TOP > 国内特許検索 > コレステロール含有膜のコレステロール含量の測定方法 > 明細書

明細書 :コレステロール含有膜のコレステロール含量の測定方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4403278号 (P4403278)
公開番号 特開2006-349660 (P2006-349660A)
登録日 平成21年11月13日(2009.11.13)
発行日 平成22年1月27日(2010.1.27)
公開日 平成18年12月28日(2006.12.28)
発明の名称または考案の名称 コレステロール含有膜のコレステロール含量の測定方法
国際特許分類 G01N  33/92        (2006.01)
G01N  33/48        (2006.01)
G01N  33/483       (2006.01)
FI G01N 33/92 A
G01N 33/48 P
G01N 33/483 C
請求項の数または発明の数 5
全頁数 7
出願番号 特願2006-062470 (P2006-062470)
出願日 平成18年3月8日(2006.3.8)
優先権出願番号 2005148119
優先日 平成17年5月20日(2005.5.20)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成18年10月2日(2006.10.2)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504145364
【氏名又は名称】国立大学法人群馬大学
発明者または考案者 【氏名】竹内 利行
【氏名】穂坂 正博
個別代理人の代理人 【識別番号】100100549、【弁理士】、【氏名又は名称】川口 嘉之
【識別番号】100090516、【弁理士】、【氏名又は名称】松倉 秀実
【識別番号】100089244、【弁理士】、【氏名又は名称】遠山 勉
【識別番号】100126505、【弁理士】、【氏名又は名称】佐貫 伸一
審査官 【審査官】白形 由美子
参考文献・文献 特開2005-095172(JP,A)
特表2004-531227(JP,A)
特開2003-344419(JP,A)
特開平06-205684(JP,A)
Cadigan KM, Spillane DM, Chang TY.,Isolation and characterization of Chinese hamster ovary cell mutants defective in intracellular low density lipoprotein-cholesterol trafficking.,J Cell Biol,1990年 2月,Vol.110,No.2,p295-308
大熊勝治,細胞内pH測定法 蛍光法 細胞内小器官のpH(FD法,AO法,含む:単離小器官のpH),生体の科学,日本,1988年 9月,Vol.39,No.5,p390-393
調査した分野 G01N 33/48-33/98
JSTPlus(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
アクリジンオレンジ及び/又はDAMP(N-(3-((2,4-dinitrophenyl)amino)propyl) -N-(3-aminopropyl)-methylamine)を用いることを特徴とする、コレステロール含有膜のコレステロール含量の測定方法。
【請求項2】
コレステロール含有膜が細胞内小器官の膜である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
さらに、液胞型H+-ATPase阻害剤をネガティブコントロールとして用いる、請求項1または2に記載の測定方法。
【請求項4】
アクリジンオレンジ及び/又はDAMPを含むコレステロール含有膜のコレステロール含量の測定用キット。
【請求項5】
さらに、液胞型H+-ATPase阻害剤を含む、請求項4に記載のキット。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、コレステロール含有膜のコレステロール含量の測定方法に関する。本発明はまた、コレステロール含有膜のコレステロール含量を測定するためのキットに関する。
【背景技術】
【0002】
コレステロールは主に肝臓からリポ蛋白質LDLが血流を通って末梢組織の細胞に運ぶ。末梢組織からはHDLによって過剰なコレステロールが肝臓に運ばれる。さらにコレステロールは末梢組織の細胞でも合成され、スタチンはこの合成経路の律速酵素HMG-CoA reductaseを阻害する。細胞内症器官膜のコレステロール分布が異なるのは、単にその生体膜の強度や流動性の違いを生ずるためだけではなく、特定のコレステロール組成膜に特異的に蛋白が集積し、小器官の機能発現を制御するためでもある。しかし、末梢の細胞内でコレステロールがどのように分布しているのかはよくわかっていない。言い換えれば、細胞内コレステロール分布を測定する簡便な方法が必要である。
アクリジンオレンジやDAMPは、内分泌顆粒、リソゾームなどの細胞内小器官内に酸性pH依存的に取り込まれ、発色するので、その強度から細胞内小器官内のpH測定に用いられていた。しかしながら、この場合、小器官生体膜のコレステロール組成は問題視されていなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、コレステロール含有膜のコレステロール含量の測定方法を提供することを課題とする。本発明はまた、コレステロール含有膜のコレステロール含量の測定キットを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者は上記課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、細胞内小器官内のpHに加えてその生体膜のコレステロール組成によってpH測定プローブの取込が左右されることを発見した。すなわち、アクリジンオレンジ及び/又はDAMPが、コレステロール含有膜のコレステロール含量に応じてコレステロール含有膜を透過するという性質を有すること、それにより、アクリジンオレンジ及び/又はDAMPをコレステロール含有膜のコレステロール含量の測定に用いることができることを見出して本発明を完成するに至った。
【0005】
すなわち、本発明は以下の通りである。
(1)アクリジンオレンジ及び/又はDAMP(N-(3-((2,4-dinitrophenyl)amino)propyl)-N-(3-aminopropyl)-methylamine)を用いることを特徴とする、コレステロール含有膜のコレステロール含量の測定方法。
(2)コレステロール含有膜が細胞内小器官の膜である、(1)の方法。
(3)さらに、プロトンポンプ阻害剤をネガティブコントロールとして用いる、(1)または(2)の測定方法。
(4)アクリジンオレンジ及び/又はDAMPを含むコレステロール含有膜のコレステロール含量の測定用キット。
(5)さらに、プロトンポンプ阻害剤を含む、(4)のキット。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、細胞内小器官の生体膜などのコレステロール含有膜のコレステロール含量を簡便に測定することができる。

【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下に本発明を詳しく説明する。
本発明の方法は、アクリジンオレンジ及び/又はDAMPを用いることを特徴とする、コレステロール含有膜のコレステロール含量の測定方法である。
【0008】
アクリジンオレンジは式(I)の構造を有する化合物である。アクリジンオレンジは化学合成してもよいし、市販のものを用いてもよい。本発明の方法では、細胞培養液などに、アクリジンオレンジを、通常の細胞染色に用いられる濃度、例えば、1~50 μg/mlの濃度になるように添加することにより、細胞内小器官の膜コレステロール含量を測定することができる。なお、アクリジンオレンジは蛍光強度などに基づいてその量を測定することができる。
【化1】
JP0004403278B2_000002t.gif

【0009】
DAMPは、N-(3-((2,4-dinitrophenyl)amino)propyl)-N-(3-aminopropyl)-methylamineの略語であり、式(II)の構造を有する化合物である。DAMPは化学合成してもよいし、市販のものを用いてもよい。本発明の方法では、細胞培養液などに、DAMPを、通常の細胞染色に用いられる濃度、例えば、10~100 μMの濃度になるように添加することにより、細胞内小器官の膜コレステロール含量を測定することができる。なお、DAMPは抗DAMP抗体などを用いてその量を測定することができる。
【化2】
JP0004403278B2_000003t.gif

【0010】
本発明の方法では、アクリジンオレンジ又はDAMPがコレステロール含量に応じて膜を透過するという性質を利用する。すなわち、アクリジンオレンジ又はDAMPの膜透過性を指標にして、膜のコレステロール含量を測定する。
アクリジンオレンジはコレステロール含量が約20~30 mol% の細胞膜を、DAMPは約60~70 mol%の細胞膜を選択的に通過する。したがって、例えば、アクリジンオレンジが透過し膜内部がアクリジンオレンジによって染色された場合は、その膜のコレステロール含量は約20~30 mol%であると判定することができる。なお、アクリジンオレンジは一般的に酸性条件下で蛍光を発するため、アクリジンオレンジによるコレステロール含量の測定対象は、好ましくは内部が酸性の細胞内小器官やリポソームなどの小胞である。ただし、蛍光以外の検出法を用いることもできるため、酸性条件に限定はされない。
また、DAMPが透過し膜内部がDAMPに染色された場合は、その膜のコレステロール含量は約60~70 mol%であると判定することができる。
本発明の方法によれば、ミトコンドリア、核、分泌顆粒、神経様小胞、リソゾームなどの細胞内小器官の膜に含まれるコレステロール含量を測定できる。また、人工リポソーム
の膜のコレステロール含量を測定又はモニターすることもできる。
細胞内コレステロール組成は粗面小胞体からゴルジ装置を経て細胞膜に向かって増加し、細胞膜では 20~30 mol% の組成を示す。このコレステロール組成が低下すると内分泌顆粒の形成が減少し、その結果ホルモン分泌低下が起こる。したがって、本発明の方法によって細胞内小器官膜のコレステロール含量を測定することにより、ホルモン分泌低下などを検出することもできる。
また、アクリジンオレンジ又はDAMPを用いて膜のコレステロール含量を測定する場合、これらはプロトンポンプ阻害剤が存在すると膜に取り込まれなくなるため、プロトンポンプ阻害剤をネガティブコントロールとして使用することができる。プロトンポンプ阻害剤としては、例えば、バフィロマイシンA1などの液胞型H+-ATPase阻害剤などが挙げられる。
【0011】
本発明は、また、アクリジンオレンジ及び/又はDAMPを含むコレステロール含有膜のコレステロール含量測定キットを提供する。該キットは、それがアクリジンオレンジ及び/又はDAMPが膜のコレステロール含量を測定するためのものである旨、及びその測定方法に関するプロトコルを記載した使用説明書を含むキットであることが好ましい。また、本発明のキットは抗DAMP抗体などの構成成分を含むものであってもよい。なお、本発明のキットには上記のプロトンポンプ阻害剤が含まれてもよい。

【実施例】
【0012】
以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。もっとも、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0013】
1.pH 測定プローブを用いた コレステロール含量の評価
分泌顆粒膜の脂質組成をもつリポソームの作り方
クロロホルムに溶けている各種リン脂質とコレステロールを、モル比でホスファチジルコリン:ホスファチジルエタノールアミン:ホスファチジルセリン:ホスファチジルイノシトール:スフィンゴミエリン:コレステロール=6.2:17.7:3.6:1.0:7.5:64になるように混和し、窒素ガスで乾燥後、緩衝液 50 mM HEPES (pH 7.4), 0.1 M NaCl, もしくは 50 mM MES (pH5.5), 0.1 M NaClを加えた(コレステロールを473 μg加えた時トータル2 mlの上記緩衝液で混和する)。これを超音波処理した後、10000 x gで遠心し、上清を分泌顆粒膜組成をもつリポソームとして用いた。コレステロール組成の異なるリポソームを作成する場合、コレステロール量を変え、そのモル比に応じて他の脂質のモル比を増減させて、作製した。
【0014】
2.アクリジンオレンジによるリポソームの染色
上記で作製した各コレステロール含量のリポソーム10 μlと、10 μlの50 mM HEPES (pH 7.4), 0.1 M NaClもしくは 50 mM MES (pH5.5), 0.1 M NaClに溶かした10 μg/ml のアクリジンオレンジを混和し、蛍光顕微鏡で観察した。結果を図1に示した。それによると、リポソーム内部がpH5.5のときにアクリジンオレンジによる蛍光が観察され、アクリジンオレンジの蛍光強度はリポソーム膜のコレステロール含量が20~30mol%のときに最も強かった。
分泌顆粒は約45 mol%のコレステロール含量を示す。これに対し、この分泌顆粒をコレステロール除去剤であるmethyl-β-cyclodextrin(MβCD)で処理し、コレステロール含量を22 mol%に減らすと、アクリジンオレンジの取り込みが、約22 mol%のコレステロール含量を示す神経小胞と同様の取り込み量を示す(図4)。このことからも、アクリリジンオレンジが、膜のコレステロール含量依存的に取り込まれ、膜内部が染色されることがわかった。
【0015】
3.DAMP のリポソームへの取り込み
上記で作製した各コレステロール含量のリポソーム150 μlと、150 μlの50 mM HEPES (pH 7.4), 0.1 M NaClに溶かした120 μM のDAMPを混和し、37°C 60分間暗所でインキュベーションした。その後300 μl のoptiprep (GIBOCO社) と混ぜて遠心チューブに入れ、更に上層50 mM HEPES (pH 7.4), 0.1 M NaClで稀釈した30%のoptiprepをのせた。これを500,000 x g、4℃で 1 時間遠心し、上層100 μl を回収した。このうち5 μl を PVDF (polyvinylidene difluoride) 膜に滴下し、膜上のDAMPを抗DAMP抗体と結合させた後、結合した抗体量をECL法(Enhanced Chemi-Luminescence method)で検出した。結果を図2に示した。それによると、膜透過したDAMPの量はリポソーム膜のコレステロール含量が65%のときに最も高かった。
【0016】
4.生細胞を用いたアクリジンオレンジによる染色
MIN6細胞(マウス膵β細胞由来)を2日間培養後、5 μg/ml のアクリジンオレンジをグルコース濃度が2.2mMまたは22mMの培養液に混ぜ、10分間培養した。細胞をカルシウム、マグネシウムを含まないHBSS buffer (5mM KCl, 0.4 mM KH2PO4, 137 mM NaCl, 4 mM NaHCO3, 0.3 mM Na2HPO4, pH 7.4)で三回洗い、顕微鏡で観察した。結果を図3に示した。それによると、細胞のグルコース濃度が2.2mMと低いときに、アクリジンオレンジによる染色が顕著であった。なお、この染色パターンはGABA(γ-アミノ酪酸)の染色パターンと類似しており、アクリジンオレンジによりGABAを含むシナプス様小胞が染色されていることが考えられた。
また、5 μg/ml のアクリジンオレンジと同時に 1 μMのバフィロマイシンA1を添加したときはアクリリジンオレンジによる染色は見られなかった。このことから、バフィロマイシンA1がネガティブコントロールとして使用できることがわかった。
【0017】
5.生細胞を用いたDAMPによる染色
MIN6細胞を2日間培養後、60 μM DAMPをグルコース濃度が2.2mMまたは22mMの培養液に混ぜ、更に1時間培養した。細胞を4% paraformaldyhydeで固定した後、抗DAMP抗体でDAMPが取り込まれたオルガネラを染色、蛍光顕微鏡で観察した。結果を図3に示した。これにより、DAMPによりインスリンなどのホルモンを含む分泌顆粒が染色されていることが考えられた。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】各コレステロール濃度の膜に対するアクリジンオレンジの透過性を示す図。
【図2】各コレステロール濃度の膜に対するDAMPの透過性を示す図。
【図3】アクリジンオレンジ又はDAMPによるMIN6細胞の染色結果を示す図(写真)。
【図4】コレステロール除去剤添加時、非添加時におけるアクリジンオレンジの膜透過性を示す図。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3