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明細書 :クッション用セル構造体及びクッション

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4538652号 (P4538652)
公開番号 特開2006-296640 (P2006-296640A)
登録日 平成22年7月2日(2010.7.2)
発行日 平成22年9月8日(2010.9.8)
公開日 平成18年11月2日(2006.11.2)
発明の名称または考案の名称 クッション用セル構造体及びクッション
国際特許分類 A61G   7/05        (2006.01)
A47C  27/00        (2006.01)
A47C  27/18        (2006.01)
FI A61G 7/04
A47C 27/00 A
A47C 27/00 Q
A47C 27/18
請求項の数または発明の数 6
全頁数 14
出願番号 特願2005-121040 (P2005-121040)
出願日 平成17年4月19日(2005.4.19)
審査請求日 平成20年4月15日(2008.4.15)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】593006630
【氏名又は名称】学校法人立命館
発明者または考案者 【氏名】▲高▼橋 洋子
【氏名】永井 清
個別代理人の代理人 【識別番号】110000280、【氏名又は名称】特許業務法人サンクレスト国際特許事務所
審査官 【審査官】山口 賢一
参考文献・文献 特開平09-327356(JP,A)
実開平07-000337(JP,U)
特開2002-306280(JP,A)
特開平08-243128(JP,A)
特開平07-289593(JP,A)
調査した分野 A61G 7/05
A47C 27/00
A47C 27/18
特許請求の範囲 【請求項1】
袋状のカバー部材及び前記カバー部材内に入れられた複数のクッション材を備えているクッションの、前記カバー部材内に入れられて前記クッション材として用いられるクッション用セル構造体であって、
空気が充填されている内部セルと、この内部セルを収容していると共にゲルが充填されクッション用セル構造体の外殻となる変形自在な外部セルと、を備え
前記内部セルは、空気が充填されていることにより前記外部セルの形状を保持する保形機能を有した芯部材として、前記外部セル内に存在していることを特徴とするクッション用セル構造体。
【請求項2】
前記外部セルは前記内部セルと前記ゲルとを封入している変形自在な外部袋部材を有し、この外部袋部材の外周側に、当該外部袋部材よりも表面の摩擦抵抗が小さい外周部材が設けられている請求項1に記載のクッション用セル構造体。
【請求項3】
前記ゲルは遠赤外線放射材と共に前記外部セルに充填されている請求項1又は2に記載のクッション用セル構造体。
【請求項4】
前記外部セルの内部に前記内部セルが2個以上収容されている請求項1~3のいずれか一項に記載のクッション用セル構造体。
【請求項5】
袋状のカバー部材と、前記カバー部材内にクッション材として複数入れられたセル構造体と、を備えているクッションであって、
前記セル構造体は、空気が充填されている内部セルと、この内部セルを収容していると共にゲルが充填され当該セル構造体の外殻となる変形自在な外部セルと、を備え、
前記内部セルは、空気が充填されていることにより前記外部セルの形状を保持する保形機能を有した芯部材として、前記外部セル内に存在しており、
前記袋状のカバー部材内に複数の前記セル構造体が入れられていることによって、各々が独立している前記セル構造体一体となるように纏められていることを特徴とするクッション。
【請求項6】
前記セル構造体は少なくとも2種類のものからなる請求項5に記載のクッション。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
この発明は、クッション材として用いられるセル構造体、及び、これを用いたクッションに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な車椅子は折りたたみが可能となるように、座面がシート(布)により構成されている。このような座面を有する車椅子に長時間座り続けると、臀部の血行が阻害されたり、しびれたり、ひどい場合には、褥そうの原因になるという問題点がある。このような圧迫障害は、特に臀部の座骨部分において体圧が過度に作用するために発生する。従って、座った際に体圧を分散させることのできるクッションが種々提案されており、従来知られているものとしては次のようなものがある。例えば、大きな1つの袋部材に空気が充填されたクッションや、大きな1つの袋部材にゲルが充填されたクッション(例えば特許文献1)がある。なお、このような圧迫障害は車椅子における座面部分以外にも、ベッドにおいて、腰部など大きな体圧が作用する部分にも生ずるおそれがあり、このような部分においてもクッションが設けられている。
【0003】

【特許文献1】特開平9-154672号公報(図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の空気のみが充填されたクッションは反発性が強いために座った際に沈み込まず、体圧分散がうまく行われない。さらに空気の量の調整が必要であり面倒である。ゲルのみが充填されたクッションは、ゲルがクッション内部で大きく流動するために全体が大きく変形してしまい、さらに元に戻る作用が少ない。これにより、臀部が左右に傾いた状態(誤った姿勢)で座った場合に、クッションがその姿勢をそのまま保持してしまい、姿勢を悪くさせるという問題点を有している。さらに、ゲルのみによるクッションは座った際に沈みやすく、座った状態で体圧の高い部分(座骨に対応する部分)でゲルが逃げて無くなり、体圧の高くなる部分が座面に直接当接してしまうような状態(底付き状態)となる。底付き状態となると、体圧が高いままであるという問題点がある。
【0005】
そこで、この発明は、前記問題点に鑑みてなされたものであり、長時間座った姿勢でいることによる、臀部における圧迫障害の発生を防止することができ、座り心地の良いクッションを得るための新たな手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するためのこの発明のクッション用セル構造体は、袋状のカバー部材及び前記カバー部材内に入れられた複数のクッション材を備えているクッションの、前記カバー部材内に入れられて前記クッション材として用いられるクッション用セル構造体であって、空気が充填されている内部セルと、この内部セルを収容していると共にゲルが充填されクッション用セル構造体の外殻となる変形自在な外部セルとを備え、前記内部セルは、空気が充填されていることにより前記外部セルの形状を保持する保形機能を有した芯部材として、前記外部セル内に存在していることを特徴としている。
このような構成のセル構造体をクッション材として用いれば、セル構造体に体圧が作用した際にゲルが流動することでセル構造体が変形し、セル構造体はその体圧を分散させる。これにより、大きな体圧が局部的に生じてしまうのを防止できる。そして、芯部材として空気が充填された内部セルが外部セル内に存在しているため、セル構造体が潰れてしまうのを防ぎ、体圧の高くなる部分が座面に直接当接してしまうような状態(底付き状態)となるのを防止できる。つまり、このセル構造体は、ゲルの流動により体の形状に沿うよう外部セルを変形させて、体圧を分散させる機能を備えていると共に、外部セルにその変形が生じても、内部セルにより外部セルが変形しすぎないよう形状を保持する保形機能を備えたものとなる。

【0007】
また、前記外部セルは前記内部セルと前記ゲルとを封入している変形自在な外部袋部材を有し、この外部袋部材の外周側に、当該外部袋部材よりも表面の摩擦抵抗が小さい外周部材が設けられているのが好ましい。外部セルが体圧を受けた際に変形自在となるために、ゲルを封入している外部袋部材をゴム製や樹脂製などの変形しやすい材料とした場合、この外部袋部材の表面は、特にゴム製の場合、摩擦抵抗が大きくなってしまう。そして、このセル構造体を複数並べるように設けてクッションを構成すると、セル構造体相互の摩擦抵抗が大きく、クッション全体における変形自由度が低下してしまうおそれがある。しかし、前記外周部材が設けられていることにより、隣り合うセル構造体の接触は、摩擦抵抗の小さい外周部材同士の接触となり、相互のすべりが良くなってクッション全体として変形しやすくなり、しなやかなクッションとなる。
【0008】
また、前記ゲルは遠赤外線放射材と共に前記外部セルに充填されているのが好ましい。外部セル内のゲルは、座った際に冷たく感じさせるおそれがあり、さらに座った人の体温を奪うおそれがあるが、この構成によれば、遠赤外線放射作用によりセル構造体を温かく感じさせることができる。
【0009】
また、前記外部セルの内部に前記内部セルが2個以上収容されているのが好ましい。この構成によれば、内部セルは外部セル内で移動しやすくなるため、エア(内部セル)の含有率を大きくしても外部セルの変形が起こりやすくなり、体圧の分散作用が高まる。そして、内部セル間にゲルが介在していることにより、接触した内部セル同士を滑らかに移動させ、外部セルはしなやかな変形を起こすことができる。
【0010】
また、このようなクッション用セル構造体を用いたクッションは、袋状のカバー部材と、前記カバー部材内にクッション材として複数入れられたセル構造体と、を備えているクッションであって、前記セル構造体は、空気が充填されている内部セルと、この内部セルを収容していると共にゲルが充填され当該セル構造体の外殻となる変形自在な外部セルと、を備え、前記内部セルは、空気が充填されていることにより前記外部セルの形状を保持する保形機能を有した芯部材として、前記外部セル内に存在しており、前記袋状のカバー部材内に複数の前記セル構造体が入れられていることによって、各々が独立している前記セル構造体一体となるように纏められていることで構成できる。これによれば、各々が独立しているセル構造体は包括部材により一体とされ、クッションが扱いやすくなる。また、セル構造体の数を変えることでクッションの大きさを自由に変更できる。

【0011】
また、このクッションにおいて、前記セル構造体は少なくとも2種類のものからなるのが好ましく、1つのクッションにおいて、セル構造体の組み合わせを自在としている。
具体的には、体圧が高くなる部分に全体形状が小さい小型のセル構造体が設けられ、体圧が低くなる部分に前記小型のセル構造体よりも全体形状が大きい大型のセル構造体が設けられているのが好ましい。これにより、体圧が高い部分に小型のセル構造体を設けることで、その部分におけるセル構造体の数を増やすことができ、これらセル構造体を体に沿わせることが可能となり、体圧分散機能が高まる。一方、体圧が低い部分に大型のセル構造体を設けることで、これらにより体圧が高くなる臀部を保持することができ姿勢を安定させることが可能となり、体の揺れ、クッション上でのすべりを抑えることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、体圧分散がうまく行われ、長時間座った姿勢で過ごす利用者の負担を軽減させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
図1はこの発明の実施の一形態に係るクッションの概略構成を示す斜視図であり、図2は、このクッションに使用されるセル構造体の概略構成を示す断面図である。なお図1は、クッションの最も外側を構成している袋状のカバー材9を途中で切断した状態で示している。このクッションは、利用者の身体が椅子やベッドなどにおける身体支持面に接触して体圧が生じ、その体圧を分散させることが必要となる箇所に適用することができる。例えば、車椅子の座面上に敷いて用いたり、ベッドの上面に敷いて用いたりすることができる。以下においてクッションを座面上に載置させた場合について説明する。
【0014】
まずセル構造体1について図2により説明すると、セル構造体1は、空気aが充填されている内部セル2と、この内部セル2を内部に収容していると共にゲルgが充填されている外部セル3とを備えている。内部セル2は内部袋部材10を有しており、内部袋部材10は空気aを封入(密封)している。そして、外部セル3は外部袋部材4を有しており、外部袋部材4は内部セル2と共にゲルgを封入(密封)している。
【0015】
内部セル2の袋部分とされている内部袋部材10は、例えば樹脂フィルムから構成されている。内部袋部材10の形状は図示している球形以外にも角柱や角錐などとすることができ、例えば図示しないが四面が三角形の面から構成された立体形状(三角錐形状)とできる。内部袋部材10を角錐(特に三角錐形状)とした場合、球形よりも組み立てや内部の空気aの封止が容易となり製造が簡単となる。
【0016】
外部セル3の袋部分とされている外部袋部材4は、外力(体圧)が作用すると内部のゲルgの流動と共に容易に変形できるものとされている。さらに説明すると、外部袋部材4自身が伸縮性を有する(例えばゴム製の)膜部材から構成されており、内部のゲルgの流動に伴って外部袋部材4の全周表面積を増大させながら変形できるものとされている。この場合、このセル構造体1を有するクッションに人が座って当該セル構造体1が変形し、その後、人が座った姿勢を変え又は立った際に、この外部袋部材4の弾性復元力によりセル構造体1を自動的に変形前のもとの形に復元させることができる。
また、外部袋部材4の他の材質としては、それ自身は伸縮性に乏しいが、弛みを持たせてゲルgを外部袋部材4に充填させることによって、内部のゲルgが流動することで形状が容易に変化できる材質とすることができる。つまり、樹脂製のフィルムから構成した袋状のものとできる。
なお、変形自在な外部袋部材4の形状は図示しているように球形以外にも円柱や角柱などとすることができる。
【0017】
さらに、図2に示しているように、この外部袋部材4の外周側に外周部材5が設けられている。外周部材5は外部セル3(外部袋部材4)の外周面全体を被覆するよう設けられている。そして、外周部材5は外部袋部材4よりも表面の摩擦抵抗が小さい素材から構成されている。これは、外部セル3を変形自在とさせるために、ゲルgを封入している前記外部袋部材4をゴム製とした場合、その表面は摩擦抵抗が大きくなってしまう。そして、ゴム製の外部袋部材4が最も外周の面とされたセル構造体1を複数並べるように設けてクッションを構成すると、隣り合うセル構造体1同士の摩擦が大きくなり、クッション全体における変形自由度が低下してしまうおそれがある。しかし、前記外周部材5によれば、隣り合う外部セル3の接触は、摩擦抵抗の小さい外周部材5同士の接触となり、相互のすべりが良くなってクッション全体として変形しやすくなり、しなやかなクッションとできる。
【0018】
外周部材5は、さらに通気性が良い材質、透湿性の良い材質とするのが好ましく、これにより、湿度が高くなるのを防止し、蒸れが生じにくいクッションとできる。さらに、外周部材5は、外部セル3内のゲルgを透過させにくい(防水性のある)材質、構成とするのが好ましい。これにより、たとえ外部袋部材4が破れてゲルgが漏れても外周部材5によりゲルgが外部への漏れるのを抑えることができる。
このような透湿性、通気性、防水性に優れている外周部材5としては、例えば、微多孔質樹脂フィルム(微多孔質ポリオレフィン系フィルム)と、不織布を層状に組み合わせたものがある(エクセポール(登録商標)三菱樹脂株式会社製)。
【0019】
外部セル3内のゲルgは、クッション材として用いられている公知のものを採用することができ、例えばシリコンゲルやウレタンゲルとすることで製造コストを低減でき、かつ体圧分散性能の良いものとできる。
さらに、外部セル3内にはゲルgと共に遠赤外線放射材が充填されている。遠赤外線放射材は従来知られているものを用いることができ、例えば遷移金属元素酸化物系、窒化物系、又は、炭化物系などのセラミックス、天然鉱石、天然炭化物、活性化水等が挙げられる。
前記セラミックスとしては、チタン酸化物(例:TiO、TiO2)、珪素酸化物(例:SiO2)、ジルコニア酸化物(例:ZrO2)、アルミニウム酸化物(例:Al23)、マグネシウム酸化物(例:MgO)、バリウム酸化物(例:BaO)、マンガン酸化物(例:MnO2)、鉄酸化物(例:FeO、Fe23)、ジルコニア珪酸塩(例:ZrSiO2)、コバルト酸化物(例:CoO)、銅酸化物(例:CuO)、クロム酸化物(例:CrO3)、チタン窒化物(例:TiN)、ジルコニア炭化物(例:ZrC)、チタン炭化物(例:TiC)、錫酸化物(例:SnO2)等の金属酸化物、窒化物、炭化物の微粒子や、さらにネオジウム、ランタン、イットリウム等の希土類金属の酸化物が挙げられる。天然鉱石としては、雲母、トリマリン(電気石)、オーラストン等が挙げられる。天然炭化物としては、海藻を炭化し微粉末にしたものや備長炭に代表される炭類、カーボンブラック、カーボンファイバー等が挙げられる。また、これらのうちの2以上を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
1個のセル構造体1におけるゲルgの容量(体積)について説明すると、ゲルgの容量は外部袋部材4の体積(変形前の自由状態での体積)の30%以上が好ましく、より好ましいのは50%以上である。また、その容量は80%以下が好ましく、より好ましいのは70%以下である。ゲルgの容量が30%よりも少ない場合、空気のみからなるクッションと同様の状態となり反発性が高くなり、体圧分散作用が低下してしまうおそれがある。また、ゲルgの容量が80%を超えると、クッションが重くなるおそれがある。
【0021】
セル構造体1の形状は、図2に示しているように球形とする以外にも、図8や図10に示しているクッションのように、柱形状などとすることができる。セル構造体1を球形とした場合、その直径は2cm以上で5cm以下程度としている。なお、セル構造体1を大きくする場合、ゲルgが封入されている外部セル3(外部袋部材4)を大きくすると同時に、エアaが封入されている内部セル2(内部袋部材10)を大きくしてもよいが、内部セル2についてはその数を多くするのが好ましい。つまり、図2においては、1個の外部セル3内に1個の内部セル2が収容されているが、図示しないが、1個の外部セル3内に2以上の内部セル2を収容させるのが好ましい。これは、1種類の大きさの内部セル2を標準品として多数予め製造しておくことで、セル構造体1の大きさに応じて内部セル2の数を変更してセル構造体1を製造することができ、製造コストの低減が可能となり、また、バリエーションが豊富なセル構造体1を簡単に得ることができるからである。
また、セル構造体1の形状は、これ以外に半球状とすることができる。つまり、外部セル3(外部袋部材4)を、底面が円形であり、周面と上面が半球状の袋となるよう構成すればよい。これにより、底面が平坦となるためセル構造体1が安定し、型崩れの少ないクッションを構成できる。なお、この場合においても内部セル2の形状は自由である。
【0022】
セル構造体1の大きさを変えない(大きくしない)場合であっても、外部セル3の内部に内部セル2を2以上収容させることができる。この場合、内部セル2は外部セル3内で移動しやすくなる。これにより外部セル3の変形が起こりやすくなり、体圧の分散作用が高まる。また、内部セル2がそれぞれ移動しても外部セル3により、セル構造体1全体が潰れるのを防止できる。そして、内部セル2間にゲルgが介在していることにより、接触した内部セル2同士は滑らかに移動でき、外部セル3は変形しやすい。
【0023】
次に、以上のようなセル構造体1を複数個有するクッションについて図1により説明すると、このクッションは、各々が独立している複数個の前記セル構造体1と、これらセル構造体1を一体となるように纏めている包括部材6とを備えている。そして、本発明のクッションは少なくとも臀部に対応する部分にセル構造体1が設けられている。
包括部材6は、セル構造体1を固定させるためのベース材8と、セル構造体1とベース材8とを包む袋状のカバー材9とからなる。
【0024】
図3はクッションの第1の実施形態を示す平面図であり、図4はそのクッションを前後方向に切断した場合の断面図である。なお、カバー材9を2点鎖線で示している。ベース材8は例えば発泡ポリウレタンなどの発泡樹脂体により構成されて弾性を有する部材とされており、セル構造体1と共にクッション材として機能できる。ベース材8は、クッション部分となって体圧を受けるための厚さが大きい厚肉部13と、セル構造体1を載置させるための厚さが薄い薄肉部14とを有している。厚肉部13は(最も大きい)セル構造体1の直径とほぼ同じ厚さとされている部分である。薄肉部14の上面がセル構造体1を載置させる載置面とされており、この載置面と厚肉部13の上面(体圧受圧面)13aとの間は傾斜状の側壁面15とされている。そして、前記載置面と前記側壁面15とによって、セル構造体1を収容するための収容部12が構成されている。なお、前記傾斜状の側壁面15は、収容部12が上方へ向かって広がるよう傾斜している面である。側壁面15をこのような傾斜状とすることにより、座った際の厚肉部13との境目による段違いを感じさせにくくしている。
【0025】
図3のクッションは、前部分がベース材8の厚肉部13とされ、後部分が複数個のセル構造体1を平面的に並べて配設したセル群11とされている。なお本発明において、「前」はクッションに座った際に膝部に近い側であり、「後」は臀部に対応する側である。
【0026】
カバー材9は開口部9aを有している袋状の部材であり、開口部9aはクッションの後部側に設けられている。開口部9aには当該開口部9aを封する封止部材(図示せず)が設けられている。封止部材としては例えばファスナー、面ファスナー又はボタンなどがある。カバー材9の開口部9aは、クッションの後部側の一辺乃至その一辺とその両側に連続する一部分とすることができる。これにより、封止部材を開ければ開口部9aの近傍にセル構造体1が存在するため、セル構造体1の取り換え作業や、詰め込み作業が容易となる。カバー材9は透湿性がよい布製とされている。
【0027】
図5はクッションの第2の実施形態を示す平面図であり、臀部に対応する後部中央領域に複数個のセル構造体1が設けられており、ベース材8の厚肉部13が前部と左右両側部に設けられている。そしてベース材8がクッションの枠材として機能できる。そして、図6はこのクッションを左右方向に切断した場合の断面図であり、このクッションの断面を示している図4と図6によれば、ベース材8には3面の傾斜状の前記側壁面15が形成されており、これらの間に収容部12が形成されている。
【0028】
図7はクッションの第3の実施形態を示す平面図であり、ベース材8は第1の実施形態のものと同じ構成であるが、セル群11は、全体としての大きさが大小2種類のセル構造体1を有している。
具体的に説明すると、セル群11のうち、左右両側部に全体形状が大きい大型のセル構造体1が設けられており、その間の中央部にそれよりも全体形状が小さい小型のセル構造体1が設けられている。この場合、座った際に体圧が高くなる中央部に小型のセル構造体1が設けられることとなり、体圧が低くなる左右両側部に大型のセル構造体1が設けられることとなる。この構成によれば、体圧が高くなる部分において、小さなセル構造体1からなるセル集合体が体型(臀部)に沿って複雑な変形が可能となり、体圧分散作用が高まる。そして、体圧が低い部分に大型のセル構造体1を設けることで、大型のセル構造体1が臀部を両側から保持することが可能となり姿勢を安定させることができ、体の揺れ、クッション上でのすべりを抑えることができる。
【0029】
セル構造体1が少なくとも2種類以上のものからなる場合として、図7ではセル構造体1自身の大きさが異なる場合を説明したが、図示しないが、内部セル2の大きさを相違させて2種類以上としたものや、内部セル2の数を相違させて2種類以上としたものであってもよい。この場合、セル構造体1の大きさを同一としてゲルgとエアaとの比を相違させたもの、セル構造体1の大きさについても相違させてゲルgとエアaとの比をそれぞれについて同一としたもの、セル構造体1の大きさを相違させてかつゲルgとエアaとの比をそれぞれ相違させたものなどであってもよい。
内部セル2の大きさ又は数、つまり1個のセル構造体1において空気aの含有量を変化させることで、セル構造体1の特性を変えることができ、作用する体圧の大小に対応させることができる。例えば、クッションの左右両側部に内部セル2が大きいセル構造体1を配設した場合、このセル構造体1が臀部を両側から保持することが容易となり、姿勢を安定させ、体の揺れ、クッション上でのすべりを抑えることができる。
また、ゲルgと空気aとの比(g/a)を、体圧の高い部分で大きくし、体圧の低い部分はそれよりも小さくすることで、ゲルgによる体圧分散作用が高いクッションが得られる。
【0030】
図8はクッションの第4の実施形態を示す平面図であり、このクッションのベース材8は前記のような厚肉部13を有している発泡樹脂体からなるものではなく、前記薄肉部14のみからなるベース材8とされている。そして、第2の実施形態(図5)で枠部材として機能していたベース材8の厚肉部13の代わりが、図8では柱形状に構成されたセル構造体1とされている。つまり、このクッションは、柱形状のセル構造体1を左右両側部と前部にそれぞれ配設して全体でU字型とし、これらの間を収容部12として球形のセル構造体1を複数配設している。そして、薄肉部14のみからなるベース材8の上に、柱形状のセル構造体1と球形のセル構造体1が載置固定されている。また、図8に示しているように、柱形状のセル構造体1は、1つの外部セル3内に2個乃至3個の内部セル2が存在している。
【0031】
図9はクッションの第5の実施形態を示す平面図であり、このクッションのベース材8は第4の実施形態(図8)と同様に、薄肉部14のみからなるベース材8とされている。そして、このベース材8の上に全てが球形であるセル構造体1が載置固定されている。このクッションは、左右両側が大型のセル構造体1とされ、その間が小型のセル構造体1とされている。
さらに、図10はクッションの第6の実施形態を示す平面図であり、図9の球形のセル構造体1の代わりに全てが柱形状のセル構造体1とし、このセル構造体1を並べるよう配置することで矩形のクッションを構成している。第4~第6(図8~図10)の実施形態においては、クッションの全面にセル構造体1が配設されている。
【0032】
以上の各実施形態におけるクッションの製造方法について説明すると、前記セル構造体1をベース材8に複数取り付けて、セル構造体1とベース材8とを一体としてから、このセル構造体1とベース材8とを袋状のカバー材9の開口部9aから、当該カバー材9の中に入れ、その開口部9aを閉じることでクッションが得られる。この製造方法によれば、複数個のセル構造体1がばらばらになるのを防止でき、製造が簡単となる。
なお、ベース材8とセル構造体1とを一体化させる方法は、図示しないが、例えばベース材8の所定位置に面ファスナーのうちの第1部材を設け、各セル構造体1に第1部材に対応する面ファスナーの第2部材を設けることで、ベース材8にセル構造体1を固定することができる。これによれば後にセル構造体1の取り換えが容易となる。
【0033】
また、このクッションを製造するための他の方法としては、利用者の体圧分布状況を測定し、体圧分布に応じて適切な特性を有するセル構造体を選択し、調整しながら組み合わせて設ける方法がある。つまり、ベース材8が予め入れられた状態にある袋状のカバー材9に、このカバー材9の開口部9aから、体圧分布に応じて、大きさなどが異なる様々な種類のセル構造体1から任意のセル構造体1を選んで入れる方法である。この方法によれば、セル構造体1を交換しながら組み入れることができ、各利用者に合ったクッションを製造できる。この製造方法の場合、図4に示しているように前部にベース材8の厚肉部13が存在し後部にセル群11が配置されたクッションにおいて、後部をカバー材9の開口部9aとすることで、セル構造体1の交換作業が容易となる。
【0034】
また、本発明のクッションの各実施形態において、例えば図1と図4と図6に示しているように、セル群11の体圧受け面側(上面側)に、遠赤外線放射性能を有する面状パッド7が設けられている。この面状パッド7はクッションの輪郭形状とほぼ同じ輪郭形状とされた薄いシート体であり、収容部12に収容されているセル構造体1の蓋部材としても機能している。
この面状パッド7は遠赤外線放射材を含有する繊維を含んでいる。遠赤外線放射材としては、セル構造体1の外部セル3内においてゲルgと共に封入されているものと同じにできるが、例えば、この面状パッド7は天然石(三仙石粉末)を含有する繊維が使用されたもの(株式会社ユメロン黒川製、特許第2906689号)とできる。
これにより、セル構造体1の外部セル3内のゲルは、座った際に冷たく感じさせたり、座った人の体温を奪ったりするおそれがあるが、面状パッド7の遠赤外線放射作用により、クッションを心地よい温度に保たせることができる。また、セル群11の上面にこのような繊維を有する面状パッド7が介在しているため、空気層ができ透湿性が良くなる。
【0035】
この面状パッド7の厚さ寸法は、面状パッド7の上に座った際の最小厚さが5mm以下となるように設定するのが好ましい。座った際の最小厚さが5mmを越えるような厚い面状パッド7を用いると、セル構造体1による体圧分散作用を弱めてしまうおそれがある。
【0036】
以上のように、図2に示しているセル構造体1をクッション材として用いれば、セル構造体1に体圧が作用した際に、ゲルgが流動することでセル構造体1が容易に変形し、その体圧を分散させることができ、局部的に大きな体圧が生じてしまうのを防止できる。従って、長時間座っていても、臀部の血行が阻害されたり、しびれたりなどの圧迫障害の発生を抑えることができる。そして、外部セル3内に、芯部材としての内部セル2が存在しているため、外部セル3に変形が生じても全体が変形しすぎないよう形状を保持する保形機能を備えており、さらに、内部セル2の弾性力によりセル構造体1全体の形状を元に戻す復元機能を備えさせることができる。
さらに、セル構造体1の外周に、透湿性、通気性、防水性に優れており摩擦抵抗の小さい外周部材5が存在することで、クッション内において蒸れが生じにくく、長時間座っていても快適なものとできる。
【0037】
また、本発明のクッションは、独立したセル構造体1が前後と左右方向に複数個並べられてセル群11が構成された複数セル構造であるため、従来のクッション(臀部に対応する部分乃至全面について、ゲルが充填された1つ乃至2つの大きな袋部材により構成されたもの)よりも、性能が良いものとできる。つまり、従来の1つの大きな袋部材内に充填させたゲルはクッション全体の内部で大きく流動してしまい、ゲルが逃げて座った際に底付き状態となったり、臀部を左右に傾けて座った悪い姿勢から正しい姿勢に変えようとしても、従来のクッションでは復元機能が無いため、悪い姿勢のまま保持されてしまうおそれがある。
しかし、本発明のようにクッションを複数セル構造とし、かつ、各セル構造体1はエアaが充填された内部セル2を有しているため、各セル構造体1はゲルgが自由に流動して体圧を分散させることができ、そして潰れてしまうことがなく、クッションが底付き状態となるのを防ぐことができる。また、内部セル2の弾性力による復元機能により、一度座った後の姿勢の変更も容易となる。
【0038】
図11は座った際の臀部における体圧分布を示している分布図であり、図11(a)は本発明に係る(図3に示した)セル構造体1を備えたクッションに座った場合であり、図11(b)は従来例である1つの大きな袋部材にゲルが充填されているクッションに座った場合であり、図11(c)はクッションが無い状態で車椅子の座面に直接座った場合の体圧分布図である。これらの図において、体圧が高い側から低い側に向かって段階的に領域区分し、体圧が高い側の領域から符号p、q、r、s、tとしている。そして、図11(a)(b)(c)において、同じ符号の領域は、同程度の体圧が作用していることを示している。
【0039】
クッションが無い状態で座った図11(c)では、臀部の左右部分(領域p)で最も高い体圧が作用しており、その外側へ向かうにつれて体圧が小さくなっている。さらに各領域の間隔が狭く体圧が分散されていないことがわかる。
従来例のクッションを用いた場合である図11(b)では、クッションが無い状態で生じていた、最も体圧が高い領域pは存在しておらず、各領域の間隔も少し広がり体圧が分散されていることがわかる。しかし、実施例のクッションを用いた場合である図11(a)は、その次に体圧が高い領域qも存在しておらず、かつ、各領域の間隔がさらに広がっており、比較例よりも体圧分散がうまく行われていることがわかる。この実施例のクッションによれば、上半身の体重を臀部から大腿部にわたる広い範囲に分散させることができ、体圧が高くなることによる圧迫障害の発生を防止できる。
【0040】
また、本発明のクッションは、図示する形態に限らずこの発明の範囲内において他の形態のものであっても良く、クッションの全体形状が矩形である以外に円形であってもよい。また、1つのクッションにおけるセル構造体1の形態についての種類を、1種類、又は2種類で説明したが、3種類またはそれ以上としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施の一形態に係るクッションの概略を示す斜視図である。
【図2】クッション用セル構造体の概略を示す断面図である。
【図3】クッションの第1の実施形態の概略を示す平面図である。
【図4】クッションを前後方向に切断した場合の断面図である。
【図5】クッションの第2の実施形態の概略を示す平面図である。
【図6】クッションを左右方向に切断した場合の断面図である。
【図7】クッションの第3の実施形態の概略を示す平面図である。
【図8】クッションの第4の実施形態の概略を示す平面図である。
【図9】クッションの第5の実施形態の概略を示す平面図である。
【図10】クッションの第6の実施形態の概略を示す平面図である。
【図11】座った際の臀部における体圧分布を示している分布図であり、(a)は実施例のクッション、(b)は従来例のクッション、(c)はクッションが無い場合である。
【符号の説明】
【0042】
1 セル構造体
2 内部セル
3 外部セル
4 外部袋部材
5 外周部材
6 包括部材
7 面状パッド
8 ベース材
9 カバー材
9a 開口部
10 内部袋部材
11 セル群
a 空気
g ゲル
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
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【図9】
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【図10】
9
【図11】
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