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明細書 :大環状ピリジノファンの合成方法及びこの方法により合成された大環状ピリジノファン

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4431748号 (P4431748)
公開番号 特開2007-137826 (P2007-137826A)
登録日 平成22年1月8日(2010.1.8)
発行日 平成22年3月17日(2010.3.17)
公開日 平成19年6月7日(2007.6.7)
発明の名称または考案の名称 大環状ピリジノファンの合成方法及びこの方法により合成された大環状ピリジノファン
国際特許分類 C07D 491/22        (2006.01)
C07D 213/64        (2006.01)
FI C07D 491/22 CSP
C07D 213/64
請求項の数または発明の数 5
全頁数 13
出願番号 特願2005-334285 (P2005-334285)
出願日 平成17年11月18日(2005.11.18)
審査請求日 平成18年2月7日(2006.2.7)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504145364
【氏名又は名称】国立大学法人群馬大学
発明者または考案者 【氏名】猪熊 精一
【氏名】八塚 貴之
【氏名】西村 淳
個別代理人の代理人 【識別番号】100085372、【弁理士】、【氏名又は名称】須田 正義
審査官 【審査官】渕野 留香
参考文献・文献 特表平10-508036(JP,A)
国際公開第2005/095408(WO,A1)
特表平08-511003(JP,A)
特開平06-194668(JP,A)
特開平06-239854(JP,A)
NEWKOME,G.R. et al,Chemistry of heterocyclic compounds. 23. Synthesis of multiheteromacrocycles possessing 2,6-pyridino subunits connected by carbon-oxygen linkages,Journal of Organic Chemistry,1977年,Vol.42, No.9,pp.1500-1508
CHAMBERS,R.D. et al,Polyhalogenated heterocyclic compounds. Part 52. Macrocycles from 3,5-dichloro-2,4,6-trifluoropyridine,Journal of Fluorine Chemistry,2005年 7月,Vol.126, No.7,pp.1002-1008
化学大辞典2,共立出版,1987年,pp.728-729
特許請求の範囲 【請求項1】
2,6-ジブロモピリジン、4-アルキル-2,6-ジブロモピリジン、4-(ω-ブロモアルキル)-2,6-ジブロモピリジン、4-オリゴオキシエチレン-2,6-ジブロモピリジン、4-アルキルカルボン酸ナトリウム-2,6-ジブロモピリジン、4-アルキルスルホン酸ナトリウム-2,6-ジブロモピリジン又は4-モノアルキルエステルスルホン酸ナトリウム-2,6-ジブロモピリジンからなるピリジン環を有する化合物とエチレングリコール、カテコール、レゾルシノール又は1,3-ジヒドロキシナフタレンとを反応させ、前記ピリジン環を有する化合物の6位のみにエチレングリコール、カテコール、レゾルシノール又は1,3-ジヒドロキシナフタレンが置換した2,6-ジブロモピリジンの誘導体を得る工程と、
前記2,6-ジブロモピリジンの誘導体からなる二官能性モノマーを含む溶液を添加物を含む分散液に滴下する工程と、
前記モノマーを含む溶液を滴下した添加物を含む分散液を加熱することにより、前記モノマーの多量体から構成され、内部に空孔を有し、3つのピリジン環を含む大環状体を合成する工程と
を含むことを特徴とする大環状ピリジノファンの合成方法。
【請求項2】
添加物が水素化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化セシウム、硝酸銀、タングステン(VI)誘導体及びパラジウム(II)誘導体からなる群より選ばれた1種又は2種以上の金属カチオンである請求項1記載の合成方法。
【請求項3】
加熱が溶液並びに分散液中に含まれる溶媒の沸点近傍の温度により行われる請求項1記載の合成方法。
【請求項4】
溶媒が水と界面活性剤を含むか、有機溶媒であるか、或いは水と有機溶媒の2相液である請求項記載の合成方法。
【請求項5】
請求項1ないしいずれか1項に記載の合成方法により合成された大環状ピリジノファン。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、簡便に大環状ピリジノファンを合成する方法及びこの方法により合成された新規な大環状ピリジノファンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のピリジノファン化合物として、アミノ酸のラセミ化触媒に用いるピリジノファン化合物が開示されている(例えば、特許文献1及び2参照。)。特許文献1では、α4、3-O-イソプロピリデン-α2-ヒドロキシピリドキソールをハロゲン化剤で処理してジクロル体を得る工程と、このジクロル体をジチオールと縮合せしめて、イソプロピリデンジチア体を得る工程と、イソプロピリデンジチア体を加水分解してジチアジオール体を得る工程と、ジチアジオール体を酸化剤で酸化した後、加水分解を行うことでラセミ体化合物を得る工程とからピリジノファン化合物を製造している。また、特許文献2では、α4、3-O-イソプロピリデン-α2-ヒドロキシピリドキシンをハロゲン化剤で処理したジハロゲノ体をアルカリの存在下、3,3-ジメチル-1,5-ペンタンジチオールと縮合せしめてイソプロピリデンジチア体を得る工程と、得られたイソプロピリデンジチア体を加水分解してジチアジオール体を得る工程と、ジチアジオール体を有機溶媒中1級アミンの存在下、酸化剤を用いて酸化した後、生じたアルデヒドのシツフ塩基を加水分解してラセミ体であるピリジノファン化合物を得る工程から合成される。この合成方法により、アンサ鎖中央に側鎖を導入したピリジノファン化合物が得られる。

【特許文献1】特開昭53-37690号公報(特許請求の範囲(7)、第5頁左上欄第20行目~左下欄第2行目、第6頁左下欄第1行~第2行目)
【特許文献2】特開昭56-122385号公報(特許請求の範囲(4)、第3頁右上欄第3行目~右下欄第2行目)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記特許文献1及び特許文献2に示されるピリジノファン化合物は、3段階以上の反応を経なければ合成することができないため煩雑であり、大量合成には適していなかった。上記特許文献1及び特許文献2に示されるピリジノファン化合物は触媒用途に限定されており、1つの芳香核のみを有する構造であるため、分子内の移動自由度が極めて高く、金属カチオン等との錯体を形成する等の用途には適していなかった。
【0004】
本発明の目的は、簡便に大環状ピリジノファンを合成する方法及びこの方法により合成された新規な大環状ピリジノファンを提供することにある。
本発明の別の目的は、その内部に形成された空孔が金属カチオン等との選択的親和性に優れた新規な大環状ピリジノファンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係る発明は、2,6-ジブロモピリジン、4-アルキル-2,6-ジブロモピリジン、4-(ω-ブロモアルキル)-2,6-ジブロモピリジン、4-オリゴオキシエチレン-2,6-ジブロモピリジン、4-アルキルカルボン酸ナトリウム-2,6-ジブロモピリジン、4-アルキルスルホン酸ナトリウム-2,6-ジブロモピリジン又は4-モノアルキルエステルスルホン酸ナトリウム-2,6-ジブロモピリジンからなるピリジン環を有する化合物とエチレングリコール、カテコール、レゾルシノール又は1,3-ジヒドロキシナフタレンとを反応させ、上記ピリジン環を有する化合物の6位のみにエチレングリコール、カテコール、レゾルシノール又は1,3-ジヒドロキシナフタレンが置換した2,6-ジブロモピリジンの誘導体を得る工程と、2,6-ジブロモピリジンの誘導体からなる二官能性モノマーを含む溶液を添加物を含む分散液に滴下する工程と、モノマーを含む溶液を滴下した添加物を含む分散液を加熱することにより、モノマーの多量体から構成され、内部に空孔を有し、3つのピリジン環を含む大環状体を合成する工程とを含むことを特徴とする大環状ピリジノファンの合成方法である。
請求項1に係る発明では、上記工程を経ることにより、新規な大環状ピリジノファンを簡便に合成することができる。
【0006】
請求項に係る発明は、請求項1ないしいずれか1項に記載の合成方法により合成された大環状ピリジノファンである。
請求項に係る発明では、本発明の合成方法により合成された大環状ピリジノファンは、その内部に空孔を有する新規な物質であり、その用途としてカチオン用錯化剤或いはアニオン用錯化剤、触媒、輸送担体、抗菌剤等に適用可能である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の大環状ピリジノファンの合成方法は、2,6-ジブロモピリジン、4-アルキル-2,6-ジブロモピリジン、4-(ω-ブロモアルキル)-2,6-ジブロモピリジン、4-オリゴオキシエチレン-2,6-ジブロモピリジン、4-アルキルカルボン酸ナトリウム-2,6-ジブロモピリジン、4-アルキルスルホン酸ナトリウム-2,6-ジブロモピリジン又は4-モノアルキルエステルスルホン酸ナトリウム-2,6-ジブロモピリジンからなるピリジン環を有する化合物とエチレングリコール、カテコール、レゾルシノール又は1,3-ジヒドロキシナフタレンとを反応させ、上記ピリジン環を有する化合物の6位のみにエチレングリコール、カテコール、レゾルシノール又は1,3-ジヒドロキシナフタレンが置換した2,6-ジブロモピリジンの誘導体を得る工程と、2,6-ジブロモピリジンの誘導体からなる二官能性モノマーを含む溶液を添加物を含む分散液に滴下する工程と、モノマーを含む溶液を滴下した添加物を含む分散液を加熱することにより、モノマーの多量体から構成され、内部に空孔を有し、3つのピリジン環を含む大環状体を合成する工程とを含むことを特徴とする。上記工程を経ることにより、新規な大環状ピリジノファンを簡便に合成することができる。
また、上記合成方法により得られた本発明の大環状ピリジノファンは、その内部に空孔を有する新規な物質であり、その用途としてカチオン用錯化剤或いはアニオン用錯化剤、触媒、輸送担体、抗菌剤等に適用可能である。

【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
次に本発明を実施するための最良の形態を説明する。
本発明者らは、大環状ピリジノファンを合成するに際し、所定の構造を有する二官能性モノマーを単独基質として適切な条件設定のもとで反応を行えば、様々な性質を有し、機能性に優れた新規な大環状ピリジノファンを簡便に合成することができるとの知見を得た。本発明の大環状ピリジノファンの合成方法は、2,6-ジブロモピリジンの誘導体からなる二官能性モノマーから、内部に空孔を有する大環状ピリジノファンを合成する方法である。
【0009】
2,6-ジブロモピリジンの誘導体としては、ピリジン環を有する化合物の6位のみにエチレングリコール、カテコール、レゾルシノール又は1,3-ジヒドロキシナフタレンが置換した化合物が好適である。上記置換化合物は二官能性を有し、本発明の合成方法に適する。ピリジン環を有する化合物の6位のみにエチレングリコールを置換した化合物を用いて合成された大環状ピリジノファンは、アルカリ及びアルカリ土類金属だけでなく、重金属及び遷移金属イオンに対する高い親和性に基づいた優れた機能を有する。またピリジン環を有する化合物の6位のみにカテコールを置換した化合物を用いて合成された大環状ピリジノファンは、エチレングリコールを置換した化合物を用いて合成された大環状ピリジノファンに比べて、親油性が増すとともに、更に分子内の移動自由度に制限が加わるため、ゲスト選択性が向上するものと考えられる。またピリジン環を有する化合物の6位のみにレゾルシノールを置換した化合物を用いて合成された大環状ピリジノファンは、その構造に含まれるベンゼン環が水平面に対して垂直な配座をとることが可能であり、カリックスアレーン類のような筒状構造を形成できるものと考えられる。これにより、カチオン-π相互作用により、その空孔内にカチオン種を取り込むことができるだけでなく、有機分子も取り込むことができるものと考えられる。またピリジン環を有する化合物の6位のみに1,3-ジヒドロキシナフタレンを置換した化合物を用いて合成された大環状ピリジノファンは、その構造に含まれるナフタレン環が水平面に対して垂直な配座をとることが可能である。従って、ベンゼン環よりも深い筒状構造を形成するのに有効であり、ゲスト化学種である各種カチオンに対して強いπ電子相互作用を示すとともに、有機分子に対する親和性も多様化することが期待される。
【0010】
ピリジン環を有する化合物のうち、2,6-ジブロモピリジンの4位に各種置換基を導入することにより、様々な性質を有する大環状ピリジノファンを得ることができる。本発明の合成方法に好適な二官能性モノマーを構成するピリジン環を有する化合物としては、2,6-ジブロモピリジン、4-アルキル-2,6-ジブロモピリジン、4-(ω-ブロモアルキル)-2,6-ジブロモピリジン、4-オリゴオキシエチレン-2,6-ジブロモピリジン、4-アルキルカルボン酸ナトリウム-2,6-ジブロモピリジン、4-アルキルスルホン酸ナトリウム-2,6-ジブロモピリジン又は4-モノアルキルエステルスルホン酸ナトリウム-2,6-ジブロモピリジンが挙げられる。具体的には、ピリジン環を有する化合物のうち、4-アルキル-2,6-ジブロモピリジンを用いることで得られる大環状ピリジノファンは親油性の性質を示し、4-(ω-ブロモアルキル)-2,6-ジブロモピリジンを用いることで得られる大環状ピリジノファンは親水性(カチオン性)の性質を示し、4-オリゴオキシエチレン-2,6-ジブロモピリジンを用いることで得られる大環状ピリジノファンは親水性(非イオン性)の性質を示し、4-アルキルカルボン酸ナトリウム-2,6-ジブロモピリジン、4-アルキルスルホン酸ナトリウム-2,6-ジブロモピリジン又は4-モノアルキルエステルスルホン酸ナトリウム-2,6-ジブロモピリジンを用いることで得られる大環状ピリジノファンは親水性(アニオン性)の性質を示す。
【0011】
次に、2,6-ジブロモピリジンの誘導体からなる二官能性モノマーの合成反応を、2,6-ジブロモピリジンの6位のみにエチレングリコールが置換した2-ブロモ-6-ヒドロキシエトキシピリジンの合成反応を具体例として説明する。
先ず、水素化ナトリウムをn-ヘキサン及びテトラヒドロフラン(以下、THFという。)で洗浄した後、この洗浄した水素化ナトリウムを所定量のTHFに分散させて水素化ナトリウム分散液を調製する。またエチレングリコールをTHFに溶解してエチレングリコール溶解液を調製する。また2,6-ジブロモピリジンをN,N-ジメチルホルムアミド(以下、DMFという。)に溶解して2,6-ジブロモピリジン溶解液を調製する。次いで、調製した水素化ナトリウム分散液を窒素雰囲気下、室温で攪拌しながら、この分散液にエチレングリコール溶解液を30~60分間かけてゆっくりと滴下する。滴下後は40~50℃、好ましくは50℃程度の温度に加温して30分ほど更に攪拌した後、室温まで冷却する。次に、室温にまで冷却した液に2,6-ジブロモピリジン溶解液を30~60分間かけてゆっくりと滴下し、滴下後は65~70℃、好ましくは70℃程度の温度に加温して3時間ほど攪拌することにより反応させる。反応が完全に完了したか、即ち滴下した2,6-ジブロモピリジンが完全に消費されたかを薄層クロマトグラフィー(Thin Layer Chromatography、以下TLCという。)により確認し、反応完了確認後は、反応液を室温にまで冷却する。次に、冷却した反応液に、水-THFの混合液(水とTHFの重量比=1:10)を加えて反応液中に残存する水素化ナトリウムを分解する。更に所定量の水を投入し、ジクロロメタンで3回程度抽出する。続いて、抽出後の有機層を所定量の水で3回程度洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥する。溶媒を留去した後の残渣は、シリカゲルクロマトグラフィー(トルエン-酢酸エチル傾斜混合溶媒)で単離精製することにより、所望の化合物が得られる。2,6-ジブロモピリジンの6位のみにエチレングリコールが置換した2-ブロモ-6-ヒドロキシエトキシピリジンの反応式を次の式(1)に示す。
【0012】
【化1】
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【0013】
また、2,6-ジブロモピリジンの6位のみにカテコール、レゾルシノール又は1,3-ジヒドロキシナフタレンが置換する反応を次の式(2)~式(4)にそれぞれ示す。式(2)~式(4)に示す置換反応は上記説明で述べた式(1)に示すエチレングリコールに代えて、カテコール、レゾルシノール又は1,3-ジヒドロキシナフタレンを用いることで行うことができる。
【0014】
【化2】
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【0015】
【化3】
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【0016】
【化4】
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【0017】
本発明の大環状ピリジノファンの合成方法は、2,6-ジブロモピリジンの誘導体からなる二官能性モノマーを含む溶液を添加物を含む分散液に滴下する工程と、このモノマーを含む溶液を滴下した添加物を含む分散液を加熱することにより、モノマーの多量体から構成され、内部に空孔を有する大環状体を合成する工程とを含むことを特徴とする。上記工程を経ることにより、新規な大環状ピリジノファンを簡便に合成することができる。
【0018】
本発明の合成方法に使用する添加物としては、水素化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化セシウム、硝酸銀、タングステン(VI)誘導体及びパラジウム(II)誘導体からなる群より選ばれた1種又は2種以上の金属カチオンが挙げられる。タングステン(VI)誘導体としてはタングステン酸が、パラジウム(II)誘導体としては塩化パラジウムが挙げられる。また、二官能性モノマーを含む溶液に使用する溶媒、添加物を含む分散液に使用する溶媒としては、水と界面活性剤を含むか、有機溶媒であるか、或いは水と有機溶媒の2相液が用いられる。水と界面活性剤を含む液に使用する界面活性剤としては、オリゴオキシエチレン系非イオン界面活性剤、アミンイミド系非イオン界面活性剤、第四級アンモニウム塩系陽イオン界面活性剤、カルボン酸塩系陰イオン界面活性剤、スルホン酸塩系陰イオン界面活性剤、スルホンエステル酸塩系陰イオン界面活性剤が挙げられる。有機溶媒としては、THF、DMF、DMSO(ジメチルスルホキシド)、ベンゼン、トルエン、キシレン等が挙げられる、水と有機溶媒の2相液としては、水とトルエン、水とベンゼンの2相液等が挙げられる。
【0019】
次に、本発明の大環状ピリジノファンの合成方法を、二官能性モノマーとして2-ブロモ-6-ヒドロキシエトキシピリジンを用いた合成方法を具体例として説明する。
先ず、添加物を含む分散剤として、水素化ナトリウムをn-ヘキサン及びTHFで洗浄した後、この洗浄した水素化ナトリウムを所定量のTHFに分散させ、更にヨウ化ナトリウムを添加して水素化ナトリウム及びヨウ化ナトリウムを含む分散液を調製する。また、二官能性モノマーを含む溶液として、2-ブロモ-6-ヒドロキシエトキシピリジンをTHFに溶解して2-ブロモ-6-ヒドロキシエトキシピリジンを含む溶液を調製する。
【0020】
次に、図1に示すような反応装置を用いて、二官能性モノマーを含む溶液を添加物を含む分散液に滴下する。図1に示す反応装置10は、マグネチックスラーラー11上に油浴12が設けられ、内部に油が貯留された油浴12に三つ口フラスコ13が浸されてフラスコ内に入れた液体を加温可能な構成を有している。なお、図示しないがフラスコ13内にはスターラーチップが投入され、マグネチックスラーラー11によりフラスコ13内に入れた液体を所定の回転数で攪拌可能な構成を有している。また、三つ口フラスコ13の中央口にはリービッヒ冷却管14の下端が、左右の口には滴下漏斗16及び温度計17がそれぞれ接続されている。リービッヒ冷却管14は、上下を連通する蛇腹状の内管と、下側面に設けられた冷却水供給口及び上側面に設けられた冷却水排出口を介して冷却水を流通させる外管から構成される。リービッヒ冷却管14の上端にはN2ガスが封入された風船18が取り付けられて、フラスコ13内をN2ガス雰囲気に保つ構成となっている。
【0021】
図1に示す三つ口フラスコ13内に先に調製した水素化ナトリウム及びヨウ化ナトリウムを含む分散液を入れ、2-ブロモ-6-ヒドロキシエトキシピリジンを含む溶液を滴下漏斗16内に注入し、フラスコ13内の図示しないスターラーチップを回転させて、分散液を窒素雰囲気下、室温で攪拌しながら、滴下漏斗16よりフラスコ13内の分散液に2-ブロモ-6-ヒドロキシエトキシピリジンを含む溶液を30~60分間、好ましくは30分間程度かけてゆっくりと滴下する。溶液の滴下後は油浴12によりフラスコを加熱して分散液を65~70℃に維持し、100~110時間、好ましくは110時間程度加熱還流を行って反応を進行させる。加熱還流は溶液並びに分散液中に含まれる溶媒の沸点近傍の温度により行われる。この加熱により、分散液中の溶媒が蒸発してフラスコ13上部に接続されたリービッヒ冷却管14の内管内に到達する。リービッヒ冷却管14では外管に冷却水を流通させているため、内管に到達した溶媒蒸気は冷却されて、フラスコ内へと還流する。この加熱還流では、フラスコ内の分散液の温度を温度計17により目測しながら油浴12による加熱を制御することにより行われる。反応終了後は、加熱を停止し、フラスコ内の反応液を室温にまで冷却する。次に、冷却した反応液に、水-THFの混合液(水とTHFの重量比=1:10)を加えて反応液中に残存する水素化ナトリウムを分解する。更に所定量の水を投入し、ジクロロメタンで3回程度抽出する。続いて、抽出後の有機層を所定量の水で3回程度洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥する。溶媒を留去した後の残渣は、シリカゲルクロマトグラフィー(トルエン-酢酸エチル傾斜混合溶媒)で単離精製することにより、2-ブロモ-6-ヒドロキシエトキシピリジンを用いた本発明の大環状ピリジノファンを含む合成物が得られる。このように本発明の合成方法では、1段階の反応で二官能性モノマーから大環状ピリジノファンを簡便に合成することができる。更にこの合成物は液体クロマトグラフィーによって精製される。二官能性モノマーとして2-ブロモ-6-ヒドロキシエトキシピリジンを用いて大環状ピリジノファンを合成する反応を式(5)に示す。
【0022】
【化5】
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【0023】
また、二官能性モノマーとして、2,6-ジブロモピリジンの6位のみにカテコールが置換した化合物、2,6-ジブロモピリジンの6位のみにレゾルシノールが置換した化合物、並びに2,6-ジブロモピリジンの6位のみに1,3-ジヒドロキシナフタレンが置換した化合物を用いて大環状ピリジノファンを合成する反応を式(6)~式(8)にそれぞれ示す。式(6)~式(8)に示す合成反応は上記説明で述べた式(5)に示す2,6-ジブロモピリジンの6位のみにエチレングリコールが置換した化合物(2-ブロモ-6-ヒドロキシエトキシピリジン)に代えて、2,6-ジブロモピリジンの6位のみにカテコール、レゾルシノール、並びに1,3-ジヒドロキシナフタレンが置換した化合物を用いることで行うことができる。
【0024】
【化6】
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【0025】
【化7】
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【0026】
【化8】
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【0027】
また、二官能性モノマーとして、4-アルキル-2,6-ジブロモピリジン、4-(ω-ブロモアルキル)-2,6-ジブロモピリジン、4-オリゴオキシエチレン-2,6-ジブロモピリジン、4-アルキルカルボン酸ナトリウム-2,6-ジブロモピリジン、4-アルキルスルホン酸ナトリウム-2,6-ジブロモピリジン、並びに4-モノアルキルエステルスルホン酸ナトリウム-2,6-ジブロモピリジンからなるピリジン環を有する化合物の6位のみにエチレングリコールが置換した化合物を用いて大環状ピリジノファンを合成する反応を式(9)~式(14)にそれぞれ示す。
【0028】
【化9】
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【0029】
【化10】
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【0030】
【化11】
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【0031】
【化12】
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【0032】
【化13】
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【0033】
【化14】
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【0034】
このように本発明の合成方法では、イオン径の異なる添加物を使用して大環状ピリジノファンを合成することにより、各種の空孔径を有する大環状のピリジノファンを簡便に合成することができる。例えば、二官能性モノマーとして2-ブロモ-6-ヒドロキシエトキシピリジンを用いて合成された大環状ピリジノファンは、その内部に形成された空孔が約4Åであり、エチレングリコールを各ピリジン環を繋ぐ連結部とするので、分子内の移動自由度が著しく制限されるため、ピリジノファン内の空孔とカチオン等との選択的親和性に優れる。即ち、本発明の大環状ピリジノファンは錯化剤の用途として好適である。また、相間移動触媒等の用途にも適用できると考えられる。特に、アルカリ金属カチオンの中ではCs+(イオン径3.40Å)との選択的錯形成が可能であると考えられるため、このような特徴を利用して、Csの放射性同位体の分離ができるものと考えられる。また、ピリジン環が有する窒素原子はAg+と高い親和性を有することが知られており、本発明の大環状ピリジノファンとAg+との錯体は抗菌剤として有効に働くものと考えられる。
【0035】
またピリジン環を有する化合物の6位のみにカテコールを置換した化合物を用いて合成された大環状ピリジノファンは、エチレングリコールを置換した化合物を用いて合成された大環状ピリジノファンに比べて、親油性が増すとともに、更に分子内の移動自由度に制限が加わるため、空孔内のゲスト選択性が向上するものと考えられる。またピリジン環を有する化合物の6位のみにレゾルシノールを置換した化合物を用いて合成された大環状ピリジノファンは、その構造に含まれるベンゼン環が水平面に対して垂直な配座をとることが可能であり、カリックスアレーン類のような筒状構造を形成できるものと考えられる。これにより、カチオン-π相互作用により、その空孔内にカチオン種を取り込むことができるだけでなく、有機分子も取り込むことができるものと考えられる。またピリジン環を有する化合物の6位のみに1,3-ジヒドロキシナフタレンを置換した化合物を用いて合成された大環状ピリジノファンは、その構造に含まれるナフタレン環が水平面に対して垂直な配座をとることが可能である。従って、ベンゼン環よりも深い筒状構造を形成するのに有効であり、ゲスト化学種である各種カチオンに対して強いπ電子相互作用を示すとともに、有機分子に対する親和性も多様化することが期待される。以上のことから、ピリジン環を有する化合物の6位のみにレゾルシノールや1,3-ジヒドロキシナフタレンを置換した化合物を用いて合成された大環状ピリジノファンは輸送担体の用途に適すると考えられる。
【実施例】
【0036】
次に本発明の実施例を詳しく説明する。
<実施例1>
[2,6-ジブロモピリジンの誘導体からなる二官能性モノマーの合成]
先ず、水素化ナトリウム(4.18g、鉱油中に60%含有、1.04×10-1mol)をn-ヘキサン20ml及びTHF20mlで洗浄した後、この洗浄した水素化ナトリウムをTHF20mlに分散させて水素化ナトリウム分散液を調製した。またエチレングリコール(21.7g、3.50×10-1mol)をTHF30mlに溶解してエチレングリコール溶解液を調製した。また2,6-ジブロモピリジン(8.27g、3.50×10-2mol)をDMF40mlに溶解して2,6-ジブロモピリジン溶解液を調製した。
次いで、調製した水素化ナトリウム分散液を窒素雰囲気下、室温で攪拌しながら、この分散液にエチレングリコール溶解液を30分間かけて滴下した。滴下後は50℃の温度に加温して30分間更に攪拌した後、室温にまで冷却した。次に、室温にまで冷却した液に2,6-ジブロモピリジン溶解液を30分かけて滴下し、滴下後は70℃の温度に加温して3時間攪拌することにより反応させた。滴下した2,6-ジブロモピリジンが完全に消費されたかをTLCにより確認した後は、反応液を室温にまで冷却した。
【0037】
次に、冷却した反応液に、水-THFの混合液(水とTHFの重量比=1:10)を加えて反応液中に残存する水素化ナトリウムを分解した後、更に水100mlを投入し、ジクロロメタン200mlで3回抽出した。続いて、抽出後の有機層を水200mlで3回洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去した後の残渣を、シリカゲルクロマトグラフィー(トルエン-酢酸エチル傾斜混合溶媒)で単離精製することにより、所望の化合物を得た。合成された化合物の重量は6.59gであり、収率は87%であった。
合成された化合物について、1H-NMR(proton Nuclear Magnetic Resonance)で測定したところ、1H-NMRスペクトル(CDCl3)はδ=3.90(2H,m)、4.40(2H、m)、6.68(1H、dd、J=8.2Hz)、7.01(1H、dd、J=8.2Hz)、7.41(1H、t、J=8.0Hz)であった。この結果から合成された化合物は2-ブロモ-6-ヒドロキシエトキシピリジンであることを確認した。この2-ブロモ-6-ヒドロキシエトキシピリジンを実施例1の合成に用いる二官能性モノマーとした。
【0038】
[大環状ピリジノファンの合成]
先ず、水素化ナトリウム(0.64g、鉱油中に60%含有、1.60×10-2mol)をn-ヘキサン(20ml)及びTHF(20ml)で洗浄した後、この洗浄した水素化ナトリウムをTHF770mlに分散させ、更にヨウ化ナトリウム(6.00g、4.00×10-2mol)を添加して水素化ナトリウム及びヨウ化ナトリウムを含む分散液を調製した。また、先に合成した2-ブロモ-6-ヒドロキシエトキシピリジン(1.74g、8.00×10-3mol)をTHF30mlに溶解して2-ブロモ-6-ヒドロキシエトキシピリジンを含む溶液を調製した。
次に、図1に示すような反応装置のフラスコ内に調製した水素化ナトリウム及びヨウ化ナトリウムを含む分散液を入れ、この分散液を窒素雰囲気下、室温で攪拌しながら、分散液に2-ブロモ-6-ヒドロキシエトキシピリジンを含む溶液を30分間かけて滴下した。滴下後は分散液を70℃に加熱して110時間加熱還流を行い反応を進行させた後、室温にまで冷却した。
【0039】
次に、冷却した反応液に、水-THFの混合液(水とTHFの重量比=1:10)を加えて反応液中に残存する水素化ナトリウムを分解した後、更に水300mlを投入し、ジクロロメタン500mlで3回抽出した。続いて、抽出後の有機層を水400mlで3回洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去した後の残渣を、シリカゲルクロマトグラフィー(トルエン-酢酸エチル傾斜混合溶媒)で単離精製することにより、所望の合成物を得た。合成物の重量は0.04gであり、収率は4%であった。更にこの合成物を液体クロマトグラフィーによって精製した。
精製した合成物について、ESI-MS(エレクトロスプレーイオン化質量分析)測定を行ったところ、二量体(m/z=275[M+H]+)と三量体(m/z=412[M+H]+)のピークが確認された。また、精製した合成物について、1H-NMRで測定したところ、1H-NMRスペクトル(CDCl3)は、δ=4.69(4H,s)、6.38(2H、dd、J=7.8Hz)、7,45(1H、t、J=7.9Hz)であった。これらの結果から得られた合成物は上記式(5)に示す構造を含む大環状ピリジノファンであることを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の大環状ピリジノファンは、カチオン用錯化剤或いはアニオン用錯化剤、触媒、輸送担体、抗菌剤の用途に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の合成方法に用いる反応装置を示す図。
【符号の説明】
【0042】
10 反応装置
11 マグネチックスラーラー
12 油浴
13 三つ口フラスコ
14 リービッヒ冷却管
16 滴下漏斗
17 温度計
18 風船
図面
【図1】
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