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明細書 :造影剤注入プロトコル決定方法および造影剤注入プロトコル演算装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4086309号 (P4086309)
公開番号 特開2007-143880 (P2007-143880A)
登録日 平成20年2月29日(2008.2.29)
発行日 平成20年5月14日(2008.5.14)
公開日 平成19年6月14日(2007.6.14)
発明の名称または考案の名称 造影剤注入プロトコル決定方法および造影剤注入プロトコル演算装置
国際特許分類 A61B   6/03        (2006.01)
A61M   5/00        (2006.01)
FI A61B 6/03 375
A61M 5/00 300
請求項の数または発明の数 13
全頁数 31
出願番号 特願2005-342633 (P2005-342633)
出願日 平成17年11月28日(2005.11.28)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 2005年10月22日 社団法人照明学会中国支部発行の「平成17年度 電気・情報関連学会中国支部 第56回連合大会講演論文集」に発表
審査請求日 平成19年5月24日(2007.5.24)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】803000104
【氏名又は名称】財団法人ひろしま産業振興機構
発明者または考案者 【氏名】青山 正人
【氏名】浅田 尚紀
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】100087701、【弁理士】、【氏名又は名称】稲岡 耕作
【識別番号】100101328、【弁理士】、【氏名又は名称】川崎 実夫
審査官 【審査官】小田倉 直人
調査した分野 A61B 6/03
A61M 5/00
特許請求の範囲 【請求項1】
撮影対象に対して一定のテスト注入速度で所定のテスト注入時間に渡って造影剤をテスト注入したときに、関心領域を撮像して得られた画像濃度の時間変化を表すテスト時間濃度曲線に基づいて本番検査のための造影剤注入プロトコルを定める方法であって、
前記テスト時間濃度曲線に基づいて、注入速度を前記テスト注入速度と等しい一定値とし、前記テスト注入時間とは異なる所定の注入時間を設定した場合についての時間濃度曲線を推定して、推定時間濃度曲線を作成するステップと、
前記推定時間濃度曲線において所要の濃度維持時間を確保できる最大濃度値を求めるステップと、
前記最大濃度値および所要濃度値に基づいて、前記濃度維持時間にわたって前記所要濃度値を維持できるように、前記所定の注入時間に対応した注入速度を定めるステップと、
前記所定の注入時間およびこれに対応する注入速度に基づいて造影剤注入量を求め、この造影剤注入量およびこれに対応する前記注入速度の対を含む注入プロトコルを作成するステップとを含む、造影剤注入プロトコル決定方法。
【請求項2】
前記所定の注入時間は前記テスト注入時間の自然数倍であり、
前記推定時間濃度曲線を作成するステップは、前記テスト時間濃度曲線と、前記テスト時間濃度曲線を時間軸上で前記テスト注入時間の自然数倍だけずらした一つ以上のシフト時間濃度曲線とを重ね合わせることにより、前記所定の注入時間に対応した推定時間濃度曲線を作成するステップを含む、請求項1記載の造影剤注入プロトコル決定方法。
【請求項3】
前記推定時間濃度曲線を作成するステップは、
前記テスト時間濃度曲線に基づいて、所定の微小単位時間の造影剤注入に対応する時間濃度曲線であるインパルス応答曲線を求めるステップと、
前記所定の注入時間に応じて、前記インパルス応答曲線を時間軸上でずらして複数個重ね合わせて前記推定時間濃度曲線を求めるステップとを含む、請求項1記載の造影剤注入プロトコル決定方法。
【請求項4】
前記インパルス応答曲線を求めるステップは、
テスト注入時の注入速度の時間変化を表すテスト注入関数をフーリエ変換するステップと、
前記テスト時間濃度曲線をフーリエ変換するステップと、
前記テスト注入関数およびテスト時間濃度曲線の各フーリエ変換の比をとることにより、注入速度の時間変化を表す注入関数と時間濃度曲線との関係を表す伝達関数を求めるステップと、
前記伝達関数を逆フーリエ変換して前記インパルス応答曲線を求めるステップとを含む、請求項3記載の造影剤注入プロトコル決定方法。
【請求項5】
前記推定時間濃度曲線を作成するステップは、
テスト注入時の注入速度の時間変化を表すテスト注入関数をフーリエ変換するステップと、
前記テスト時間濃度曲線をフーリエ変換するステップと、
前記テスト注入関数およびテスト時間濃度曲線の各フーリエ変換の比をとることにより、注入速度の時間変化を表す注入関数と時間濃度曲線との関係を表す伝達関数を求めるステップと、
注入速度を前記テスト注入速度と等しい一定値とし、前記注入時間を前記所定の注入時間に設定した場合の注入関数である設定注入関数をフーリエ変換するステップと、
前記設定注入関数のフーリエ変換および前記伝達関数に基づいて、前記設定注入関数に対応する推定時間濃度曲線を作成するステップとを含む、請求項1記載の造影剤注入プロトコル決定方法。
【請求項6】
前記テスト時間濃度曲線のフーリエ変換に対して高周波成分を除去するフィルタ処理を行うステップをさらに含み、
前記伝達関数を求めるステップは、前記フィルタ処理されたテスト時間濃度曲線のフーリエ変換を用いて行われる、請求項4または5記載の造影剤注入プロトコル決定方法。
【請求項7】
前記所定の注入時間は、互いに異なる複数の注入時間を含み、
前記推定時間濃度曲線を作成するステップは、前記複数の注入時間にそれぞれ対応する複数の推定時間濃度曲線を作成するステップであり、
前記濃度維持時間を確保できる最大濃度値を求めるステップは、前記複数の推定時間濃度曲線のそれぞれについて、前記濃度維持時間を確保できる最大濃度値を求めるステップであり、
前記注入速度を求めるステップは、前記複数の推定時間濃度曲線のそれぞれについて求められた複数の最大濃度値と前記所要濃度値とに基づいて、前記複数の注入時間にそれぞれ対応する複数の注入速度を求めるステップであり、
前記注入プロトコルを作成するステップは、前記複数の注入速度およびそれらにそれぞれ対応する複数の造影剤注入量の複数の対をそれぞれ含む複数の注入プロトコルを作成するステップである、請求項1~6のいずれかに記載の造影剤注入プロトコル決定方法。
【請求項8】
前記複数の注入プロトコルから、注入速度が所定範囲内の値である注入プロトコルを抽出するステップをさらに含む、請求項7記載の造影剤注入プロトコル決定方法。
【請求項9】
前記複数の注入プロトコルから、注入速度が最低の注入プロトコルを抽出するステップをさらに含む、請求項7または8記載の造影剤注入プロトコル決定方法。
【請求項10】
前記複数の注入プロトコルから、造影剤注入量が最低の注入プロトコルを抽出するステップとをさらに含む、請求項7~9のいずれかに記載の造影剤注入プロトコル決定方法。
【請求項11】
撮影対象に対して一定のテスト注入速度で所定のテスト注入時間に渡って造影剤をテスト注入したときに関心領域を撮像して得られた画像濃度の時間変化を表すテスト時間濃度曲線に基づいて本番検査のための造影剤注入プロトコルを演算する装置であって、
前記テスト時間濃度曲線に基づいて、注入速度を前記テスト注入速度と等しい一定値とし、前記テスト注入時間とは異なる所定の注入時間を設定した場合についての時間濃度曲線を推定して、推定時間濃度曲線を作成する推定時間濃度曲線作成手段と、
この推定時間濃度曲線作成手段によって作成された前記推定時間濃度曲線において所要の濃度維持時間を確保できる最大濃度値を求める最大濃度値演算手段と、
この最大濃度値演算手段によって演算された前記最大濃度値および所要濃度値に基づいて、前記濃度維持時間にわたって前記所要濃度値を維持できるように、前記所定の注入時間に対応した注入速度を定める注入速度演算手段と、
前記所定の注入時間およびこれに対応して前記注入速度演算手段によって演算された注入速度に基づいて造影剤注入量を求め、この造影剤注入量およびこれに対応する前記注入速度の対を含む注入プロトコルを作成する注入プロトコル作成手段とを含む、造影剤注入プロトコル演算装置。
【請求項12】
撮影対象に造影剤を注入する造影剤注入手段と、
前記テスト注入速度およびテスト注入時間に対応したテスト注入プロトコルに従って前記撮影対象に造影剤が注入されるように前記造影剤注入手段を制御するテスト注入制御手段と、
請求項11記載の造影剤注入プロトコル演算装置と、
この造影剤注入プロトコル演算装置によって演算された注入プロトコルに従って前記撮影対象に造影剤が注入されるように前記造影剤注入手段を制御する本番注入制御手段とを含む、造影剤注入装置。
【請求項13】
請求項12記載の造影剤注入装置と、
撮影対象を撮影して画像濃度に対応する信号を生成する撮影手段と、
テスト注入時に前記撮影対象の関心領域を撮影するように前記撮影手段を制御するテスト撮影制御手段と、
前記本番注入制御手段によって前記造影剤注入手段が制御されるときに、これに同期して前記撮影対象の関心領域を撮影するように前記撮影手段を制御する本番撮影制御手段とを含む、撮影システム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
この発明は、被検体(典型例は人体)に造影剤を注入して当該被検体の関心領域の濃度を増強して行う撮影法に適用可能な造影剤注入プロトコル決定方法および造影剤注入プロトコル演算装置に関する。さらに、この発明は、そのような造影剤注入プロトコル演算装置を備えた造影剤注入装置および撮影システムに関する。
【背景技術】
【0002】
動脈瘤や血管閉塞といった、血管やその周辺臓器の病変を発見する手段としてCTA(Computed Tomography Angiography;コンピュータ断層撮影血管造影法)がある。通常のCT(Computed Tomography;コンピュータ断層撮影)によって得られたCT画像は、臓器、血管、筋肉などの軟部組織におけるX線吸収値の差が小さく、低コントラストの画像となってしまう。したがって、これらの部位に関して満足な診断を行うことが困難である。それに対し、CTAは、X線吸収値が高い造影剤を静脈に投与して、注目する血管部位のX線吸収値が増加している状態で、連続してCTを行う手法であり、これによりコントラストを高めて、明瞭な臓器の像を得ることができる。
【0003】
CTAにおける造影剤の注入は、一般的には、ヨード系造影物質を用い、その総注入量および注入速度を決定して行われる。そして、注入開始から撮影のためのスキャン開始までの遅延時間を変化させることによって、造影剤による画像濃度の増強が調節される(非特許文献1)。
しかし、造影剤の注入速度および注入量に基づいて設定される注入パラメータが適切でない場合、画像の濃度値の差が小さいために診断の役に立たなかったり、逆に濃度値が高すぎることによりコントラストがつかない画像となったりする可能性がある。ところが、造影剤注入による時間濃度変化(画像濃度の時間変化)は、患者の体重や抱えている疾患などによって大きく異なる。そのため、濃度値や造影剤の注入開始から注目領域の血管に造影剤が現れるまでの遅延時間のばらつきが大きく、各々の患者に対してCTAにおける動脈の濃度変化を推定して造影剤注入パラメータを最適化することは、適切なCT血管造影像を得る上で非常に重要な事項であるにも拘わらず、必ずしも容易ではない。
【0004】
さらに、現在の医療の現場では、造影剤の投与は患者にとって負担となるにもかかわらず、安定した造影を行うために、患者に対して適正量よりやや多量の造影剤を投与しているという問題がある。
このような問題に対し、計算機による支援により時間濃度曲線を推定できれば、使用する造影剤量を適切に設定でき、過剰に投与することがなくなると期待できる。これにより患者の身体的、経済的負担も軽減できると考えられる。
【0005】
時間濃度曲線を解析する従来研究としては、Freischmannらの手法(非特許文献1)が挙げられる。この手法は、ある患者に対して、テスト注入パラメータで造影剤を注入したときの時間濃度曲線(CT値の時間変化)が既知である場合に適用することができる。すなわち、この手法では、まず、テスト注入パラメータとそれによる時間濃度曲線とに対してフーリエ変換を適用し、その患者の注入に対する時間濃度変化の関係を伝達関数として導出する。その伝達関数を用いることで、任意の注入パラメータに対する時間濃度曲線を推定でき、また、逆に、CTにおいて要求される時間濃度曲線を設定することで、それを得るための最適な注入パラメータを推定することができる。
【0006】
しかし、この手法では、最適注入パラメータを求める際のフィッティング処理が経験的に行われている。すなわち、最適注入パラメータは、注入速度が時間に伴って非線形に変化する複雑な形状の関数によって表されるが、自動注入器を用いて行われる実際の注入では、時間経過に伴って注入速度を複雑に変化させていくことは非現実的である。そこで、注入速度を2段階に切り換える、いわゆる二相注入を行うこととして、最適注入パラメータが求まった後は、操作者の経験によって当該最適注入パラメータに適合する二相注入のパラメータを定める、フィッティング処理が行われる。
【0007】
前記手法において二相注入が行われるようになっているのは、最適注入パラメータが二相注入にフィッティングしやすい形状となっていて、注入速度を終始一定に保持する一相注入に対するフィッティングを行うことができないからである。しかし、臨床上は、一相注入の方が現実的であるという側面もある。

【非特許文献1】Dominik Freischmann and Karl Hittmair: "Mathematical Analysis of Arterial Enhancement and Optimization of Bolus Geometry for CT Angiography Using the Discrete Fourier Transform", Journal of Computer Assisted Tomography 23(3):474-484, 1999
【非特許文献2】立入弘・稲邑清也監修、山下一也・速水昭宗編集: “診療放射線技術上巻改訂第10 版”, 南江堂,pp.83,pp.86,pp.175-177,pp.339,2001
【非特許文献3】日本医用画像工学会監修, 同・医用画像工学ハンドブック編集委員会編集, “医用画像工学ハンドブック”, 篠原出版,pp.220-221,pp.364-365,1994
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、この発明の目的は、経験的なフィッティング処理に依ることなく一相注入のための適正な注入プロトコルを得ることができる造影剤注入プロトコル決定方法および造影剤注入プロトコル演算装置を提供することである。
また、この発明の他の目的は、そのような造影剤注入プロトコル演算装置を用いた造影剤注入装置およびそれを用いた撮影装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するための請求項1記載の発明は、撮影対象に対して一定のテスト注入速度で所定のテスト注入時間に渡って造影剤をテスト注入したときに、関心領域を撮像して得られた画像濃度の時間変化を表すテスト時間濃度曲線に基づいて本番検査のための造影剤注入プロトコルを定める方法であって、前記テスト時間濃度曲線に基づいて、注入速度を前記テスト注入速度と等しい一定値とし、前記テスト注入時間とは異なる所定の注入時間を設定した場合についての時間濃度曲線を推定して、推定時間濃度曲線を作成するステップ(S7)と、前記推定時間濃度曲線において所要の濃度維持時間を確保できる最大濃度値を求めるステップ(S8)と、前記最大濃度値および所要濃度値(濃度増強値)に基づいて、前記濃度維持時間にわたって前記所要濃度値を維持できるように、前記所定の注入時間に対応した注入速度を定めるステップ(S9)と、前記所定の注入時間およびこれに対応する注入速度に基づいて造影剤注入量を求め、この造影剤注入量およびこれに対応する前記注入速度の対を含む注入プロトコルを作成するステップ(S10)とを含む、造影剤注入プロトコル決定方法である。なお、括弧内の英数字は後述の実施形態における対応構成要素等を表す。以下、この項において同じ。
【0010】
この方法の前提となるテスト注入は、一定のテスト注入速度で所定のテスト注入時間にわたって行われる。すなわち、このテスト注入は、いわゆる一相注入である。このテスト注入に対応するテスト時間濃度曲線に基づき、注入速度をテスト注入速度と等しい一定値とし、かつ、注入時間はテスト注入時間とは異ならせた場合についての推定時間濃度曲線が作成される。さらに、推定時間濃度曲線において、所要の濃度維持時間を確保できる最大濃度値が求められる。そして、この最大濃度値と所要濃度値(本番検査の撮影時において必要とされる濃度値)とに基づいて、前記所定の注入時間に対応した注入速度が求められる。この注入速度は、前記濃度維持時間にわたって所要濃度値を維持できる注入速度であり、具体的には、前記最大濃度値に対する所要濃度値の比をテスト注入速度に乗じることによって求めることができる。さらに、前記所定の注入時間およびこれに対応する注入速度に基づいて造影剤注入量(注入時間および注入速度の積)が求められる。こうして、造影剤注入量およびこれに対応する注入速度によって規定される一相注入のプロトコルを得ることができる。
【0011】
この方法においては、注入プロトコルを得る過程において、経験的なフィッティングを必要としていない。そのため、所要の濃度維持時間にわたって所要濃度値を維持することができる適正な注入プロトコルを確実に作成することができる。しかも、医療の現場において現実的に適用することができる一相注入プロトコルを作成できる。
請求項2記載の発明は、前記所定の注入時間は前記テスト注入時間の自然数倍であり、前記推定時間濃度曲線を作成するステップは、前記テスト時間濃度曲線と、前記テスト時間濃度曲線を時間軸上で前記テスト注入時間の自然数倍だけずらした一つ以上のシフト時間濃度曲線とを重ね合わせることにより、前記所定の注入時間に対応した推定時間濃度曲線を作成するステップ(S7)を含む、請求項1記載の造影剤注入プロトコル決定方法である。
【0012】
この方法では、前記所定の注入時間をテスト注入時間の自然数倍に限定することにより、テスト時間濃度曲線を時間軸上でずらして重ね合わせる簡単な処理によって推定時間濃度曲線を作成することができる。
請求項3記載の発明は、前記推定時間濃度曲線を作成するステップは、前記テスト時間濃度曲線に基づいて、所定の微小単位時間の造影剤注入に対応する時間濃度曲線であるインパルス応答曲線(関数)を求めるステップ(S21~S25)と、前記所定の注入時間に応じて、前記インパルス応答曲線を時間軸上でずらして複数個重ね合わせて前記推定時間濃度曲線を求めるステップ(S26)とを含む、請求項1記載の造影剤注入プロトコル決定方法である。
【0013】
この方法では、所定の微小単位時間の造影剤注入に対する撮影対象の応答を表すインパルス応答曲線が求められる。このインパルス応答曲線を時間軸上でずらして複数個重ね合わせることにより、任意の注入時間に対応する推定時間濃度曲線を作成することができる。
請求項4記載の発明は、前記インパルス応答曲線を求めるステップは、テスト注入時の注入速度の時間変化を表すテスト注入関数をフーリエ変換するステップ(S21)と、前記テスト時間濃度曲線をフーリエ変換するステップ(S22)と、前記テスト注入関数およびテスト時間濃度曲線の各フーリエ変換の比をとることにより、注入速度の時間変化を表す注入関数と時間濃度曲線との関係を表す伝達関数を求めるステップ(S24)と、前記伝達関数を逆フーリエ変換して前記インパルス応答曲線を求めるステップ(S25)とを含む、請求項3記載の造影剤注入プロトコル決定方法である。
【0014】
この方法では、テスト注入関数およびテスト時間濃度曲線の各フーリエ変換の比をとることによって、注入関数と時間濃度曲線との関係を表す伝達関数が求められる。この伝達関数を逆フーリエ変換すれば、前記インパルス応答曲線が得られる。
請求項5記載の発明は、前記推定時間濃度曲線を作成するステップは、テスト注入時の注入速度の時間変化を表すテスト注入関数をフーリエ変換するステップ(S21)と、前記テスト時間濃度曲線をフーリエ変換するステップ(S22)と、前記テスト注入関数およびテスト時間濃度曲線の各フーリエ変換の比をとることにより、注入速度の時間変化を表す注入関数と時間濃度曲線との関係を表す伝達関数(S24)を求めるステップと、注入速度を前記テスト注入速度と等しい一定値とし、前記注入時間を前記所定の注入時間に設定した場合の注入関数である設定注入関数をフーリエ変換するステップ(S31,S32)と、前記設定注入関数のフーリエ変換および前記伝達関数に基づいて、前記設定注入関数に対応する推定時間濃度曲線を作成するステップ(S33,S34)とを含む、請求項1記載の造影剤注入プロトコル決定方法である。
【0015】
この方法では、テスト注入関数およびテスト時間濃度曲線のフーリエ変換を求めるとともに、注入時間をテスト注入時間とは異なる所定の注入時間に設定した場合の注入関数である設定注入関数のフーリエ変換が求められる。そして、テスト注入関数およびテスト時間濃度曲線の各フーリエ変換の比をとることによって伝達関数が求められる。さらに、この伝達関数と前記設定注入関数のフーリエ変換とに基づき、前記設定注入関数に対応する推定時間濃度曲線が作成される。伝達関数は、任意の注入関数に対する時間濃度曲線の関係を表すものであるため、この伝達関数を用いることにより、時間濃度曲線を推定することができる。より具体的には、伝達関数および設定注入関数のフーリエ変換に基づいて、周波数領域の推定時間濃度曲線が作成され(S33)、これをさらに逆フーリエ変換することにより、時間領域の推定時間濃度曲線を得ることができる(S34)。
【0016】
請求項6記載の発明は、前記テスト時間濃度曲線のフーリエ変換に対して高周波成分を除去するフィルタ処理を行うステップ(S23)をさらに含み、前記伝達関数を求めるステップは、前記フィルタ処理されたテスト時間濃度曲線のフーリエ変換を用いて行われる、請求項4または5記載の造影剤注入プロトコル決定方法である。
この方法では、テスト時間濃度曲線のフーリエ変換に対して、高周波成分を除去するフィルタ処理が行われる。これにより、請求項4記載の発明と組み合わせる場合には、高周波成分を含まない良好なインパルス応答曲線を作成することができる。また、請求項5記載の発明と組み合わせる場合には、高周波成分を含まない伝達関数を得ることができるので、良好な推定時間濃度曲線を得ることができる。
【0017】
請求項7記載の発明は、前記所定の注入時間は、互いに異なる複数の注入時間を含み、
前記推定時間濃度曲線を作成するステップは、前記複数の注入時間にそれぞれ対応する複数の推定時間濃度曲線を作成するステップであり、前記濃度維持時間を確保できる最大濃度値を求めるステップは、前記複数の推定時間濃度曲線のそれぞれについて、前記濃度維持時間を確保できる最大濃度値を求めるステップであり、前記注入速度を求めるステップは、前記複数の推定時間濃度曲線のそれぞれについて求められた複数の最大濃度値と前記所要濃度値とに基づいて、前記複数の注入時間にそれぞれ対応する複数の注入速度を求めるステップであり、前記注入プロトコルを作成するステップは、前記複数の注入速度およびそれらにそれぞれ対応する複数の造影剤注入量の複数の対をそれぞれ含む複数の注入プロトコルを作成するステップである、請求項1~6のいずれかに記載の造影剤注入プロトコル決定方法である。
【0018】
この方法により、複数の注入時間に対応する注入速度が求められ、さらにそれらに対応する造影剤注入量が求められる。その結果、造影剤注入量および注入速度の組をそれぞれ含む複数の注入プロトコルを得ることができる。この複数の注入プロトコルの中から、注入速度や造影剤注入量を考慮して、適切な注入プロトコルを選択すればよい。
請求項8記載の発明は、前記複数の注入プロトコルから、注入速度が所定範囲内の値である注入プロトコルを抽出するステップ(S12)をさらに含む、請求項7記載の造影剤注入プロトコル決定方法である。
【0019】
この方法では、注入速度が所定範囲内の値である注入プロトコルを抽出することができるので、前記複数の注入プロトコルを、さらに、実際に適用可能な注入プロトコルに絞り込むことができる。
請求項9記載の発明は、前記複数の注入プロトコルから、注入速度が最低の注入プロトコルを抽出するステップ(S12)をさらに含む、請求項7または8記載の造影剤注入プロトコル決定方法である。
【0020】
この方法によれば、注入速度が最低の注入プロトコルが抽出されるので、撮影対象(患者)に対する負担の少ない注入プロトコルを選択することができる。
請求項10記載の発明は、前記複数の注入プロトコルから、造影剤注入量が最低の注入プロトコルを抽出するステップ(S12)とをさらに含む、請求項7~9のいずれかに記載の造影剤注入プロトコル決定方法である。
【0021】
この方法によれば、造影剤注入量が最低の注入プロトコルが抽出されるので、撮影対象(患者)に対する負担の少ない注入プロトコルを選択することができる。
請求項11記載の発明は、撮影対象に対して一定のテスト注入速度で所定のテスト注入時間に渡って造影剤をテスト注入したときに関心領域を撮像して得られた画像濃度の時間変化を表すテスト時間濃度曲線に基づいて本番検査のための造影剤注入プロトコルを演算する装置(2)であって、前記テスト時間濃度曲線に基づいて、注入速度を前記テスト注入速度と等しい一定値とし、前記テスト注入時間とは異なる所定の注入時間を設定した場合についての時間濃度曲線を推定して、推定時間濃度曲線を作成する推定時間濃度曲線作成手段(37)と、この推定時間濃度曲線作成手段によって作成された前記推定時間濃度曲線において所要の濃度維持時間を確保できる最大濃度値を求める最大濃度値演算手段(38)と、この最大濃度値演算手段によって演算された前記最大濃度値および所要濃度値に基づいて、前記濃度維持時間にわたって前記所要濃度値を維持できるように、前記所定の注入時間に対応した注入速度を定める注入速度演算手段(39)と、前記所定の注入時間およびこれに対応して前記注入速度演算手段によって演算された注入速度に基づいて造影剤注入量を求め、この造影剤注入量およびこれに対応する前記注入速度の対を含む注入プロトコルを作成する注入プロトコル作成手段(40)とを含む、造影剤注入プロトコル演算装置である。
【0022】
この構成によれば、テスト注入の結果に基づいて、所定の濃度維持時間にわたって所要濃度値を確保できる適正な一相注入プロトコルを自動的に得ることができる。
むろん、この造影剤注入プロトコル演算装置の発明についても、前述の造影剤注入プロトコル決定方法の発明に関連して説明したのと同様な変形を施すことができる。
前述のような造影剤注入プロトコル演算装置は、所定のコンピュータプログラムをコンピュータに実行させることによって実現することができる。この場合、コンピュータプログラムは、コンピュータ上で実行されることにより、当該コンピュータを前記の各機能実現手段として機能させるものである。このようなコンピュータプログラムは、コンピュータによる読み取りが可能な記録媒体の形態で提供されてもよいし、通信回線を伝搬する信号の形態で提供されてもよい。
【0023】
請求項12記載の発明は、撮影対象に造影剤を注入する造影剤注入手段(3)と、前記テスト注入速度およびテスト注入時間に対応したテスト注入プロトコルに従って前記撮影対象に造影剤が注入されるように前記造影剤注入手段を制御するテスト注入制御手段(32,S1,S2)と、請求項11記載の造影剤注入プロトコル演算装置と、この造影剤注入プロトコル演算装置によって演算された注入プロトコルに従って前記撮影対象に造影剤が注入されるように前記造影剤注入手段を制御する本番注入制御手段(32,S13)とを含む、造影剤注入装置である。
【0024】
この構成により、テスト注入の結果に基づき、適正な一相注入プロトコルが求められ、さらに、求められた注入プロトコルに従って、撮影対象に対して造影剤を注入することができる。
請求項13記載の発明は、請求項12記載の造影剤注入装置と、撮影対象を撮影して画像濃度に対応する信号を生成する撮影手段(1)と、テスト注入時に前記撮影対象の関心領域を撮影するように前記撮影手段を制御するテスト撮影制御手段(31,S3)と、前記本番注入制御手段によって前記造影剤注入手段が制御されるときに、これに同期して前記撮影対象の関心領域を撮影するように前記撮影手段を制御する本番撮影制御手段(31,S13)とを含む、撮影システムである。
【0025】
この構成により、テスト検査および本番検査を、造影剤注入装置および撮影装置を制御することにより、適切な一相注入プロトコルを適用して、自動的に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
1.撮影システムの構成
図1は、この発明の一実施形態に係る撮影システムの構成例を示すブロック図である。この撮影システムは、CTスキャナ1と、操作コンソール2と、自動注入器3とを備えている。CTスキャナ1は、被検体(医療現場における患者)の断面画像を撮影するための装置である。自動注入器3は、被検体に血管造影剤を自動注入するための装置である。操作コンソール2は、CTスキャナ1および自動注入器3との間でデータを授受し、これらを制御する。より具体的には、操作コンソール2は、CTスキャナ1に対して、スキャン範囲、スキャン開始時間その他の制御データを与えるとともに、CTスキャナ1から撮影結果を表すデータを受信する。また、操作コンソール2は、自動注入器3に対して注入プロトコル(この実施形態では、造影剤注入量および注入速度を含む。)を設定するとともに、自動注入器3からの動作情報(注入開始、注入終了等)を受信する。
【0027】
操作コンソール2は、コンピュータとしての基本構成を有している。より具体的には、二次元画像を表示する表示装置5と、キーボード、マウスその他の操作入力部6と、CPUを含むデータ処理部7と、各種のデータやプログラムを記録する記憶部8と、CTスキャナ1および自動注入器3に対するデータ授受のためのインタフェース部9とを備えている。記憶部8は、RAM、ROM、ハードディスクその他の適切な記憶媒体で構成されており、少なくともその記憶領域の一部はデータの書き込みが可能なものである。
【0028】
データ処理部7は、記憶部8に格納されたプログラムに従って動作し、これにより、データ処理部7および記憶部8などによって、この実施形態に係る造影剤注入プロトコル演算装置が構成されている。また、この造影剤注入プロトコル演算装置と自動注入器3とによって、この実施形態に係る造影剤注入装置が構成されている。
自動注入器3は、被検体の血管に造影剤を注入するための注入ヘッド10と、この注入ヘッド10の動作を制御するための制御ユニット11と、操作コンソール2との間でデータを授受するためのインタフェース部12とを備えている。制御ユニット11は、操作コンソール2から受け渡される注入プロトコルに従って注入ヘッド10を制御する。また、制御ユニット11は、注入ヘッド10の作動状態を監視し、造影剤の注入開始およびその完了を操作コンソール2へと通知する。
2.CT(Computed Tomography; コンピュータ断層撮影)
CT画像とは、被検体の断面画像であり、X線を用いて得られたスキャンデータに対して画像再構成処理を行うことによって得ることができる。
2-1.CTの原理
図2に、CTスキャナ1による走査方法の一例を示す。図2に示すのは、第3世代rotate/rotate方式による走査方式であり、被検体15を包含する広がり角度30~40°の扇状X線16(fan beam方式)をX線管17から発生させ、X線管17に対向する位置に、検出器18として、円弧上に500~900個の検出チャンネルを持つXe電離箱検出器が配置されている。X線管17と検出器18とは一体となって回転し、被検体15を走査する(非特許文献2参照)。
【0029】
X線管17から出たX線16は、被検体15を透過し、検出器18で検出されて、その強度が電気信号として計測される。X線16は、被検体15を透過している間に吸収され、その強度が弱くなる。X線16の吸収の度合い(X線減弱係数) は、物質によって異なる。したがって、CTにおいて、被検体15は、X線減弱係数の空間的な分布f(x,y,z)によって表されることになる。
【0030】
X線管17と検出器18とは、z=一定の平面(被検体15の体軸に直交する平面)上を回転し、この平面に含まれるあらゆる直線に沿って透過X線の強度を測定する。これにより、f(x,y,z){z=一定}という二次元の分布に関連するデータが収集される。これをスキャンといい、得られたデータをスキャンデータ(透過X線データ)という。
スキャンデータは、被検体15の一次元投影分布の集まりである。このデータがCTスキャナ1から操作コンソール2に受け渡され、この操作コンソール2において画像再構成が行われる。これによって、X線減弱係数の分布を表す二次元画像が得られる。スライス面zを少しずつ変えて同じことをくり返せば、最終的に三次元の分布f(x, y, z) が、多数の二次元画像の集合として表現されることになる。
【0031】
三次元データを得る方式としては、ヘリカルCTが挙げられる。この方式は、X線16を照射しながらX線管17および検出器18を連続回転すると同時に、被検体15の乗る寝台(図示せず)を体軸方向に移動させ、2つの運動の合成によって被検体15を螺旋状に走査した投影データを得るものである。
人体臓器の多くは水に近いX線減弱係数を持つので、水を基準にした尺度を使うと便利である。そこで、X線減弱係数の値に変換を施し、水が0、空気が-1000になるようにする。この尺度をCT値(単位:Hounsfield Unit=H.U.)という(非特許文献3)。
2-2.CTにおける画像再構成
CTでの画像再構成とは、多方向から得られた被検体の一次元投影分布から、線源に関係する物理量の分布を二次元の画像として再生することである。Radonの原理に従って投影データから画像を再構成する数学的手法には、いくつかの方法があり、逆投影法、逐次近似法および解析的方法に大別される。
【0032】
図3のように、透過X線データ(投影データ)から減弱係数の分布を推定する直観的な方法が逆投影法である。被検体を透過して得られた透過X線データの値を逆に投影し、すべての方向の逆投影を重ね合わせると、元の位置の減弱係数を推定できる。実際には、透過X線データに“ボケ” が含まれているため、そのまま使うことはできないが、基本的には、透過X線データの修正とこれを逆投影する処理とを数学的に行っている。
【0033】
X線CTでは、一般的に、フィルタ補正逆投影法またはコンボリューション逆投影法が用いられている。フィルタ補正逆投影法、コンボリューション逆投影法の具体的な手順を以下に示す。
図4に示すように、静止した直交座標系(x,y)に物体が置かれていて、この物体のX線減弱係数の(x,y)平面上における分布がf(x,y)により表されるものとする。(x,y)座標系に対して角度θだけ傾斜した新しい座標系(s,t)を定義し、そのt軸に沿って物体の外部からX線を照射して、物体に入射させるものとする。このとき、投影データp(s,θ)(透過X線データ)は、直線Ls,θ(t軸に平行で座標系原点からs軸方向にsだけ変位した直線)に沿った線積分を用いて、次式(1)で表される。
【0034】
【数1】
JP0004086309B2_000002t.gif

【0035】
θを少しずつ変化させて得られる全方向の投影データp(s,θ) から分布f(x,y)を復元することが画像再構成となる。ここで、画像f(x,y)の二次元フーリエ変換は次式(2)のとおりであり、投影データp(s,θ) のsに関する一次元フーリエ変換は次式(3)のとおりである。
【0036】
【数2】
JP0004086309B2_000003t.gif

【0037】
ここで、(x,y)を角度θだけ回転させた座標が(s,t)なので、式(1)は、次式(4)のように書き換えられる。
【0038】
【数3】
JP0004086309B2_000004t.gif

【0039】
式(3)に式(4)を代入し、(s,t)を(x,y)に変数変換すると、次式(5)が得られる。
【0040】
【数4】
JP0004086309B2_000005t.gif

【0041】
式(2)と式(5)とを比較すると、次式(6)の関係を得る。
【0042】
【数5】
JP0004086309B2_000006t.gif

【0043】
この式は、f(x,y)のs軸への投影データp(s,θ) の一次元フーリエ変換P(w,θ)がf(x,y)の二次元フーリエ変換F(u,v) のw軸上の断面F(wcosθ,wsinθ) と一致することを示している。これを中央断面定理と呼び、この性質を用いて画像再構成を行う。
F(u,v) からf(x,y)を求めるフーリエ逆変換は、次式(7)のとおりである。
【0044】
【数6】
JP0004086309B2_000007t.gif

【0045】
この式(7)において、変数変換u=wcosθ、v=wsinθを行うと、次式(8)が得られる。
【0046】
【数7】
JP0004086309B2_000008t.gif

【0047】
この式(8)において、wに関する積分は、P(w,θ)と|w|の積のフーリエ逆変換を表しているが、これはP(w,θ)のフーリエ逆変換p(s,θ)と|w|のフーリエ逆変換の畳み込みとして計算することができる。したがって、|w|のフーリエ逆変換をq(s)とすると、次式(9)が得られる。q(s)は補正関数と呼ばれ、下記式(10)のとおりである。
【0048】
【数8】
JP0004086309B2_000009t.gif

【0049】
式(9)は投影データp(s,θ)に補正関数q(s)を畳み込みし、s=xcosθ+ysinθを満たすsに対する畳み込みの値を角度方向について加算すればf(x,y)が再構成できることを示している。フィルタ補正処理を周波数領域の乗算で行う式(8)をフィルタ補正逆投影法、空間領域の畳み込みで行う式(9)をコンボリューション逆投影法と呼ぶ。
2-3.CTAngiography (CTA;コンピュータ断層撮影血管造影法)
CTAとは、血管に造影剤を投与して行うCTであり、血行動態を調べたり、血管病変を診断する目的で行われる撮影法である。
【0050】
通常のX線撮影では、臓器、血管、筋肉などの軟部組織は、X線吸収値の差が小さく、満足な診断を行うことが困難である。そこで、X線造影剤を血管内に直接注入することで、造影剤と人体組織のX線吸収値の差によって、臓器の明瞭な像を得ることができる。したがって、CTA画像は、通常のCT画像と比較して、臓器や血管のコントラストがより強調される。腹部血管造影(たとえば腹部大動脈の血管造影)では、造影剤として、軟部組織よりもX線吸収値の高い水溶性ヨード造影剤が用いられる(非特許文献2)。
【0051】
一方、造影剤は時間経過に伴って血管内を運ばれていくので、造影剤を注入して得られる濃淡画像では、時間経過に伴って各部位の濃度値が変化する。CT造影像中の関心領域(注目領域)における濃度値の時間変化を表す曲線は「時間濃度曲線」と呼ばれる。
3.フーリエ変換を用いた時間濃度曲線の解析
3-1.対象データ
臨床において腹部大動脈のCT造影を行う際は、まず、本番検査に先だって、テスト検査として、10~20mlの造影剤を用いてテスト注入を行い、腹部大動脈のテスト時間濃度曲線(CT値の経時変化を表す時間濃度曲線) をデータとして得る。そのデータを元に、注目領域への造影剤到達時間を調べ、適切なCTスキャンの撮像開始時間を決定した上で、本番検査の撮像を行っている。
【0052】
従来では、テスト時間濃度曲線は、本番検査のCTスキャンの開始時間を決定する目的のみで計測されている。これに対して、この実施形態では、テスト時間濃度曲線とテスト注入パラメータとの2つのデータを用いることで、各々の患者(被検体)ごとの時間濃度曲線の特徴を解析し、本番検査における時間濃度曲線のデータを推定する。
よって、この実施形態において、解析、推定を行う対象は、図5(a)(b)に示すような、CTAにおける造影剤注入設定の時系列データ(注入パラメータ)と、その注入を行って得られた濃度変化の時系列データ(時間濃度曲線)である。
【0053】
図5(a)は自動注入器3(図1参照)に設定される造影剤注入速度の時系列データであり、これを以後、「造影剤注入関数」または単に「注入関数」(造影剤注入速度の時間変化を表す関数)と呼ぶ。テスト検査時の造影剤注入関数を区別するときには「テスト注入関数」と呼ぶ。
図5(b)は2-3節で述べたCTAにより獲得した造影像の腹部大動脈部分の濃度値の時系列データ例であり、このような時系列データが「時間濃度曲線」を表すことになる。テスト検査時において、CTAは、腹部の特定断面に対して一定時間連続して行われ、その時間内で一定間隔ごとに造影像を得る。テスト検査によって得られる時間濃度曲線を区別するときには「テスト時間濃度曲線」と呼ぶことにする。
3-2.解析を行う上での基礎理論
従来手法(非特許文献1)では、図6に示すように、人体という複雑系をブラックボックスとみなして、入力と出力のみの分析、つまり、機器の造影剤注入関数injとそれによって得られる時間濃度曲線enhとの2つのデータのみを用いて分析している。
【0054】
造影剤注入関数injとは、自動注入器3(造影剤注入機器)の設定値である「注入速度」と「総注入量」との2つの値から求められる時系列データを指し、これを系への入力と考える。入力から出力までの中間処理は一つの伝達関数で表し、以後これを「伝達関数G」と呼ぶ。
伝達関数Gは、あらかじめテストを行って得られたある被検体の造影剤注入関数(テスト注入関数)と、それによる時間濃度曲線(テスト時間濃度曲線)の値とを用いて導出される。この伝達関数Gを用いることで、当該被検体(患者)について、任意の造影剤注入関数に対応する時間濃度曲線を推定することができる。また、逆に、理想的な時間濃度曲線を得るための造影剤注入関数を推定することが可能である。
【0055】
ここで、ブラックボックスとおいた部分を線形時不変システムであると仮定すると、次式(11)のように、動脈の時間濃度曲線enhは、系への入力となる造影剤注入関数injと、当該系を表すシステム関数gを畳み込み積分して求めることができ、フーリエ変換を用いて解析することが可能となる。
【0056】
【数9】
JP0004086309B2_000010t.gif

【0057】
3-3.フーリエ変換を用いた解析と推定
式(11)は、時間領域での分析を行うための数学的関係を表している。ここで、動脈の時間濃度曲線enhは、造影剤注入関数injとシステム関数gとの2つの関数の畳み込みであるので、フーリエ変換を式(11) に適用すると次式(12)のように表すことができる。
【0058】
【数10】
JP0004086309B2_000011t.gif

【0059】
これは周波数領域での計算であり、Enh、Inj、Gは、式(11) の各関数をフーリエ変換して得られる周波数領域の関数である。
時間領域の計算も含めた伝達関数Gの導出過程を図7に示す。
伝達関数Gは、造影剤のテスト注入関数Injtestと、それによって得られるテスト時間濃度曲線Enhtestとをあらかじめ測定しておくことで、次式(13)を用いて求められる。
【0060】
【数11】
JP0004086309B2_000012t.gif

【0061】
伝達関数Gが求まれば、造影剤注入関数Injから時間濃度曲線Enhを推定することは容易である。
時間濃度曲線の推定過程を図8に示す。
ある本番注入関数Injstdを入力として与えたときに得られる本番時間濃度曲線Enhstdは、次式(14)で推定できる。
【0062】
【数12】
JP0004086309B2_000013t.gif

【0063】
式(14)によって得られたEnhstdに逆フーリエ変換を適用すれば、時間領域の時間濃度曲線enhstdが得られる。
ここで、フーリエ変換の特性から、次式(15)によって、理想的な時間濃度曲線Enhidealを得るための理想的な注入関数Injidealを計算することが可能である。理想的な注入関数Injidealの推定過程を図9に示す。
【0064】
【数13】
JP0004086309B2_000014t.gif

【0065】
伝達関数Gの周波数スペクトルにおいて、0でない周波数成分に対しては、式(15)は有効である。しかし、一般に、伝達関数Gの高周波成分には0の値が含まれているため、対応するEnhidealの高周波成分の計算を行わないようにすべきことに注意を要する。
腹部大動脈の理想的な時間濃度曲線を得るための理想的な造影剤注入関数の理論値injidealは、式(15)によって得られる注入関数Injidealを時間領域に逆フーリエ変換することによって計算することができる。
【0066】
臨床で用いる場合は、理想的な造影剤注入関数の理論値に対してフィッティングを行うとともに、人体に注入を行っても問題のない注入パラメータを決定する必要がある。
非特許文献1に示されているとおり、理想的な造影剤注入関数に対して、現実的な造影剤注入関数をフィッティングするには、二相注入が必要になるが、実際の医療の現場では、二相注入は現実的でない場合が多い。したがって、実際には、式(15)によって理想的な造影剤注入関数を求めても、これを実現する現実的な手段がない。
4.造影剤注入パラメータの推定
図10は、操作コンソール2に備えられたデータ処理部7(図1参照)の機能的な構成を説明するためのブロック図である。データ処理部7は、所定のプログラムを実行することによって、図10に示された複数の機能処理部としての機能を実現するようになっている。これらの機能処理部には、CTスキャナ1を制御するスキャン制御部31と、自動注入器3を制御する注入制御部32と、CTスキャナ1によって収集された透過X線データに基づいて、被検体の断面画像を再構成する画像再構成部33と、テスト注入によって得られたデータに基づいて本番注入時の造影剤注入プロトコルを演算する注入プロトコル演算部34とを含む。
【0067】
注入制御部32は、記憶部8からテスト注入プロトコルを読み出し、これをインタフェース部9を介して自動注入器3の制御ユニット11に受け渡すとともに、制御ユニット11から自動注入器3の動作情報(造影剤の注入開始および注入終了に関する情報を含む。)を、インタフェース部9を介して受け取る。テスト注入プロトコルは、操作者が操作入力部6の操作によって予め入力することとして、この入力されたテスト注入プロトコルが記憶部8に格納されるようになっていてもよい。このテスト注入プロトコルは、この実施形態では、一相注入に対応する注入プロトコルであり、テスト造影剤注入量およびテスト注入速度の組によって表される。この場合、テスト注入関数は、一定のテスト注入速度がテスト注入時間(=テスト造影剤注入量÷テスト注入速度)だけ継続する矩形の関数である。
【0068】
スキャン制御部31は、注入制御部32と連携してCTスキャナ1を制御する。すなわち、注入制御部32から、造影剤の注入開始および注入終了に関する情報を得て、CTスキャナ1による撮影動作の開始および終了を制御する。この期間中、CTスキャナ1は、被検体の関心領域を含む断面の撮影を継続し、透過X線データを出力する。この透過X線データがインタフェース部9を介して受信され、記憶部8へと蓄積される。
【0069】
画像再構成部33は、記憶部8に蓄積された透過X線データに基づいて、二次元画像を再構成する。これにより、時系列に従う複数枚の断面画像が再構成され、この複数枚の断面画像を表す画像データが記憶部8に書き込まれる。
注入プロトコル演算部34は、テスト時間濃度曲線作成部36と、推定時間濃度曲線作成部37と、最大濃度値演算部38と、注入速度演算部39と、注入プロトコル作成部40と、注入プロトコル選択部41とを含み、本番検査の際に使用する注入プロトコルを演算する。
【0070】
テスト時間濃度曲線作成部36は、テスト注入時に画像再構成部33によって作成された複数枚の断面画像中の関心領域に注目し、当該関心領域における画像濃度の時間変化を表すテスト時間濃度曲線(画像濃度の時系列データ)を作成する。このテスト時間濃度曲線は、記憶部8に格納される。
推定時間濃度曲線作成部37は、記憶部8からテスト時間濃度曲線を読み出し、このテスト時間濃度曲線に基づいて、本番検査の際に想定される複数の造影剤注入時間(注入時間候補)に対応する推定時間濃度曲線を作成する。この推定時間濃度曲線は、造影剤の注入速度をテスト注入時と等しい値として、様々な注入時間で造影剤を被検体に注入したときにおいて、関心領域において観測されると予測される時間濃度曲線である。こうして作成された複数の推定時間濃度曲線は、記憶部8に格納される。
【0071】
最大濃度値演算部38は、記憶部8から、前記複数の推定時間濃度曲線を読み出し、各推定時間濃度曲線において、所定の濃度維持時間Tを満たすことができる最大濃度値hを求める。濃度維持時間Tは、操作入力部6からの設定操作によって、操作者によって設定することができるようになっていてもよい。この濃度維持時間Tは、CTA撮影時において、関心領域の画像濃度が所定の所要濃度値H(濃度増強値)以上に保持されるべき時間である。各推定時間濃度曲線について求められた最大濃度値hは、記憶部8に格納されるようになっている。
【0072】
注入速度演算部39は、各推定時間濃度曲線について求められた最大濃度値hを記憶部8から読み出し、各最大濃度値hを前記所要濃度値Hと比較する。この比較結果に基づき、注入速度演算部39は、各推定時間濃度曲線に対して(すなわち、各注入時間に対して)、前記所要濃度値Hを達成することができる造影剤注入速度vを演算する。この演算された複数の造影剤注入速度vは、それぞれの注入時間と対応付けられて、記憶部8に格納される。
【0073】
注入プロトコル作成部40は、記憶部8から前記演算された複数の注入速度vを読み出し、それらに対応する注入速度を乗じることによって、造影剤注入量(=注入速度×注入時間)を求める。こうして、造影剤注入量および注入速度vの組からなる複数の造影剤注入プロトコルが作成され、記憶部8に格納される。
注入プロトコル選択部41は、操作入力部6からの入力によって設定される造影剤注入条件に基づき、記憶部8に格納された前記複数の造影剤注入プロトコルの中から、適切な造影剤注入プロトコルを選択し、これを本番注入プロトコル(本番検査に使用すべき注入プロトコル)として記憶部8に格納する。この本番注入プロトコルが、注入制御部32により、自動注入器3の制御ユニット11へと受け渡される。
4-1.重ね合わせ、および、フーリエ変換を用いた濃度曲線の生成
人体という複雑系を線形時不変システムと仮定することにより、注入速度をテスト注入速度(vtest)と等しい値で一定値とし、注入時間をテスト注入時間ttestの自然数倍としたときの時間濃度曲線は、図11に示すように、テスト時間濃度曲線の重ね合わせによって、時間領域で直接計算できる。より具体的には、テスト時間濃度曲線21を時間軸方向にテスト注入時間ttestだけずらしたシフト時間濃度曲線22を作成し、これらの曲線21,22を重ね合わせることによって、テスト注入時間の2倍の注入時間に対応した推定時間濃度曲線23を作成することができる。同様にして、テスト注入時間の任意の自然数倍の注入時間に対応した推定時間濃度曲線の作成が可能である。
【0074】
図12は、推定時間濃度曲線作成部37の構成例を説明するためのブロック図である。この推定時間濃度曲線作成部37は、記憶部8から読み出したテスト時間濃度曲線をテスト注入時間ttestの自然数倍だけ時間軸方向にずらしたシフト時間濃度曲線を作成するシフト処理部45と、重ね合わせ処理部46とを備えている。重ね合わせ処理部46は、シフト処理部45によって作成されたシフト時間濃度曲線と、前記記憶部8から読み出したテスト時間濃度曲線とを重ね合わせる重ね合わせ処理を実行する。
【0075】
シフト処理部45は、テスト注入時間ttestの2倍の注入時間に対応する推定時間濃度曲線を作成するときには、テスト時間濃度曲線をテスト注入時間ttestだけ時間軸方向にずらした1つのシフト時間濃度曲線を作成する。また、テスト注入時間の3倍の注入時間に対応する推定時間濃度曲線を作成すべきときには、テスト時間濃度曲線をテスト注入時間ttestだけ時間軸方向にずらした第1のシフト時間濃度曲線と、テスト時間濃度曲線をテスト注入時間ttestの2倍の時間だけ時間軸方向にずらした第2のシフト時間濃度曲線とを作成する。テスト注入時間の4倍以上の自然数倍の注入時間に対応する推定時間濃度曲線を作成するときには、それに応じて、テスト注入時間ttestずつ時間軸上でずれた3個以上のシフト時間濃度曲線がシフト処理部45によって作成される。こうしてシフト処理部45で作成された1つまたは複数のシフト時間濃度曲線が、重ね合わせ処理部46によってテスト時間濃度曲線に重ね合わせられることにより、テスト注入時間ttestの任意の自然数倍の注入時間に対応する推定時間濃度曲線を作成することができる。
【0076】
時間領域の計算では、生成できる濃度曲線が、テスト注入時間の自然数倍の注入時間に関するものに制限されるという制約がある。
そこで、フーリエ変換を利用することにより、図7および図8の関係から、任意の注入関数に対する推定時間濃度曲線が得られるので、注入速度一定の条件下で注入時間を任意の値に変化させたときの推定時間濃度曲線を生成できる。
【0077】
図13は、推定時間濃度曲線作成部37の他の構成例を説明するためのブロック図である。この推定時間濃度曲線作成部37は、テスト注入関数injtestをフーリエ変換する第1フーリエ変換部51と、テスト時間濃度曲線enhtestをフーリエ変換する第2フーリエ変換部52と、第2フーリエ変換部52の演算結果(周波数領域のテスト時間濃度曲線Enhinj)に対して高周波成分を除去するためのフィルタ処理を行うフィルタ処理部54と、第1フーリエ変換部51およびフィルタ処理部54の演算結果(周波数領域のテスト注入関数Injtestおよびテスト時間濃度曲線Enhtest(フィルタ処理後のもの))に基づいて、前記式(13)に従って伝達関数Gを演算する伝達関数演算部53と、この伝達関数演算部53よって求められた伝達関数Gに対して逆フーリエ変換を施し、インパルス応答を求める逆フーリエ変換部55と、このインパルス応答を時間軸上でシフトさせるシフト処理部57と、シフト処理部57によってシフトされたインパルス応答を逆フーリエ変換部55によって求められたインパルス応答に重ね合わせることによって、任意の注入時間の推定時間濃度曲線を演算する重ね合わせ処理部56と含んでいる。
【0078】
伝達関数Gの逆フーリエ変換はシステム関数gとなり、このシステム関数gは被検体に対応したブラックボックス(図6参照)のインパルス応答(微小単位時間(たとえば0.25秒)の注入に対応する被検体の応答)を表す。そこで、このインパルス応答を、推定時間濃度曲線を求めたい注入時間に応じて時間軸上でシフトさせて重ね合わせることにより、任意の注入時間に対応した推定時間濃度曲線を求めることができる。
【0079】
フィルタ処理部54は、たとえば、テスト時間濃度曲線のスペクトルにおいて、最大振幅に対して所定比率(たとえば1%)に満たない周波数成分を除去することによって、高周波成分を除去する。これにより、伝達関数Gの高周波成分に0値が含まれることを回避できる。
図14(a)は周波数領域のテスト時間濃度曲線から高周波成分を除去せずに伝達関数Gを求めた場合のインパルス応答(システム関数g)を示し、図14(b)は前述の高周波除去フィルタ処理を行ったテスト時間濃度曲線に基づいて伝達関数Gを求めた場合のインパルス応答(システム関数g)を示す。これらの比較から、フィルタ処理によって、インパルス応答の高周波成分を除去できることが判る。
【0080】
図15(a)~(h)に、図14(b)のインパルス応答を重ね合わせて種々の注入時間(1秒、2秒、3秒、4秒、5秒、10秒、15秒、20秒)の推定時間濃度曲線を生成した例を示す。このように、テスト注入時間の自然数倍の注入時間に限らず、任意の注入時間の推定時間濃度曲線を生成できる。
図16に、前述の図12の構成によって作成した推定時間濃度曲線の一例(実線)と、図13の構成によって作成した推定時間濃度曲線の一例(破線)とを併せて示す。これらは、同じテスト時間濃度曲線から生成したものである。
【0081】
図16の2つの曲線の比較から、フィルタ処理によって一部の高周波成分を除外した場合でも、重ね合わせで生成した時間濃度曲線とほぼ同じ推定時間濃度曲線を得ることができ、フィルタ処理の影響は非常に小さいことが分かる。したがって、フーリエ変換を利用することにより、注入時間に関する制約を避けながら、任意の注入時間についての時間濃度曲線を良好に推定できる。逆に、テスト注入時間の自然数倍の注入時間についてのプロトコル演算で十分な場合には、フーリエ変換を含まない簡単な処理で時間濃度曲線を良好に推定できる。
【0082】
図17は、推定時間濃度曲線作成部37のさらに他の構成例を説明するためのブロック図である。この図17において、前述の図13示された各部と同様の機能部分には図13の場合と同一の参照符号を付して示す。この推定時間濃度曲線作成部37は、テスト注入関数injtestをフーリエ変換する第1フーリエ変換部51と、テスト時間濃度曲線enhtestをフーリエ変換する第2フーリエ変換部52と、第2フーリエ変換部52の演算結果(周波数領域のテスト時間濃度曲線Enhtest)に対して高周波成分を除去するためのフィルタ処理を行うフィルタ処理部54と、第1フーリエ変換部51およびフィルタ処理部54の演算結果(周波数領域のテスト注入関数Injtestおよびテスト時間濃度曲線Enhtest(フィルタ処理後のもの))に基づいて、前記式(13)に従って伝達関数Gを演算する伝達関数演算部53と、テスト注入時間とは異なる複数の注入時間に対応した注入関数(設定注入関数:注入速度の時系列データ)のフーリエ変換を作成する第3フーリエ変換部58と、この第3フーリエ変換部58の演算結果(周波数領域の注入関数)とフィルタ処理後の伝達関数Gとを用い、前記式(14)に従って、周波数領域の推定時間濃度曲線Enhを求める推定時間濃度曲線演算部59と、この推定時間濃度曲線演算部59の演算結果に対して逆フーリエ変換を施すことによって、時間領域の推定時間濃度曲線enhを求める逆フーリエ変換部60とを備えている。
【0083】
この構成によって、任意の注入時間に対応した注入関数によって得られるべき時間濃度曲線(推定時間濃度曲線)を演算することができる。ただし、この実施形態では、造影剤の注入を一相注入によって行うこととしているので、第3フーリエ変換部58に与えられる注入関数は、注入速度がテスト注入速度と等しく、注入時間のみがテスト注入時間と異なる矩形の関数である。したがって、一般には、図13の構成の場合の方が、処理が簡単になる。
【0084】
フィルタ処理部54の働きによって、テスト時間濃度曲線Enhtestの高周波成分を予め除去しているため、伝達関数Gの高周波成分に0値を含むことを回避できる。
4-2.造影剤注入パラメータの推定
図18は、推定時間濃度曲線作成部37が前述の図12の構成を有する場合に、本番検査のための注入プロトコルを求める処理手順を説明するためのフローチャートである。操作者は、予め、操作入力部6を操作することによって、テスト注入プロトコルを入力する(ステップS1)。このテスト注入プロトコルは、例えば、テスト注入速度vtest、テスト注入時間ttestおよびテスト注入量atestを含み、a=vtestt(aは注入量、vは注入速度、tは時間)の関係となるように、すなわち、テスト注入時間に渡って一定のテスト注入速度vtestで造影剤が注入されるように定められる。この場合、テスト注入関数injtestは、一定のテスト注入速度vtestがテスト注入時間ttestにわたって継続する矩形の関数で表される。
【0085】
注入制御部32は、テスト注入プロトコルを自動注入器3の制御ユニット11に受け渡す。これにより、自動注入器3は、テスト注入プロトコルに従って、造影剤を被検体に対してテスト注入する(ステップS2)。このときの自動注入器3の動作を表す動作情報は、制御ユニット11から注入制御部32に通知され、この動作情報に基づき、スキャン制御部31が、CTスキャナ1を制御する。こうして、造影剤のテスト注入に並行して、被検体がプレスキャン(テスト検査のためのスキャン)される(ステップS3)。
【0086】
CTスキャナ1によって収集された透過X線データは、操作コンソール2の記憶部8に格納され、この透過X線データに基づき、画像再構成部33によって、時系列に従う複数枚のCTA造影像を表す画像データが作成される(ステップS4)。さらに、この複数枚の画像データに基づき、テスト時間濃度曲線作成部36により、テスト時間濃度曲線が作成される(ステップS5)。
【0087】
次に、操作者は、本番検査の際に獲得したい濃度増強値HU[ΔHU]と維持時間T(秒)とを操作入力部6から入力する(ステップS6)。
推定時間濃度曲線作成部37は、前述のように、テスト時間濃度曲線の重ね合わせ処理によって、注入速度をテスト注入速度と等しい値で一定とし、注入時間をテスト注入時間の自然数倍とした場合に得られるべき時間濃度曲線の推定値(推定時間濃度曲線)を作成して、記憶部8に格納する(ステップS7)。推定時間濃度曲線作成部37は、異なる複数の注入時間に関して同様の処理を行い、複数の推定時間濃度曲線を作成する。
【0088】
作成される推定時間濃度曲線の例は、図19(a),19(b),19(c)に示されている。これらの各図の上段には、注入関数inj(注入速度vの時間変化を表す関数)が示されており、各図の下段に推定時間濃度曲線enhが示されている。
図19(a)は、テスト注入関数inj1と、それに対応するテスト時間濃度曲線enh1を示している。この例では、テスト注入vtest速度を3ml/秒として、テスト注入時間ttestを5秒とした例が示されている。本番検査において濃度増強値Hを維持すべき維持時間Tを確保できる最大濃度値はh1である。
【0089】
図19(b)は、注入速度vをテスト注入速度vtestと等しい一定値3ml/秒とし、注入時間t2をテスト注入時間ttestの2倍の10秒とした注入関数inj2の場合を示す。図19(a)のテスト時間濃度曲線ehn1に対して、これをテスト注入時間ttestである5秒だけ時間軸方向にシフトさせて得られるシフト時間濃度曲線を重ね合わせることにより、図19(b)の推定時間濃度曲線enh2が得られる。この推定時間濃度曲線enh2において維持時間Tを確保できる最大濃度値はh2である。
【0090】
図19(c)は、注入速度vをテスト注入速度vtestと等しい一定値3ml/秒とし、注入時間t6をテスト注入時間ttestの6倍の30秒とした注入関数inj6の場合を示す。図19(a)のテスト時間濃度曲線ehn1に対して、これを5秒(テスト注入時間ttestの1倍)、10秒(テスト注入時間ttestの2倍)、15秒(テスト注入時間ttestの3倍)、20秒(テスト注入時間ttestの4倍)、および25秒(テスト注入時間ttestの5倍)だけ時間軸方向にそれぞれシフトさせて得られる五つのシフト時間濃度曲線を重ね合わせることにより、図19(c)の推定時間濃度曲線enh6が得られる。この推定時間濃度曲線enh6において維持時間Tを確保できる最大濃度値はh6である。
【0091】
推定時間濃度曲線作成部37は、同様にして、テスト注入時間の3倍~5倍の注入時間t3~t5に対応した推定時間濃度曲線enh3~enh5を作成する。実際には、推定時間濃度曲線ehni(iは自然数であり、注入時間がテスト注入時間ttestの何倍であるかを表すインデックスである。)は、推定時間濃度曲線ehni-1に対して、テスト時間濃度曲線enhiを時間軸方向に(i-1)・ttestだけずらして得られる一つのシフト時間濃度曲線を重ね合わせることによって生成することができる。
【0092】
再び図18を参照する。
最大濃度値演算部38は、作成された複数の(この実施形態では6個の)推定時間濃度曲線enh1~enh6(ただし、enh1はテスト時間濃度曲線)において、前記維持時間Tを確保できる最大濃度値h1,h2,…,h6を求める(ステップS8)。維持時間Tは、CTスキャナ1における本番検査時の撮像に要する時間である。
【0093】
次に、注入速度演算部39は、各推定時間濃度曲線enh1~enh6に対して得られた最大濃度値h1~h6に対する濃度増強値Hの比H/hi(ただし、i=1,2,3,……)を求め、これにテスト注入速度vtestを乗じることによって、各注入時間tiに対応する注入速度vi(=vtest・H/hi)を求める(ステップS9)。このようにして注入速度viが求まるのは、注入関数inj(t)と濃度曲線enh(t)とが線形関係にあると仮定しているからである。
【0094】
さらに、注入プロトコル作成部40は、注入速度viと、これに対応する注入時間tiとを乗じることによって、造影剤注入量ai(ただし、a1=atest(テスト注入時の造影剤注入量)を演算する。こうして、造影剤注入量aiおよび注入速度viの組で表される6通りの注入プロトコルが得られ(ステップS10)、この6通りの注入プロトコルを表すデータが記憶部8に格納される。この注入プロトコルは、注入時間tiに渡って一定の注入速度viが保持される一相注入に対応した矩形の注入関数を表す。
【0095】
図20は、注入速度演算部39による処理の内容を説明するための図であり、図20(a)(b)(c)は、それぞれ、図19(a)(b)(c)に対応している。注入速度viを、テスト注入速度vtestのH/hi倍に設定することにより、各注入時間tiに渡る一相注入によって、維持時間Tにわたって所要の濃度増強値Hを確保できる。
なお、図20の各図の上段には、注入速度viをテスト注入速度vtestのH/hi倍した場合における推定時間濃度曲線が表されており、各図の下段には、それぞれ対応する注入関数が表されている。各注入関数は、造影剤注入量およびおよび注入速度の組によって表される注入プロトコルとして、前述のとおり、記憶部8に格納されることになる。図20の各図の上段に示す推定時間濃度曲線は、これを作成して記憶部8に格納しておくことにより、本番検査時において、CTスキャナ1による撮像タイミングの制御に用いることができる。各推定時間濃度曲線において、維持時間Tの開始時間が撮影を開始する時間となり、維持時間Tの終了時間以前に撮影を終了することになる。
【0096】
こうして6通りの注入プロトコルが求まると、図18に示すように、注入プロトコル選択部41は、操作者が操作入力部6からの入力によって指定する注入条件(ステップS11)に適合する1つの注入プロトコルを本番検査のための注入プロトコル(本番注入プロトコル)として選択する(ステップS12)。注入条件としては、たとえば造影剤注入量が最少であること、造影剤の注入速度が所定値以下であること、造影剤の注入速度が最低であること、その他、注目したいパラメータに応じて、適切な条件を設定することができる。
【0097】
このようにして本番注入プロトコルが定まると、この本番注入プロトコルが、注入制御部32から自動注入器3の制御ユニット11に受け渡される。それとともに、スキャン制御部31により、CTスキャナ1の制御が行われ、自動注入器3による造影剤の注入と同期して、本番検査のための撮像がCTスキャナ1によって実行される(ステップS13)。このときの撮像開始および終了のタイミングは、本番注入プロトコルに対応する推定時間濃度曲線に基づいて定められる。
【0098】
図21は、推定時間濃度曲線作成部37が前述の図13の構成を有する場合における処理手順を説明するためのフローチャートである。この図21において、前述の図18と同様の処理または操作が行われる各ステップには、図18の場合と同一の参照符号を付して示す。この図21に示されている処理では、図18におけるステップS7の処理の代わりに、次のような処理が行われる。
【0099】
すなわち、第1フーリエ変換部51によって、テスト注入関数injtestのフーリエ変換Injtestが求められる(ステップS21)。また、第2フーリエ変換部52によって、テスト時間濃度曲線ehhtestのフーリエ変換Ehhtestが求められ(ステップS22)、これに対してフィルタ処理部54によるフィルタ処理(高周波成分除去処理)が行われる(ステップS23)。こうして求められた周波数領域のテスト注入関数Injtestおよびテスト時間濃度曲線Ehhtestに基づき、伝達関数演算部53により、被検体の伝達関数Gが、前記式(13)に従って求められる(ステップS24)。さらに、この伝達関数Gに対して、逆フーリエ変換部55による逆フーリエ変換が行われることによって、被検体のシステム関数gが求められる(ステップS25)。このシステム関数gは、前述のとおりインパルス応答を表すものである。
【0100】
次いで、重ね合わせ処理部56およびシフト処理部57の働きによって、前記インパルス応答を複数の異なる注入時間tiに渡って時間領域で重ね合わせることにより、それぞれの注入時間tiに対応する複数の推定時間濃度曲線enhiが求められ、記憶部8に格納される(ステップS26)。この場合の注入時間tiは、テスト注入時間の自然数倍である必要はない。
【0101】
この後の処理は、図18を参照して説明したステップS8~S13の処理と同様である。
図22は、推定時間濃度曲線作成部37が前述の図17の構成を有する場合における処理手順を説明するためのフローチャートである。この図22において、前述の図21と同様の処理または操作が行われる各ステップには、図21の場合と同一の参照符号を付して示す。この図22に示されている処理では、図21におけるステップS25,S26の処理の代わりに、次のような処理が行われる。
【0102】
すなわち、注入速度viがテスト注入速度vtestに等しく、注入時間tiがテスト注入時間ttestとは異なる複数の注入関数inji(一相注入を表すもの)が作成される(ステップS31)。そして、個々の注入関数injiに対して、第3フーリエ変換部58により、注入関数injiのフーリエ変換Injiが求められる(ステップS32)。さらに、伝達関数Gと周波数領域の注入関数Injiとを用いて、前記式(14)に従って、推定時間濃度曲線演算部59により、周波数領域の推定時間濃度曲線Enhiが求められる(ステップS33)。これが逆フーリエ変換部55によって逆フーリエ変換されることにより、時間領域の推定時間濃度曲線enhiが得られ、記憶部8に格納される(ステップS34)。ステップS33およびS34の処理を複数の注入関数injiに対して繰り返し実行することによって、複数の注入時間tiにそれぞれ対応した複数の推定時間濃度曲線enhiが得られる。注入時間tiは、テスト注入時間ttestの自然数倍である必要はない。
【0103】
この後の処理は、図18を参照して説明したステップS8~S13の処理と同様である。
5.実験
5-1.ファントムの概要
ヒトの腹部大動脈の血流を摸倣するファントムを用いて実験を行った。このファントムは、その時間濃度曲線が、ヒトの時間濃度曲線と類似していることが実験的に確認されているものである。
【0104】
まず、このファントムにおいて想定されている、患者内に注入された造影剤の挙動を以下に示す。
ステップ1.自動注入器を用いて患者の左の肘静脈に造影剤を注入する。造影剤が注入完了した時点で肘静脈に溜まった造影剤を後押しするため、引き続き自動注入器によって生理食塩水の注入を行う。
ステップ2.注入された造影剤は、左肘静脈の血管を通り、心臓の右心房へ流入する。
ステップ3.造影剤は右心房から右心室、肺動脈、肺、肺静脈、そして心臓の左心房、左心室へと移動する。
ステップ4.造影剤は心臓の左心室から腹部大動脈へと流入する。
ステップ5.造影剤が腹部大動脈を通過する。CTAが行われるのはこの部位(スキャン領域)であり、定点で一定時間の造影が行われて、濃度値の変動を得る。
ステップ6.造影剤が腹部大動脈を通過した後、全身をめぐって再び右心房へと流入する。
ステップ7.ステップ3へ戻る。
【0105】
以上の造影剤の循環を摸倣したファントムの概略図を図23に示す。ここで、
0:自動注入器に設定されている造影剤注入速度(ml/秒)
v:ファントム内の循環速度(ml/秒)
C:チューブの容積(ml)
である。
【0106】
このファントムは、腹部大動脈の時間濃度変化に関係する人体の各部分をモデル化したものである。ステップ1、2の注入箇所から心臓までの肘静脈はチューブに、ステップ3の右心房から左心室までの心肺系はポンプと水槽に、ステップ4、5の腹部大動脈はスキャン領域P1に、ステップ6における「全身」はスキャン領域P1から水槽までの間に、それぞれ対応している。
【0107】
ファントムは水で満たされており、ポンプにより、循環速度Cv[ml/秒]で水を循環させている。また、造影剤注入後、同一速度で20mlの整理食塩水で後押しすることで、チューブ内の造影剤をファントムに注入している。
5-2.ファントム実験データ
ファントム実験では、CT装置としてPhilips Medical Systems(米国、Ohio 州、Cleveland 市)製Brilliance40(40列マルチスライスCT)を用い、自動注入器(Dual Shot、根本杏林堂、東京)から造影剤(Iomeron-350、ヨード含量300mgI/ml、エーザイ、東京)を注入した。注入開始後1秒ごとに60秒まで撮像し、腹部大動脈部(図23のスキャン領域P1)の濃度値を計測した。
【0108】
以下の計算では、1秒刻みの実測値のサンプリング間隔を線形補間により0.25秒としたデータを用いて推定した。
下記表1のテスト注入パラメータに対するテスト時間濃度曲線を図24に示す。
【0109】
【表1】
JP0004086309B2_000015t.gif

【0110】
下記表2に示す種々の注入パラメータで造影剤を注入して画像濃度を実測した観測値を図25(a)~(e)において曲線L1で示す。各図の曲線L2,L3は、前述の図13に示す手法によって作成した推定時間濃度曲線を示す。ただし、曲線L2はテスト時間濃度曲線(図24参照)の60秒までの全観測点のデータを用いた推定結果を示し、曲線L3はテスト時間濃度曲線(図24参照)の20秒までのデータを用い、20秒以降の濃度値を「0」とした場合の推定結果を示す。
【0111】
曲線L1と曲線L2,L3との比較から、本実施形態の手法により、時間濃度曲線の実測値に適合する推定時間濃度曲線が得られることがわかる。
【0112】
【表2】
JP0004086309B2_000016t.gif

【0113】
下記表3には、図24のテスト時間濃度曲線を用いて、注入時間10秒、20秒および30秒について、200HUの濃度増強を10秒間維持するのに必要な注入速度等を推定した結果を示す。この結果から、テスト時間濃度曲線の全観測点のデータを用いた場合と、テスト時間濃度曲線の0~20秒までのデータを用いた場合とでほぼ同じ結果が得られることがわかる。したがって、テスト時間濃度曲線において濃度変化が有意な変化を示す期間のデータを抽出して用いることによって、演算負荷を軽減しつつ、妥当な注入パラメータを決定できることがわかる。また、テスト時間濃度曲線において濃度変化が有意な変化を示す期間のデータが収集できれば十分であるので、テスト検査時におけるスキャン時間を短く設定することが可能であり、これにより、被曝の影響を軽減しつつ、妥当な注入パラメータを決定できる。
【0114】
【表3】
JP0004086309B2_000017t.gif

【0115】
6.まとめ
以上のようにこの実施形態によれば、注入速度をテスト注入速度と等しい一定値とし、注入時間をテスト注入時間とは異ならせた複数の注入関数のそれぞれについて、テスト時間濃度曲線に基づいて時間濃度曲線が推定される。そして、その推定時間濃度曲線において所要の濃度維持時間Tを確保できる最大濃度値hを求め、この最大濃度値hと所要濃度増強値Hとの比に基づいて注入速度vが求められる。このようにして、フィッティングを経験的に行ったりすることなく、濃度増強値Hを濃度維持時間Tに渡って維持できる複数の適正な注入プロトコルを得ることができる。しかも、この注入プロトコルは一相注入に対応するものであるので、実際の医療の現場において、現実に活用することができる。
7.変形例
前述の実施形態では、注入プロトコルに対する条件設定を行うことによって、本番検査に使用する注入プロトコルが自動的に選択されるようにしているが、操作者が、複数の注入プロトコルから本番検査に使用する注入プロトコルを手動で選択するようにしてもよい。
【0116】
また、前述の実施形態では、X線を利用した断層撮影に本発明を適用した例を示したが、この発明は、MRI(磁気共鳴イメージング)や超音波画像診断などの他の撮影法のシステムに対しても適用することができる。
さらに、前述の実施形態では、CTスキャナ1、操作コンソール2および自動注入器3が連携するシステムの例について説明したが、CTスキャナ1や自動注入器3から切り離されたコンピュータによって、テスト注入プロトコルおよびテスト時間濃度曲線に基づいて本番注入プロトコルを演算する造影剤注入プロトコル演算装置を構成するようにしてもよいし、このようなコンピュータと自動注入器とを接続して、注入プロトコル演算機能付きの造影剤自動注入装置を構成してもよい。
【0117】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】この発明の一実施形態に係る撮影システムの構成例を示すブロック図である。
【図2】CTスキャナによる走査方法の一例を示す概念図である。
【図3】透過X線データ(投影データ)から減弱係数の分布を推定する方法の一つである逆投影法を説明するための概念図である。
【図4】フィルタ補正逆投影法、コンボリューション逆投影法を説明するための概念図である。
【図5】造影剤注入関数および時間濃度曲線の例を示す図である。
【図6】人体を表すシステム関数gの考え方を示す概念図である。
【図7】人体を表す伝達関数Gの導出過程を説明するための図である。
【図8】時間濃度曲線の推定過程を説明するための図である。
【図9】理想的な注入関数の推定過程を説明するための図である。
【図10】操作コンソールに備えられたデータ処理部の機能的な構成を説明するためのブロック図である。
【図11】テスト時間濃度曲線の重ね合わせによって推定時間濃度曲線を求める処理を説明するための図である。
【図12】推定時間濃度曲線作成部の構成例を説明するためのブロック図である。
【図13】推定時間濃度曲線作成部の他の構成例を説明するためのブロック図である。
【図14】システム関数(インパルス応答)を示す図である。
【図15】インパルス応答から作成した推定時間濃度曲線の例を示す図である。
【図16】図12および図13の構成によって作成した推定時間濃度曲線の一例を示す。
【図17】推定時間濃度曲線作成部のさらに他の構成例を説明するためのブロック図である。
【図18】推定時間濃度曲線作成部が図12の構成を有する場合に、本番検査のための注入プロトコルを求める処理手順を説明するためのフローチャートである。
【図19】推定時間濃度曲線から所要の維持時間を確保できる最大濃度値を求める処理を説明するための図である。
【図20】所要の濃度増強値と前記最大濃度値とから注入速度を求める処理を説明するための図である。
【図21】推定時間濃度曲線作成部が図13の構成を有する場合における処理手順を説明するためのフローチャートである。
【図22】推定時間濃度曲線作成部が図17の構成を有する場合における処理手順を説明するためのフローチャートである。
【図23】人体における造影剤の循環を模倣したファントムの構成を示す概略図である。
【図24】表1のテスト注入パラメータに対するテスト時間濃度曲線を示す
【図25】実測により求めた時間濃度曲線および推定時間濃度曲線の例を示す図である。
【符号の説明】
【0119】
1 CTスキャナ
2 操作コンソール
3 自動注入器
5 表示装置
6 操作入力部
7 データ処理部
8 記憶部
9 インタフェース部
10 注入ヘッド
11 制御ユニット
12 インタフェース部
15 被検体
16 X線
17 X線管
18 検出器
21 テスト時間濃度曲線
22 シフト時間濃度曲線
23 推定時間濃度曲線
31 スキャン制御部
32 注入制御部
33 画像再構成部
34 注入プロトコル演算部
36 テスト時間濃度曲線作成部
37 推定時間濃度曲線作成部
38 最大濃度値演算部
39 注入速度演算部
40 注入プロトコル作成部
41 注入プロトコル選択部
45 シフト処理部
46 重ね合わせ処理部
51 第1フーリエ変換部
52 第2フーリエ変換部
53 伝達関数演算部
54 フィルタ処理部
55 逆フーリエ変換部
56 重ね合わせ処理部
57 シフト処理部
58 第3フーリエ変換部
59 推定時間濃度曲線演算部
60 逆フーリエ変換部
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14
【図16】
15
【図17】
16
【図18】
17
【図19】
18
【図20】
19
【図21】
20
【図22】
21
【図23】
22
【図24】
23
【図25】
24