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明細書 :量子化誤差を軽減する距離計測方法及び距離計測システム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4332629号 (P4332629)
公開番号 特開2006-038718 (P2006-038718A)
登録日 平成21年7月3日(2009.7.3)
発行日 平成21年9月16日(2009.9.16)
公開日 平成18年2月9日(2006.2.9)
発明の名称または考案の名称 量子化誤差を軽減する距離計測方法及び距離計測システム
国際特許分類 G01C   3/06        (2006.01)
G01B  11/00        (2006.01)
H04N   5/225       (2006.01)
FI G01C 3/06 110V
G01B 11/00 H
H04N 5/225 Z
請求項の数または発明の数 4
全頁数 7
出願番号 特願2004-221031 (P2004-221031)
出願日 平成16年7月29日(2004.7.29)
審査請求日 平成18年8月28日(2006.8.28)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304023318
【氏名又は名称】国立大学法人静岡大学
発明者または考案者 【氏名】橋本 岳
個別代理人の代理人 【識別番号】100079049、【弁理士】、【氏名又は名称】中島 淳
【識別番号】100084995、【弁理士】、【氏名又は名称】加藤 和詳
【識別番号】100085279、【弁理士】、【氏名又は名称】西元 勝一
【識別番号】100099025、【弁理士】、【氏名又は名称】福田 浩志
審査官 【審査官】須中 栄治
参考文献・文献 特開平09-049728(JP,A)
特開2001-221621(JP,A)
特開平05-107457(JP,A)
特開平03-042642(JP,A)
特開2002-090139(JP,A)
特開平03-196373(JP,A)
調査した分野 G01C3/00-3/32
G01B11/00-11/30
特許請求の範囲 【請求項1】
画素数が有限である撮像素子を備えたカメラの撮像画像から、三角測量法に基づき対象物までの距離を求める方法において、3台以上のカメラをカメラ間隔を固定して配置し、2つのカメラを選定し、この2つのカメラ画像により対象物までの距離を三角測量法により計測し、さらに他の組合せとなる2つのカメラを選定し、この組合せにより同じく対象物までの距離を三角測量法により計測し、これらの計測結果と既知の量子化誤差パターンとの対比により真の値との誤差を表す関数を作成し、この関数を最小とするパラメータにより対象物までの距離を算出してなる量子化誤差を軽減する距離計測方法。
【請求項2】
対象物から距離計側のための対応点を2以上抽出し、これら複数の対応点から計測した距離情報に基づき距離を求めることを特徴とする請求項1に記載の量子化誤差を軽減する距離計測方法。
【請求項3】
カメラの撮像素子に空間ローパスフィルターを設け、対象物の測定点となる対応点を撮像素子の2画素以上で捉えて、その重心から距離を求めることを特徴とする請求項1に記載の量子化誤差を軽減する距離計測方法。
【請求項4】
画素数が有限である撮像素子を備えたカメラを3台以上備えた距離計測システムであって、前記カメラはカメラ間隔を固定して配置されており、
前記カメラのうち2つを選定し、この2つのカメラ画像により対象物までの距離を三角測量法により計測し、さらに他の組合せとなる2つのカメラを選定し、この組合せにより同じく対象物までの距離を三角測量法により計測し、これらの計測結果と既知の量子化誤差パターンとの対比により真の値との誤差を表す関数を作成し、この関数を最小とするパラメータにより対象物までの距離を算出してなる量子化誤差を軽減する距離計測システム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のカメラを用いて三角測量法により対象までの距離を計測する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
三角測量法により距離計測をおこなう際に用いるカメラが、CCDカメラなどの有限の画素からなる受光部を備えている場合には、対象物(ターゲット)の検出位置が離散的に存在し、量子化誤差(位置におけるサンプリング誤差)が発生する。
第1図にこれを模式的に示す。第1図において、カメラ1から放射状に伸びる4本の撮像線(p11,p12...)はカメラ1の検出素子(受光部)の1つずつに対応している。同様にカメラ2から伸びる4本の撮像線(p21,p22...)はカメラ2の検出素子の1つずつに対応している。
ターゲットの真の位置3が撮像線p11と撮像線p21に対応した検出素子に捉えられると、その位置はx11と推定される。ターゲットとカメラの相対位置が変化し、撮像線p11と撮像線p22とにより検出されると、その位置はx12と推定される。これらの位置は真の位置からやや外れている。画素を高密度に配置しても、量子化誤差により推定位置4は真の位置の前後にばらつく。このように離散的な検出では、量子化誤差が必ず存在する。
3次元計測において発生する誤差の中で、量子化誤差は解決が困難である。一般的には、計測距離の5%程度の計測誤差が発生すると言われている。
この誤差は、カメラの解像度・画角、カメラ間隔等に依存する。つまり、解像度が高く画角が小さい(望遠)場合には計測誤差は小さくなる。また、カメラ間隔が離れている場合には計測誤差が小さくなる(但し、対象の見え方が変化するので、対応点誤差が大きくなるという問題が生じる)。
改善策として、事前に作成してあった量子化誤差パターンと計測時の交点を比較し、その対比から真の距離を求める技術が、特許文献1に示されている。

【特許文献1】特開2002-90139号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
目的は3次元計測において、高精度化を実現することである。具体的には、多数のカメラを用いて、3次元計測において発生する量子化誤差の影響を低減する。
さらに、対応点を求めるための方法についても提案する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0004】
一般に量子化誤差により、交点(計測点)は真の値の前後に発生する(第1図参照)。
そこで次の2つの方法により、真の値を計測することを考える。
方法1:
多数の交点を計測しそれらの平均を求める。交点が真の値の前後に等分に配されるほど平均結果は真の値に近づく。この方法を「平均法」と呼ぶ。
このために、ある程度の交点数を計測することが望ましい。
方法2:
交点のパターンは計測システムのパラメータ(ターゲット位置、カメラ間隔、その他)により決まる。従って、その交点のパターンを事前に記憶しておき、 計測時には計測した交点をパターンと比較することにより、計測システムのパラメータを推測する。これを、「比較法」と呼ぶ。
【実施例1】
【0005】
まず、平均法について述べる。
第2図はコンピュータシミュレーションにより、カメラ配置による量子化誤差の発生の様子を検討した結果である。横軸はカメラとターゲットの真の距離、縦軸はカメラとターゲットまでの計測した距離である。凡例(●■▲)は、1組のカメラを、距離計測方向に直角なカメラ配置方向に、1cm単位でずらしたグラフを表す。カメラ間距離は1.6mである。
この図において、カメラ間距離1.6mに対して距離が30m程度と長いため、計測限界(横軸が変化しても縦軸が変化しないこと)が発生しているのが読み取れる。
着目すべきことは、対象がカメラ配置方向に1cm相対移動しただけで、交点の発生の様子が変化することである。このため、カメラを移動させるか、または多数配置してそれらの交点を平均することで、真値に近い値を求めることが可能となる。
これは、2台のカメラで計測した後、両カメラをカメラ配置方向に移動させて、再度計測することによってでも良いし、一方のカメラのみを移動させて再度計測することによっても良い。また、3台以上のカメラを配置し、これらのカメラから2台を選択して計測した後、他の組合せにより再度計測することによっても良い。
好ましくは、カメラ間距離及びカメラ相互の撮像方向が変化しないように、複数のカメラを変形しない台座に固定する。
計測装置としては、カメラ配置方向に複数のカメラを密に右群と左群として配置したカメラシステムを作成する。左カメラ群から選定した1台と右カメラ群から選定した1台の計2台のカメラから求められる交点の平均を求めることにより、1組のカメラでの計測結果より精度が向上できる。
このカメラシステムとしては、単体のカメラを複数個密に配置する、あるいは、1枚の撮像素子の上に複数のレンズを付加したカメラが考えられる。この配置は直線上に複数台配置することを基本とするが、同一平面上に複数台配置するものであっても良い。また計算が複雑になるが全くばらばらに配置するものであっても良い。
【0006】
第3図にカメラ台数と計測精度との関係を示す(コンピュータシミュレーションによる)。カメラ配置は、単体カメラを上下左右10cm間隔で正方形に4個配置したものをカメラ群とし、左右に配置する。左と右のカメラ群は中心距離で80cm離してある。第3図(a)はカメラ2台で計測した1交点の値、第3図(b)は、カメラ4台で計測して求めた4交点の平均値、第3図(c)は、カメラ8台で計測して求めた16交点の平均値をプロットしたものである。
グラフの横軸は真の距離(距離そのものではなく、ステップ数として表した)、縦軸は計測した距離である。このグラフではできるだけ直線のギザギザが少ない方が良好な結果である。このグラフより、カメラ台数を増加させると結果が改善されることがわかる。
以上では、2台のカメラの交点を求めてからその平均を求めるものとして述べた。これに代えて、多数のカメラの視線の交差点として交点を求めることも可能である。つまり、視線は方程式で表現できるので、ある点から視線への垂線を求める方程式を立て、これら多数の方程式の自乗誤差を小さくする解として交点を求めることも考えられる。
なお、この方法では単体カメラの画素数は低くても、多数のカメラを用いることで計測精度を向上できる。つまり、赤外線カメラのような低分解能のカメラを用いることが可能である。
【実施例2】
【0007】
次に比較法について述べる。これはあらかじめ実測したデータを基に、計測したデータと比較することにより、真の距離を求める方法である。
○事前に対象データ(量子化誤差パターン)を蓄積するステップ
複数のカメラを用いて、対象物体の座標を計測する。
パラメータは次の通りである:
・ターゲットの3次元位置(距離、水平、垂直位置)、大きさ、形状。
・カメラの3次元位置(カメラ間距離)、カメラ台数、画角、方向、分解能。
なお、量子化誤差パターンは実測をもとにして、計算によってパターン数および精度を向上させることが可能である。
○計測時の処理ステップ
量子化誤差パターン蓄積時と同様のカメラシステムを用いて、対象物体の座標(交点)を計測する。それを上記の対象データと比較する。
事前に作成してあった量子化誤差パターンと計測時の交点を比較する際、多数のカメラを用い、各カメラの組合せごとに距離の差分(誤差)を求めることにより、精度が向上する。また、差分を関数で近似して最小点を求める。このことにより、計測精度をさらに向上できる。また、量子化誤差パターンと比較することにより、対応点誤差が生じたことを検出できる。
【0008】
具体的手順は以下のとおりである。
1)あらかじめターゲットへの真の距離を知った上で複数のカメラの組合せで距離を計測する。この際に真の距離と対応させて、計測された距離を記録する(誤差パターンの作成)。
あるカメラの組合せにより、予め既知の距離を測定する。たとえば、10mの距離にあるターゲットを計測したときの計測値をd10,11mの距離にあるターゲットを計測したときの計測値をd11,12mの距離にあるターゲットを計測したときの計測値をd12と仮定する。この計測値は、カメラの分解能(画素ピッチ,レンズ焦点距離)が既知であれば、カメラ配置を設定し、これらデータに基づき机上で算出することも可能である。
【0009】
2)距離が未知であるターゲットを対象に距離を測定すると、カメラの組合せに対応して距離の計測値が得られる。組合せごとに誤差パターンと対比させ、誤差の最小値を与える距離を演算し、それらの平均値から真の距離を得る(真の距離の算出)。
未知である距離Dxを計測したときの計測値がmで与えられるとき、P10=(d10-m) ,P11=(d11-m) ,P12=(d12-m) なる誤差(の自乗)が得られる。横軸(x)に距離を、縦軸に誤差の自乗をとり、これらの点を結ぶ2次曲線を描く。この例では、既知の計測点が3点であるからこれらの点を結ぶ2次曲線f(x)=ax +bx+cが存在する(f(10)=P10,f(11)=P11,f(12)=P12の連立方程式を解くことにより求めることができる)が、4点以上の場合には最小自乗法などにより近似曲線としての2次曲線を得る。この2次曲線は下に凸であり、最小値を有する。演算により求めることができる誤差の最小値を与える距離が仮に求め得た真の値である。
さらに他のカメラの組合せにより算出される仮の真の値(予測値)が求められる。これらの仮の真の値から、平均値演算あるいは誤差最小となるカメラの組合せから得られた値を真の値とするなどの統計的処理を行う。
実際は複数のカメラの組合せそれぞれについて最も近い値を求めるのであるから、すべて同一の真の値に収斂するものではない。したがって、計測値に基づき統計的処理により真の値を得るようにすることが好ましい。
また、ここでは誤差の自乗を最小にするものとして真の距離を求める方法を提案したが、単に誤差の値をプロットし、これらの値を結ぶ直線を求めて誤差0の直線との交点を真の値とするものであってもよい。
さらに、未知の距離に対する計測値のうち、上記近似曲線や近似直線からあまりにも離隔するものは、対応点誤差(対応点を見誤ったもの)として除外して、再度近似曲線や近似直線を作図するようにしてもよい。
【0010】
3)上記の例では、あるカメラの組合せにより得られた計測値から求めた真の値の予測値(仮の真の値)を、他のカメラの組合せにより得られる予測値と平均化することを述べた。
しかしながら、他の演算手法も考えられる。たとえば、あるカメラの組合せによる誤差の自乗、すなわち(既知の距離における計測値-未知の距離の計測値)2 を他のカメラの組合せによる誤差の自乗と加算し、既知の距離における誤差の自乗の和とする。この値を横軸(z)に距離を、縦軸に誤差の自乗の和をとるグラフ上に作図する。その後これらの点を結ぶ2次曲線を描く。このようにして作図したのが第4図である。第4図では、縦軸に誤差の自乗の和として「差分値の和」としたが、概念的に差のあるものではない。既知の距離はz軸方向としてある。また、あるカメラとターゲットとを結ぶ直線を設定し、それと直交するカメラ配置方向への座標軸をx軸として表し、ターゲットの偏移を計測するものとした。いくつかのカメラを垂直方向に配置すれば、この偏移はターゲットの水平面からの高さを表すこととなる。当然のことながら、あらかじめ既知の偏移をもたせて作成した誤差パターンが必要となる。
【実施例3】
【0011】
ここまで、1つのカメラからターゲットに向けて1本の視線ベクトルが描写できるものとして説明した。実際にはターゲットは複数の画素に投影されるため、視線ベクトルは1本ではない。これを解決するため画素上におけるターゲットの重心を求めて対応点(計測点)と考えることにする。しかしこの場合には、1つのターゲットに1つの重心しか求めることができない。
これに対して、ターゲットの特徴点たとえばターゲットのエッジの交わる点(頂点)を算出して対応点として使用する。このようにすれば、1つのターゲットに複数の対応点を設定でき、カメラの数が少なくても精度が向上する。この場合には、対応点を分離するために画像処理の技術が必要であることはいうまでもない。ターゲットが矩形である場合には、ターゲットのエッジに対する直線を求めてそれらの直線の交点を算出して対応点として使用することが好ましい。
【実施例4】
【0012】
量子化誤差を改善する策として、ターゲットが撮像素子上で多数の画素に投影されている場合には、画素の重心を求めることで、カメラの解像度(画素数)を擬似的に向上させて量子化誤差を低減することができる。これは撮像素子の画素間にサブピクセルがあたかも存在するかのようであり、擬似的に高解像度の撮像素子を用いたものとみなせる。
しかし、計測距離が長くなるとターゲットは小さくなり、構成される画素数が小さくなる。特に、ITS(Intelligent Transport Systems)で用いられるカメラでは、レンズの画角が広くかつ遠距離であるため、ターゲットを構成する画素は撮像面上で数画素となり、サブピクセルの効果を発揮できないことが多い。
このような場合、カメラの撮像素子に空間ローパスフィルタを設け、ターゲットの測定点となる対応点を撮像素子の2画素以上で捉えるようにする。このようにして捉えられた対応点の重心を計算することにより、擬似的に高解像度の撮像素子を用いたものとみなせるから、量子化誤差を低減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0013】
応用として、ITS、製造・組み立て業、農業、警備、介護・福祉など多くの分野に適用することが考えられる。企業化または商品化のイメージは次の通りである。
車間距離計測、自律移動ロボットの位置計測、ロボットアーム等の位置計測、農産物の位置計測、ロボット搭載用ビジョン装置(外界認識、部品選別)、その他3次元位置計測一般に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】量子化誤差の発生を示す図
【図2】カメラ6台による3組の計測結果を示す図
【図3】平均化による改善を示す図。(a)は1交点、(b)は4交点の平均、(c)は16交点の平均である
【図4】計測誤差(差分)を示す図
【符号の説明】
【0015】
1,2 カメラ
3 ターゲット(対象物)の真の位置
4 ターゲット(対象物)の推定位置
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3