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明細書 :Hモード・ドリフトチューブ線形加速器及びその設計方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4194105号 (P4194105)
公開番号 特開2007-087855 (P2007-087855A)
登録日 平成20年10月3日(2008.10.3)
発行日 平成20年12月10日(2008.12.10)
公開日 平成19年4月5日(2007.4.5)
発明の名称または考案の名称 Hモード・ドリフトチューブ線形加速器及びその設計方法
国際特許分類 H05H   9/00        (2006.01)
H05H   7/14        (2006.01)
FI H05H 9/00 D
H05H 7/14
請求項の数または発明の数 11
全頁数 18
出願番号 特願2005-277426 (P2005-277426)
出願日 平成17年9月26日(2005.9.26)
審査請求日 平成19年5月9日(2007.5.9)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】301032942
【氏名又は名称】独立行政法人放射線医学総合研究所
発明者または考案者 【氏名】岩田 佳之
【氏名】山田 聰
個別代理人の代理人 【識別番号】100082005、【弁理士】、【氏名又は名称】熊倉 禎男
【識別番号】100067013、【弁理士】、【氏名又は名称】大塚 文昭
【識別番号】100086771、【弁理士】、【氏名又は名称】西島 孝喜
【識別番号】100109070、【弁理士】、【氏名又は名称】須田 洋之
審査官 【審査官】岡▲崎▼ 輝雄
参考文献・文献 特開平7-263196(JP,A)
特開2001-15299(JP,A)
特開平11-273898(JP,A)
特開平10-189539(JP,A)
特開平8-162290(JP,A)
特開平9-330799(JP,A)
特開平4-63001(JP,A)
特開平1-297141(JP,A)
調査した分野 H05H 9/00
H05H 7/14
特許請求の範囲 【請求項1】
共振器内部に発生するTE波(Hモード)を利用したHモード・ドリフトチューブ線形加速器の設計方法において、共振器の軸方向に配置された複数のチューナーの中から少なくとも2つのチューナーを選択し、それらのチューナーの共振器軸方向の位置とその共振器内部への挿入量との組み合わせを利用して、共振器内の電圧分布を変えずに周波数のみを変えるように自動チューナーを選定することを特徴とする線形加速器の設計方法。
【請求項2】
上記自動チューナーの選定は、
チューナー挿入量と電圧変化との間の一定の関係に基づいて、上記複数のチューナーに対して、個々の挿入量に対する個別の電圧変化データを計算ないし測定し、
上記個別の電圧変化データを用いて自動チューナーと挿入量の組み合わせを決定する
段階を含むことを特徴とする請求項1に記載の設計方法。
【請求項3】
上記チューナー挿入量と電圧変化との間の一定の関係を確認する段階を更に含むことを特徴とする請求項2に記載の設計方法。
【請求項4】
上記決定した組み合わせが適正かどうかを確認する段階を更に含むことを特徴とする請求項2~3のいずれか1つに記載の設計方法。
【請求項5】
上記一定の関係が、チューナー挿入量と電圧変化の線形関係であり、上記線形関係に基づいて、複数のチューナーに対して、比例計算によって個々の挿入量に対する個別の電圧変化データを計算することを特徴とする請求項2~4のいずれか1つに記載の設計方法。
【請求項6】
上記自動チューナーと挿入量の組み合わせを決定する段階は、上記選択したチューナーの個別の電圧変化データを足し合わせ、それらのチューナーによる電圧変化が打ち消し合って全体の電圧分布が実質的に変化しないような組み合わせによって決定すること特徴とする請求項2~5のいずれか1つに記載の設計方法。
【請求項7】
共振器内部に発生するTE波(Hモード)を利用したHモード・ドリフトチューブ線形加速器であって、共振器の軸方向に配置された複数のチューナーのうちの一部を自動チューナーとして使用する線形加速器において、上記自動チューナーが、上記複数のチューナーのうちから選択された少なくとも2つのチューナーから成り、且つ、上記少なくとも2つのチューナーが、該チューナーの共振器軸方向の位置とその共振器内部への挿入量との組み合わせを利用して、共振器内の電圧分布を変えずに周波数のみを変えるように選定されたものであることを特徴とする線形加速器。
【請求項8】
上記選定された少なくとも2つの自動チューナー相互の挿入量の比率を変更せずに挿入量を調節する挿入量調節手段を備えることを特徴とする請求項7に記載の線形加速器。
【請求項9】
上記挿入量調節手段が、上記少なくとも2つの自動チューナー相互の挿入量の比率を記憶する手段を含むことを特徴とする請求項8に記載の線形加速器。
【請求項10】
共振器内部に発生するTE波(Hモード)を利用したHモード・ドリフトチューブ線形加速器の設計方法における自動チューナーの選定方法において、共振器の軸方向に配置された複数のチューナーの中から少なくとも2つのチューナーを選択し、それらのチューナーの共振器軸方向の位置とその共振器内部への挿入量との組み合わせを利用して、共振器内の電圧分布を変えずに周波数のみを変えるように自動チューナーを選定することを特徴とする自動チューナーの選定方法。
【請求項11】
共振器内部に発生するTE波(Hモード)を利用したHモード・ドリフトチューブ線形加速器に使用される自動チューナーであって、共振器の軸方向に配置された複数のチューナーの中から少なくとも2つのチューナーを選択し、それらのチューナーの共振器軸方向の位置とその共振器内部への挿入量との組み合わせを利用して、共振器内の電圧分布を変えずに周波数のみを変えるように選定された自動チューナーの調節方法において、上記選定された自動チューナー相互の挿入量の比率を変更せずに挿入量を調節することを特徴とする自動チューナーの調節方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、共振器内部に発生するTE波(Hモード)を利用したHモード・ドリフトチューブ線形加速器及びその設計方法に関し、特に、線形加速器の設計方法における自動チューナーの選定方法及びその選定方法によって選定された自動チューナーの調節方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ビーム軸に対し垂直に電流が流れるTE波(Hモード)を利用して荷電粒子を加速するドリフトチューブ線形加速器をHモード・ドリフトチューブ線形加速器と呼ぶ。Hモード・ドリフトチューブ線形加速器では、空洞共振器内に、そのビーム軸に沿って多数のドリフトチューブが配列されており、それぞれ隣り合うドリフトチューブ間のギャップに所定の電圧が発生していて、粒子がドリフトチューブの中を通過するたびにその電圧により次々と加速されるようになっている。
【0003】
Hモード・ドリフトチューブ線形加速器のうち、Interdigital H-mode(IH)型共振器を用いた線形加速器をIH型線形加速器と呼ぶ。代表的なIH型共振器は円筒形の共振器内部に上下(対向方向に)2枚のリッジと呼ばれる板が取り付けられている構造を持つ(リッジはなくても良い)。これらのリッジには、ステムを介して複数個のドリフトチューブが上下交互に取り付けられて軸方向に配列されている。粒子はこれらのドリフトチューブの中を通過して軸方向に進む。
【0004】
線形加速器では、共振器の空洞全体の共振周波数や電圧分布を調整するためにチューナーが設けられている。電圧分布及び共振周波数の粗調整は、共振器のタンク側壁に設けられた複数個の固定チューナーを用いて行われる。これら固定チューナーは調整後は溶接され、固定される。更に微調整は手動チューナーが用いられ最終的な空洞の電圧が決定される。
【0005】
線形加速器の運転中には、タンクの熱膨張等によって共振周波数が変化することがある。自動チューナーは、このような温度変化による共振周波数の変動を運転中に補正するのに有効である。温度変化などによるタンク側の共振周波数の微少なずれは、高周波増幅器の出力の進行波成分とタンク内でピックアップしたモニタ信号の位相差を測定することで求められる。測定された位相差は自動周波数調整回路(AFC)により計算され、更に微少な共振周波数のずれを補正するよう自動チューナーが駆動される。
【0006】
Hモード・ドリフトチューブ線形加速器では、複数のチューナーが使用されており、その一部を自動チューナーとして使用し、残りを手動及び固定チューナーとして使用している。これらのチューナーは、いずれも後述するように、共振器タンクの外面に軸方向に配置され、共振器タンクの側壁から先端部を空洞内に挿入して、共振器の回路定数を変化させることによって共振周波数又は電圧分布を変更させるものである。共振器のインダクタンスを変化させるように構成されたものが誘導チューナーすなわちLチューナーであり、共振器の容量を変化させるように構成されたものが容量チューナーすなわちCチューナーである。
【0007】
自動チューナーとしては、電圧分布を変えずに周波数のみを変える機能が求められる。しかしながら、1つのチューナーの位置を変えると、共振器全体の電圧分布が変わることがある。これは、特に、IH型線形加速器において顕著であることが分かっている。そのため位置の異なる複数のチューナーを用いて電圧変化を打ち消して電圧分布を変えないようにする必要がある。共振器の電圧分布は、共振器全体の構造に依存するため、電圧分布を正確に求めるためには、三次元電磁場計算を行う必要がある。しかしながら、チューナー挿入量と電圧変化の関係を求めるのに、全チューナーに対して挿入量を細かく変え三次元電磁場計算を行うことは多大な時間を要する。自動チューナーとして適切なチューナーの組み合わせを調べるために、このような三次元計算を繰り返すのは現実的でない。
【0008】

【非特許文献1】山田聰、外3名、「重粒子線がん治療装置建設総合報告書」、1995年5月、放射線医学総合研究所
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、多大な時間を必要とせずに自動チューナーとして適切なチューナーの組み合わせを調べるための方法を提供することであり、また、そのような方法によって選定した自動チューナーを使用して線形加速器を設計すること及びそのように設計された線形加速器を提供すること並びに選定した自動チューナーの調節方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の1つの特徴によれば、共振器内部に発生するTE波(Hモード)を利用したHモード・ドリフトチューブ線形加速器の設計方法において、共振器の軸方向に配置された複数のチューナーの中から少なくとも2つのチューナーを選択し、それらのチューナーの共振器軸方向の位置とその共振器内部への挿入量との組み合わせを利用して、共振器内の電圧分布を変えずに周波数のみを変えるように自動チューナーを選定することを特徴とする線形加速器の設計方法が提供される。
【0011】
上記自動チューナーの選定は、チューナー挿入量と電圧変化との間の一定の関係に基づいて上記複数のチューナーに対して個々の挿入量に対する個別の電圧変化データを計算ないし測定し、上記個別の電圧変化データを用いて自動チューナーと挿入量の組み合わせを決定するという段階を含むことが好ましい。
【0012】
上記自動チューナーの選定は、上記チューナー挿入量と電圧変化との間の一定の関係を確認する段階を更に含むことが好ましい。
【0013】
上記自動チューナーの選定は、上記決定した組み合わせが適正かどうかを確認する段階を更に含むことが好ましい。
【0014】
本発明の別の特徴によれば、チューナー挿入量と電圧変化との間の一定の関係が、チューナー挿入量と電圧変化の線形関係であり、上記線形関係に基づいて、複数のチューナーに対して、比例計算によって個々の挿入量に対する個別の電圧変化データを計算するように構成される。
【0015】
本発明の更に別の特徴によれば、上記自動チューナーと挿入量の組み合わせを決定する段階は、上記選択したチューナーの個別の電圧変化データを足し合わせ、それらのチューナーによる電圧変化が打ち消し合って全体の電圧分布が実質的に変化しないような組み合わせによって決定するように構成される。
【0016】
本発明の更に別の特徴によれば、共振器内部に発生するTE波(Hモード)を利用したHモード・ドリフトチューブ線形加速器であって、共振器の軸方向に配置された複数のチューナーのうちの一部を自動チューナーとして使用する線形加速器において、上記自動チューナーが、上記複数のチューナーのうちから選択された少なくとも2つのチューナーから成り、且つ、上記少なくとも2つのチューナーが、該チューナーの共振器軸方向の位置とその共振器内部への挿入量との組み合わせを利用して、共振器内の電圧分布を変えずに周波数のみを変えるように選定されたものであることを特徴とする線形加速器が提供される。
【0017】
上記線形加速器は、上記選定された少なくとも2つの自動チューナー相互の挿入量の比率を変更せずに挿入量を調節する挿入量調節手段を備えることが好ましい。
【0018】
上記挿入量調節手段は、上記少なくとも2つの自動チューナー相互の挿入量の比率を記憶する手段を含むことが好ましい。
【0019】
本発明の更に別の特徴によれば、共振器内部に発生するTE波(Hモード)を利用したHモード・ドリフトチューブ線形加速器の設計方法における自動チューナーの選定方法において、共振器の軸方向に配置された複数のチューナーの中から少なくとも2つのチューナーを選択し、それらのチューナーの共振器軸方向の位置とその共振器内部への挿入量との組み合わせを利用して、共振器内の電圧分布を変えずに周波数のみを変えるように自動チューナーを選定することを特徴とする自動チューナーの選定方法が提供される。
【0020】
本発明の更に別の特徴によれば、共振器内部に発生するTE波(Hモード)を利用したHモード・ドリフトチューブ線形加速器に使用される自動チューナーであって、共振器の軸方向に配置された複数のチューナーの中から少なくとも2つのチューナーを選択し、それらのチューナーの共振器軸方向の位置とその共振器内部への挿入量との組み合わせを利用して、共振器内の電圧分布を変えずに周波数のみを変えるように選定された自動チューナーの調節方法において、上記選定された自動チューナー相互の挿入量の比率を変更せずに挿入量を調節することを特徴とする自動チューナーの調節方法が提供される。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、共振器の軸方向に配置された複数のチューナーの中から少なくとも2つのチューナーを選択し、それらのチューナーの共振器軸方向の位置とその共振器内部への挿入量との組み合わせを利用して、自動チューナーとして適切な組み合わせを比較的容易に見つけることができる。特に、複数のチューナーによる電圧変化が打ち消し合って全体の電圧分布が実質的に変化しないようなチューナーの組み合わせを比較的容易に選定できる。また、どのチューナーの組み合わせが最も適切かを調べる方法として、チューナー挿入量と電圧変化との間の一定の関係に基づいて複数のチューナーに対して個々の挿入量に対する個別の電圧変化データを計算しているので、無限のチューナーの組み合わせに対して多大な時間を要する三次元電磁場計算を必要としない。また、本発明によれば、選定された自動チューナー相互の挿入量の比率を変更せずに挿入量を調節するので、その調節による電圧変化を予想できると共にその電圧変化を許容範囲に維持しながら共振周波数を補正することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の1つの実施例において、IHモード・ドリフトチューブ線形加速器(IH-DTL)の共振器の最終構造として、16台のチューナーを設け、そのうちの数台を自動チューナーとして用いる。図1は、IHモード・ドリフトチューブ線形加速器の概念図である。この線形加速器は、真空空洞のタンク1で形成される共振器を有し、タンク1の外面には、16台のチューナー(チューナーT1~T16)が、入射端2から出射端3にかけて、軸方向に左右交互に配置されている。そして、タンク1の内部には、複数個のドリフトチューブ4が軸方向に配列されている。
【0023】
図2、図3及び図5は、線形加速器を、軸方向に直交する方向に沿った概略縦断面図で示したものである。図2及び図3に示されているように、各ドリフトチューブ4は、リッジ5を介してタンク1の上下の内壁に取り付けられている。そして、各チューナーTは、タンク1の側壁に、取り付けられている。チューナーTはいずれも、その先端部6が、タンク1の側壁を通して空洞内に挿入されるようになっている。すなわち、図1のチューナーT1~T16は、同じ構造を有するチューナーTで構成され、その共振器における軸方向位置が異なるものである。
【0024】
図2は、先端部6を挿入していない状態すなわちチューナーTを最も引いた状態を示している。また、図3は、先端部6を空洞内に挿入した状態を示している。この先端部6を空洞内に挿入した長さを、図4に示すように、挿入長dとする。図4は、チューナーの先端部6がタンク1の側壁を通して空洞内への挿入されている状態を詳しく示したもので、共振器とチューナーとの結合部分を、共振器の軸方向に沿った横断面図で示したものである。図1に示されているように、タンク1の内径は、入射端2から出射端3へかけて大きくなるように作られている。従って、図4に示すように、チューナーの挿入長dも、入射側(図の下側)と出射側(図の上側)とで厳密には異なるが、本発明の実施例では、出射側の長さを、挿入長dとして統一して使用する。
【0025】
なお、本発明では、チューナーとして使用するものは、誘導性チューナーでも、容量性チューナーでもよい。図2~図4に示すチューナーTは、誘導性チューナー(Lチューナー)であり、図5に示すチューナーTcは、容量性チューナー(Cチューナー)である。容量性チューナーTcは、先端部6に更にロッド7が取り付けられ、そのロッド7の先端に導電板8が取り付けられている。導電板8は、ドリフトチューブ4を覆うようにして上下のリッジ5の一部まで延びている。容量性チューナーTcの挿入量を変更することによって、ドリフトチューブ4及び上下のリッジ5の一部と導電板8との間の間隔が変化して、その容量が変化し、共振器内の電圧分布又は共振周波数を調整できるようになっている。
【0026】
図1に示す16台のチューナーのうち、一部を自動チューナ-として使用し、残りを手動チューナーとして使用する。この際、自動チューナーとして何台必要か、またどのチューナーの組み合わせが最も適切かを調べる。この検討は、以下の手順で行う。
(1)チューナーの挿入量に対する電圧変化の線形性を確認する。
(2)電圧変化の線形性に基づいて、全チューナーに対して、個々の挿入量に対する電圧変化データを計算する。
(3)計算した個別の電圧変化データを用いて自動チューナーと挿入量の組み合わせを決定する。
(4)決定した自動チューナーと挿入量の組み合わせが適切かどうかを直接三次元電磁場計算によって確認する。
【0027】
チューナー挿入量と電圧変化の関係を求めるのに、全チューナーに対して挿入量を細かく変え三次元電磁場計算を行うことは多大な時間を要する。チューナー挿入量に対する電圧変化が線形であれば、ある挿入量に対しての電圧変化から個々の挿入量に対する電圧変化を比例計算によって容易に求めることができる。そのために、この実施例によれば、先ずチューナー挿入量に対する電圧変化が線形であるかどうかの確認を行う。確認を行った上で、全チューナーに対してある挿入量に対する電圧変化を計算する。これにより個々のチューナーについて、その挿入量と電圧変化の関係を求めることができる。自動チューナーとしては、電圧分布を変えずに周波数のみを変える機能が求められるので、軸方向位置の異なる複数のチューナーを用いて相互の電圧変化を打ち消して全体の電圧分布を変えないようにする必要がある。そのために、この実施例によれば、個々のチューナーを挿入した際の電圧変化を足し引きして、複数のチューナーを同時に挿入した際の電圧変化を予想する。すなわち、個々のチューナーと挿入量の組み合わせによって、自動チューナーを決定する。最終的には、複数のチューナーを同時に挿入したモデルに関して三次元電磁場計算を直接行い、決定した自動チューナーが適切かどうかの確認を行う。
【0028】
上記実施例によれば、本願発明におけるチューナー挿入量と電圧変化との一定の関係を線形関係に限定しているが、本発明によれば、その関係を利用して三次元電磁場計算によるデータの収集を省略できるものであれば、他の一定の関係も利用できる。また、上記実施例によれば、手順(1)及び(4)において、線形性の確認及び自動チューナーと挿入量の組み合わせが適切かどうかの確認を行っているが、本発明によれば、この確認手順を省略してもよい。さらに、上記実施例では、16台のチューナーのすべてについて、チューナー挿入量と電圧変化の線形関係を利用してデータの収集を行っているが、本発明によれば、共振器のすべてのチューナーでなく、自動チューナーの選択の対象とすべき一部の複数のチューナーのみについてデータを収集してもよい。
【0029】
線形性の確認
一つのチューナーに対して、チューナーを挿入していった際に、その挿入量と電圧変化の関係が線形であるかどうかを確認する。具体的には、チューナーの挿入量を変え、それぞれに関して三次元電磁場計算を行い電圧変化の様子をプロットする。本発明によれば、この線形性の確認の計算を少なくとも1つのチューナーについて行うが、この実施例では、この計算をチューナーT1に関して行った。チューナーを最も引いた状態(図2参照)から10mm挿入した位置(挿入長d=10mmの位置)を基準位置として、その基準位置における電圧を基準電圧Vとし、その基準位置からチューナーを出し入れしていった際の電圧変化ΔVを基準電圧Vに対する百分率としてプロットしたものが図6である。ここで、上記基準位置からの挿入量をXとすると、この実施例では、d=10+Xの関係にある。この基準位置は、データの収集のために設定したものであり、本発明によれば、この基準位置を任意に設定してデータを収集してもよい。従って、本発明において、挿入量とは、一般に、この挿入量Xのことを言う。挿入量Xは、正負の値を有し、正の場合は、チューナーの先端部を基準位置から空洞内へ挿入する場合を示し、負の場合は、チューナーの先端部を空洞外へ移動する方向に基準位置から引いた場合を示す。
【0030】
図6において、横軸は、入射端から昇順に付したギャップ番号であって、縦軸は、ΔV/V(%)である。なお、図6において曲線S0、S20、S30、S40は、それぞれ、挿入長d=0mm、20mm、30mm、40mm(挿入量X=-10mm、10mm、20mm、30mm)の場合の電圧変化を示す。より詳しく調べるため、代表的なギャップに対してチューナーの挿入量と電圧変化の様子を図7にプロットした。図7において、横軸は、チューナーT1の挿入長dであり、曲線G1、G20、G40、G60、G72は、それぞれギャップ番号1、20、40、60、72における電圧変化を示す。図7から分かるように、これらの曲線は、ほぼ直線を示しており、線形性は十分良いことが確認できる。
【0031】
全チューナーに対する挿入量と電圧変化の関係
上述したように、チューナー挿入量に対する電圧変化の線形性は良い。よって、あるチューナー挿入量に対してのみ電圧変化を計算すれば、それ以外の挿入量に対する電圧変化は比例計算により求めることができる。そこで、16台の全チューナーに関して、挿入量X=10mm(挿入長d=20mm)の位置での電圧変化を求めた。その結果を図8(チューナーT1~T8)及び図9(チューナーT9~T16)に示す。
【0032】
図8及び図9において、曲線t1~t16は、それぞれ、チューナーT1~T16の電圧変化を示すものである。モデル共振器のときと同様、電圧変化はチューナーが異なる毎にすなわちチューナーの軸方向位置が異なる毎にそれぞれ幅広いピークを作るが、その効果は共振器全体に渡る。よって自動チューナーは複数のチューナーを用いてお互いの電圧変化を打ち消し合うようにしなければならない。
【0033】
自動チューナーの決定と直接三次元電磁場計算による確認
(1)2チューナーの組み合わせ
最初に2台のチューナーを組み合わせることで、共振器全体に渡り電圧変化を打ち消すようにする。どの組み合わせが良いか、プログラムによるサーチを行った。すなわち、図8及び図9に示す各チューナーの電圧変化曲線から、比例計算によって、後述するようなステッピングモータ等で制御可能な精度で、個々の挿入量における各チューナーの電圧変化を求め、その個別の電圧変化を足し合わせることによって最も電圧変化の小さな組み合わせを求めた。この結果、最も電圧変化が小さくなるチューナーと挿入量の組み合わせは、チューナーT4とチューナーT12であった。このときの2チューナーの挿入量の比率はT4:T12=6.67:10.00である。
【0034】
上述した2台のチューナーT4及びT12と挿入量との組み合わせを用いた際の電圧変化を計算した。図10はチューナーT4の挿入量がX=6.67mm(挿入長d=16.67mm)、T12の挿入量がX=10.00mm(挿入長d=20.00mm)の場合の電圧変化の様子を示すグラフである。図10において、曲線A1は、チューナーT4及びT12の個別の電圧変化を足し合わせることによって求めた電圧変化を示している。その結果、図10で示すように、ΔV/Vの値の幅は共振器全体で1.2%であり、言い換えれば、最大電圧変化は全幅で1.2%であった。
【0035】
次に、上述した2台のチューナーT4及びT12を同時に挿入したモデルを作成し、直接三次元電磁場計算コードにより計算した。図10において、曲線B1は、その結果を示す。図10から、個別チューナーの足し合わせによる電圧変化と直接三次元電磁場計算による電圧変化は殆ど一致することが分かる。
【0036】
直接三次元電磁場計算で得られた共振周波数、Q、シャント抵抗及び所要電力等の共振器の特性を表すパラメータを表1に示す。表1に示すように、共振周波数の変化は、81KHz(0.081MHz)であった。その他のパラメータには実質的な変化はない。よって、この自動チューナーの組み合わせにより、電圧分布及び共振器の特性に影響を与えず共振周波数のみ調整できることがわかる。なお、表1において、元のモデルとは、チューナーを挿入していないモデル、すなわち、チューナーが基準位置にあるモデルを示している。
【0037】
表1

JP0004194105B2_000002t.gif
【0038】
(2)3チューナーの組み合わせ
次に3台のチューナーを組み合わせて電圧変化を打ち消すようにする。2チューナーの組み合わせの場合と同様に、プログラムによるサーチを行った。その結果、最も電圧変化が小さくなるチューナーの位置と挿入量の組み合わせは、チューナーT3、T9,T16を5.40:7.60:10.00の比率で挿入した場合である。
【0039】
図11は、上述した3台のチューナーT3、T9及びT16をそれぞれX=5.40mm(挿入長d=15.40mm)、X=7.60mm(挿入長d=17.60mm)、X=10.00mm(挿入長d=20.00mm)挿入量した際の電圧変化の様子を示すグラフである。図11において、曲線A2は、チューナーT3、T9及びT16の個別の電圧変化を足し合わせることによって求めた電圧変化を示している。その結果、最大電圧変化の全幅は、0.81%であった。これは、図10に示す2チューナーの組み合わせよりも3割程度小さい。
【0040】
次に、上述した3台のチューナーT3、T9及びT16と挿入量の組み合わせを用いたモデルの電圧変化を、直接三次元電磁場計算コードを用いて計算した。図11において、曲線B2は、その結果を示す。曲線B2は、20ギャップ付近で鋭いピークを示しているが、これは計算精度(計算メッシュの取り方)の問題と推測される。図11から、個別チューナーの足し合わせによる電圧変化と直接三次元電磁場計算による電圧変化は殆ど一致することが分かる。
【0041】
直接三次元電磁場計算で得られた共振周波数、Q、シャント抵抗及び所要電力等の共振器の特性を表すパラメータを表2に示す。表2に示すように、共振周波数の変化は、95KHz(0.095MHz)であった。その他のパラメータには実質的な変化はない。すなわち、この自動チューナーの組み合わせにより、電圧分布及び共振器の特性に影響を与えず共振周波数のみ調整できるということを示している。なお、表2において、元のモデルとは、チューナーを挿入していないモデル、すなわち、チューナーが基準位置にあるモデルを示している。
【0042】
表2

JP0004194105B2_000003t.gif
【0043】
次に、図11のモデルにおいて、チューナーを基準位置から同じ量だけ引いて、周波数を下げてみる。すなわち、チューナーT3の挿入量X=-5.40mm(挿入長d=4.60mm)、チューナーT9の挿入量X=-7.60mm(挿入長d=2.40mm)、チューナーT16の挿入量X=-10.00mm(挿入長d=0.00mm)とする。図12において、曲線A3は、その際の電圧変化を示し、曲線B3は、直接三次元電磁場計算コードで計算した電圧変化を示す。
【0044】
この際の直接三次元電磁場計算で得られた共振周波数、Q、シャント抵抗及び所要電力等の共振器の特性を表すパラメータを表3に示す。表3に示すように、共振周波数の変化は、-75KHz(-0.075MHz)であった。その他のパラメータには実質的な変化はない。表3から分かるように、同じチューナーの組み合わせでも、引いた場合は、挿入した場合に比べて周波数の変化量が小さい。これは、チューナーを引いた場合は、他のチューナーが陰になっている効果などの影響が推測される。なお、表3において、元のモデルとは、チューナーを挿入していないモデル、すなわち、チューナーが基準位置にあるモデルを示している。


【0045】
表3

JP0004194105B2_000004t.gif
【0046】
次に図11、図12とは別の3台のチューナーを用いた場合について検討する。チューナーT3、T9及びT16を自動チューナーとして用いる場合は、図1に示すように、対称性が悪いので、対称性を考慮して、チューナーT4、T9及びT16を用いた場合について計算を行った。プログラムによるサーチを行った結果、チューナーT4、T9,T16の挿入比が5.85:4.54:10.00の場合が、共振器全体に渡る電圧変化が最も少ない。図13は、このようなチューナーT4、T9及びT16をそれぞれのX=5.85mm(挿入長d=15.85mm)、X=4.54mm(挿入長d=14.54mm)、X=10.00mm(挿入長d=20.00mm)挿入した際の電圧変化の様子を示すグラフである。
【0047】
図13において、曲線A4は、チューナーT4、T9及びT16の個別の電圧変化を足し合わせることによって求めた電圧変化を示す。その結果、最大電圧変化の全幅は、0.97%であった。また、図13において、曲線B4は、直接三次元電磁場計算コードで計算した電圧変化を示す。図13から、個別チューナーの足し合わせによる電圧変化と直接三次元電磁場計算による電圧変化は殆ど一致することが分かる。
【0048】
この際の直接三次元電磁場計算で得られた共振周波数、Q、シャント抵抗及び所要電力等の共振器の特性を表すパラメータを表4に示す。表4に示すように、共振周波数の変化は、79KHz(0.079MHz)であった。その他のパラメータには実質的な変化はない。すなわち、この自動チューナーの組み合わせにより、電圧分布及び共振器の特性に影響を与えず共振周波数のみ調整できるということを示している。なお、表4において、元のモデルとは、チューナーを挿入していないモデル、すなわち、チューナーが基準位置にあるモデルを示している。
【0049】
表4

JP0004194105B2_000005t.gif
【0050】
また、チューナーT2、T9及びT16の組み合わせについても計算を行ったが、電圧変化が最大+0.8%、-0.6%であり、従って、最大電圧変化の全幅が1.4%となり、上記した組み合わせに比べて大きい。
【0051】
次に、本発明の一実施例によって選定した自動チューナーによる温度補正範囲について説明する。共振器の共振周波数は、一般にf0=200Hzである。共振器は鉄製であるため、鉄の線膨張率α=1.18×10-5を用いると、温度t=1度当たりの共振周波数の変化Δfは以下のように求められる。
Δf=αtf0
=1.18×10-5×1×200[MHz]
=2.36[KHz]
【0052】
チューナーT3の挿入量X=5.40mm(挿入長d=15.40mm)、チューナーT9の挿入量X=7.60mm(挿入長d=17.60mm)、チューナーT16の挿入量X=10.00mm(挿入長d=20.00mm)の場合を例に取ると、共振周波数の増加は約95KHzであった。よって、このチューナーの挿入量における温度補正範囲は、
ΔC=95[KHz]/2.36[KHz]=40[度]
である。
【0053】
また逆に基準位置に対してチューナーを引いた場合(チューナーT3の挿入量X=-5.40mm(挿入長d=4.60mm)、チューナーT9の挿入量X=-7.60mm(挿入長d=2.40mm)、チューナーT16の挿入量X=-10.00mm(挿入長d=0.00mm)の場合)では、共振周波数は75KHzだけ低下した。よって、温度補正範囲は、
ΔC=75[KHz]/2.36[KHz]=32[度]
である。以上から上記挿入量に限定して考えてみると、温度補正範囲は、-32度から+40度となる。実用上、十分な補正範囲を確保できていると言える。
【0054】
従って、1度当たりのチューナー挿入量は、最小で5.4[mm]/40[度]=0.14[mm/度]である。温度0.1度の制御を行うとすると、チューナー挿入時の移動ステップは、0.014[mm/ステップ]=14[μm/ステップ]となる。これは、ステッピングモータで十分制御できる範囲である。
【0055】
以上述べたように、本発明の実施例によれば、誘導性チューナーの挿入量に対する電圧変化の線形性は十分良いことが分かった。また、各チューナーの電圧変化を求めれば、その足し合わせから幾つかのチューナーを組み合わせた際の電圧変化も予想できる。また、各チューナー相互の挿入量の比率を変えずに挿入量を増減した場合の電圧変化も予想できる。更に複数のチューナーを挿入したモデルを作成し、そのモデルを直接三次元電磁場コードにより計算して得られた電圧変化を求めたが、その結果は組み合わせにより予想された電圧変化と良く一致する。
【0056】
本発明の実施例によれば、自動チューナーとしては、2チューナーの組み合わせについて1通り、3チューナーの組み合わせについて3通り、計4通りの組み合わせについて、計算を行った。何れの場合も電圧変化は±0.8%以内に抑えることができる。中でも最も電圧変化が少ないのはチューナーT3、T9及びT16の組み合わせで、電圧変化は±0.8%強に抑えられる。またこのチューナー挿入時の移動量でも温度補正範囲は-32度から+40度と十分である。よって、上記実施例では自動チューナーとして、この組み合わせが最も好ましい。
【0057】
次に、本発明の一実施例によって選定した自動チューナーを用いて、共振器の共振周波数を補正する方法について簡単に説明する。図14は、共振器の共振周波数を補正するための機構を説明するための簡単なブロック図である。図14において、共振器11には、矢印で示すようにイオンビームが入射され、高周波増幅器12を介して供給される高周波電力によって共振器内で加速されて矢印で示すように出射される。共振器11には、本発明によって選定された自動チューナーA、Bの2つの自動チューナー13、14が設けられている。これらの自動チューナーは、それぞれステッピングモータ(図示せず)で駆動されるようになっており、それらのステッピングモータには、それぞれモータドライバーA、Bの2つのモータドライバー15、16を介して駆動信号が送られる。
【0058】
図14に示すように、共振器の共振周波数の微妙なずれを検出し補正するための自動周波数調整回路(AFC)17が設けられており、AFC17には、高周波増幅器12の進行波S1と共振器11の加速空洞のピックアップモニター信号S2を比較して両信号の位相差を出力する位相比較器18と、その位相差をホールドするサンプルホールド回路19が設けられている。AFC17には、外部にある同期信号発生器20から発生された同期信号が入力され、サンプルホールド回路19は、この同期信号を受けた際に上記検出した位相差の値をホールドする。
【0059】
上記AFC17において検出された位相差は、シーケンサ21に与えられ、このシーケンス21が、その位相差に応じて自動チューナーA、Bの挿入量を調節し、モータドライバーA、Bに制御信号を送る。この調節は、本発明によれば、上記自動チューナーA、Bの選定の際に得られた自動チューナー相互の挿入量の比率を変更せずに行われる。すなわち、上述した2チューナーの組み合わせによる選定方法の実施例において、自動チューナーA、BがそれぞれチューナーT4、T12であると仮定すると、チューナーA対チューナーBの挿入量の比率、すなわち、6.67:10.00を変更せずに調節を行う。例えば、チューナーAの挿入量を2倍とした場合には、チューナーBの挿入量も2倍とするような調節を行う。その結果、挿入量と電圧変化が線形関係を有するので、最大電圧変化も全幅で2倍すなわち2.4%となると予測できる。従って、このような調節を行うことによって、共振器内の電圧分布を許容範囲に維持しながら共振周波数を補正できる。
【0060】
上記チューナーAの挿入量とチューナーBの挿入量の比率を記憶するために、シーケンサ21には、比率記憶器22が設けられている。シーケンサ21は、モータドライバーA、Bへ、比率記憶器22に記憶された挿入量の比率を変更せずに上記検出した位相差に応じたパルスを送るように制御指令を出す。モータドライバーA、Bは、この制御指令を受けて、ステッピングモータを介してチューナーA、Bをそれぞれ駆動する。
【0061】
図14の実施例では、挿入量調節手段として、シーケンサを使用しているが、シーケンサの代わりにパーソナルコンピュータを使用しても良い。また、図14の実施例では、AFCは、シーケンサやモータドライバーとは別の装置として示されているが、シーケンサやモータドライバーをAFCの中に含めても良い。さらに、図14の実施例では、2つの自動チューナーを使用しているが、本発明によれば、3つ又はそれ以上の自動チューナーを使用しても良い。例えば、上述した最も好ましいチューナーT3、T9及びT16の組み合わせによる選定方法の実施例に対しては、チューナーT3対チューナーT9対チューナーT16の挿入量の比率は、5.40:7.60:10.00であり、この挿入量の比率を変えずに挿入量の調節が行われる。
【0062】
図15は、本発明の一実施例による自動チューナー選定方法及びその自動チューナーを用いて共振周波数を補正する方法を示すフローチャートである。この実施例によれば、先ず、ステップS1において、各チューナーの特性を取得する。これは、上述したように、チューナーの挿入量に対する電圧変化の線形性を確認し、その電圧変化の線形性に基づいて、全チューナーに対して、個々の挿入量に対する電圧変化データを比例計算によって求めることによって行う。次に、ステップS2において、この取得した各チューナーのデータから、自動チューナーA、Bを決定する。これは、上述したようにプログラムによるサーチによって適切なチューナーの組み合わせと挿入量を決定しその決定した結果を直接三次元電磁場計算によって確認することによって行う。次にステップS3において、比率を記憶する。これは、確認された各チューナーの挿入量をシーケンサの比率記憶器に記憶するものである。ステップS1及びS2については、図16を参照して更に詳しく説明する。
【0063】
このように自動チューナーを選定した後に、ステップS4において、線形加速器の運転を開始する。この運転状態において、高周波増幅器12を介して高周波電力を共振器11に供給し、共振器11内を共振状態に保つ。ステップS5及びステップS6において、高周波増幅器出力位相及び共振器内部位相をモニタし、共振器の温度変化等によって共振周波数が変化した場合には、ステップS7において、その検出した位相を比較して位相差を出力する。ステップS8において、この位相差が許容内か又は許容外かを判断する。許容外であれば、ステップS9に進み、共振周波数の補正を行う。この補正は、シーケンス21が、その位相差に応じて自動チューナーA、Bの挿入量を調節し、モータドライバーA、Bに制御信号を送ることによって行われる。この調節は、上記ステップS3で記憶されたチューナーA対チューナーBの挿入量の比率を変更せずに行われる。
【0064】
この制御信号を受けて、ステップS10及びS11において、それぞれモータドライバーA及びBを制御する。これらのモータドライバーの制御によってステップS12及びS13において、自動チューナーA及びBが作動する。自動チューナーA及びBが作動することによって共振周波数の補正が完了すると、ステップS14に進み、線形加速器の運転が停止したかどうかを判断する。ステップS8において、許容内であると判断した場合もこのステップS14に進む。ステップS14において、運転中であると判断すると、運転開始後のステップに戻って上記ステップが繰り返される。ステップS14において、運転が停止したと判断すると、この工程を終了する。
【0065】
本発明の一実施例によれば、自動チューナー選定方法は図15のステップS1及びステップS2によって構成される。図16は、このステップのS1及びステップS2の手順を更に詳細に示すフローチャートである。図16に示すように、ステップS1は、ステップS1aとステップS1bを含む。先ず、ステップS1aにおいて、チューナーの挿入量に対する電圧変化の線形性を確認する。具体的には、1つのチューナーについて、チューナーの挿入量を変え、それぞれに関して三次元電磁場計算を行い電圧変化の様子をプロットすることによりグラフを作成する。このグラフによって、チューナーの挿入量に対する電圧変化の線形性を確認する。次に、ステップS1bにおいて、その電圧変化の線形性に基づいて、全チューナーに対して、個々の挿入量に対する電圧変化データを比例計算によって求める。具体的には、全チューナーについて、ある挿入量例えば挿入量10mmに対する電圧変化を三次元電磁場計算によって求める。次に、この計算結果から、全チューナーについて、他の個々の挿入量に対する電圧変化データを比例計算によって求める。これにより各チューナーの特性すなわち個々の挿入量に対する電圧変化データを収得するステップを終了する。
【0066】
図16に示すように、ステップS2は、ステップS2aとステップS2bを含む。先ず、ステップS2aにおいて、上記取得した各チューナーのデータから、自動チューナーA、Bを決定する。これは、上述したようにプログラムによるサーチによって適切なチューナーの組み合わせと挿入量を決定することによって行われる。具体的には、これは、チューナーの個別の電圧変化データを足し合わせ、それらのチューナーによる電圧変化が打ち消し合って全体の電圧分布が実質的に変化しないようなチューナーと挿入量の組み合わせをプログラムによるサーチによって見つけることによって行われる。次に、ステップS2bにおいて、その決定した組み合わせが適正かどうかを直接三次元電磁場計算によって確認する。この確認によって、そのチューナーを自動チューナーA、Bとして選定する。これによって、自動チューナーと挿入量の適切な組み合わせが決定される。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】IHモード・ドリフトチューブ線形加速器の概念図である。
【図2】共振器と誘導性チューナーの概略縦断面図であって、チューナーを挿入していない状態を示す図である。
【図3】共振器と誘導性チューナーの概略縦断面図であって、チューナーを挿入している状態を示す図である。
【図4】図3の一部において、誘導性チューナーの挿入状態を詳しく示す概略縦断面図である。
【図5】共振器と容量性チューナーの概略縦断面図であって、チューナーを挿入している状態を示す図である。
【図6】チューナーの挿入量と電圧変化の関係を示すグラフである。
【図7】代表的なギャップに関してチューナーの挿入量と電圧変化の関係を示すグラフである。
【図8】チューナーT1~T8に関して、挿入長d=20mmの位置における電圧変化を示すグラフである。
【図9】チューナーT9~T16に関して、挿入長d=20mmの位置における電圧変化を示すグラフである。
【図10】自動チューナーとしてチューナーT4及びT12を用いた場合の電圧変化を示すグラフである。
【図11】自動チューナーとしてチューナーT3、T9及びT16を用いた場合の電圧変化を示すグラフである。
【図12】自動チューナーとしてチューナーT3、T9及びT16を用いた場合の電圧変化を示すグラフであって、基準位置(挿入長d=10mmの位置)に関して図11の挿入量と対称的に、同じ量だけ引いた場合の電圧変化を示すグラフである。
【図13】自動チューナーとしてチューナーT4、T9及びT16を用いた場合の電圧変化を示すグラフである。
【図14】共振器の共振周波数を補正するための機構を説明するための簡単なブロック図である。
【図15】本発明の一実施例による自動チューナー選定方法及びその自動チューナーを用いて共振周波数を補正する方法を示すフローチャートである。
【図16】本発明の一実施例による自動チューナー選定方法を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0068】
1 タンク
2 入射端
3 出射端
4 ドリフトチューブ
5 リッジ
6 先端部
7 ロッド
8 導電板
11 共振器
12 高周波増幅器
13 自動チューナーA
14 自動チューナーB
15 モータドライバーA
16 モータドライバーB
17 自動周波数制御装置(AFC)
18 位相比較器
19 サンプルホールド回路
20 同期信号発生器
21 シーケンサ
22 比率記憶器
T1~T16 チューナー
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14
【図16】
15