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明細書 :遺伝子発現プロファイルの作製方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4217780号 (P4217780)
公開番号 特開2005-006554 (P2005-006554A)
登録日 平成20年11月21日(2008.11.21)
発行日 平成21年2月4日(2009.2.4)
公開日 平成17年1月13日(2005.1.13)
発明の名称または考案の名称 遺伝子発現プロファイルの作製方法
国際特許分類 C12N  15/09        (2006.01)
C12Q   1/68        (2006.01)
G01N  33/50        (2006.01)
C12M   1/00        (2006.01)
FI C12N 15/00 ZNAA
C12Q 1/68 A
G01N 33/50
C12M 1/00 A
請求項の数または発明の数 5
全頁数 27
出願番号 特願2003-174895 (P2003-174895)
出願日 平成15年6月19日(2003.6.19)
審査請求日 平成17年9月16日(2005.9.16)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】301032942
【氏名又は名称】独立行政法人放射線医学総合研究所
発明者または考案者 【氏名】安倍 真澄
個別代理人の代理人 【識別番号】100059959、【弁理士】、【氏名又は名称】中村 稔
【識別番号】100067013、【弁理士】、【氏名又は名称】大塚 文昭
【識別番号】100082005、【弁理士】、【氏名又は名称】熊倉 禎男
【識別番号】100065189、【弁理士】、【氏名又は名称】宍戸 嘉一
【識別番号】100074228、【弁理士】、【氏名又は名称】今城 俊夫
【識別番号】100084009、【弁理士】、【氏名又は名称】小川 信夫
【識別番号】100082821、【弁理士】、【氏名又は名称】村社 厚夫
【識別番号】100086771、【弁理士】、【氏名又は名称】西島 孝喜
【識別番号】100084663、【弁理士】、【氏名又は名称】箱田 篤
審査官 【審査官】斎藤 真由美
調査した分野 C12N 15/00-90
C12Q 1/00ー70
G01N 33/00-98
PubMed、MEDLINE(STN)
BIOSIS/WPI(DIALOG)
特許請求の範囲 【請求項1】
遺伝子発現プロファイルを作製する方法であって、
(a)ポリ(A)RNAを鋳型として一本鎖cDNAを合成する工程であって、該一本鎖cDNAを基準として5’末端にタグ物質が付加された一本鎖cDNAを合成する工程、
(b)工程(a)で合成された一本鎖cDNAを鋳型として二本鎖cDNAを合成する工程であって、該二本鎖cDNAを基準として3’末端側にタグ物質が付加された二本鎖cDNAを得る工程、
(c)工程(b)で得られた二本鎖cDNAを第1の制限酵素Xで切断する工程、
(d)該タグ物質に高親和性を有する物質を用いて、工程(c)で得られた断片から該タグ物質が付加している断片を回収する工程、
(e)工程(d)で回収された断片の第1の制限酵素Xによる切断部位へ、該切断部位の配列に相補的な配列及びXプライマーに相補的な配列を含むXアダプターを結合させて、二本鎖cDNAを基準として5’末端側にXアダプターが結合している断片を得る工程、
(f)工程(e)で回収された断片を、該Xアダプターを切断しない第2の制限酵素Yで切断する工程、
(g)該タグ物質に高親和性を有する物質を用いて、工程(f)で得られた断片から該タグ物質が結合している断片を取り除くことにより、二本鎖cDNAを基準として3’末端側に第2の制限酵素Yによる切断部位を含む断片を回収する工程、
(h)工程(g)で回収された断片の第2の制限酵素Yによる切断部位へ、該切断部位の配列に相補的な配列及びYプライマーに相補的な配列を含むYアダプターを結合させて、二本鎖cDNAを基準として3’末端側にYアダプターが結合している二本鎖配列の断片を得る工程、
(i)該Xアダプターの配列に相補的な配列を含むXプライマーであって、該Xプライマーを基準として3’末端に2塩基配列であるN12(N1及びN2は同一又は異なっていてもよい、アデニン、チミン、グアニン及びシトシンからなる群より選ばれる塩基である)を含むXプライマーと、該Yアダプターの配列に相補的な配列を含むYプライマーであって、該Yプライマーを基準として3’末端に2塩基配列であるN34(N3及びN4は同一又は異なっていてもよい、アデニン、チミン、グアニン及びシトシンからなる群より選ばれる塩基である)を含むYプライマーとからなるプライマーセットを用いて、工程(h)で得られた二本鎖配列の断片を鋳型としてPCR反応を行う工程、及び、
(j)得られたPCR産物を電気泳動し、その移動距離及びピークを検出することにより遺伝子発現プロファイルを作製する工程、
を含み、
工程(i)において、
Xプライマー及びYプライマーのそれぞれXアダプター及びYアダプターへのアニーリングを、プライマーのTmMAX+6℃~TmMAX+14℃の温度で行うこと
を特徴とする方法。
【請求項2】
工程(i)において、
Xプライマー及びYプライマーのそれぞれXアダプター及びYアダプターへのアニーリングをTmMAX+6℃~TmMAX+9℃で行う、
請求項1に記載の遺伝子発現プロファイルを作製する方法。
【請求項3】
工程(i)において、
プライマーセットとして、16種類のXプライマーと16種類のYプライマーとの組合せから構成される256種類のプライマーセットを用いる、請求項1又は2に記載の遺伝子発現プロファイルを作製する方法。
【請求項4】
工程(i)において、
Xプライマーが
5'-ACATGACACTCGGTTCGGN1N2-3'
(式中、N1N2は、CC、CT、CG、CA、TC、TT、TA、TG、AC、AA、AG、AT、GT、GC、GA又はGGである)
であり、
Yプライマーが
5'-ATACTGCGGGCGTCCTAAN3N4-3'
(式中、N3N4は、CC、CT、CG、CA、TC、TT、TA、TG、AC、AA、AG、AT、GT、GC、GA又はGGである)
である、請求項1~3のいずれかに記載の遺伝子発現プロファイルを作製する方法。
【請求項5】
遺伝子発現頻度を解析する方法であって、
(a)ポリ(A)RNAを鋳型として一本鎖cDNAを合成する工程であって、該一本鎖cDNAを基準として5’末端にタグ物質が付加された一本鎖cDNAを合成する工程、
(b)工程(a)で合成された一本鎖cDNAを鋳型として二本鎖cDNAを合成する工程であって、該二本鎖cDNAを基準として3’末端側にタグ物質が付加された二本鎖cDNAを得る工程、
(c)工程(b)で得られた二本鎖cDNAを第1の制限酵素Xで切断する工程、
(d)該タグ物質に高親和性を有する物質を用いて、工程(c)で得られた断片から該タグ物質が付加している断片を回収する工程、
(e)工程(d)で回収された断片の第1の制限酵素Xによる切断部位へ、該切断部位の配列に相補的な配列及びXプライマーに相補的な配列を含むXアダプターを結合させて、二本鎖cDNAを基準として5’末端側にXアダプターが結合している断片を得る工程、
(f)工程(e)で回収された断片を、該Xアダプターを切断しない第2の制限酵素Yで切断する工程、
(g)該タグ物質に高親和性を有する物質を用いて、工程(f)で得られた断片から該タグ物質が結合している断片を取り除くことにより、二本鎖cDNAを基準として3’末端側に第2の制限酵素Yによる切断部位を含む断片を回収する工程、
(h)工程(g)で回収された断片の第2の制限酵素Yによる切断部位へ、該切断部位の配列に相補的な配列及びYプライマーに相補的な配列を含むYアダプターを結合させて、二本鎖cDNAを基準として3’末端側にYアダプターが結合している二本鎖配列の断片を得る工程、
(i)該Xアダプターの配列に相補的な配列を含むXプライマーであって、該Xプライマーを基準として3’末端に2塩基配列であるN12(N1及びN2は同一又は異なっていてもよい、アデニン、チミン、グアニン及びシトシンからなる群より選ばれる塩基である)を含むXプライマーと、該Yアダプターの配列に相補的な配列を含むYプライマーであって、該Yプライマーを基準として3’末端に2塩基配列であるN34(N3及びN4は同一又は異なっていてもよい、アデニン、チミン、グアニン及びシトシンからなる群より選ばれる塩基である)を含むYプライマーとからなるプライマーセットを用いて、工程(h)で得られた二本鎖配列の断片を鋳型としてPCR反応を行う工程、
(j)得られたPCR産物を電気泳動し、その移動距離及びピークを検出することにより遺伝子発現プロファイルを作製する工程、及び、
(k)前記工程(a)~(i)により得られた2つの遺伝子発現プロファイルを比較することにより被検細胞の遺伝子発現頻度の変化を解析する工程
を含み、
工程(i)において、
Xプライマー及びYプライマーのそれぞれXアダプター及びYアダプターへのアニーリングを、プライマーのTmMAX+6℃~TmMAX+14℃の温度で行うこと
を特徴とする方法。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、遺伝子発現プロファイルを作製する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
西暦2002年、ヒトゲノム配列がほぼ完全に解読された。得られた塩基データからオーダーメード治療等の開発が期待されているが、その為には生体内でどの遺伝子がどの程度発現しているかの解明、すなわち遺伝子発現ネットワークの解明が非常に重要である。そして、遺伝子発現ネットワークの解明に当たっては、ある時点における生体内でどの遺伝子がどの程度発現しているかを示す遺伝子発現プロファイルを作製する必要がある。
現在、遺伝子発現プロファイル作製方法として、ディファレンシャルディスプレー法、遺伝子発現の逐次分析法(SAGE)、マイクロアレイ又はDNAチップを用いた方法及び国際公開第02/48352号パンフレットに開示される高カバー率遺伝子発現プロファイル解析法(HiCEP)等がある。
これらの遺伝子発現プロファイル作製方法の中で、HiCEP法は、未知の遺伝子を含む広範囲の遺伝子をカバーする遺伝子発現プロフィールを簡便に作製する方法として優れた方法である。
また、HiCEP法の一工程として用いるPCR反応において、プライマーの鋳型へのアニーリング温度は、従来、使用するプライマーのTm付近の温度、例えば、GC含量が50%の20merからなるプライマーを用いる場合、55℃でのアニーリング温度が用いられていた(サムブルック(Sambrook)及びラッセル(Russel)著、「モレキュラー・クローニング(Molecular Cloning)」、(米国)、第3版、コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー・プレス(Cold Spring Harbor Laboratory Press)、2001年、Protocol 15、Quantitative PCR、8.86)。
【特許文献1】
国際公開第02/48352号パンフレット
【非特許文献1】
サムブルック(Sambrook)及びラッセル(Russel)著、「モレキュラー・クローニング(Molecular Cloning)」、(米国)、第3版、コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー・プレス(Cold Spring Harbor Laboratory Press)、2001年、Protocol 15、Quantitative PCR、8.86
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
遺伝子の発現量は、遺伝子の種類及びその発現時期に依存して異なる。したがって、遺伝子発現ネットワークを解明するためには、その前提となる遺伝子発現プロフィール作製方法が発現遺伝子に対して高い検出感度を有していることが望まれる。
そこで、本発明者等は、広範囲の遺伝子をカバーする遺伝子発現プロフィールを簡便に作製することができるHiCEP法について、発現遺伝子の検出感度の更なる向上を課題として鋭意検討を重ねた。
【0004】
【課題を解決するための手段】
その結果、HiCEP法のPCR反応工程において、当該PCR反応に用いるプライマーの鋳型へのアニーリング温度を特別の範囲に設定することにより発現遺伝子の検出感度が飛躍的に向上することを見いだした。本発明はこれらの知見に基づいてなされたものである。
すなわち、本発明は、遺伝子発現プロファイルを作製する方法であって、
(a)ポリ(A)RNAを鋳型として一本鎖cDNAを合成する工程であって、該一本鎖cDNAを基準として5’末端にタグ物質が付加された一本鎖cDNAを合成する工程、
(b)工程(a)で合成された一本鎖cDNAを鋳型として二本鎖cDNAを合成する工程であって、該二本鎖cDNAを基準として3’末端側にタグ物質が付加された二本鎖cDNAを得る工程、
(c)工程(b)で得られた二本鎖cDNAを第1の制限酵素Xで切断する工程、
(d)該タグ物質に高親和性を有する物質を用いて、工程(c)で得られた断片から該タグ物質が付加している断片を回収する工程、
(e)工程(d)で回収された断片の第1の制限酵素Xによる切断部位へ、該切断部位の配列に相補的な配列及びXプライマーに相補的な配列を含むXアダプターを結合させて、二本鎖cDNAを基準として5’末端側にXアダプターが結合している断片を得る工程、
(f)工程(e)で回収された断片を、該Xアダプターを切断しない第2の制限酵素Yで切断する工程、
(g)該タグ物質に高親和性を有する物質を用いて、工程(f)で得られた断片から該タグ物質が結合している断片を取り除くことにより、二本鎖cDNAを基準として3’末端側に第2の制限酵素Yによる切断部位を含む断片を回収する工程、
(h)工程(g)で回収された断片の第2の制限酵素Yによる切断部位へ、該切断部位の配列に相補的な配列及びYプライマーに相補的な配列を含むYアダプターを結合させて、二本鎖cDNAを基準として3’末端側にYアダプターが結合している二本鎖配列の断片を得る工程、
(i)該Xアダプターの配列に相補的な配列を含むXプライマーであって、該Xプライマーを基準として3’末端に2塩基配列であるN12(N1及びN2は同一又は異なっていてもよい、アデニン、チミン、グアニン及びシトシンからなる群より選ばれる塩基である)を含むXプライマーと、該Yアダプターの配列に相補的な配列を含むYプライマーであって、該Yプライマーを基準として3’末端に2塩基配列であるN34(N3及びN4は同一又は異なっていてもよい、アデニン、チミン、グアニン及びシトシンからなる群より選ばれる塩基である)を含むYプライマーとからなるプライマーセットを用いて、工程(h)で得られた二本鎖配列の断片を鋳型としてPCR反応を行う工程、及び、
(j)得られたPCR産物を電気泳動し、その移動距離及びピークを検出することにより遺伝子発現プロファイルを作製する工程、
を含み、
工程(i)において、
Xプライマー及びYプライマーのそれぞれXアダプター及びYアダプターへのアニーリングを、プライマーのTmMAX+6℃~TmMAX+14℃の温度で行うこと
を特徴とする方法である。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明の遺伝子発現プロファイル作製方法を、一態様としての図1を用いて説明する。上述の工程(a)から工程(j)の工程と図1における工程(a)から工程(j)とは、それぞれのアルファベット同士で対応する。
図1に示す配列における各アルファベットは塩基配列を構成する塩基を示す。Aはアデニン(以下、Aと略す)、Gはグアニン(以下、Gと略す)、Cはシトシン(以下、Cと略す)、Gはグアニン(以下、Gと略す)及びTはチミン(以下、Tと略す)を示す。N1、N2、N3及びN4はそれぞれ、同一又は異なっていてもよい、A、C、G及びTからなる群より選ばれる塩基である。
本願明細書において、特に断りのないかぎり、二本鎖cDNAのセンス鎖(鋳型となるポリ(A)RNAに相同な配列を有する鎖)の5’末端側を二本鎖cDNAの5’末端側とし、当該センス鎖の3’末端側を二本鎖cDNAの3’末端側とする。
【0006】
工程(a)
ポリ(A)RNAを鋳型として一本鎖cDNAを合成する工程である。
まず、遺伝子発現プロファイルの作製対象となる細胞からポリ(A)RNA11を抽出する。
抽出したポリ(A)RNA11の3’末端側のポリ(A)テイルに相補的なオリゴdTプライマーをタグ物質12で標識化したものをプライマーとして用いて、ポリ(A)RNA11を鋳型として一本鎖cDNA13を合成する(図1ではポリ(A)RNA11と共に示されている)。タグ物質12は一本鎖cDNA13を基準として5’末端側に付加されている。
工程(b)
工程(a)で合成された一本鎖cDNA13を鋳型として二本鎖cDNA14を合成する。タグ物質12は二本鎖cDNA14を基準として3’末端側に付加されている。
工程(c)
工程(b)で得られた二本鎖cDNA14を第1の制限酵素Xで切断する。
工程(d)
タグ物質12に高親和性を有する物質15を用いてタグ物質12を捕捉し、工程(c)で得られた断片からタグ物質12が付加している断片を回収する。
工程(e)
工程(d)で回収された断片の第1の制限酵素Xによる切断部位へ、該切断部位の配列に相補的な配列及びXプライマーに相補的な配列を含むXアダプター16を結合させて、二本鎖cDNA14を基準として5’末端側にXアダプター16が結合している断片を得る。
工程(f)
工程(e)で回収された断片を、第2の制限酵素Yで切断する。
工程(g)
タグ物質12に高親和性を有する物質15を用いて、工程(f)で得られた断片から該タグ物質12が結合している断片を取り除くことにより、二本鎖cDNA14を基準として3’末端側に第2の制限酵素Yによる切断部位を含む断片を回収する。
工程(h)
工程(g)で回収された断片の第2の制限酵素Yによる切断部位へ、該切断部位の配列に相補的な配列及びYプライマーに相補的な配列を含むYアダプター17を結合させて、二本鎖cDNA14を基準として3’末端側にYアダプター17が結合している二本鎖配列の断片18を得る。得られた二本鎖配列の断片18は、二本鎖cDNA14を基準として5’末端側にXアダプター16を含み、かつ3’末端側にYアダプター17を含んでいる。
工程(i)
Xアダプター16の配列に相補的な配列を含むXプライマー19であって、該Xプライマー19を基準として3’末端(すなわち、増幅が起こる側)に2塩基配列であるN12(N1及びN2は同一又は異なっていてもよい、A、T、G及びCからなる群より選ばれる塩基である)を含み、該Xプライマー19を基準として5’末端に蛍光物質20を結合したXプライマー19と、Yアダプター17の配列に相補的な配列を含むYプライマー21であって、該Yプライマー21を基準として3’末端(すなわち、増幅が起こる側)に2塩基配列であるN34(N3及びN4は同一又は異なっていてもよい、A、T、G及びCからなる群より選ばれる塩基である)を含むYプライマー21とからなるプライマーセットを用いて、工程(h)で得られた二本鎖配列の断片18を鋳型としてPCR反応を行う。ここで、プライマーセットの鋳型へのアニーリング温度はプライマーのTmMAX+6℃~TmMAX+14℃である。
工程(j)
得られたPCR産物を電気泳動し、その移動距離及びピークを検出することにより遺伝子発現プロファイルを作製する。
【0007】
本明細書において「遺伝子発現プロファイル」とは、ある条件下における特定の細胞における遺伝子の発現パターン、公知及び未知遺伝子の発現の有無、発現される全ての遺伝子の発現量等の情報を示すものである。また、当該遺伝子発現プロファイルは、遺伝子の発現を解析するための手段として使用することが可能である。
「ポリ(A)RNA」とは、一般的にポリAとも称される配列を3’末端に含むmRNAをいう。また、ポリ(A)RNAに相補的な配列を有する「オリゴdTプライマー」によって、当該ポリ(A)RNAからcDNAを合成し得る。ここで使用される「オリゴdTプライマー」は、一般的にはオリゴ(dT)プライマーとも称される。オリゴdTプライマーを用いたポリ(A)RNAからの一本鎖cDNAの合成(工程(a))は、一般的に行われるいずれかの条件により達成することが可能である。また、一本鎖cDNAからの二本鎖cDNAの合成(工程(b))も、一般的に行われるいずれかの条件により達成することが可能である。
「タグ物質」及び「タグ物質に高親和性を有する物質」とは、互いに高親和性をもって特異的に結合することが可能な結合対を構成する一方の物質を指す。本発明の一態様である実施例1に示す方法では、タグ物質としてビオチンを、タグ物質に高親和性を有する物質としてストレプトアビジンを使用しているが、これに限るものではない。互いに高親和性をもって特異的に結合するこが可能な結合対であれば使用することが可能である。本発明に使用可能なタグ物質とタグ物質に高親和性を有する物質との組合せの例には、ビオチンとストレプトアビジン、ビオチンとアビジン、FITCとFITC抗体、DIGとアンタイDIG及びプロテインAとマウスIgG及びラテックス粒子等が含まれるが、これらに限られるものではない。タグ物質のDNA配列への付加は、一般的に行われるいずれかの条件により達成することが可能である。また、「タグ物質」と「タグ物質に高親和性を有する物質」との間の親和性に基づくDNA断片の回収(工程(d)及び(g))は、一般的に行われるいずれかの条件により達成することが可能である。
「制限酵素」とは、一般的に、制限エンドヌクレアーゼとも称される酵素であり、特定の配列において二本鎖DNAを加水分解し切断する酵素である。本発明においては、適切な断片を得るために2種類の制限酵素X及びYを組み合わせて使用する。本発明に使用可能な制限酵素は、発現された遺伝子であるmRNAから合成された二本鎖cDNAを、識別可能な長さを有する断片に切断することが可能な酵素が好ましい。また、得られた当該二本鎖のより多くを、好ましくはほとんど全ての二本鎖を切断するような酵素が好ましい。そのような酵素の例を下記表1に示す。
【0008】
【表1】
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【0009】
表1の酵素からいずれか2つを選択し、組み合わせて使用することが可能である。また、表1に示した酵素は4塩基認識酵素であるが、その他の4塩基認識酵素、又は6塩基認識酵素を使用してもよい。本発明では、4塩基認識酵素の使用が好ましく、MspIとMseIとを組み合わせて使用することが特に好ましい。本発明の一態様である実施例1に示す方法では、制限酵素XとしてMspIを、制限酵素YとしてMseIを使用しているが、これらに限定されるものではない。制限酵素による二本鎖DNAの切断(工程(c)及び(f))は、一般的に行われるいずれかの条件により達成することが可能である。
「アダプター」とは、工程(i)におけるPCR反応の際に用いるプライマーを結合させるために用いるものである。アダプターは、使用する制限酵素及びプライマーに応じて設計される。すなわち、制限酵素Xの認識切断部位に結合するためのXアダプターは、制限酵素Xの認識切断部位に相補的な配列を含み、更にXプライマーに相補的な配列を有する。好ましくは、Xアダプターは30塩基前後で設計され得る。それによって安定したPCRが行える。制限酵素Yの認識切断部位に結合するためのYアダプターは制限酵素Yの認識切断部位に相補的な配列を含み、更にYプライマーに相補的な任意の配列を有する。好ましくは、Yアダプターは30塩基前後で設計され得る。それによって安定したPCRが行うことができる。
本発明の一態様である実施例1の方法では、Xアダプターとして制限酵素MspIによる切断部位に相補的な配列を含むもの(配列番号1及び2)を、Yアダプターとして制限酵素MseIによる切断部位に相補的な配列を含むもの(配列番号3及び4)を使用しているが、これらに限定されるものではない。アダプターの二本鎖DNAへの結合(工程(e)及び工程(h))は、一般的に行われるいずれかの条件により達成することが可能である。
【0010】
工程(i)のPCR反応で使用するプライマーセットを構成するXプライマー及びYプライマーの配列において、各プライマーの3’末端側の2塩基配列(XプライマーではN12、YプライマーではN34)以外の部分の配列は、被験対象のRNA配列と一致しないことが望ましい。しかしながら、如何なる生物においても全RNAの配列が明らかとなっていない現状では、この条件を完全に満たすことは困難である。そこで、例えばヒトを被験対象とする場合は、ヒトゲノム配列に存在しない又は非常に出現頻度が低い配列を選択することが好ましい。
上述の条件を満たすべく、Xプライマー及びYプライマーの長さは、それぞれ16塩基以上であることが好ましい。例えば、ヒトゲノム配列の長さは約30億塩基であるところ、プライマーの長さを16塩基とした場合、プライマーを構成する4種類の塩基(A、C、G及びT)から4の16乗通り(約40億通り)のプライマーが可能であるので、その中から選択した任意の16塩基のプライマーはヒトゲノム配列中に1回以下の確率で出現することになる。そこで、後述するプライマーに求められる一般的条件を考慮して設計した長さ16塩基以上のプライマーにつき、その配列と公共の塩基配列データベースに登録された配列とを比較することにより、ヒトゲノムに存在する配列と一致しない、あるいは、非常に出現頻度が低い配列を有するプライマーを選択することができる。
また、工程(i)で用いるプライマーは、PCRプライマーとして一般的に要求される条件(例えば、「バイオ実験イラストレイテッド (3)新版 本当にふえるPCR」、中山広樹 著、秀潤社、2002年、第2版、第4刷に記載される条件)を満たしている必要がある。
1.プライマーダイマーの形成が、Xプライマー間、Yプライマー間、XプライマーとYプライマーとの間で生ずることが予測されないこと。
2.分子内高次構造の形成が、Xプライマー内、Yプライマー内で生ずることが予想されないこと。
3.5’末端配列の相補性が、Xプライマー間、Yプライマー間、YプライマーとYプライマーとの間で生ずることが予測されないこと。
【0011】
プライマーのTm値について、当該Tm値はアニーリング温度を規定(プライマーのTmMAX+6℃~TmMAX+14℃)するので、プライマーのTm値が高くなるとアニーリング温度も高くなる。したがって、アニーリング温度が、耐熱性ポリメラーゼがPCR反応の全反応時間にわたって充分に機能しうる温度をこえることのないよう、プライマーのTm値は使用する耐熱性ポリメラーゼがPCR反応の全反応時間にわたって充分に機能する上限温度より6℃以上低いことが好ましい。そこで、工程(i)で用いるX及びYプライマーのTm値は、それぞれ59℃~69℃、特に60℃~64℃であることが好ましい。Xプライマー及びYプライマーそれぞれのTmが60~64℃であると、後述のアニーリング温度(TmMAX+6℃~TmMAX+14℃)を用いてPCR反応を行ったときに発現遺伝子の極めて高い検出感度が得られる。
X及びYプライマーの3’末端側の2塩基配列(XプライマーではN12、YプライマーではN34)は、それぞれ、同一又は異なっていてもよい、アデニン、チミン、グアニン及びシトシンからなる群より選ばれる塩基である。
Xプライマー及びYプライマーは、一般的なプライマー合成方法、例えば、ホスホロアミダイト法によるオリゴヌクレオチドの化学合成法であるLetsinger 等の方法(Nucleic Acids Research, 20, 1879-1882, 1992)及び特開平11-08018号公報に記載の方法を用いて合成することができる。
また、PCR反応の後の検出を容易にするために、当該プライマーのいずれかの末端に蛍光物質を予め結合しておくことが好ましい。好ましくは、Xプライマーの5’末端に結合する。本発明で使用することが可能な蛍光物質は、6-カルボキシフルオレッセイン(FAM)、4,7,2’,4’,5’,7’-ヘキサクロロ-6-カルボキシフルオレッセイン(HEX)、NED(アプライドバイオシステムズジャパン社)及び6-カルボキシ-X-ローダミン(Rox)等が含まれる。
【0012】
「プライマーセット」とは、工程(h)で得られた二本鎖配列の断片を鋳型としてPCR反応を行うために使用する1つのXプライマーと1つのYプライマーとからなる1組のプライマーのセットをいう。
ここで、プライマーセットを構成するX及びYプライマーとして、各プライマー配列の3’末端側の2塩基配列(XプライマーではN12、YプライマーではN34)以外の配列の構成が固定されたプライマー(例えば、Xプライマーとして実施例1で用いる配列番号5で示されるMspIプライマー、Yプライマーとして実施例1で用いる配列番号6で示されるMseIプライマー)を用いる場合、当該2塩基配列を構成する塩基の種類に依存して16種類のXプライマーと16種類のYプライマーが得られ、これらの組合せから256種類のプライマーセットが得られる。このような256種類のプライマーセットを用いると、ほとんど全ての遺伝子の発現を網羅した遺伝子発現プロファイルを簡便に作成することができるので好ましい。
工程(j)の「電気泳動をし、移動距離及びピークを検出することにより遺伝子発現プロファイルを作製する」手段は、増幅PCR産物の分子量(塩基配列長)とその量が測定できる手段であればいずれの手段であってもよい。その中でも、分解能の高さから電気泳動が好ましく、ゲル電気泳動が特に好ましい。ゲル電気泳動を用いる場合、ゲル電気泳動装置と解析ソフトウェアとを組み合わせると、ゲル電気泳動の結果を、分離された増幅PCR産物の移動距離及びその量を指標とするピークパターンとして得ることができる。このピークパターンにおいて、増幅PCR産物の移動距離は特定の遺伝子を反映し、当該増幅PCR産物の量は当該遺伝子の発現量を反映しているので、当該ピークパターンは遺伝子発現プロファイルそのものとなる。
ゲル電気泳動装置としては、例えば、シークエンサと呼ばれるABI PRISM3100(アプライドバイオシステムズジャパン社)、ABI PRISM3700(アプライドバイオシステムズジャパン社)及びMegaBACE 1000(アマシャムファルマシア社)を使用することができ、解析ソフトウェアとしては、例えばGeneScan(登録商標)(アプライドバイオシステムズジャパン社)を使用することができる。
尚、上述の各工程は、国際公開第02/48352号パンフレットに記載される方法にしたがい行うこともできる。
また、本発明に従い作製した遺伝子発現プロファイル上に現れるピークの大きさは、被検細胞で発現した遺伝子の発現量を反映している。したがって、当該ピークの大きさの変化を観察することにより、遺伝子の発現頻度を解析することができる。例えば、正常細胞と異常細胞との比較、正常細胞と癌細胞との比較、異なる細胞間での比較、及び異なる条件により処理された細胞間での比較等が可能となる。
【0013】
以下、本発明の特徴となる工程(i)のアニーリング温度について詳述する。
工程(i)のPCR反応では、プライマーセットの鋳型へアニーリング、すなわち、プライマーセットを構成するXプライマー及びYプライマーの、工程(h)で得られた二本鎖配列の断片のうち対応する鎖へのアニーリングを、プライマーのTmMAX+6℃~TmMAX+14℃、好ましくはTmMAX+6℃~TmMAX+10℃、特に好ましくはTmMAX+6℃~TmMAX+9℃の温度範囲で行う。
ここで、プライマーの「TmMAX」とは、プライマーセットを構成するXプライマーのTm値とYプライマーのTm値のうち大きい方のTm値をいう。
また、プライマーの「Tm」とは、プライマーとアダプターとが形成する二本鎖がほどける温度のことをいう。Tmは、例えば水島昭二、大島泰郎他、ライフサイエンスの基礎実験、丸善株式会社に記載の方法にしたがい実験的に求めることができる。又、プライマーを構成する塩基数が20未満である場合は、例えば、最も簡便には、サムブルック(Sambrook)及びラッセル(Russel)著、「モレキュラー・クローニング(Molecular Cloning)」、(米国)、第3版、コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー・プレス(Cold Spring Harbor Laboratory Press)、2001年、Chapter 10.3に記載の以下の計算式:
Tm(℃)=2×(A+T)+4×(G+C) (式1)
(式中、(A+T)は、プライマーを構成するアデニン(A)及びチミン(T)残基の合計数であり、(C+G)は、シトシン(C)及びグアニン(G)残基の合計数である。)にしたがい計算的に求めることもできる。
上述の通り、Tmは実験的及び計算的に求めることができるものでありかつその方法も種々存在するものであるが、同一方法を用いてXプライマー及びYプライマーのTmを求める限り任意の手法を使用することができる。
複数種類のプライマーセットを同時使用する場合は、使用する各プライマーセットを構成するXプライマー及びYプライマーのTm値のうち、最も大きいTm値がプライマーのTmMAXとなる。本発明のプライマーセットのアニーリングをプライマーのTmMAX+6℃~TmMAX+14℃の温度範囲内で行うとミスアニーリングが回避され、結果として発現遺伝子の検出感度を向上させることができる。
【0014】
尚、プライマーの鋳型への正確なアニーリングのみを目的とすれば、アニーリング温度がプライマーのTmMAX+6℃以上であればその目的を達成することができると考えられる。
しかし、PCR反応で使用する耐熱性ポリメラーゼの酵素活性は温度の影響を受け、酵素の変性が起こるような高温下(例えば、Taqポリメラーゼでは90℃以上)では耐熱性ポリメラーゼの機能低下が起こりPCR反応の効率が低下する。したがって、アニーリング温度は耐熱性ポリメラーゼがPCR反応の全反応時間にわたって充分に機能することができる温度以下(例えば、Taqポリメラーゼでは75℃)に設定する必要がある。
以上の点を鑑み、本発明では、工程(i)におけるアニーリング温度を、プライマーの鋳型への正確なアニーリングを達成しつつ、かつ、耐熱性ポリメラーゼが充分に機能しうる温度範囲であり、かつ、発現遺伝子の検出感度の向上が充分に達成できる温度範囲として、プライマーのTmMAX+6℃~TmMAX+14℃、好ましくはTmMAX+6℃~TmMAX+9℃であるように設定する。
尚、上述のアニーリング温度以外のPCR反応条件については、一般的に用いられるPCR反応条件を用いることができる。
本発明の一態様である実施例1では、Xプライマーとして制限酵素MspIによる切断部位に相補的な配列を含むXアダプターに相補的な配列を含むもの(配列番号5)を、Yプライマーとして制限酵素MseIによる切断部位に相補的な配列を含むYアダプターに相補的な配列を含むもの(配列番号6)を使用しているが、この場合における、上述の式(1)に従い計算されるX及びYプライマーのTmは60℃~64℃(すなわち、TmMAXは64℃)であるので、アニーリング温度は70℃(TmMAX+6℃)~78℃(TmMAX+14℃)となるが、これらに限定されるものではない。
本発明の好ましい態様では、工程(i)において、
Xアダプターとして配列番号1及び2に記載の配列を有するもの、及び、Yプライマーとして配列番号3及び4に記載の配列を有するものを用い、
Xプライマーとして配列番号5に記載の配列を有するもの、及び、Yプライマーとして配列番号6に記載の配列を有するものから構成される256種類のプライマーセットを用い、
プライマーのアニーリング温度を70℃(TmMAX+6℃)~73℃(TmMAX+9℃)としてPCR反応を行う。
【0015】
【実施例】
次に、実施例により本発明の効果を具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
発現遺伝子の検出感度の指標として、遺伝子発現プロファイル中の偽ピークの存在を採用した。
遺伝子発現プロファイルにおけるピークとは、本発明の工程(i)のPCR反応で増幅したPCR産物(遺伝子転写物)の量に対応するピークのことであり、例えば、Xプライマーの5’末端側に結合させた蛍光色素に基づいて検出することができる。
偽ピークとは、プライマーセットを構成するプライマーの3’末端の2塩基(XプライマーではN12、YプライマーではN34)が、相補的でない塩基配列へミスアニーリングすることにより生じるピークのことをいう。偽ピークの存在は、本来ある1つの遺伝子転写物は当該遺伝子転写物に相補的な配列を含む唯一の特定プライマーセットにより生ずる唯一のピーク(真正ピーク)によって検出されるべきところ、相補的でない他のプライマーセットによってもピーク(偽ピーク)が生じ、結果として一つの遺伝子転写物について複数のピークが生じている状態を意味する。かかる一つの遺伝子転写物に対する複数のピークの存在は、発現遺伝子の検出感度に影響し、その結果、遺伝子発現プロファイルに基づく遺伝子発現解析処理を煩雑にする。したがって、偽ピークを生じさせない方法又は解析から除外するための偽ピークを見分ける方法が必要となる。本発明の方法は、PCR反応に用いるプライマー及び当該プライマーの鋳型へのアニーリング温度を特別の範囲に設定することにより偽ピークの発生を減少させ、発現遺伝子の検出感度を向上させるものである。
【0016】
ピークの真偽の評価方法
ピークの真偽は、既知の配列を有するプライマーを用いて得られたある遺伝子に対応する増幅PCR産物の塩基配列と、既存のデータベースに登録され配列が既知の当該遺伝子の塩基配列とを比較し、両塩基配列におけるプライマーの3’末端の2塩基(XプライマーではN12、YプライマーではN34)に対応する部分が一致するか否かで評価した。
具体的には、以下の手順にしたがいピークの真偽を評価した。
1.既知の配列を有するX及びYプライマーからなる特定のプライマーセットを用いてHiCEP法により遺伝子発現プロファイルを作成し、現れたピークに対応する増幅PCR産物の配列決定を行った。
2.増幅PCR産物の配列の中から、用いたプライマーX及びYの塩基配列に対応する領域を同定し、当該同定された領域を含みかつこれらの領域に挟まれた塩基配列部分のみを取り出し、既存のデータベースに対してコンピューターを用いた塩基配列の相同検索(BLAST)を実行し、以下(1)~(3)の3基準について評価した。
尚、以下の説明で言及する「データベースに登録されている遺伝子の塩基配列」において、「データベースに登録されている遺伝子のセンス鎖」とは、PCR反応において鋳型となる工程(h)で得られた二本鎖配列の断片のセンス鎖に相同な配列を有する鎖をいい、「データベースに登録されている遺伝子のアンチセンス鎖」とは、PCR反応において鋳型となる工程(h)で得られた二本鎖配列の断片のアンチセンス鎖に相同な配列を有する鎖をいう。
又、以下の説明で言及する「増幅PCR産物」において、「増幅PCR産物のセンス鎖」とは、PCR反応において鋳型となる工程(h)で得られた二本鎖配列の断片のセンス鎖に相同な配列を有する鎖をいい、「増幅PCR産物のアンチセンス鎖」とは、PCR反応において鋳型となる工程(h)で得られた二本鎖配列の断片のアンチセンス鎖に相同な配列を有する鎖をいう。
【0017】
(1)相同検索にかけた増幅PCR産物のセンス鎖及びアンチセンス鎖の塩基配列(但し、各プライマーに対応する部分を除く)が、それぞれ、データベースに登録されているある遺伝子(全部又は一部)のセンス鎖及びアンチセンス鎖の塩基配列と100%一致すること。
(2)増幅PCR産物のセンス鎖において、(1)で一致した領域の5’末端側に近接して制限酵素Xの認識配列が存在し、かつ、増幅PCR産物のアンチセンス鎖において、(1)で一致した領域の5’末端側に近接して制限酵素Yの認識配列が存在すること。
(3)増幅PCR産物のセンス鎖における(2)で評価した制限酵素Xの認識配列のすぐ3’末端側の2塩基配列(XプライマーのN12の塩基配列に対応)と、データベースに登録されている遺伝子のセンス鎖における制限酵素Xの認識配列のすぐ3’末端側の2塩基配列(XプライマーのN12の塩基配列に対応)とが一致し、かつ、増幅PCR産物のアンチセンス鎖における(2)で評価した制限酵素Yの認識配列のすぐ3’末端側の2塩基配列(YプライマーのN34の塩基配列に対応)と、データベースに登録されている遺伝子のアンチセンス鎖における制限酵素Yの認識配列のすぐ3’末端側の2塩基配列(YプライマーのN34の塩基配列に対応)とが一致すること。
3.あるピークを構成する増幅PCR産物が上記3条件を全て満たしている場合、当該ピークはプライマーの正確なアニーリングに基づき得られたものであるとして、そのピークは真正ピークであると判断した。
他方、上記(1)及び(2)の条件は満たすが(3)の条件を満たさないPCR産物からなるピークが存在する。正確なアニーリングに基づき増幅反応が行われる場合、「増幅PCR産物」と「データベースに登録されている遺伝子」とは、各プライマーの3’末端側の2塩基配列(XプライマーではN12、YプライマーではN34)に該当する部分においても同一の配列を有するはずである。一方、ミスアニーリングに基づき増幅反応が行われた場合、次サイクルの増幅反応ではミスアニーリングを起こしたプライマーを鋳型として更なる増幅反応が進行するので、最終的に得られる「増幅PCR産物」と「データベースに登録されている遺伝子」とは、各プライマーの3’末端側の2塩基配列に該当する部分において異なる配列を有することになる。したがって、プライマーの3’末端側の2塩基配列に該当する部分において「データベースに登録されている遺伝子」と異なる配列を有する「増幅PCR産物」(すなわち、(3)の条件を満たさないPCR産物)はプライマーのミスアニーリングに基づき得られたPCR産物であるとして、かかるPCR産物からなるピークを偽ピークであると判断した。
【0018】
実施例1
マウスの胚性繊維芽細胞(MEF)について、以下の手順により遺伝子発現プロファイルを作成した。
(a)タグ物質が付加された一本鎖cDNAの合成
C3H系統のマウスから調製した胚性繊維芽細胞(MEF)107個からキアゲン社、RNAeasy MiniKitを用いてトータルRNAを抽出し、更にマイクロファーストトラックキット(インビトロゲン社)を用いてポリ(A)RNAを抽出した。抽出したポリ(A)RNAを鋳型として、タグ物質としてのビオチンで5’末端を修飾したオリゴdTプライマー(インビトロゲン社によるカスタム合成オリゴヌクレオチド)を用い、スーパースクリプト・ファーストストランドシステム(インビトロゲン社)を用いて、該一本鎖cDNAを基準として5’末端にビオチンが付加された一本鎖cDNAを合成した。
(b)二本鎖cDNAの合成
工程(a)で合成した一本鎖cDNAを鋳型として、DNAポリメラーゼI、セカンドストランドバッファー及びE.coli DNAリガーゼ(共にインビトロゲン社)を用い、インビトロゲン社推奨の二本鎖cDNA合成方法にしたがい、該二本鎖cDNAを基準として3’末端側にビオチンが付加された二本鎖cDNAを合成した。
(c)制限酵素Xによる切断
工程(b)で得られた二本鎖cDNAを、第1の制限酵素XとしてのMspI(TakaRa社)を37℃、4時間で用いて二本鎖cDNAを切断した。
(d)タグ物質が付加している断片の回収
工程(c)で得られた二本鎖cDNA断片から、ビオチンに高親和性を有する物質としてのストレプトアビジンが固定された磁性ビーズ(DYNAL社)を用いDYNAL社推奨の条件にしたがいビオチンが付加している断片を回収した。
(e)Xアダプターの結合
工程(d)で回収された二本鎖cDNA断片の制限酵素MspIによる切断部位へ、該切断部位の配列に相補的な配列を含むXアダプターとしてのMspIアダプター(インビトロゲン社によるカスタムオリゴ合成):
MspIアダプターの塩基配列
5'-AACACGAATGGCTACATGACACTCGGTT -3'(二本鎖cDNAのセンス鎖側)(配列番号1)
5'-CGAACCGAGTGTCATGTAGCCATTCGTGTT-3'(二本鎖cDNAのアンチセンス鎖側)(配列番号2)
を、T4DNAリガーゼ(NEB社(New England Biolabs))用い、16℃で16時間以上かけて結合させて、二本鎖cDNAを基準として5’末端側にMspIアダプターが結合している断片を得た。
【0019】
(f)第2の制限酵素Yによる切断
工程(e)で回収された二本鎖cDNA断片を、第2の制限酵素YとしてのMseI(NEB社)を、37℃で4時間用いて二本鎖cDNAを切断した。
(g)第2の制限酵素Yによる切断部位を含む断片の回収
工程(f)で得られた二本鎖cDNA断片から、ストレプトアビジンが固定された磁性ビーズ(DYNAL社)を用い、DYNAL社推奨の方法にしたがいビオチンが付加している断片を除去し、第2の制限酵素Yによる切断部位を含む断片を回収した。得られた二本鎖cDNA断片は、その5’末端にMspIアダプターを、3’末端に制限酵素MseIによる切断部位を含んでいた。
(h)Yアダプターの結合
工程(g)で回収された二本鎖cDNA断片の制限酵素MseIによる切断部位へ、該切断部位の配列に相補的な配列を含むYアダプターとしてのMseIアダプター(インビトロゲン社によるカスタムオリゴ合成):
MseIアダプターの塩基配列
5'-AGTCACGAGTATCATACTGCGGGCGTCC-3'(二本鎖cDNAのアンチセンス鎖側)(配列番号3)
5'-TAGGACGCCCGCAGTATGATACTCGTGACT-3'(二本鎖cDNAのセンス鎖側)(配列番号4)
を、T4DNAリガーゼ(NEB社)を用い、25℃で16時間以上かけてで結合させて、二本鎖cDNAを基準として3’末端側にMseIアダプターが結合している断片を得た。エタノール沈殿により過剰のアダプターを除去した。
【0020】
(i)X及びYプライマーを用いたPCR反応
(1)X及びYプライマーの合成
Xプライマーとして20塩基からなるMspIプライマー:
MseIプライマーの塩基配列
5'-ACATGACACTCGGTTCGGN1N2-3'
(式中、N1N2は、CC、CT、CG、CA、TC、TT、TA、TG、AC、AA、AG、AT、GT、GC、GA又はGGである)(配列番号5)
を、インビトロゲン社によるカスタムオリゴ合成により、N12の種類に依存して16種類合成した。
MspIプライマーと同様の方法にしたがい、Yプライマーとして20塩基からなるMseIプライマー:
MseIプライマーの塩基配列
5'-ATACTGCGGGCGTCCTAAN3N4-3'
(式中、N3N4は、CC、CT、CG、CA、TC、TT、TA、TG、AC、AA、AG、AT、GT、GC、GA又はGGである)(配列番号6)
を、N34の種類に依存して16種類合成した。
尚、MspIプライマーはインビトロゲン社カスタムオリゴ合成により、蛍光標識名FAM、NED又はHEXで標識した。
得られたMseIプライマー(16種類)及びMspIプライマー(16種類)を組み合わせて全256種類(16×16)のプライマーのペア(プライマーセット)を作成した。
全256種類(16×16)(MseIプライマー(16種類)及びMspIプライマー(16種類))のプライマーセットを構成する各プライマーのTmについて、前述の計算式(1)によると、3’末端側の2塩基配列(XプライマーではN12、YプライマーではN34)によって異なったが60℃~64℃であった。したがって、TmMAXを64℃とした。
【0021】
(2)PCR反応
得られた256種類のプライマーセットを用い、工程(h)で得られた二本鎖配列の断片を鋳型として、TITANIUM Taq DNAポリメラーゼ(クロンテック社)を用い、下記の条件でPCR反応を行った。使用したポリメラーゼの至適温度範囲は72℃~74℃であった。アニーリング温度は、70℃(TmMAX+6℃)であった。
95℃で1分
(98℃で20秒、70℃で30秒、72℃で1分)×28回
60℃で30分
(j)遺伝子発現プロファイルの作製
工程(h)で得られたPCR産物を、PRISM 3100キャピラリー電気泳動装置(アプライドバイオシステムズ社)を用い、POP4推奨のプロトコールにしたがい電気泳動に付し、移動距離及びピークを検出した。電気泳動の結果に基づき、ソフトウェアGeneScan(登録商標)(アプライドバイオシステムズジャパン社)を用いて、横軸に分子量を指標とした移動距離、縦軸に蛍光強度を指標とした発現量を示す遺伝子発現プロファイルを作製した。
下記のMspIプライマー(Xプライマー)及びMseIプライマー(Yプライマー):
MspIプライマー:5'-ACATGACACTCGGTTCGGCG-3'(配列番号7)
MseIプライマー:5'-ATACTGCGGGCGTCCTAATA-3'(配列番号8)
からなるプライマーセットについて得られた遺伝子発現プロファイルを図2に示す。図2において、縦軸は増幅PCR産物を表すピークの蛍光強度を示し、これは増幅PCR産物の最終量と相関する。横軸は増幅PCR産物の移動距離を示し、これは各ピークの増幅PCR産物(遺伝子に対応する)を構成するヌクレオチド残基の数と相関する。すなわち、プロファイル中に表れたピークの大きさは、当該ピークに対応する増幅PCR産物の量、すなわち当該増幅PCR産物に対応する遺伝子の発現量を示している。したがって、特定のピークの大きさの変化を観察することにより、対応する遺伝子の発現頻度を解析することができる。
【0022】
実施例2
下記に示すX及びYプライマーからなるプライマーセットを用い、プライマーの鋳型へのアニーリング温度を70℃~76℃(1℃刻み)に変化させたことを除き、実施例1と同様の工程にしたがい、マウスの胚性繊維芽細胞(MEF)について遺伝子発現プロファイルを作製した。
XプライマーとしてのMspIプライマー(20塩基):
5'-ACATGACACTCGGTTCGGTA-3'(配列番号9)
YプライマーとしてのMseIプライマー(20塩基):
5'-ATACTGCGGGCGTCCTAACC-3'(配列番号10)
前述の計算式(1)によると、MspIプライマーのTmは60℃であり、MseIプライマーのTmは64℃であったので、プライマーのTmMAXを64℃とした。したがって、実施例2で用いたアニーリング温度70℃~76℃は、プライマーのTmMAX+6℃~TmMAX+12℃に対応していた。
【0023】
比較例1
実施例2と同様のプライマーを用いたが、プライマーの鋳型へのアニーリング温度を67℃(TmMAX+3℃)~69℃(TmMAX+5℃)(1℃刻み)に変化させたことを除き、実施例2と同様の工程にしたがい、マウスの胚性繊維芽細胞(MEF)について遺伝子発現プロファイルを作製した。
【0024】
試験例1
実施例2及び比較例1で得られた遺伝子発現プロファイルの中から無作為抽出した6つのピーク(但し、各ピークは、実施例2及び比較例1において同一の遺伝子の発現に対応している)について、アニーリング温度とピークの蛍光強度との関係を図示した(図3A)。図中、横軸はアニーリング温度、縦軸は増幅PCR産物のピークの蛍光強度(増幅PCR産物の量、ひいては遺伝子発現量に対応する)を示す。
6つのピークは、大別して2つの群:アニーリング温度70℃以上でも高い蛍光強度(高い検出感度)を維持したイ群(図中の凡例:■、●及び▲。尚、凡例の横の数字は、各ピークに対応する増幅PCR産物の泳動度(増幅PCR産物サンプルと同時に電気泳動に付したサイズ標準マーカーによる補正で得られた値であり、当該PCR産物に対応する遺伝子フラグメントの長さにおおよそ相当する値である。)を示す。)と、アニーリング温度70℃で蛍光強度が検出限界(バックグラウンドとの区別が可能な蛍光強度値)以下(蛍光強度50以下)に低下したロ群(図中の凡例:◇、□及び○)とに分類された。
ここで、各ピークの真偽を評価するために、各ピークに対応するPCR産物について、PRISM3100自動シーケンス装置を用いて配列決定を行った。得られた塩基配列に基づき、前述したピークの真偽の評価方法にしたがい各ピークの真偽を評価した。尚、評価において利用した既存のデータベースは公共のマウスESTデータベース(Genbank、EMBL、DDBJ)であった。
その結果、イ群のピークは、前述のピーク真偽評価方法の(1)~(3)の条件を全て満たす増幅PCR産物からなる真正ピークであり、ロ群のピークはピーク真偽評価方法の(1)~(2)の条件は満たすが、(3)の条件を満たさない増幅PCR産物からなる偽ピークであることが判明した。
この結果は、PCR反応におけるプライマーの鋳型へのアニーリングをプライマーのTmMAX+6℃(64℃+6℃=70℃)よりも高い温度で行うと、偽ピークを減少させることが可能になり、特に、TmMAX+6℃(64℃+6℃=70℃)~TmMAX+9℃(64℃+9℃=73℃)の温度範囲内で行うと、真正ピークの検出感度を充分に維持しつつ偽ピークを減少させることが可能になり、結果としてHiCEP法の検出感度をより向上させることができることを示している。
【0025】
実施例3
下記に示すX及びYプライマーからなるプライマーセットを用い、プライマーの鋳型へのアニーリング温度を70℃~76℃(1℃刻み)に変化させたことを除き、実施例1と同様の工程にしたがい、マウスの胚性繊維芽細胞(MEF)について遺伝子発現プロファイルを作製した。
XプライマーとしてのMspIプライマー(20塩基):
5'-ACATGACACTCGGTTCGGCG-3'(配列番号11)
YプライマーとしてのMseIプライマー(20塩基):
5'-ATACTGCGGGCGTCCTAATA-3'(配列番号12)
前述の計算式(1)によると、MspIプライマーのTmは64℃であり、MseIプライマーのTmは60℃であったので、プライマーのTmMAXを64℃とした。したがって、実施例3で用いたアニーリング温度70℃~76℃は、プライマーのTmMAX+6℃~TmMAX+12℃に対応していた。
【0026】
比較例2
実施例3と同様のプライマーを用いたが、プライマーの鋳型へのアニーリング温度を65℃(TmMAX+1℃)~69℃(TmMAX+5℃)(1℃刻み)に変化させたことを除き、実施例3と同様の工程にしたがい、マウスの胚性繊維芽細胞(MEF)について遺伝子発現プロファイルを作製した。
【0027】
試験例2
得られた遺伝子発現プロファイルの中から無作為抽出した7つのピークについて、図3Aと同様にアニーリング温度とピークの蛍光強度との関係を図示した(図3B)。
7つのピークは、大別して2つの群:アニーリング温度70℃以上でも高い蛍光強度(高い検出感度)を維持したイ群(図中の凡例:■、●、▲及び◆)と、アニーリング温度70℃で蛍光強度が検出限界以下(蛍光強度50以下)に低下したロ群(図中の凡例:□、○及び△)とに分類された。
各ピークについて、試験例1と同様にしてピークの真偽を評価した。その結果、イ群のピークは、前述のピーク真偽評価方法の(1)~(3)の条件を全て満たす増幅PCR産物からなる真正ピークであり、ロ群のピークはピーク真偽評価方法の(1)~(2)の条件は満たすが、(3)の条件を満たさない増幅PCR産物からなる偽ピークであることが判明した。
この結果は、PCR反応におけるプライマーの鋳型へのアニーリングをプライマーのTmMAX+6℃(64℃+6℃=70℃)よりも高い温度で行うと、偽ピークを減少させることが可能になり、特に、TmMAX+6℃(64℃+6℃=70℃)~TmMAX+9℃(64℃+9℃=73℃)の温度範囲内で行うと、真正ピークの検出感度を充分に維持しつつ偽ピークを減少させることが可能になり、結果としてHiCEP法の検出感度をより向上させることができることを示している。
【0028】
実施例4
下記に示すX及びYプライマーからなるプライマーセットを用い、プライマーの鋳型へのアニーリング温度を70℃~76℃(1℃刻み)に変化させたことを除き、実施例1と同様の工程にしたがい、マウスの胚性繊維芽細胞(MEF)について遺伝子発現プロファイルを作製した。
XプライマーとしてのMspIプライマー(20塩基):
5'-ACATGACACTCGGTTCGGTG-3'(配列番号13)
YプライマーとしてのMseIプライマー(20塩基):
5'-ATACTGCGGGCGTCCTAACC-3'(配列番号14)
前述の計算式(1)によると、MspIプライマーのTmは62℃であり、MseIプライマーのTmは64℃であったので、プライマーのTmMAXを64℃とした。したがって、実施例4で用いたアニーリング温度70℃~76℃は、プライマーのTmMAX+6℃~TmMAX+12℃に対応していた。
【0029】
比較例3
実施例4と同様のプライマーを用いたが、プライマーの鋳型へのアニーリング温度を67℃(TmMAX+3℃)~69℃(TmMAX+5℃)(1℃刻み)に変化させたことを除き、実施例4と同様の工程にしたがい、マウスの胚性繊維芽細胞(MEF)について遺伝子発現プロファイルを作製した。
【0030】
試験例3
得られた遺伝子発現プロファイルの中から無作為抽出した5つのピークについて、図3Aと同様にアニーリング温度とピークの蛍光強度との関係を図示した(図3C)。
5つのピークは、大別して2つの群:アニーリング温度70℃以上でも高い蛍光強度(高い検出感度)を維持したイ群(図中の凡例:■及び●)と、アニーリング温度70℃で蛍光強度が検出限界以下(蛍光強度50以下)に低下したロ群(図中の凡例:○、△及び□)とに分類された。
各ピークについて、試験例1と同様にしてピークの真偽を評価した。その結果、イ群のピークは、前述のピーク真偽評価方法の(1)~(3)の条件を全て満たす増幅PCR産物からなる真正ピークであり、ロ群のピークはピーク真偽評価方法の(1)~(2)の条件は満たすが、(3)の条件を満たさない増幅PCR産物からなる偽ピークであることが判明した。
この結果は、PCR反応におけるプライマーの鋳型へのアニーリングをプライマーのTmMAX+6℃(64℃+6℃=70℃)よりも高い温度で行うと、偽ピークを減少させることが可能になり、特に、TmMAX+6℃(64℃+6℃=70℃)~TmMAX+9℃(64℃+9℃=73℃)の温度範囲内で行うと、真正ピークの検出感度を充分に維持しつつ偽ピークを減少させることが可能になり、結果としてHiCEP法の検出感度をより向上させることができることを示している。
【0031】
【発明の効果】
本発明に従うと、遺伝子発現プロファイル作製過程におけるプライマーのミスアニーリングに起因する偽ピークの発生を減少させることができるので、発現遺伝子の検出感度が向上し、精度の高い遺伝子発現プロフィールを得ることができる。
本発明に従い作製した遺伝子発現プロファイル上に現れるピークの大きさは、被検細胞で発現した遺伝子の発現量を反映している。したがって、当該ピークの大きさの変化を観察することにより、遺伝子の発現頻度を解析することができる。例えば、正常細胞と異常細胞との比較、正常細胞と癌細胞との比較、異なる細胞間での比較、及び異なる条件により処理された細胞間での比較等が可能となる。
【0032】
【配列表】
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【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の一態様である遺伝子発現プロファイル作製方法を示すスキームである。
【図2】図2は、本発明にしたがい作製した遺伝子発現プロファイルを示す図である。
【図3】図3は、アニーリング温度とピークの蛍光強度との関係を示すグラフである。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2