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明細書 :診断・治療用X線切換え発生装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4612466号 (P4612466)
公開番号 特開2006-318745 (P2006-318745A)
登録日 平成22年10月22日(2010.10.22)
発行日 平成23年1月12日(2011.1.12)
公開日 平成18年11月24日(2006.11.24)
発明の名称または考案の名称 診断・治療用X線切換え発生装置
国際特許分類 H05G   2/00        (2006.01)
A61B   6/00        (2006.01)
A61N   5/10        (2006.01)
G21K   1/00        (2006.01)
G21K   5/02        (2006.01)
G21K   5/08        (2006.01)
FI H05G 1/00 L
A61B 6/00 300A
A61N 5/10 D
A61N 5/10 E
A61N 5/10 J
G21K 1/00 X
G21K 1/00 Z
G21K 5/02 X
G21K 5/08 X
請求項の数または発明の数 5
全頁数 15
出願番号 特願2005-139720 (P2005-139720)
出願日 平成17年5月12日(2005.5.12)
審査請求日 平成19年12月5日(2007.12.5)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
【識別番号】301032942
【氏名又は名称】独立行政法人放射線医学総合研究所
発明者または考案者 【氏名】野瀬 裕之
【氏名】石田 大典
【氏名】金子 七三雄
【氏名】栄 久晴
【氏名】上坂 充
【氏名】深沢 篤
【氏名】土橋 克広
個別代理人の代理人 【識別番号】100097515、【弁理士】、【氏名又は名称】堀田 実
【識別番号】100136548、【弁理士】、【氏名又は名称】仲宗根 康晴
【識別番号】100136700、【弁理士】、【氏名又は名称】野村 俊博
審査官 【審査官】後藤 順也
参考文献・文献 特開平09-129396(JP,A)
特開2001-133600(JP,A)
特開平08-096986(JP,A)
調査した分野 H05G 2/00
G21K 5/02
G21K 5/08
特許請求の範囲 【請求項1】
パルス電子ビームを加速して所定の直線軌道を通過させる電子ビーム発生装置と、
パルスレーザー光を発生するレーザー発生装置と、
前記パルスレーザー光を前記直線軌道上にパルス電子ビームに対向して導入するレーザー光導入装置と、
パルス電子ビームの衝突により特性X線を発生する金属ターゲットと、
該金属ターゲットを前記直線軌道上の衝突位置と該軌道外の退避位置との間で移動可能なターゲット移動装置とを備え、
前記衝突位置において、金属ターゲットの衝突面が、パルス電子ビームとパルスレーザー光の衝突点と空間的に同一位置に位置しており、
これにより金属ターゲットを退避位置に位置決めして前記直線軌道上でパルス電子ビームとパルスレーザー光が正面衝突して衝突点で診断用の単色硬X線を発生し、金属ターゲットを衝突位置に位置決めしてパルス電子ビームと金属ターゲットの衝突により同一の衝突点から特性X線を発生し、同一の装置の同一の光源位置から診断用と治療用のX線を照射する、ことを特徴とする診断・治療用X線切換え発生装置。
【請求項2】
前記金属ターゲットは、タングステン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、モリブデン、銀、またはこれらの合金からなる、ことを特徴とする請求項1に記載の診断・治療用X線切換え発生装置。
【請求項3】
前記衝突点と被験者の間に、診断用単色硬X線および治療用特性X線の放射方向を制御するコリメータを備える、ことを特徴とする請求項1に記載の診断・治療用X線切換え発生装置。
【請求項4】
前記レーザー発生装置は、互いに波長が異なる複数のパルスレーザー光を発生する複数のパルスレーザー装置と、
前記複数のパルスレーザー光を同一光路上に合流させるレーザー合流光学系と、
前記複数のパルスレーザー光が互いに時間差を有するように複数のパルスレーザー装置を制御するレーザー制御装置とを有する、ことを特徴とする請求項1に記載の診断・治療用X線切換え発生装置。
【請求項5】
前記直線軌道上の衝突点におけるパルスレーザー光のビームプロファイルを調整するプロファイル調整光学系を有する、ことを特徴とする請求項4に記載の診断・治療用X線切換え発生装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、診断用X線と治療用X線を切換えて発生するX線切換え発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
X線は波長が約0.1~100Å(10-11~10-8m)程度の電磁波であり、このうち波長の短いX線(10~100keV,λ=1~0.1Å)を硬X線、波長の長いX線(0.1~10keV,λ=100~1Å)を軟X線という。また、物質に電子線などを当てた時に放射される、物質の構成元素固有の波長をもつX線を特性X線という。
【0003】
X線を用いた装置としてX線透過装置、X線CT装置、X線回折装置、X線分光装置等が、医療、生命科学、材料科学など広い分野で利用されている。例えば、心筋梗塞の治療には、50keV程度のX線を用いた冠状動脈血管造影(IVCAG)が一般に行なわれている。また、X線CT装置は、測定する物体に異なる方向からX線を照射してその吸収を測定し、コンピュータによって画像を再構築して物体の二次元断面画像を得る装置である。
【0004】
X線の発生源としては、X線管とシンクロトロン放射光が広く知られている。
X線管は、真空中でフィラメントを加熱して得られる熱電子を高電圧で加速して金属陽極(ターゲット)に衝突させて、X線を発生させる装置である。X線管から発生するX線は、電子の制動放射による連続X線と、輝線スペクトルである特性X線とからなる。連続X線は特定の波長のX線を必要としない用途、例えば医療用や工業用の透過法の光源として用いられる。また特性X線は、特定の波長のX線を必要とする用途、例えばX線回折や蛍光X線分光等に用いられる。
【0005】
一方、シンクロトロン放射光(SR光)は、環状加速器(シンクロトロン)において、光速に近い速度まで加速した電子ビームの軌道を強力な磁石で変化させ、その軌道変化の際に発生するX線である。SR光は、X線管に比べて桁違い(10倍以上)に強力なX線源であり(例えばX線強度(光子数):約1014photons/s、パルス幅:約100ps)、高いX線強度を必要とする分野で用いられる。
【0006】
しかし、シンクロトロンを用いた放射光施設は、シンクロトロンの長径が例えば50m以上、軌道長が100m以上に達する大型設備であるため、研究や医療用であっても容易には導入できない問題がある。そこで、小型の線形加速器を用いた小型X線発生装置が提案されている(例えば非特許文献1)。
【0007】
一方、従来のX線CT装置では、放射光から単色硬X線を得る手段として2枚の結晶板からなるモノクロメータを用いている。また、単色X線CT装置では電子密度の測定精度が低いため、主波と高調波の混合比が異なる2種類のX線を用いる混合2色X線CT装置が提案されている(例えば非特許文献2)。
【0008】
また、特性X線を照射用X線として利用する診断・治療装置として特許文献1が、電子ビームを治療用にX線ビームを診断用に用いる診断・治療装置として特許文献2が既に開示されている。
【0009】
非特許文献1の「小型X線発生装置」は、図4に示すように、小型の加速器51(Xバンド加速管)で加速された電子ビーム52をレーザー53と衝突させてX線54を発生させるものである。RF電子銃55(熱RFガン)で生成されたマルチバンチ電子ビーム52はXバンド加速管51で加速され、パルスレーザー光53と衝突する。コンプトン散乱により、時間幅10nsの硬X線54が生成される。
この装置は、一般に線形加速器で用いられるSバンド(2.856GHz)の4倍の周波数にあたるXバンド(11.424GHz)を電子ビーム加速用のRFとして用いて小型化を図っており、例えばX線強度(光子数):約1×10photons/s、パルス幅:約10psの強力な硬X線の発生が予測されている。
【0010】
非特許文献2の「混合2色X線CT装置」は、図5に示すように、回転フィルター61、モノクロメータ62、コリメータ63、透過型イオンチェンバー64、散乱体65、スライド・回転テーブル66、NaI検出器67、及びプラスチックシンチレーションカウンター68を備え、シンクロトロン放射光69aからモノクロメータ62により40keVの主波X線と80keVの2倍高調波X線を抽出し、回転フィルター61により40keVX線と80keVX線の混合比を調整し、散乱体65からの散乱X線スペクトルをNaI検出器67で観察して混合比を測定し、コリメータ63で混合2色X線69bのサイズを整形し、透過型イオンチェンバー64および被写体60を透過させ、プラスチックシンチレーションカウンター68で強度を測定するものである。
この装置により、電子密度の測定精度を高めるとともに、電子密度および実効原子番号のイメージ像の作成に成功している。
【0011】
特許文献1の「X線診断装置およびX線治療装置」は、図6に示すように、被験者77に摂取させたX線遮断性金属錯体を患部に選択的に蓄積させて、X線発生装置71、72からのX線を照射してX線撮像装置76で患部のX線画像を形成するX線診断装置であって、所定のエネルギー範囲に属する特性X線を発生する金属ターゲット73を用いて、電子発生器71で発生し電子加速器72で加速した電子ビームを金属ターゲット73にぶつけて発生した特性X線を照射用X線として利用するものである。
なおこの図で、74はフィルター装置、75は寝台である。
【0012】
特許文献2の「低ドーズ低位及びポータルイメージング用X線ソースを有する放射線治療装置」は、メガボルトの放射線治療及びポータルイメージング用の診断X線ソースの両方に適用可能な装置であり、図7に示すように、図示しない電子銃から放出され導波管内で加速させた電子ビーム81(高エネルギー治療ソース)と、電子銃82から発射された電子ビーム83の可動ターゲット84への衝突により発生するX線ビーム85(低エネルギー診断ソース)の両方が、装置内の物理的に同一ライン上86に配置され、かつ可動ターゲット84を軸方向に移動するアクチュエータを備え、所望により治療または診断用の位置に配置して、電子ビーム81を治療用にX線ビーム85を診断用に用いるものである。
【0013】

【非特許文献1】土橋克広、他、「Xバンドリニアックを用いた小型硬X線源の開発」、2002
【非特許文献2】佐々木誠、他、「混合2色X線CTシステムの開発」、医学物理 Vol.23 Supplement No.2 April 2003
【0014】

【特許文献1】特開2003-38475号公報、「X線診断装置およびX線治療装置」
【特許文献2】特開平8-206103号公報、「低ドーズ低位及びポータルイメージング用X線ソースを有する放射線治療装置」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
診断用X線には、狭域でエネルギーの高い「単色硬X線」を用いることで、鮮明な画像を得ることができ、なおかつ、患者に無駄に放射線を浴びせずに済む。
また、治療用X線の光線位置を診断用X線の光源と近づけることでX線照射位置の誤差を少なくできる。
従って、診断と治療を同一の装置で行なう診断・治療装置用として、診断用X線としての単色硬X線と治療用X線としての特性X線を同一の光源位置において切換えて発生するX線切換え発生装置が強く要望されていた。
【0016】
特許文献1の診断・治療装置では、所定のエネルギー範囲に属する特性X線を、診断用と治療用の両方に用いている。しかし、この特性X線は、人体への吸収率が低いX線エネルギーが40keV以上のものであるが、単色でない(すなわち広域である)ため、鮮明な画像を得るためには被験者の患部にc線遮断性金属錯体を選択的に蓄積させる必要があり、治療用X線としてもエネルギーが低く広域であるため、X線遮断性金属錯体を患部に蓄積させる必要があり、被験者の負担が大きい問題があった。
【0017】
また、特許文献2の診断・治療装置では、電子ビームを治療用にX線ビームを診断用に用いている。しかし、発生するX線は診断用のみであり、診断用X線と治療用X線を切換えて発生することはできない。また、診断用X線ビームを発生させるために、治療用電子ビームとは別の電子ビームを必要とするため、装置が複雑かつ高価となる。
【0018】
放射光から単色硬X線を得る場合、非特許文献2に示すように2枚の結晶板からなるモノクロメータを用いることができる。しかし、放射光光源は、大型設備であるため、研究や医療用であっても容易には導入できない問題がある。
また、X線診断においてX線画像の精度を高め、同時に電子密度と実効原子番号の分布を計測するために、2種類のX線を用いる場合、モノクロメータは、結晶角度を精密に調整する必要あるため、短時間での高速切換えは非常に困難である。
【0019】
また、非特許文献2のように、シンクロトロン放射光から主波X線と2倍高調波X線が混合した混合2色X線を抽出して用いる場合、X線の波長が高調波に限定され、かつ主波と高調波が分離できない問題がある。
【0020】
本発明は、上述した要望を満たすために創案されたものである。すなわち、本発明の目的は、診断と治療を同一の装置で行なうため、診断用X線としての単色硬X線と治療用X線としての特性X線を切換えて発生することができる診断・治療用X線切換え発生装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明によれば、パルス電子ビームを加速して所定の直線軌道を通過させる電子ビーム発生装置と、
パルスレーザー光を発生するレーザー発生装置と、
前記パルスレーザー光を前記直線軌道上にパルス電子ビームに対向して導入するレーザー光導入装置と、
パルス電子ビームの衝突により高エネルギーの特性X線を発生する金属ターゲットと、
該金属ターゲットを前記直線軌道上の衝突位置と該軌道外の退避位置との間で移動可能なターゲット移動装置とを備え、
前記衝突位置において、金属ターゲットの衝突面が、パルス電子ビームとパルスレーザー光の衝突点と空間的に同一位置に位置しており、
これにより金属ターゲットを退避位置に位置決めして前記直線軌道上でパルス電子ビームとパルスレーザー光が正面衝突して衝突点で診断用の単色硬X線を発生し、金属ターゲットを衝突位置に位置決めしてパルス電子ビームと金属ターゲットの衝突により同一の衝突点から特性X線を発生し、同一の装置の同一の光源位置から診断用と治療用のX線を照射する、ことを特徴とする診断・治療用X線切換え発生装置が提供される。
【0022】
本発明の好ましい実施形態によれば、前記金属ターゲットは、タングステン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、モリブデン、銀、またはこれらの合金からなる。
【0023】
また、前記衝突点と被験者の間に、診断用単色硬X線および治療用特性X線の放射方向を制御するコリメータを備える、ことが好ましい。
【0024】
また、前記レーザー発生装置は、互いに波長が異なる複数のパルスレーザー光を発生する複数のパルスレーザー装置と、
前記複数のパルスレーザー光を同一光路上に合流させるレーザー合流光学系と、
前記複数のパルスレーザー光が互いに時間差を有するように複数のパルスレーザー装置を制御するレーザー制御装置とを有する。
【0025】
また、前記直線軌道上の衝突点におけるパルスレーザー光のビームプロファイルを調整するプロファイル調整光学系を有する、ことが好ましい。
【発明の効果】
【0026】
上記本発明の構成によれば、金属ターゲットが退避位置にあるとき、所定の直線軌道上でパルス電子ビームとパルスレーザー光が正面衝突して「単色硬X線」を発生し、金属ターゲットが衝突位置にあるとき、パルス電子ビームと金属ターゲットの衝突により同一の光源位置から「特性X線」を発生する。
従って、ターゲット移動装置で金属ターゲットを「衝突位置」と「退避位置」のどちらかに移動させるだけで、同一の装置において、診断用X線としての単色硬X線と治療用X線としての特性X線を切換えて発生することができる。これにより、診断用と治療用の両方のX線源を同じ電子ビームを用いて同一の衝突点(光源位置)から発生でき、診断画像と治療用X線の光源位置の完全な一致が実現でき、X線照射位置の誤差を原理的に排除できる。
また、本発明では、パルス電子ビームにパルスレーザー光が直線軌道上で正面衝突して、単色硬X線を発生させるので、衝突効率を最大にできる。
【0027】
また、パルス電子ビームとパルスレーザー光の衝突により発生するX線の波長は、レーザー光の波長に依存するので、レーザー発生装置で波長の異なる複数のパルスレーザー光を発生させることで、2種以上の複数の単色硬X線を短い時間間隔で順次切換えて発生させることができる。
例えば、電子ビームとレーザー光の衝突において、複数種類の波長のレーザー光を交互に発射して電子ビームと衝突させることで、2色のX線を交互に発生可能となり、電子密度分布、元素分布を高い精度で求めることができ、治療計画の高度化が可能となる。
さらにこの硬X線を利用してドラッグデリバリーシステムと組み合わせた治療にも適用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の好ましい実施形態を図面を参照して説明する。なお各図において、共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明は省略する。
【0029】
図1は、本発明の診断・治療用X線切換え発生装置を備えた診断・治療装置の全体構成図である。この図において、6は被験者、7は被験者を載せて移動可能な移動ベッド、8は診断・治療装置の本体、9はX線検出器9aを備えた移動アームである。
本発明の診断・治療用X線切換え発生装置は、本体8内に内蔵されており、診断用X線としての単色硬X線4と治療用X線としての特性X線5を切換えて発生し、被験者6に向けて照射するようになっている。
【0030】
単色硬X線4は、被験者の患部にX線遮断性金属錯体を蓄積させる必要がなく、被験者の負担を軽減できるように、好ましくは10~40keV程度の狭域X線であり、X線CTの光源としてX線検出器9aによりその吸収を検出し、コンピュータによって画像を再構築して被験者6の二次元断面画像を得るのに用いることができる。
また、特性X線5は、好ましくは患者手前の正常組織には影響の少ない例えば5~50MeV程度の高エネルギーX線であるのがよい。
【0031】
図2は、本発明による診断・治療用X線切換え発生装置の第1実施形態を示す平面図である。この図に示すように、本発明の多色X線発生装置は、電子ビーム発生装置10、複合レーザー発生装置20、レーザー光導入装置30およびターゲット移動装置40を備える。
【0032】
電子ビーム発生装置10は、電子ビームを加速してパルス電子ビーム1を発生し所定の直線軌道2を通過させる機能を有する。
この例において、電子ビーム発生装置10は、RF電子銃11、α‐磁石12、加速管13、ベンディング磁石14、Q-磁石15、減速管16、およびビームダンプ17を備える。
【0033】
RF電子銃11と加速管13は、Xバンド(11.424GHz)の高周波電源18により駆動される。RF電子銃11から引き出された電子ビームは、α‐磁石12により軌道を変えて加速管13に入射する。加速管13は、小型のXバンド加速管であり、電子ビームを加速し、好ましくは約50MeV前後の高エネルギーの電子ビームを形成する。この電子ビームは、例えば約1μs前後のマルチバンチのパルス電子ビーム1である。
【0034】
ベンディング磁石14は、パルス電子ビーム1の軌道を磁場で曲げて所定の直線軌道2を通過させ、通過後のパルス電子ビーム1をビームダンプ17まで導く。Q-磁石15はパルス電子ビーム1の収束具合を調整する。減速管16は、パルス電子ビーム1を減速する。ビームダンプ17は、直線軌道2を通過した後のパルス電子ビーム1を捕捉して、放射線の漏洩を防止する。
【0035】
同期装置19は、電子ビーム発生装置10と複合レーザー発生装置20の同期をとり、パルス電子ビーム1のタイミングと後述するパルスレーザー光3とのタイミングを合わせ、パルス電子ビーム1とパルスレーザー光3が所定の直線軌道2上の衝突点2a(光源位置)で衝突するように制御する。
【0036】
上述した電子ビーム発生装置10により、例えば、約50MeV前後、約1μs前後のマルチバンチのパルス電子ビーム1を発生し、これを所定の直線軌道2を通過させることができる。
【0037】
レーザー発生装置20は、パルスレーザー光3を発生する機能を有する。この例において、レーザー発生装置20は、パルスレーザー装置22、レーザー合流光学系23、レーザー制御装置24、およびレーザーダンプ25を有する。
【0038】
パルスレーザー装置22は、特定の波長のパルスレーザー光3を発生する。例えば、パルスレーザー装置22として、波長1064nmのNd-YAGレーザーを使用する。
【0039】
レーザー合流光学系23は、この例では全反射ミラー23aからなる。全反射ミラー23aは、パルスレーザー装置22のパルスレーザー光3をレーザー光導入装置30の第1ミラー32に向けて反射する。
この構成により、パルスレーザー光3を第1ミラー32に入射させ、パルス電子ビーム1の直線軌道2上に導入することができる。
【0040】
レーザー制御装置24は、パルスレーザー装置22を制御する。例えば、パルスレーザー光3のパルス発振数が10ppsであり、パルス幅が10nsである場合、同期装置19からの指令に応じてパルス電子ビーム1とパルスレーザー光3が所定の直線軌道2上の衝突点2aで衝突するように制御する。
【0041】
レーザーダンプ25は、直線軌道2を通過した後、第2ミラー34によりレーザー発生装置20に戻るパルスレーザー光3を捕捉して、飛散を防止する。
【0042】
図2において、本発明のX線発生装置は、さらに第1ミラー32と全反射ミラー23aの間にプロファイル調整光学系26を有する。このプロファイル調整光学系26は、例えば複合レンズであり、直線軌道2上の衝突点2aにおけるパルスレーザー光3のビームプロファイル(例えば、サイズ、傾き、位置)を調整する。
【0043】
レーザー光導入装置30は、この例では2枚のミラー32、34を有し、第1ミラー32により、複数のパルスレーザー光3を上述した直線軌道2上にパルス電子ビーム1に対向して導入し、第2ミラー34により直線軌道2を通過した後のパルスレーザー光3をレーザー発生装置20のレーザーダンプ25に戻すようになっている。第1ミラー32と第2ミラー34は、全反射ミラーであるのがよい。
【0044】
上述した構成によれば、パルス電子ビーム1とパルスレーザー光3の衝突により発生するX線の波長は、レーザー光3の波長に依存し、例えば、波長1064nmのNd-YAGレーザーを使用することにより、単色硬X線4を発生させることができる。
また、パルス電子ビーム1にパルスレーザー光3が直線軌道2上で正面衝突して、単色硬X線を発生させるので、衝突効率を最大にできる。
【0045】
なおパルスレーザー装置およびパルスレーザー光は、この例に限定されず、エキシマレーザーのArF(波長193nm),KrF(波長248nm),XeCl(波長308nm),XeF(波長351nm),F2(波長157nm)やYAGレーザーの第2高調波(波長532nm)、第3高調波(波長355nm)、第4高調波(波長266nm)、第5高調波(波長213nm)、その他を用いてもよい。
【0046】
ターゲット移動装置40は、金属ターゲット42を直線軌道2上の衝突位置と軌道外の退避位置との間を移動させるアクチュエータである。このアクチュエータは、遠隔操作が可能な、直動液圧シリンダ又は直動電動シリンダであるのがよい。
なお、切換え頻度が少ない場合は、ターゲット移動装置40を手動操作できるように構成してもよい。
【0047】
金属ターゲット42に衝突したパルス電子ビーム1のX線への変換効率は、ターゲットの原子番号と電子ビームの加速電圧に比例する。従って、変換効率を高めるために、ターゲットとしては原子番号の大きい物質、例えば、タングステン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、モリブデン、銀、またはこれらの合金を用いるのがよい。
また金属ターゲット42の衝突面は、パルス電子ビーム1とパルスレーザー光3の衝突点2aと空間的に同一位置に位置するように、金属ターゲット42の衝突位置を設定する。この衝突面は、X線の照射方向(図1で下向き、図2で紙面に直交する方向)にX線が発生するように面を構成するのがよい。
【0048】
上述した構成により、金属ターゲット42を退避位置に位置決めして、直線軌道2上でパルス電子ビーム1とパルスレーザー光3を正面衝突させ衝突点2aから単色硬X線を4発生させることができる。
また、金属ターゲット42を直線軌道2上の衝突位置に位置決めして、金属ターゲット42とパルス電子ビーム1の衝突により同一の衝突点2aから特性X線5を発生させることができる。
【0049】
また、パルス電子ビーム1の加速電圧と金属ターゲット42の材質を適正に選択することにより、発生する特性X線5を、被験者の患部に手前の正常組織の影響の少ない5~50MeV程度の高エネルギーのX線に調整することができる。
【0050】
衝突点2aで発生する単色硬X線4および特性X線5は、指向性は少なく四方八方に放射される。従って、図1に示すように衝突点2aと被験者6の間に、コリメータ44を設け、単色硬X線4および特性X線5の放射方向を制御するのがよい。
【0051】
図3は、本発明による診断・治療用X線切換え発生装置の第2実施形態図である。この例において、レーザー発生装置20は、複数のパルスレーザー装置22A,22B、レーザー合流光学系23、レーザー制御装置24、およびレーザーダンプ25を有する。
【0052】
複数のパルスレーザー装置22A,22Bは、互いに波長が異なる複数のパルスレーザー光3a,3bを発生する。例えば、パルスレーザー装置22A,22Bとして、波長1064nmのNd-YAGレーザーと、これに波長を半分に変換するKTP結晶を組込んだ波長532nmのNd-YAGレーザーを使用する。
【0053】
レーザー合流光学系23は、この例では全反射ミラー23aとハーフミラー23bからなる。全反射ミラー23aは、パルスレーザー装置22Aのパルスレーザー光3aをレーザー光導入装置30の第1ミラー32に向けて反射する。ハーフミラー23bは、パルスレーザー光3aがそのまま通過できるハーフミラーであり、パルスレーザー光3bをレーザー光導入装置30の第1ミラー32に向けて反射する。
この構成により、複数のパルスレーザー光3a,3bを同一光路上に合流させ、パルスレーザー光3として、第1ミラー32に入射させ、合流した複数のパルスレーザー光を直線軌道2上に導入することができる。
【0054】
レーザー制御装置24は、複数のパルスレーザー光3a,3bが互いに時間差を有するように複数のパルスレーザー装置22A,22Bを制御する。例えば、複数のパルスレーザー光3a,3bのパルス発振数がそれぞれ10ppsであり、パルス幅がそれぞれ10nsである場合、一方のパルス発振時期をずらすことにより、パルス幅10nsの複数のパルスレーザー光3a,3b(波長1064nmと波長532nm)が交互に出力されるパルスレーザー光3として、第1ミラー32に入射させることができる。
【0055】
その他の構成は、第1実施形態と同様である。
なお、パルスレーザー装置は、2台に限定されず、3台以上でもよい。
またパルスレーザー光は、上述した例に限定されず、エキシマレーザーのArF(波長193nm),KrF(波長248nm),XeCl(波長308nm),XeF(波長351nm),F2(波長157nm)やYAGレーザーの第3高調波(波長355nm)、第4高調波(波長266nm)、第5高調波(波長213nm)、その他を用いてもよい。
【0056】
上述した本発明の構成によれば、第1実施形態と同様に、金属ターゲット42を退避位置に位置決めして直線軌道2上でパルス電子ビーム1とパルスレーザー光3を正面衝突させ衝突点2aから単色硬X線を発生させることができる。また、金属ターゲット42を直線軌道2上の衝突位置に位置決めしてパルス電子ビーム1を金属ターゲット42に衝突させ同一の衝突点2aから特性X線5を発生させることができる。
また、パルス電子ビーム1とパルスレーザー光3の衝突により発生するX線の波長は、レーザー光3の波長に依存するので、この第2実施形態により、複合レーザー発生装置20で波長の異なる複数のパルスレーザー光3a,3bを発生させることで、2種以上の複数の単色硬X線4(4a,4b)を短い時間間隔で順次切換えて発生させることができる。
【0057】
すなわち、パルスレーザー装置は短い周期(例えば10pps以上)でパルスレーザー光を発生できるので、レーザー制御装置で複数のパルスレーザー光を互いに時間差を有するように制御することにより、短い周期で複数のパルスレーザー光をパルス電子ビームに順次正面衝突させ、短い周期(例えば10pps以上)で2種以上の複数の単色硬X線を順次切換えて発生させることができる。
衝突点2aで発生する単色硬X線4(4a,4b)および特性X線5は、コリメータ44により放射方向が制御され、図1の衝突点2aから被験者6に向けて放射される。
取り出した複数の単色硬X線4(4a,4b)は、血管造影や2色X線CTに用いることができ、特性X線5は被験者6の治療に用いることができる。
【0058】
従って、第2実施形態によれば、装置や部品の物理的な移動なしにX線の波長を順次高速で切換えることができ、波長切換え時間の被写体の変化を小さく抑えることができ、X線画像の解像度を高め、電子密度分布、元素分布を高い精度で求めることができ、治療計画の高度化が可能となる。
【0059】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々に変更することができることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の診断・治療用X線切換え発生装置を用いた診断・治療装置の全体構成図である。
【図2】本発明による診断・治療用X線切換え発生装置の第1実施形態図である。
【図3】本発明による診断・治療用X線切換え発生装置の第2実施形態図である。
【図4】非特許文献1の「小型X線発生装置」の模式図である。
【図5】非特許文献2の「混合2色X線CT装置」の模式図である。
【図6】特許文献1の診断・治療装置の模式図である。
【図7】特許文献2の診断・治療装置の模式図である。
【符号の説明】
【0061】
1 パルス電子ビーム、2 直線軌道、2a 衝突点(光源位置)、
3,3a,3b パルスレーザー光、
4(4a,4b) 単色硬X線、5 特性X線、
6 被験者、7 移動ベッド、8 診断・治療装置の本体、
9 移動アーム、9a X線検出器、
10 電子ビーム発生装置、11 RF電子銃、12 α‐磁石、
13 加速管、14 ベンディング磁石、15 Q-磁石、
16 減速管、17 ビームダンプ、18 高周波電源、19 同期装置、
20 複合レーザー発生装置、22,22A,22B パルスレーザー装置、
23 レーザー合流光学系、23a 全反射ミラー、23b ハーフミラー、
24 レーザー制御装置、25 レーザーダンプ、
26,27 プロファイル調整光学系、
28 レーザー周回光学系、28a 全反射ミラー、
28b ハーフミラー、29 レーザー増幅器、
30 レーザー光導入装置、32 第1ミラー、34 第2ミラー、
40 ターゲット移動装置、42 金属ターゲット、
44 コリメータ
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
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