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明細書 :放射線遮蔽容器

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4478803号 (P4478803)
公開番号 特開2006-242668 (P2006-242668A)
登録日 平成22年3月26日(2010.3.26)
発行日 平成22年6月9日(2010.6.9)
公開日 平成18年9月14日(2006.9.14)
発明の名称または考案の名称 放射線遮蔽容器
国際特許分類 G21F   5/015       (2006.01)
G01T   1/161       (2006.01)
G21G   4/08        (2006.01)
FI G21F 5/00 R
G01T 1/161 A
G21G 4/08 G
請求項の数または発明の数 3
全頁数 14
出願番号 特願2005-056905 (P2005-056905)
出願日 平成17年3月2日(2005.3.2)
審査請求日 平成18年11月2日(2006.11.2)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】301032942
【氏名又は名称】独立行政法人放射線医学総合研究所
発明者または考案者 【氏名】鈴木 和年
【氏名】鈴木 寿
【氏名】福村 利光
個別代理人の代理人 【識別番号】100064414、【弁理士】、【氏名又は名称】磯野 道造
審査官 【審査官】青木 洋平
参考文献・文献 特開2004-151117(JP,A)
特開2005-049112(JP,A)
特開2001-318197(JP,A)
特開平05-119194(JP,A)
特開昭54-101094(JP,A)
実開平02-006300(JP,U)
調査した分野 G21F 5/015
G01T 1/161
G21G 4/08
特許請求の範囲 【請求項1】
放射性同位元素が吸着された吸着層が内蔵されるカラムを収容するためのカラム収容穴と、前記カラムから延在する流入側のチューブおよび流出側のチューブをそれぞれ収容するための流入側のチューブ収容穴および流出側のチューブ収容穴とを備え、複数個に分割可能である放射線遮蔽容器であって、
前記カラム収容穴は、前記カラムを前記チューブを介在させることなく隙間無く嵌入可能な形状をもって形成するとともに、前記流入側のチューブ収容穴および前記流出側のチューブ収容穴が接続する部分のそれぞれに、前記カラムから放射される放射線をコリメートする直線部分が前記カラム収容穴の軸線に沿って形成され
前記流入側のチューブ収容穴および前記流出側のチューブ収容穴は、それぞれの穴径を前記流入側のチューブおよび前記流出側のチューブの外径より僅かに大きく前記カラムおよび他の前記チューブを介在させることがない径に形成するとともに、それぞれ前記カラム収容穴の軸線に対して斜めに屈曲した部位を有し、
かつ、
前記カラム収容穴の軸線に沿って前記カラムに対向して形成され前記コリメートされた放射線のみを遮蔽する第1遮蔽部と、該第1遮蔽部以外の前記カラムに対向しない箇所が空洞に形成される第1空洞部とを有し、前記流入側のチューブ収容穴が形成される流入側分割遮蔽体と、
前記カラム収容穴の軸線に沿って前記カラムに対向して形成され前記コリメートされた放射線のみを遮蔽する第2遮蔽部と、該第2遮蔽部以外の前記カラムに対向しない箇所が空洞に形成される第2空洞部とを有し、前記流出側のチューブ収容穴が形成される流出側分割遮蔽体とを備える
ことを特徴とする放射線遮蔽容器。
【請求項2】
表面がステンレスで被覆された鉛を用いて形成されることを特徴とする請求項1に記載の放射線遮蔽容器。
【請求項3】
運搬用の遮蔽容器収容ケース内に収容可能なことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の放射線遮蔽容器。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、放射性同位元素を輸送・利用するときに用いる放射線遮蔽容器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、陽電子を放出して崩壊する短半減期のポジトロン核種を利用するPET(Positron Emission Tomography)が癌の診断等に用いられている。PETでは、まずグルコース等の生理代謝物質をポジトロン核種で標識した標識薬を体内に注入して、この生理代謝物質を大量に消費する臓器、例えば癌等に前記標識薬を吸収させる。そして、癌等から放出される陽電子を体外で計測して画像処理し、CT等の他の画像処理手段と組合わせることにより、生理代謝物質を消費する臓器の活動状況、或いは体内での癌等の位置、大きさ等を正確に知ることができる。また、短半減期の核種を用いるため、癌等を撮影した後放射能が短期間に消滅し、後日改めて撮影することにより病巣の変化を知ることができる。このようなPETの有効性に鑑み、PETに健康保険が適用されるようになり、その普及が図られている。
【0003】
ところで、PET用のポジトロン核種はサイクロトロンを用いて生成させる。しかし、サイクロトロンは高価であり、維持管理やそれを用いた放射性核種の製造にも多大な費用と知識・経験を要する。さらに、そのための大きな放射線管理区域が必要なこと等により、多くの医療施設に設置することは困難である。
【0004】
そこで、サイクロトロンの代わりに、ジェネレータと呼ばれる、比較的半減期の長い放射性同位元素をポジトロン核種の生成源に利用する方法が用いられている。これは、非特許文献1に記載されているように、比較的半減期の長い放射性同位元素(親核種)のなかには、崩壊してPETに使用可能な短半減期の核種(娘核種)を生成するものがあることを利用したものである。
【0005】
具体的には、サイクロトロンで生成させた親核種を放射線遮蔽容器内に一旦貯蔵した後、この放射線遮蔽容器を医療施設へ輸送し、医療施設で親核種から生成する娘核種を分離溶出させてPET標識薬を合成し、診断に使用するという方法である。一旦娘核種を溶出した後も、親核種は引き続き崩壊して娘核種を生成するため、同じジェネレータから何度も娘核種を取り出すことができる。そのため、親核種をカウと呼び、この方法をミルキングと呼ぶこともある。
【0006】
以前から、99Mo(半減期66時間)から99mTc(半減期6時間)を生成させてSPECTに用いることが行われていた。SPECTに用いられる核種の放射線のエネルギは、例えば99mTcが0.141MeV程度であるのに対し、PETでは0.51MeV程度の強いエネルギの消滅放射線(ガンマ線)を放出する核種が用いられる。このため、従来用いられていたSPECT用の放射線遮蔽容器よりも、更に放射線を遮蔽する能力の高い放射線遮蔽容器が必要となっている。
【0007】
ジェネレータ用には種々の放射線遮蔽容器が用いられており、例えば特許文献1には輸送中における放射能の減衰により不要となる遮蔽体を一部分離除去して放射線遮蔽容器を軽量化する方法が示されている。

【非特許文献1】核データニュース、No.70(2001)核医学におけるアイソトープ利用(36頁)
【特許文献1】特開2000-292591号公報(段落0017~0020、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1に示された放射線遮蔽容器の構造では、放射性物質を吸着したカラムと第1層遮蔽体容器胴体との間に空間があるため、鉛製の第1層遮蔽体容器胴体の体積がもともと大きく、放射線の遮蔽能力を高めるため鉛の肉厚を増すと重量が大幅に増加してしまい、軽量な放射線遮蔽容器とすることが困難になるという問題がある。
【0009】
PET核種は強いエネルギの消滅放射線を放出するため、広く利用されているSPECT用の99mTc/99Moジェネレータに比べ、親核種の放射能が同じならば約40倍程度の厚さの鉛を必要とする(62Cu/62Znの場合)。4GBq程度のPET核種を扱う場合、その遮蔽には5cm程度の厚さの鉛を必要とする。
【0010】
PET核種を吸着したカラムと遮蔽体容器との間に空間がある構造にすると、例えば特許文献1の図1に示す構造でカラムを収容する穴の内部径を20mmとして、4GBq程度の62Znを封入した場合、放射線遮蔽容器の重量は40kgを超えてしまう。このため、作業者が狭小なホットセル内に複数個搬入して、放射線被曝無しに遠隔的に製造・分注作業を円滑に行うのは困難である。このように、PET用親核種の取り扱いに適した放射線遮蔽容器は知られていなかった。
【0011】
また、親核種を吸着したカラムには、娘核種を溶出させるための溶出液の流入側チューブと流出側チューブ(通常外径3mm程度)を予め取り付けておく必要がある。通常、医療施設での娘核種の溶出操作を簡単にするため、流入側チューブと流出側チューブの末端に三方活栓等の接続具を取り付けた状態で遮蔽容器に収納する。一般には、チューブの末端に三方活栓等を取付けたままの状態で遮蔽容器に挿通できるよう、遮蔽容器には大きなチューブ収容穴が設けられているため、どうしても無駄な空間ができてしまい、これもまた、遮蔽容器の重量を増加させる大きな要因となっていた。
【0012】
本発明の目的は、前記課題に鑑み、小型で軽量の放射線遮蔽容器を提供することにある。また、本発明の別の目的は種々の形状のカラムにも対応できる放射線遮蔽容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、前記課題を解決すべく構成されるものであり、請求項1に記載の発明は、放射性同位元素が吸着された吸着層が内蔵されるカラムを収容するためのカラム収容穴と、カラムから延在する流入側のチューブおよび流出側のチューブをそれぞれ収容するための流入側のチューブ収容穴および流出側のチューブ収容穴とを備え、複数個に分割可能である放射線遮蔽容器であって、カラム収容穴は、カラムをチューブを介在させることなく隙間無く嵌入可能な形状をもって形成するとともに、流入側のチューブ収容穴および流出側のチューブ収容穴が接続する部分のそれぞれに、カラムから放射される放射線をコリメートする直線部分がカラム収容穴の軸線に沿って形成され、流入側のチューブ収容穴および流出側のチューブ収容穴は、それぞれの穴径を流入側のチューブおよび流出側のチューブの外径より僅かに大きくカラムおよび他の前記チューブを介在させることがない径に形成するとともに、それぞれカラム収容穴の軸線に対して斜めに屈曲した部位を有し、かつ、カラム収容穴の軸線に沿ってカラムに対向して形成されコリメートされた放射線のみを遮蔽する第1遮蔽部と該第1遮蔽部以外のカラムに対向しない箇所が空洞に形成される第1空洞部とを有し、流入側のチューブ収容穴が形成される流入側分割遮蔽体と、カラム収容穴の軸線に沿ってカラムに対向して形成されコリメートされた放射線のみを遮蔽する第2遮蔽部と該第2遮蔽部以外のカラムに対向しない箇所が空洞に形成される第2空洞部とを有し、流出側のチューブ収容穴が形成される流出側分割遮蔽体とを備えることを特徴とする放射線遮蔽容器である。
【0014】
請求項1に記載の発明によれば、カラム収容穴を、カラムをチューブを介在させることなく隙間無く嵌入可能な形状をもって形成すると共に、流入側、流出側のチューブ収容穴をそれぞれ流入側、流出側のチューブの外径より僅かに大きくカラムおよび他のチューブを介在させることがない径に形成したので、カラムとカラム収容穴との間の隙間(空間)、および流入側、流出側のチューブと流入側、流出側のチューブ収容穴との間の隙間をほぼ無くすことができ、放射線遮蔽容器全体の小型化と軽量化を図ることができる。
【0015】
例えば、親核種を吸着した半径1cmの球形カラムがあり、遮蔽体の必要厚みを5cmとする。カラムと遮蔽体の隙間を1cmとすると、鉛の遮蔽体は半径7cmで中央に2cmの中空部がある中空の球体構造となる。一方、カラムと遮蔽体の隙間をゼロとすると、鉛遮蔽体は半径6cmで中央に半径1cmの中空部がある中空の球体構造となる。従って、鉛遮蔽体の重量は15.9kgから10.2kgに減少することとなる。
【0016】
このように、余計な空間を作らないことで遮蔽体の体積を小さくし、重量の削減効果を生むことができる。特に、密度の大きな鉛を利用する場合には重量を大幅に削減することが可能となり、放射線遮蔽容器全体の小型化と軽量化を図ることができる。
また、流入側、流出側のチューブを収容するチューブ収容穴の穴径がチューブより僅かに大きいカラムおよび他のチューブを介在させることがない径に構成にすることによっても、余計な空間を削減して放射線遮蔽容器全体の小型化と軽量化、コリメート効果による放射線遮蔽の効率化を図ることができる。なお、この構成の場合流入側、流出側のチューブを放射線遮蔽容器のチューブ収容穴に挿通した後、チューブの開放末端に三方活栓等の接続具を取り付ける。
【0017】
また、放射線遮蔽容器を、カラム収容穴および流入側、流出側のチューブ収容穴を含む複数個のブロックに分割できるので、種々の形状を有するカラム収容穴および流入側、流出側のチューブ収容穴が形成されたブロックを予め用意しておくことにより、異なる形状のカラムおよび流入側、流出側のチューブに対応することができる。また、重量のある放射線遮蔽容器を複数個のブロックに分割することによって、作業者の負担を軽減し、作業を容易にすることができる
【0018】
放射線遮蔽容器の流入側、流出側のチューブ収容穴は、カラム収容穴の軸線に対して斜めに屈曲した部位(以下、屈曲部位という)を有しているので、カラムに内蔵した吸着層に吸着された放射性物質から放射された流入側、流出側のチューブ収容穴を直進する放射線を、前記屈曲部位により遮蔽することができる。また、カラム収容穴の軸線に対して斜めに屈曲した構造としたため、チューブが極端に曲がって経路を閉塞する心配も無い。なお、流入側、流出側の屈曲部位は、折れ曲がるように屈曲させる場合の他に湾曲するように屈曲させる場合も含むものとする
【0019】
ジェネレータシステムにおいては、カラムから娘核種を溶出させるため、カラムに流入側・流出側のチューブを接続する部分が必要となる。しかし、この接続部分は放射線遮蔽容器にとっては「余計な空間」であり、放射線遮蔽容器の重量を増加させる要因となる。請求項1に記載の発明によれば、放射線はチューブ収容穴の直線部分を通過する間にコリメートされるので、遮蔽が必要な範囲が狭くなり、遮蔽厚みが少なくて済む。従って、コリメートされた放射線のみを遮蔽する遮蔽部の体積を小さくすることができる結果、放射線遮蔽容器全体の小型化と軽量化を図ることができる
【0020】
請求項2に記載の発明は、表面がステンレスで被覆された鉛を用いて形成されることを特徴とする請求項1に記載の放射線遮蔽容器である
【0021】
請求項2に記載の発明によれば、鉛の表面がステンレスで被覆されているので、カラムや流入側、流出側のチューブを放射線遮蔽容器に収容するときでも有害な鉛と直接接触することがなく、標識薬として使用される放射性物質への鉛の混入を防止することができる。また、鉛は極めて変形し易い金属であるが、表面をステンレスで被覆することにより、放射線遮蔽容器の組立・運搬等の取扱い中に鉛が変形することを防止できる。この結果、放射線遮蔽容器を繰り返し使用することが可能になる
【0022】
請求項3に記載の発明は、運搬用の遮蔽容器収容ケース内に収容可能なことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の放射線遮蔽容器である
【0023】
請求項3に記載の発明によれば、放射性遮蔽容器を遮蔽容器収容ケースに収容することにより、放射性遮蔽容器の運搬を容易かつ安全に行うことができる。また、狭いホットセル内から製品を取り出すことも容易となる
【発明の効果】
【0027】
以上、詳述した通り、本発明によれば、流入側、流出側のチューブと流入側、流出側のチューブ収容穴との間の隙間およびカラムとカラム収容穴との間の隙間、カラムとチューブを接続する部分の無駄な隙間をほぼなくすことができるため、小型で軽量な放射線遮蔽容器を提供することができ、放射線遮蔽容器の輸送時等における作業効率を高めることができる。また、小型軽量化の結果として、ジェネレータ調製時、使用時においても全ての作業を放射線遮蔽容器に放射性核種を封入した状態で行なうことが可能となるので、作業者の放射線被曝低減に非常に効果的である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明の実施の形態に係る放射線遮蔽容器1を、図1ないし図8の添付図面を参照して説明する。図1は、本実施の形態に係る放射線遮蔽容器1を示す縦断面図であり、図2は、本実施の形態に係る放射線遮蔽容器1を示す分解斜視図である。図3は、放射線遮蔽容器1と運搬用の遮蔽容器収容ケース110を示す分解斜視図であり、図4は放射線遮蔽容器1を遮蔽容器収容ケース110内に収容した状態を示す斜視図である。図5は、カラム80および流入側のチューブ90を第1の遮蔽体10に組み付ける工程を示す断面図であり、図6は、カラム80および流入側のチューブ90が組み付けられた第1の遮蔽体10を第2の遮蔽体20内に組み付ける工程を示す断面図である。図7は、カラム80、流入側のチューブ90、流出側のチューブ100および第1の遮蔽体10が組み付けられた第2の遮蔽体20に第4の遮蔽体40を組み付ける工程を示す断面図であり、図8は、第3の遮蔽体30を第1の遮蔽体10および第2の遮蔽体20に組み付ける工程を示す断面図である。
【0029】
図1および図2に示すように、放射線遮蔽容器1は、第1の遮蔽体10、第2の遮蔽体20、第3の遮蔽体30、第4の遮蔽体40に4分割されており、カラム収容穴50、流入側のチューブ収容穴60(以下、チューブ収容穴60という)および流出側のチューブ収容穴70(以下、チューブ収容穴70という)によって構成されている。
【0030】
また、カラム収容穴50には放射性物質を吸着するカラム80が収容されると共に、チューブ収容穴60、70には流入側のチューブ90(以下、チューブ90という)および流出側のチューブ100(以下、チューブ100という)が収容され、チューブ90、チューブ100の末端には接続具である三方活栓(図示せず)が接続されている。
なお、放射性物質はカラム80内部の吸着層(図示せず)にのみ存在し、カラム80内部の吸着層以外の部分、およびチューブ90、チューブ100には放射性物質は存在しない。
【0031】
また、特に断りの無い限り、第1の遮蔽体10~第4の遮蔽体40は放射線を遮蔽する鉛材LDで形成され、外表面はステンレス材STで被覆されている。これにより、カラム80またはチューブ90、100と鉛材LDが直接接触して、親核種あるいは娘核種に混入するのを防止することができる。また、ステンレス材STで変形し易い鉛材LDを保護することにより、放射線遮蔽容器1の組立の際、第1の遮蔽体10~第4の遮蔽体40が変形することを防止できる。
【0032】
第1の遮蔽体10はカラム収容穴50の軸線L(以下、軸線Lという)を中心軸とした円筒状に形成され、カラム80を収容するカラム収容穴50の一部であるカラム収容穴部51、および、チューブ90を収容するチューブ収容穴60の一部を構成する第1のチューブ収容穴部61が設けられている。本実施の形態では、第1のチューブ収容穴部61は軸線Lに沿って形成されてカラム収容穴部51に接続しており、第1のチューブ収容穴部61が請求項にいう「放射線をコリメートする直線部分」に相当する。
また、第1の遮蔽体10の(図1参照)の第3の遮蔽体30側の外周には、径方向外側に向けて環状鍔部13が突設されている。
【0033】
第2の遮蔽体20は、扁平な円筒状の底部20Aと、底部20Aの外周部に一体形成されて第1の遮蔽体10と同心円状に配置された円筒部20Bとを備え、この底部20Aと円筒部20Bは第1の遮蔽体10と同一の軸線Lを有している。そして、カラム収容穴50の一部であるカラム収容穴部54、および、チューブ100を収容するチューブ収容穴70の一部を構成する第3のチューブ収容穴部63が設けられている。
【0034】
本実施の形態では、第3のチューブ収容穴部63は軸線Lに沿って形成されてカラム収容穴部54に接続しており、第3のチューブ収容穴部63が請求項にいう「放射線をコリメートする直線部分」に相当する。
第2の遮蔽体20には、さらに、円筒部20Bを貫通してチューブ収容穴70の一部を構成する第5のチューブ収容穴部66が設けられている。
【0035】
また、第2の遮蔽体20の一方の端面には径方向で対向して2個の嵌合穴23が形成され、他方の端面についても径方向で対向して2個の他の嵌合穴24が形成されている。さらに、底部20Aと円筒部20Bとで囲まれた空間は、円柱状の遮蔽体収容空間Sとなっている。また、円筒部20Bの開口端内周には、第1の遮蔽体10の環状鍔部13が嵌合して第1の遮蔽体10に対する第2の遮蔽体20の位置決めを行う環状段部25が形成されている。
【0036】
第3の遮蔽体30は、軸線Lを中心軸とした円筒状の形状であり、第2の遮蔽体20と同一の外径で内部が中空空間S1となった大径の円柱部31と、円柱部31内に同軸状に形成されて鉛材LDからなる第1の遮蔽部33を有する小径の円柱部32とによって構成されている。なお、円柱部31、円柱部32は、ステンレス材STを用いて形成されている。
【0037】
第3の遮蔽体30には、さらに、チューブ収容穴70の一部を構成する第2のチューブ収容穴部62が、軸線Lに対して斜めに設けられている。また、円柱部31には第5のチューブ収容穴部66と対応する位置にチューブ収容穴70の一部を構成する第6のチューブ収容穴部67が設けられている。
【0038】
さらに、円柱部32の一方の端面には円形穴35が形成されると共に、径方向で対向して嵌合凹部36、36が凹設されている(図2参照)。また、円柱部32の他方の端面には、第2の遮蔽体20の複数の嵌合穴23と対応した位置に複数の嵌合突起37が突設され、嵌合突起37と嵌合穴23との嵌合により、第2の遮蔽体20に対する第3の遮蔽体30の位置決めが行われる。
【0039】
第4の遮蔽体40は、第3の遮蔽体30と同様に、軸線Lを中心軸とした円筒形状であり、第2の遮蔽体20と同一の外径で内部が中空空間S2となった大径の円柱部41と、円柱部41内に同軸状に形成されて鉛材LDからなる第2の遮蔽部43を有する小径の円柱部42とによって構成されている。なお、円柱部41、円柱部42は、ステンレス材STを用いて形成されている。
【0040】
第4の遮蔽体40には、さらに、チューブ収容穴70の一部を構成する第4のチューブ収容穴部65が、軸線Lに対して斜めに設けられている。また、円柱部41には第5のチューブ収容穴部66と対応した位置に円形の貫通穴48が穿設されている。
さらに、円柱部42の一方の端面には、第2の遮蔽体20の複数の嵌合穴24と対応する位置に複数の嵌合突起45が突設され、嵌合突起45と嵌合穴24との嵌合により、第2の遮蔽体20に対する第4の遮蔽体40の位置決めが行われる。また、円柱部42の軸方向他側の端面には円形穴46が形成され、径方向で対向する複数の嵌合凹部47が凹設されている。
【0041】
次に、カラム収容穴50について説明する。
本実施の形態のカラム収容穴50は、カラム収容穴部51とカラム収容穴部54とから構成され、カラム80を隙間無く嵌入可能な形状に形成される。ここで、「隙間無く」とはカラム80とカラム収容穴50との隙間が小さいほどよいことを意味し、最大でも1mm以下の隙間にすることが好ましい。また、カラム収容穴50の一部の直径をカラム80の外径より小さくして、カラム80を圧入して嵌入する構造とすることもできる。
【0042】
このように、カラム80とカラム収容穴50との間の隙間(空間)をほぼ無くす構造とすることにより、無駄な空間を無くして放射線遮蔽容器1の体積の増加を防止し、放射線遮蔽容器1全体の小型化と軽量化を図ることができる。
なお、カラム80には特に指定は無く、例えばセップパック(登録商標)等の市販のカラムを用途に応じて選択して用いることができる。
【0043】
さらに、カラム収容穴50を含む第1の遮蔽体10および第2の遮蔽体20は交換可能なブロックなので、種々の形状のカラム収容穴50が形成された第1の遮蔽体10および第2の遮蔽体20を用意しておくことにより、種々の形状を有するカラムに対応可能な放射線遮蔽容器とすることができる。
【0044】
次に、2本のチューブ収容穴60、70、およびコリメートされた放射線のみを遮蔽する遮蔽部について説明する。
本実施の形態のチューブ収容穴60は、第1の遮蔽体10に形成されたカラム収容穴部51に接続して軸線Lに沿って形成される第1のチューブ収容穴部61と、第3の遮蔽体30の第1の遮蔽部33を貫通して軸線Lに対して斜め方向に形成された第2のチューブ収容穴部62とから構成される。第1のチューブ収容穴部61と第2のチューブ収容穴部62とは、軸線L上で接続する。
【0045】
チューブ収容穴70は、第2の遮蔽体20に形成されたカラム収容穴部54に接続して軸線Lに沿って形成される第3のチューブ収容穴部63と、第4の遮蔽体40の第2の遮蔽部43を貫通して軸線Lに対して斜め方向に形成された第4のチューブ収容穴部65と、第2の遮蔽体20の外周側に位置する第5のチューブ収容穴部66と、第3の遮蔽体30に形成されて第5のチューブ収容穴部66に接続する第6のチューブ収容穴部67とから構成されている。
【0046】
本実施の形態では、チューブ収容穴60、70のそれぞれにチューブ90、100を挿通した後、それぞれの開放末端に三方活栓を取り付ける。このようにすることにより、チューブ収容穴60、70の穴径を、三方活栓の投影形状ではなく、チューブ径を基準にして決めることができる。
チューブ収容穴60、70の穴径は、それぞれチューブ90、100の外径より僅かに大きく形成される。ここで「僅かに大きく」とはチューブ90、100を挿通可能な穴径であればよいことを意味し、隙間は1mm以下にすることが好ましい。また、チューブ90、100を容易に挿通できるよう、屈曲部位の穴径を直線部より大きくすることができる。
【0047】
このように、チューブ90、100を収容するチューブ収容穴60、70の穴径がチューブより僅かに大きい構成にすることによっても、放射線遮蔽容器1から余計な空間を削減して放射線遮蔽容器1全体の小型化と軽量化を図ることができる。なお、チューブ90、100は柔軟な樹脂製のものであればよく、例えばポリフルオロエチレン製のチューブを用いることができる。
【0048】
ところで、前記のように、放射性物質はカラム80内部の吸着層(図示せず)にのみ存在している。吸着層から放射され、第1のチューブ収容穴部61、第3のチューブ収容穴部63を直進する放射線は、軸線Lに対して斜めに屈曲した部位に相当する第2のチューブ収容穴部62、第4のチューブ収容穴部65に衝突して、第3の遮蔽体および第4の遮蔽体を構成する鉛材LDにより遮蔽される。
【0049】
また、吸着層からの放射線は、直線状の第1のチューブ収容穴部61、第3のチューブ収容穴部63を通過するときにコリメートされてほぼ平行で強度が大幅に低下した状態となる。従って、このコリメートされた放射線の遮蔽を要する範囲、および遮蔽体の厚みは減少する。換言すれば、吸着層と第1のチューブ収容穴部61、第3のチューブ収容穴部63を結ぶ線上(本実施の形態では軸線L上)に小さな遮蔽体を設ければ足りるため、放射線遮蔽容器1の重量を大幅に削減することが可能となる。
【0050】
本実施の形態では、第1の遮蔽部33と第2の遮蔽部43がコリメートされた放射線のみを遮蔽する遮蔽部として機能している。これにより、第3の遮蔽体30の中空空間S1、および第4の遮蔽体40の中空空間S2に相当する体積分の鉛材LDが削減され、放射線遮蔽容器1の重量が大幅に削減されている。なお、本実施の形態では、第1の遮蔽部33および第2の遮蔽部43はそれぞれ、第3の遮蔽体30および第4の遮蔽体40を構成する鉛材LDに相当する。
【0051】
このように、本実施の形態の放射線遮蔽容器1は、余分な空間をなくすことにより、従来の放射線遮蔽容器では例えば40kg程度あった重量を、20kg程度に軽量化できると共に、放射線遮蔽容器の小型化を図ることができ、放射線遮蔽容器の運搬時等における作業者の作業効率を高めることができる。
【0052】
次に、図3および図4を参照して放射線遮蔽容器1を運搬するための遮蔽容器収容ケース110について説明する。図3および図4に示すように遮蔽容器収容ケース110は、有底の筒体111と、筒体111の開口端を施蓋する蓋体112とによって構成されている。筒体111は、円筒部113と、円筒部113の端部に一体形成された底部114とを有している。円筒部113には、その軸方向に沿って延びた略コ字状をなす切欠部113A、113A、…が周方向にほぼ等間隔に設けられている。これら各切欠部113A、113A、…は、放射線遮蔽容器1を筒体111に容易に出し入れするためのものである。
【0053】
また、円筒部113の開口端側には径方向で対向して複数の止め金具113Bが取り付けられ、この止め金具113Bを蓋体112に取り付けられた引掛部112Aに引っ掛けることにより、放射線遮蔽容器1を筒体111内に収納した状態で固定することができる。さらに、筒体111の底部114には円柱状の突部114Aが径方向で対向した位置に複数突設されると共に、蓋体112の内側面には円柱状の突部112Bが複数突設されている。
【0054】
そして、突部112B、114Aはそれぞれ第3の遮蔽体30の嵌合凹部36および第4の遮蔽体40の嵌合凹部47(図1参照)に嵌合することにより、放射線遮蔽容器1を収納した遮蔽容器収容ケース110の運搬時に放射線遮蔽容器1が遮蔽容器収容ケース110内で回転するのを抑えるものである。これにより、医療機関へ輸送中に放射線遮蔽容器1やチューブ、三方活栓が破損することを防止できる。
【0055】
また、蓋体112には2個のチューブ挿通穴112Cが穿設され、図4に示すように、これらチューブ挿通穴112Cを介してチューブ90、100を外部に引き出すものである。なお、蓋体112の外側面には取手112Dが固着され、この取手112Dは、遮蔽容器収容ケース110を作業者がホットセルから狭い搬入口を介して引き出したり、運搬するときの把持部となる。
【0056】
次に、放射線遮蔽容器1に収容されているカラム80に吸着された親核種(例えば62Zn)から、他の放射性同位元素である娘核種(例えば62Cu)を抽出する方法について説明する。
【0057】
まず、サイクロトロン(図示せず)で生成させ、分離精製した親核種を含む水溶液を、鉛で遮蔽されたホットセル内で遠隔的に、遮蔽容器収容ケース110に入った放射線遮蔽容器1に収容されているカラム80にチューブ90を経由して分注し、親核種をカラム80内の吸着層(図示せず)に吸着させ、残余の液体はチューブ100を通じて廃液タンク(図示せず)へ送る。さらに、チューブやカラム内に残存する不純物核種を適当な溶媒で洗浄し、カラムに吸着された親核種以外の放射能をチューブやカラムから除く。すなわち、親核種は全てカラム80に吸着され、チューブ90、100には放射性物質は存在しない状態となる。分注が終了したら、チューブ90、100の先端に装着している三方活栓から他の装置を遠隔的に切り離し、ホットセルから収容ケースの取手を使って外部に取り出す。
【0058】
この状態で遮蔽容器収容ケース110を医療機関へ運送し、医療機関で三方活栓に溶出液のチューブ(図示せず)を接続する。次いで、チューブ90からカラム80に向けて溶出液を注入することにより、親核種とカラム内で生成した娘核種のうち娘核種だけを選択的に溶出液に溶出させてチューブ100からこの娘核種が取り出される。
【0059】
なお、吸着層に吸着された親核種が62Znの場合、半減期は約9時間であり、親核種が崩壊することにより短半減期の娘核種である62Cuが生成する。そして、娘核種が一旦溶出された後も62Znは引き続き崩壊するため、娘核種も引き続き生成するので、カラム80から繰り返し娘核種を取り出すことができる。
【0060】
次に、放射線遮蔽容器1の組立方法について図5ないし図8を参照して説明する。
まず、図5に示すように、カラム80にチューブ90、100を装着すると共に、カラム80およびチューブ90をそれぞれカラム収容穴50内およびチューブ収容穴60内に嵌入する。そして、図6に示すように、カラム80およびチューブ100をそれぞれカラム収容穴50内およびチューブ収容穴70内に嵌入する。
【0061】
次に、図7に示すように、チューブ100を、第4の遮蔽体40の第3のチューブ収容穴部63内および第4のチューブ収容穴部65内に挿入して、中空空間S2から円形穴46を通じて外部に引き出しつつ(図8参照)、嵌合突起45、45を嵌合穴24、24内に嵌合させる。これにより、第2の遮蔽体20に対して第4の遮蔽体40を位置決めした状態で、この第4の遮蔽体40を第2の遮蔽体20に当接させる。
【0062】
そして、次に図8に示すように、チューブ90を第2のチューブ収容穴部62内に挿入して、中空空間S1から円形穴35を通じて外部に引き出しつつ、嵌合突起37を嵌合穴23に嵌合させる(図1参照)。これにより、第2の遮蔽体20に対して第3の遮蔽体30を位置決めした状態で、この第3の遮蔽体30を第1、第2の遮蔽体20、30に当接させる。そして、最後に円形穴46から外部に引き出したチューブ100を中空空間S2内に挿入すると共に、このチューブ100を第5のチューブ収容穴部66内および第6のチューブ収容穴部67内に挿入してチューブ100を外部に引き出すようにする。
【0063】
このようにして組み上げた放射線遮蔽容器1を、遮蔽容器収納ケース110内に収納する。次に、チューブ90,100をチューブ挿通穴112Cに通しながら、蓋体112を、突部112B、112Bを嵌合凹部36,36に嵌合させた後、止め金具113及び引掛部112Aを使って位置決め固定する。最後に汚染した可能性のあるチューブ90,100の先端部を1cm程度切断し、そこに、継ぎ手、三方活栓などを接続する。ジェネレータを臨床的に利用する場合には、以上の操作は全てクリーンベンチ内で行うことが望ましい。この状態で、遮蔽容器収納ケース110に入れた放射線遮蔽容器1のセットをホットセル内に入れて前述のように放射性核種の充填を行う。ホットセルから取り出した後は、滅菌済み盲栓又は3方活栓などで系を密閉した後、専用輸送容器に入れて出荷する。
【0064】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は前記実施の形態には限定されない。例えば、本実施の形態では、第2の遮蔽体20として中央に円筒状の凹部を有する円筒を取り上げたが、第2の遮蔽体20の外形は角張った円筒状に限るもので無く、放射線源からの距離と、遮蔽に要する厚みを考慮して角が円弧状の円筒を用いることができる。また、放射線遮蔽容器1を4分割する場合を例に説明したが、放射線遮蔽容器1を何個に分割するか、あるいは、どのような形状に分割するかは任意である。
【0065】
さらに、本実施の形態では、チューブ収容穴60、70の屈曲部位が「く」の字に折れ曲がっている場合を示したが、屈曲部位を円弧状に形成することができる。屈曲部位を円弧状に形成すると、チューブ90,100を容易にチューブ収容穴に挿通させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の実施の形態に係る放射線遮蔽容器を示す縦断面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る放射線遮蔽容器を示す分解斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る放射線遮蔽容器と運搬用の遮蔽容器収容ケースを示す分解斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る放射線遮蔽容器を遮蔽容器収容ケース内に収容した状態を示す斜視図である。
【図5】カラムおよび流入側のチューブを第1の遮蔽体に組み付ける工程を示す断面図である。
【図6】カラムおよび流入側のチューブが組み付けられた第1の遮蔽体を第2の遮蔽体内に組み付ける工程を示す断面図である。
【図7】カラム、流入側のチューブ、流出側のチューブおよび第1の遮蔽体が組み付けられた第2の遮蔽体に第3の遮蔽体を組み付ける工程を示す断面図である。
【図8】第3の遮蔽体を第1の遮蔽体および第2の遮蔽体に組み付ける工程を示す断面図である。
【符号の説明】
【0067】
1 放射線遮蔽容器
10 第1の遮蔽体
20 第2の遮蔽体
30 第3の遮蔽体
40 第4の遮蔽体
50 カラム収容穴
60 第1のチューブ収容穴
70 第2のチューブ収容穴
80 カラム
90 第1のチューブ
100 第2のチューブ
110 遮蔽容器収容ケース
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
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