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明細書 :精密配向多結晶六方晶酸化亜鉛焼結体の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4378535号 (P4378535)
公開番号 特開2006-264316 (P2006-264316A)
登録日 平成21年10月2日(2009.10.2)
発行日 平成21年12月9日(2009.12.9)
公開日 平成18年10月5日(2006.10.5)
発明の名称または考案の名称 精密配向多結晶六方晶酸化亜鉛焼結体の製造方法
国際特許分類 C04B  35/453       (2006.01)
B28B   1/00        (2006.01)
FI C04B 35/00 P
B28B 1/00 C
請求項の数または発明の数 6
全頁数 11
出願番号 特願2006-033224 (P2006-033224)
出願日 平成18年2月10日(2006.2.10)
優先権出願番号 2005051394
優先日 平成17年2月25日(2005.2.25)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成18年2月10日(2006.2.10)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304021288
【氏名又は名称】国立大学法人長岡技術科学大学
発明者または考案者 【氏名】田中 諭
【氏名】植松 敬三
【氏名】加藤 善二
【氏名】牧谷 敦
【氏名】岡田 毅
【氏名】木村 恒久
個別代理人の代理人 【識別番号】100102299、【弁理士】、【氏名又は名称】芳村 武彦
審査官 【審査官】小川 武
参考文献・文献 特開平11-217272(JP,A)
特開昭61-106454(JP,A)
特開2002-121067(JP,A)
特開2002-016297(JP,A)
特開2002-193672(JP,A)
特開2005-297556(JP,A)
国際公開第2004/030807(WO,A1)
国際公開第2004/103661(WO,A1)
調査した分野 C04B 35/00,35/10,35/453,35/584
B28B 1/00
特許請求の範囲 【請求項1】
(1)平均粒径10nm~5μmの六方晶酸化亜鉛結晶粒子を溶媒に分散させて、(2)得られたスラリーに回転磁場を印加して前記結晶粒子を配向させた後、(3)乾燥固化させて成形体を作製し、(4)得られた成形体を酸素含有雰囲気中で焼結することを特徴とする、a軸又はc軸が所定方向に配向し、かつc軸又はa軸が前記所定方向に配向したa軸又はc軸と垂直な方向に面内配向し、c軸の配向度がロットゲーリングファクターで0.05~0.99であることを特徴とする精密配向多結晶六方晶酸化亜鉛焼結体の製造方法。
【請求項2】
前記精密配向多結晶六方晶酸化亜鉛焼結体が、X線回折において回折ピーク(002)、(004)を有するとともに、配向度がロットゲーリングファクターで0.2以上の多結晶酸化亜鉛焼結体であることを特徴とする請求項1に記載の精密配向多結晶六方晶酸化亜鉛焼結体の製造方法。
【請求項3】
(2)前記スラリーを水平回転可能な容器中に収容し、該容器を水平回転させた状態で磁場を印加して結晶粒子を配向させる、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の精密配向多結晶六方晶酸化亜鉛焼結体の製造方法。
【請求項4】
(1)前記六方晶酸化亜鉛結晶粒子をスラリー中の固体含有量が10~50体積%となるように溶媒に分散させる、ことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の精密配向多結晶六方晶酸化亜鉛焼結体の製造方法。
【請求項5】
(2)前記スラリーに1T以上の磁場を印可する、ことを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の精密配向多結晶六方晶酸化亜鉛焼結体の製造方法。
【請求項6】
(3)前記成形体を1000~1500℃で焼結する、ことを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の精密配向多結晶六方晶酸化亜鉛焼結体の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、精密配向多結晶セラミックス焼結体、該焼結体の製造方法、及び該製造方法に使用する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミックス焼結体は、研磨材、切削材、高温材料等として幅広く使用されており、例えばアルミナ系の焼結体は、耐食性、機械的強度、硬度、耐摩耗性等に優れることから、各種の機械部品、電気電子材料、光学材料等に用いられている。
【0003】
このようなセラミックス焼結体については、その微細構造を制御することで靭性、強度、透光性等の特性を向上させることが可能となり、このような微細構造制御の例として、微細化された配向性セラミックス焼結体が知られている。
【0004】
配向性セラミックス焼結体の製造方法としては、セラミックス粉末を溶媒に分散させてスラリーを調製し、該スラリーを磁場中で固化成形した後に、焼結することによって配向性セラミックス焼結体とすることが提案されている。(特許文献1~3参照)

【特許文献1】特開2002-53367号公報
【特許文献2】特開2002-193672号公報
【特許文献3】特開2003-112974号公報
【0005】
これらの特許文献に記載された技術によれば、非接触で操作を行い、原料粒子の形状に依存せずに、配向性セラミックス焼結体を得ることができるが、配向方向は結晶の方位別の磁化率差に依存し、磁場中での安定性の高い方向のみに配向させることが可能である。したがって、対象とする物質によっては目的とする機能特性と結晶配向方向が一致しないことがあり、所望の方向に配向したセラミックス焼結体を得ることは困難であった。また、得られる配向セラミックスは一つの軸方向のみに配向したものであり、二つの軸方向に配向したセラミックス焼結体を得ることはできなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明はこれら従来技術の問題点を解消して、a軸又はc軸が所定方向に配向し、かつc軸又はa軸が前記所定方向に配向したa軸又はc軸と垂直な方向に面内配向した精密配向多結晶セラミックス焼結体、並びに該焼結体の製造方法、及び該製造方法に使用する装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は鋭意検討した結果、非強磁性体セラミックス結晶粒子を溶媒に分散させたスラリーに、回転磁場を印加することによって上記課題が解決されることを発見し、本発明を完成させたものである。
すなわち、本発明は次の1~10の構成を採用するものである。
1.(1)平均粒径10nm~5μmの六方晶酸化亜鉛結晶粒子を溶媒に分散させて、(2)得られたスラリーに回転磁場を印加して前記結晶粒子を配向させた後、(3)乾燥固化させて成形体を作製し、(4)得られた成形体を酸素含有雰囲気中で焼結することを特徴とする、a軸又はc軸が所定方向に配向し、かつc軸又はa軸が前記所定方向に配向したa軸又はc軸と垂直な方向に面内配向し、c軸の配向度がロットゲーリングファクターで0.05~0.99であることを特徴とする精密配向多結晶六方晶酸化亜鉛焼結体の製造方法。
2.前記精密配向多結晶六方晶酸化亜鉛焼結体が、X線回折において回折ピーク(002)、(004)を有するとともに、配向度がロットゲーリングファクターで0.2以上の多結晶酸化亜鉛焼結体であることを特徴とする1に記載の精密配向多結晶六方晶酸化亜鉛焼結体の製造方法。
3.(2)前記スラリーを水平回転可能な容器中に収容し、該容器を水平回転させた状態で磁場を印加して結晶粒子を配向させる、ことを特徴とする1又は2に記載の精密配向多結晶六方晶酸化亜鉛焼結体の製造方法。
4.(1)前記六方晶酸化亜鉛結晶粒子をスラリー中の固体含有量が10~50体積%となるように溶媒に分散させる、ことを特徴とする1~3のいずれかに記載の精密配向多結晶六方晶酸化亜鉛焼結体の製造方法。
5.(2)前記スラリーに1T以上の磁場を印可する、ことを特徴とする1~4のいずれかに記載の精密配向多結晶六方晶酸化亜鉛焼結体の製造方法。
6.(3)前記成形体を1000~1500℃で焼結する、ことを特徴とする1~5のいずれかに記載の精密配向多結晶六方晶酸化亜鉛焼結体の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、a軸又はc軸が所定方向に配向し、かつc軸又はa軸が前記所定方向に配向したa軸又はc軸と垂直な方向に面内配向した、単結晶と同等に近い性能を有する任意形状の精密配向多結晶セラミックス焼結体を、短時間で安価に製造することができる。単結晶セラミックスを得るには、溶融して成長させる等、高温で長時間かけて結晶を完成させることが必要であるが、本発明は低温で短時間の工程により、単結晶セラミックスと類似した結晶構造を有し、同等に近い性能を有するバルク状の精密配向多結晶セラミックス焼結体を初めて製造可能としたものであり、実用的価値は極めて高いものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明では、(1)非強磁性体セラミックス結晶粒子を溶媒に分散させて、(2)得られたスラリーに回転磁場を印加して非強磁性体粒子を配向させた後、(3)乾燥固化させて成形体を作製し、(4)得られた成形体を酸素含有雰囲気中で焼結することにより、a軸又はc軸が所定方向に配向し、かつc軸又はa軸が前記所定方向に配向したa軸又はc軸と垂直な方向に面内配向し、それぞれの配向度が5~99%、すなわちロットゲーリングファクターで0.05~0.99である精密配向多結晶セラミックス焼結体を製造する。
【0010】
ロットゲーリングファクターfは、対象とする結晶面から回折されるX線のピーク強度を用いて、次式(1)により計算する。
f=(ρ-ρ)/(1-ρ) (1)
ここで、ρは無配向サンプルのX線の回折強度(I)を用いて計算され、c軸配向の場合、全回折強度の和に対する、(00l)面(c軸と垂直な全ての面)の回折強度の合計の割合として、次式(2)により求める。
ρ=ΣI(00l)/ΣI(hkl) (2)
ρは配向サンプルのX線の回折強度(I)を用いて計算され、c軸配向の場合、全回折強度の和に対する、(00l)面の回折強度の合計の割合として、上式(2)と同様に次式(3)により求める。
ρ=ΣI(00l)/ΣI(hkl) (3)
a軸配向の場合は、(h00)面が対象となり、c軸配向では(00l)となる。
【0011】
図1は、本発明の精密配向多結晶セラミックス成形体(焼結前の成形体)を製造する際に使用される、磁場中回転装置の1例を示す模式図(平面図)である。
この装置1は、一対の超伝導磁石2、2の間に、スラリーを収容する型(図示せず)を有する回転部3、回転部3を駆動させるモータ4、及び回転部3の回転を制御する回転制御装置5を具備する。回転部3及びそれに連結する部分は、高磁場の影響を受けないように、ガラス、真鍮やテフロン(登録商標)のようなプラスチック等の非磁性材料により構成される。
非強磁性体セラミックス結晶粒子を水等の溶媒に分散させたスラリーを、この装置1の回転部3の型内に流し込み、磁場中で回転部3を水平方向に回転させながらスラリーを乾燥させることによって、二つの軸方向に配向した成形体が得られる。この成形体を、酸素含有雰囲気中で焼結することによって成形体の配向度が向上し、目的とする精密配向多結晶セラミックス焼結体を得ることができる。
この装置では、コイル状の超伝導磁石2、2を固定し、スラリーを収容する型を回転するように構成したが、スラリーを収容する型を固定し、その周囲に超伝導磁石を回転可能に設置することによって、回転磁場を印加するように構成することもできる。
【0012】
本発明で、精密配向多結晶セラミックス焼結体を製造する原料となる非強磁性体セラミックス結晶粒子としては、例えばニオブ酸リチウム、ニオブ酸カリウム、タンタル酸リチウム、窒化アルミニウム、チタン酸ジルコン酸鉛系材料、ビスマス系層状構造材料、酸化亜鉛、窒化ケイ素、二酸化チタン、酸化スズ、酸化アルミニウム(アルミナ)、ジルコニア、水酸化アパタイトが挙げられ、これらは単独で、或いは2種以上を組み合わせて使用することができる。セラミックス結晶粒子としては、平均粒径が5nm~20μm程度、好ましくは10nm~5μm程度、特に好ましくは0.2~5μm程度で、アスペクト比が1~5程度、好ましくは2~3程度、比表面積が1.0~15m/g程度のものが、通常は使用される。セラミックス粒子の粒径が小さくなると熱擾乱等により、粒子の配向が困難になる。
特に好ましいセラミックス結晶粒子としては、平均粒径が10nm~5μmの六方晶酸化亜鉛粒子、酸化アルミニウム粒子、窒化ケイ素粒子、及びKSrNb15粒子が挙げられる。
【0013】
セラミックス結晶粒子を分散させる溶媒としては、水、又はエタノール等のアルコール、エーテル、トルエン、メチルエチルケトン等の有機溶媒、或いはこれらを適宜混合した混合溶媒等が用いられる。また、スラリーを形成する際に、溶媒として水系溶媒を用いる場合にはポリアクリル酸アンモニウム、ポリカルボン酸アンモニウム、クエン酸アンモニウム、アミン系分散剤等の公知の分散剤を使用することができ、有機溶媒を用いる場合にはポリエチレンイミン系分散剤を使用することができる。
スラリー中のセラミックス結晶粒子の含有量は、粒子の種類、粒径等に応じて適宜選択することができるが、通常はスラリー中の固体含有量が10~50体積%、特に30~50体積%程度とすることが好ましい。
【0014】
スラリーには、1T(テスラ)以上、通常は1~10T程度の回転磁場を印加するが、このような高磁場を発生させるには超伝導磁石が好適に用いられる。回転磁場を継続して印加することにより、セラミックス結晶粒子のa軸及びc軸をともに配向させた後、乾燥固化させて成形体を作製する。得られた成形体を酸素含有雰囲気中で焼成することによって、配向を促進させた精密配向多結晶セラミックス焼結体が得られる。
【0015】
以下、図2~4に基づいて、酸化亜鉛粒子を溶媒に分散させたスラリーから精密配向多結晶セラミックス焼結体を製造する場合を例にとり、本発明の精密配向多結晶セラミックス焼結体について、詳細に説明する。
図2は、先に示した特許文献1~3に記載された、従来の静置磁場中で酸化亜鉛粒子を配向させて得られる成形体の微粒子構造を示す模式図である。静置磁場を印加する前には、酸化亜鉛粒子はスラリー中に均一に分散し結晶軸の方向はランダムである(図2A)。磁場を印加すると、酸化亜鉛粒子では磁化率の大きいc軸が磁場方向に垂直になり、その結果磁化率の小さいa軸が磁場方向に揃う(図2B)。乾燥固化した成形体を焼結すると、a軸方向に一軸配向したセラミックス焼結体が得られるが、この焼結体では、c軸は磁場に垂直方向に配向しているものの面内での方向はランダムであり、図4Aに示すような微細構造をとる。
【0016】
図3は、本発明により回転磁場中で酸化亜鉛粒子を配向させて得られる成形体の微細構造を示す模式図であり、Aは磁場を印加する前の状態、Bは単に磁場(静置磁場)を印可した状態、Cは磁場を印加しながらスラリーを収容した容器を回転させた直後の状態、そしてDは回転磁場の印加を継続し精密配向セラミックス成形体が得られた状態を示す。
【0017】
本発明によれば、はじめに静置磁場を印可することにより磁化率の大きいc軸が磁場方向に垂直になり、その結果磁化率の小さいa軸が磁場方向に揃う(図3B)。つぎに、容器を回転させてスラリーに回転磁場を印加することによって、図3CからDにみられるように、磁化率の大きいc軸が常に磁場に垂直な方向を向き、c軸の方向も揃う。乾燥固化した成形体を焼結すると、図4Bに示すようにa軸方向及びc軸方向の二軸に配向した精密配向多結晶セラミックス焼結体が得られる。この焼結体は、単結晶セラミックスと類似した結晶構造を有するもので、磁場を印加する方向を制御することで、セラミックス焼結体のc軸を所定方向に配向させ、かつa軸をc軸と垂直な方向に面内配向させることが可能となる。例えば、酸化亜鉛は六方晶で、c軸方向の圧電特性が優れた物質であるが、本発明によればc軸方向及びa軸方向に二軸配向し、単結晶セラミックスに類似するバルク状の精密配向多結晶焼結体を製造することがはじめて可能となった。この多結晶焼結体は、短時間で安価に製造することができ、その圧電特性を生かして広く電子デバイスや光機能材料への応用が可能なものである。
【0018】
酸化亜鉛粒子に代えて酸化アルミニウム粒子を使用する場合には、a軸が所定方向に配向し、c軸がa軸と垂直な方向に面内配向した精密配向多結晶焼結体を得ることができる。また、窒化ケイ素粒子やKSrNb15粒子を使用する場合には、酸化亜鉛粒子と同様に、c軸が所定方向に配向し、a軸がc軸と垂直な方向に面内配向した精密配向多結晶焼結体を得ることができる。
【実施例】
【0019】
つぎに、実施例により本発明をさらに説明するが、以下の具体例は本発明を限定するものではない。
(実施例1)
粒径0.4~0.6μmの板状の酸化亜鉛粒子を、分散剤としてポリアクリル酸アンモニウムを使用して水に分散させて、固体含有量が30体積%のスラリーを調製した。このスラリーの粘度は、せん断速度10(l/s)で10~200(mPa・s)となるように調整した。
図1の装置を使用し、このスラリーを回転部3に設けた直径30mmのテフロン(登録商標)製の型内に5mL流し込み、回転部を0.5Hzの回転数で回転させながら、超伝導磁石2、2から、10Tの磁場を印加しつつ、25℃で1日間乾燥させて酸化亜鉛成形体を得た。
得られた酸化亜鉛成形体を型から取り出し、大気中で1100℃で1時間仮焼結した後に、大気雰囲気中で1300℃で2時間焼結することにより、多結晶酸化亜鉛焼結体を得た。1300℃焼結体のXRD回折図形を図5(a)に示した。
【0020】
(比較例1)
上記実施例1において、装置1の回転部3を回転させずに単に静置磁場を印加させた以外は、実施例1と同様に成形し、同様に仮焼結及び1300℃で焼結した焼結体のXRD回折図形を図5(b)に示した。
【0021】
(比較例2)
上記実施例1において、磁場を全く印加しなかった以外は、実施例1と同様に成形し、同様に仮焼結及び1300℃で焼結した焼結体のXRD回折図形を図5(c)に示した。
【0022】
比較例1の静置磁場を印加して成形後焼結した焼結体では、磁場方向に(100)面、(110)面のピークが出現し、a軸が磁場に向いていることがわかる[図5(b)]。
これに対して、本発明の回転磁場を印加して成形後焼結した焼結体では、(002)面のピークが出現している。[図5(a)]。この結果から、本発明で得られた酸化亜鉛焼結体は、磁場方向にa軸、磁場に垂直で回転軸方向にc軸の配向構造を有することが判明した。
【0023】
(ロットゲーリング法による評価)
実施例1で得られた、仮焼結前の酸化亜鉛成形体、及び1100℃仮焼結体についてもXRDで結晶構造を調べ、結晶の配向度を1300℃焼結体とともに、ロットゲーリング法により評価した結果を図6に示す。
ロットゲーリングファクターは、全てのピーク強度の総和に対する、対象とする面のピーク強度の割合が無配向の場合に対して配向試料ではどの程度変化した表す指標であり、無配向では0に、また完全配向では1になる。このファクターが0.1でも回折図形に明確な違いが見られるが、0.5以上では非常に配向性の高い試料とみなすことができる。今回の評価では、C面を対象とするので、(002)と(004)のピーク強度により評価した。
図6によれば、仮焼結前においてもある程度配向しているが、焼結温度の増加とともに配向度が増加し、1300℃焼結体では配向度が0.9とほぼ完全に配向していることが判明した。このように、回転磁場を印加して配向させた成形体の結晶構造は、焼結時にも維持され、焼結によりさらに配向度が促進された。これは、焼結時の粒子成長によるもので、成形時には配向しにくい小さな粒子が、配向しやすい大きな粒子に取り込まれるためである。
【0024】
参考例1
原料として、粒径0.4~0.6μmの酸化アルミニウム(アルミナ)粒子を用い、分散剤としてポリアクリル酸アンモニウムを使用して水に分散させて、固体含有量が30体積%のスラリーを調製した。こののスラリーの粘度は、せん断速度10(1/s)で10(mPa・s)となるように調製した。
図1の装置を使用し、実施例1と同様の手順でこのスラリーを10Tの磁場を印加しつつ、25℃で1日間乾燥させてアルミナ成形体を得た。得られたアルミナ成形体を型から取り出し、大気雰囲気中で、1600℃の温度で2時間焼結を行うことにより、多結晶アルミナ焼結体を得た。
この焼結体のXRD回折図形を図7の上図に示す。なお、図7の下図は比較のために回転磁場を印加せずに成形し、その後1600℃で焼結した焼結体のXRD回折図形である。回転磁場成形により、(300)ピークが高くなり、a軸に配向したことが明らかとなった。また、図8に焼結温度を1200~1600℃に上昇させる段階での配向度(ロットゲーリングファクター)を示す。配向度は焼結温度の上昇にともない増加し、粒子配向構造がより顕著になることが明らかとなった。
【0025】
参考例2
原料として、粒径0.4~0.6μmの窒化ケイ素(Si)粒子を用い、分散剤としてポリアクリル酸アンモニウムを使用して水に分散させて、固体含有量が30体積%のスラリーを調製した。こののスラリーの粘度は、せん断速度10(1/s)で10(mPa・s)となるように調製した。
図1の装置を使用し、実施例1と同様の手順でこのスラリーを10Tの磁場を印加しつつ、25℃で1日間乾燥させて窒化ケイ素成形体を得た。得られた窒化ケイ素成形体のXRD回折図形を図9に示す。図9において、一番上の図は回転磁場で作製したもので、(002)のピークがわずかに高くなりc軸が所定方向に配向していることを示す。また、c軸を含む(101)のピークも高くなっている。回転軸と垂直な方向にはa軸が多く、c軸はあまり現れない。この成形体を1800℃以上の温度で酸素の無い条件で焼結すれば、配向構造はより顕著になるものと考えられる。
なお、図9の中央の図は、XRDの測定面が上図とは垂直な状態で測定したものである。また、図9の下図は比較のために回転磁場を印加せずに作製した成形体のXRD回折図形である。
窒素ケイ素は従来の静置磁場ではa軸が磁場方向に平行になり、機械的特性の向上には寄与しない。本発明のように、c軸をそろえることにより、機械的特性の向上が期待される。
【0026】
参考例3
原料として、粒径0.4~0.6μmのKSrNb15(KSN)を固相合成して用いた。この粒子を分散剤としてポリアクリル酸アンモニウムを使用して水に分散させて、固体含有量が30体積%のスラリーを調製した。こののスラリーの粘度は、せん断速度10(1/s)で10(mPa・s)となるように調製した。
図1の装置を使用し、実施例1と同様の手順でこのスラリーを10Tの磁場を印加しつつ、25℃で1日間乾燥させてKSN成形体を得た。得られたKSN成形体を型から取り出し、大気雰囲気中で、1300℃の温度で2時間焼結を行うことにより、多結晶KSN焼結体を得た。
この焼結体のXRD回折図形を図10の上図に示す。なお、図10の下図は比較のために回転磁場を印加せずに作製した成形体のXRD回折図形である。回転磁場成形により、(001)、(002)のc軸のピークが高くなることが明らかとなった。また、図11に焼結温度を700~1300℃に上昇させる段階での配向度(ロットゲーリングファクター)を示す。配向度は焼結温度の上昇にともない増加し、粒子配向構造がより顕著になることが明らかとなった。
【0027】
本発明によれば、酸化亜鉛をはじめとして、アルミナ、窒化ケイ素、ニオブ酸金属塩等、種々の非強磁性体セラミックス結晶粒子から精密配向セラミックスを作製することが可能である。すなわち、種々の非強磁性体セラミックス結晶粒子を原料として、多結晶体であるが単結晶に近い構造を有するセラミックスを作製することができるので、種々の特性を有する圧電素子等の開発が可能となる。
上記の各例で用いた磁場の強さは10テスラであるが、磁場の強さは適宜選択することができる。磁場の強さは、低下させたほうがコスト的には優れるので、工業的には5テスラ程度までさげる方がよいと思われる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明で、精密配向多結晶セラミックス成形体(焼結前の成形体)の製造に使用される装置の1例を示す図である。
【図2】従来の静置磁場中で酸化亜鉛粒子を配向させた成形体の微細構造を示す模式図である。
【図3】本発明の回転磁場中で酸化亜鉛粒子を配向させた成形体の微細構造を示す模式図である。
【図4】図2及び図3の成形体を焼結した焼結体の結晶構造を示す模式図である。
【図5】実施例1及び比較例1、2で得られた焼結体のXRD回折図形である。
【図6】実施例1で得られた焼結体を、ロットゲーリング法により評価した結果を示す図である。
【図7】参考例1で得られた焼結体のXRD回折図形である。
【図8】参考例1で得られた焼結体を、ロットゲーリング法により評価した結果を示す図である。
【図9】参考例2で得られた成形体のXRD回折図形である。
【図10】参考例3で得られた焼結体のXRD回折図形である。
【図11】参考例3で得られた焼結体を、ロットゲーリング法により評価した結果を示す図である。
【符号の説明】
【0029】
1 磁場中回転装置
2 超伝導磁石
3 回転部
4 モータ
5 回転制御装置


















図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10