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明細書 :冬野菜スプラウトからの機能性抽出物の製造およびその用途

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4813174号 (P4813174)
公開番号 特開2007-169246 (P2007-169246A)
登録日 平成23年9月2日(2011.9.2)
発行日 平成23年11月9日(2011.11.9)
公開日 平成19年7月5日(2007.7.5)
発明の名称または考案の名称 冬野菜スプラウトからの機能性抽出物の製造およびその用途
国際特許分類 C07G  99/00        (2009.01)
A01G   7/00        (2006.01)
A23L   1/30        (2006.01)
A61K   8/97        (2006.01)
A23K   1/16        (2006.01)
FI C07G 99/00 Z
A01G 7/00 601Z
A23L 1/30 B
A61K 8/97
A23K 1/16 304C
請求項の数または発明の数 12
全頁数 11
出願番号 特願2005-372513 (P2005-372513)
出願日 平成17年12月26日(2005.12.26)
審査請求日 平成20年9月24日(2008.9.24)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】399030060
【氏名又は名称】学校法人 関西大学
発明者または考案者 【氏名】小幡 斉
【氏名】河原 秀久
個別代理人の代理人 【識別番号】100081422、【弁理士】、【氏名又は名称】田中 光雄
【識別番号】100116311、【弁理士】、【氏名又は名称】元山 忠行
【識別番号】100122301、【弁理士】、【氏名又は名称】冨田 憲史
審査官 【審査官】戸来 幸男
参考文献・文献 特開2001-320991(JP,A)
特開2001-245659(JP,A)
福岡女子大学家政学部紀要,1991年,vol.22,pp.11-17
技苑,2001年,vol.108,pp.52-53
日本食品工学会年次大会講演要旨集,2004年,vol.5,p.148
日本生物工学会大会講演要旨集,2005年 9月25日,p.18[3S2-AM3]
調査した分野 C07G 1/00-99/00
C07K 14/415
A01G 7/00
CA/BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
PubMed
特許請求の範囲 【請求項1】
下記工程:
(a)小松菜種子を暗条件下にて発芽させ、次いで、明条件下にて発芽温度よりも低い温度においてスプラウトを成長させること;
(b)得られたスプラウトを抽出すること
を特徴とする、不凍活性を有する機能性抽出物の製造方法。
【請求項2】
下記工程:
(a)小松菜種子を暗条件下にて20℃~30℃で3日~14日間発芽させ、次いで、明条件下にて0℃~20℃未満で3日~14日間置くことによりスプラウトを得ること;
(b)得られたスプラウトを抽出すること
を特徴とする、請求項1記載の不凍活性を有する機能性抽出物の製造方法。
【請求項3】
工程(a)において、カルシウム分および/または鉄分を添加した水性媒体を用いて発芽および成長を行う、請求項1または2記載の製造方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の方法により得られる、不凍活性を有する機能性抽出物。
【請求項5】
カルシウム結合活性を有するものである請求項記載の抽出物。
【請求項6】
鉄結合活性を有するものである請求項記載の抽出物。
【請求項7】
請求項~6のいずれか1項記載の抽出物を含む食品。
【請求項8】
冷凍食品である請求項7記載の食品。
【請求項9】
請求項~6のいずれか1項記載の抽出物を含むサプリメント。
【請求項10】
請求項~6のいずれか1項記載の抽出物を含む生体材料凍結保護剤。
【請求項11】
請求項~6のいずれか1項記載の抽出物を含む化粧品。
【請求項12】
請求項~6のいずれか1項記載の抽出物を含む飼料。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、冬野菜スプラウトから得られる機能性抽出物、それを含む食品に関する。
【背景技術】
【0002】
これまでに、低温下で棲息する生物が、不凍タンパク質をはじめとする種々の機能性物質を生産することが明らかにされている。それらのうち、不凍タンパク質は、冷凍食品分野における応用が期待されており、安全性の高い生物や新規のタンパク質について多くの報告がされている。例えば、不凍タンパク質に関しては、魚由来のもの(特許文献1等)や担子菌由来のもの(特許文献2等)、植物由来のもの(特許文献3、4等)や細菌由来のもの(特許文献5等)がある。また、安全性とは関係なく地衣類由来の不凍タンパク質(特許文献6等)がある。
【0003】
不凍タンパク質のほかに、代表的な機能性物質としてはカルシウム結合蛋白や鉄結合蛋白が挙げられる。例えば、カニ殻由来のカルシウム結合蛋白はカルシウム吸収促進剤として使用可能であることが報告されており(特許文献7)、牛乳成分の鉄結合タンパク質であるラクトフェリンは多くの機能(骨強化剤、鉄強化飲料、ミネラル補給用医薬への利用)が期待されている(特許文献8、9等)。
【0004】
植物の場合、一般に、農地などで栽培したものを収穫して、これらの機能性物質を製造している。一方、いわゆる植物工場における野菜の製造が、近年普及が初まっている。植物工場における技術は、主に水耕栽培における栽培技術が主なもので、これに関する報告は多い(特許文献10、11等)。しかしながら、植物工場における機能性物質の製造に関する報告は見あたらない。まして、これらの機能性物質をスプラウトの状態で供給あるいは製造する技術は全くないのが現状である。

【特許文献1】特開2004-83546号公報
【特許文献2】特開2003-66826号公報
【特許文献3】WO92/22581号公報
【特許文献4】欧州特許第843010号
【特許文献5】特開2004-161761号公報
【特許文献6】特公2002-508303号公報
【特許文献7】特願第2005-040786号明細書
【特許文献8】特開平10-176000号公報
【特許文献9】特開2000-279143号公報
【特許文献10】特開2002-142585号公報
【特許文献11】特開2003-274774号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、スプラウトの状態で機能性物質を供給あるいは製造すること、ならびにそのような機能性物質を含む食品を製造すること課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は上記課題を解決せんと鋭意研究を重ね、冬野菜種子を暗条件下にて発芽させ、次いで、明条件下にて発芽温度よりも低い温度においてスプラウトを得ること;そして得られたスプラウトを抽出することにより、不凍活性をはじめとする種々の機能性を有する機能性抽出物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、
(1)下記工程:
(a)冬野菜種子を暗条件下にて発芽させ、次いで、明条件下にて発芽温度よりも低い温度においてスプラウトを得ること;
(b)得られたスプラウトを抽出すること
を特徴とする機能性抽出物の製造方法;
(2)下記工程:
(a)冬野菜種子を暗条件下にて20℃~30℃で3日~14日間発芽させ、次いで、明条件下にて0℃~20℃未満で3日~14日間置くことによりスプラウトを得ること;
(b)得られたスプラウトを抽出すること
を特徴とする、請求項1記載の機能性抽出物の製造方法;
(3)(1)または(2)記載の方法により得られる機能性抽出物;
(4)不凍活性を有するものである(3)記載の抽出物;
(5)カルシウム結合活性を有するものである(3)記載の抽出物;
(6)鉄結合活性を有するものである(3)記載の抽出物;
(7)(3)~(6)のいずれかに記載の抽出物を含む食品;
(8)冷凍食品である(7)記載の食品;
(9)(3)~(6)のいずれかに記載の抽出物を含むサプリメント;
(10)(3)~(6)のいずれかに記載の抽出物を含む生体材料凍結保護剤;
(11)(3)~(6)のいずれかに記載の抽出物を含む化粧品;
(12)(3)~(6)のいずれかに記載の抽出物を含む飼料
を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、冬野菜種子から簡単に機能性抽出物を得ることができ、しかも、1つの抽出物中に複数の所望活性を得ることができる。また、本発明の機能性抽出物は種子を出発材料とするので、季節に関係なく製造することができ、単位面積あたりの抽出物の収量も多いので、植物工場による製造に好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、第1の態様において、
冬野菜種子を暗条件下にて発芽させ、次いで、明条件下にて発芽温度よりも低い温度においてスプラウトを得ること;
(b)得られたスプラウトを抽出すること
を特徴とする機能性抽出物の製造方法
を提供する。
【0010】
本発明の機能性抽出物の製造方法の第1工程(a)は冬野菜種子からスプラウトを得る工程である。使用する種子は冬野菜のものであればいずれのものであってもよく、ダイコン、小松菜、白菜、ニンジン、キャベツ、ブロッコリー等の種子が挙げられるが、これらに限らない。栽培面積あたりの機能性物質量が多いこと、種子の価格などを考慮すると、小松菜、白菜等の種子が好ましく、小松菜の種子がさらに好ましい。
【0011】
この工程はさらに2つの段階を含む。最初の段階は、種子の発芽段階である。種子の発芽段階は暗条件下行う。暗条件とは光合成が起こらない条件をいい、光を全く遮断してもよく、光合成が起こらない程度の強度の光が存在してもよい。
【0012】
発芽条件は当業者に種々のものが知られている。通常には、種子を水性媒体と接触させることにより発芽させる。一般的には、例えば、適当な容器中、綿またはスポンジ等の上に種子を置き、種子が浸るように水性媒体を添加して発芽工程を行う。
【0013】
水性媒体としては水だけ、水にミネラル分や栄養素を添加したもの、例えば、カルシウム分および/または鉄分を添加したもの、あるいはその他の塩類や栄養素を添加したものなどが挙げられる。水性媒体中の成分およびその濃度は、目的とする機能性抽出物の機能(種類および強さ)ならびに機能性抽出物の量、さらに種子が由来するところの植物の種類により適宜選択することができる。例えば、本発明において水だけの水性媒体を用いた場合、得られる抽出物は少なくとも不凍活性を有する。水にカルシウム分を添加した水性媒体を用いると、カルシウム結合活性が不凍活性とともに得られる。水に鉄分を添加した水性媒体を用いると、鉄結合活性が不凍活性とともに得られる。水にカルシウム分および鉄分を添加した水性媒体を用いると、スプラウトの発芽および成長が促進され、より多くの不凍活性、カルシウム結合活性および鉄結合活性が得られる。さらに亜鉛、マグネシウム、ニッケル等の金属成分を結合する活性が所望の場合には、これらの金属の塩を水性媒体に添加すればよい。これらの水性媒体はあくまでも例示であって、多くの成分のバリエーションが考えられる。また、例えばカルシウム分や鉄分などはカルシウム塩や鉄塩などとして添加してもよい。塩の形態はいずれの形態であってもよいが、塩化物が好ましい。それらの水性媒体への添加濃度も、得られるべき抽出物の所望の機能および量、ならびに植物の種類により適宜選択することができるが、一般的には、0.01ないし1%(w/v)、好ましくは0.05ないし0.5%(w/v)である。発芽段階において、微生物汚染を防止する等の目的で、水性媒体を新たなものに交換してもかまわない。その際、成分を変更してもよい。
【0014】
好ましい発芽段階の温度は20℃~30℃である。より高温であれば種子が腐敗することがあり、より低温であれば発芽が遅れたり、発芽率が低下したりする。より好ましい発芽温度は22℃ないし28℃、さらに好ましくは24℃ないし26℃である。
【0015】
発芽のための期間は上記条件であれば3日~14日間が適当であり、より好ましい発芽期間は5日~10日、さらに好ましくは6日~8日である。これらの温度および期間も、得られるべき抽出物の所望の機能および量、植物の種類、ならびに温度等の条件により適宜選択することができることはいうまでもない。
【0016】
次に、第2段階、すなわち、発芽段階において発芽した種子からスプラウトを成長させる段階に入る。この段階においては明条件を用いる。明条件とは、光合成が起こる強度の光を発芽種子およびスプラウトに与える条件である。一般的には2000ルクス以上、好ましくは5000ルクス以上の光を照射する。明条件において光の照射は連続的なものであってもよく、あるいは間欠的なものであってもよい。例えば、屋外でこのスプラウト成長段階を行ってもよい。しかしながら、明条件における光の照射は連続的であることが好ましい。光源は人工的なもの、例えば電気照明であってもよく、太陽光であってもよい。
【0017】
スプラウト成長段階における温度は、発芽段階よりも低温、通常には0℃ないし20℃未満、好ましくは2℃ないし18℃である。
【0018】
発芽のための期間は上記条件であれば3日~14日間が適当であり、より好ましい発芽期間は5日~10日、さらに好ましくは6日~8日である。これらの温度および期間も、得られるべき抽出物の所望の機能および量、ならびに植物の種類により適宜選択することができることはいうまでもない。
【0019】
スプラウト成長段階における水性媒体は、発芽段階からのものをそのまま用いてもよく、新たに成分を変更して調製してもよい。また、スプラウト成長段階において水性媒体を新たなものに交換してもよい。その際、成分を変更してもよい。これらの成分も、得られるべき抽出物の所望の機能および量、植物の種類、ならびに温度等の条件により適宜選択することができることはいうまでもない。
【0020】
本発明の機能性抽出物の製造方法の第2工程(b)は、上記のようにして得られたスプラウトを抽出する工程である。抽出媒体はいずれもものであってもよいが、水性媒体を用いることが好ましい。水性媒体としては、水、酢酸ナトリウム緩衝液等の種々の緩衝液、水混和性アルコールと水との混合物等が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい抽出媒体は水またはpH5付近の5~100mM酢酸ナトリウム緩衝液等である。抽出媒体の種類や量は、所望の抽出物の性質や量により適宜選択することができる。
【0021】
スプラウトの抽出は当業者に知られた種々の方法により行うことができる。抽出の前、あるいは抽出中に粉砕などの処理を加えて、抽出効率を高めることが好ましい。スプラウトの粉砕手段は各種のものが使用可能である。例えば、加圧型破壊、機械的磨砕、超音波処理、ホモジナイザー等の物理的破砕方法を用いることができる。粉砕手段の典型例としては、ポッター-エルベージェムホモジナイザーなどのホモジナイザー、ワーリングブレンダーなどのブレンダー、ダイノーミルなどの粉砕器、フレンチプレス、乳鉢および乳棒、らいかい器、液体窒素による凍結および破砕、超音波処理などの手段が挙げられる。スプラウトまたはその粉砕物を水、食塩水または適当な緩衝液(例えば、酢酸ナトリウム緩衝液、リン酸緩衝液、トリス塩酸緩衝液)などの抽出媒体に懸濁し、内容物の抽出を行う。所望により、抽出時に粉砕および/または撹拌してもよい。抽出は、減圧抽出、ミキサー粉砕などの公知手段を用いて行うことができる。抽出媒体は、目的物質の変性が少ないもの、毒性が低いものが好ましい。好ましい抽出媒体としては、水、食塩水、酢酸ナトリウム緩衝液、リン酸緩衝液、トリス塩酸緩衝液などが挙げられる。抽出媒体の組成、pH、温度、抽出時間は使用スプラウトの種類および目的とする活性の種類や性質などに応じて選択することができる。一般的には、抽出媒体のpHは中性付近(約5~約9)であり、抽出温度は約4℃~約30℃である。機能性抽出物の目的活性が不凍活性あるいは氷結晶制御活性の場合には低温、例えば約20℃以下の温度で抽出を行うことが好ましい。例えば、不凍活性や氷結晶制御活性、カルシウム結合活性、鉄結合活性を目的とした抽出には酢酸ナトリウム緩衝液を用い、抽出温度を20~25℃、抽出pHを4.0~5.5として、0.5~1.0時間抽出するのが好ましい。また、カルシウム結合活性や鉄結合活性を目的とする場合には、EDTAなどのキレート剤を含有する抽出媒体を用いることが好ましい場合もある。
【0022】
本発明の第2の態様は、上記方法により得られる機能性抽出物に関するものである。本明細書において「機能性」とは、身体の生理学的機能などに影響を与える機能および/または身体に対する保健機能を有することを意味する。さらに本明細書においては、「機能性」なる用語は不凍活性を包含するものである。当該機能の例としては、体内ミネラル分の値を正常あるいはそれに近い値に維持する機能血圧を正常あるいはそれに近い値に維持する機能、おなかの調子を整える機能、歯の健康を維持する機能、血糖値を正常あるいはそれに近い値に維持する機能、コレステロール値を正常あるいはそれに近い値に維持する機能などが挙げられる。本発明の機能性抽出物のこれらの機能・活性は、実施例に示すように、当該抽出物中のタンパク質に由来するものと考えられる。これらの機能・活性の検定法、測定法は当業者に公知である。
【0023】
本発明の機能性抽出物の典型的な機能または活性としては、不凍活性のほかに体内ミネラル分の調節活性、例えば、カルシウム結合活性、鉄結合活性などが挙げられるが、これらの機能または活性に限られない。本明細書において、機能性抽出物の「機能」と「活性」は同義である。例えば、本発明の機能性抽出物の不凍活性は、細胞や組織を凍結から守る用途、例えば、冷凍食品の融解時のドリップ防止、食品の凍結濃縮、精子や臓器などの凍結保存、機器の可動部の凍結防止、除霜などへの利用が考えられる。なお、本明細書において、「不凍活性」には氷結晶の生成を抑制する活性も包含される。本発明の機能性抽出物のカルシウム結合活性は、カルシウムを結合して可溶性複合体を形成し、水溶液中でカルシウムが沈殿するのを抑制することでカルシウムを可溶化し、カルシウムの吸収率を高めると考えられる。そのため、該活性が、カルシウム欠乏による症状、例えば、骨粗鬆症、高血圧、イライラ等を抑制あるいは改善する作用がある。本発明の機能性抽出物の鉄結合活性は、ラクトフェリンと同様の作用を発揮すると考えられる。例えば、該活性は、鉄分と結合することにより体内に鉄分が吸収されやすくなり貧血の予防や改善に効果を発揮する。そのほか、免疫調整、抗酸化作用、抗ウイルス、抗炎症、発ガン抑制などの作用があり、生活習慣病に対する効果も発揮する。
【0024】
得られた抽出物はそのまま用いることができるが、必要に応じ、さらに精製を行ってもよい。例えば、デカンテーション、濾過、遠心分離等の処理を行って夾雑物を除去してもよい。また例えば、硫酸アンモニウム等の塩析やエタノール等の有機溶剤による沈澱、等電点沈殿法による分画、イオン交換、吸着、ゲル濾過、疎水もしくはアフイニティー等のクロマトグラフィーを用いて精製してもよく、透析や濃縮過程を施してもよい。さらに得られた抽出物を凍結乾燥などの乾燥処理に付して粉末化してもよい。これらの操作は当業者に公知のものであり、所望活性の種類や純度、あるいは用途に応じて適宜選択して用いることができる。
【0025】
本発明の機能性抽出物の形状は、使用目的に応じて様々であり、そのまま、溶液、濃縮液、懸濁液、パスタ、ゲル、凍結乾燥物、粉末、顆粒、錠剤などに成形することができる。本発明の機能性抽出物の活性は、不凍活性、カルシウム結合活性、鉄結合活性、およびその他の活性を単独または2種以上併せ持ったものであってもよい。
【0026】
本発明は、第3の態様において、上記機能性抽出物を含む食品を提供する。本発明の機能性抽出物は冬野菜由来であるため、ヒトや動物が食べても安全性に問題がない。本発明の機能性抽出物の用途は様々である。それゆえ、本発明は、第3の態様において、本発明の機能性抽出物を含む食品に関するものである。かかる食品としては特に限定はなく、通常の食品のほか、冷凍食品、機能性食品、健康食品などが挙げられる。本発明の機能性抽出物は、例えば、そのまま可食性があるほか、種々の形態の食品添加物として食品素材に用いてよく、ふりかけ、調味料などに添加して用いてもよい。また、本発明の不凍活性を有する機能性抽出物を冷凍食品に用いることにより融解時のドリップを防止して冷凍食品の品質・食感を向上させることができる。本発明の不凍活性を有する機能性抽出物は、例えば、アイスクリーム等の氷菓、冷凍コロッケなどの冷凍肉料理、冷凍ピザなど、種々の冷凍食品に添加・応用することができる。
【0027】
また例えば、本発明のカルシウム結合活性を有する機能性抽出物を含む食品は、例えば牛乳、バター、チーズ、クリームなどの乳製品であってもよく、骨粗鬆症、高血圧、イライラ等を抑制あるいは改善する効果を有する。さらに本発明の鉄結合活性を有する機能性抽出物を含む食品は、例えばチョコレートやココアであってもよく、貧血を予防するものであってもよい。
【0028】
したがって、本発明はさらなる態様において、本発明の機能性抽出物を含むサプリメントを提供する。サプリメントの形状はいずれのものであってもよく、例えば、錠剤、顆粒、粉末、パスタ、ドリンク剤等であってもよい。
【0029】
さらなる態様において、本発明は、本発明の不凍活性を有する機能性抽出物を含む生体材料凍結保護剤を提供する。本発明の不凍活性を有する機能性抽出物を用いて、細胞や組織などの生体材料を凍結による損傷から守ることができる。例えば、本発明の機能性抽出物を精子や臓器などの凍結保存などに用いてもよい。
【0030】
本発明の不凍活性を有する機能性抽出物を、機器の可動部の凍結防止、道路や地盤の凍結防止、除霜などに使用することもできる。
【0031】
さらなる態様において、本発明は、本発明の不凍活性を有する機能性抽出物を含む化粧品を提供する。化粧品一般、特に油脂含有化粧品は凍結すると品質や使用感が劣化することも知られている。特にリポソームは低温において構造がくずれることが知られている。したがって、本発明の不凍活性を有する機能性抽出物を、化粧品、特に乳液、クリームなどの油脂含有化粧品の品質保持、凍結防止に用いることができる。
【0032】
もう1つの態様において、本発明は、本発明の機能性抽出物を含む飼料を提供する。本発明の機能性抽出物をヒトの食品のみならず動物の飼料に添加することもでき、そのことにより動物の健康を増進させ、あるいは疾病を抑制してもよい。このように、本発明の機能性抽出物を含む食品、サプリメントあるいは飼料は種々の効果を有する。
【0033】
次に、実施例において用いられた不凍活性、タンパク質量、カルシウム結合活性および鉄結合活性の測定法について説明する。
【0034】
(1)不凍活性の測定方法
低温度制御が可能な位相査顕微鏡(Olympus、L600A)を使用し、ガラスシャーレを-20℃に保持し、その上に1μlの試料を置き、100℃/分で-40℃に温度を低下させる。その後、100℃/分で-5℃にし、そこから5℃/分で氷の結晶を溶解させる。結晶を単一にさせた後、1℃/分で温度を低下させ、氷を再結晶化し、写真を取り込んだ。ブランクとしてはMilliQを使用し、標準としては、AFP I(市販されている魚由来の不凍タンパク質、A/F Protein Inc., MA、 USA)を使用した。また熱ヒステレシス(Thermal hysteresis、℃)の測定は、オスモメーターで測定した。
【0035】
(2)タンパク質量の測定方法
タンパク質量はBradford法により測定した。
【0036】
(3)カルシウム結合活性の測定方法
NaHCO水溶液とCaCl水溶液との反応からCaCOが析出する反応:
NaHCO+CaCl→CaCO+HCl+NaCl
を利用して、カルシウム結晶化抑制効果を判定した。
すなわち、20mM、pH8.7に調整した炭酸水素ナトリウム水溶液(1.5ml)に、実施例1で調製した粗抽出液を30μl添加し、スターラーで十分に攪拌した。その後、20mM、pH8.7に調整した塩化カルシウム水溶液(1.5ml)を添加し、25℃において反応させた。反応過程中、波長570nmにおける吸光度を経時的に測定した。
種々の発芽およびスプラウト成長条件を用いて得られた本発明の機能性抽出物を最終タンパク質濃度として100μg/ml含むもの、対照として10mMトリス緩衝液(pH8.0)を添加したものについてカルシウム結晶化抑制効果を試験した。
【0037】
(4)鉄結合活性の測定方法
0.5mM EDTA(pH7.0)により鉄分を除去した試料(30μl)と塩化鉄(III)溶液(6mM、270μl)を混合し、20℃で5分間置いた後、NaOH水溶液(1.0M、270μl)を添加し、遠心分離(6000rpm、5分)して、上清の褐色度を肉眼で観察することにより鉄結合タンパク質の存在および鉄結合活性を測定した。
【実施例1】
【0038】
実施例1:小松菜スプラウトによる不凍活性を有する抽出物の生産条件の検討
2.82gの小松菜種子から、様々な条件にて発芽段階およびスプラウト成長段階を行い、20mM酢酸ナトリウム緩衝液 pH4.5を用いて減圧抽出して抽出物を得た。発芽段階およびスプラウト成長段階に使用した媒体は水(100ml)のみであった。なお、種子は底面積292.5cmの容器底に敷いた厚さ1.0cmのスポンジと脱脂綿上に撒いた。表1の結果からわかるように、発芽段階を暗条件下で行い、次いで、スプラウト成長段階を明条件下で行った場合に、十分な熱ヒステレシス値が得られ、抽出物中に不凍活性が存在すること、および十分なタンパク濃度が得られることがわかった。行った実験のうち、暗条件下25℃で1週間発芽段階を行い、次いで明条件下18℃で1週間スプラウト成長段階を行った場合に、熱ヒステレシス値およびタンパク濃度が最大となった。
【表1】
JP0004813174B2_000002t.gif

【実施例2】
【0039】
実施例2:塩化カルシウムおよび塩化鉄(III)の添加効果
2.82gの小松菜種子を用い、媒体(100ml)として水だけ、塩化カルシウム0.1%(w/v)水溶液、塩化鉄(III)0.1%(w/v)水溶液、ならびに塩化カルシウムおよび塩化鉄(III)をそれぞれ0.1%(w/v)含有する水溶液を用いて発芽段階およびスプラウト成長段階を行い、20mM酢酸ナトリウム緩衝液 pH4.5を用いて減圧抽出して抽出物を得た。なお、種子は底面積292.5cmの容器底に敷いた厚さ0.5cmのスポンジと脱脂綿上に撒いた。
発芽段階およびスプラウト成長段階の詳細は以下のとおりである:

水だけの系(媒体は水100ml)
暗条件下25℃1週間発芽、明条件18℃1週間スプラウト成長

塩化カルシウム添加系(媒体は塩化カルシウム0.1%(w/v)水溶液100ml)
暗条件下25℃1週間発芽、明条件18℃1週間スプラウト成長

塩化鉄添加系(媒体は塩化鉄0.1%(w/v)水溶液100ml)
暗条件下25℃1週間発芽、明条件18℃1週間スプラウト成長

塩化カルシウムおよび塩化鉄添加系(媒体は塩化カルシウムおよび塩化鉄(III)をそれぞれ0.1%(w/v)含有する水溶液100ml)
暗条件下25℃10日間発芽、明条件18℃10日間スプラウト成長

上記の方法にて、各抽出液の不凍活性(抽出物のタンパク濃度を100μg/mlとして氷結晶の構造を観察)、カルシウム結合活性、および鉄結合活性を調べた。水だけの系、および塩化カルシウム添加系で得られた抽出液は不凍活性およびカルシウム結合活性を有していた。塩化鉄添加系、ならびに塩化カルシウムおよび塩化鉄添加系で得られた抽出物は不凍活性およびカルシウム結合活性に加えて鉄結合活性を有していた。
また、塩化カルシウム添加系、塩化鉄添加系、塩化カルシウムおよび塩化鉄添加系では、水だけの系と比較して、スプラウトの長さが約2倍となり、単位面積あたりのスプラウト量および活性量が増加することがわかった。
この実験で得られた抽出物の不凍活性を図1に示す。いずれの系で得られた抽出液も、不凍活性を有していたことがわかる。
この実験で得られた抽出物のカルシウム結合活性を測定した結果を図2に示す。対照として用いたTris-HCl(10mM、pH8.0)以外は、いずれの系の抽出液においても強いカルシウム吸収活性が見られた。なお、今回の実験で得られた抽出カスについてもカルシウム吸収活性が見られた(データ示さず)。抽出カスを再抽出することにより、カルシウム吸収活性を有する抽出液をさらに得ても良いと考えられる。
この実験で得られた抽出物のカルシウム結合活性を測定した結果を図3に示す。水だけの系および塩化カルシウム添加系にて得られた抽出液には鉄結合活性は見られなかったが、塩化鉄添加系、塩化カルシウムおよび塩化鉄添加系にて得られた抽出物には鉄結合活性が見られた。
また、この実験で得られた抽出物の不凍活性は、60℃で30分加熱処理した後であっても約50%残存していた。
このように、本発明によれば、冬野菜種子から、目的に応じた複数の活性を有する機能性抽出液が容易に得られることがわかった。しかも、種子を材料として用いるので、季節を問わずに機能性抽出物を製造でき、スペースを有効利用できるので単位面積あたり得られる活性も多い。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、食品製造の分野、好ましくは機能性食品や健康食品、さらに好ましくは冷凍食品の製造分野において、あるいは医薬品の分野において利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明により得られた機能性抽出物の不凍活性を示す写真である。
【図2】本発明により得られた機能性抽出物のカルシウム結合活性を示すグラフである。
【図3】本発明により得られた機能性抽出物の鉄結合活性を示すグラフである。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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