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明細書 :セラミックスラドン放出線源とその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3716285号 (P3716285)
公開番号 特開2000-327457 (P2000-327457A)
登録日 平成17年9月9日(2005.9.9)
発行日 平成17年11月16日(2005.11.16)
公開日 平成12年11月28日(2000.11.28)
発明の名称または考案の名称 セラミックスラドン放出線源とその製造方法
国際特許分類 C04B 41/85      
C04B 35/565     
C04B 38/00      
C04B 41/89      
G21G  4/06      
FI C04B 41/85 C
C04B 38/00 303Z
C04B 41/89 K
G21G 4/06
C04B 35/56 101X
C04B 35/56 101Y
請求項の数または発明の数 5
全頁数 12
出願番号 特願平11-144520 (P1999-144520)
出願日 平成11年5月25日(1999.5.25)
審査請求日 平成13年6月8日(2001.6.8)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】301032942
【氏名又は名称】独立行政法人放射線医学総合研究所
【識別番号】000140627
【氏名又は名称】株式会社化研
発明者または考案者 【氏名】小泉 彰
【氏名】山田 裕司
【氏名】下 道國
【氏名】長谷川 良雄
【氏名】戸祭 智
【氏名】蓼沼 克嘉
個別代理人の代理人 【識別番号】100081927、【弁理士】、【氏名又は名称】北條 和由
審査官 【審査官】三崎 仁
参考文献・文献 特開昭60-060991(JP,A)
特開昭50-114415(JP,A)
調査した分野 C04B41/80~41/91
C04B38/00~38/10
C04B35/565~35/577
G21G4/06
特許請求の範囲 【請求項1】
放射性ラドンガスを放出するラドン放出線源であって、多孔質セラミックスからなるセラミックス担体に水に不溶な放射性ラジウムが定着されており、このセラミックス担体がSiCの多孔質焼結体またはTiO をコーティングしたSiCの多孔質焼結体であることを特徴とするセラミックスラドン放出線源。
【請求項2】
放射性ラジウムが水に不溶の塩の状態でセラミックス担体に定着されていることを特徴とする請求項に記載のセラミックスラドン放出線源。
【請求項3】
放射性ラドンガスを放出するラドン放出線源を製造する方法であって、多孔質セラミックスからなるセラミックス担体を得る第一の工程と、このセラミックス担体に放射性ラジウム溶液を含浸する第二の工程と、セラミックス担体中に水に不溶の放射性ラジウムの塩を析出させる第三の工程と、この不溶性のラジウム塩を焼結させ、セラミックス担体に定着させる第四の工程とを有し、このセラミックス担体がSiCの多孔質焼結体またはTiO をコーティングしたSiCの多孔質焼結体であることを特徴とするセラミックスラドン放出線源の製造方法。
【請求項4】
放射性ラジウムが水に不溶な塩の状態でセラミックス担体に定着されることを特徴とする請求項に記載のセラミックスラドン放出線源の製造方法。
【請求項5】
ラジウム塩の焼結温度が200℃~1000℃であることを特徴とする請求項3または4に記載のセラミックスラドン放出線源の製造方法。
発明の詳細な説明
【0001】
本発明は、放射線被曝の研究等の目的で、放射性ラドンを放出するラドン放出線源に関し、多孔質セラミックスからなるセラミックス担体に水に不溶なラジウム塩を定着させることにより、高い放出率で放射性ラドンガスを長期間にわたって安定して取り出すことを可能としたセラミックスラドン放出線源に関する。
【0002】
【従来の技術】
ラドンは希ガス元素の1種であるが、質量数222のウラン系核種、質量数219のアクチニウム系核種、質量数220のトリウム系核種が天然に存在する。質量数222のラドンは、質量226のラジウムの崩壊により生じる。
これまで、生物学的、医学的或いは放射線被曝防護等の観点から、生活環境中のラドン濃度測定の研究、あるいはこのラドンの放射線被曝による生体への影響について検討がなされているが、そのために必要なソースとしてラドン放出線源がある。
【0003】
従来、ラドンの生体への被曝影響の実験等におけるラドンソースとしては、ラジウム水溶液、天然から採取されるラドン放出土壌、市販されている固体ラドンソース等が使用されてきた。しかし、何れもラドンの放出率が低く、取り扱いが困難で、しかも安定してラドンが放出されないという欠点がある。
【0004】
【発明が解決しようとしている課題】
例えばラドンによる生体に対する被曝影響の研究において、動物実験等に使用するラドンソースとして求められる特性としては、第一に、生体に被曝影響が生じ得る程度に高濃度のラドンガスを放出する高率放出性、第二に、長期にわたる実験等において、高濃度のラドンガスを安定して放出する持続性、第三に、取り扱いが容易で、耐水性の高い等の安定性が要求される。しかしながら、従来のラドンソースは、何れもそのような特性を備えていない。
【0005】
そこで本発明は、前記従来のラドンソースにおける課題と前記のラドンソースに求められる特性に鑑み、高濃度のラドンガスを長期にわたって安定して放出することができ、しかも取り扱いが容易で、耐水性及び耐放射線性の高いセラミックスラドン放出線源とその製造方法を提案するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
前記の目的を達成するため、本発明では、多孔質セラミックスを担体として使用し、このセラミックス担体に水に不溶なラジウム塩を定着させた。
すなわち、本発明によるセラミックスラドン放出線源は、多孔質セラミックスからなるセラミックス担体に水に不溶な放射性ラジウムが定着されており、このセラミックス担体は、SiCの多孔質焼結体やTiO をコーティングしたSiCの多孔質焼結体であることを特徴とする。
【0007】
このようなセラミックスラドン放出線源は、多孔質セラミックスからなるセラミックス担体を得る第一の工程と、このセラミックス担体に放射性ラジウム溶液を含浸する第二の工程と、セラミックス担体中に水に不溶な放射性ラジウムの塩を析出させる第三の工程と、このラジウム塩を焼結させ、セラミックス担体に定着させる第四の工程とを経ることにより製造することができる。
【0008】
例えば、SiCの多孔質焼結体からなるセラミックス担体にラジウム溶液を含浸した後、乾燥し、その後このセラミックス担体にHSOを含浸させることにより、セラミックス担体内部に水に不溶のRaSO が析出する。その後、このセラミックス担体を高温で熱処理することにより、この不溶性のRaSO が焼結し、セラミックス担体に定着する。
【0009】
また、TiO2 をコーティングしたSiCの多孔質焼結体からなるセラミックス担体にラジウム溶液を含浸した後、乾燥し、その後このセラミックス担体に酢酸アンモニウム等を含浸させることにより、セラミックス担体内部に酢酸ラジウムが析出する。その後、このセラミックス担体を高温で熱処理することにより、水に不溶のRaTiO3 が生成すると共に、これが焼結し、セラミックス担体の内部に定着する。
【0010】
このようなセラミックスラドン放出線源では、多孔質焼結体であり、放射線に強く、化学的に安定性のある多孔質セラミックスからなる担体の内部に水に不溶な放射性ラジウムが定着されているため、きわめて安定したラドンの放出特性を示す。しかも、ラジウムが水に不溶な塩の形態で焼結され、多孔質セラミックス担体に定着しているため、ラジウム自体が物理的、化学的に安定しており、水等によってラジウムがセラミックス担体から容易に溶出しない。また、後述するように、長期にわたって高い濃度でラドンを安定して継続的に放出することができる。しかも、固体であるため、その取り扱いも容易である。
【0011】
なお、ラジウム塩の焼結温度は200℃~1000℃とするのがよく、より望ましくは400℃~800℃とするのがよい。この温度で焼成することにより、多孔質セラミックス単体の組織表面に水に不溶なラジウム塩の焼結体が安定的に、且つ確実に定着する。これにより、高いラドンの放出率が長期にわたって安定して得られる。焼成温度が前記の温度より低くなると、ラジウム塩の焼結が不完全になりやすく、安定性や耐水性が得られにくい。また、焼成温度が前記の温度より高くなると、ラドンの放出率(放出量)が低下する傾向にある。
【0012】
【発明の実施の形態】
次に、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について、具体的且つ詳細に説明する。
まず、セラミックスラドン放出線源の製造方法について説明する。図1において、(a)はSiCからなるセラミクス担体を使用したセラミックスラドン放出線源の製造工程を示しており、(b)はTiO2 をコーティングしたSiC(以下「TiO2 -SiC」と言う。)からなるセラミクス担体を使用したセラミックスラドン放出線源の製造工程を示している。
【0013】
何れの製造方法でも、まずSiCの多孔質焼結体からなるセラミックス担体を作る。このようなセラミックス担体を作る方法には幾つかあるが、濾紙等の多孔質有機物基体にセラミックス前躯体である無機高分子を含浸し、これを焼成する方法がある。
【0014】
まず、円筒形の濾紙を用意し、これを適当な長さに切断する。一層の濾紙では、十分な厚さが得られないときは、前記の切断した円筒形濾紙とは別に、同じ長さで濾紙を切断し、これを適当な幅だけ長手方向に帯状に切断し、周長を短くすることにより減径する。そしてこの濾紙を円筒形にしたまま、もう一つの円筒形濾紙の内側に挿入し、固定する。
【0015】
その後、この円筒形濾紙に、ポリカルボシラン(PCS)等のセラミックス前躯体となる無機高分子を含浸し、この円筒形濾紙を乾燥する。その後、この円筒濾紙を焼成することにより、円筒形の多孔質SiC焼結体が得られ、これをセラミックス担体として使用することができる。
さらに、この多孔質SiC焼結体からなるセラミックス担体にゾル状のTiO2 を含浸し、これを乾燥することにより、TiO2 がコーティングされたセラミックス担体を得ることもできる。
【0016】
また、既知の乾式または湿式成形を用いる方法がある。前者は、セラミックス粉末と粉末バインダとを適当な割合で均一に混合し、これを型内で所定の形状に加圧成形する。また後者は、溶剤で溶解した有機バインダにセラミックス粉末を均一に混合し、分散してセラミックススラリを作り、このセラミックススラリを押出し成形等の手段で成形し、所定の長さに切断し、その後乾燥して未焼成の成形体を得る。そしてこれを焼成することにより、多孔質セラミックス焼結体を得る。
【0017】
未焼成のセラミックス成形体を焼成する手段としては、一般の焼成炉による熱処理や放電プラズマ焼結法(SPS法)等を使用することができる。成形体を焼成する前に予備的な熱処理を行い、脱バインダ処理をすることもある。何れの場合も、セラミックス前躯体となる無機高分子を保持し、またはセラミックス粉末を結合している前記の濾紙や有機バインダが消失する共に、セラミックスが焼結されることにより、多孔質のセラミックス焼結体からなるセラミックス担体が得られる。
なお、このようにして作られるセラミックス担体は、図1に示すように円筒形のものが適当である。
【0018】
まず、図1(a)により、SiCセラミックス担体を使用したセラミックスラドン放出線源の製造工程の例について説明する。
図1(a)に示すように、前記のようにして作られた円筒形の多孔質SiC焼結体からなるセラミックス担体を用意し、注射器やシリンジ等を用いてこのセラミックス担体にRa-226溶液を滴下し、Ra-226溶液をセラミックス担体に含浸させる。また、セラミックス担体をRa-226溶液に浸漬して含浸させる手段をとることもできる。その後、Ra溶液を乾燥させる。Ra溶液としては、RaCl2 水溶液が好適である。
【0019】
次に、このセラミックス担体にH2SO4を含浸させることにより、セラミックス担体に含浸させた前記のRaCl2 とH2SO4とが反応し、セラミックス担体の内部に水に不溶のRaSO4 が生成する。
その後、このセラミックス担体を空気中で熱処理し、焼成する。焼成温度は200~1000℃がよく、特に400~800℃が好ましい。
【0020】
この焼成工程により、セラミックス担体に保持されていたRaSO4 が焼結され、これが多孔質SiCからなるセラミックス担体に定着される。
以上の工程を経て、多孔質SiCセラミックス担体に水に不溶なRaSO4 が焼結状態で定着したセラミックスラドン放出線源が得られる。
【0021】
次に、図1(b)により、TiO2 -SiCセラミックス担体を使用したセラミックスラドン放出線源の製造工程の例について説明する。
図1(b)に示すように、前記のように、SiC焼結体にTiO2 をコーティングした円筒形の多孔質TiO2 -SiC焼結体からなるセラミックス担体を用意し、注射器やシリンジ等を用いてこのセラミックス担体にRa-226溶液を滴下し、Ra-226溶液をセラミックス担体に含浸させる。その後、Ra水溶液を乾燥させる。この工程は、基本的に前述のSiCセラミックス担体を使用したセラミックスラドン放出線源の製造工程と同様である。
【0022】
次に、このセラミックス担体にCH3COONH4または(NH42HC657 を含浸させる。これにより、セラミックス担体に含浸させた前記のRaCl2 とCH3COONH4または(NH42HC657 とが反応し、セラミックス担体中にRa(CH3COO)2或いはRaHC657 が生成する。
【0023】
その後、このセラミックス担体を空気中で熱処理し、焼成する。この焼成工程により、セラミックス担体に保持されていた前記のRa(CH3COO)2或いはRaHC657 がセラミックス担体にコーティングされているTiO2 とが反応して水に不溶のRaTiO3 が生成し、これが焼結され、多孔質SiCからなるセラミックス担体に定着される。
以上の工程を経て、多孔質SiCからなるセラミックス担体に水に不溶のRaTiO3 が定着したセラミックスラドン放出線源が得られる。
【0024】
なお、前述の例では、セラミックス担体としてSiCセラミックスまたはTiO2 -SiCセラミックスを使用した例を説明したが、セラミックス担体として他のセラミックスを使用することもできる。セラミックスラドン放出線源としてRa-266の焼結体を定着させるのに適したセラミックスは、放射線に強く、化学的に安定で、多孔質の焼結体が容易に得られるものである。このようなものとして、ZrO2、Al23、Nd23、Nb25、Si34、SiO2等の単体またはそれらの混合体のセラミックスを使用することができる。
【0025】
【実施例】
次に、本発明の実施例として、セラミックスラドン放出線源の具体的な製法と、製造したセラミックスラドン放出線源の評価試験及びその結果について具体的に説明する。
【0026】
(実施例1)
外形20mmφの円筒形の濾紙を用意し、これを15mmの長さに2つ切断した。長さ15mmの一方の円筒形濾紙を少しの幅だけ長手方向に帯状に切断し、周長を短くすることにより減径し、これを他方の円筒形濾紙の内側に挿入した。
【0027】
次に、この2重の円筒形濾紙にポリカルボシラン(PCS)のヘキサン溶液を含浸し、これをアルゴンガス中で高温焼成することにより、多孔質のSiC焼結体からなるセラミックス担体を得た。このセラミックス担体は、内径9mmφ、外形12mmφ、長さ10mm、質量460mg、容積0.49mlであった。
【0028】
次に、図1(a)に示すように、前記のようにして作られた円筒形の多孔質SiC焼結体からなるセラミックス担体にRaCl2 水溶液(43.79KBq/g、0.5M-HCl)を0.1ml滴下し、RaCl2 水溶液をセラミックス担体に含浸させた。その後、このセラミックス担体を、ホットプレート上で100℃以下の温度にて乾燥した。
【0029】
次に、このセラミックス担体に、0.024μmolのH2SO4 を均一に含浸させた。これにより、セラミック担体中に水に不溶なRaSO4 が生成した。これらのセラミックス担体を3つの組に分け、それぞれ空気中において、400℃、600℃、800℃の温度で熱処理した。これにより、RaSO4 が焼結され、多孔質のSiCセラミックス担体に定着したセラミックスラドン放出線源(RaSO4/SiC)が完成した。
【0030】
このセラミックスラドン放出線源を使用し、フロー方式によりラドン放出量を測定した。このフロー方式によるラドンの放出量の測定は、セラミックスラドン放出線源を閉じられた密閉容器内に収納し、この空間に毎時一定量の空気を導入し、密閉容器の他方から排出される空気中に含まれるラドンの濃度を測定し、この測定値からセラミックスラドン放出線源から放出されるラドンの放出率や濃度を求めるものである。
【0031】
図2にこの測定装置の概要を示している。セラミックスラドン放出線源Sは、密閉容器3の中に収納される。空気は、ポンプ8による流路の端末における減圧により引かれて流路に導入される。この空気は、まず除湿管1に通されて除湿された後、マスフローコントローラー2により流量制御され、バルブ9を介して毎時所定の流量だけ密閉容器3の一端側に導入される。この密閉容器3の他端側には、バルブ10を介してラドンモニター4が接続されている。
【0032】
またマスフローコントローラー2とランドモニター4とは、バルブ11と12を介して前記の密閉容器3を通らないバイパスラインにより接続されている。バルブ9、10を閉じて密閉容器3内を流路から切り離し、セラミックスラドン放出線源Sの交換等の作業を行うときは、バルブ11、12を開けて、バイパスラインを通して空気を流す。
【0033】
密閉容器3から送られてきたラドンを含む空気はラドンモニター4に送られ、バラトロン5でその圧力が測定されながら、ラドンモニター4で空気中のラドンが検知され、その空気中のラドン濃度が測定される。さらに、ラドンを含む空気は、流量を計測するフローモニター6を経て活性炭フィルタ7でラドンがトラップされ、ラドンを含まない空気がポンプ8を通して排気される。
【0034】
このようなフロー方式による測定の結果、ラドンモニター4で測定されたラドン濃度により求めたラドン放出率と焼結温度との関係を図3に実線で示した。ここで、ラドンの放出率は、セラミックスラドン放出線源Sに含浸させたラジウムが有すべき放射能とラドンモニター4で測定されたラドンの放射能との比で表してある。
【0035】
図3から明らかな通り、ラドンの放出率は、製造過程の焼結温度が低い程高い。これらのラドン放出率は、後述する比較例と比べて、何れも遙かに高い値を示している。
なお、焼結温度が400℃未満では、ラジウム塩の焼結が起こりにくいため、多孔質セラミックス担体へのラジウムの定着率が悪くなることが確認されている。焼結温度が高くなると、ラジウム塩のセラミックス担体への定着性は良くなるが、ラドンの放出率が低下する。図3に示すように、焼結温度が800℃以下では、10%以上、具体的には12.7%の高いラドンの放出率が実現されている。
【0036】
図4~図6は、前記のラドン放出試験において、ラドンモニター4で測定されたラドン濃度を一定時間毎にプロットしたグラフである。図4が焼結温度400℃で焼結したセラミックスラドン放出線源であり、図5が焼結温度600℃で焼結したセラミックスラドン放出線源であり、図6が焼結温度800℃で焼結したセラミックスラドン放出線源である。
【0037】
これらの図から明らかな通り、焼結温度の違いにより検出されるラドン濃度のレベルに違いはあるが、何れのセラミックスラドン放出線源でも、試験開始から数十分~2時間程でラドンの放出濃度が定常状態となり、その後安定して一定のラドン濃度が測定されている。
【0038】
図12は、前記のRaSO4/SiCセラミックスラドン放出線源を水に浸漬したときに、水に溶出したラドンの溶出率を浸漬時間との関係で示したグラフである。二点鎖線が焼結温度400℃で焼結処理したもの、実線が焼結温度600℃で焼結処理したもの、破線が焼結温度800℃で焼結処理したものである。
【0039】
ここでは、20℃に設定した恒温槽に純水100mlを入れた容器を静置し、この容器内の水にRaSO4/SiCセラミックスラドン放出線源を30分浸漬する。その後、同線源を純水から引き上げ、容器から分取した20mlの水のRa-226をGe半導体検出器で計測する。その後分注した水を元の容器に戻すと共に、同じRaSO4/SiCセラミックスラドン放出線源をまた水に30分浸漬する。その後、同ラドン放出線源を水から取り出し、同様にして水のRa-226を計測する。以下、同様にして30分ずつのラドン放出線源の水への浸漬と水のRa-226の計測を繰り返した。
【0040】
溶出率は、前記の計測値から容器に入れた純水100ml中に流出したRa-226の量を計算で求め、セラミックス担体に含浸したRa-226の量との比で示した。
図12から明らかな通り、何れのRaSO4/SiCセラミックスラドン放出線源でも、浸漬開始から3時間程は溶出量の増大が見られるが、それ以降の溶出量の増大は殆ど見られず、20時間後における溶出量は最大で40%である。
【0041】
(実施例2)
前記実施例1と同様にして作られた多孔質SiC焼結体からなる円筒形のセラミックス担体にゾル状のTiO2 を含浸し、乾燥することにより、TiO2 がコーティングされたセラミックス担体を得た。このセラミックス担体は、内径9mmφ、外形12mmφ、長さ10mm、質量460mg、容積0.49mlである。
【0042】
次に、図1(b)に示すように、前記のセラミックス担体にRaCl2 水溶液(43.79KBq/g、0.5M-HCl)を0.1ml滴下し、RaCl2 水溶液をセラミックス担体に含浸させた。その後、このセラミックス担体を、ホットプレート上で100℃以下の温度にて乾燥した。
【0043】
次に、このセラミックス担体に、0.024μmolのCH3COONH4を均一に含浸させた。その後、このセラミックス担体を3つのグループに分け、それぞれ空気中で600℃、800℃、1000℃の温度で1時間ずつ熱処理し、焼成した。これにより、セラミックス担体の内部に含浸されていたRa(CH3COO)2がTiO2 と反応し、RaTiO3 が析出すると共に、これが焼結され、セラミックス担体に定着されたセラミックスラドン放出線源(RaTiO3/SiC)が得られた。
【0044】
次に、このセラミックスラドン放出線源を使用し、前記実施例1のRaSO4/SiCセラミックスラドン放出線源と同様にして、図2に示す測定装置を使用し、フロー方式によりラドン放出量を測定した。
このようなフロー方式による測定の結果、前記と同様にして、ラドンモニター4で測定されたラドン濃度により求めたラドン放出率と焼結温度との関係を図3に破線で示した。
【0045】
図3から明らかな通り、ラドンの放出率は、焼結温度が低い程高い。焼結温度が高くなると、ラジウム塩のセラミックス担体への定着性は良くなるが、ラドンの放出率が低下する。図3に示すように、焼結温度が800℃以下では、10%以上、具体的には19.7%以上の高いラドンの放出率が実現されている。しかし、焼結温度が1000℃になると、ラドンの放出率は2.3%と10%以下になった。しかし、これらのラドン放出率は、後述する比較例に比べて、何れも高い値を示している。
【0046】
図7~図9は、前記のラドン放出試験において、ラドンモニター4で測定されたラドン濃度を一定時間毎にプロットしたグラフである。図7が焼結温度600℃で焼結したセラミックスラドン放出線源であり、図8が焼結温度800℃で焼結したセラミックスラドン放出線源であり、図9が焼結温度1000℃で焼結したセラミックスラドン放出線源である。
【0047】
図7及び図8に示すように、何れのセラミックスラドン放出線源でも、試験開始から1時間足らずでラドンの放出濃度が定常状態となり、その後安定して一定のラドン濃度が測定されている。但し、図9に示すように、焼結温度1000℃で処理したセラミックスラドン放出線源では、それ以下の焼結温度で処理したセラミックスラドン放出線源に比べてラドンの放出濃度は小さかった。
【0048】
図13は、前記実施例1のRaSO4/SiCセラミックスラドン放出線源と同様にして、RaTiO3/SiCセラミックスラドン放出線源を水に浸漬したときに、水に溶出したラドンの溶出率を浸漬時間との関係で示したグラフである。二点鎖線が焼結温度600℃で焼結処理したもの、実線が焼結温度800℃で焼結処理したもの、破線が焼結温度1000℃で焼結処理したものである。
【0049】
図13から明らかな通り、何れのRaTiO3/SiCセラミックスラドン放出線源でも、浸漬開始から3時間程は溶出量の増大が見られるが、それ以降の溶出量の増大は殆どなかった。20時間後における溶出量は、最大で12%以下と、前記実施例1のRaSO4/SiCセラミックスラドン放出線源に比べてさらに低い溶出率であった。
【0050】
(比較例)
図10と図11は、比較のため、ラドン溶液を単にプレートに滴下し、乾燥しただけのものを使用し、同様のラドン放出試験をし、ラドンモニター4で測定されたラドン濃度を一定時間毎にプロットしたグラフである。図10は43.79KBq/g、0.5M-HClのRa-266水溶液を0.1mlプレートに含浸し、120℃で乾燥したものである。また、図11は43.79KBq/g、0.5M-H2SO4のRa-266水溶液を0.1mlプレートに含浸し、200℃で乾燥したものである。
【0051】
図10と図11から明らかな通り、何れの場合も、試験開始直後はある程度のラドン濃度が測定されたが、試験開始から1~4時間後には殆どラドンの濃度は測定できなくなった。これは、単にラジウム溶液を乾燥したままでは、ラジウム放出線源としての表面積が極端に小さいため、表面からのラドンの放出のみが起こり、内部からの放出が起こらないことが原因と考えられる。
【0052】
さらに、ラジウム溶液を単にプレートに滴下し、乾燥しただけのものについて、前記実施例1と同様にして水に浸漬し、ラジウムの水への溶出試験を行ったところ、最初の30分で90%以上のラジウムの溶出率が確認されている。すなわち、ラジウム溶液を単にプレートに滴下し、乾燥しただけのものでは、耐水性にも乏しいことが確認された。
【0053】
【発明の効果】
以上説明した通り、本発明によれば、多孔質のセラミックス担体に水に不溶のラジウム塩を焼結して定着させることにより、高濃度のラドンガスを長期にわたって安定して放出することができ、しかも取り扱いが容易で、耐水性の高いセラミックスラドン放出線源を得ることができる。すなわち、高濃度のラドンガスを放出する高放出性、長期にわたる実験等において、高濃度のラドンガスを安定して放出する持続性、取り扱いが容易で、耐水性及び耐放射線性の高い安定性等、ラドンによる生体に対する被曝影響の研究の分野等において要求される特性を満足したセラミックスラドン放出線源を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】RaSO4/SiCセラミックスラドン放出線源とRaTiO3/SiCセラミックスラドン放出線源とを製造する工程の例を示す概略図である。
【図2】RaSO4/SiCセラミックスラドン放出線源とRaTiO3/SiCセラミックスラドン放出線源とについて、それらのラドン放出特性をフロー方式により測定する装置の例を示す配管系統図である。
【図3】RaSO4/SiCセラミックスラドン放出線源とRaTiO3/SiCセラミックスラドン放出線源とを用いて、図3に示した測定装置により測定したラドン放出量とそれら線源の焼結温度との関係を示すグラフである。
【図4】焼結温度400℃で処理したRaSO4/SiCセラミックスラドン放出線源を用いて、図3による測定装置により測定したラドン濃度と時間との関係を示すグラフである。
【図5】焼結温度600℃で処理したRaSO4/SiCセラミックスラドン放出線源を用いて、図3による測定装置により測定したラドン濃度と時間との関係を示すグラフである。
【図6】焼結温度800℃で処理したRaSO4/SiCセラミックスラドン放出線源を用いて、図3による測定装置により測定したラドン濃度と時間との関係を示すグラフである。
【図7】焼結温度600℃で処理したRaTiO3/SiCセラミックスラドン放出線源を用いて、図3による測定装置により測定したラドン濃度と時間との関係を示すグラフである。
【図8】焼結温度800℃で処理したRaTiO3/SiCセラミックスラドン放出線源を用いて、図3による測定装置により測定したラドン濃度と時間との関係を示すグラフである。
【図9】焼結温度1000℃で処理したRaTiO3/SiCセラミックスラドン放出線源を用いて、図3による測定装置により測定したラドン濃度と時間との関係を示すグラフである。
【図10】比較のため、RaCl2 溶液をプレートに滴下して乾燥したラドン放出線源を用いて、図3による測定装置により測定したラドン濃度と時間との関係を示すグラフである。
【図11】比較のため、RaSO4 溶液をプレートに滴下して乾燥したラドン放出線源を用いて、図3による測定装置により測定したラドン濃度と時間との関係を示すグラフである。
【図12】RaSO4/SiCセラミックスラドン放出線源を水に浸漬したときのラジウムの溶出率と浸漬時間との関係を示すグラフである。
【図13】RaTi3/SiCセラミックスラドン放出線源を水に浸漬したときのラジウムの溶出率と浸漬時間との関係を示すグラフである。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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