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明細書 :マイクロイオンビーム形成用部材の配置方法及びプリズム付プリズム調整台

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4341824号 (P4341824)
公開番号 特開2005-135710 (P2005-135710A)
登録日 平成21年7月17日(2009.7.17)
発行日 平成21年10月14日(2009.10.14)
公開日 平成17年5月26日(2005.5.26)
発明の名称または考案の名称 マイクロイオンビーム形成用部材の配置方法及びプリズム付プリズム調整台
国際特許分類 H01J  37/317       (2006.01)
FI H01J 37/317 D
請求項の数または発明の数 4
全頁数 12
出願番号 特願2003-369541 (P2003-369541)
出願日 平成15年10月29日(2003.10.29)
審査請求日 平成18年8月30日(2006.8.30)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000231464
【氏名又は名称】株式会社アルバック
【識別番号】301032942
【氏名又は名称】独立行政法人放射線医学総合研究所
発明者または考案者 【氏名】今関 等
【氏名】酢屋 徳啓
【氏名】阿川 義昭
【氏名】横井 孝之
【氏名】菅原 正次
個別代理人の代理人 【識別番号】100087745、【弁理士】、【氏名又は名称】清水 善廣
【識別番号】100098545、【弁理士】、【氏名又は名称】阿部 伸一
【識別番号】100106611、【弁理士】、【氏名又は名称】辻田 幸史
審査官 【審査官】岡▲崎▼ 輝雄
参考文献・文献 特開平06-163197(JP,A)
特開2001-133261(JP,A)
特開平10-069873(JP,A)
特開平04-022899(JP,A)
特開平08-075684(JP,A)
特開平11-248654(JP,A)
特開平05-234559(JP,A)
特開平06-310300(JP,A)
特開2004-144538(JP,A)
実開平01-122254(JP,U)
松本健一ほか13名,放医研におけるマイクロビーム細胞照射装置の開発,第63回応用物理学会学術講演会講演予稿集(2002.9 新潟大学),日本,応用物理学会,2002年 9月24日,84
調査した分野 H01J 37/317
特許請求の範囲 【請求項1】
水平方向に出射されるイオンビームを鉛直上方向に静電偏向又は電磁偏向させて、前記イオンビームからマイクロイオンビームを形成するためのマイクロイオンビーム形成用部材を、所定の鉛直線上にその光学中心を揃えて配置するマイクロイオンビーム形成用部材の配置方法であって、水平軌道をたどる入射光を鉛直上方向に偏向させるための偏向素子を前記所定の鉛直線上に配置し、更に、前記水平軌道上にトランシットを配置して、前記所定の鉛直線上に前記マイクロイオンビーム形成用部材の光学中心を揃えて配置することを特徴とするマイクロイオンビーム形成用部材の配置方法。
【請求項2】
前記マイクロイオンビーム形成用部材の端面に互いに交差する2軸を表示した透光板を設け、前記透光板の2軸の交点と前記透光板が設けられたマイクロイオンビーム形成用部材の光学中心とを揃え、前記透光板の互いに交差する2軸と前記トランシットの水平及び垂直方向の基準線とを重ね合わせることにより、前記所定の鉛直線上に前記マイクロイオンビーム形成用部材の光学中心を揃えて配置することを特徴とする請求項1に記載のマイクロイオンビーム形成用部材の配置方法。
【請求項3】
前記所定の鉛直線上において、前記マイクロイオンビーム形成用部材が配置されることになる区間の下方に前記偏向素子を設け、前記区間の上方に基準点を設け、前記偏向素子に対して、前記トランシットから水平軌道をたどるレーザビームを照射して鉛直上方向に偏向させ、前記基準点に前記レーザビームが照射されるように前記偏向素子の位置を調整することにより、鉛直上方向に偏向された前記偏向素子からの出射光の軌道を前記所定の鉛直線上に重ね合わせるようにすることを特徴とする請求項1又は2に記載のマイクロイオンビーム形成用部材の配置方法。
【請求項4】
水平方向に出射されるイオンビームを鉛直上方向に静電偏向又は電磁偏向させて、前記イオンビームからマイクロイオンビームを形成するためのマイクロイオンビーム形成用部材を、所定の鉛直線上にその光学中心を揃えて配置するためのプリズム付プリズム調整台であって、前記プリズム調整台は、対向させた平板間の間隔を調整して前記プリズムを高さ方向に調整自在とする高さ調整機構と、前記高さ調整機構上に設けられた前記プリズムを少なくとも鉛直方向の軸を中心として180度回転自在とする回転板とを備え、前記回転板の中央に前記プリズムを載置し、前記高さ調整機構の前記平板及び前記回転板の中央に貫通孔を設けたことを特徴とするプリズム付プリズム調整台。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞にアルファ(4He+),プロトン(H+)等の高エネルギーイオンを照射し、放射損傷の度合いを観察したり、或いは、前記イオンを細胞に照射し、被照射体から発生する特性X線を測定したりするPIXE分析手法(Particle Induced X-ray Emission;粒子誘起X線放出)や、RBS(Rutherford Backscattering Spectroscopy;ラザフォード後方散乱分析)精密ゴニオメータシステム等の分野で用いられるマイクロイオンビーム形成用部材の配置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の生物細胞へのマイクロイオンビーム形成装置を、図5のビーム工学系配置構成を用いて説明する。
図中1で示されるものは、建屋の床であり、通常はコンクリート等により施工されている。建屋の床1上には、足場2が設けられ、この上方空間が観察者用の作業室3となっている。また、作業室3の下方には、鉄骨により構成されたやぐら4が配置されている。そして、やぐら4には、マイクロイオンビーム形成用部材が搭載される架台5aが、建屋の床1等からの振動の影響を受けないようにダンパー6を介して載置され、架台5aの上部は、前記作業室3内まで延出されている。また、前記やぐら4の内側下方において水平方向に横設された架台5b上には、偏向磁石7が載置固定されている。
【0003】
前記やぐら4に載置された架台5aには、イオンビームの上流側、即ち、下方から順に、対物スリット10、ファラデーカップ11、X-Yステアラー12、ビーム径制限スリット13、ファラデーカップ14、3連四重極マグネット15、コリメータ16、ポリイミドフィルム17及び光顕微鏡18が搭載されている。そして、前記した対物スリット10、ファラデーカップ11、X-Yステアラー12、ビーム径制限スリット13、ファラデーカップ14、3連四重極マグネット15、コリメータ16及び光学顕微鏡18は、それぞれ両端部にフランジが設けられた円筒形状に構成され、一直線上に配置されて、互いに連結固定されている。
尚、前記X-Yステアラー12は、イオンビームの方向を変えるように機能するもので、対向した金属平板を水平、垂直方向に一組ずつ配置することにより構成されている。ビーム径制限スリット13は、対物スリット10を通過し、発散するイオンビームの発散角を規定するとともに、発散することにより広がったイオンビームの裾をカットすることができるように構成されている。コリメータ16は、直径100μm・高さ100mmの円筒形状をしている。ポリイミドフィルム17は、大気と真空とを隔離するためのものである。光学顕微鏡18は、シャーレ等に収容された生体試料19を観察するためのものである。
【0004】
上記マイクロイオンビーム形成装置は、次のようにして動作する。
上流側の加速器から供給されるイオンビームは、マイクロイオンビームラインの上流側に取り付けられているレンズ(図示せず)により、イオンビーム径制限スリット20上に結像される。このイオンビーム径制限スリット20を出射したイオンビームは、偏向電磁石7に入射し偏向される。尚、この偏向電磁石7は、凸状の圧肉の集束レンズで構成されており、偏向されたイオンビームを偏向電磁石7のレンズ効果により対物スリット10上に収束させる。次いで、この収束したイオンビームを対物スリット10及びビーム径制限スリット13を通過させて、除々にその形状をカットして細かくし、更に、発散角も制限する。このようにして形成され細いイオンビームは、ポリイミドフィルム17を介して真空中から大気中に取り出され、試料19に照射される。そして、観察者が光学顕微鏡13により試料を観察し評価する。
【0005】
上記対物スリット10、ファラデーカップ11、X-Yステアラー12、ビーム径制限スリット13、ファラデーカップ14、3連四重極マグネット15及びコリメータ16等のマイクロイオンビーム形成用部材の配置は次のようにして行われている。
例えば、マイクロイオンビーム形成用部材がファラデーカップ11の場合には、図7に示されるように、その側周面に軸方向に4本のケガキ線L(通常の線幅は、0.3~0.5mm)を周方向に等分するようにして設け、同様のケガキ線Lを他のマイクロイオンビーム形成用部材にも設ける。そして、各マイクロイオンビーム形成用部材のケガキ線Lを互いに揃えて積み重ねる。
次に、図5に示されるように、垂直方向(Z軸)のビーム軌道9Lと垂直に交わるXY平面上においてX軸にトランシット8Xを配置し、Y軸にトランシット8Yを配置する(図6)。
そして、各マイクロイオンビーム形成用部材について、前記トランシット8X及び8Yの垂直方向の基準線と前記ケガキ線とが重なり合うことを、前記各トランシットを上下方向に傾斜させながら確認して各マイクロイオンビーム形成用部材の調整を行う。
【0006】
しかしながら、上記従来の配置方法では、マイクロイオンビーム形成用部材を鉛直線上に配置することは可能であるが、各部材が鉛直方向のビーム軌道9Lに対して有効に機能するように光学中心を揃えて配置することは非常に困難であった。
例えば、図8に示される光学系の配置図において、対物スリット10は、プレート10a、10aが真空中でビーム軌道9Lを横切るようにして直線的に移動するものであるが、このプレート10a、10aの先端部同士が当接する際、即ち、真空中に前記プレート10aを最も押し込んだ際に、前記先端部がビーム軌道9Lに到達しなければ、対物スリット10は有効に機能しない。同様に、ファラデーカップ11、14においても、ビーム軌道9L上までカップの中心部が駆動して停止しないと電流値を正確に測定することができず、また、3連四重極マグネット15でも、ビーム軌道9L上にポールピースで形成される空間の中心が到達しないと、ビーム軌道9Lを正しく収束させることはできない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、鉛直上方向にマイクロイオンビーム形成用部材を極めて容易に配置するための方法及びマイクロイオンビーム形成用部材の配置のために使用されるプリズム付きプリズム調整台を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明者等は鋭意検討の結果、マイクロイオンビーム形成部材が配置されることとなる所定の鉛直線上に偏向素子を配置し、前記偏向素子を介して水平方向からトランシットを使用してマイクロイオンビーム形成用部材を配置することにより、前記所定の鉛直線上にマイクロイオンビーム形成用部材を極めて正確に作業性に良く配置することができるという知見に基づいて、上記課題を解決すること見出した。
即ち、本発明のマイクロイオンビーム形成用部材の配置方法は、請求項1に記載の通り、水平方向に出射されるイオンビームを鉛直上方向に静電偏向又は電磁偏向させて、前記イオンビームからマイクロイオンビームを形成するためのマイクロイオンビーム形成用部材を、所定の鉛直線上にその光学中心を揃えて配置するマイクロイオンビーム形成用部材の配置方法であって、水平軌道をたどる入射光を鉛直上方向に偏向させるための偏向素子を前記所定の鉛直線上に配置し、更に、前記水平軌道上にトランシットを配置して、前記所定の鉛直線上に前記マイクロイオンビーム形成用部材の光学中心を揃えて配置することを特徴とする。
また、請求項2に記載のマイクロイオンビーム形成用部材の配置方法は、請求項1に記載のマイクロイオンビーム形成用部材の配置方法において、前記マイクロイオンビーム形成用部材の端面に互いに交差する2軸を表示した透光板を設け、前記透光板の2軸の交点と前記透光板が設けられたマイクロイオンビーム形成用部材の光学中心とを揃え、前記透光板の互いに交差する2軸と前記トランシットの水平及び垂直方向の基準線とを重ね合わせることにより、前記所定の鉛直線上に前記マイクロイオンビーム形成用部材の光学中心を揃えて配置することを特徴とする。
また、請求項3に記載のマイクロイオンビーム形成用部材の配置方法は、請求項1又は2に記載のマイクロイオンビーム形成用部材の配置方法において、前記所定の鉛直上において、前記マイクロイオンビーム形成用部材が配置されることになる区間の下方に前記偏向素子を設け、前記区間の上方に基準点を設け、前記偏向素子に対して、前記トランシットから水平軌道をたどるレーザビームを照射して鉛直上方向に偏向させ、前記基準点に前記レーザビームが照射されるように前記偏向素子の位置を調整することにより、鉛直上方向に偏向された前記偏向素子からの出射光の軌道を前記所定の鉛直線上に重ね合わせるようにすることを特徴とする。
また、本発明のプリズム付プリズム調整台は、請求項4記載の通り、水平方向に出射されるイオンビームを鉛直上方向に静電偏向又は電磁偏向させて、前記イオンビームからマイクロイオンビームを形成するためのマイクロイオンビーム形成用部材を、所定の鉛直線上にその光学中心を揃えて配置するためのプリズム付プリズム調整台であって、前記プリズム調整台は、対向させた平板間の間隔を調整して前記プリズムを高さ方向に調整自在とする高さ調整機構と、前記高さ調整機構上に設けられた前記プリズムを少なくとも鉛直方向の軸を中心として180度回転自在とする回転板とを備え、前記回転板の中央に前記プリズムを載置し、前記高さ調整機構の前記平板及び前記回転板の中央に貫通孔を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、マイクロイオンビーム形成用部材を、水平方向からトランシットを使用して鉛直上方向に容易に配置することが可能となり非常に作業性に優れ、しかも、精度の高い配置が可能となる。また、各マイクロイオンビーム形成用部材の周面に従来設けていたケガキ線を設ける必要がないので、部材の製造費用を下げることができ、しかも、美観に優れる。
また、本発明によれば、互いに交差する2軸が設けられた透光板を、マイクロイオンビーム形成用部材の端面に配置して、透光板の互いに交差する2軸を水平方向から偏向素子を介してトランシットの水平及び垂直方向の基準線と合わせることにより効率のよい配置が可能となる。
また、本発明によれば、トランシットからレーザビームを照射して偏向素子を介して鉛直上方向に偏向させて、所定の鉛直線上の基準点に照射されるようにすることにより、トランシット視野内の水平及び垂直方向の基準線の交点上に、所定の鉛直線が位置することになる。従って、このトランシットの視野内の交点上にマイクロイオンビーム形成用部材の光学中心を揃えるだけで正確な配置が可能となる。
また、本発明のプリズム付プリズム調整台によれば、所定の鉛直線を、水平方向からレーザビーム等を照射して容易に割り出すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明において使用されるイオンビームを加速する加速器は、静電加速器、高周波型加速器を問わない。また、静電加速器においても、シングルエンド型、タンデムタイプ型の種類を問わない。イオンビームのエネルギーは、PIXE、RBS、或いは、生体試料等の放射線損傷の研究を対象とする場合、H+:0.5MeV~3.4MeV、He+:1MeV~5.1MeV程度のエネルギー範囲を想定している。
また、装置に供給される光学上の制約は、上流側に凸型レンズが設置され、その凸型レンズによって対物スリット上に結像されていることが要求される。前記条件が満足されれば、本発明で使用されるイオンビームの仕様は問わない。もちろん、詳細には、イオン工学上のエミタンス、或いは、発散角、電流値等で規定されるが、イオンビーム工学上の詳細なパラメータや数値は通常行われる方法により適宜調整して設定等される。
【0011】
前記マイクロイオンビーム形成用部材とは、イオンビームからマイクロイオンビームを形成するのに必要な部材をいい、例えば、仮想上の光源となるための対物スリット、集束レンズ及び発散するイオンビームを制限するための制限スリット等がこの一例として挙げられる。
【0012】
前記マイクロイオンビーム形成用部材は、所定の鉛直線上に配置される必要があり、本発明では、水平軌道をたどるイオンビームを偏向素子により偏向させて所定の鉛直線としている。尚、本発明において「水平軌道をたどる」の「水平」とは、180度のみを指すものではなく略水平も含まれる。
【0013】
本発明では、前記所定の鉛直線上に、水平方向からの入射光を鉛直方向に偏向させるための偏向素子を配置して、水平方向からトランシットを使用して、マイクロイオンビーム形成用部材を配置する。具体的には、トランシットの水平及び垂直方向の基準線の交点に前記マイクロイオンビーム形成用部材の光学中心が位置するようにマイクロイオンビーム形成用部材を調整して配置すること等により行う。
前記マイクロイオンビーム形成用部材の光学中心は、部材の光学中心が目視できるような状態で視覚化されていれば特に制限されるものではなく、例えば、マイクロイオンビーム形成用部材の端面が円形状のフランジ部を備えるものであれば、フランジ部上に等間隔に4本のボルトを立設し、対向する2本のボルトに対して糸を張設して、互いの糸が交差する点を光学中心とすることができる。好ましくは、前記マイクロイオンビーム形成用部材のイオンビームが通過する方向の端面に、互いに交差する2軸を表示した透光板を設けるようにし、透光板の2軸の交点と、マイクロイオンビーム形成用部材の光学中心とが重なるようにすれば、従来設けていたようなケガキ線を設ける必要がなくなる。尚、前記透光板は、少なくとも前記所定の鉛直線方向に透光性を有し、マイクロイオンビーム形成用部材の端面において、少なくとも、トランシットから覗いている間固定できるようなものであれば特に制限はない。
【0014】
前記偏向素子を介して水平方向から前記所定の鉛直線上を光が通過するようにするためには、必要に応じて、前記偏向素子への光の入射又は出射角度を調整する必要がある。このため、前記所定の鉛直線上の前記マイクロイオンビーム形成用部材が配置されることになる上方に基準点を設けておいて、前記偏向素子に対してレーザビームを照射し、前記基準点にレーザビームが照射されるか否かを確認しながら調整するか、或いは、前記基準点にマーキングを設けて、前記トランシットの視野内に表れる水平及び垂直方向の基準線の交点に重なるようにして、前記偏向素子の位置を調整する。
前記基準点のマーキングは、偏向素子を介してトランシットから覗いて分かるようなものであれば特に制限はなく、例えば、マイクロイオンビーム形成用部材が配置される施設の天井等にペンやシール等により十字状のもの等を設けることができる。
前記偏向素子は、入射光を直角に偏向することができるものであれば特に制限はない。その一例として、プリズムや鏡が挙げられる。
また、本発明におけるトランシットは、水平角度及び垂直角度を計測することができ、視野内において、水平及び垂直方向の基準線が表れるようなものであれば特に制限するものではないが、トランシットの視野内の中心、即ち、水平及び垂直方向の基準線の交点を通過するようなレーザビームを照射することが可能なレーザビーム照射機能付きトランシットを使用することが好ましい。レーザビーム照射器とトランシットをそれぞれ用意する必要がなくなるためである。
【0015】
また、本発明のプリズム付プリズム調整台は、前記プリズムを少なくとも鉛直方向の軸を中心として180度回転自在とする回転板と、前記プリズムを高さ方向に調整自在とする高さ調整機構とを備える必要がある。このような機構を採用することにより、水平方向から照射されるレーザビーム等を鉛直方向に偏向させて所望の軌道を通過させるためのプリズムの位置調整が容易となる。
【0016】
尚、前記プリズム付プリズム調整台によれば、水平方向から照射されるレーザビームを上方に加えて下方にも照射することができることになる。従って、前記イオンビームが鉛直上方向に偏向される地点に、まず、プリズム付きプリズム調整台を配置して、水平方向からレーザビームを照射し、プリズムの鉛直下方に所定の鉛直線の片方の基準となるマーキングを設け、この地点に、前記鉛直方向にレーザビームを照射するレーザ照射器を配置すれば、所定の鉛直線を容易に決定することができる。
【実施例】
【0017】
次に、本発明のマイクロイオンビーム形成用部材の配置方法の一実施例を図面に基づいて説明する。尚、図中の符号で、上記背景技術の項において説明した装置と同じものには同一符号が付されている。
図1中、21で示されるものは、垂直レーザ照射器であり、偏向電磁石7の下方の床1上に設置される。垂直レーザ照射器21は、自動的に水平の基準を割り出して、鉛直上下方向にレーザビーム9を照射する。
架台4の内側下方の水平方向に横設された偏向電磁石架台5b上には、プリズム調整台22が配置される。このプリズム調整台22の上面には、プリズム23が載置される。
【0018】
プリズム調整台22は、図2に示されるように、水平基準を出すためのレベラ24、載置されたプリズム23を平面内で回転させるための回転台25及び回転台25上でプリズム23を挟持固定するための固定具26から構成される。
レベラ24は、2枚の正方形状の平板27(70mm角、厚さ8mm)を対向させ、その間に調整ツマミ28を軸支した2軸チルト機構を有しており、各調整ツマミ28を回して、上側の平板27を水平とするものである(神津精機株式会社製 TM07-01)。
また、レベラ24の上側の平板27上に設けられる回転台25は、円形状の平板29(直径70mm)をマイクロメータヘッドにより±180°の範囲で回動自在としたものである(神津精機株式会社製 TM07-01)。
また、回転台25の円形状の平板29上には、中央にプリズム23を載置するためのスペースが設けられ、その両側から固定具(ボルト)26によりプリズム23を挟持固定できるようになっている。
尚、前記レベラ24の2つの平板27の中央部には、直径21mmの円形状の貫通孔30が設けられ、前記回転台25の平板29の中央部にも、直径12mmの円形状の貫通孔31が設けられており、これら貫通孔30と貫通孔31の中心がほぼ重なるようにして、レベラ24と回転台25とは固定されている。
上記のようにして構成されたプリズム調整台22は、貫通孔30と貫通孔31の中心と、架台5bに設けられた直径21mmの貫通孔32の中心とがほぼ重なるようにして、架台5b上に設置され、前記垂直レーザ照射器21から照射されるレーザビーム9が、貫通孔30、31、32を鉛直方向に通過することになる。
【0019】
図1の構成において、イオンビームが鉛直上方向に偏向される地点、即ち、偏向電磁石7が設置されるべき地点を基準点Oとして、この基準点Oが床1上に射影される地点をaとし、直径2cm程度の円形状のマーキングを設ける。
前記垂直レーザ照射器21から鉛直上下方向に照射されるレーザビーム9が、地点aに照射されるように、垂直レーザ照射器21の位置を調整し、レーザビーム9が作業室3の天井面3cに照射される地点をb(基準点)として、十字状のマーキングを設ける。このようにして、前記地点aと地点bとを結ぶ線として所定の鉛直線が決定されることになる。
【0020】
次に、垂直レーザ照射器21から鉛直上方に照射されるレーザビーム9が、プリズム調整台22の回転台25に設けられた貫通孔31の中心を通過するようにプリズム調整台22を設置する。そして、回転台25の貫通孔31の底面の中心となる地点をcとする。尚、回転台22の貫通孔31の中心をレーザビーム9が通過することの確認は、貫通孔31の直径とほぼ同等の直径を有し、その中心には、直径10mmの貫通孔が設けられたアクリル製の円形板(中心に十字のマーキングが設けられている)を嵌合し、前記円形板の中心をレーザビーム9が通過していることを目視により確認して行うことにする。
そして、図3に示すように、プリズム23が設置される回転台25の上面と同じ平面上に、仮想上の直交する2軸(X軸及びY軸)を設け、X軸上にレーザ照射機能付きトランシット8'Xを設置する。尚、本実施例では、直交する2軸は、プリズム23のために設けたものであって、レーザ照射機能付きトランシット8'Xは、プリズム23が設置される回転台25の上面と同じ平面上であれば、特にX軸、Y軸に制限されるものではない。
このようにして、プリズム調整台22を所定の鉛直線上に設置して、その上に3cm角の立方体形状のレーザビーム用プリズム23を載置する。
【0021】
前記プリズム23に対して、レーザビーム照射機能付きトランシット8'Xから水平方向にレーザビームを照射して、鉛直上方向に偏向させ天井部3cに照射させる。
尚、一般的に、この時点では、偏向されたレーザビームは、天井部3cの地点bには照射されない。このため、レーザ照射機能付きトランシット8'Xからのレーザビームの照射を止めて目視でレーザ照射機能付きトランシット8'Xを覗くと天井部3cに設けられた地点bのマーキングは、レーザ照射機能付きトランシット8'Xの視野の中心から外れている。
この際、レーザ照射機能付きトランシット8'Xの水平方向の基準線から地点bのマーキングがずれていれば、プリズム調整台22の回転台25を回転して地点bのマーキングを前記水平方向の基準線と重なるように調整する。また、レーザ照射機能付きトランシット8'Xの垂直方向の基準線から地点bのマーキングが外れていれば、プリズム調整台22の回転台25の前記X軸上にプリズム23を挟持固定するための固定具(ボルト)26をゆるめて、X軸方向に移動して地点bのマーキングを前記垂直方向の基準線と重なるように調整する。
このようにして、プリズム調整台22を調整することにより、鉛直上方向に偏向されたレーザビームの軌道を、トランシット8'Xの視野の水平及び垂直方向の基準線の交点にプリズム23を介して重ねるようにする。
尚、本実施例では、プリズム調整台22の回転台25のX軸方向にプリズム23が嵌合するように溝を設けてプリズム23はY軸方向にずれないようにしているので、固定具(ボルト)26による調整は容易になっている。
そして、再度、レーザ照射機能付きトランシット8'Xからレーザビームを照射し、天井部3cの地点bのマーキングにレーザビームが照射されているかどうかを確認し、地点bのマーキングにレーザビームが照射されていれば、レーザ照射機能付きトランシット8'Xから照射されるレーザビームの軌道が、プリズム23→O→地点bと形成されたことになる。
【0022】
上記のようにしてレーザビーム照射機能付きトランシット8'Xから照射されるレーザビームの軌道が、プリズム23を介して、所定の鉛直線に重なった後、図4に示されるように、各マイクロイオンビーム形成用部材(図では、ファラデーカップ11)の端面のフランジの外周形状と相似形のアクリル製透光板35を配置する。この透光板35の一方の面には、直交する2軸が表示されており、ファラデーカップ11の光学中心を通過する軌道上に前記透光板35の直交する2軸の交点が位置するように配置する。そして、トランシット8'Xからプリズム23を介して透光板35を覗いた際に、トランシット8'Xの視野の中心に透光板35の中心が位置するように調整する。これにより、マイクロイオンビーム形成用部材の光学中心が所定の鉛直線上に揃えられることになる。
【0023】
また、対物スリット10のゼロ点調整(スリットの先端部がビーム軌道上に達する位置の確認)も、トランシット8'Xを覗きながらスリットを締めていき、ゼロ点となる位置を確認することができる。また、更に、ファラデーカップ11、13のカップ芯出や四重極磁石のボールピースの光学中心も、トランシット8'Xを覗きながら同様に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明のマイクロイオンビーム形成用部材の配置方法の一実施例を説明するための構成図
【図2】本発明のマイクロイオンビーム形成用部材の配置に使用されるプリズム付きプリズム調整台の一実施例を示す側断面図
【図3】図1の平面図
【図4】本発明のマイクロイオンビーム形成用部材の配置方法に使用される透光板の説明斜視図
【図5】従来のビーム光学系配列の模式図
【図6】同平面図
【図7】従来のマイクロイオンビーム形成用部材のケガキ線を示す説明図
【図8】従来のマイクロイオンビーム形成装置の光学系配置図
【符号の説明】
【0025】
1 建屋の床
2 足場
3 作業室
4 マイクロビーム形成用のやぐら
5 マイクロビームを形成する要素機器が搭載される架台
6 架台
7 偏向磁石
8X トランシット(X軸上)
8Y トランシット(Y軸上)
8'X レーザ照射機能付きトランシット(X軸上)
9L 鉛直方向(Z軸方向)のイオンビーム軌道
9 レーザビーム
10 対物スリット
11 ファラデーカップ
12 X-Yステアラー
13 ビーム径制限スリット
14 ファラデーカップ
15 3連四重極マグネット
16 コリメータ
17 ポリイミドフィルム
18 光学顕微鏡
19 生体試料
20 イオンビーム径制限スリット
21 垂直レーザ照射器
22 プリズム調整台
23 プリズム
24 レベラ
25 回転台
26 固定具(押しボルト)
27 平板
28 調整ツマミ
29 平板
30 貫通孔
31 貫通孔
32 貫通孔
35 透光板
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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