わりに、φ1,φ2に加える制御パルスの電圧振幅を小さくして、電荷のインジェクション量を減らす方法なども考えられる。この場合、もしφ0で制御されるスイッチがなければ、スイッチのオン抵抗が高くなり、光パルスに対する応答性が悪くなり、距離分解能に影響を与えるが、φ0によって制御されるスイッチにより光パルスに対して高速に応答させることができる。
【実施例2】
【0013】
以上の動作において、φ1とφ2で制御されるMOSトランジスタをオフさせる際に、図3のタイミング図に示したように、ランプ信号により緩やかに傾斜を持たせてオフさせれば、MOSトランジスタのチャネルからアンプの入力側に注入される電荷を低減することができる。これは、ランプ波形により緩やかに変化させれば、トランジスタが弱反転状態になるまで、トランジスタのソース・ドレイン間が導通状態にあるため、アンプの負帰還の効果によって、トランジスタのチャネルに蓄えられた電荷の殆どが、C1に転送されるためである。
【0014】
これは次のように解釈することができる。負帰還によってアンプの入力部の電圧の変化を抑制する効果があるが、このことは、アンプの入力部の容量にたまっている電荷を変化させないように動作すると考えることができ、その結果スイッチのチャネルの電荷は、アンプの入力側ではなく、キャパシタ側に送られることになる。したがってチャネルからアンプの入力部側への電荷の注入は、トランジスタが弱反転領域に入り、トランジスタがオフしたとみなされる(すなわち、負帰還ループが消滅する)時点以降にチャネルに残っている電荷による成分の一部のみであり、これは強反転状態から電荷注入が起こる場合に比べてはるかに小さい。
【0015】
チャネルのポテンシャルと、電荷を水で置き換えたモデルで考えれば、以下のような説明になる。トランジスタのチャネル電荷の注入は、チャネル部のポテンシャルの丘に乗り上げた電荷がドレインとソースに落ち込むことによって起こる。アンプにより負帰還ループを形成しておきながら、ランプ波形によりゆっくりとチャネルのポテンシャルの丘を持ち上げれば、その丘が電荷による水面から顔を出すまでは、ソースとドレイン間は接続状態にある。このときチャネルのポテンシャルの上にある電荷は、ソース(アンプの入力側)またはドレイン側(容量側)に追いやられることになるが、負帰還ループの効果によって、その水面のレベルが変化しないように容量側の容器の底を押し下げることにように調整がなされる。つまり、チャネル部の電荷がチャネルからソースまたはドレイン側に追いやられることによる水面のレベルの変化は、容量の容器の底を押し下げることによってなされるため、その電荷は全てドレイン側の電荷の量(水の量)の変化となり、ソース側の電荷の量(水の量)は変化しない。
【0016】
しかしポテンシャルの丘が、水面から顔をだす(弱反転領域に入ることを意味する)と、ソースとドレイン側が切り離されるため、負帰還ループが消滅し、ソース側の水面調節効果はなくなる。したがって、ポテンシャルの丘の上に乗り上げた電荷の一部は、ソース側に入るため、これが残留するオフセット電荷となる。
このソース側つまり、アンプの入力部側に入った電荷は、次にC2を接続したときに、C2に取り込まれる。これは、C2を接続した状態から切り離し、次にC1を接続したときにも同じことが起こる。もし、C1とC2を接続するMOSトランジスタに特性ばらつき(チャネル長、チャネル幅、しきい値電圧)がなければ、注入される電荷の量は同じであるため、影響が相殺される。しかし、特性ばらつきがあると、C1側とC2側に取り込まれる電荷量に差が生じ、オフセット電荷となって影響する。このオフセット電荷は、ランプ波形を用いてφ1,φ2を制御するスイッチをオフすることで、弱反転領域からの小さい電荷に対するばらつきとすることができるため、大きな低減効果が得られる。
【実施例3】
【0017】
図4は、図2の画素回路を用いたTOF距離画像センサの全体の構成を示している。TOF画素回路は、図3の前半のTOF依存の電荷を検出するための期間に用いるTOFタイミング制御回路と、図3の後半の信号読み出しの期間に用いる垂直走査回路の両方に接続される。これらの制御回路は、図4では右と左に分けて配置しているが同じ側においてもよい。なお、これらは、一方の制御回路がTOF画素に接続されている場合は、他方は高インピーダンス状態になっていて信号の衝突がないようにする必要がある。
【0018】
TOF依存の電荷検出の際には、2次元に配置された全ての画素が一斉に同じタイミングで動作し、図3に示す制御信号を全ての画素に与えて動作させる。その後、TOF画素内のC1,C2にたまった電荷をアンプを用いて読み出す。読み出すために1つの水平ライン毎に、画素内のバッファアンプに与える画素選択信号を"1"にして選択し、φ1、φ2、φRを順番に与えて、C1の電荷による電圧、C2の電荷による電圧、アンプのリセット電圧を読み出し、カラムに設けたサンプルホールド回路(S/H)に記憶する。これらを水平走査し、順に読み出しながら、最終段でリセット電圧との差を取りながら出力することでノイズキャンセルを行う。なお、このノイズキャンセルは、カラムにおいて行うこともできる。
【0019】
背景光の除去は、TOFの繰り返しパルス光をオフした状態で、図3と同じ動作をさせ、フレーム単位で、TOF繰り返しパルス光を照射して得た出力との差を求めることで行うことができる。ただし、対象としているもの動きが、図3の1フレームのなかで十分小さいことが必要である。
なお、反転増幅器としては、図5に示すような回路が考えられる。図5(a)は、1段のカスコード接続を用いたソース接地カスコード増幅回路、図5(b)は、2段のカスコード接続を用いたソース接地カスコード増幅回路、図5(c)は、ソース接地アンプを用いてゲインを高くしたソース接地カスコード増幅回路である。バイアス電圧(Vbp1,Vbp2,Vbp3,Vbn1,Vbn2)には、すべてのトランジスタが定電流領域で動作するような電圧を与える。また、Vssには、基板(バルク)と同じ電圧、または基板よりも高い電圧に設定することも可能である。
【0020】
以上画像情報から距離情報を取り出すことを述べたが、本願構成によれば2つの容量に蓄積された信号V1およびV2を得て、この信号から距離情報を算出しているため、同時に輝度画像情報を得ることができる。つまり、式(1)のV1と式(2)のV2の和を求めれば、これが対象としている物体の輝度情報となるためである。
【産業上の利用可能性】
【0021】
比較的低コストで性能の高いCMOSイメージセンサ技術を用いて、距離画像センサが実現できるとともに、オフセットが低減できる利点を有する。また、距離画像情報とともに輝度画像信号を得ることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】TOF距離センサの画素回路(先行技術)を示す図
【図2】オフセット低減機能をもつTOF距離センサの画素回路を示す図
【図3】図2の回路の動作タイミング図
【図4】TOF距離センサを用いた距離画像センサ全体のブロック図
【図5】反転増幅器の例を示す図
【符号の説明】
【0023】
1 第1のMOSトランジスタスイッチ
2 第2のMOSトランジスタスイッチ
3 第3のMOSトランジスタスイッチ
PD フォトダイオード
AMP 反転増幅器
C1 第1のキャパシタ
C2 第2のキャパシタ
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4