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明細書 :プラズマ発生装置およびダイヤモンド生成方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5176051号 (P5176051)
公開番号 特開2007-048497 (P2007-048497A)
登録日 平成25年1月18日(2013.1.18)
発行日 平成25年4月3日(2013.4.3)
公開日 平成19年2月22日(2007.2.22)
発明の名称または考案の名称 プラズマ発生装置およびダイヤモンド生成方法
国際特許分類 H05H   1/24        (2006.01)
C01B  31/06        (2006.01)
FI H05H 1/24
C01B 31/06
請求項の数または発明の数 4
全頁数 9
出願番号 特願2005-229045 (P2005-229045)
出願日 平成17年8月8日(2005.8.8)
審査請求日 平成20年6月23日(2008.6.23)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504147254
【氏名又は名称】国立大学法人愛媛大学
発明者または考案者 【氏名】八木 秀次
【氏名】野村 信福
【氏名】豊田 洋通
個別代理人の代理人 【識別番号】100119367、【弁理士】、【氏名又は名称】松島 理
審査官 【審査官】山口 敦司
参考文献・文献 特開2004-346385(JP,A)
特開平11-273895(JP,A)
特開平07-135094(JP,A)
特開2002-212709(JP,A)
特開平07-062539(JP,A)
特開平07-057892(JP,A)
特開2003-268554(JP,A)
特開平04-337076(JP,A)
特開平03-193880(JP,A)
特開平04-136173(JP,A)
特開2005-200710(JP,A)
調査した分野 H05H 1/24
C01B 31/06
H05H 1/46
C23C 16/511
特許請求の範囲 【請求項1】
反応容器と、反応容器にアルゴンガスを供給する第1気体供給装置と、炭化水素を含む気体を供給する第2気体供給装置と、水素を供給するための第3気体供給装置と、反応容器に1GHz以上の周波数のマイクロ波を導入するマイクロ波導入装置を有し、マイクロ波導入装置は同軸線路である電極を有し、電極は電極本体部と電極本体部の周辺を覆う絶縁体を有し、電極先端のみでプラズマを発生させるようになし、800~1013hPaの圧力でアルゴンガスのみを用いてプラズマを発生させそのプラズマを維持したまま炭化水素と水素をプラズマに導入するようになしたプラズマ発生装置。
【請求項2】
電極本体部は銅を材料としており、電極先端において電極本体部にアルミニウムのキャップが設けられている請求項1に記載のプラズマ発生装置。
【請求項3】
電極本体部が中空状である請求項1または請求項2に記載のプラズマ発生装置。
【請求項4】
反応容器に基板を設置し、反応容器にアルゴンガスを供給し、周辺を絶縁体で覆われた電極本体部を有する同軸線路である電極により反応容器へ1GHz以上の周波数のマイクロ波を導入し、800~1013hPaの圧力でアルゴンガスのみを用いて電極先端のみにプラズマを発生させ、発生したプラズマを維持しながら反応容器に炭化水素と水素を含む気体を供給し、基板上にダイヤモンド生成するダイヤモンド生成方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
この発明は、高エネルギーのプラズマを発生するためのプラズマ発生装置およびプラズマ発生方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、アルゴンガスを使用してプラズマを発生するプラズマ処理装置が記載されている。このプラズマ処理装置は、複数の貫通孔を有する金属基板の表面に誘電体層を設けてこれを複数重ね合わせた第一電極部と、第一電極部に対して平行に配し対向電極を形成する第二電極部と、貫通孔と間隙に対して大気圧近傍の圧力の不活性ガスを供給する第一ガス供給手段および第二ガス供給手段と、表面処理用ガスまたは反応性ガスを間隙に供給する第三ガス供給手段と、金属基板間に電圧を印加して貫通孔にプラズマを発生させるための第一電源と、第一電極部と第二電極部との間に電圧を印加して間隙にプラズマを発生させるための第二電源と、を備える。
【0003】
特許文献には、(1)高分子基材を、メタン-アルゴン混合ガスを用いるCVDプラズマ処理に供して、炭素中間層膜を形成させる工程、および(2)炭素中間層膜を形成させた高分子基材を、炭化水素含有ガスを用いるCVDプラズマ処理に供して、ダイヤモンドライクカーボン膜を形成させる工程を備えたことを特徴とする方法が記載されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通常のプラズマ発生方法においては、真空容器を使用して圧力を下げてプラズマを発生させている。大きな真空容器を作成・使用することは困難であるので、基板上に膜を形成する場合において、使用できる基板の大きさは限定される。
【0005】
特許文献1には、大気圧下でプラズマ処理が行えると記載されている。しかし、特許文献1に記載されたプラズマ処理装置およびプラズマ処理方法では、電極間に直流電圧をかけて、プラズマ点火を繰り返す必要がある。また、直流グロー放電であるためにプラズマのエネルギーは低く、ダイヤモンドの合成等は行えない。
【0006】
特許文献2に記載されたプラズマ方法においては、13MHzという比較的周波数が低い交流が使用されている。特許文献2の0011段落に記載されているように、ガス圧力を10~150Pa程度(より好ましくは13~135Pa程度)に保持するものであり、かなり低圧で実施されることがわかる。したがって、大きな部材を使用することは困難である。また、プラズマのエネルギーは低く、ダイヤモンドライクカーボン膜を形成させることはできても、ダイヤモンドを生成することはできないと思われる。
【0007】
この発明は、比較的高圧で実施できるプラズマ発生装置およびプラズマ発生方法を提供することを目的とする。また、ダイヤモンドを生成できるような高エネルギーのプラズマを発生できるプラズマ発生方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明に係るプラズマ発生装置は、反応容器と、反応容器にアルゴンガスを供給する第1気体供給装置と、炭化水素を含む気体を供給する第2気体供給装置と、水素を供給するための第3気体供給装置と、反応容器に1GHz以上の周波数のマイクロ波を導入するマイクロ波導入装置を有し、マイクロ波導入装置は同軸線路である電極を有し、電極は電極本体部と電極本体部の周辺を覆う絶縁体を有し、電極先端のみでプラズマを発生させるようになし、800~1013hPaの圧力でアルゴンガスのみを用いてプラズマを発生させそのプラズマを維持したまま炭化水素と水素をプラズマに導入するようになしたものである。マイクロ波導入装置は金属壁で囲まれた円環状の空洞共振器を有し、この空洞共振器には液体金属導入口が設けられていることが好ましい。
【0009】
本発明に係るプラズマ発生方法は、反応容器にアルゴンガスを含む気体を供給し、反応容器へ1GHz以上の周波数のマイクロ波を導入してプラズマを発生させ、発生したプラズマを維持しながら反応容器に炭化水素を含む気体を供給することを特徴とする。
【0010】
さらに本発明に係るダイヤモンド生成方法は、反応容器に基板を設置し、反応容器にアルゴンガスを供給し、周辺を絶縁体で覆われた電極本体部を有する同軸線路である電極により反応容器へ1GHz以上の周波数のマイクロ波を導入し、800~1013hPaの圧力でアルゴンガスのみを用いて電極先端のみにプラズマを発生させ、発生したプラズマを維持しながら反応容器に炭化水素と水素を含む気体を供給し、基板上にダイヤモンド生成するものである。

【発明の効果】
【0011】
この発明の本発明に係るプラズマ発生装置およびプラズマ発生方法は、大気圧に近い圧力、あるいは大気圧下においてプラズマを発生・維持できるという効果を有する。そのため、容易に実施できる。また、反応容器を大型化することも容易であり、大きな部材に膜形成処理を行うこともできる。また、高エネルギーのプラズマを発生するので、ダイヤモンドを生成することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
この発明を実施するための最良の形態について、図面に基づいて説明する。図1はプラズマ発生装置を示す概念図である。
【0013】
プラズマ発生装置1は、反応容器2を有する。この反応容器2に気体を導入するための気体導入口3と、気体を排出するための気体排出口4が設けられている。また、プラズマ発生装置1は2以上の気体供給装置を有する。この例においては、アルゴンガスを供給するための第1気体供給装置5、炭化水素であるメタンガスを供給するための第2気体供給装置6に加えて、水素を供給するための第3気体供給装置7が設けられている。気体供給装置5,6,7はそれぞれ制御弁5a,6a,7aを備えており、気体の供給・遮断を切り替えるようになっている。第1気体供給装置5、第2気体供給装置6、第3気体供給装置7はバッファタンク8に接続されており、それぞれの気体はこのバッファタンク8に入った後、気体導入口を介して反応容器2に供給される。気体排出口4にはロータリーポンプ9が接続されている。
【0014】
プラズマ発生装置1は、さらに、反応容器2へ1GHz以上の周波数のマイクロ波を導入するマイクロ波導入装置10を有する。本例においては、2.45GHzのマイクロ波を使用する。このマイクロ波導入装置10は、電極11と、空洞共振器12を備えている。
【0015】
図2は電極11の構成を示す分解図である。電極本体部13は銅を材料とする。電極先端のみプラズマを発生させるために、電極本体部13の周辺は絶縁体であるフッ素樹脂14で覆う。電極11は電力導入時に加熱される。銅の温度が300℃以上になると、プラズマ状態になった原子状水素は銅内部に侵入し、水素分子となる過程において発熱を起こし、電極本体部13を損傷する。そこで,電極先端で電極本体部13と原子状水素が直接接触しないようにするため、原子状水素と反応しないアルミニウムのキャップ15をかぶせる。また、電極本体部13は中空状にし、冷却用の穴を設ける。高周波電流は表皮効果により金属表面のみ流れるので、電極表面の形状さえ変えなければ、電磁気的に何ら影響はない。
【0016】
プラズマを電極先端で安定して発生させるため、フッ素樹脂14の上端位置を熱の影響のない部分まで下げるとともに以下のことを行った。本例の電極11は同軸線路としてインピーダンス変化がないように絶縁体としてフッ素樹脂が先端部まで存在するものとして設計されている。フッ素樹脂14の上端位置の変更により同軸線路にインピーダンスの不整合が発生すると、その部分で発熱及び波長が変化し電界の最大の場所が電極11先端から移動し、先端部でのプラズマ点火ができなくなる。そこで石英の誘電率の値がフッ素樹脂のそれよりも大きいことを利用し、切り取り部に石英管16を挿入し,空間部でのインピーダンスをフッ素樹脂14とマッチングさせ先端部までフッ素樹脂が存在しているのと同じ状態とさせた。この寸法は三誘電体同軸円筒コンデンサの特性インピーダンスの式より求め、石英管16の内径4.2 mm外径は6.2 mmになる。このことによりインピーダンス整合でき、電極先端部でプラズマを安定して発生させることが出来るようになる。そこで、同軸線路にインピーダンスの不整合が存在しないよう三誘電体同軸円筒コンデンサの特性インピーダンスがZ0=29.3Ωとなるように石英管16の外径及び内径を定めた。
【0017】
電極11に高電圧を供給するための共振回路について説明する。図3は高電圧を供給するための共振回路を示す回路図である。このような共振回路を表皮抵抗の小さい半同軸空洞共振器によって構成する。図4は半同軸型空洞共振器12を含むプラズマ発生装置を示す概略図である。空洞共振器12は、金属壁で囲まれた円環状の空洞を有し、中心部は容量部になっている。空洞共振器の容量部から電極11を引き出して、その先にプラズマを発生させるものである。マイクロ波の電力を反射なく、効率よくプラズマへ供給するためには、インピーダンスをマッチングさせる必要がある。共振器へは50Ωの特性インピーダンスをもつ同軸ケーブルで電力を供給するので、図3において、空洞共振器12及び反応容器2側のインピーダンスZinを50+0j(Ω)にマッチングさせる。しかし、プラズマインピーダンスは未知であり、任意のプラズマインピーダンスに対してインピーダンスマッチングさせるためには、回路調整機構が設けられている。ここでは、プラズマ発生時にインダクタンスLと分割比kを調整することができる。
【0018】
図5は、空洞共振器12の詳細を示す拡大断面図である。空洞共振器12には、液体金属導入口17が設けられている。この液体金属導入口17より水銀などの液体金属を空洞共振器12内に注入することができるが、ここでは毒性がなく安全性が高いことより30℃以上に加熱して液体状態にしたガリウムを使用する。半同軸型空洞共振器の同軸部の長さを変化させることにより、Lが変化する。図5に示すように空洞共振器の底面に液体ガリウム(斜線部)を充填する。この液体ガリウムの表面で電気回路の一部を構成し、その表面の高さhを調整することによりLを変化させる。
【0019】
次に分割比kの調整について説明する。図6は分割比kの調整機構を示す断面図である。図6の下部から供給された電力は厚さ100μmの銅板18によって共振器内部の壁に給電される。壁とはセラミックパイプ19を介して容量結合させる。このセラミックパイプ19を共振器外へ引き出し、マイクロメーターヘッド20で動かすことより、分割比kを変化させることができる。
【0020】
このプラズマ発生装置1においては、反応容器2内に基板取付け部21が設けられている。この基板取付け部21にシリコンなどの基板を取り付け、その表面にダイヤモンド膜などの膜形成を行うことができる。
【実施例1】
【0021】
ついで、この発明の実施例について説明する。本実施例は、本発明をダイヤモンド生成に適用した例である。プラズマ発生装置1は上述の図1から図6に示すものを使用する。
【0022】
使用する基板にはシリコンを用いる。また、前処理として、6μmほどのダイヤモンド粉末で20回程度スクラッチ処理を行い、超音波洗浄する。基板を基板取付け部21に取り付ける。
【0023】
まず、第1気体供給装置5より反応容器2内にアルゴンガスを供給する。800~1013hPaの圧力でアルゴンガス流量100sccmのみを用いてプラズマを発生させそのプラズマを維持したまま1013hPaに圧力を上げ、第2気体供給装置6よりメタン、第3気体供給装置7より水素をバッファタンク8へ供給し、混合ガスを反応容器2内に導入する。混合ガスはプラズマへ充分供給できるように真横から導く。ロータリーポンプで排気しながら排気用バルブにより反応容器2内の圧力を調節する。
【0024】
本実施例における生成条件として、圧力を1013hPa、使用する混合ガスは、CH4流量を2.8sccm、水素流量を100sccm 、アルゴンガス流量を0~100sccmで変化させる。そして基板温度は870℃前後にし、その温度を保つために投入電力は100~200Wで変化させ、生成時間を0.5~1時間とした。
【0025】
このようにして、基板上にダイヤモンドを生成することができた。図7はダイヤモンド膜の走査型電子顕微鏡写真であり、図8は同拡大写真である。基板上にリング状にダイヤモンドが生成されていることが観察される。図9は、基板上に生成された膜のレーザーラマン分光法による分析結果を示すグラフである。レーザーラマン分光分析結果においても、1333cm-1にピークを持つことからダイヤモンドであることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0026】
この発明は、大気圧、またはそれに近い圧力下でプラズマを発生させることができるプラズマ発生装置およびプラズマ発生方法として利用することができる。真空容器を必要としないので反応容器の大きさに制約がなくなり、大型の装置も容易に作成できる。したがって、大きな部材に対してプラズマ処理を行うことができる。高エネルギーのプラズマを発生することができるものであり、ダイヤモンドの生成に利用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】プラズマ発生装置を示す概念図である。
【図2】電極の構成を示す分解図である。
【図3】共振回路を示す回路図である。
【図4】半同軸型空洞共振器を含むプラズマ発生装置の概略図である。
【図5】空洞共振器の詳細を示す拡大断面図である。
【図6】分割比kの調整機構を示す断面図である。
【図7】ダイヤモンド膜の走査型電子顕微鏡写真である。
【図8】ダイヤモンド膜の走査型電子顕微鏡写真(拡大写真)である。
【図9】レーザーラマン分光法による分析結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0028】
1.プラズマ発生装置
2.反応容器
3.気体導入口
4.気体排出口
5.第1気体供給装置
6.第2気体供給装置
7.第3気体供給装置
10.マイクロ波導入装置
11.電極
12.空洞共振器
17.液体金属導入口
21.基板取付け部
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図9】
6
【図7】
7
【図8】
8