TOP > 国内特許検索 > 固体高分子電解質型燃料電池用バイポーラプレート及び固体高分子電解質型燃料電池 > 明細書

明細書 :固体高分子電解質型燃料電池用バイポーラプレート及び固体高分子電解質型燃料電池

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4951924号 (P4951924)
公開番号 特開2007-103267 (P2007-103267A)
登録日 平成24年3月23日(2012.3.23)
発行日 平成24年6月13日(2012.6.13)
公開日 平成19年4月19日(2007.4.19)
発明の名称または考案の名称 固体高分子電解質型燃料電池用バイポーラプレート及び固体高分子電解質型燃料電池
国際特許分類 H01M   8/02        (2006.01)
H01M   8/10        (2006.01)
FI H01M 8/02 B
H01M 8/10
請求項の数または発明の数 5
全頁数 7
出願番号 特願2005-294270 (P2005-294270)
出願日 平成17年10月7日(2005.10.7)
審査請求日 平成20年7月22日(2008.7.22)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】899000068
【氏名又は名称】学校法人早稲田大学
発明者または考案者 【氏名】逢坂 哲彌
【氏名】朴 秀吉
【氏名】門間 聰之
【氏名】朴 鍾殷
【氏名】清水 貴弘
【氏名】▼呉▼ 美惠
個別代理人の代理人 【識別番号】100079304、【弁理士】、【氏名又は名称】小島 隆司
【識別番号】100114513、【弁理士】、【氏名又は名称】重松 沙織
【識別番号】100120721、【弁理士】、【氏名又は名称】小林 克成
【識別番号】100124590、【弁理士】、【氏名又は名称】石川 武史
審査官 【審査官】佐藤 知絵
参考文献・文献 特開2000-138066(JP,A)
特開2001-102721(JP,A)
特開平10-158526(JP,A)
特開2001-073158(JP,A)
特開2001-052721(JP,A)
特開2003-036867(JP,A)
特開2007-18850(JP,A)
調査した分野 H01M 8/02
H01M 8/10
特許請求の範囲 【請求項1】
熱可塑性樹脂と炭素材料である導電性材料とを混合した高分子複合材料を成形してなる導電性を有する樹脂基板上に、該樹脂基板側に密着層、上記樹脂基板から離間する側に集電層を各々備える導電性金属層を形成してなることを特徴とする固体高分子電解質型燃料電池用バイポーラプレート。
【請求項2】
上記熱可塑性樹脂がポリカーボネート樹脂とアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体樹脂との混合物であることを特徴とする請求項1記載のバイポーラプレート。
【請求項3】
上記密着層がNiであることを特徴とする請求項1又は2記載のバイポーラプレート。
【請求項4】
上記集電層がPd又はPd-Ni合金であることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項記載のバイポーラプレート。
【請求項5】
請求項1乃至のいずれか1項記載のバイポーラプレートを備える固体高分子電解質型燃料電池。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、軽量化、低価格化を達成した高性能な固体高分子電解質型燃料電池を構成することができる固体高分子電解質型燃料電池用バイポーラプレート及びこれを用いた固体高分子電解質型燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
固体高分子電解質型燃料電池は、白金触媒を用いた電極(水素側電極:負極、酸素側電極:正極)とイオン伝導性高分子膜から構成される膜電極複合体に、燃料ガスとして水素ガス、酸化ガスとして酸素を供給し、電気化学反応で電気を発生させるエネルギー変換システムを利用した電池であり、低公害電気自動車の電源としても注目されている。
【0003】
固体高分子型燃料電池は電解質が高分子膜であるため電解液漏れの心配がなく、衝撃吸収が可能で、約50~80℃の低温で動作可能という長所を有する。しかし、電極触媒である白金、フッ素系の電解質膜、グラファイト製バイポーラプレートなど、主な部材を構成する材料の原価や加工コストが高いため、低コストで生産することが困難である。また、自動車用燃料電池は一般電力供給用燃料電池と比べ耐衝撃性、作動温度、安定性、軽量化、経済性などへの要求が厳しく、これらの要求を満たすためには各部品の小型軽量化とともに高い発電効率が必要となる。
【0004】
現在、バイポーラプレートは多孔質グラファイトに熱硬化性樹脂であるフェノール樹脂を含浸させ、グラファイトの孔を充填してプレートにした後、ガス流路を機械加工することにより形成されている。しかし、グラファイトの物理的特性上、機械的強度が低く、樹脂の含浸も不完全なため水素ガス遮断性が十分とならないという欠点を有する。また、流路加工が難しく、製造工程が複雑になる問題も抱えている。その結果、通常の取り扱いに耐え得る機械的強度を得るために、バイポーラプレートを厚くしなければならず、燃料電池の単位重量あたりの発電効率を上げる妨げとなっている。
【0005】
なお、本発明に関連する先行技術文献情報としては、以下のものがある。

【特許文献1】特開2004-79536号公報
【特許文献2】特開2002-8685号公報
【特許文献3】特開2004-192855号公報
【特許文献4】特開2000-138066号公報
【非特許文献1】Philip L. Hentall et al.,Journal of Power Sources,1999年,80,p.235-241
【非特許文献2】J. Wind et al.,Journal of Power Sources,2002年,105,p.256-260
【非特許文献3】Viral Mehta et al.,Journal of Power Sources,2003年,114,p.32-56
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、軽量化、低価格化を達成した高性能な固体高分子電解質型燃料電池を構成することができる固体高分子電解質型燃料電池用バイポーラプレート及びこの固体高分子電解質型燃料電池用バイポーラプレートを備える固体高分子電解質型燃料電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するため、熱可塑性樹脂と炭素材料である導電性材料とを混合した高分子複合材料を成形してなる導電性を有する樹脂基板上に、該樹脂基板側に密着層、上記樹脂基板から離間する側に集電層を各々備える導電性金属層を形成してなることを特徴とする固体高分子電解質型燃料電池用バイポーラプレート及びこのバイポーラプレートを備える固体高分子電解質型燃料電池を提供する。

【0008】
本発明の固体高分子電解質型燃料電池用バイポーラプレートは、熱可塑性樹脂と導電性材料とを混合した高分子複合材料を成形してなる導電性を有する樹脂基板により、バイポーラプレートとして要求される十分な水素ガス遮断性が得られると共に、導電性を有する樹脂基板とその上に形成された導電性金属層により必要な導電性と高い集電性や熱伝導性が得られ、優れた発電特性を与えるバイポーラプレートとなる。また、熱可塑性樹脂の使用により低コスト化が達成できると共に、バイポーラプレートが軽量化し、多孔質グラファイト製のバイポーラプレートに比べて強度及び柔軟性が向上する。更に、導電性金属層を、樹脂基板側に密着層、樹脂基板から離間する側に集電層を各々備える構造としたことにより、外力や経時使用による導電性金属層と樹脂基板との剥離を避けつつ高い集電性を得ることができる。そして、このようなバイポーラプレートを備える固体高分子電解質型燃料電池は、軽量化、低価格化を達成した高性能なものとなり、特に、単位重量当たりの発電性能に優れたものとなる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、燃料電池の軽量・高性能化、製造コストの低減、製造工程や取り扱いの簡略化が可能となる。また、ガス透過率を低減することもでき、低価格・高性能な燃料電池を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明について、更に詳しく説明する。
固体高分子電解質型燃料電池は、例えば、図1に示されるように、イオン伝導性高分子膜1の両面に隣接して白金等の触媒を備える負極2及び正極3が設けられ、更に、負極2及び正極3の固体電解質膜1と対向していない他方の面に隣接してバイポーラプレート4,5が設けられ、これらが積層されて、ガスケット6,6により負極側及び正極側の各々の反応領域が密封された構造を有する。そして、負極2側のバイポーラプレート4に形成されたガス流路(図示せず)を通して燃料である水素ガス、正極3側のバイポーラプレート5に形成されたガス流路(図示せず)を通して酸化剤である酸素ガスを供給して、電気化学反応により電気を発生させるエネルギー変換システムを利用した電池である。
【0011】
本発明のバイポーラプレートは、このような固体燃料電解質型燃料電池に用いられるバイポーラプレートであり、熱可塑性樹脂と導電性材料とを混合した高分子複合材料を成形してなる導電性を有する樹脂基板上に、樹脂基板側に密着層、樹脂基板から離間する側に集電層を各々備える導電性金属層を形成してなるものであり、例えば、図2に示されるように、熱可塑性樹脂と導電性材料とを混合した高分子複合材料を成形してなる導電性を有する樹脂基板10の片面又は両面(図2の場合両面)に、樹脂基板10側から密着層11及び集電層12が順に積層されてなる導電性金属層13が各々の面に積層された構造のものが挙げられる。
【0012】
樹脂基板を構成する熱可塑性樹脂は、高分子複合材料のマトリックスとなる樹脂材料であり、熱可塑性樹脂であれば特に限定されるものではないが、例えば、ポリカーボネート(PC)樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂とアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)樹脂との複合体等を用いることができる。このような熱可塑性樹脂をマトリックスとした高分子複合材料を成形した樹脂基板は、圧縮成形、射出成形などによる成形時にガス流路を同時に形成することができ、また、機械加工においても、多孔質グラファイト基板に比べて加工しやすいため、経済性及び量産性に優れている。
【0013】
また、本発明においては、パイポーラプレートの物理的・化学的特性を向上させるために、2種類以上の熱可塑性樹脂をブレンドして使用することが可能であり、更に、必要に応じて補強剤、充填剤などの添加剤を適量配合することにより、バイポーラプレートの特性を更に高めることも可能である。2種類以上の熱可塑性樹脂をブレンドして使用する場合、例えば、PC樹脂とABS樹脂とを混合して用いることができ、それらをPC樹脂:ABS樹脂=2:8~8:2の比率で配合して用いることが特に好適である。
【0014】
一方、樹脂基板に導電性を付与するために熱可塑性樹脂と混合される導電性材料としては、例えばカーボンブラック、炭素繊維、金属粉末、導電性高分子などを用いることができるが、特に、カーボンブラック、炭素繊維等の炭素材料が好適である。熱可塑性樹脂と導電性材料との混合比は、成形後の樹脂基板に、例えば、体積抵抗率2.3×10-4Ω・cm以下、好ましくは2.0×10-4Ω・cm以下の導電性を与え、また、熱可塑性樹脂と導電性材料とを混合した高分子複合材料の成形性が維持できる程度の範囲であれば、特に限定されるものではないが、例えば、熱可塑性樹脂100質量部に対して導電性材料が30~70質量部、特に40~60質量部となる割合で配合することが好ましい。
【0015】
このような樹脂基板は、例えば、熱可塑性樹脂と導電性材料と必要に応じて添加される添加剤とを混練機で混練した高分子複合材料を、圧縮成形、射出成形等の方法により成形することにより製造することができる。この場合、流路形状が形成された鋳型(金型)を用いて樹脂基板の成形と同時にガス流路となる溝等を形成することが可能であり、この場合、製造工程の簡略化か可能となるが、これに限定されるものではなく、樹脂基板を一旦平板状に成形した後、機械加工によりガス流路となる溝等を形成することも可能である。なお、樹脂基板の厚みは、1~10mm、特に2~3mmとすることができる。
【0016】
本発明のバイポーラプレートは上述した樹脂基板上に樹脂基板側に密着層、樹脂基板から離間する側に集電層を各々備える導電性金属層が形成されている。この導電性金属層は、バイポーラプレートに、更に高い導電性(集電性)や熱伝導性を付与するために形成されるものであるが、この導電性金属層は、例えば、図2に示されるような密着層と集電層とからなる2層構造に形成することができる。
【0017】
密着層としては、樹脂基板と導電性金属層との剥離を防ぐことができる樹脂に対して密着性の高い金属種が用いられ、例えば、Ni,Pd等の金属、Pd-Ni合金を用いることができ、特にNiが好ましい。一方、集電層は、バイポーラプレートの熱伝導性や導電性を高めることができる金属種が用いられ、例えば、Au,Cu,Pd,Ru等の単体金属、Pd-Ni,Pt-Ni等の合金を用いることができ、集電層に、耐熱性、耐薬品性、耐腐食性に優れた金属種を用いれば、腐食による影響を最小化することができる。これらの観点から、集電層としては、特に、Pt又はPt-Ni(特に、Pt/Ni≧7/3(モル比)のものが好ましい)が好ましい。
【0018】
これら密着層及び集電層は、例えば、上述した樹脂基板に対して、必要に応じて機械加工を施した後、外観検査により欠陥の有無を検査し、好ましくは更に導電性金属層を形成する面を電解研磨等によるエッチングにより表面粗化処理した後、密着層及び密着層を各々めっきにより形成する方法を採用することができる。
【0019】
密着層及び集電層は、常法に従い電解めっき又は無電解めっきにより形成することができるが、本発明においては、樹脂基板が導電性を有しているので、樹脂基板に接する密着層の形成に電解めっきを採用することが可能であり、導電性金属層を簡便に形成することができる。なお、めっき前に、活性化処理等の前処理を施すことも可能である。
【0020】
なお、密着層の厚みは1~50μm、特に5~10μm、集電層の厚みは0.1~5μm、特に0.5~1μmとすることができる。なお、密着層と集電層との接合状態を良好に保つために、必要に応じて密着層と集電層との間に更に金属層を設けることもできる。
【0021】
このようなバイポーラプレートを、例えば、図1に示されるような構成の固体高分子電解質型燃料電池に組み込んで燃料電池を構成することができる。このようなバイポーラプレートを備える固体高分子電解質型燃料電池は、軽量化、低価格化を達成した高性能なものとなり、特に、単位重量当たりの発電性能に優れたものとなる。
【実施例】
【0022】
以下、実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0023】
[実施例]
ポリカーボネート(PC)40重量部、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)60重量部、及び導電性材料(カーボンブラック)40質量部を混練して高分子複合材料を調製し、この高分子複合材料を、成形体上にガス流路が形成できるように形作られた鋳型(mold)に注入して圧縮成形し、厚み約2mmの樹脂基板を作製した。この成形と同時に深さ1mm、幅1mmのガス流路が形成された。
【0024】
次に、樹脂基板を超音波洗浄(80℃)した後、電解研磨処理(80℃、0.1A/cm2、10分)及び活性化(室温)を施し、樹脂基板上に、以下に示すNiめっき液を用いた電解めっき(57℃、50mA/cm2、30分)により密着層(厚み5μm)を形成した。
【0025】
Niめっき液
スルファミン酸ニッケル(II)四水和物 350g/L
ほう酸 30g/L
臭化ニッケル(II)三水和物 10g/L
【0026】
次に、以下に示すPd-Niめっき液(Pd:Ni=7:3(モル比))を用いた電解めっき(50℃、50mA/cm2、5分)により集電層(厚み0.5~1μm)を形成して、バイポーラプレートを得た。
【0027】
Pd-Niめっき液
塩化パラジウム 100g/L
スルファミン酸ニッケル(II)四水和物 350g/L
ほう酸 30g/L
臭化ニッケル(II)三水和物 10g/L
【0028】
このようにして作製したバイポーラプレート2枚の間に固体高分子電解質膜としてナフィオン(Nafion デュポン社製)を用い、これらを電極(E-TEK社製)と共に加圧成形して膜電極複合体を作製し、燃料電池発電試験を行った。燃料電池の性能評価は有効面積が25cm2の単セルを用い、水素と酸素のガス圧力を1気圧に維持し、温度80℃で実施した。このバイポーラプレートを用いた燃料電池の発電性能を図3に示す。
【0029】
既存のグラファイトプレートは加圧成形時の負荷により壊れやすいものであるのに対して、本発明による高分子複合材料からなるバイポーラプレートは柔軟性があり壊れにくいため、燃料電池を作製するときに圧力がかかっても壊れずに形態を維持でき、また、燃料電池作製後の振動など、外部環境による影響にも強く、燃料電池の膜電極複合体を保護する性能に優れている。
【0030】
特に、本発明のバイポーラプレートは単位重量あたりの発電性能が既存のグラファイト製のバイポーラプレートに比べ優れており、また、物理的特性及び導電性も良好である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】固体高分子電解質型燃料電池の一例を示す概略分解図である。
【図2】本発明のバイポーラプレートの一例を示す断面図である。
【図3】実施例における燃料電池の発電特性を示すグラフであり、電流密度に対して出力密度をプロットしたグラフ(I-P曲線)である。
【符号の説明】
【0032】
1 イオン伝導性高分子膜
2 負極
3 正極
4,5 バイポーラプレート
6 ガスケット
10 樹脂基板
11 密着層
12 集電層
13 導電性金属層
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2