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明細書 :パルス波高整列放射線位置検出器

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4332613号 (P4332613)
公開番号 特開2004-132930 (P2004-132930A)
登録日 平成21年7月3日(2009.7.3)
発行日 平成21年9月16日(2009.9.16)
公開日 平成16年4月30日(2004.4.30)
発明の名称または考案の名称 パルス波高整列放射線位置検出器
国際特許分類 G01T   1/20        (2006.01)
C09K  11/00        (2006.01)
C09K  11/79        (2006.01)
H01L  31/09        (2006.01)
FI G01T 1/20 B
G01T 1/20 F
G01T 1/20 G
C09K 11/00 E
C09K 11/79 CPR
H01L 31/00 A
請求項の数または発明の数 10
全頁数 11
出願番号 特願2002-300125 (P2002-300125)
出願日 平成14年10月15日(2002.10.15)
審査請求日 平成17年10月13日(2005.10.13)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000004455
【氏名又は名称】日立化成工業株式会社
【識別番号】301032942
【氏名又は名称】独立行政法人放射線医学総合研究所
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
発明者または考案者 【氏名】住谷 圭二
【氏名】石橋 浩之
【氏名】村山 秀雄
【氏名】稲玉 直子
【氏名】山下 貴司
【氏名】大村 知秀
個別代理人の代理人 【識別番号】100059959、【弁理士】、【氏名又は名称】中村 稔
【識別番号】100067013、【弁理士】、【氏名又は名称】大塚 文昭
【識別番号】100082005、【弁理士】、【氏名又は名称】熊倉 禎男
【識別番号】100065189、【弁理士】、【氏名又は名称】宍戸 嘉一
【識別番号】100074228、【弁理士】、【氏名又は名称】今城 俊夫
【識別番号】100084009、【弁理士】、【氏名又は名称】小川 信夫
【識別番号】100082821、【弁理士】、【氏名又は名称】村社 厚夫
【識別番号】100086771、【弁理士】、【氏名又は名称】西島 孝喜
【識別番号】100084663、【弁理士】、【氏名又は名称】箱田 篤
審査官 【審査官】木下 忠
参考文献・文献 特開平11-142523(JP,A)
特開2000-056023(JP,A)
特開平01-229995(JP,A)
特開昭63-047686(JP,A)
特開平11-142524(JP,A)
特開平06-337289(JP,A)
村山秀雄、外12名,平成13年度次世代PET装置開発研究報告書,日本,放射線医学総合研究所,2002年 3月 1日,p6-11,22-37
調査した分野 G01T1/00-7/12
JSTPlus(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
2個以上のシンチレータ・セルを平面的に接合し、これを2段以上層状に重ねた多層シンチレータと、この多層シンチレータの最下層のシンチレータ層の各シンチレータ・セルの底面に接続された受光素子を含むパルス波高整列放射線位置検出器において、
放射線を吸収し光を発したシンチレータ・セルの位置を弁別する手段、及び
各シンチレータ・セルが発した光の前記受光素子による受光量を均一化する手段を設けたこと
前記受光素子による受光量を均一化する手段が、最上層のシンチレータ層に隣接するシンチレータ層のシンチレータ・セルの表面を粗面とすること、他のシンチレータ層のシンチレータ・セルの表面を鏡面とすること、最上層のシンチレータ層及びこれに隣接するシンチレータ層を除く他のシンチレータ層のシンチレータ・セル間に光反射材を設置すること、及びいずれのシンチレータ・セルの表面にも隣接していないシンチレータ・セル外表面に光反射材を設置することであること、
を特徴とするパルス波高整列放射線位置検出器。
【請求項2】
多層シンチレータが、縦方向に2~3個、横方向に2~3個のシンチレータ・セルを平面的に接合し、それを3~5段層状に重ねたものである請求項1記載のパルス波高整列放射線位置検出器。
【請求項3】
多層シンチレータが、縦方向に2個、横方向に2個のシンチレータ・セルを平面的に接合し、それを4段層状に重ねたものである請求項1記載のパルス波高整列放射線位置検出器。
【請求項4】
放射線を吸収し光を発したシンチレータ・セルの位置を弁別する手段が、隣接するシンチレータ層の発光の波形を弁別する手段である請求項1~3のいずれか1項記載のパルス波高整列放射線位置検出器。
【請求項5】
隣接するシンチレータ層の発光の波形を弁別する手段が、発光の減衰時定数の差を利用するものである請求項4記載のパルス波高整列放射線位置検出器。
【請求項6】
減衰時定数の差が5ns以上である請求項5記載のパルス波高整列放射線位置検出器。
【請求項7】
シンチレータが、セリウムをドープしたGd2SiO5単結晶である請求項6記載のパルス波高整列放射線位置検出器。
【請求項8】
各シンチレータ層間及び受光素子とこれに隣接するシンチレータ層との間に、シンチレータ・セルが発した光に対して透明な光透過材が満たされている請求項1~のいずれか1項記載のパルス波高整列放射線位置検出器。
【請求項9】
縦方向に2個、横方向に2個のシンチレータ・セルを平面的に接合し、これを4段層状に重ねた多層シンチレータと、この多層シンチレータの最下層の第1シンチレータ層の各シンチレータ・セルの底面に接続された受光素子を含むパルス波高整列放射線位置検出器において、シンチレータがセリウムをドープしたGd2SiO5単結晶であり、受光素子に隣接する第1シンチレータ層と第3シンチレータ層のセリウムドープ量が第2シンチレータ層と最上層の第4シンチレータ層のセリウムドープ量より多く、その減衰時定数の差が10ns以上であることを特徴とする請求項1~のいずれか1項記載のパルス波高整列放射線位置検出器。
【請求項10】
第1、第2及び第4シンチレータ層のシンチレータ・セルの表面を鏡面とし、第3シンチレータ層のシンチレータ・セルの表面を粗面とし、第1及び第2シンチレータ層のシンチレータ・セル間及びシンチレータ・セルの外表面に光反射材を設置し、各シンチレータ層間及び受光素子と第1シンチレータ層との間に、シリコーンオイルを満たし、第3及び第4シンチレータ層のシンチレータ・セル間に空気を満たし、第1及び第3シンチレータ層のシンチレータ・セルが1.5モル%のセリウムをドープしたGd2SiO5単結晶であり、第2及び第4シンチレータ層のシンチレータ・セルが0.5モル%のセリウムをドープしたGd2SiO5単結晶である請求項記載のパルス波高整列放射線位置検出器。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、シンチレーション放射線検出器において放射線の位置検出機能および放射線吸収エネルギー選別機能を持たせた放射線位置検出器に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、シンチレーション放射線検出器において放射線の深さ位置検出機能および放射線吸収エネルギー選別機能を持たせた放射線位置検出器に関するものとして、放射線の3次元位置検出器があった(例えば、特許文献1参照)。しかしこの検出器は、各シンチレータ・セルごとに吸収した放射線エネルギーの設定条件が異なっており、個別にその選定を行う必要があるために、エネルギー選別を同一選別条件に基づく回路もしくは同一信号処理回路で行う構成をとることはできない。これは、シンチレータ・セルの積層により得られる多層シンチレータ・ブロックの信号処理回路を複雑にするだけでなく、シンチレータ・セルごとにエネルギー分解能が異なるため、画像の均一性に問題があった。すなわち、シンチレータ層の積み重ねによる出力信号和の減少が受光素子から遠いシンチレータ・セルで起こり、したがって、装置全体としての位置およびエネルギー分解能特性を損なう。
【0003】
図7は、従来型放射線位置検出器の例であり、図8は、従来型放射線位置検出器(1)の受光素子で受ける光の総量に関する各シンチレータ・セルごとの分布で、単一ガンマ線に対して波高が大きく異なる(例えば、特許文献2)。このため、検出器信号処理の際にダイナミックレンジの広い増幅器およびデジタル処理が必要となり、フロントエンド処理回路が設計しにくかった。
各シンチレータ・セルに依存せず和信号が同一の波高値を得るには、図9の例のように、受光素子に近いセルを囲む光反射材の一部を光吸収材に置き換えるなどの光学的減衰法が利用されていた(例えば、特許文献3参照)。しかし、この方法では受光素子の利用できる光量が減少するために、エネルギー分解能、位置分解能、時間分解能がすべて劣化する点が問題であった。
【0004】
【特許文献1】
特開平1-229995号公報
【特許文献2】
特開平11-142523号公報
【特許文献3】
IEEE Nuclear Science Vol.45(3) p.1152-1157 (1998)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、細長い形状のシンチレータの端で受光する放射線検出器において、受光量が発光位置と受光素子の距離に依存するために生じる、エネルギー情報および位置情報の不均一性が改善された放射線位置検出器を提供することである。
本発明の他の目的は、シンチレータ・セル間での光の収集効率の差を小さくし、受光素子と光学接合されたシンチレータ層より上部のシンチレータ層で放射線が吸収され発光した場合でも、受光素子における光出力が大きい放射線位置検出器を提供することである。
本発明のさらに他の目的は、エネルギー分解能に優れ、受光素子と光学接合されたシンチレータ層より上部のシンチレータ層で放射線が吸収され発光した場合でも、エネルギー・位置に関して下部と同じ精度の検出情報が正確に得られ、円環の周に沿った稠密なシンチレータ・セルの配置を可能とする、3次元位置検出機能およびセルに依存しないエネルギー情報取得機能を持たせた放射線位置検出器を提供することである。
本発明のさらに他の目的は、従来のような光学的減衰法と異なり、エネルギー分解能、位置分解能、時間分解能を劣化させる心配がない放射線位置検出器を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、以下のパルス波高整列放射線位置検出器を提供するものである。
1. 2個以上のシンチレータ・セルを平面的に接合し、これを2段以上層状に重ねた多層シンチレータと、この多層シンチレータの最下層のシンチレータ層の各シンチレータ・セルの底面に接続された受光素子を含むパルス波高整列放射線位置検出器において、
放射線を吸収し光を発したシンチレータ・セルの位置を弁別する手段、及び
各シンチレータ・セルが発した光の前記受光素子による受光量を均一化する手段を設けたこと
前記受光素子による受光量を均一化する手段が、最上層のシンチレータ層に隣接するシンチレータ層のシンチレータ・セルの表面を粗面とすること、他のシンチレータ層のシンチレータ・セルの表面を鏡面とすること、最上層のシンチレータ層及びこれに隣接するシンチレータ層を除く他のシンチレータ層のシンチレータ・セル間に光反射材を設置すること、及びいずれのシンチレータ・セルの表面にも隣接していないシンチレータ・セル外表面に光反射材を設置することであること、
を特徴とするパルス波高整列放射線位置検出器。
2.多層シンチレータが、縦方向に2~3個、横方向に2~3個のシンチレータ・セルを平面的に接合し、それを3~5段層状に重ねたものである上記1記載のパルス波高整列放射線位置検出器。
3.多層シンチレータが、縦方向に2個、横方向に2個のシンチレータ・セルを平面的に接合し、それを4段層状に重ねたものである上記1記載のパルス波高整列放射線位置検出器。
4.放射線を吸収し光を発したシンチレータ・セルの位置を弁別する手段が、隣接するシンチレータ層の発光の波形を弁別する手段である上記1~3のいずれか1項記載のパルス波高整列放射線位置検出器。
5.隣接するシンチレータ層の発光の波形を弁別する手段が、発光の減衰時定数の差を利用するものである上記4記載のパルス波高整列放射線位置検出器。
6.減衰時定数の差が5ns以上、好ましくは10ns以上、さらに好ましくは20ns以上である上記5記載のパルス波高整列放射線位置検出器。
7.シンチレータが、セリウムをドープしたGd2SiO5単結晶である上記6記載のパルス波高整列放射線位置検出器。
.各シンチレータ層間及び受光素子とこれに隣接するシンチレータ層との間に、シンチレータ・セルが発した光に対して透明な光透過材が満たされている上記1~のいずれか1項記載のパルス波高整列放射線位置検出器。
.縦方向に2個、横方向に2個のシンチレータ・セルを平面的に接合し、これを4段層状に重ねた多層シンチレータと、この多層シンチレータの最下層の第1シンチレータ層の各シンチレータ・セルの底面に接続された受光素子を含むパルス波高整列放射線位置検出器において、シンチレータがセリウムをドープしたGd2SiO5単結晶であり、受光素子に隣接する第1シンチレータ層と第3シンチレータ層のセリウムドープ量が第2シンチレータ層と最上層の第4シンチレータ層のセリウムドープ量より多く、その減衰時定数の差が10ns以上であることを特徴とする上記1~のいずれか1項記載のパルス波高整列放射線位置検出器。
10.第1、第2及び第4シンチレータ層のシンチレータ・セルの表面を鏡面とし、第3シンチレータ層のシンチレータ・セルの表面を粗面とし、第1及び第2シンチレータ層のシンチレータ・セル間及びシンチレータ・セルの外表面に光反射材を設置し、各シンチレータ層間及び受光素子と第1シンチレータ層との間に、シリコーンオイルを満たし、第3及び第4シンチレータ層のシンチレータ・セル間に空気を満たし、第1及び第3シンチレータ層のシンチレータ・セルが1.5モル%のセリウムをドープしたGd2SiO5単結晶であり、第2及び第4シンチレータ層のシンチレータ・セルが0.5モル%のセリウムをドープしたGd2SiO5単結晶である上記記載のパルス波高整列放射線位置検出器。
を提供するものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明は、2個以上、好ましくは4個以上のシンチレータ・セルを平面的に接合し、それを2段以上、好ましくは3~5段、最も好ましくは4段層状に重ねて多層シンチレータを形成し、2個以上の受光素子または位置分解が可能な受光素子を光学結合し、各シンチレータ・セル間は、空気、光反射材、光透過材、前記シンチレータと同じ材料から選ばれた少なくとも1種類のもので満たし、シンチレータ・セルごとの光学表面条件(鏡面又は粗面)と光反射材および光学透過材の組み合わせを最適化することにより、受光素子から得る出力信号で、放射線を検出したシンチレータ・セルの同定および放射線エネルギーの選別を行い、エネルギー分解能、位置分解能、時間分解能に優れた、パルス波高整列放射線位置検出器を提供するものである。
【0008】
本発明のパルス波高整列放射線位置検出器において、放射線を吸収し光を発したシンチレータ・セルの位置を弁別する手段としては、隣接するシンチレータ層の発光の波形を弁別する手段が挙げられる。隣接するシンチレータ層の発光の波形を弁別する手段の具体例としては、発光の減衰時定数の差を利用するものが挙げられる。減衰時定数の差は好ましくは5ns以上、さらに好ましくは10ns以上、最も好ましくは15ns以上である。
【0009】
本発明の放射線位置検出器に使用するシンチレータ材料としては、放射線を吸収して発光するものであれば特に制限されないが、セリウムをドープしたGSO(Ce: Gd2SiO5)、セリウムをドープしたLSO(Ce: Lu2SiO5)、BGO(Bi4Ge3O12)等が挙げられる。しかし、本発明に用いるシンチレータ材料は、蛍光出力が高いほど位置弁別効果が大きく、Bi4Ge3O12より50%以上高い出力のシンチレータであることが望ましく、Ce:Gd2SiO5を用いることがさらに望ましい。Ce:Gd2SiO5のセリウムのドープ量は好ましくは0.1~5.0モル%、さらに好ましくは0.5~1.5モル%程度である。Ce:Gd2SiO5のセリウムのドープ量を変えて蛍光減衰時定数を変えることにより、隣接するシンチレータ層間の波形弁別を向上させ、位置弁別を良好にするためには、セリウムのドープ量の差を0.1~3.0モル%程度とし、減衰時定数の差が5ns以上、好ましくは10ns以上、さらに好ましくは20ns以上とすることが適当である。
シンチレータ・セルはシンチレータ材料(単結晶)を直方体に切断したものが好ましく、その大きさは、1.0~10mm×1.0~10mm×10~50mm程度が適当である。
【0010】
各シンチレータ・セルが発した光の受光素子による受光量を均一化する手段としては、最上層のシンチレータ層に隣接するシンチレータ層のシンチレータ・セルの表面を粗面とすること、他のシンチレータ層のシンチレータ・セルの表面を鏡面とすること、最上層のシンチレータ層及びこれに隣接するシンチレータ層を除く他のシンチレータ層のシンチレータ・セル間に光反射材を設置すること、及びいずれのシンチレータ・セルの表面にも隣接していないシンチレータ・セル外表面に光反射材を設置することが挙げられる。
【0011】
単結晶の表面を鏡面とするには、機械研磨、化学研磨等の方法が使用できる。
単結晶の表面を粗面とするには、切断、粗研磨等の方法が使用できる。粗面の程度は、最大高さRmax=346nm(へき開面)~376nm(へき開面)が適当である。
また、光反射材としては、金属箔(例えば、アルミニウム箔等)、ポリマー膜(例えば、ポリテトラフルオロエチレン等)、無機粉末等が挙げられる。これらの光反射材の厚さは通常10~500μmであり、好ましくは30~200μmである。
【0012】
本発明の放射線位置検出器においては、受光素子で受ける光の総量を均一化するために、各シンチレータ層間及び受光素子とこれに隣接するシンチレータ層との間に、シンチレータ・セルが発した光に対して透明な光透過材を満たしておくことが望ましい。透明な光透過材としてはシリコーンオイル、空気、透明接着剤等が挙げられるた、シリコーンオイル(シリコーンオイルの特性をもう少し特定できればして下さい。)が好ましい。
【0013】
以上のとおり、本発明の放射線位置検出器においては、シンチレータ・ユニット内の各シンチレータ・セルは、不純物の含量の違いもしくは組成の違いによる蛍光減衰時定数の選択、および結晶表面処理に関して粗面もしくは鏡面にするかの選択が可能であり、さらにセル間の境界層は光学的不連続層を形成し、層間に光反射材を挿入するかもしくは光に対して透明な透過材(光学接合材)を挿入するかの選択が可能である。特開平11-142523号公報に詳細に説明されているように、あるシンチレータ・セル内で発生した光は、この境界層を介して隣接するシンチレータ・セルにある割合で分配される。この分配された光を受け取ったシンチレータ・セルでも同様にこれと隣接するシンチレータ・セルにある割合で分配され、以下、この過程がシンチレータ・ユニット内の各シンチレータ・セル間で行われ、最終的に、シンチレータ・ユニットの一端面に結合されたそれぞれの受光素子に到達する。
【0014】
それぞれの受光素子で受け取る光量は、上記で示したシンチレータ・ユニット内の各シンチレータ・セル間の光の分配率に依存し、これを工夫することによって、それぞれの受光素子で受け取る光量の組み合わせにより、シンチレータ・ユニット内のどのシンチレータ・セルが光を発生したかを知ることが可能となり、シンチレータ・ユニットの深さ方向における放射線の検出位置を計測することができる。これと同時に、シンチレータ・セルの光学表面と光反射材および透過材の組み合わせを最適化することにより、位置弁別を可能にしつつ、どのセルで発光しても受光素子全体で受け取る光の総量を同一にするパルス波高整列放射線位置検出器を形成できる。
また、位置弁別を向上させるためには、高感度の受光素子、例えば、30%程度の感度を有する受光素子を使用したり、光収集効率の高い受光素子を使用することが望ましい。
【0015】
【実施例】
以下、図面により本発明を詳しく説明する。
図1は、本発明のパルス波高整列放射線位置検出器の1実施例を説明するための図である。本発明のパルス波高整列放射線位置検出器は、図1に示したように、シンチレータ・セルを光学的に積層して4層シンチレータとし、シンチレータ・ユニットを形成する。なお、このシンチレータ・ユニットの端面のそれぞれの多層シンチレータに対し、各1つの受光素子が結合され、それ以外の外側部分には光反射材(例えば、ポリテトラフルオロエチレン)が乾燥膜厚例えば、100μmで塗布されている。この構成により、各シンチレータ・セル内で発生した光は、4つの受光素子に分配されて到達することとなる。この光の分配率は、各シンチレータ・セル毎に光の透過度や表面条件が異なることで両端の受光素子までの光路長が異なること、及び、各シンチレータ・セル間の境界層は光学的不連続層が形成されていること、各シンチレータ・セルの組成もしくは不純物含量に応じて蛍光現象が異なることにより、各シンチレータ・セル毎に異なる。このことにより、放射線を検出したシンチレータ・セルが同定される、すなわち深さ情報を知ることができる。
【0016】
図2の位置弁別分布は、蛍光減衰時定数の同じシンチレータ・セルを組み合わせてシンチレータ・ユニットを形成した場合の光の分配率を2次元表示したもので、個々の丸の区域が各シンチレータ・セルからの発光に一対一の対応をしているためにシンチレータ・セルの3次元的な位置の弁別を実現できる。すべてのシンチレータ・セルが同じ鏡面の光学表面の場合は、丸の区域が重なり位置弁別できないが、すべてのシンチレータ・セルが同じ粗面の光学表面の場合は、丸の区域が離れて位置弁別可能となる。しかし、すべて粗面では受光素子で受ける光の総量が受光素子から遠いセルほど減少するため、各層のシンチレータ・セルの光学表面を変化させ、同時にセル間の光反射材および透過材の組み合わせを最適化することによって、図3のようにすべてのシンチレータ・セルの発光に対して受光素子で受ける光の総量が同じとなるように調節する。
【0017】
図4は、縦2.9mm×横2.9mm×高さ7.5mmの直方体の、セリウムをドープしたGSO(Ce: Gd2SiO5)(以下「GSO」と呼ぶ)結晶2種を、交互に4つ縦方向に結合した4つの4層シンチレータを行列(2行×2列)配列し光学的に結合してシンチレータ・ユニットを形成した場合の実施例である。すなわち、蛍光減衰時定数の異なる2種類のGSOシンチレータ・セル(Ce 濃度:0.5 % mol(結晶1-2と1-4)と 1.5 % mol(結晶1-1と1-3))を交互に重ねて4層シンチレータを形成し、これを2行×2列配列してシンチレータ・ユニットを形成している。Ce 濃度が0.5 % mol の蛍光減衰時定数は60nsであり、Ce 濃度が1.5 % molの蛍光減衰時定数は35nsである。また、シンチレータ・ユニットの下部の端面には複数の受光素子(位置感応型光電子増倍管)が結合されている。この例の場合は、各シンチレータ・セル(1-1~4-4の合計16個)で発生した光は4つの受光素子に分配される。なお、シンチレータ層1とシンチレータ層2のシンチレータ・セル間には光反射材を配置したため、これら2層のシンチレータ・セルの大きさは、シンチレータ層3及び4のシンチレータ・セルよりやや小さい縦2.9mm×横2.9mm×高さ7.5mmとした。
【0018】
このシンチレータ・ユニットに対する光の分配率を2次元分布で表したものが図5である。2種類の蛍光減衰時間(60nsと35ns)ごとに光の分配率を2次元表示したもので、個々の丸の区域が各シンチレータ・セルからの発光に一対一の対応をしており、単一の蛍光減衰時定数のシンチレータ・セルを組み合わせた場合に比べて丸の領域の重なりを回避しやすく、位置弁別を容易に実現できる。波形1は、結晶1-1、1-3、2-1、2-3、3-1、3-3、4-1及び4-3の発光に対応し、波形2は、結晶1-2、1-4、2-2、2-4、3-2、3-4、4-2及び4-4の発光に対応する。
【0019】
また、すべてのシンチレータ・セル(GSO単結晶)の表面を粗面にすると各シンチレータ・セルごとに受光素子で受け取る光の総量は大きく異なり、一方、すべてのシンチレータ・セル(GSO単結晶)の表面を鏡面にすると光の分配率を示す2次元分布の丸の領域が重なる。
この実施例では、図4のようにシンチレータ層1(シンチレータ・セル1-1、2-1、3-1及び4-1)、シンチレータ層2(シンチレータ・セル1-3、2-3、3-3及び4-3)、シンチレータ層4(シンチレータ・セル1-4、2-4、3-4及び4-4)を鏡面(化学研磨したもの)、シンチレータ層3(シンチレータ・セル1-3、2-3、3-3及び4-3)を粗面(切断面のまま)とし、シンチレータ層1及び2の各シンチレータ・セル間及びシンチレータ・ユニットの全外表面に光反射材(厚さ100μmのポリテトラフルオロエチレン製)を設け、各シンチレータ層間及びシンチレータ層1と受光素子の間にシリコーンオイルを満たし、シンチレータ層3及び4のシンチレータ・セル間には空気を満たした。このような構成を採用することにより、光の分配率を示す2次元分布の丸の領域が離れ、しかも受光素子で受け取る光の総量は、図6に示すようにすべてのシンチレータ・セルでほぼ同一になった。
【0020】
図6において縦軸は発光の相対的なカウント数を示す。この試験では、シンチレータユニットのシンチレータ層4の側から511eVのセシウム137の放射線を照射した。このため、相対的なカウント数はシンチレータ層4が最も多く、シンチレータ層1が最も少なくなっている。横軸はパルス波高(受光素子で受け取る光の総量)を示す。右側のシャープなピークの位置が光の総量(総エネルギー量)を示す。シンチレータ層1~4のピーク位置がほぼ一致しており、シンチレータ層1~4のどのセルが発光しても受光素子が受け取る光のエネルギー量がほぼ等しいことを示している。
【0021】
【発明の効果】
本発明による放射線3次元位置検出器によって、受光素子と光学結合されたシンチレータ層より上部のシンチレータ層で放射線が吸収され発光した場合でも、検出情報が正確に得られ、3次元位置検出機能を持たせた放射線検出器を得ることができるだけでなく、放射線エネルギーが同じであれば位置によらない同一出力信号和を得る。従来法のように、光吸収材を用いる必要がないため、エネルギー分解能、位置分解能、時間分解能を劣化させる心配がない。本発明によるパルス波高整列放射線位置検出器を陽電子放出断層装置(PET)に導入すれば、放射線エネルギー情報を1つの波高分析回路のみで分析可能となる。
本発明の実施例では、シンチレータ材料としてCe: Gd2SiO5を用いる場合についてのみ示したが、本発明の袴型放射線位置検出器のシンチレータ材料はCe: Gd2SiO5に限定されるものではない。ただし、本発明に用いるシンチレータ材料は、蛍光出力が高いほど効果的で、Bi4Ge3O12より50%以上高い出力のシンチレータであることが望ましく、Ce:Gd2SiO5を用いることがさらに望ましい。
また本発明の実施例では、シンチレータ材料として一種類もしくは二種類の蛍光減衰時間の異なるシンチレータを用いる場合のみを示したが、三種類以上の異なるシンチレータを組合せた場合も本発明に含まれる。異なる蛍光減衰時間のシンチレータ材料を用いることで、蛍光減衰時間の違いを波形弁別することが可能となり、出力信号を波形弁別することによっても、本発明のパルス波高整列放射線位置検出器を得ることができる。
【0022】
以下に本発明の好ましい実施態様を示す。
1.所定の形状を有する位置検出器であって、前記検出器から得られる複数の出力信号の比演算および和演算によって、位置検出情報を得ることと検出器に吸収された放射線エネルギーの選別情報を得ることが出来る、放射線位置検出器。
2.2個以上のシンチレータ・セルを平面的に接合し、それを2段以上層状に重ねて多層シンチレータを形成し、各シンチレータ・セル間は、空気、光反射材、光透過材、前記シンチレータと同じ材料から選ばれた少なくとも1種類のものからなり、前記多層シンチレータの底面に2個以上の受光素子または1個以上の位置分解が可能な受光素子を結合し、前記受光素子から得られる出力信号で、放射線を検出したシンチレータ・セルの同定およびシンチレータ・セルで吸収された放射線エネルギーの選別を行うことを特徴とする放射線位置検出器。
3.前記多層シンチレータは、同じ特性もしくは異なる蛍光減衰時定数をもつシンチレータを複数個用いたことを特徴とする上記2記載の放射線位置検出器。
4.前記多層シンチレータは、表面光学条件の異なるシンチレータを複数個用いたことを特徴とする上記2記載の放射線位置検出器。
5.前記多層シンチレータは、互いのシンチレータ・セル間に光反射材もしくは光学透過材または空気層の異なる層グループからなることを特徴とする上記2記載の放射線位置検出器。
6.前記多層シンチレータは、前記層グループごとに、異なる光学表面をもつシンチレータを複数個用いたことを特徴とする上記2記載の放射線位置検出器。
7.放射線を検出したシンチレータ・セルの同定は、受光素子の出力信号の大きさの比をとって行うことを特徴とする上記2~6のいずれか1項記載の放射線位置検出器。
8.シンチレータ・セルで検出した放射線エネルギーの選別は、受光素子の出力信号の加算による波高弁別で行うことを特徴とする上記2~6のいずれか1項記載の放射線位置検出器。
9.放射線を検出したシンチレータ・セルの同定および吸収エネルギーの同定は、受光素子の出力信号の比をとって行うことと、既受光素子の受光素子の出力信号の加算による波高弁別の両方を行うことを特徴とする上記2~6のいずれか1項記載の放射線位置検出器。
10.前記各シンチレータ・セルの形状が直方体からなることを特徴とする上記2~9のいずれか1項記載の放射線位置検出器。
11.放射線を検出したシンチレータ・セルのエネルギー吸収値の同定は、シンチレータ・セルによらず同一条件で出力波高弁別を行えることを特徴とする上記2~10のいずれか1項記載の放射線位置検出器。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のパルス波高整列放射線位置検出器の1実施例を説明するための図である。
【図2】パルス波高整列放射線位置検出器の4つの受光素子で受け取る光の分配率を表す二次元分布図である。
【図3】パルス波高整列放射線位置検出器の受光素子で受け取る光の総量に関する各シンチレータ・セルごとの分布図であり、単一ガンマ線に対して同一パルス波高(横軸)を形成する。
【図4】本発明の実施例を説明するためのパルス波高整列放射線位置検出器の構造例を示す図である。
【図5】本発明の実施例を説明するためのパルス波高整列放射線位置検出器の4つの受光素子で受け取る光の分配率を表す2次元分布図である。波形(1)はシンチレータ層1及び3の各4個のシンチレータ・セル、波形(2)はシンチレータ層2及び4の各4個のシンチレータ・セルが発した光を4つの受光素子が受光する際の光の分配率を表す2次元分布図である。
【図6】本発明の実施例を説明するためのパルス波高整列放射線位置検出器の受光素子で受け取る光の総量に関する各シンチレータ・セル(1-1~4-4)ごとの分布を示す図である。
【図7】従来型放射線位置検出器の構成例(1)を示す図である。
【図8】従来型放射線位置検出器(1)の受光素子で受ける光の総量に関する各シンチレータ・セルごとの分布を示す図である。
【図9】従来型パルス波高整列放射線位置検出器の構成例(2)を示す図である。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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