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明細書 :レーザー制御型電子ビーム線形加速装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4250759号 (P4250759)
公開番号 特開2005-093339 (P2005-093339A)
登録日 平成21年1月30日(2009.1.30)
発行日 平成21年4月8日(2009.4.8)
公開日 平成17年4月7日(2005.4.7)
発明の名称または考案の名称 レーザー制御型電子ビーム線形加速装置
国際特許分類 H05H   7/02        (2006.01)
H05H   9/00        (2006.01)
H01J  37/073       (2006.01)
FI H05H 7/02
H05H 9/00 D
H01J 37/073
請求項の数または発明の数 4
全頁数 9
出願番号 特願2003-328078 (P2003-328078)
出願日 平成15年9月19日(2003.9.19)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 2003年3月28日東北学院大学土桶キャンパスで、日本物理学会が主催した第58回年次大会にて発表
審査請求日 平成18年5月26日(2006.5.26)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】301032942
【氏名又は名称】独立行政法人放射線医学総合研究所
【識別番号】504151365
【氏名又は名称】大学共同利用機関法人 高エネルギー加速器研究機構
発明者または考案者 【氏名】平野 耕一郎
【氏名】浦川 順治
個別代理人の代理人 【識別番号】100059959、【弁理士】、【氏名又は名称】中村 稔
【識別番号】100067013、【弁理士】、【氏名又は名称】大塚 文昭
【識別番号】100082005、【弁理士】、【氏名又は名称】熊倉 禎男
【識別番号】100065189、【弁理士】、【氏名又は名称】宍戸 嘉一
【識別番号】100074228、【弁理士】、【氏名又は名称】今城 俊夫
【識別番号】100084009、【弁理士】、【氏名又は名称】小川 信夫
【識別番号】100082821、【弁理士】、【氏名又は名称】村社 厚夫
【識別番号】100086771、【弁理士】、【氏名又は名称】西島 孝喜
【識別番号】100084663、【弁理士】、【氏名又は名称】箱田 篤
審査官 【審査官】山口 敦司
参考文献・文献 特公昭48-018997(JP,B1)
特開平06-076992(JP,A)
小型高輝度硬X線源開発-(2)Sバンド線形加速器システム-,Proceedings of the 27th Linear Accelerator Meeting in Japan,2002年 8月 7日
調査した分野 H05H 7/02
H05H 9/00
H01J 37/073
特許請求の範囲 【請求項1】
カソード面がモードロックレーザーのレーザー光で照射されることによって放出された電子を即座に高周波電界によって加速してバンチ列で構成される電子ビームを出力するフォトカソード高周波電子銃と、該高周波電子銃から出力された電子ビームを加速する加速管と、基準信号から上記モードロックレーザーの入力信号の周波数、高周波電子銃の周波数及び加速管の加速周波数を作成するタイミングシステムと、上記高周波電子銃及び加速管にそれぞれ高周波電力を供給する高周波源とから構成され、上記モードロックレーザーの入力信号の周波数、高周波電子銃の周波数及び加速管の加速周波数を所定の離調範囲とすることにより、上記高周波電子銃から出力される電子ビームの周波数の位相を上記加速周波数の位相に対してわずかにずらし、それによってビームを加速しながらビームローディングによるマルチバンチビームのエネルギー広がりを補正するレーザー制御型電子ビーム線形加速装置において、
上記モードロックレーザーと上記高周波電子銃との間に上記モードロックレーザーから出力されるレーザーパルスの振幅を変調する手段を設けるとともに、上記高周波電子銃の周波数を上記加速管の加速周波数に一致させることにより上記高周波源を上記高周波電子銃及び加速管に共通の高周波源として構成したことを特徴とするレーザー制御型電子ビーム線形加速装置。
【請求項2】
上記レーザーパルスの振幅を変調する手段は、光ビームの偏光方向を素早くスイッチングすることにより所定数のバンチを有するバンチ列を切り出す機能を有することを特徴とする請求項1に記載のレーザー制御型電子ビーム線形加速装置。
【請求項3】
上記レーザーパルスの振幅を変調する手段は、ポッケルセルと一対の偏光子とから成ることを特徴とする請求項2に記載のレーザー制御型電子ビーム線形加速装置。
【請求項4】
上記タイミングシステムは、基準信号を逓倍又は分周することにより周波数Δfとf0の信号を作成し、このΔfとf0の信号をミキシングすることによりf0のサイドバンドである加速周波数f1を作成し、上記Δfは上記加速周波数f1に対して数百kHzから数MHzの範囲内の周波数であり、上記f0はf0=f1-Δfの関係を有し、上記モードロックレーザーの入力信号は、上記f0の信号を分周した信号であることを特徴とする請求項1又は2又は3に記載のレーザー制御型電子ビーム線形加速装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー制御型電子ビーム線形加速装置に関し、特に、電子ビームを加速しながらビームローディングによるマルチバンチビームのエネルギー広がりを補正するレーザー制御型電子ビーム線形加速装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子ビーム線形加速装置の分野では、ロングパルス且つ大電流の電子ビームの加速を行うため、一般にマルチバンチビームによる運転が行われている。ここで、マルチバンチビームとは、電子バンチ列すなわち一連の電子の固まりが列状に並んだもので構成される電子ビームのことである。電子ビームのパルス長が加速管のフィーリングタイムすなわち高周波電力が完全に加速管に充電される時間よりも短いマルチバンチビームを、定加速勾配型の加速管で構成した線形加速装置で加速した場合、先頭のバンチから後方のバンチに行くに従って、加速管内での過渡モードにおけるビームローディングにより、エネルギー利得がほぼ線形に減少してしまう。このマルチバンチビーム内のエネルギー差すなわちエネルギーの広がりを補正する方法はいくつかあるが、代表的な方法として、ΔT方式とΔF方式がある。
【0003】
ΔT方式補正とは、フィーリングタイムの間にビームを入射しかつ加速管に供給する高周波の振幅を変化させることによって、加速高周波電力の傾斜を調整し、ビームローディングによって生じたバンチ列内のエネルギー差を補正するものである。
【0004】
このΔT方式補正の例として、安定化高周波発振器と、加速用大出力パルス高周波源と、加速管を具備する装置において、更に、高周波を分割する高周波分割手段と、分割された高周波のそれぞれの位相を調整する位相変調器と、各々の高周波を合成する手段と、合成手段から合成高周波を入力して加速用大出力パルス高周波源と加速管に電子ビームを出力するパルス電子源とを設けて、各々の位相変調器に各々の分割高周波毎の位相変調指示を行うことにより、加速用高周波パルスの立ち上がり部分に振幅変調を与えて、電子ビームパルスの立ち上がり部分で発生するビームローディング効果による加速エネルギーの変動を補正するものがある。(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
またΔF方式補正とは、例えば、基本加速周波数(f1)に対してわずかに異なる周波数(f1±Δf)の加速管をf1の加速管で構成される線形加速装置の後に設置して、マルチバンチを周波数(f1±Δf)のゼロクロス付近の位相におくことによって加減速させ、線形加速装置で発生するマルチバンチビームのエネルギーを補正するものである。このΔF方式補正では、加速と補正が線形加速装置中に別々に行われる。この加速と補正を同時に行うようにしたものが、レーザー制御型電子ビーム線形加速装置である。
【0006】
このような、電子ビームを加速しながらビームローディングによるマルチバンチビームのエネルギー広がりをΔF方式で補正するレーザー制御型電子ビーム線形加速装置の概略図を図4に示す。図4に示すように、このレーザー制御型電子ビーム線形加速装置は、モードロックレーザー11と、フォトカソード高周波電子銃12及びその高周波源13と、高加速勾配型加速管14及びその高周波源15とで構成される。この線形加速装置には、モードロックレーザー11に供給される入力信号の周波数及びフォトカソード高周波電子銃12の周波数及び加速管14の加速周波数を作成するためにタイミングシステム16が設けられている。このタイミングシステム16には、基準信号発生器17から基準信号が供給される。タイミングシステム16は、逓倍器18と、分周器19及び20と、SSB(シングルサイドバンド)ジェネレータ21を有している。ここで、モードロックレーザーとは、レーザーが正常に発振する、非常に接近した波長を持った幾つかの発振モードが同期することによって、ピコ秒のパルス光を発生する機能を持ったレーザーのことである。また、フォトカソード高周波電子銃とは、高周波空洞内の側面に設置されたカソード面にレーザー光を照射し、光電効果によって放出された電子が即座に高周波電界によって加速される構造のものである。
【0007】
上述したような構成のレーザー制御型電子ビーム線形加速装置において、基準信号発生器17からfR=1428.67646MHzの周波数の基準信号を出力し、その周波数fRを2逓倍した周波数f0=2857.35291MHzを高周波電子銃12に用い、基準信号の4分周信号fR/4=357.16911MHzをモードロックレーザー11の入力信号の周波数fLとして用い、さらに、その4分周信号fR/4を264分周してΔf=1.35291MHzの信号を作り、このΔfと高周波電子銃12の周波数f0とをSSBジェネレータ21を用いて合成して加速管14の加速周波数f1=2856MHzを作る。そして、モードロックレーザー11から出力されたレーザーをフォトカソード高周波電子銃12のカソードに打ち込むことによって、20バンチのマルチバンチビームを発生させる。この高周波電子銃12から出力されるビームの周波数f0=2857.35291MHzを基準加速周波数f1=2856MHzに対してΔf=1.3529MHzだけ変化させることにより、各バンチビームの加速位相をわずかずらし、20バンチビームの後段ほど加速電界が強くなるようにする。これにより、高周波電力を最大限利用した状態で、ビームを加速しながらビームローディングによるエネルギー広がりを補正するものがある(例えば、非特許文献1参照)。
【0008】

【特許文献1】特開平11-45800号公報
【非特許文献1】平野耕一郎他8名「小型高輝度硬X線源開発-(2)Sバンド線形加速器システム-」、Proceedings of the 27th Linear Accelerator Meeting in Japan、京都大学、2002年8月7日、p.130~132
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記レーザー制御型電子ビーム線形加速装置によれば、高周波電子銃と加速管のそれぞれに別の高周波源が用いられているので、線形加速装置全体が比較的大型のものとなっていた。高周波電子銃と加速管の高周波源を共通にすることにより、線形加速装置全体を小型化することが可能であるが、その場合には、高周波電子銃内でマルチバンチビームが受ける電界が後段部ほど強くなるため、発生する電子ビームの電流が後段部ほど大きくなる。従って、高周波電子銃から発生される電子ビームの電流パルス波形に歪が生じる。
【0010】
すなわち、通常の高周波電子銃では、レーザーの周波数は高周波電子銃の周波数の分周信号を使用している。バンチの電流が大きくなると加速管同様高周波電子銃でもビームローディングが大きくなり、後段のバンチほどエネルギーが低くなり、各バンチのエネルギー差が大きくなっていく。一般に、高周波電子銃の加速エネルギー5MeVに対して加速管の加速エネルギーは100MeVと大きく、高周波電子銃で発生する各バンチのエネルギー差より加速管で発生するエネルギー差の方が大きくなるので、加速管でエネルギー補正を行う。
【0011】
加速管でのビームローディングを打ち消すようにエネルギー補正を行うようにすれば、高周波電子銃で発生するビームローディングを打ち消すように働く電場がビームローディングでロスする電場より強くなる場合には、高周波電子銃内のカソード面上に立つビームを引き出す電界が後段のバンチに対してより高く働くことになり、このため高周波電子銃から発生するバンチの電流は右肩上がりになる。言い換えれば、高周波電子銃から発生される電子ビーム波形に歪が生じる。
【0012】
また、上記レーザー制御型電子ビーム線形加速装置によれば、高周波電子銃の周波数f0と加速管の加速周波数f1との関係は、f0=f1+Δfであり、高周波の立下りスロープを利用している。このように高周波の立下りスロープを利用した場合は、各バンチ内の先頭の粒子より後方の粒子が低いエネルギーを受けるためバンチが広がることになる。よって、従来のレーザー制御型電子ビーム線形加速装置では、性能の良い電子ビームを得ることは困難である。
【0013】
本発明は、線形加速装置全体を小型化にするとともに、上記電子ビームの電流パルス波形の歪みを修正して一定のバンチ電流を有する電子ビームが高周波電子銃から発生されるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明によれば、カソード面がモードロックレーザーのレーザー光で照射されることによって放出された電子を即座に高周波電界によって加速してバンチ列で構成される電子ビームを出力するフォトカソード高周波電子銃と、該高周波電子銃から出力された電子ビームを加速する加速管と、基準信号から上記モードロックレーザーの入力信号の周波数、高周波電子銃の周波数及び加速管の加速周波数を作成するタイミングシステムと、上記高周波電子銃及び加速管にそれぞれ高周波電力を供給する高周波源とから構成され、上記モードロックレーザーの入力信号の周波数、高周波電子銃の周波数及び加速管の加速周波数を所定の離調範囲とすることにより、上記高周波電子銃から出力される電子ビームの周波数の位相を上記加速周波数の位相に対してわずかにずらし、それによってビームを加速しながらビームローディングによるマルチバンチビームのエネルギー広がりを補正するレーザー制御型電子ビーム線形加速装置において、上記モードロックレーザーと上記高周波電子銃との間に上記モードロックレーザーから出力されるレーザーパルスの振幅を変調する手段を設けるとともに、上記高周波電子銃の周波数を上記加速管の加速周波数に一致させることにより上記高周波源を上記高周波電子銃及び加速管に共通の高周波源として構成したことを特徴とするレーザー制御型電子ビーム線形加速装置が提供される。
【0015】
本発明によれば、上記レーザーパルスの振幅を変調する手段は、光ビームの偏光方向を素早くスイッチングすることにより所定数のバンチを有するバンチ列を切り出す機能を有してもよい。
【0016】
本発明によれば、上記レーザーパルスの振幅を変調する手段は、ポッケルセルと一対の偏光子とから成るものであってもよい。
【0017】
本発明によれば、上記タイミングシステムは、基準信号を逓倍又は分周することにより周波数Δfとf0の信号を作成し、このΔfとf0の信号をミキシングすることによりf0のサイドバンドである加速周波数f1を作成し、上記Δfは上記加速周波数f1に対して数百kHzから数MHzの範囲内の周波数であり、上記f0はf0=f1-Δfの関係を有し、上記モードロックレーザーの入力信号は、上記f0の信号を分周した信号であってもよい。
【0018】
本発明によれば、上記タイミングシステムは、基準信号を逓倍又は分周することにより周波数Δfと加速周波数f1の信号を作成し、このΔfとf1の信号をミキシングすることによりf1のサイドバンドである周波数f0の信号を作成し、上記Δfは上記加速周波数f1に対して数百kHzから数MHzの範囲内の周波数であり、上記f0はf0=f1-Δfの関係を有し、上記モードロックレーザーの入力信号は、上記f0の信号を分周した信号であってもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、高周波電子銃と加速管に共通の高周波源を用いているので、線形加速装置全体を小型化することができる。また、モードロックレーザーと高周波電子銃との間に上記モードロックレーザーから出力されるレーザーパルスの振幅を変調する手段を設け、それにより、レーザーパルスの振幅を変調することにより、高周波電子銃から一定のバンチ電流を有する電子ビームを発生させることができる。また、本発明によれば、f0=f1-Δfの関係を選択することにより、高周波の立ち上がりのスロープを利用することができ、よって、各バンチ内の先頭の粒子より後方の粒子が高いエネルギーを受けるためバンチが固まり、性能の良い電子ビームを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1は、本発明のレーザー制御型電子ビーム線形加速装置の構成を示す概略図であり、図4と同じ参照番号は同じ素子を示している。本発明のレーザー制御型電子ビーム線形加速装置は、図4に示された線形加速装置と同様に、モードロックレーザー11と、フォトカソード高周波電子銃12と、加速管14と、加速管用高周波源15と、タイミングシステム16と、基準信号発生器17で構成され、タイミングシステム16が、逓倍器18と、分周器19及び20と、SSBジェネレータ21とを有する。しかしながら、図1の線形加速装置は、モードロックレーザー11とフォトカソード高周波電子銃12との間にレーザーパルス振幅変調器22が設けられており、かつ、加速管14の高周波源15が高周波電子銃12の高周波源を兼用している点が異なっている。また、基準信号発生器17から発生される基準信号の周波数fRも異なっている。
【0021】
基準信号発生器17は、周波数fR=1427.831624MHzの基準信号を発生する。その基準信号は、分周器19により4分周されてfR/4=356.957906MHzの信号となって、モードロックレーザー11の入力信号の周波数fLとして用いられる。さらに、このfR/4の信号を分周器20により4N分周(N=265)してΔf=0.336753MHzの信号を作る。他方、周波数fRの基準信号を逓倍器18により2逓倍して周波数f0=2855.66324MHzの信号を作る。SSBジェネレータ21がf0=2855.66324MHzの信号とΔf=0.336753MHzの信号を合成してすなわちミキシングして高周波源15の加速周波数f1=2856MHzを作る。ここで、f1=f0+Δfであって、f1はf0のサイドバンドである。
【0022】
高周波源15は、フォトカソード高周波電子銃12及び加速管14に共通の高周波源であるので、この高周波源15から出力された周波数f1の高周波が、フォトカソード高周波電子銃12及び加速管14の双方に供給される。高周波源15として、クライストロン電源を使用してもよい。また、フォトカソード高周波電子銃として、1.6セル空洞BNLタイプのものを使用し、そのフォトカソードにCs2Teを使用してもよい。モードロックレーザーとして、Nd:YVOレーザー(電荷量2nC/bunchに対して266nm、1μJ/pulse)を使用してもよい。さらに、加速管として、3m定加速勾配型進行波加速管(平均高加速勾配33MeV/m)を使用してもよい。
【0023】
モードロックレーザーの入力信号として用いられる信号の周波数fLは、基準信号の周波数fRを4分周したものすなわちfL=fR/4であり、また、周波数f0は基準信号の周波数を2逓倍したものすなわちf0=2fR であるので、周波数fL=f0/8である。従って周波数fLは周波数f0を8分周したものである。このように、高周波源の加速周波数f1よりΔfだけ低い周波数f0を分周した信号でロックをかけたモードロックレーザーから出力したパルスを、高周波電子銃のカソードに照射することにより、図2に示すように、高周波電子銃から発生するマルチビームの各バンチのタイミングを高周波加速位相に対して少しづつずらすことができる。
【0024】
図2において、8本の垂直方向の破線Lはレーザーパルス発生のタイミングを示しており、1パルス毎に1つのバンチBが形成される。レーザーパルス発生のタイミングLの周波数はfLであるので、電子ビームはfLに同期して出力される。例えば、高周波電子銃から2.8nsecの間隔の20バンチビームを出射するには、ミクロパルス幅10psecのレーザーが、ミクロパルスの繰り返し周波数fL=356.957906MHz、マクロパルス幅56nsecでフォトカソードに打ち込まれる。すなわち、レーザーのミクロパルスの周期は2.8nsecであるので、マクロパルス幅56nsecの中に2.8nsecの間隔で20個の電子バンチが含まれることになる。
【0025】
図2において、Aは、加速周波数f1=2856MHzを持つ加速高周波の波形を示す。上述したように、f0/8=fLであり、f0=f1-Δfであるので、加速周波数f1=2856MHzは、レーザーの周波数fL=356.957906MHzのほぼ8倍である。従って、加速高周波Aの8周期にほぼ1つのレーザーパルスが発生される。このため、8個の加速高周波Aの波のうち1個だけが加速に使用され、残りの7個は空打ちとなる。よって、図2では、各レーザー周波数fLについて、加速高周波Aの8周期の波形のうち、最初の1つの波形のみが実線で示されており、後の7周期分の波形は省略されている。また、実際のバンチは20バンチであるが、図ではそのうちの8個だけのバンチが示されている。
【0026】
図2に示されるように、加速周波数f1に対して、レーザーの周波数fL、従って、マルチバンチビームの周波数を、Δf=0.336753MHzだけ変化させることにより、マルチバンチビームの各バンチのタイミングを高周波加速位相に対して少しづつずらすことができる。従って、マルチバンチビームの後段部の加速電界を高めることができる。すなわち、後段部のバンチビームほど高い加速エネルギー利得が得られるように補正する。この補正曲線を点線1で示す。これによって、ビームローディング効果による加速エネルギー低下(点線2で示す)を補正して一定の加速利得(一点鎖線3で示す)を得るようにする。なお、レーザー周波数fL、加速周波数f1及びΔfの関係は、Δf=f1-f0=f1-8fLである。
【0027】
図2による補正を行った場合には、一定の加速利得が得られるものの、高周波電子銃で発生するビームローディングを打ち消すように働く電場がビームローディングでロスする電場より強くなるため、高周波電子銃内で、後段のバンチに対してより高い電界が働くことになり、通常の高周波電子銃とは逆のエネルギー差が生じる。よって、発生する電子ビームの電流が後段部ほど大きくなる。すなわち、高周波電子銃の出力電流は、右肩上がりになる。また、電子ビームの方向性も悪くなる。例えば、マクロパルス幅56nsecのレーザーパルスに対応して高周波電子銃12から出力される高周波電子銃出口ビーム電流パルス波形は、図3に示すようにパルスの立ち下がり部分の電流強度が、立ち上がり部分の電流強度に比べて2.8%上昇する。そこで、本発明によれば、この上昇分を補正するため、図1に示すように、モードロックレーザー11とフォトカソード高周波電子銃12との間にレーザーパルス振幅変調器22が設けられている。
【0028】
この振幅変調器22は、モードロックレーザー11から出力されるレーザーパルスの強度すなわち振幅を変調することにより、図3のCで示すようなパルス波形の歪を補正してDのような波形に整形するものである。この振幅変調器22は、ポッケルセルと一対の偏光子で構成される。ポッケルセルは、レーザービームの偏光方向を素早くスイッチングするのに用いられる素子であり、このポッケルセルと一対の偏光子とを組み合わせることによりレーザーパルスを所定幅で切り出すとともに光強度を変調することができる。ポッケルセルは、マクロパルス幅56nsecのレーザーパルスを形成し、レーザーパルスに対して偏光子の傾きを制御することにより、レーザーパルスの振幅を変調することができる。図3の例では、Eで示すように、56nsecの間にレーザーパルス強度が2.8%低下するように制御される。これにより、高周波電子銃出口ビームの電流パルス波形の2.8%の歪が補正される。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明のレーザー制御型線形加速装置は、放射光源用蓄積リング装置の電子ビーム発生装置、光蓄積装置と組み合わせて小型X線放射光源を構成できる。また、中性子生成コンバーターと組み合わせて、小型高輝度パルス中性子源を構成できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明のレーザー制御型線形加速装置の概略図である。
【図2】本発明におけるΔF方式マルチバンチエネルギー補正方法を説明する図である。
【図3】本発明における高周波電子銃出口ビーム電流補正方法を説明する図である。
【図4】従来のレーザー制御型線形加速装置の概略図である。
【符号の説明】
【0031】
11 モードロックレーザー
12 フォトカソード高周波電子銃
13、15 高周波源
14 加速管
16 タイミングシステム
17 基準信号発生器
18 逓倍器
19、20 分周器
21 SSBジェネレータ
22 振幅変調器
A 加速高周波の波形
B 電子バンチ
C 補正前の高周波電子銃出口ビーム電流パルス波形
D 補正後の高周波電子銃出口ビーム電流パルス波形
E 変調されたレーザーパルス強度
L レーザーパルスのタイミング
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3