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明細書 :希ガス回収方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3491276号 (P3491276)
公開番号 特開2001-074885 (P2001-074885A)
登録日 平成15年11月14日(2003.11.14)
発行日 平成16年1月26日(2004.1.26)
公開日 平成13年3月23日(2001.3.23)
発明の名称または考案の名称 希ガス回収方法
国際特許分類 G21F  9/02      
B01D 53/02      
B01J 19/08      
C01B 23/00      
FI G21F 9/02 511M
G21F 9/02
B01D 53/02
B01J 19/08
C01B 23/00
請求項の数または発明の数 9
全頁数 13
出願番号 特願平11-248189 (P1999-248189)
出願日 平成11年9月2日(1999.9.2)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用申請有り 1999年8月10日 社団法人日本原子力学会発行の「日本原子力学会1999年秋の大会予稿集 第▼III▲分冊」に発表
審査請求日 平成13年6月8日(2001.6.8)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】301032942
【氏名又は名称】独立行政法人放射線医学総合研究所
【識別番号】000140627
【氏名又は名称】株式会社化研
【識別番号】599071751
【氏名又は名称】小泉 彰
【識別番号】599071762
【氏名又は名称】山田 裕司
【識別番号】599071773
【氏名又は名称】下 道國
発明者または考案者 【氏名】小泉 彰
【氏名】山田 裕司
【氏名】下 道國
【氏名】蓼沼 克嘉
【氏名】野口 恒行
【氏名】戸祭 智
【氏名】石川 幸治
個別代理人の代理人 【識別番号】100081927、【弁理士】、【氏名又は名称】北條 和由
審査官 【審査官】加藤 隆夫
参考文献・文献 特開 昭63-50478(JP,A)
菅野卓治,放射性廃棄物処理におけるゼオライトの応用,粘土科学,日本,日本粘土学会,1985年 5月30日,第25巻/第1号,p.1-10
中川信行,川上仁志,行村 建,放電励起形KrFレーザの出力エネルギーに与える混合ガス分圧率の影響-光波形の観察に基づく検討-,電学論C,日本,1993年12月31日,第113巻/第2号,p.98-104
調査した分野 G21F 9/02
H05H 1/24
B01J 19/08
特許請求の範囲 【請求項1】
フッ素含有ガスを希ガスに混合させ放電励起することによって生成する励起状態の希ガス元素と活性なフッ素元素とを反応させて希ガスハロゲン化合物とし、この生成した希ガスハロゲン化合物を捕集することによって希ガスを回収することを特徴とする希ガス回収方法。

【請求項2】
ハロゲン元素がフッ素であることを特徴とする請求項1に記載の希ガス回収方法。

【請求項3】
フッ素が三塩化フッ素ClF3 、五フッ化臭素BrF5 、七フッ化ヨウ素IF7 の何れかのフッ素化剤の形態で存在し、このフッ素化剤を直接希ガスに反応させて希ガスフッ素化合物を得ることを特徴とする請求項2に記載の希ガス回収方法。

【請求項4】
フッ素が四フッ化炭素CF4 、四フッ化炭素と酸素の混合ガスCF4+O2、六フッ化硫黄SF6 、三フッ化窒素NF3 の何れかのフッ素含有ガスで存在し、このフッ素含有ガスを希ガスに混合させ放電励起することによって生成する励起状態の希ガス元素と活性なフッ素元素とを反応させて希ガスフッ素化合物を得ることを特徴とする請求項2または3に記載の希ガス回収方法。

【請求項5】
放電励起手段が無声放電、誘電体バリア放電、高電圧極短パルス放電、強誘電体充填型部分放電、沿面放電、コロナ放電若しくはこれらを組み合わせたハイブリッド放電の何れかによる大気圧状態でプラズマが発生できる手段、或いは平行平板型直流あるいは交流放電、高周波放電、電子サイクロトロン共鳴放電の何れかによる減圧状態でプラズマが発生できる手段の何れかであることを特徴とする請求項4に記載の希ガス回収方法。

【請求項6】
放電部にフッ素化リチウムLiF、フッ素化ナトリウムNaF、フッ素化カリウムKF、フッ素化セシウムCsF、フッ素化カルシウムCaF2、フッ素化アルミニウムAlF3、フッ素化マグネシウムMgF2、或いはこれら何れかのフッ素化物とセラミックスとの混合物を用いることにより、放電処理においてフッ素含有ガスを混合させずに希ガスのフッ素化合物を生成させることを特徴とする請求項4または5に記載の希ガス回収方法。

【請求項7】
放射性希ガスとして放射性キセノンガスと放射性クリプトンガスの何れかを活性なフッ素原子と反応させて放射性キセノンガス及び放射性クリプトンガスのフッ素化合物を生成することを特徴とする請求項1~6の何れかに記載の希ガス回収方法。

【請求項8】
活性炭、ゼオライト、その他無機性及び有機性多孔質物質の何れかを有するガスフィルタを用い、生成した希ガスハロゲン化合物を前記吸着材に吸着させて捕集することを特長とする請求項1~7の何れかに記載の希ガス回収方法。

【請求項9】
希ガスのハロゲン化合物を捕集した吸着材から希ガスのハロゲン化合物を再放出させ、この希ガスのハロゲン化合物を水と反応させる手段、希ガスのハロゲン化合物を熱解離させる手段、希ガスのハロゲン化合物をアルカリと反応させる手段の何れかにより、希ガスハロゲン化合物の希ガスとハロゲンの結合を解離して希ガスのみ回収することを特徴とする請求項8に記載の希ガス回収方法。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【0001】

【発明の属する技術分野】本発明は、希ガスの資源としての回収や、放射性希ガスの除去を目的とする回収に関し、従来の低温吸着法に頼っていた希ガスの回収方法に代えて、希ガスをハロゲン元素と化学反応させ希ガスハロゲン化合物とし、これを捕集して回収する希ガス回収方法に関するものである。

【0002】

【従来の技術】従来における希ガス(He、Ne、Ar、Kr、Xe、Rn)の捕集手段は、活性炭やゼオライト等の多孔質吸着材を用いる吸着法が一般的であり、しかも吸着効率を向上させるためにその吸着材を低温にする場合が多い。しかし、水分等の凝縮性成分を含む大気中の希ガスを低温吸着方式で捕集する際に、その水分が吸着材の表面多孔質部分に目詰まりしてしまい、目的の希ガスの吸着効率が極端に低下する。そのため、大気中の希ガスを効率よく捕集する場合は、まず含まれる水分を予め除去する必要がある。

【0003】
また、処理ガス量が非常に多くその処理ガス全体を低温化することが不可能な場合は、吸着材量を多くして吸着効率を稼ぐ方法が取られている。なお、活性炭やゼオライト等の多孔質吸着材中に捕集された希ガスは、低温下に保っていても連続的に流れてくる空気によって徐々に押し出されてしまう。これらのように、従来の希ガス資源の回収性の点で問題があった。

【0004】
さらに、原子力発電所や核燃料再処理工場あるいは原子力関連の研究所等の原子力施設、あるいは放射線診断や治療を行う病院及び核医学施設から放出される放射性希ガス(222Rn、220Rn、133Xe、85m88Kr)の捕集除去の場合は、深刻な問題を抱えている。それは、上記の放射性物質取扱い施設から外部の一般環境へ放射性物質を放出する濃度等の限度が法令で厳しく規制されているためである。

【0005】
これらの施設の場合でも上記と同様に活性炭やゼオライト等の多孔質吸着材を用いる吸着法に頼っているため、前記した水分の問題が避けることができない。そのため、放射性希ガスの吸着効率を向上させる場合の除去処理設備は排ガスの低温化施設が必要となるため、一般に膨大な施設規模になる。

【0006】
なお、原子力発電所から発生する放射性希ガスの中で、強い放射線を有する短半減期の放射性Xe及びKr(133Xe, 85m88Kr)の捕集除去は、希ガスホールドアップ施設としての現有設備で一応可能となっている。これらの放射性Xe及びKrは、生成量が多いが短半減期であるため、それらの半減期と処理ガス量に見合った希ガスのホールドアップ時間をまかなう吸着材量によって処理している。

【0007】
しかし、放射性希ガスの中で85Krの場合は、現実的な捕集方法が無いにも係わらずその生成量が少なく外部放出放射能としては問題視されることは少ないが、その半減期が10.7年と長いため、この現有設備では一旦捕集されても吸着材を徐々に通過してしまい、それが減衰する期間捕集しておくことは不可能なため、そのほとんどを外気大気に放出しているのが現状である。

【0008】
以上のように、これまでの希ガスの捕集法としては、多孔質吸着材による回収方法に頼っていたため、施設規模が大きく、水分の影響を受けやすいため捕集効率が低く、放射性施設において放射性希ガスのトラップが不完全であること、施設の設置や運転に掛かる経費が大きいこと、それらの理由により資源としての希ガスの価格が高いなどの面で問題が多かった。

【0009】

【発明が解決しようとしている課題】前記したように従来の低温吸着捕集法による希ガスの捕集は、希ガス元素を直接気体の状態で多孔質吸着材に物理吸着させるため捕集効率が低いこと、前記したように大気に含まれる水分が主な原因である捕集効率が低いこと等の課題があった。さらに、希ガス捕集施設の規模が大きいことにより、施設費用や捕集経費の問題などがあった。

【0010】
本発明は、従来の方式である単なる物理吸着に代わり、希ガスを化学的に反応させることによって希ガス化合物とすることによって、吸着材等の捕集効率を飛躍的に向上させること、しかも従来問題となっていた水分の影響を受けない捕集方法であること、捕集施設の規模をコンパクト化できる新しい希ガス回収方法を提供するものである。

【0011】

【課題を解決するための手段】本発明では、前記の目的を達成するため、希ガスをそのまま吸着材等で捕集するのではなく、まず希ガスをハロゲン元素と反応させて希ガスハロゲン化合物とし、この希ガスハロゲン化合物を捕集することによって希ガスを回収するようにした。そして、希ガスをハロゲン元素を反応させる手段として、励起された希ガスを活性なハロゲン元素と反応させるようにしたものである。

【0012】
すなわち、本発明による希ガス回収方法は、フッ素含有ガスを希ガスに混合させ放電励起することによって生成する励起状態の希ガス元素と活性なフッ素元素とを反応させて希ガスハロゲン化合物とし、この生成した希ガスハロゲン化合物を捕集することによって希ガスを回収するものである。ハロゲン元素として、最も一般的なのは、フッ素であり、例えば、三塩化フッ素ClF3 、五フッ化臭素BrF5 、七フッ化ヨウ素IF7 の何れかのフッ素化剤の形態で存在するフッ素化剤を直接希ガスに反応させて希ガスフッ素化合物とする。

【0013】
次の化学式(1)は、希ガス(Rn、Xe、Kr)と三塩化フッ素ClF3 との化学反応を示すものである。
Rn,Xe,Kr+ClF3 →RnF2,XeF2,KrF2+副生成物…(1

このような反応により、希ガスハロゲン化合物が生成し、この希ガスハロゲン化合物を吸着材で吸着する等して捕集する。

【0014】
また、フッ素が四フッ化炭素CF4 、四フッ化炭素と酸素の混合ガスCF4+O2、六フッ化硫黄SF6 、三フッ化窒素NF3 等のフッ素含有ガスで存在する場合、このフッ素含有ガスを希ガスとを混合させ放電励起することによって生成する励起状態の希ガス元素と活性なフッ素元素とを反応させて希ガスフッ素化合物を得ることもできる。

【0015】
次の化学式(2)は、CF4(+O2)を使用した場合の放電による希ガス(Rn、Xe、Kr)のフッ素化反応式である。化学式中の「*」マークは励起状態を示す。
Rn,Xe,Kr+CF4(+O2)→放電→*Rn,*Xe,*Kr+*F
→RnF2 ,XeF2 ,KrF2 +副生成物 …(2)
このような反応により、前記と同様にして希ガスハロゲン化合物が生成し、この希ガスハロゲン化合物を捕集する。

【0016】
前記の放電励起手段としては、無声放電、誘電体バリア放電、高電圧極短パルス放電、強誘電体充填型部分放電、沿面放電、コロナ放電若しくはこれらを組み合わせたハイブリッド放電の何れかによる大気圧状態でプラズマが発生できる手段、或いは平行平板型直流あるいは交流放電、高周波放電、電子サイクロトロン共鳴放電の何れかによる減圧状態でプラズマ発生が発生できる手段等をあげることができる。

【0017】
この場合、放電部の基材にフッ素化リチウムLiF、フッ素化ナトリウムNaF、フッ素化カリウムKF、フッ素化セシウムCsF、フッ素化カルシウムCaF2、フッ素化アルミニウムAlF3、フッ素化マグネシウムMgF2、或いはこれら何れかのフッ素化物とセラミックスとの混合物を用いることにより、放電処理において、基材から活性なフッ素元素が放出されるため、放電部においてフッ素含有ガスを混合させずに希ガスのフッ素化合物を生成させることができる。

【0018】
このような希ガス回収方法は、希ガスが放射性希ガスである場合も適用することができる。例えば、放射性キセノンガスと放射性クリプトンガスの何れかを活性なフッ素原子と反応させて放射性キセノンガス及び放射性クリプトンガスのフッ素化合物を生成し、これらの放射性希ガスのフッ素化合物を捕集する。

【0019】
前記の希ガスと活性なハロゲンとの反応による生成した希ガスハロゲン化合物を捕集する手段としては、活性炭、ゼオライト、その他無機性及び有機性多孔質物質の何れかの吸着材を有するガスフィルタを用い、この吸着材に希ガスハロゲン化合物を吸着する手段が簡便である。

【0020】
さらに、前記の捕集した希ガスハロゲン化合物を再利用するには、例えば、希ガスのハロゲン化合物を捕集した吸着材から希ガスのハロゲン化合物を再放出させ、この希ガスのハロゲン化合物を水と反応させる手段、希ガスのハロゲン化合物を熱解離させる手段、希ガスのハロゲン化合物をアルカリと反応させる手段等を採用することができる。これにより、希ガスハロゲン化合物の希ガスとハロゲンの結合を解離して希ガスのみ回収することにより、希ガス資源の効率的な回収が可能である。この方法によれば、希ガスの高濃縮が可能となる。

【0021】

【発明の実施の形態】次に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら、具体的且つ詳細に説明する。既に述べた通り、活性なフッ素元素を放出する三塩化フッ素ClF3 、五フッ化臭素BrF5 、七フッ化ヨウ素IF7 等のフッ素化剤を、直接希ガス(He、Ne、Ar、Kr、Xe、Rn)に反応させると、前述の式(1)に示す反応が進行し、希ガスハロゲン化合物が生成する。このようにして生成した希ガスハロゲン化合物を吸着材等で捕集することにより、希ガスそのものを直接吸着材で捕集するよりもはるかに効率よく物理吸着あるいは化学吸着が可能となる。

【0022】
また、活性なハロゲン元素が、四フッ化炭素CF4 、四フッ化炭素と酸素の混合ガスCF4+O2、六フッ化硫黄SF6 、三フッ化窒素NF3 、その他のフッ素含有ガス中に存在する場合、これらフッ素含有ガスを希ガスに混合させた状態で放電励起することによって、放電によって生成する希ガスの励起状態と活性なフッ素原子が反応して、式(2)に示す反応が進行し、希ガスハロゲン化合物が生成する。やはり、このようにして生成した希ガスハロゲン化合物を捕集することにより、希ガスそのものを直接吸着材で捕集するよりもはるかに効率よく物理吸着あるいは化学吸着が可能となる。

【0023】
図1は、放電により励起された状態での希ガスのフッ素化反応の原理を示す図である。セラミックス層の内部埋め込み電極と表面電極とを対向して配置し、これらに高電圧を印加することで、表面セラミックス層の表面が放電部表面となり、その表面上に沿面放電部が形成される。この沿面放電部にKr、Xe、Rn等の希ガスを送り込むと、前記放電によりこれら希ガスが励起される。また、この沿面放電部に四フッ化炭素CF4 等のフッ素含有ガスを送り込むと、放電によってフッ素含有ガスに含まれるフッ素が活性化し、沿面放電部に活性なフッ素原子の雲が形成される。この活性化された希ガスとフッ素とが沿面放電部で反応することで、希ガスハロゲン化合物が生成する。こうして生成した希ガスハロゲン化合物を吸着材に捕集する等の手段で回収する。

【0024】
前記希ガスを含むガスとフッ素含有ガスの混合ガスを放電励起する処理によって得られる希ガスフッ素化合物を生成する方法において、その放電法に特に大気圧状態でプラズマが発生できる放電法として、無声放電、誘電体バリア放電、高電圧極短パルス放電、強誘電体充填型部分放電、沿面放電、コロナ放電、これらを組み合わせたハイブリッド型大気圧放電などをあげることができる。さらに、減圧状態でプラズマ発生が行える放電法として、平行平板型直流あるいは交流放電、高周波放電、電子サイクロトロン共鳴放電などを用いることが可能である。

【0025】
図2は、前記のような放電部を用いてラドンRnを捕集する試験装置の例である。図2において左側の2系統の導入路からそれぞれマスフローコントローラ(MFC)を通してCF4 ガスと空気とが導入される。導入量は200ml/minであり、そのうち空気は最大200ml/min、残部がCF4 ガスである。より具体的には、この装置において、CF4 ガスと空気との組成は、CF4 ガスが0~7.5容積%、空気が92.5~100容積%の範囲で調整される。

【0026】
これらCF4 ガスと空気との混合ガスを、4個のRa線源(合計13.6kBq)を収納したラドン放出管に通し、ここでラドンを含む混合ガスとされる。その後、このラドンを含む混合ガスは、コロナ放電部を収納したRn除去系に送られる。

【0027】
このRn除去系では、放電電源により電極に最大10kVの交流電圧が印加された状態でコロナ放電され、既に述べた原理により、前記CF4 ガスとラドンとが反応され、フッ化ラドンが生成する。この生成したフッ化ラドンが活性炭を有する吸着材(Rnトラップ)に送られ、吸着された後、ラドンモニタによって排ガスのラドン量が計測され、流量計(FM)及びポンプを経て、さらにバックアップフィルタを通して排気される。ラドン除去系から先とラドンモニタから先の流路の気圧は、バラトロンにより制御される。なお、前記のラドン放出部にはそれを通過しないバイパス流路が設けられ、比較のため、ラドン放出部を通ったラドンを含むガスとラドン放出部を通らないガスとが処理及び計測できるようになっている。

【0028】
図3は、前記のような放電部を用いて85Kr、133Xe を捕集する試験装置の例である。図2では、ガスをラドン放出部に通してラドンをガス中に含ませたが、図3では、窒素ガスをキャリアガスとして85Kr、133Xe をコロナ放電部を備えるKr、Xe除去系に送り出す。また、この装置では、吸着材(Xr、Xeトラップ)の後段にガスクロマトクロマトグラフィーを配置、これに混合ガスを通過させる。ガスクロマトクロマトグラフィーにはレコーダを備えた比較計が備えられており、吸着材から排出される混合ガス中のXr、Xeの含有量を計測する。それ以外の点は、図2に示す装置と同様である。

【0029】
図4は、放電部の基材を、フッ素化リチウムLiF、フッ素化ナトリウムNaF、フッ素化カリウムKF、フッ素化セシウムCsF、フッ素化カルシウムCaF2 、フッ素化アルミニウムAlF3 、フッ素化マグネシウムMgF2 等のフッ素化合物を含む材料で形成した例であり、フッ素含有ガスを用いずに希ガスのフッ素化反応を行うことができる。例えば、放電部の基材を、前記のフッ素化物とアルミナやシリカ等とを混合したセラミックス層で形成する。

【0030】
このようにして、フッ素化合物を含むセラミックス層で放電部を形成することにより、放電によって活性なフッ素原子がそれらセラミックス層から生成する。セラミックス層から生成する活性なフッ素原子は希ガスと反応し、しかも未反応の余分なフッ素原子はセラミックス層に再結合する。そのため、この方式によれば、放電処理においてフッ素含有ガスを混合させずに希ガスのフッ素化合物を生成させることが可能である。こうして生成した希ガスハロゲン化合物を吸着材で捕集、希ガスを回収することは前述の通りである。

【0031】
図5は、前記のような放電部を使用した希ガスの回収装置の要部を概念的に示すものである。図5は「内側沿面放電法」とも言うべきものであり、前述のようなフッ素塩(MeFx )を含むセラミックスによる円筒形の基材を形成し、この基材の中に同心円状に埋め込み電極と表面電極とを埋設する。円筒形の希ガスの流路の中に、前記の基材を配置し、前記埋め込み電極と表面電極との間に高電圧交流電源(HV-AC)を印加し、放電させる。流路を通して図の左方から基材の中にKr、Xe、Rn等の希ガスを送り込み、前述の原理により希ガスのフッ素化合物を生成する。こうして生成したフッ素化合物を活性炭(AC)等の吸着材により吸着し、回収する。

【0032】
他方、図5は「外側沿面放電法」とも言うべきものであり、前述のようなフッ素塩(MeFx )を含むセラミックスによる円筒形の基材を形成し、この基材の中に同心円状に外側電極を埋設する。さらに、この基材の内側にコアに巻回したコイル状の内側電極を配置する。円筒形の希ガスの流路の中に、前記の基材と内側電極とを同心状に配置し、基材の中の外側電極とその内側の内側電極との間に高電圧交流電源(HV-AC)を印加し、放電させる。流路を通して図の左方から基材と内側電極との間隙にKr、Xe、Rn等の希ガスを送り込み、前述の原理により希ガスのフッ素化合物を生成する。生成したフッ素化合物は、活性炭(AC)等の吸着材により吸着し、回収する。

【0033】
図6は「誘電体励起法」を採用した例を示す。前記のようなフッ素塩(MeFx )を含む多孔質の強誘電体セラミックスで基材を形成し、この基材を一対の電極で挟む。円筒形の希ガスの流路の中に、前記電極が流れの方向に対向するように配置し、これら電極の間に高電圧交流電源(HV-AC)を印加し、放電させる。図6の下の拡大図に示すように、電極により形成される電界によって、強誘電体の粒子の間の空隙にグロー放電が起こる。この状態で、図6の上の全体図に示すように、流路を通して図の左方から基材を通過するようにKr、Xe、Rn等の希ガスを送り込み、前述の原理により希ガスのフッ素化合物を生成する。生成したフッ素化合物は、活性炭(AC)等の吸着材により吸着し、回収する。

【0034】
図7は、円筒形の多孔質体からなる基材を用い、その外側から希ガスを導入し、放電状態で励起するようにした例である。円筒形の多孔質セラミックスフィルタの外周に、フッ素元素を含む多孔質のセラミックス層を同心状に形成し、これらの多孔質セラミックスフィルタと多孔質のセラミックス層との間にコイル状(スパイラル)の放電極を埋設する。さらに、多孔質セラミックスフィルタの中心に棒状の中心電極を形成し、この中心電極と放電極との間に高電圧交流電源から放電電圧を印加することにより、多孔質セラミックスフィルタと多孔質のセラミックス層とにグロー放電が起こる。この状態で、多孔質のセラミックス層の外側から多孔質セラミックスフィルタの内側に通過するようにKr、Xe、Rn等の希ガスを送り込み、前述の原理により希ガスのフッ素化合物を生成する。生成したフッ素化合物は、吸着材により吸着し、回収する。

【0035】
図8は、放電部にフッ素含有ガスを直接送り込まず、沿面放電部にKr、Xe、Rn等の希ガスのみを送り込み、放電によりこれら希ガスを励起し、活性化させる方法の原理図である。放電部とは別に設けたフッ素化合物を含む活性化したフッ素原子を放出するトラップに活性化した希ガスを通し、このトラップにおいて希ガスとフッ素とを反応させ、希ガスのハロゲン化合物を生成させるものである。

【0036】
以上の希ガスのフッ素化処理については、元来放射性であるラドンガスのみならず放射性キセノンガス及び放射性クリプトンガスなどの気体の捕集除去法としても有効である。図9は、本発明による希ガス回収方法を、放射性希ガスの排気系処理システムに適用した例である。

【0037】
図9のcase-1は、実験室などの少量排ガス処理の場合に有効なシステムであり、前述の図1の原理を使用したフッ素元素を含むガスを導入する方式のものである。例えば、実験用のテストチャンバからフィルタを通してプラズマコロナ放電反応部にラドンRnを気相で送り込むと共に、CF4、SF6等のフッ素含有ガスをプラズマコロナ放電反応部に送り込む。プラズマコロナ放電により、前記ラドンRnとフッ素Fとを励起し、活性化させて反応させ、ラドンのフッ素化合物を生成させる。そしてこの生成したラドンのフッ素化合物をバックフィルタで吸着させ、清浄な空気を排出する。

【0038】
図9のcase-2は、実験建屋などの大量排ガス処理の場合に有効なシステムであり、前述の図4の原理を使用したフッ素元素を含むガスを導入する方式のものである。例えば、実験用のテストチャンバからフィルタを通してプラズマコロナ放電反応部にラドンRnを気相で送り込む。プラズマコロナ放電反応部には、前述したようなフッ素化合物(フッ素塩)を含むセラミックス基材が使用されており、プラズマコロナ放電により、前記送り込まれたラドンRnと基材に含まれるフッ素Fとを励起し、活性化させて反応させ、ラドンのフッ素化合物を生成させる。そしてこの生成したラドンのフッ素化合物をバックフィルタで吸着させ、清浄な空気を排出する。

【0039】
生成した希ガスハロゲン化合物の捕集には、活性炭、ゼオライト、その他無機性及び有機性多孔質物質等を捕集用のガスフィルタとして用いることが可能である。さらに、希ガスハロゲン化合物を捕集した吸着材から希ガスを資源として回収し、再利用を図るには、例えば、希ガスのハロゲン化合物を多量に捕集した吸着材から加熱や薬剤添加によって再度放出させ、その希ガスハロゲン化合物を水と反応させる、その希ガスハロゲン化合物を熱解離させる、或いは希ガスハロゲン化合物をアルカリと反応させる等の方法により、希ガスハロゲン化合物の希ガスとハロゲンの結合を解離して希ガスのみ回収する。これにより、希ガス資源の効率的な回収が可能である。この方法によれば、希ガスの高濃縮が可能となる。

【0040】

【実施例】次に、本発明の実施例について、具体的数値をあげて説明する。
(実施例1:ラドンガスのフッ素系ガス注入放電処理による捕集)図2に示す装置を使用し、ラドンガス放出線源として10~40%のラドンガス放出率を有する13.6 kBqの 226Raを焼結担持した炭化珪素の多孔質セラミックス体(特願平11-144520号)を作成し、ガスを通気できる構造のラドンガス放出用容器に収納した。

【0041】
このラドンガス放出用容器に、5容積%の四フッ化炭素(CF4 )と、95容積%の大気を含む混合ガスを、200ml/minの流量で流し、ラドンのα線計測値が約40カウント/分の一定濃度のラドンガスを含む混合ガスを調整した。この混合ガスをほぼ大気圧状態で沿面放電型のプラズマ反応器により処理した。

【0042】
沿面放電部の容積は約250mlを有し、沿面放電条件は8~10kV(ピーク・ピーク間)、10kHzで放電を行い、処理した混合ガスを吸着剤(Rnトラップ材)に送り、生成したフッ化ラドンを吸着した。この吸着材としては、破砕状の24/48メッシュの活性炭を用いた。そして、この吸着材の後段にガスフロータイプのラドンモニタを設置し、ラドンガスの捕集効率を評価した。この結果を図10に示す。

【0043】
図10に示す結果の通り、放電を行わない処理前の混合ガス中のラドンのBGレベルは、平均で411c/10minであったが、放電を開始し、処理を行った混合ガス中のラドンのBGレベルは、6~10c/10minとなった。すなわち、通常の環境において大気中に含まれるRnの含有量であるバックグラウンド(10Bq/m3 前後)の約100倍(1kBq/m3 )のラドンガスを含む混合ガスを、前記の放電処理によって、概ねバックグラウンドレベルの10~20Bq/m3 にまで低減することができたものである。

【0044】
(実施例2:キセノンガスのフッ素系ガス注入放電処理による捕集)図3に示す装置を使用し、四フッ化炭素(CF4)を5容積%含む通常の大気空気にXeを約150ppmになるように添加し、この混合ガスを容積約250mlの放電反応部(X除去系)に200ml/分の流量で循環通気した。

【0045】
この沿面放電部では、8~10kV(ピーク・ピーク間)、10kHzで沿面放電を行い、処理した混合ガスを吸着剤(Xeトラップ材)に送り、生成したフッ化キセノンを吸着した。この吸着材としては、破砕状の24/48メッシュの活性炭を用いた。

【0046】
前記の沿面放電処理は常温、大気圧状態で行い、沿面放電を70分間続けた後、放電を停止した。この処理の間中、活性炭トラップの出口ガスを定期的にガスクロマトグラフィーで測定し、Xe濃度の変化を測定した。その結果を図11に示す。

【0047】
図11に示す結果の通り、この放電処理によってXe濃度が放電を行う前の初期値の約70%低下した。しかも、試験終了後も吸着材(トラップ)に空気のみを供給し、吸着材からのXeの再放出現象の有無を確認したが、試験終了後も吸着材からのXeの再放出長時間見られなかった。この結果から、Xeは吸着材中に化学的にトラップされ安定に保持されているものと見られる。

【0048】

【発明の効果】以上説明した通り、本発明によれは、フッ素化剤やフッ素系ガスの放電処理によって、希ガスをハロゲン化合物特にフッ素化合物に変換することによって、吸着材への捕集効率を飛躍的に向上させること、しかも従来問題となっていた水分の影響を受けない捕集方法であること、捕集施設の規模をコンパクト化できること、などの特長を有する新しい希ガス捕集回収方法を得ることができる。

【0049】
本発明による希ガス回収方法は、ラドンガス、放射性キセノンガス、放射性クリプトンガスなどの放射性希ガスの捕集除去法としても有効であ。さらに、希ガスハロゲン化合物の希ガスとハロゲンの結合を解離処理することにより、希ガス資源を効率的に濃縮し回収することも可能である。
図面
【図1】
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【図10】
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【図11】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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