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明細書 :標識化合物の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3896477号 (P3896477)
公開番号 特開平10-304892 (P1998-304892A)
登録日 平成19年1月5日(2007.1.5)
発行日 平成19年3月22日(2007.3.22)
公開日 平成10年11月17日(1998.11.17)
発明の名称または考案の名称 標識化合物の製造方法
国際特許分類 C12P   7/40        (2006.01)
A61K  51/00        (2006.01)
C07C  59/19        (2006.01)
FI C12P 7/40
A61K 49/02 C
C07C 59/19
請求項の数または発明の数 6
全頁数 7
出願番号 特願平09-114592 (P1997-114592)
出願日 平成9年5月2日(1997.5.2)
審査請求日 平成16年4月7日(2004.4.7)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000210067
【氏名又は名称】池田食研株式会社
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
【識別番号】390000745
【氏名又は名称】財団法人大阪バイオサイエンス研究所
【識別番号】301032942
【氏名又は名称】独立行政法人放射線医学総合研究所
発明者または考案者 【氏名】池本 昌弘
【氏名】小村 啓悟
【氏名】古谷 祐治
【氏名】佐々木 基仁
【氏名】渡辺 恭良
【氏名】鈴木 和年
個別代理人の代理人 【識別番号】100062144、【弁理士】、【氏名又は名称】青山 葆
【識別番号】100068526、【弁理士】、【氏名又は名称】田村 恭生
審査官 【審査官】森井 隆信
調査した分野 C12P 7/40
A61K 51/00
C07C 59/19
BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN)
JMEDPlus(JDream2)
JST7580(JDream2)
JSTPlus(JDream2)
特許請求の範囲 【請求項1】
ピルビン酸、もしくはその塩の、3位炭素が11C、13C、または14C同位元素で置き換えられた標識化合物の製造法であって、3位炭素が11C、13C、または14C同位元素で置き換えられたD,L-アラニンもしくはその塩に、アラニンラセマーゼ[EC.5.1.1.1]と、アラニンに作用してピルビン酸を生成する酵素を作用させることを特徴とする方法。
【請求項2】
アラニンに作用してピルビン酸を生成する酵素がD-アミノ酸オキシダーゼ[EC.1.4.3.3]であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
アラニンに作用してピルビン酸を生成する酵素がL-アラニンデヒドロゲナーゼ[EC.1.4.1.1]であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項4】
同位元素が11Cである請求項1記載の方法。
【請求項5】
同位元素が13C または14Cである請求項1記載の方法。
【請求項6】
アラニンラセマーゼと、アラニンに作用してピルビン酸を生成する酵素を適当な固定化担体に固定化することにより、目的標識化合物への酵素の混入を抑えることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の方法。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は標識化合物の製造方法に関するものである。さらに詳しくは、この発明は、腫瘍や脳のイメージング・臨床診断・生体の機能学的研究等に有用なポジトロン標識化合物あるいは、安定同位体標識化合物の合成中間体である標識ピルビン酸の製造法に関するものである。
【0002】
【発明が解決しようとする課題】
以下、本発明を、同位元素として11Cポジトロン核種を用いた場合について説明するが、同位元素が13Cまたは14Cである場合にも、本発明方法が適用できることは、当業者には明らかであろう。
【0003】
11Cポジトロン核種の半減期は、20.4分と短いことから、L-[3'-11C]DOPA、L-[3'-11C]チロシン、L-[3'-11C]トリプトファン、L-[3'-11C]-5-ヒドロキシトリプトファンの合成原料となる、[3-11C]ピルビン酸の製造は、有機合成法では困難であり、酵素(グルタミン酸-ピルビン酸トランスアミナーゼ・D-アミノ酸オキシダーゼ・カタラーゼ)を用いた以下の製造法(反応式1)が知られている(特開平3-151889、特願平1-292686)。
【化1】
JP0003896477B2_000002t.gif
【0004】
しかし、グルタミン酸-ピルビン酸トランスアミナーゼとD-アミノ酸オキシダーゼは安定性に問題があり、また、グルタミン酸-ピルビン酸トランスアミナーゼのアラニンに対する作用性は低く、原料となる標識D,L-アラニンからピルビン酸への変換率が低いという問題を抱えていた。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、アラニンラセマーゼ、D-アミノ酸オキシダーゼおよびカタラーゼを用いた酵素系(下記反応式2)またはアラニンラセマーゼとアラニンデヒドロゲナーゼを用いた酵素系(下記反応式3)を用いると、D,L-アラニンをピルビン酸へ効率よく変換することができ、また、これらの酵素は安定であるので、固定化することにより自動合成装置にも適用可能であり、オンカラム・フロー系で、短時間に効率よく[3-11C]ピルビン酸を製造することができることを見い出し、本発明を完成した。
【化2】
JP0003896477B2_000003t.gif【化3】
JP0003896477B2_000004t.gif
【0006】
本発明を実施するに当たり、ポジトロン核種11C標識されたヨウ化メチルは、サイクロトロンにより作成した[11C]二酸化炭素を用いて文献記載の一般的方法により合成できる(B. Langstromら、J. Nucl. Med., 28, 1037, 1987)。N-(ジフェニルメチレン)グリシン第4級ブチルエステルは文献記載の方法により合成できる(W. A. Woodら、J. Biol. Chem., 170, 313, 1947)。ポジトロン核種11C標識されたD,L-アラニンは、アラニンラセマーゼとD-アミノ酸オキシダーゼ及びカタラーゼを用いた酵素反応またはアラニンラセマーゼとアラニンデヒドロゲナーゼを用いた酵素反応をさせることにより効率よくポジトロン核種11C標識されたピルビン酸を製造することができる。同様にして、13C、14C等で標識された化合物を得ることもできる。
【0007】
本発明を実施する際に使用する酵素は市販品を利用できる。即ち、アラニンラセマーゼは、ユニチカより、アラニンデヒドロゲナーゼは生化学工業より、カタラーゼは、ベーリンガー・マンハイムから購入できる。また、D-アミノ酸オキシダーゼ、グルタミン酸-ピルビン酸トランスアミナーゼはシグマ社より購入できる。但し、これらの酵素は、その活性を持つものであれば、その起源、由来、状態は特に限定されないことは言うまでもない。
目的標識化合物への酵素の混入を抑えるために、これら酵素は、水に不溶性の担体に固定化し、固定化酵素として使用することも可能である。固定化の方法としては、共有結合法、物理的吸着法、イオン結合法、包括法等が代表的なものであり、これらに使用される担体も、有機化合物、無機化合物、あるいは天然物質、人工物質がある。特に好ましい固定化酵素法としては、固定化担体にアミノ化多孔質ガラスを用い、酵素と担体との固定化は、グルタルアルデヒドを用いた共有結合法が挙げられるが、その方法は特に限定されるものではない。
【0008】
この発明により、D,L-[3-11C]アラニンを短時間に効率よく[3-11C]ピルビン酸に変換でき、又、目的標識化合物への酵素の混入を抑えることが可能となったため、[3-11C]ピルビン酸はポジトロン標識化合物あるいは、安定同位体標識化合物の合成中間体として腫瘍や脳のイメージング・臨床診断・生体の機能学的研究等に極めて有用なものである。本発明においては、ポジトロン核種11Cばかりではなく、13Cのような安定同位体元素による標識や14Cのような放射性同位元素の標識も可能である。
【0009】
以下、製造例および実施例を挙げて本発明をより詳細に説明する。
製造例111C]ヨウ化メチルの製造
ターゲットより回収した、[11C]二酸化炭素を反応フラスコに入れた水素化リチウムアルミニウムのTHF溶液(40μM、0.5ml)に導いた。THFを蒸発させた後、ヨウ化水素酸(57%、0.3ml)を加えて還流し、生成した[11C]ヨウ化メチルを留去して反応容器に移した。
【0010】
製造例2 D,L-[3-11C]アラニンの製造
N-(ジフェニルメチレン)グリシン第4級ブチルエステル(3mg)、DMF(0.3ml)、水酸化カリウム水溶液(5M、5μl)をあらかじめ入れた反応容器に、[11C]ヨウ化メチルを窒素気流中、この反応容器に加えた。反応混合物を70℃で3分間加熱した後、蒸留水(15ml)を入れたリザーバー(液溜)にこの混合物を移し、Sep-Pak C-18カラムに通した。このカラムを水(3ml)で洗浄した後、カラムに吸着した放射活性物質をジクロロメタン(3ml)で溶出し、塩酸(6M、0.7ml)を入れた反応器に受けた。この混合物からジクロロメタンと塩酸を蒸発させ、ラセミ体の[3-11C]アラニン溶液を水(1ml)で溶解し、Sep-Pak C-18カラムに通して精製した。分析は、以下の条件で行った。
カラム:Finepak SIL C18S(4.6mm×150mm)(日本分光(株)製)
溶離液:10mMリン酸二水素ナトリウム(pH2.2)、5mM 1-オクタンスルホン酸 ナトリウム/アセトニトリル(90:10)
カラム温度:室温
検出:UV検出器(Abs210) ならびに放射能検出器を連結
【0011】
実施例1 [3-11C]ピルビン酸の製造
製造例2で得たD,L-[3-11C]アラニン溶液に、最終濃度がそれぞれ、0.1M、17μM、0.1mMになるようにトリスエチレンヒドロキシアミン/塩酸(Tris/HCl)緩衝液(pH8.5)、フラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)、ピリドキサールリン酸(PLP)を加えた。さらに、アラニンラセマーゼ(24単位)、D-アミノ酸オキシダーゼ(3.6単位)、カタラーゼ(4300単位)を加え、反応混合物を4分間、45℃に保った。塩酸(6M、0.2ml)を加えて反応を停止させ、0.22μm細孔フィルターで濾過した後、製造例2の条件で分析を行った。基質であるD,L-[3-11C]アラニンが完全に消費され、[3-11C]ピルビン酸に転換されていた(図1の▲2▼参照)。転換物が[3-11C]ピルビン酸であることは、これをピルビン酸標品と混合してHPLC分析を行い、UV検出シグナルと放射線検出シグナルが示す保持時間が両者で一致することにより確認することができた(図2参照)。
【0012】
実施例2 [3-11C]ピルビン酸の製造
製造例2で得たD,L-[3-11C]アラニン溶液に、最終濃度がそれぞれ、0.1M、2.5mM、0.1mMになるようにTris/HCl緩衝液(pH8.5)、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)、PLPを加えた。さらに、アラニンラセマーゼ(24単位)、アラニンデヒドロゲナーゼ(3.6単位)を加え、反応混合物を4分間、45℃に保った。塩酸(6M、0.2ml)を加えて反応を停止させ、0.22μm細孔フィルターで濾過した後、製造例2の条件で分析を行った。基質であるD,L-[3-11C]アラニンが完全に消費され、[3-11C]ピルビン酸に転換されていた(図1の▲3▼参照)。転換物が[3-11C]ピルビン酸であることの確認は、実施例1と同様にして行った。
【0013】
比較例1 [3-11C]ピルビン酸の製造
製造例2で得たD,L-[3-11C]アラニン溶液に、最終濃度がそれぞれ、0.1M、10mM、17μM、0.1mMになるようにTris/HCl緩衝液(pH8.5)、α-ケトグルタル酸、FAD、PLPを加えた。さらに、グルタミン酸-ピルビン酸トランスアミナーゼ(24単位)、D-アミノ酸オキシダーゼ(3.6単位)、カタラーゼ(4300単位)を加え、反応混合物を4分間、45℃に保った。塩酸(6M、0.2ml)を加えて反応を停止させ、0.22μm細孔フィルターで濾過した後、製造例2の条件で分析を行った。実施例1および2と異なり、基質であるD,L-[3-11C]アラニンが完全にピルビン酸に転換されず残存していた(図1の▲1▼参照)。
【0014】
製造例3 固定化アラニンラセマーゼの調製
0.2 gのアミノプロピル-CPG(ポアーサイズ1400オングストローム フナコシ(株)販売)に2.5%グルタルアルデヒド水溶液10mlを添加し、1時間室温で反応させた後、十分水洗した。これに10mg のアラニンラセマーゼを含む0.1Mリン酸緩衝液(pH7.5)10mlを加え、4℃で一晩撹拌しながら反応させた。このアラニンラセマーゼ固定化担体粒子を上記リン酸緩衝液で洗浄し、未反応のアラニンラセマーゼを除去し、固定化アラニンラセマーゼを作成した。
【0015】
製造例4 固定化D-アミノ酸オキシダーゼの調製
0.2 gのアミノプロピル-CPG(ポアーサイズ1400オングストローム フナコシ(株)販売)に2.5%グルタルアルデヒド水溶液10mlを添加し、1時間室温で反応させた後、十分水洗した。これに10mg のD-アミノ酸オキシダーゼを含む0.1Mリン酸緩衝液(pH7.5)10mlを加え、4℃で一晩撹拌しながら反応させた。このD-アミノ酸オキシダーゼ固定化担体粒子を上記リン酸緩衝液で洗浄し、未反応のD-アミノ酸オキシダーゼを除去し、固定化D-アミノ酸オキシダーゼを作成した。
【0016】
製造例5 固定化アラニンデヒドロゲナーゼの調製
0.2 gのアミノプロピル-CPG(ポアーサイズ1400オングストローム フナコシ(株)販売)に2.5%グルタルアルデヒド水溶液10mlを添加し、1時間室温で反応させた後、十分水洗した。これに10mg のアラニンデヒドロゲナーゼを含む0.1Mリン酸緩衝液(pH7.5)10mlを加え、4℃で一晩撹拌しながら反応させた。このアラニンデヒドロゲナーゼ固定化担体粒子を上記リン酸緩衝液で洗浄し、未反応のアラニンデヒドロゲナーゼを除去し、固定化アラニンデヒドロゲナーゼを作成した。
【0017】
製造例6
内径4mm、長さ6cm(内容積720μl)のカラムに製造例3で調製した固定化アラニンラセマーゼと製造例4で調製した固定化D-アミノ酸オキシダーゼを1:1の量比に混合したものを充填し、ピルビン酸合成用反応カラムAとした。
【0018】
製造例7
内径4mm、長さ6cm(内容積720μl)のカラムに製造例3で調製した固定化アラニンラセマーゼと製造例5で調製した固定化アラニンデヒドロゲナーゼを1:1の量比に混合したものを充填し、ピルビン酸合成用反応カラムBとした。
【0019】
実施例3 固定化酵素カラムAを用いた[3-11C]ピルビン酸の製造
45℃に保温した、0.01mM PLPを含む0.1M Tris/HCl 緩衝液(pH8.5)をペリスタポンプで同温度に保温した固定化酵素カラムA に送液し、カラムを平衡化させた。
次に、製造例2で得たD,L-[3-11C]アラニン溶液に、最終濃度がそれぞれ、0.1M、17μM、0.1mMになるようにTris/HCl 緩衝液(pH8.5)、FAD、PLPを加え、流速5ml/分でカラムに送液した。さらに、同流速で0.01mM PLPを含む0.1M Tris/HCl 緩衝液(pH8.5)を送液した。カラム通過後の溶液を分取し、製造例2の条件で分析を行った。基質であるD,L-[3-11C]アラニンが完全に消費され、[3-11C]ピルビン酸に転換されていた。
【0020】
実施例4 固定化酵素カラムBを用いた[3-11C]ピルビン酸の製造
45℃に保温した、0.01mM PLPを含む0.1M Tris/HCl 緩衝液(pH8.5)をペリスタポンプで同温度に保温した固定化酵素カラムB に送液し、カラムを平衡化させた。
次に、製造例2で得たD,L-[3-11C]アラニン溶液に、最終濃度がそれぞれ、0.1M、2.5mM、0.1mMになるようにTris/HCl 緩衝液(pH8.5)、NAD、PLPを加え、流速5ml/分でカラムに送液した。さらに、同流速で0.01mM PLPを含む0.1M Tris/HCl 緩衝液(pH8.5)を送液した。カラム通過後の溶液を分取し、製造例2の条件で分析を行った。基質であるD,L-[3-11C]アラニンが完全に消費され、[3-11C]ピルビン酸に転換されていた。
【0021】
実施例3および4に於いて、固定化酵素カラムA、Bを用いて合成された放射活性物質を、ピルビン酸標品と混合し、HPLC分析を行った結果、UV検出シグナルと放射線検出シグナルが示す保持時間が両者で一致した。このことから該放射活性物質が[3-11C]ピルビン酸であることを確認した。
【図面の簡単な説明】
【図1】 [3-11C]ピルビン酸合成反応終了後のフィルター濾過液をHPLCで分析したクロマトグラムを示す図であり、▲1▼は比較例1、▲2▼は実施例1、▲3▼は実施例2の結果を示す。
【図2】 実施例1で合成された放射活性物質とピルビン酸標品との混合物のHPLC分析の結果を示すグラフである。
図面
【図1】
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【図2】
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