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明細書 :界面活性ルイス酸触媒

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3751145号 (P3751145)
公開番号 特開平11-244705 (P1999-244705A)
登録日 平成17年12月16日(2005.12.16)
発行日 平成18年3月1日(2006.3.1)
公開日 平成11年9月14日(1999.9.14)
発明の名称または考案の名称 界面活性ルイス酸触媒
国際特許分類 B01J  31/26        (2006.01)
C07B  61/00        (2006.01)
C07C  33/00        (2006.01)
C07C  45/71        (2006.01)
C07C  49/04        (2006.01)
C07C  49/213       (2006.01)
C07C  49/76        (2006.01)
C07C  69/00        (2006.01)
C07C 209/60        (2006.01)
C07C 227/22        (2006.01)
C07G   3/00        (2006.01)
FI B01J 31/26 Z
C07B 61/00 300
C07C 33/00
C07C 45/71
C07C 49/04 E
C07C 49/213
C07C 49/76 E
C07C 69/00
C07C 209/60
C07C 227/22
C07G 3/00
請求項の数または発明の数 9
全頁数 8
出願番号 特願平10-053075 (P1998-053075)
出願日 平成10年3月5日(1998.3.5)
審査請求日 平成13年4月26日(2001.4.26)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】小林 修
【氏名】小山田 秀和
個別代理人の代理人 【識別番号】100093230、【弁理士】、【氏名又は名称】西澤 利夫
審査官 【審査官】大工原 大二
参考文献・文献 特開平10-024234(JP,A)
特開平06-263656(JP,A)
特開平09-265994(JP,A)
特開平11-217362(JP,A)
調査した分野 B01J 21/00~38/74
CAplus(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
分子内に疎水性原子団と親水性原子団が存在することで界面活性能を持ち、かつ、親水性原子団の少なくとも一部がルイス酸性を有する、次式(I)で表される界面活性ルイス酸触媒。
【化1】
JP0003751145B2_000007t.gif
(式中のMは、希土類金属元素の少くとも1種を、R1- は、有機酸基の共役塩基を示し、R1は、炭素数が8~30の官能基を有していてもよい炭化水素基を示す。)
【請求項2】
式(I)におけるR1 が、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基および脂肪族炭化水素基を有する芳香族炭化水素基の群から選ばれる1種以上の炭化水素基である請求項1の界面活性ルイス酸触媒。
【請求項3】
式(I)におけるX- が、COO- 、SO3 - 、OSO3 -、OPO32- 、または(フェニル)O- 構造で表される請求項1または2の界面活性ルイス酸触媒。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかの界面活性ルイス酸触媒の製造方法であって、有機酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩と希土類金属ハロゲン化物とを水中で混合することを特徴とする界面活性ルイス酸触媒の製造方法。
【請求項5】
請求項1ないし3のいずれかの界面活性ルイス酸触媒の製造方法であって、有機酸と希土類金属の酸化物または水酸化物とを水中で混合することを特徴とする界面活性ルイス酸触媒の製造方法。
【請求項6】
請求項1ないし3のいずれかの界面活性ルイス酸触媒を用いる有機化合物の製造方法であって、界面活性ルイス酸触媒の存在下、ルイス酸触媒反応を水中で行うことを特徴とする有機化合物の製造方法。
【請求項7】
反応基質として、水溶性化合物、非水溶性化合物、水に安定な化合物または水に不安定な化合物を用いる請求項6の有機化合物の製造方法。
【請求項8】
水溶性化合物は、糖類またはアミノ酸類であり、水に不安定な化合物は、酸ハロゲン化物、酸無水物、有機金属化合物またはシリルエノラートである請求項7の有機化合物の製造方法。
【請求項9】
ルイス酸触媒反応がアルドール型反応、フリーデル-クラフツ型反応、マンニッヒ型反応、グリコシル化反応、エステル化反応、アリル化反応である請求項6ないし8のいずれかの有機化合物の製造方法。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
この出願の発明は、界面活性ルイス酸触媒に関するものである。さらに詳しくは、この出願の発明は、有機溶媒を使用することなしに水媒体中での有機合成反応を高い収率と優れた選択性で可能とする、新しい界面活性ルイス酸触媒と、その製造方法並びにこの触媒を用いた有機化合物の合成方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術とその課題】
有機溶媒を用いることなしに水媒体中で有機反応を行うことは、環境問題への配慮からも注目されている。しかしながら、有機反応に水媒体を用いることには大きな制約がある。多くの場合、有機化合物は水に溶解せず、しかも反応中間体そして触媒も水によって分解されてしまうことが多いからである。
【0003】
その特徴のある反応活性や選択性、さらには温和な条件での反応が可能である等の点で注目されるルイス酸についても事情は変わらない。このルイス酸を触媒として使用する場合、水に対して不安定であって、水媒体中では使用できないからである。
このような状況において、この出願の発明者らは、水安定性のルイス酸としての希土類トリフレートを見出し、このものを水媒体中において有機合成反応に用いることを可能としてきた。
【0004】
だが、この希土類トリフレートをルイス酸触媒とする反応では、反応効率を上げるためには、水とともに、THF、アルコール、アセトニトリル等の有機溶媒を使用することが必要とされていた。
この出願の発明は、以上のとおりの従来技術の問題を踏まえてなされたものであって、有機溶媒を全く使用することなしに高い収率と、優れた選択性のもとに有機合成反応を水媒体中で行うことのできる新しいルイス酸触媒と、その製造法並びにこれを用いた有機合成反応方法を提供することを課題としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
この出願は、上記の課題を解決するために、第1の発明として、分子内に疎水性原子団と親水性原子団が存在することで界面活性能を持ち、かつ、親水性原子団の少なくとも一部がルイス酸性を有する、次式(I)で表される界面活性ルイス酸触媒を提供する。
【0006】
【化2】
JP0003751145B2_000002t.gif
【0007】
(式中のMは、希土類金属元素の少くとも1種を、1- は、有機酸基の共役塩基を示し、1は、炭素数が8~30の官能基を有していてもよい炭化水素基を示す。
また、この出願は、上記第1の発明に関連して、第2の発明として、式(I)におけるR1 が、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基および脂肪族炭化水素基を有する芳香族炭化水素基の群から選ばれる1種以上の炭化水素基である界面活性ルイス酸触媒を、第3の発明として、式(I)におけるX- が、COO- 、SO3 - 、OSO3 -、OPO32- 、または(フェニル)O- 構造で表される界面活性ルイス酸触媒を提供する。
【0008】
そして、この出願は、前記いずれかの界面活性ルイス酸触媒の製造方法であって、有機酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩と希土類金属ハロゲン化物とを水中で混合することを特徴とする界面活性ルイス酸触媒の製造方法と、有機酸と希土類金属の酸化物または水酸化物とを水中で混合することを特徴とする界面活性ルイス酸触媒の製造方法を提供する。
【0009】
さらにまた、この出願は、前記いずれかの界面活性ルイス触媒を用いる有機化合物の製造方法であって、界面活性ルイス酸触媒の存在下、ルイス酸触媒反応を水中で行うことを特徴とする有機化合物の製造方法を提供し、反応基質として、水溶性化合物、非水溶性化合物、水に不安定な化合物を用いる有機化合物の製造方法を、水溶性化合物は、糖類またはアミノ酸類であり、水に不安定な化合物は、酸ハロゲン化物、酸無水物、有機金属化合物またはシリルエノラートである有機化合物の製造方法を、ルイス酸触媒反応がアルドール型反応、フリーデル-クラフツ型反応、マンニッヒ型反応、グリコシル化反応、エステル化反応、アリル化反応である有機化合物の製造方法をも提供する。
【0010】
【発明の実施の形態】
この出願の発明は、上記のとおりの特徴を持つものであるが、以下に、さらに詳しくその実施の形態について説明する。
まず、前記のとおりの式(I)で表わされるこの発明の界面活性ルイス酸触媒は、分子内に疎水性原子団と親水性原子団とが存在することで界面活性能を持ち、親水性原子団の少くとも一部がルイス酸性を有している。
【0011】
式(I)におけるMは遷移金属の少くとも1種であるが、なかでも、Sc、Yb、Sm、Y、Nd等の元素からなる希土類元素の群から選択されたものが好適に用いられる。
また、1は、炭化水素基であって、その構成炭素数は、8~30である。炭化水素基は、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、および芳香脂肪族炭化水素のうちの各種のものであってよく、これらは、この発明の界面活性ルイス酸触媒の活性を損わない限り、任意の置換基を有していてもよい。置換基としては、アルキル基、アリール基等の炭化水素基をはじめ、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アシルオキシ基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基等が例示される。
【0012】
有機酸基の共役塩基を表わす式(I)のR1- におけるX- は、たとえばCOO- 、SO3 - 、OSO3 - 、OPO32- 、さらには(フェニル)O- の構造等が適当なものとして例示されることになる。
【0013】
たとえば以上のようなこの発明の界面活性ルイス酸触媒については、前記のように、有機酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩と希土類金属ハロゲン化物とを水中で混合するか、あるいは有機酸と希土類金属の酸化物もしくは水酸化物とを水中で混合することにより製造することができる。製造されたこの発明の界面活性ルイス酸触媒は、水中でのルイス酸触媒反応を用いられる。この反応は各種のものであってよく、アルドール型反応をはじめとするルイス酸触媒反応の各種のものが考慮される。アルドール反応、イミノアルドール反応、マンニッヒ型反応、マイケル反応、グリコシル化反応、エステル化反応、アリル化反応、フリーデル-クラフツ反応等である。この際の反応基質は、水溶性化合物、非水溶性化合物、水に安定な化合物あるいは水に不安定な化合物のいずれであってもよい。水溶性化合物は、たとえばアルコール類等のヒドロキシ化合物、糖類やアミノ酸類等であり、水に不安定な化合物は、たとえば酸ハロゲン化物、酸無水物、有機金属化合物、シリルエノラート等である。
【0014】
これらの反応基質に対してこの発明の界面活性ルイス酸触媒は広い使用割合範囲で用いることができ、たとえば、反応基質に対して、0.001~1当量の範囲で用いることができる。
いずれの場合でも、この出願の発明による界面活性ルイス酸触媒で、高い収率で、優れた選択性で、しかも温和な条件のもとに高効率での有機合成反応が可能とされる。また、反応生成物との分離も容易である。
【0015】
以下、実施例を示し、さらに詳しくこの発明について説明する。
【0016】
【実施例】
(実施例1)
塩化スカンジウム(ScCl3 )と、ドデシル硫酸ナトリウム(NaOSO3 1225)とを略等モル比で水中において混合し、次式
Sc(OSO3 12253
で表わされるスカンジウムトリスドデシルサルフェート(STDS)を製造した。このものの同定値は次の表1のとおりであった。
【0017】
【表1】
JP0003751145B2_000003t.gif
【0018】
(実施例2)
実施例1と同様にして、ドデシル基(C1225)を他のアルキルとしたスカンジウム塩化合物、並びに硫酸エステル塩に代えてスルホン酸塩とした各種の化合物を製造した。
実施例1の化合物、そして上記の各種化合物を用いて、表2のとおりのベンズアルデヒドと(Z)-1-フェニル-1-トリメチルシロキシプロペンとのアルドール付加反応を行った。スカンジウム塩化合物は0.1当量用い、水中において室温で4時間反応させた。その結果を示したものが表2である。
【0019】
【表2】
JP0003751145B2_000004t.gif
【0020】
表2より、STDS、すなわちSc(OSO3 12253 を触媒とする場合には、92%という極めて高い収率でアルドール付加体であるヒドロキシカルボニル化合物が得られる。また、スルホン酸塩であるSc(OSO2 1225)の場合にも収率83%で、また、Sc(OSO2 p-R-C6 4 3 の場合にも収率91%で得られている。
【0021】
Sc(OSO3 14293 の硫酸塩化合物、並びにSc(OSO2 13273 でも、各々、73%および76%の高い収率でアルドール付加体が得られている。
(比較例1)
前記STDSを用いて、実施例2と同様のアルドール付加反応を種々の溶媒中において行った。
【0022】
その結果を示したものが表3である。
水媒体中での反応(収率92%)が顕著であることがわかる。
【0023】
【表3】
JP0003751145B2_000005t.gif
【0024】
(比較例2)
実施例1において、STDSに代えて、スカンジウムトリフレート:Sc(OTf)3 を触媒として用いて反応を行ったが、アルドール付加体は、わずか3%の収率でしか得られなかった。
(実施例3)
前記STDSを触媒として、水媒体中において表4に示したとおりの各種の反応基質を用いて反応を行った。
【0025】
触媒STDSは、0.1~0.2当量の割合で使用し、室温で反応させた。
各種のアルデヒド化合物より高い収率でアルドール付加体が得られることが表4の結果よりわかる。
【0026】
【表4】
JP0003751145B2_000006t.gif
【0027】
【発明の効果】
以上詳しく説明したとおり、この出願の発明の界面活性ルイス酸触媒により、有機溶媒を一切使用することなく、水媒体中において、高い収率で、優れた選択性で、しかも温和な条件下に有機合成反応を実施することが可能となる。反応生成物との分離も容易である。
【0028】
有機溶媒の廃棄にともなう環境負荷の問題も、またその回収にともなう実際的負担も生じることのない極めて価値の高いルイス酸触媒が提供されることになる。